説明

衛生洗浄装置

【目的】洗浄水を肛門内部に送り込んで便を軟化させ、或は腸を刺激し排便を促す機能を備えた簡易型の衛生洗浄装置を提供する。
【構成】内部に水路(4)を形成するグリップ(1)の先端部(1a)から導水管(2)を延設し、後端部(1b)に接続する送水管(3)から送られる洗浄水を前記水路(4)を通して前記導水管(2)に送る一方、該導水管(2)の先端部には上向きに噴射ノズル(5)を立ち上げ、その先端部に開設する噴射口(7)から前記洗浄水を噴出可能にする。そして、使用に当っては前記グリップ(1)を持つ手の操作で前記ノズル(5)を肛門の直下に臨ませた状態で洗浄水を噴射し汚れを洗浄する一方、前記ノズル(5)を肛門を通して腸内部に挿入した後噴射することで腸内部の宿便を軟化させ、或は腸を刺激して排便を誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器に付属的に設備する簡易型の衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器に衛生洗浄装置を設備することは既に一般的になっており、目新しいことではなくなっている。ここで使用されている衛生洗浄装置は、基本的な構造として噴射ノズルを備えた導水管を有し、この導水管に洗浄水を供給するポンプと、不使用時に排便,排尿の支障にならないように例えば便器の後部に後退させ、使用時には後退位置から便器の中央部に進出させて噴射ノズルからの洗浄水を適切に肛門に向けて噴射できるように出没操作する前記導水管の駆動装置とを備えるもので、通常は使用時に導水管を便器の中央部に進出したのを見計らって噴射ノズルから洗浄水を噴射し、使用終了時に洗浄水の噴射を止めると共に、導水管を後退位置に戻して格納する構造のもになっている。
【0003】
便器備え付けの衛生洗浄装置において、上記導水管を格納することは用便の際に便器の使用が妨げられることなく衛生的に使用するためであり、この格納方法には便器の後部に備えて、導水管を前後方向に伸縮させ、不使用時には収縮させて後方に引き込めるもの、或は導水管の基端部を中心にして旋回可能に支持し、不使用時には先端部を一側方に回転させて便器の側辺部に添わせ、格納するもの等がある。これらのものには例えば前者の例として特許文献1のものがあり、後者のものとして特許文献2,3のもの等がある。
【特許文献1】特開2002−161568号公報。
【特許文献2】特開2002− 16157号公報。
【特許文献3】特開2002−332676号公報。
【0004】
上記特許文献記載の衛生洗浄装置は、そのいずれのものも便器設置型のものである。これらは排便による汚れを肛門表面に洗浄水を噴付けることで洗浄することを目的としたもので、専ら肛門及びその周辺に洗浄水を噴射することで付着する汚れを洗い流すものである。
しかし、ここで使用される洗浄水は、単に汚れを洗浄するだけでなく便秘症において腸内における宿便を軟化させたり、排便を誘導するためにも有効に活用することができるものである。
【0005】
前述する便器設置型の衛生洗浄装置においても、洗浄水の噴射力を高めることにより肛門外から洗浄水を腸内部に送り、宿便の軟化に利用することが可能であるが、この場合相当な噴射力が必要となる。しかも、この時には肛門に向けて正確に噴射しなければならず、肛門を外れたときにはその周辺に噴射されて洗浄水は圧力によって飛散し、体の表面や便器の周辺を汚損することになる。
従って、肛門に向けて洗浄水を噴付け、汚れを洗浄するタイプの衛生洗浄装置は、便秘解消のため腸内に洗浄水を送り込むことができない訳ではないが、実際問題として適しておらず、利用することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は上述の事情から排便後の洗浄の外に、便秘症によって腸内に溜る宿便を軟化させ、或は排便を誘導するため洗浄水を肛門を通して腸内部に送り込めるようにした衛生洗浄装置を提供しようとするものである。
また本発明は、使用者が手動操作によって安全に噴射ノズルを局部に挿入し、且つ水量を調節可能にして安心して使用できるようにした簡易型の衛生洗浄装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、使用者が直接手に持って操作することのできるグリップを備え、その先端部にグリップの内部を通る水路と連通させた導水管を延設し、この導水管の先端部に肛門を通して腸内部に挿入することができる噴射ノズルを立ち上げる一方、前記水路を通して導水管に洗浄水を供給する送水管をグリップ後端部に接続してポンプを通して圧送される洗浄水を前記噴射ノズルから噴き出させ、肛門及びその周辺を洗浄することができるようにすると共に、前記噴射ノズルを肛門内部に挿入することによって腸内部に洗浄水を注入し、宿便の軟化、更には腸に刺激を与えて排便を誘導するようにした簡易型の衛生洗浄装置を提供することにある。
【0008】
更に詳述すれば、本発明は内部に水路を形成するグリップの先端部に上記水路に連通させて導水管を延設し、該導水管の先端部に肛門内部に挿入が可能な噴射ノズルを立ち上げる一方、前記グリップの後端部には送水ポンプに接続する送水管を接続して上記送水ポンプからの圧力洗浄水を前記導水管を通して前記噴射ノズルから噴出し、肛門及びその周辺部の洗浄、並びに肛門内部への洗浄水の注入を可能にしてなることを特徴とした衛生洗浄装置を提供することにある。
【0009】
また本発明は、前記導水管は所要剛性を有するパイプ材とすると共に、基端部から先端部に向けて上向きに屈曲乃至湾曲させてなることを特徴とした衛生洗浄装置を提供することにある。
【0010】
また本発明は、前記噴射ノズルは先端部の外形を半球形の曲面状に形成し、該先端部曲面部分に1又は2以上の噴出口を開設してなることを特徴とした衛生洗浄装置を提供することにある。
【0011】
また本発明は、前記グリップには水路を開閉する弁装置を備えることを特徴とした衛生洗浄装置を提供することにあり、更には前記送水管の途中には洗浄水を加熱するヒータを備えることを特徴とした衛生洗浄装置を提供することにある。
【0012】
上記本発明の衛生洗浄装置における前記グリップは手に持って操作するためのものであり、これには握り易い太さの筒形のものが適当であり、この場合、中空部分を水路にしてグリップの先端部で導水管に接続し、また後端部において送水管に接続して送水管からの洗浄水をグリップの内部を通して導水管に送り込めるようにすることになる。
また前記弁装置については、送水管の基端に接続して遠隔的に弁を開閉操作し、送水管への洗浄水の送水,停止を行ってもよいが、グリップに弁機構を備えて手動操作によって開閉操作し、噴射ノズルからの洗浄水の噴出を制御するようにしてもよい。
【0013】
上記弁機構として例えばグリップを横に貫くように棒状の弁部材を摺動自由に備えて水路を横断させ、不使用時にはこの弁によって水路を遮断し、また使用に当っては上記弁部材を押込みを通して弁部材に形成する開口部を水路に連通させ、導水を図る構造を採ることもできる。
【0014】
グリップの先端部から延設する導水管は、先端に備える噴射ノズルを肛門の直下に臨ませ、更にはこの噴射ノズルを肛門を通して腸の内部に挿入するためグリップを握る手の位置から上記噴水ノズルを肛門の直下に届けることができる長さに設定することになる。また、この導水管は使用者の腰の位置から肛門の直下の位置に楽に噴水ノズルを差しのべられるように上向きに湾曲乃至屈曲する構造にすることになる。
また更に、この導水管は洗浄水を噴射するノズルを肛門の直下に支持し、更にはグリップの操作によって上記ノズルを肛門を通して腸内部に挿入することからこの挿入を可能にする強度と剛性が求められることになる。
【0015】
一方、導水管の先端に設けられる噴射ノズルは導水管から起立した状態で形成される。そして、その先端部は肛門への挿入を容易にするため半球状の曲面形にして、この曲面形部分に噴水口を開設することになる。
上記噴水口は1個であってもまた複数個であってもよい。ただ、肛門を洗浄する上から主たる噴水口はノズルの起立方向に向けて洗浄水を噴射できる構造のものとされる。
【0016】
洗浄水の供給は送水管を通して行われることになる。送水管は便器に送られる上水道水を受けるため上水道管に接続される。そして、この上水道管との間に洗浄水を加温するためのヒータ設備を介挿し、適宜の温度に加温した洗浄水を噴射ノズルに供給することになる。
尚、上記送水管にはフレキシブルなパイプ材であって、出来れば伸縮性のあるスパイラル管等が適している。
【0017】
本発明に係る衛生洗浄装置は、洗浄水の供給を受けることから水洗便器を対象に設備されることになるが、不使用時には用便の妨げとならないように便器の外に形成する格納部等に収容して保管し、使用に当っては上記格納部等から取出し、グリップを握って使用者の背後から肛門直下に向けて導水管を差し入れるようにして使用することになる。
通常の状態での使用は、上記の作業によって導水管の先端の噴射ノズルが肛門の直下に達したところで、弁装置を操作し、洗浄水を肛門に向けて噴き付けることで行うことになる。
【0018】
一方、排便に先立って使用者が便秘症によって排便が困難な状態にある場合には、弁装置によって噴射ノズルから洗浄水が噴出する状態を保ってグリップ操作によってこのノズルを肛門内に差し入れ、腸の内部において所要量の洗浄水を噴出させ、水分を失って硬化している宿便を軟化させることになる。
この腸内部での噴水は宿便を軟化させることに併せて腸を刺激することになるため排便を誘発することになり、便秘を有効に解消することになる。
【0019】
尚、腸内での洗浄水の噴出は使用者の弁操作によって行うことになるが、便の軟化状態や排便の感覚は使用者自身が感じ取ることができるので、洗浄水の噴出強さや量の調整は使用者の手元、つまりグリップで直接行うことになる。従って、弁装置はグリップを離れた位置に置いて遠隔的な操作によって制御しても良いが、好ましくは前述したようにグリップに弁装置を設備し、指の操作で行えるようにすると便利である。
【発明の効果】
【0020】
本発明衛生洗浄装置は上述の如く構成され、使用されるものであることから、その洗浄操作は使用者が自らの操作で行うことになるが、洗浄水の噴射位置を感覚的に確認することができるため正確に洗浄することができ、しかも不要に洗浄水を使用することがなく適切に洗浄することができることになる。
【0021】
その一方、本発明衛生洗浄装置は、噴射ノズルを肛門内部に挿入して腸内部において硬化し、宿便状態にある便に対して洗浄水を噴き付けることができることから、これを軟化させることができ、また洗浄水の排出に併せて排便を誘導することができることから便秘の解消にも有効に活用することができる利点がある。
そして、この肛門に対する噴射ノズルの挿入に当っては使用者自らの手作業によって行うことから無理な挿入を回避できることは勿論のこと、ノズル先端が球面形に形成され、しかも洗浄水をこの球面部分から噴出させた状態において行うことができることから円滑な挿入が可能であり、損傷等を未然に防止できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明に係る衛生洗浄装置について図面に示す実施例に基づき更に詳述することにする。
図1は、衛生洗浄装置の要部の斜視図であり、図2は一部欠截する要部の縦断側面図である。図面において符号1は衛生洗浄装置のグリップであり、2はこのグリップの先端部1aから延設した導水管であり、3はグリップの後端部1bに接続した送水管である。
【0023】
グリップ1は内部を中空にした筒形に形成してあり、中空部を水路4にしてこの水路を導水管2と送水管3にそれぞれ連通させて送水管3から送られる洗浄水を水路4を通して導水管2に送ることができるようにしてある。
上記導水管2は長さの途中から上向きに湾曲させて先端部に洗浄水を噴射するノズル5を起立する。
【0024】
ノズル5は先端に向けて徐々に縮径する円錐形に形成して中心部に前記導水管内部と連通する水路6を形成し、この水路の一端を先端部において開口させて噴水口7を形成している。
上記噴水口7が開口する先端部5aは半球形をなす球面形に形成して丸みを持たせてあり、その中心部に噴水口7が開口するようにしてある。
尚、ここでは噴水口7を1個としているが、この噴水口7の近傍に第2,第3の噴水口を各開設してそれぞれ水路6に連通させ、複数の噴水口から洗浄水を噴出させるようにしてもよい。
【0025】
図中、8は洗浄水の流れと流量を調整するグリップ1に備えた弁装置であり、9は流量調整用の弁部材である。
弁装置8はグリップ1に対して横向きに穿って内部を通る水路4を横断する円孔10に丸棒状に形成する上記弁部材9を嵌め込むことによって形成してあり、弁部材9には開放時に前記水路4を開く通水口11が設けてある。
この弁部材9は下端と円孔10の底部12との間にバネ13を縮設し、常にはこのバネ13の付勢によって上昇位置に保持して前記通水口11と水路4とを喰い違い位置において水路を遮断し、閉止する。そして、グリップ1の表面から突き出す弁部材9の上端を押圧してバネ13に抗して押込むことで通水口11を水路4に連通させ、開放することができるようにしてある。
【0026】
送水管3は、ここには図示しないが、水洗便器に配設される上水道管に接続して洗浄水の供給が受けられるようにし、また供給される洗浄水を加温するため上記上水道管との間、若しくは送水管3の途中に加熱ヒータを介挿して使用者の好みに合せた温度に加温できるようにする。
尚、この送水管3は、便器から離れた位置でグリップ1を操作することから、この操作の妨げとならない長さに形成することになる。また撓み性を有したパイプ素材によって形成して円滑な操作を可能にすることになる。また好ましくは、使用しない場合にこの送水管3が邪魔にならないようにスパイラル状にした伸縮自由な管、例えばプラスチック製のパイプ材にするとよい。
【0027】
この様にして形成された本発明衛生洗浄装置は、使用しない場合、便器外部に装備する格納部(図示せず)に収容して用便の妨げとならない位置に保管する。そして、使用する際には上記格納部から取り出し、グリップ1を操作して導水管2の先端を使用者の臀部の下に侵入させ、噴射ノズル5が肛門の直下に達したところで弁装置8を操作して洗浄水を噴き付け、汚れを洗浄することになる。このとき、弁装置8の操作はグリップ1を握る手の指、例えば親指を使って弁部材9の端部を押込むことで行うことになる。
【0028】
上記洗浄操作は使用者の洗浄感覚によって打切ることになるが、洗浄水の噴射は弁部材9の押込み加減によって噴射力,量を調節することになる。そして、この噴射は弁部材9から指を離すことによって自動的に止められる。
【0029】
一方、便秘に対する排便の誘導に当っては先ず肛門の外で洗浄水の噴射を行い、肛門及び噴射ノズル5を湿潤させた状態に保ち、次にこのノズルを肛門内に挿入し、その後弁装置8の操作で洗浄水を腸内部で噴射させることによって行うことになる。つまり、浣腸の要領により洗浄水を直腸内部に注入し、宿便を軟化させ、併せて洗浄水の噴出で腸を刺激して排便を誘導するのである。
【0030】
この腸内部への洗浄水の注入に当っては、洗浄水の温度を調節したり、注入量,注入強さを調節することによって使用者の不快感を取り除くことになるが、これらの操作、特に注入量の調節,注入強さの調整はグリップ1に装備する弁装置8を使用者自らが直接行うことになる。従ってこの様なことから安全に、且つ快適に行うことができることになる。
尚、上記肛門への噴射ノズル5の挿入に当って皮膚等の損傷を回避するため、この噴射ノズル5の部分につき導水管2の部分とは異なる軟質の合成樹脂で成形し、柔軟性を高めたものとするとよい。
【0031】
以上説明の通り、本発明衛生洗浄装置によると、グリップ1を持つことによる手動操作によって任意の位置に噴射ノズル5を向けることができることから的確に汚れた部分を洗浄することができると同時に、この手動操作に併せて弁装置8を操作して洗浄水の噴水量,噴水強さを調整することもできるので快適に洗浄操作をすることができる。
【0032】
また、この洗浄装置は、肛門に向けて噴射ノズル5を挿入して直接腸内部に洗浄水を噴射注入することができることから、便秘症における宿便の軟化、腸に対する刺激によって排便を誘導する等浣腸の効果を挙げることができ、しかもこのときの洗浄水の注入操作を使用者自らが行うことができることから安全に、また快適に使用することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る衛生洗浄装置の要部の斜視図。
【図2】要部の一部欠截せる縦断側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 グリップ
2 導水管
3 送水管
4 水路
5 噴射ノズル
5a 噴射ノズルの先端部
6 噴射ノズルの水路
7 噴射口
8 弁装置
9 弁部材
10 円孔
11 通水口
13 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水路を形成するグリップの先端部に上記水路に連通させて導水管を延設し、該導水管の先端部に肛門内部に挿入が可能な噴射ノズルを立ち上げる一方、前記グリップの後端部には送水ポンプに接続する送水管を接続して上記送水ポンプからの圧力洗浄水を前記導水管を通して前記噴射ノズルから噴出し、肛門及びその周辺部の洗浄、並びに肛門内部への洗浄水の注入を可能にしてなることを特徴とした衛生洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衛生洗浄装置において、導水管は所要剛性を有するパイプ材とすると共に、基端部から先端部に向けて上向きに屈曲乃至湾曲させてなることを特徴とした衛生洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の衛生洗浄装置において、噴射ノズルは先端部の外形を半球形の曲面状に形成し、該先端部曲面部分に1又は2以上の噴出口を開設してなることを特徴とした衛生洗浄装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の衛生洗浄装置において、グリップには水路を開閉する弁装置を備えることを特徴とした衛生洗浄装置。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の衛生洗浄装置において、送水管の途中には洗浄水を加熱するヒータを備えることを特徴とした衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−223290(P2008−223290A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61141(P2007−61141)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(507025342)ボーソーハチミツ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】