説明

衛生用紙入りカートン

【課題】生産速度を上げても衛生用紙収納用カートンに変形が生じ難く、生産性の向上を図ることが可能な衛生用紙入りカートンを提供する。
【解決手段】本発明の衛生用紙入りカートン100は、箱の少なくとも一の面1aに取出口10を形成するための切取部13が形成されている衛生用紙収納用カートン101と、衛生用紙収納用カートン101の内部に収納された複数の衛生用紙107と、を備えた衛生用紙入りカートン100であって、衛生用紙収納用カートン101には、取出口10から所定距離離れた略全周に亘って、取出口10を囲うように押し罫15が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用紙入りカートンに関する。さらに詳しくは、取出口の構造強度を向上させて破れ等の破損を抑制するとともに、生産速度を上げてもカートンに変形が生じ難く生産性の向上を図ることが可能な衛生用紙入りカートンに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭やオフィス等で広く使われているティシュペーパー等の衛生用紙を収納したカートンは、一般に、概ね直方体の箱の一面(通常は箱の上面)に、ティシュペーパーを取出すための取出口を設けた構造を有するものである。使用者は、箱の一面に設けられている所定形状のミシン目状切込線に沿って切取片を切り離し、細長い取出口(開口部)を形成し、そこからティシュペーパーを取出す。そして、通常、その取出口の内面には、取出口を被覆するポリエチレンフィルム等のフィルムが貼着され、フィルムの中央部には直線状のスリットが設けられており(例えば、特許文献1参照)、内容物であるティシュペーパーは、上記フィルムのスリットを通して外部へ引出される。
【0003】
ティシュペーパーは、多くの場合二枚一組とされ、その一組が継続してカートン内部から取出せるように交互に折り重ねられて収納され、スリットからティシュペーパー一組が引出されたときに、次のティシュペーパー一組が箱の内部からスリットに保持される位置まで引出されるように、所謂ポップアップ方式で折り畳まれている。箱の内面に貼着した上記フィルムは、外部の塵や異物に対して内容物を保護するとともに、ティシュペーパーを外部に取出す際に、フィルムのスリット間での摩擦により、所謂ポップアップしたティシュペーパーが箱の内部に落ち込むことを防ぎ、ティシュペーパーを所定位置に保持する役割を果たしている。
【0004】
これに対し、ポリエチレンフィルム等のフィルムの材料コスト及び同フィルムを箱に貼りつける工程を省く目的で、取出口内面にフィルムを貼着しない構造の、所謂フィルムレスカートンが提案されている(例えば、特許文献2〜4、及び非特許文献1参照)。
【0005】
また、このようなフィルムレスカートンにおいては、箱の長手方向に細長く、略ひし形に形成した取出口の長手方向両端部を特定の角度形状に開口させることで、取出し中のティシュペーパーを取出口の両端部で保持できるようにして、箱内部への落ち込みをなくしたティシュペーパー入りカートンが提案されている(例えば、特許文献5参照)。さらに、取出口の形状をひし形に限定しないで、取出口の両端縁にスリットを形成してティシュペーパーを挟むようにしたカートンも提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0006】
さらに、カートンにおける取出口を形成する切取部が、この取出口を有する面の長辺方向の基準線に対し、傾斜角度θだけ傾いて配置されていることを特徴とするフィルムレスカートンも提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0007】
容器包装の廃棄物について、消費者の分別排出、自治体の分別収集、事業者のリサイクル責任を明確にした「容器リサイクル法」が1997年から本格施行され、循環型経済社会の構築に向けた動きが加速していることに鑑みれば、ティシュペーパー、キッチンペーパー等の衛生用紙の使用済みカートンを廃棄するとき、取出口に貼着したプラスチックフィルムをカートン本体からひき剥がし、分別して廃棄しなければならないことは、廃棄時の手間となり、問題である。上記フィルムレスカートンは、この問題を解決するものといえる。
【特許文献1】実公昭41−6464号公報
【特許文献2】実開昭57−167080号公報
【特許文献3】特開平9−150871号公報
【特許文献4】実開平4−80878号公報
【特許文献5】実開平6−72883号公報
【特許文献6】特開平9−30573号公報
【特許文献7】特開2005−225563号公報
【非特許文献1】王子製紙広報誌「森の響」、王子製紙広報室、2003年6月20日発行、夏号、P25−26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のカートンは、生産性向上の観点から、カートン(用紙)の強度向上という改善すべき課題を有していた。即ち、本出願人の特許文献7や非特許文献1によるフィルムレスカートンは、カートン用紙(多層構造を有する厚紙)を所要の展開形状に打ち抜き、折れ線や切込線を入れて、カートンブランクを形成し、そのカートンブランクを、折れ線に沿って折って直方体形状に組み立てる、という工程を経て製造され、その工程の中で、別途、折り畳んだティシュペーパーを、組み立てた衛生用紙収納用カートンの中へ収めることにより、衛生用紙入りカートンが得られるが、ティシュペーパーを収める前の組み立てたあるいは組み立てようとする衛生用紙収納用カートンの強度が不十分であることから、生産速度を上げると、衛生用紙収納用カートンを組み立てる際にあるいはティシュペーパーを収める際に、衛生用紙収納用カートンに坐屈や凹み等の変形が生じ、不良品が発生し易く、生産性の向上に限界が生じていたのである。
【0009】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、生産速度を上げても衛生用紙収納用カートンに変形が生じ難く生産性の向上を図ることが可能な、衛生用紙入りカートンを提供することにある。研究が重ねられた結果、以下に示す手段によって、上記目的が達成できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明によれば、箱の少なくとも一の面に、取出口を形成するための切取部が、前記取出口の形状に沿って配設された切込線によって形成されている衛生用紙収納用カートンと、前記衛生用紙収納用カートンの内部に収納された複数の衛生用紙と、を備えた衛生用紙入りカートンであって、前記衛生用紙収納用カートンには、前記取出口から所定距離離れた略全周に亘って、前記取出口を囲うように押し罫が形成されている衛生用紙入りカートンが提供される。
【0011】
本発明の衛生用紙入りカートンは、上記したように、衛生用紙収納用カートンと、この衛生用紙収納用カートンに収納した衛生用紙とを備えたものである。
【0012】
本発明の衛生用紙入りカートンは、生産速度を上げてもカートンに変形が生じ難く生産性の向上を図ることができる。また、衛生用紙を収納した状態で使用するに際し、押し罫によりカートンの歪みが抑制され、カートンの型崩れを良好に防止することができる。
【0013】
なお、本明細書において、カートンとは、木材パルプ、古紙等を原料とする厚紙等の紙材料を主体に製造した収納箱のことであり、主にティシュペーパー、ペーパータオル、等の衛生用紙を収納した収納箱のことである。また、本明細書において、衛生用紙とは、ティシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙等と呼ばれるもの)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンペーパー等)、トイレットペーパー(ロールを除く)、ワッティング(紙綿)等の使い捨て紙を総称する概念である(例えば、紙パルプ技術便覧第5版、第459頁参照、1992年1月30日発行、紙パルプ技術協会編集・発行)。
【0014】
なお、本発明の衛生用紙入りカートンは、取出口から所定距離離れた略全周に亘って形成される押し罫が、一重であってもよいし、二重以上であってもよい。押し罫を形成することによる効果は、形成した押し罫の数に比例して増大する。このため、必要とされる特性を満足することができるように、押し罫の数を決定することが好ましい。
【0015】
また、本発明の衛生用紙入りカートンは、取出口が形成される面上のみに押し罫が形成されているものであってもよいし、取出口を形成する面から、この面に隣接する側面にかけて押し罫が形成されていてもよい。なお、押し罫が衛生用紙収納用カートンの側面にかけてまで形成されている場合には、この側面におけるカートン用紙の強度を向上することができるとともに、取出口が形成される面とこれに隣接する側面とによって構成される角部分の構造強度を向上することもできるため、衛生用紙収納用カートンの立体的な歪みを軽減することができる。
【0016】
また、本発明の衛生用紙入りカートンは、衛生用紙収納用カートンが、取出口を形成する面の内側に、取出口を被覆するフィルムが配設されたフィルム付きカートンであってもよく、また、取出口を形成する面の内側に、取出口を被覆するフィルムが配設されていないフィルムレスカートンであってもよい。衛生用紙収納用カートンがフィルムレスカートンである場合には、上記効果に加えて、取出口の構造強度を向上させて破れ等の破損を抑制することができる。
【0017】
また、衛生用紙収納用カートンがフィルムレスカートンである場合には、複数の衛生用紙が衛生用紙収納用カートンの内部にその一部が交互に折り重なるようにして収納されており、切取部が細長い形状であって、その長手方向の中心線が衛生用紙の折り畳み線に対して傾斜角度θ傾いていることが好ましい。このように構成することによって、衛生用紙、例えば、ティシュペーパーを一組ずつポップアップ方式で継続してスムーズに取出すことが可能となる。
【0018】
なお、切取部が傾斜角度θ傾いた状態で形成されている場合には、切取部の長手方向の中心線と衛生用紙の折り畳み線とがなす傾斜角度θが、−90°<θ≦−5°又は5°≦θ<90°であることが好ましく、−60°≦θ≦−5°又は5°≦θ≦60°であることがさらに好ましい。傾斜角度θが、−5°を超え且つ5°未満であると、傾斜角度θが小さすぎ、取出口を傾斜させることによる効果が小さくなり、例えば、引出された次の衛生用紙の保持が困難になることがある。一方、傾斜角度θが−90°又は90°であると、取出口が完全に横に向いてしまうため、例えば、衛生用紙の取出しが困難になることがある。
【0019】
また、本発明の衛生用紙入りカートンにおいては、切取部の形状が、長円形状であることが好ましい。このように構成することによって、切取部の形状が比較的に簡易なものとなり、取出口を開封する際に、切取部が摘み易く開封が容易であり、取出口の層間剥離等を有効に抑制することができる。また、開封後に、取出口の中央部から指を容易に差し入れることができ、確実に最初の一枚を摘み上げることができる。
【0020】
また、上記したように、衛生用紙が衛生用紙収納用カートンの内部にその一部が交互に折り重なるようにして収納されており、切取部が細長い形状であって、その長手方向の中心線が衛生用紙の折り畳み線に対して傾斜角度θ傾いている場合には、衛生用紙収納用カートンの切取部は、取出口を形成する面における、衛生用紙が交互に折り重なっている部位に相当する範囲内に形成されていることが好ましい。このように構成することによって、折り畳まれて収納されている衛生用紙の一番上の衛生用紙を取出した場合に、この衛生用紙によって引出された次の衛生用紙は、略半分程度引出されたところで、取出口のいずれか一方の端部内周縁によって抑えられて保持される。このため、二組以上の衛生用紙が一度に引出されることがなく、必要な枚数の衛生用紙を衛生用紙収納用カートンから取出すことができる。
【0021】
さらに、本発明の衛生用紙入りカートンは、箱の取出口を形成する面とは反対側の面に、箱の内側に折り曲げることにより、衛生用紙を取出口側に押し上げる底上げ部が、切取部の長手方向の中心線と、底上げ部の長手方向の中心線とが交差するように、底上げ部用切込線によって形成されていることが好ましい。これにより、衛生用紙の最後の一枚まで、取出口から良好に取り出すことができる。また、上記の中心線を交差させることにより、衛生用紙を押し上げてポップアップさせる効果が増大する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の衛生用紙入りカートンは、取出口から所定距離離れた略全周に亘って、取出口を囲うように押し罫が形成されていることから、通常5層程度の多層構造を有するカートン用紙が部分的に圧縮され、カートン用紙の強度が向上する。このため、生産速度を上げても箱に変形が生じ難く生産性の向上を図ることができる。さらに、衛生用紙を収納した状態で使用するに際し、押し罫により衛生用紙収納用カートンの歪みが抑制され、衛生用紙収納用カートンの型崩れを良好に防止することができる。なお、カートン用紙の強度とは、箱の取出口を形成した面が平面を維持しようとする強さを意味する。
【0023】
さらに、本発明の衛生用紙入りカートンは、上記したように、衛生用紙収納用カートンが、取出口を有する面の内側にその取出口を被覆するフィルムが配設されていない、所謂フィルムレスカートンである場合には、廃棄時に紙製カートンとフィルムの分別作業が必要なくなり、環境にやさしい製品である。また、フィルムをなくすことにより、材料費の節約に留まらず、製造工程が短縮でき、省エネルギー、省資源を達成することができる。
【0024】
また、衛生用紙収納用カートンの構造強度を向上することができるため、使用するカートン用紙を薄くすることにより、衛生用紙収納用カートンの製造コストを削減することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明の要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0026】
図1は、本発明の衛生用紙入りカートンの一の実施の形態を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1の衛生用紙入りカートンの衛生用紙収納用カートンの下面板に設けた底上げ部を内側に折り曲げて使用している状態を示している。また、図3は、図1及び図2に示される衛生用紙収納用カートンを組み立てる前のカートンブランクの状態の展開図であり、図4は、図3における丸囲いしたA部分の拡大図である。
【0027】
図1〜図4に示すように、本実施の形態の衛生用紙入りカートン100は、箱の少なくとも一の面1aに、取出口10を形成するための切取部13が、取出口10の形状に沿って配設された切込線11によって形成されている衛生用紙収納用カートン101と、衛生用紙収納用カートン101の内部に収納された複数の衛生用紙107と、を備えた衛生用紙入りカートン100であって、衛生用紙収納用カートン101には、取出口10から所定距離離れた全周に亘って、取出口10を囲うように押し罫15が形成されている。
【0028】
本実施の形態の衛生用紙入りカートン100に用いられる衛生用紙収納用カートン101(以下、本衛生用紙収納用カートン101ということがある)は、木材パルプ、古紙などを原料とする厚紙などの紙材料を主体に製造した箱であって、主にティシュペーパー、ペーパータオル、等の衛生用紙を収納するための箱である。この衛生用紙収納用カートン101は、上面板1、下面板2、左右の側面板3,4、及び組み合わせで1つの端面を構成する端面板6,7によって形成されている。なお、図3に示す衛生用紙収納用カートン101の切取部13には、長手方向の切取部13を中央部近傍で二つに分割するための引剥がし用切込線14が配設されている。
【0029】
本実施の形態の衛生用紙入りカートン100では、衛生用紙107は、継続して衛生用紙収納用カートン101の内部から取出せるように、その一部が交互に折り重ねられた状態で収納されている。なお、本明細書における衛生用紙とは、ティシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙等と呼ばれるもの)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンペーパー等)、トイレットペーパー(ロールを除く)、ワッティング(紙綿)等の使い捨て紙を総称する概念である(例えば、紙パルプ技術便覧第5版、第459頁参照、1992年1月30日発行、紙パルプ技術協会編集・発行)。
【0030】
本実施の形態の衛生用紙入りカートン100の衛生用紙収納用カートン101には、取出口10から所定距離離れた全周に亘って、取出口10を囲うように押し罫15が形成されていることから、通常5層程度の多層構造を有するカートン用紙が部分的に圧縮され、取出口10を形成した面1aが平面を維持しようとするカートン用紙の強度が向上する。これにより、取出口10を形成した面1aには、潰れや坐屈が発生し難くなり、また、衛生用紙収納用カートン101の生産時(組立時)においては、生産速度を上げても変形が生じ難く、生産性の向上を図ることができる。なお、使用時においても、押し罫15により歪みが抑制されるため、衛生用紙収納用カートン101の型崩れを有効に防止することができる。
【0031】
図1及び図2の本実施の形態の衛生用紙入りカートン100は、衛生用紙収納用カートン101として、取出口10を形成する面1aの内側に、取出口10を被覆するフィルムが配設されていないフィルムレスカートンを示しているが、これに限らず、取出口10を形成する面1aの内側に、取出口10を被覆するフィルムが配設される、所謂フィルム付きカートンであってもよい。この場合にも、フィルムレスカートンの場合と同様に、取出口10から所定距離離れた全周に亘って取出口を囲うように形成される押し罫により、カートン用紙の強度が向上し、生産性を上げても箱に変形が生じ難く、生産性の向上を図ることができる。
【0032】
また、図3に示す衛生用紙収納用カートン101は、取出口10を囲うように一重の押し罫15が形成されているが、例えば、図5に示すように、取出口10の全周に亘って、二重の押し罫15が形成されていてもよい。このように構成することによって、取出口10における引っ張りや圧縮の力に対抗する強度をさらに向上することができるとともに、衛生用紙収納用カートン101がより変形し難くなる。
【0033】
取出口10内周縁から押し罫15までの距離については特に制限はないが、例えば、5〜11mmとすることが好ましい。このように構成することによって、衛生用紙収納用カートン101の構造強度を良好に向上することができる。
【0034】
また、図3に示す衛生用紙収納用カートン101は、取出口10が形成される面1a上のみに押し罫15が形成されているものであるが、例えば、図6に示すように、押し罫15が、取出口10を形成する面1aから、この面1aに隣接する側面3a,4a(側面板3,4によって構成される側面)にかけてまで形成されていてもよい。なお、押し罫15が側面3a,4aにかけてまで形成されている場合には、この側面3a,4aにおけるカートン用紙の強度を向上することができるとともに、面1aと側面3a,4aとによって構成される角部分の構造強度を向上することもでき、衛生用紙収納用カートン101の立体的な歪みを軽減することが可能となる。ここで、図5及び図6は、本実施の形態の衛生用紙入りカートンに用いられる衛生用紙収納用カートンの他の例を示す図であり、衛生用紙収納用カートンを組み立てる前のカートンブランクの状態の展開図である。なお、図5及び図6において、図3と同様の各構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
また、図3においては、切取部13の形状が長円形状である場合を示しているが、本実施の形態の衛生用紙入りカートン100においては、取出口10の形状として適した形状であれば特に制限はない。なお、本実施の形態においては、切取部13は滑らかな曲線によって構成されたものであることが好ましい。図3に示すように、切取部13が長円形状に形成されたものであると、切取部13の形状が比較的に簡易なものとなり、取出口10を開封する際に、切取部13が摘み易く開封が容易であり、取出口10の層間剥離等を有効に抑制することができる。また、開封後に、取出口10の中央部から指を容易に差し入れることができ、確実に最初の一枚を摘み上げられる。
【0036】
また、このように取出口10の形状が長円形状の場合には、衛生用紙107を取出す際の抵抗が小さくなり、衛生用紙107の取出しが容易になる。なお、取出口10の形状を長円形状とする場合には、完全な長円形状だけでなく、長円に類する形状、例えば、長円の一部が歪んでいたり直線である形状であればよい。
【0037】
なお、本実施の形態の衛生用紙入りカートン100における切取部13の形状は、必ずしもこのような長円形状に限られるものではなく、例えば、図7に示すような、従来と同じ取出口10を形成する切取部形状であってもよい。ここで、図7は、本実施の形態の衛生用紙収納用カートンの他の例の示す上面図である。なお、図7において、図3と同様の各構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
また、図示は省略するが、切取部の形状が、真円形状等であってもよい。このように切取部13の形状が異なる場合にも、上記した切取部13を細長い形状に形成した場合と同様に、取出口10から所定距離離れた全周に亘って取出口10を囲うように形成される押し罫15により、カートン用紙の強度が向上し、生産速度を上げても箱に変形が生じ難く、生産性の向上を図ることができる。
【0039】
切込線11は、直線状の切れ目(スリット)で形成されていても、部分的につながりを有するミシン目状のものでもよく、包装業界でジッパーと呼称されている切れ目が鉤形に屈曲した開封用破断線(包装産業の周知・慣用技術集第281頁参照、昭和53年12月20日特許庁発行)や、二重線のミシン目でもよい。切込線11は、ミシン目状切込線、上記ジッパーでもよく、切断面を滑らかにするために、連続した切れ目や、切れ目の寸法より短いつなぎ部(接続部)を有する不連続の切れ目としてもよい。
【0040】
押し罫15は、押し刃等によりカートン用紙を押圧して形成することができる。また、カートン用紙に折り目線を形成する方法と同様の方法によっても形成することができる。例えば、通常の打抜型を用いた打抜工程において、カートン用紙を、硬化紙製等の雌型を設けた鉄板と金属製の罫線板との間に挟み込んで圧着することによって形成することができる。
【0041】
また、本実施の形態の衛生用紙入りカートン100は、複数の衛生用紙107が、衛生用紙収納用カートン101の内部にその一部が交互に折り重なるようにして収納されており、切取部13が、細長い形状であって、その長手方向の中心線Y1が、衛生用紙107の折り畳み線X1に対して傾斜角度θ傾いていることが好ましい。このように構成することによって、収納した衛生用紙107を一組ずつポップアップ方式で継続して、よりスムーズに取出すことができ、衛生用紙107の残り枚数が減ったときも、ポップアップしている衛生用紙107を箱の内部に落下し難くすることができる。
【0042】
上記のように切取部13を傾斜させて形成する場合には、切取部13の長手方向の中心線Y1と衛生用紙107の折り畳み線X1とがなす傾斜角度θが、−90°<θ≦−5°又は5°≦θ<90°であることが好ましく、−60°≦θ≦−5°又は5°≦θ≦60°であることがさらに好ましい。傾斜角度θが、−5°を超え且つ5°未満であると、傾斜角度θが小さすぎ、取出口10を傾斜させることによる効果が小さくなり、例えば、引出された次の衛生用紙107の保持が困難になることがある。一方、傾斜角度θが−90°又は90°であると、取出口10が完全に横に向いてしまうため、例えば、衛生用紙107の取出しが困難になることがある。
【0043】
なお、図3に示す衛生用紙収納用カートン101は、切取部13が、衛生用紙107の折り畳み線X1に対して、反時計回りに傾斜角度θ傾いた状態で形成されているいるものであるが、勿論、時計回りに傾斜角度θ傾いた状態で形成されたものであってもよい。
【0044】
また、複数の衛生用紙107が、衛生用紙収納用カートン101の内部にその一部が交互に折り重なるようにして収納されており、切取部13が、細長い形状であって、その長手方向の中心線Y1が、衛生用紙107の折り畳み線X1に対して傾斜角度θ傾いている場合には、切取部13が、取出口10を形成する面1aにおける、衛生用紙107が交互に折り重なっている部位に相当する範囲B内に形成されていることが好ましい。
【0045】
このように構成することによって、衛生用紙107を一組ずつ確実に取出すことができるとともに、取出口10から引出した衛生用紙107のポップアップ状態を良好に保持することができる。例えば、二枚一組としてポップアップ方式で折り畳まれている衛生用紙の一番上の衛生用紙を取出した場合には、この衛生用紙によって引出された次の衛生用紙は、取出口内周縁の一部によって抑えられ、ポップアップ方式で保持するのに十分な抵抗が与えられる。
【0046】
なお、切取部13が、衛生用紙107が交互に折り重なっている部位に相当する範囲Bを超えて形成されていると、衛生用紙107を取出口10内周縁で抑えつける力が弱くなり、一組目の衛生用紙107を引出した際に、連続して次の衛生用紙107が引出されてしまうことがある。
【0047】
なお、本実施の形態の衛生用紙入りカートン100を開封する際には、図8に示すように、まず、切取部13の中央部を指で押圧して引剥がし用切込線14を破断し、この中央部から衛生用紙収納用カートン101の内側に指を指し込み、衛生用紙収納用カートン101の上面板1から半分になった切取部13のいずれか一方を摘み上げて、一方の切取部13を引剥がして半分開封する。次に、半分になった他方の切取部13を引剥がし、切取部13の形状に相当する取出口10を形成する。なお、図8に示す引剥がし用切込線14は、中央部を指で押圧した際の破断が容易となるように、押圧する指の形状に沿って、切取部13の引剥がし用切込線14の破断部分の一方側が凸、他方側が凹となるように形成されている。ここで、図8は、本実施の形態の衛生用紙入りカートンを開封する様子を示す斜視図である。
【0048】
この後、形成された取出口10から指を入れ、最上部の一枚目の衛生用紙107を摘んで上方に引出せばよい。例えば、衛生用紙107が交互に折り重なって衛生用紙収納用カートン101に収納されている場合には、一枚目の衛生用紙107を引出すと、この一枚目の衛生用紙107に互い違いに折り込まれている次の衛生用紙107が連続して引出される。
【0049】
なお、図8に示す衛生用紙入りカートン100は、その略中央分において切取部13を分割して引剥がすことができるように引剥がし用切込線14が配設されているため、切取部13の引剥がしが容易であるとともに、切取部13の引剥がし時の層間剥離を良好に抑制することができる。なお、このような引剥がし用切込線14は、切取部13を形成する切込線11と同様に構成されたものであることが好ましい。
【0050】
なお、図3、図5、図6に示す衛生用紙収納用カートン101は、長手方向の切取部13の略中央部に引剥がし用切込線14が配設されたものであるが、例えば、図9に示すように、長手方向の切取部13の一方の端部側に引剥がし用切込線14が形成されたものであってもよい。なお、引剥がし用切込線14の形状については特に制限はないが、例えば、開封時に指で押圧した場合に、破断した部分から指を箱の内側に指し込み、切取部13を引剥がすことができるような形状であることが好ましい。
【0051】
さらに、本実施の形態の衛生用紙入りカートン100は、衛生用紙収納用カートン101の取出口10を形成する面1aとは反対側の面2a、即ち、下面板2を構成する面2aに、衛生用紙収納用カートン101の内側に折り曲げることにより、衛生用紙107を取出口10側に押し上げる底上げ部23が、切取部13の長手方向の中心線Y1と、底上げ部23の長手方向の中心線Y2とが交差するように、底上げ部用切込線21によって形成されていることが好ましい。これにより、衛生用紙入りカートン100は、内部に収納した衛生用紙107の残量が少なくなったときには、図2に示されるように、下面板2に設けた一対の底上げ部23を衛生用紙収納用カートン101の内側に折り曲げて使用することができ、衛生用紙107を押し上げてポップアップさせる効果が増大する。
【0052】
底上げ部23は、例えば、略円弧状の底上げ部用切込線21を破断し、略円弧状の弦部分に対応して設けられた折れ線22をヒンジ部として、略半円に区画された部位を箱の内側に折り曲げることによって形成することができる。なお、図3においては、二つの略半円に区画された部位が一対として底上げ部23を構成している。このような底上げ部23を形成することにより、上面の取出口10から、衛生用紙107の最後の一枚まで安定してポップアップさせて取出すことが可能となる。なお、この底上げ部23は、衛生用紙収納用カートン101の側面3a,4aの高さが大きいほど上記の効果が大きく、且つその効果を持続するものとなる。なお、底上げ部用切込線21は、切取部13を形成する切込線11と同様に構成されたものであることが好ましい。
【0053】
特に、切取部13の長手方向の中心線Y1と、底上げ部23の長手方向の中心線Y2とを交差させる際には、衛生用紙収納用カートン101の上方から見た際の、切取部13の長手方向の中心線Y1と底上げ部23の長手方向の中心線Y2とによって構成される角度の絶対値が30°〜150°であることが好ましく、60°〜120°であることがさらに好ましく、90°である(即ち、中心線Y1と中心線Y2とが直交する)ことが特に好ましい。このように中心線Y1と中心線Y2とによって構成される角度を比較的広くとることにより、上記した衛生用紙107を上面1a側に押し上げてポップアップさせる効果が増大する。
【0054】
このため、例えば、図5のような展開図において、切取部13と底上げ部23とを、同一の方向に傾斜させて、切取部13の長手方向の中心線Y1と底上げ部23の長手方向の中心線Y2とによって構成される角度を90°に近づけるようにすることが好ましい。
【0055】
また、衛生用紙入りカートン100を開封する際に切取部13が破断してしまったり、切取部13の周辺部に切れ目が生じたりしないようにするためには、衛生用紙収納用カートン101の材質を考慮する必要がある。本実施の形態においては、木材パルプ、古紙などを原料とする厚紙により製造することが好ましく、この場合、JISP8116−2000に規定する引裂強度が、縦方向2500〜2900mN、横方向3000〜3400mNの範囲であることが好ましい。引裂強度が低すぎると破断し易く、必要以上に引裂強度があると開口し難くなったりするため、好ましくない。
【0056】
なお、本実施の形態の衛生用紙入りカートン100は、押し罫15が形成されることにより構造強度が向上しているため、必要とする構造強度を維持しつつ、使用するカートン用紙を薄くすることもでき、衛生用紙収納用カートン101の製造コストの削減を実現することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の衛生用紙入りカートンは、ティシュペーパー、キッチンペーパー等のペーパータオル、シート状のトイレットペーパー、ワッティング(紙綿)等を収納した衛生用紙入りカートンとして、好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の衛生用紙入りカートンの一の実施の形態を示す図であり、使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示される衛生用紙入りカートンの所定の切断線における断面図である。
【図3】本発明の衛生用紙入りカートンの一の実施の形態の一例を示す図であり、衛生用紙収納用カートンを組み立てる前のカートンブランクの状態の展開図である。
【図4】図3における丸囲いしたA部分の拡大図である。
【図5】本発明の衛生用紙入りカートンの一の実施の形態の他の例を示す図であり、衛生用紙収納用カートンを組み立てる前のカートンブランクの状態の展開図である。
【図6】本発明の衛生用紙入りカートンの一の実施の形態の他の例を示す図であり、衛生用紙収納用カートンを組み立てる前のカートンブランクの状態の展開図である。
【図7】本発明の衛生用紙入りカートンの一の実施の形態の他の例を示す上面図である。
【図8】本発明の衛生用紙入りカートンの一の実施の形態を示す図であり、開封する様子を示す斜視図である。
【図9】本発明の衛生用紙入りカートンの一の実施の形態の他の例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 上面板
1a 面(取出口を形成する面)
2 下面板
2a 面(底上げ部を形成する面)
3,4 側面板
3a,4a 側面(面)
6,7 端面板
10 取出口
11 切込線
13 切取部
14 引剥がし用切込線
15 押し罫
21 底上げ部用切込線
22 折れ線
23 底上げ部
100 衛生用紙入りカートン
101 衛生用紙収納用カートン
107 衛生用紙
B 衛生用紙が交互に折り重なっている部位に相当する範囲
X1 衛生用紙の折り畳み線
Y1 切取部の長手方向の中心線
Y2 底上げ部の長手方向の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱の少なくとも一の面に、取出口を形成するための切取部が、前記取出口の形状に沿って配設された切込線によって形成されている衛生用紙収納用カートンと、前記衛生用紙収納用カートンの内部に収納された複数の衛生用紙と、を備えた衛生用紙入りカートンであって、
前記衛生用紙収納用カートンの前記切取部には、前記取出口から所定距離離れた略全周に亘って、前記取出口を囲うように押し罫が形成されている衛生用紙入りカートン。
【請求項2】
前記取出口から所定距離離れた略全周に亘って、二重以上の前記押し罫が形成されている請求項1に記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項3】
前記押し罫が、前記取出口を形成する前記面から、前記面に隣接する前記箱の側面にかけて形成されている請求項1又は2に記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項4】
前記衛生用紙収納用カートンは、前記取出口を形成する前記面の内側に、前記取出口を被覆するフィルムが配設されていないフィルムレスカートンである請求項1〜3のいずれかに記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項5】
前記複数の衛生用紙は、前記衛生用紙収納用カートンの内部にその一部が交互に折り重なるようにして収納されており、前記切取部は、細長い形状であって、その長手方向の中心線が、前記衛生用紙の折り畳み線に対して傾斜角度θ傾いている請求項4に記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項6】
前記切取部の長手方向の前記中心線と前記衛生用紙の前記折り畳み線とがなす前記傾斜角度θが、−90°<θ≦−5°又は5°≦θ<90°である請求項5に記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項7】
前記切取部の形状が、長円形状である請求項5又は6に記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項8】
前記切取部が、前記取出口を形成する前記面における、前記衛生用紙が交互に折り重なっている部位に相当する範囲内に形成されている請求項5〜7のいずれかに記載の衛生用紙入りカートン。
【請求項9】
前記箱の前記取出口を形成する前記面とは反対側の面に、前記箱の内側に折り曲げることにより、前記衛生用紙を前記取出口側に押し上げる底上げ部が、前記切取部の長手方向の中心線と、前記底上げ部の長手方向の中心線とが交差するように、底上げ部用切込線によって形成されている請求項5〜8のいずれかに記載の衛生用紙入りカートン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−145355(P2007−145355A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340897(P2005−340897)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】