説明

衛生器具

【課題】衛生器具本体の据付向きを容易に変更することができ、所望する据付向きに確実に固定することができる衛生器具を提供する。
【解決手段】衛生器具である洋風大便器は、便鉢10と、便鉢10に連通する器具排出管11と、器具排出管11を囲包し、下方に開口する脚部12とを有する便器本体1Aを備えている。器具排出管11は、脚部12に囲包される床面Fに固定される接続ソケット20により、床面Fより下方に伸びた排出管2に連通される。接続ソケット20と脚部12との間に設けられた固定具30により、便器本体1Aを器具排出管11の軸芯周りに回転させて便器本体1Aの据付向きを変更可能に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の衛生器具である洋風大便器が開示されている。この洋風大便器は、便鉢と、便鉢に連通する器具排出管とを有する便器本体を備えている。器具排出管は、器具排出管の下端に接続された接続筒と便器本体が据え付けられる床面に固定された接続ソケットとを介して、床面より下方に伸びた排出管に連通される。接続筒の外周面下部には、外側に伸びる2個の係止片が形成されている。接続ソケットの内周面には、接続ソケットの上面から連続して2個の係止溝が螺旋状に形成されている。係止片を係止溝に係合させ、便器本体を回動させながら、据付面に下降させることにより、器具排出管と排出管とを連通させることができる。
【0003】
【特許文献1】実開平7−29082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の衛生器具である洋風大便器では、接続筒を器具排出管に固定する向き及び接続ソケットを床面に固定する向きにより、便器本体の据付向きが特定される。このため、便器本体の据付向きを変更するには、接続筒の器具排出管への固定、又は接続ソケットの床面への固定をやり直さなければならず、手間を要する。また、便器本体の据付時に便器本体の据付向きを調整する際にも、接続筒又は接続ソケットの固定をやり直さなければならない。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、衛生器具本体の据付向きを容易に変更することができ、所望する据付向きに確実に固定することができる衛生器具を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の衛生器具は、鉢部と、該鉢部に連通する器具排出管と、該器具排出管を囲包し、下方に開口する脚部とを有する衛生器具本体と、
該器具排出管を該衛生器具本体が据え付けられる据付面より下方に伸びた排出管に連通し、該脚部に囲包される該据付面に固定される接続ソケットと、
該接続ソケットと該脚部との間に設けられ、該衛生器具本体を該器具排出管の軸芯周りに回転させて該衛生器具本体の据付向きを変更可能に固定する固定具とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この衛生器具では、接続ソケットの据付面への固定向きにかかわらず、衛生器具本体を器具排出管の軸芯周りに回転させて、所望する据付向きに固定することができる。このため、接続ソケットの据付面への固定をやり直さずに、衛生器具本体の据付向きを変更することができる。また、衛生器具本体の据付向きの調整も接続ソケットの据付面への固定をやり直さずに行うことできる。
【0008】
したがって、本発明の衛生器具は、衛生器具本体の据付向きを容易に変更することができ、所望する据付向きに確実に固定することができる。
【0009】
接続ソケットは、内周面を連通口にしたリング形状であり、外周面には第1セレーションが形成されており、固定具は、外周面が脚部の内周面に固定されたリング形状であり、内周面には第1セレーションに嵌合する第2セレーションが形成され得る。この場合、接続ソケットの第1セレーションと固定具の第2セレーションの嵌合位置を変更することにより、衛生器具本体を所望する据付向きに容易に変更することができる。また、接続ソケットの第1セレーションと固定具の第2セレーションとが嵌合されるため、衛生器具本体は据付向きを強固に固定することができる。このため、据付面に据え付けられた衛生器具本体を良好に使用することができる。
【0010】
衛生器具本体は、脚部の内周面から内側に向けて突出する鍔部を有し、接続ソケットは内周面を連通口にしたリング形状であり、固定具は、接続ソケットの外周面より外方に突出する弾性体からなり、弾性変形により鍔部を上下方向に通過可能であり、鍔部の上面に係止する係止部を有し得る。この場合、衛生器具本体を接続ソケットの上方から据付面に下降させると、固定具は弾性変形され、鍔部が係止部を上方から下方に通過し、鍔部の上面に係止部が係止する。この後、衛生器具本体を器具排出管の軸芯周りに回転させて、所望する据付向きに容易に固定することができる。また、衛生器具本体の外周面にビス等の固定部材が露出することがないため、衛生器具本体の外観をすっきりさせることができる。
【0011】
脚部の下端には据付面との間に隙間を形成する凹部が設けられ、衛生器具本体の外部から凹部内に平板状の治具が挿入され、固定具を押圧可能にすると良い。このようにすると、凹部に治具を挿入して、固定具を弾性変形させることにより、係止部と鍔部の上面との係止を容易に解除することができる。このため、衛生器具本体を据付面から容易に取り外すことができる。
【0012】
接続ソケットは、内周面を連通口にしたリング形状であり、電磁石が組み付けられており、固定具は脚部の内周面に固定され、電磁石の電磁力により保持可能であり得る。この場合、接続ソケットに組み付けられた電磁石の電磁力により、固定具が保持され、所望の据付向きに衛生器具本体を容易に固定することができる。電磁力により固定具が保持されるため、衛生器具本体は据付向きを強固に固定することができる。このため、据付面に据え付けられた衛生器具本体を良好に使用することができる。電磁石への通電を停止することにより電磁石の電磁力は失われるため、衛生器具本体を器具排出管の軸芯周りに回転させることができ、据付向きを変更したり、調整したりすることが容易に行なうことができる。また、衛生器具本体の外周面にビス等の固定部材が露出することがないため、衛生器具本体の外観をすっきりさせることができる。
【0013】
固定具はリング形状であり、磁着可能であり得る。この場合、接続ソケットに組み付けられた電磁石の磁力により固定具が磁着されるため、所望の据付向きに衛生器具体を容易に固定することができる。
【0014】
接続ソケットは内周面を連通口にしたリング形状であり、据付面に固定された際の周縁上部に一定間隔で設けられた複数の凹部と、各凹部の下端角部から外周面の一方向に伸びて設けられた係止溝とを有し、固定具は脚部の内周面から内側に突出し、係止溝に係止可能な複数の係止片であり得る。この場合、係止片を凹部に挿入し、衛生器具本体を回転させることにより、固定具である係止片が接続ソケットの係止溝に係止し、衛生器具本体を据付面に容易に固定することができる。また、係止片を他の凹部に挿入することにより、衛生器具本体の据付向きを容易に変更することができる。
【0015】
接続ソケットは、内周面を連通口にしたリング形状であり、外周部が弾性体により形成され、外周面に設けられた嵌合溝を有し、固定具は、脚部の内周面から内側に突出し、嵌合溝に嵌合可能な嵌合片であり得る。この場合、衛生器具本体を接続ソケットの上方から据付面に下降させると、嵌合片が接続ソケットの外周部が弾性変形させて、嵌合溝に嵌合される。これにより、衛生器具本体を所望する据付向きに容易に固定することができる。また、衛生器具本体の外周面にビス等の固定部材が露出することがないため、衛生器具本体の外観をすっきりさせることができる。
【0016】
衛生器具本体は、器具排出管の軸芯に対して対称形状であり得る。この場合、衛生器具本体の外周面に模様等を付しておくと、所望する模様が見易いように据え付けたり、据付向きを変更することにより衛生器具本体の趣を変更したりすることができる。また、衛生器具本体の据付向きを変更しても、衛生器具の使用勝手は変わらず、良好に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の衛生器具を具体化した実施例1〜5を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1の衛生器具は、図1〜図3に示すように、トイレルームの床面(据付面)Fに据え付けられる洋風大便器である。この洋風大便器は、便器本体1Aと、便座4と、便蓋5とを備えている。便器本体1Aの外形状は、上方より下方に向けて径が小さくなる略逆円錐台形状であり、外周面13が内側に湾曲している。便器本体1Aには、上方に開口する略半球形状の便鉢(鉢部)10が形成されている。便鉢10の下端中央部には開口14が形成され、この開口14には器具排出管11が接続されている。便器本体1Aは、器具排出管11の軸芯に対して対称形状である。
【0019】
便器本体1Aは、外周面13の下部13Dと、外周面13の下端から連続し、器具排出管11を囲包する内壁15とから形成された脚部12を有している。脚部12は下方に開口している。また、脚部12の下端近傍には、後述する接続ソケット20及び固定具30にねじ込まれるビスBを挿通するビス孔13Hが設けられている。
【0020】
便鉢10の上部開口には、取り外し可能な便座4が載置される。また、便座4の上部には、便鉢10及び便座4を覆うようにして、取り外し可能な便蓋5が載置される。便蓋5には、複数の開口5Hが貫設されている。便器本体1Aが使用される際には、図1に示すように、便蓋5は、便座4の上部から取り外され、壁面Wに設けられた保持具6に保持される。
【0021】
洋風大便器は、図2及び図3に示すように、リング形状の接続ソケット20を備えている。接続ソケット20の内周面は、器具排出管11の下端が挿入されて接続される連通口22である。連通口22の下端には、排出管2が一体に接続されている。このように、器具排出管11は、接続ソケット20を介して床面Fより下方に伸びた排出管2に連通される。接続ソケット20の外周面21には、第1セレーションが形成されている。接続ソケット20の外周面21の上下中間部には、内側に凹むV型溝が形成されている。これにより、接続ソケット20の外周面21に固定ビスBがねじ込み易くされている。
【0022】
また、洋風大便器は固定具30を備えている。固定具30の内周面31は、第1セレーションに嵌合する第2セレーションが形成されている。固定具30の外周面32は、脚部12を構成する内壁15の内周面に固定されている。
【0023】
排出管2の下端には、便槽7が接続されている。便槽7の内部には、微生物を担持したおが屑8が収納され、便器本体1Aから落下した排泄物を分解処理することができる。便槽7は、図示しない排気装置を有している。
【0024】
このように構成された実施例1の衛生器具である洋風大便器は、床面Fに固定された接続ソケット20に対して、接続ソケット20の第1セレーションと固定具30の第2セレーションとが嵌合するように上方から便器本体1Aを下降させる。この際、便器本体1Aを器具排出管11の軸芯周りに回転させ、便器本体1Aを所望する据付向きにすることができる。また、接続ソケット20は脚部12に囲包される。その後、ビスBをビス孔13Hに挿通し、固定具30及び接続ソケット20にねじ込むことにより、便器本体1Aが床面Fに固定される。
【0025】
ビスBが固定具30及び接続ソケット20にねじ込まれていない状態で、便器本体1Aを上昇させ、便器本体1Aを器具排出管11の軸芯周りに回転させることにより、接続ソケット20の第1セレーションと固定具30の第2セレーションとの嵌合位置を変更させることができる。このように、接続ソケット20の床面Fへの固定をやり直さずに、便器本体1Aの据付向きを変更したり、調整したりすることができる。
【0026】
したがって、実施例1の衛生器具である洋風大便器は、便器本体1Aの据付向きを容易に変更することができ、所望する据付向きに確実に固定することができる。
【0027】
また、接続ソケット20の第1セレーションと固定具30の第2セレーションとが嵌合されるため、便器本体1Aは据付向きを強固に固定することができる。このため、床面Fに据え付けられた便器本体1Aを良好に使用することができる。
【0028】
また、便器本体1Aは、器具排出管11の軸芯に対して対称形状であるため、便器本体1Aの外周面13に模様等を付しておくと、所望する模様が見易いように据え付けたり、据付向きを変更することにより便器本体1Aの趣を変更したりすることができる。また、便器本体1Aの据付向きを変更しても、洋風大便器の使用勝手は変わらず、良好に使用することができる。
【0029】
便槽7に設けられた排気装置は常時駆動されている。便器本体1Aを使用するために便蓋5が便座4の上部から取り外された際には、排気装置により便鉢10の上部開口からトイレルーム内の空気が吸引される。吸引された空気は、器具排出管11、排出管2、便槽7及び排気装置を介して、外部へ排気される。このため、便槽7内の臭気がトイレルーム内に逆流することを防止することができる。また、便器本体1Aが使用されずに、便蓋5が便座4の上部に載置されている際にも、排気装置により便蓋5の開口5Hからトイレルーム内の空気が吸引される。このため、便槽7内の臭気がトイレルーム内に逆流することを防止することができる。このように、常時トイレルーム内の空気が吸引されているため、トイレルームを換気するための換気扇をトイレルームに設置しなくてもよい。
【実施例2】
【0030】
実施例2の衛生器具である洋風大便器では、図4に示すように、便器本体1Bの脚部12を構成する内壁15の下端内周面から内側に向けて鍔部15Gが突出している。また、便器本体1Bの脚部12の下端には、対向する2箇所に床面Fとの間に隙間を有する一対の凹部13Sが形成されている。各凹部13Sは、脚部12の外側の方が内側より床面Fとの間隔が広く形成されている。このため、各凹部13Sは、後述する治具Jが脚部12の外側から脚部12の下端中間部まで挿入可能とされている。また、各凹部13Sは、後述する固定具33の押込み部35が脚部12の内側から挿入可能とされている。便座及び便蓋の図示は省略する。
【0031】
リング形状の接続ソケット23の上面には、外周面に沿って対向する2箇所に設けられた一対の挿入溝23Hが複数組形成されている。対向する2か所に設けられた一対の挿入溝23Hに固定具33の鉤状に屈曲した先端部34Aの先端側が挿入される。固定具33は、先端部34Aに連続し、接続ソケット23の外周上端部から斜め下方に伸びた傾斜部34Bを有している。傾斜部34Bの下端には、内側に屈曲し、鍔部15Gの上面に係止する係止部34Cを有している。係止部34Cは下方に屈曲し、床面F上をスライドする押込み部35が連結されている。固定具33は板バネにより形成されている。このため、押込み部35を接続ソケット23側に押圧すると、弾性変形し、係止部34Cが鍔部15Gの上面より接続ソケット23側に移動する。実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0032】
このように構成された実施例2の衛生器具である洋風大便器では、便器本体1Bの据付向きを考慮して、接続ソケット23の特定の挿入溝23Hに固定具33の先端部34Aを挿入する。その後、固定具33の押込み部35が脚部12の下端に形成された凹部13Sに挿入されるように便器本体1Bを上方から床面Fに下降させる。この際、固定具33は弾性変形され、便器本体1Bの鍔部15Gが係止部34Cの上方から下方に通過し、鍔部15Gの上面に係止部34Cが係止する。このように、便器本体1Bを所望する据付向きに容易に固定することができる。また、便器本体1Bの外周面13にビス等の固定部材が露出することがないため、便器本体1Bの外観をすっきりさせることができる。
【0033】
また、凹部13Sに外部から治具Jを挿入し、押込み部34Cを接続ソケット23側に押圧すると、固定具33は弾性変形し、係止部34と鍔部15Gとの係止を容易に解除することができる。このため、便器本体1Bを床面Fから容易に取り外し、便器本体1Bの据付向きを変更させることができる。また、実施例2の洋風大便器は、実施例1と同一の構成により、同様の作用及び効果を奏する。
【0034】
したがって、実施例2の衛生器具である洋風大便器も、便器本体1Bの据付向きを容易に変更することができ、所望する据付向きに確実に固定することができる。
【実施例3】
【0035】
実施例3の衛生器具である洋風大便器では、図5及び図6に示すように、リング形状の接続ソケット24の外縁上部に電磁石25が組み付けられている。電磁石25は電力線25Eを介して通電されることにより、磁力を発生する。
【0036】
固定具36は、鉄等の磁性体により形成されたリング形状の上面部37と、上面部37の外周から下方に伸びた側面部38とを有している。固定具36の側面部38の外周面が脚部12を構成する内壁15の内周面に固定されている。便器本体1Cは、脚部12にビス孔13Hが設けられていない点を除き、実施例1の便器本体1Aと同じ構成である。便座及び便蓋の図示は省略する。実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0037】
このように構成された実施例3の衛生器具である洋風大便器では、床面Fに固定された接続ソケット24の外縁部の上面及び側面に対し、固定具36が覆うように便器本体1Cを上方から床面Fに下降させる。この後、便器本体1Cを器具排出管11の軸芯周りに回転させて、所望する据付向きに調整し、電磁石25に電力線25Eを介して通電する。これにより、固定具36が磁着され、便器本体1Cを所望する据付向きに固定することができる。固定具36が、電磁石25に磁着されるため、便器本体1Cは据付向きを強固に固定することができる。このため、床面Fに据え付けられた便器本体1Cを良好に使用することができる。電磁石25への通電を停止することにより、電磁石25の磁力は失われるため、便器本体1Cを器具排出管11の軸芯周りに回転させることができ、据付向きを変更したり、調整したりすることが容易に行なうことができる。また、便器本体1Cの外周面13にビス等の固定部材が露出することがないため、便器本体1Cの外観をすっきりさせることができる。
【0038】
したがって、実施例3の衛生器具である洋風大便器も、便器本体1Cの据付向きを容易に変更することができ、所望する据付向きに確実に固定することができる。また、実施例3の洋風大便器は、実施例1と同一の構成により、同様の作用及び効果を奏する。
【実施例4】
【0039】
実施例4の衛生器具である洋風大便器では、図7及び図8に示すように、床面Fに固定されたリング形状の接続ソケット26の周縁上部に、一定間隔毎に6個の凹部28が設けられている。各凹部28の下端角部から外周面の一方向に係止溝27が伸びている。凹部28の底面と係止溝27の底面との間には段差が設けられ、係止溝27の底面の方が低く形成されている。便器本体1Dの脚部12を構成する内壁15の下部内周面には、内側に突出する係止片(固定具)39が一体に設けられている。便座及び便蓋の図示は省略し、実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0040】
このように構成された実施例4の衛生器具である洋風大便器では、床面Fに固定された接続ソケット26の凹部28に係止片39が挿入されるように便器本体1Dを上方から下降させる。その後、便器本体1Dを反時計方向に回転させると、固定具である係止片39が接続ソケット26の係止溝27内に移動し、係止される。係止溝27の底面が凹部28の底面より低く形成されているため、係止片39を係止溝27内から凹部28内に移動させるためには、便器本体1Dを上昇させながら時計方向に回転させなければならない。このため、洋風大便器の使用中に便器本体1Dが回転してしまうことが防止され、便器本体1Dを良好に使用することができる。また、係止片39を他の凹部28に挿入することにより、便器本体1Dの据付向きを容易に変更することができる。
【0041】
したがって、実施例4の衛生器具である洋風大便器も、便器本体1Dの据付向きを容易に変更することができ、所望する据付向きに確実に固定することができる。また、実施例4の洋風大便器は、実施例1と同一の構成により、同様の作用及び効果を奏する。
【実施例5】
【0042】
実施例5の衛生器具である洋風大便器では、図9に示すように、床面Fに固定されたリング形状の接続ソケット40が弾性ゴムにより形成されている。接続ソケット40の外周面には、全周に亘って一条の嵌合溝41が設けられている。便器本体1Eの脚部12を構成する内壁15の下部内周面には、全周に亘って突出する一条の嵌合片(固定具)50が一体に設けられている。便座及び便蓋の図示は省略し、実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0043】
このように構成された実施例5の衛生器具である洋風大便器では、床面Fに固定された接続ソケット40が便器本体1Eの脚部12に収納されるように便器本体1Eを上方から床面Fに下降させる。その際、嵌合片50が接続ソケット40の外周部を弾性変形させ、嵌合片50が嵌合溝41に嵌合される。嵌合片50が嵌合溝41に嵌合されると、接続ソケット40の外周面と内壁15の内周面とが接触し、その摩擦力により、便器本体1Eは器具排出管11の軸芯周りに回転不能となる。このため、洋風大便器の使用中に便器本体1Eが回転してしまうことが防止され、便器本体1Eを良好に使用することができる。また、便器本体1Eを上昇させることにより、接続ソケット40の外周部を弾性変形させ、嵌合片50と嵌合溝41との嵌合を解除することができる。このため、便器本体1Eの据付向きを容易に変更することができる。
【0044】
したがって、実施例5の衛生機器である洋風大便器も、便器本体1Eの据付向きを容易に変更することができ、所望する据付向きに確実に固定することができる。また、実施例5の洋風大便器は、実施例1と同一の構成により、同様の作用及び効果を奏する。
【0045】
以上において、本発明を実施例1〜5に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨に逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0046】
例えば、衛生器具は洋風大便器に限らず、小便器、洗面器及び手洗器などであってもよい。また、洋風大便器又は小便器は非水洗式・水洗式のどちらでもよい。衛生器具が洗面器又は手洗器の場合、据付面はカウンタ面、洗面台等の天板面であってもよい。
便器本体は、器具排出管を囲包する脚部を有する一般的な形状のものであってもよい。この場合、床面Fに取り付けられた後、便器本体の使用者が車椅子を利用するようになった際に、車椅子から便器本体に移乗し易いように便器本体の据付向きを容易に変更することができる。
脚部は衛生器具本体と別体に設け、設置時に器具排出管を囲包するように取り付けてもよい。
接続ソケットと排出管とは別体に設けられ、便器本体の据付時に接続されてもよい。
機器排出管を接続ソケットに一体に設けてもよい。
実施例1又は3において、固定具30、36を便器本体1A、1Cの脚部12を構成する内壁15に一体に形成してもよい。
実施例2において、接続ソケット23は対向する2箇所に設けられた一対の挿入溝23Hのみを有し、脚部12は対向する2箇所に設けられた一対の凹部13Sを複数組有するようにしてもよい。この場合、便器本体を器具排出管11の軸芯周りに回転させ、固定具33の押込み部35を対応する凹部13Sに挿入させることにより、便器本体の据付向きを容易に変更することができる。
実施例3において、電磁石の電磁力により接続ソケットから進退可能な係止具を設け、係止具が衛生器具本体に設けられた固定具に係止するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は洋風大便器、小便器、洗面器及び手洗器などの衛生器具に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1〜4の洋風大便器の据付状態を示す斜視図である。
【図2】実施例1の洋風大便器の断面図である。
【図3】実施例1の洋風大便器の切欠き図である。
【図4】実施例2の洋風大便器の断面図である。
【図5】実施例3の洋風大便器の断面図である。
【図6】実施例3の洋風大便器の切欠き図である。
【図7】実施例4の洋風大便器の断面図である。
【図8】実施例4の洋風大便器の切欠き図である。
【図9】実施例5の洋風大便器の切欠き図である。
【符号の説明】
【0049】
1A、1B、1C、1D、1E…便器本体(衛生器具本体)
2…排出管
10…便鉢(鉢部)
11…器具排出管
12…脚部
15G…鍔部
20、23、24、26、40…接続ソケット
25…電磁石
27…係止溝
28…凹部
30、33、36、39、50…固定具(39…係止片、50…嵌合片)
34…係止部
41…嵌合溝
F…床面(据付面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉢部と、該鉢部に連通する器具排出管と、該器具排出管を囲包し、下方に開口する脚部とを有する衛生器具本体と、
該器具排出管を該衛生器具本体が据え付けられる据付面より下方に伸びた排出管に連通し、該脚部に囲包される該据付面に固定される接続ソケットと、
該接続ソケットと該脚部との間に設けられ、該衛生器具本体を該器具排出管の軸芯周りに回転させて該衛生器具本体の据付向きを変更可能に固定する固定具とを備えていることを特徴とする衛生器具。
【請求項2】
前記接続ソケットは、内周面を連通口にしたリング形状であり、外周面には第1セレーションが形成されており、
前記固定具は、外周面が前記脚部の内周面に固定されたリング形状であり、内周面には該第1セレーションに嵌合する第2セレーションが形成されている請求項1記載の衛生器具。
【請求項3】
前記衛生器具本体は、前記脚部の内周面から内側に向けて突出する鍔部を有し、
前記接続ソケットは内周面を連通口にしたリング形状であり、
前記固定具は、前記接続ソケットの外周面より外方に突出する弾性体からなり、弾性変形により該鍔部を上下方向に通過可能であり、該鍔部の上面に係止する係止部を有する請求項1記載の衛生器具。
【請求項4】
前記接続ソケットは、内周面を連通口にしたリング形状であり、電磁石が組み付けられており、
前記固定具は前記脚部の内周面に固定され、該電磁石の電磁力により保持可能である請求項1記載の衛生器具。
【請求項5】
前記固定具はリング形状であり、磁着可能である請求項4記載の衛生器具。
【請求項6】
前記接続ソケットは内周面を連通口にしたリング形状であり、前記据付面に固定された際の周縁上部に一定間隔で設けられた複数の凹部と、各該凹部の下端角部から外周面の一方向に伸びて設けられた係止溝とを有し、
前記固定具は前記脚部の内周面から内側に突出し、該係止溝に係止可能な複数の係止片である請求項1記載の衛生器具。
【請求項7】
前記接続ソケットは、内周面を連通口にしたリング形状であり、外周部が弾性体により形成され、外周面に設けられた嵌合溝を有し、
前記固定具は、前記脚部の内周面から内側に突出し、該嵌合溝に嵌合可能な嵌合片である請求項1記載の衛生器具。
【請求項8】
前記衛生器具本体は、前記器具排出管の軸芯に対して対称形状である請求項1乃至7のいずれか1項記載の衛生器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−37783(P2010−37783A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200694(P2008−200694)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】