説明

衛生洗浄装置

【課題】小型化及びコンパクト化が出来且つ、洗浄位置が安定したノズルユニットを構成し、ケーシングと取付けることが出来る衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】給水口から洗浄水を取り込む給水手段と、洗浄水に脈動を付加する脈動発生手段40と、脈動発生手段40から供給される洗浄水を複数の流路に選択的に供給する流調流路切換弁42と、脈動発生手段40によって脈動を付加された洗浄水を人体に噴出する洗浄ノズル44と、洗浄ノズル44を出し入れするノズル駆動手段50と、脈動発生手段40、流調流路切換弁42及び洗浄ノズル44とが取り付けられるノズルマウント55とノズルマウント55を収納するケーシングを備えた衛生洗浄装置であって、洗浄ノズル44が取付けられているノズルマウント55に、脈動発生手段40及びノズル駆動手段50の重心が洗浄ノズル44の伸出方向の軸に対し対称に取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱された洗浄水を人体に向け吐出する衛生洗浄装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置がよく知られている。この種の衛生洗浄装置では、熱交換器により温水化された洗浄水に脈動を付加させ、少ない洗浄水量で洗浄感と洗浄力を得るための脈動発生手段を備える。また洗浄水を人体に吐出する洗浄ノズルを収納位置と洗浄位置との間で進退させるようになされている。非使用時には洗浄ノズルをケーシング内の収納位置に収め、使用時には洗浄水の吐出方向が便座に着座した使用者に向かう方向となるような洗浄位置に洗浄ノズルをノズル駆動手段によって移動することで使用の便宜を図っている。また、洗浄ノズルのノズル駆動手段による進退の利用により、洗浄中に洗浄ノズルを微小距離移動させて洗浄位置を変えながら洗浄するような態様(いわゆるムーブ洗浄)を採用した衛生洗浄装置も製品化されている。
【0003】
このように、衛生洗浄装置において洗浄ノズルを伸出させるために、位置調節用モータ等のノズル駆動手段が用いられるが、例えば位置調節用モータを使用した場合、高トルクのものが必要になり、位置調節用モータのサイズは比較的大きなものとなる。従って収納上、極めて大きな収納スペースを必要としていた。
【0004】
これに対し、特許文献1のように、脈動発生手段であるポンプ・流量調整弁・ノズル駆動手段・洗浄ノズルが支持部材を介し、ユニットとして一体化することで、小型化及びコンパクト化、更には組み立て性を向上させている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、ノズル駆動手段が洗浄ノズル又は洗浄ノズルが取り付けられているノズルマウントの直下にノズル駆動手段が収納されている構成のため、洗浄ノズルの高さをノズル駆動手段の取付け高さ以下にする構造をとれない懸念があった。
また洗浄ノズルが取り付けられているノズルマウントの側面に重量のあるノズル駆動手段を取付けるとノズルの重心が駆動手段側に偏り、洗浄位置に影響を与える懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−100255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
小型化及びコンパクト化が出来且つ、洗浄位置が安定したノズルユニットを構成し、ケーシングと取付けることが出来る衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、給水口から洗浄水を取り込む給水手段と、洗浄水に脈動を付加する脈動発生手段と、脈動発生手段から供給される洗浄水を複数の流路に選択的に供給する流調・流路切換弁と、脈動発生手段によって脈動を付加された洗浄水を人体に噴出する洗浄ノズルと、洗浄ノズルを出し入れするノズル駆動手段と、脈動発生手段、前記流調・流路切換弁及び洗浄ノズルとを一体的に構成するノズルマウントと、ノズルマウントを収納するケーシングを備えた衛生洗浄装置であって、洗浄ノズルが取付けられているノズルマウントに、脈動発生手段及びノズル駆動手段の重心が洗浄ノズルの伸出方向の軸に対し対称に取付けられた構成である。
【0009】
第1の発明によれば給水口から洗浄水を取り込む給水手段と、洗浄水に脈動を付加する脈動発生手段と、前記脈動発生手段から供給される洗浄水を複数の流路に選択的に供給する流調流路切換弁と、前記脈動発生手段によって脈動を付加された洗浄水を人体に噴出する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを出し入れするノズル駆動手段と、前記脈動発生手段、前記流調流路切換弁及び前記洗浄ノズルとを一体的に構成するノズルマウントと、前記ノズルマウントを収納するケーシングを備えた衛生洗浄装置であって、前記洗浄ノズルが取付けられている前記ノズルマウントに、前記脈動発生手段及び前記ノズル駆動手段の重心が前記洗浄ノズルの伸出方向の軸に対し対称に取付けられていることを特徴とする。
【0010】
この脈動発生手段及びノズル駆動手段の取付け構造によれば、ノズル駆動手段が洗浄ノズルに対し左右どちらかの側面に置くことができる。そのためノズルの高さ方向の制約がなくなり、衛生洗浄装置の小型化及びコンパクト化が容易になる。また、ノズルマウントを介し、洗浄ノズル、脈動発生手段及びノズル駆動手段をユニットとして一体的に取り扱うことができるので、衛生洗浄装置の組み立て性の向上が図られるとともに検査工程が容易になる。
またケーシングに上記構成部品の重心がノズルマウントを介し対称にとりつくことで、洗浄ノズル伸出時の左右方向のガタツキが軽減され、快適な吐水を提供することができる。
【0011】
また、第2の発明によれば脈動発生手段は、洗浄水の給水経路の一部をなすシリンダと、前記シリンダ内で往復運動し、その往復運動により洗浄水の流れに対して脈動を起こして洗浄水を前記シリンダ下流に圧送するプランジャと、前記プランジャを往復運動させる電磁ソレノイドと、前記ソレノイドを励磁する励磁手段と前記プランジャに設けられ、下流側への洗浄水の通過を許容する逆止弁とを有し、前記脈動発生手段の往復運動の方向が前記洗浄ノズルに対し並行に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
脈動発生手段の振動方向が洗浄ノズルの伸出方向に対し並行に取り付けられることによって脈動発生手段から発生した振動による洗浄吐水の左右ブレを極力小さくすることができる。
【0013】
また第3の発明によれば、脈動発生手段、流調・流路切換弁が洗浄ノズルの伸出方向の軸に対し、給水手段が設置される側に取り付けられたことを特徴とする。
【0014】
流調流路切換弁が洗浄ノズルの伸出方向の軸に対し、給水手段が設置される側に取り付けられたことにより、脈動発生手段から洗浄ノズルまでの流路が最短となるので、脈動発生手段によって洗浄水に付加された脈動が減衰し難くなり、洗浄水に脈動を付加することによって生成される快適な洗浄を使用者に提供することができる。
【0015】
また、第4の発明によれば、脈動発生手段と流調・流路切換弁は一体化され、防振部材を介してノズルマウントに取り付けられたことを特徴とする。
【0016】
脈動発生手段と流調流路切換弁が一体化されたことにより、振動源となる脈動発生手段に対し重量が増加する。そのため振動源の固有振動数が脈動発生手段単体時よりも大きくなり、抑振効果となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様によれば、小型化及びコンパクト化が出来且つ、洗浄位置が安定したノズルユニットを構成し、ケーシングと取付けることが出来る衛生洗浄装置の提供が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態にかかる衛生洗浄装置が備えられたトイレ装置の模式斜視図である。
【図2】本実施の形態にかかる衛生洗浄装置の水路構成を表すブロック図である。
【図3】脈動発生手段の構成を表す断面図である。
【図4】脈動発生装置40による洗浄水の流れの様子を説明する説明図である。
【図5】本実施の形態にかかる脈動発生装置40、流調流路切替弁42、ノズル駆動装置50、洗浄ノズル44のノズルマウント55への搭載の様子を表す概略上視図である。
【図6】本装置の形態にかかるノズルマウント55を表す斜視図である。
【図7】本装置に形態にかかるノズル駆動手段50を表す斜視図である。
【図8】本装置の形態にかかる脈動発生装置40と流調流路切替弁42を一体構成にした脈動流調ユニットを表す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る衛生洗浄装置について説明する。なお、各図面中、同様の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0020】
図1は本発明の実施形態にかかる衛生洗浄装置11が備えられたトイレ装置の様式斜視図である。このトイレ装置は、便器10と、その上に設置された衛生洗浄装置11とを有する。衛生洗浄装置11のケーシング12には開閉可能に軸支された便座13と便ふた14を有する。使用者は便座14の上に腰掛け、局部洗浄の際にはケーシング12に内臓された洗浄ノズル44が伸出し、洗浄ノズル44から吐水された水で局部を洗浄する。
【0021】
図2は、本実施の形態にかかる衛生洗浄装置の水路構成を表すブロック図である。図2に示すように、衛生洗浄装置の水路系は、外部給水源30と接続される給水部35と熱交換器38と脈動発生装置40を備える。そして、脈動発生装置40から流調・流路切替弁42を経て洗浄ノズル44に、脈動発生装置40により付与された脈動を保った洗浄水が導かれ、前記洗浄ノズル44から吐水される。
【0022】
図3の脈動発生手段の構成を表す断面図により、脈動発生手段40を説明する。脈動発生手段40は図3に示すように、給水菅路70、75に接続されるシリンダ40aにプランジャ40bを褶動自在に備える。そしてこのプランジャ40bを電磁コイル40cの励磁制御により、上流側・下流側に進退させる。プランジャ40bは、電磁コイル40cの励磁により図示する原位置(プランジャセット位置)から下流側に移動するが、コイルの励磁が消えると、下バネ40eの復帰力を受けて原位置に復帰する。この際、上バネ40dでプランジャ40bの動作が緩衝される。
【0023】
プランジャ40bは、その内部にエラストマー製の逆止弁40fを有するので、プランジャ原位置から下流側への移動の際には、シリンダ40a内の洗浄水を加圧して給水菅路75に押し流す。この際、プランジャ原位置は一定であることから、一定量の洗浄水が給水菅路75に送られることになる。その後、原位置に復帰する際には逆止弁40fを経てシリンダ40b内に洗浄水が流れ込むので、次回のプランジャ40cの下流側移動により、改めて一定量の洗浄水が給水菅路75に送られることになる。しかも、プランジャ原位置復帰の際には、プランジャ40b下流側、即ち給水菅路70の洗浄水の引き込みが起こるので、この脈動発生装置40はプランジャ40bの往復動に伴って圧力が周期的に上下変動する脈動を引き起こし、洗浄水を脈動流の状態で給水菅路75に流す。
【0024】
図4は、脈動発生装置40による洗浄水の流れの様子を説明する説明図である。この場合、脈動発生装置40によって発生した脈動流は図4に示すように、脈動発生装置40への導入水圧Pin(一次圧)を中心に脈動した圧力で脈動発生装置40から給水菅路75、ひいては洗浄ノズル44に送られて局部に吐水される。しかも脈動発生装置40からその下流に送られる洗浄水圧は上記のようにプランジャ40bの原位置復帰の際の逆止弁40fを経たシリンダ40a内への洗浄水流れ込みにより、ゼロとなることはない。この洗浄水圧の脈動推移は洗浄水流量の推移に反映する。この場合、脈動の中心となる上記の導入水圧Pinは給水部30によって調圧されるので脈動を図4に示す軌跡のまま上下にシフトしたものとできる。
【0025】
この図4に見られる脈動周期MTは脈動発生コイル40cの励磁周期に同期し、この励磁周期の変更制御を通して種々設定可能である。しかも洗浄水の脈動流発生にプランジャ40c往復動のためのコイルの励磁だけで済むので、脈動発生装置40の構成を簡単にすることができる。
【0026】
図5は本発明の実施形態にかかる脈動発生装置40、流調流路切替弁42、洗浄ノズル44及びノズル駆動手段50がノズルマウント55を介して取り付けられた状態を上視した状態を示している。図6は、本装置の形態にかかるノズルマウント55を表す斜視図である。図7は、本装置の形態にかかる脈動発生装置40と流調流路切替弁42を一体構成にした脈動流調ユニットを表す概略斜視図である。
【0027】
図6に示すように、洗浄ノズル44はノズルマウント55に設けられている案内レール部55aに沿うように設置される。図7に示すようにノズル駆動手段50はノズル駆動モータ50aと前記ノズル駆動モータ50aの回転が伝達されるピニオン50bとアウトプットギア50cとケーブルラック(図示せず)とを有し、前記ノズルマウント55に設けられているフランジ55f上でネジによって止められている。ケーブルラックは洗浄ノズル44に連結されており、ノズル駆動モータ50aの正逆回転によるアウトプットギア50cの回転によりその伸出長を変化させる。よって前記洗浄ノズル44はノズル駆動モータ50aの回転に応じて、収納位置と洗浄位置との間を案内レール部55aに沿うようにして前後に進退駆動する。
【0028】
また、ノズルマウント55底面には防振ゴム(図示せず)が取り付けられている。ノズルマウント55は差し込み穴55d、55eにケーシング12に設けた図示しない突出部を差し込むことにより、ケーシング12に対し取り付けられる。
【0029】
さて、脈動発生装置40、流調流路切替弁42は図8に図示するように、脈動発生装置40の吐出側と流調・流路切替弁42の流入側の役割を持った接続部材40gによって脈動発生・流調ユニット60として一体化接続される。この場合、接続部材40g上に脈動発生・流調ユニット60の重心が存在し、フランジ40hによってノズルマウント55に取り付けられる。このようにユニットとして一体化し、振動源の質量を大きくすることに加えて、部材数削減によるコスト低下といった製造上の利点があり、装置の小型化も図ることができる。
【0030】
また脈動発生装置40と流調・流路切替弁42にはフランジ40kフランジ42kをそれぞれ設けられている。前記各フランジ40k、42kは防振ゴム(図示せず)を介し、ノズルマウント55上のボス55b、55cに設置される。この防振ゴムの制振作用により、脈動発生に伴う振動を抑制できると共に、振動による異音発生も抑制できる。
【0031】
さらに洗浄ノズル摺動方向100に対し、脈動発生・流調ユニット60を並行に取り付けることによって、脈動発生装置40のプランジャ40bの摺動方向が洗浄ノズル摺動方向100に対し並行となるので、使用者が局部を洗浄する際、洗浄ノズル44から吐出される洗浄水に対し、前述したプランジャ40bの摺動によって起こる振動による吐水のブレを抑えることができる。
【0032】
脈動・流調ユニット60の重心に対しノズル駆動手段50の重心は、洗浄ノズル摺動方向100を軸に対称に設置される。このことによりノズルマウント55がケーシング12に防振ゴムを介し設置される際に、前後左右のバランスを損ねることがなくなる。また取り付けによる洗浄ノズル44伸出時の左右ブレを抑えることができる。
【0033】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る事は勿論である。
【符号の説明】
【0034】
10 便器
11 衛生洗浄装置
12 ケーシング
13 便座
14 便ふた
30 外部給水源
35 給水部
38 熱交換器
40 脈動発生装置
40a シンリンダ
40b プランジャ
40c 脈動発生コイル
40d 上バネ
40e 下バネ
40f 逆止弁
40g 接続部材
40h フランジ
40k フランジ
40k フランジ
42 流調・流路切換弁
44 洗浄ノズル
50 ノズル駆動手段
50a ノズル駆動モータ
50b ピニオン
50c アウトプットギア
55 ノズルマウント
55a 案内レール部
55b ボス
55c ボス
55d 差し込み
55e 差し込み
55f フランジ
60 脈動・流調ユニット
100 洗浄ノズル摺動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水口から洗浄水を取り込む給水手段と、洗浄水に脈動を付加する脈動発生手段と、前記脈動発生手段から供給される洗浄水を複数の流路に選択的に供給する流調流路切換弁と、前記脈動発生手段によって脈動を付加された洗浄水を人体に噴出する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを出し入れするノズル駆動手段と、前記脈動発生手段、前記流調流路切換弁及び前記洗浄ノズルとが取り付けられるノズルマウントと前記ノズルマウントを収納するケーシングを備えた衛生洗浄装置であって、
前記洗浄ノズルが取付けられている前記ノズルマウントに、前記脈動発生手段及び前記ノズル駆動手段の重心が前記洗浄ノズルの伸出方向の軸に対し対称に取付けられていることを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記脈動発生手段は、洗浄水の給水経路の一部をなすシリンダと、前記シリンダ内で往復運動し、その往復運動により洗浄水の流れに対して脈動を起こして洗浄水を前記シリンダ下流に圧送するプランジャと、前記プランジャを往復運動させる電磁ソレノイドと、前記ソレノイドを励磁する励磁手段と前記プランジャに設けられ、下流側への洗浄水の通過を許容する逆止弁とを有し、
前記脈動発生手段の往復運動の方向が前記洗浄ノズルに対し並行に取り付けられている請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記脈動発生手段、前記流調流路切換弁が、前記洗浄ノズルの伸出方向の軸に対し、給水手段が設置される側に取り付けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記脈動発生手段と前記流調流路切換弁は一体化され、防振部材を介してノズルマウントに取り付けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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