説明

衛生薄葉紙及びその製造方法

【課題】肌触りのよいシングルエンボスの衛生薄葉紙を提供する。
【解決手段】
頂面部の面積が0.3〜1.8mm2、テーパー角が20〜50度、高さが0.3〜1.5mmである円錐台又は楕円錐台の単位エンボス付与凸部で構成されるエンボスパターンを有するエンボスロールを用いて衛生薄葉紙にエンボスを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスを有する衛生薄葉紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嵩だか性や柔軟性、吸収性等の機能性の向上、意匠性の向上を図る目的で衛生薄葉紙にエンボス(凹凸)を付与することがよく行われる。
エンボスの付与形態としては、いくつかの提案がなされており、例えば、一方面側からのみエンボスパターンの押し付けを行い、一方の面が凹エンボス、他方の面が凸エンボスとなる所謂シングルエンボス、二枚重ねの場合に、いずれの面も凹エンボスとなるTip to Tip形態やNested形態などの所謂ダブルエンボスが知られる。
なかでもシングルエンボスは、他の形態と比較して簡易に付与できるという利点があり広く普及している。しかし、凸エンボスが形成される面にざらつきが感じられるという欠点をも有する。
特に、シングルエンボスの場合、単位エンボスを連続的に並べて形成される直線又は曲線のエンボス列によって幾何学柄、葉柄、花柄、ペイズリー似のような模様を描くエンボスパターンとすることがよく行われる。しかし、このエンボスパターンは、優れた意匠性を得られるものの、凸エンボス形成面のざらつき感はより感じられやくなる。
他方、衛生薄葉紙の用途として、上面にスリットの入ったフィルムを貼り付けた取出口を備えるカートン箱に収め、前記スリットから一枚ずつ取り出して用いるティシュペーパーとして採用されることがある。
しかし、シングルエンボスを付与した衛生薄葉紙は、一方の面に凸エンボスを有するため、スリットからの取出し時に紙粉が発生しやすく、また、鼻かみ時にざらつきを感じやすいため、ポップアップ式のティシュペーパー用途には不向きとされていた。
【特許文献1】特開2002−369765
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、エンボスのように一方面に凸エンボスを有する衛生薄葉紙における、肌に触れたときのざらつき感、凹凸感を低減し、肌触りに優れたものとすることにあり、他の課題は、ポップアップ形式で取り出すティシュペーパー製品に好適に利用できるものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
エンボスを有する衛生薄葉紙であって、
平面視形状が円形又は楕円形の単位エンボスが1.0〜3.0mmの間隔で並列して形成される直線又は曲線のエンボス列により描かれる模様を有し、
前記単位エンボスの一部又は全部が一方の面にエンボス凸部を形成するものであり、
かつ、非エンボス部分とエンボス部分との紙厚の差が50〜500μmであり、前記エンボス凸部が形成されている面とエンボス凹部が形成されている面の摩擦係数の平均偏差MMDの差が1.0以下であることを特徴とするエンボスが付与された衛生薄葉紙。
【0005】
<請求項2記載の発明>
エンボス部分の総面積が3〜30%である、請求項1記載の衛生薄葉紙。
【0006】
<請求項3記載の発明>
エンボス列の延在長が10mm以上あり、かつ、エンボス列間の相互間距離が1〜10mmある、請求項1又は2記載の衛生薄葉紙。
【0007】
<請求項4記載の発明>
頂面部の面積が0.3〜1.8mm2、テーパー角が20〜50度、高さが0.3〜1.5mmである円錐台又は楕円錐台又はこれらの頂縁が面取りされた立体形状の単位エンボス付与凸部で構成されるエンボスパターンを有するエンボスロールとニップロールとで構成される一対のエンボス付与ロール間に、ニップ圧5〜30kg/cmの条件下で、紙厚70〜300μm、坪量10〜40g/m2の衛生薄葉紙を通して製造された、請求項1〜3の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。
【0008】
<請求項5記載の発明>
ニップロールとエンボスパターンを有するエンボスロールとで構成される一対のエンボス付与ロール間に衛生薄葉紙を通して、衛生薄葉紙にエンボスを形成するエンボスを有する衛生薄葉紙の製造方法であって、
前記衛生薄葉紙を紙厚70〜300μm、坪量10〜40g/m2のものとし、
前記エンボスパターンを構成する単位エンボス付与凸部を、頂面部の面積が0.3〜1.8mm2、テーパー角が20〜50度、高さが0.3〜1.5mmである円錐台又は楕円錐台又はこれらの頂縁が面取りされた立体形状の単位エンボス付与凸部とし、
前記エンボス付与ロール間におけるニップ圧5〜30kg/cmとする、
ことを特徴とする衛生薄葉紙の製造方法。
【0009】
<請求項6記載の発明>
前記エンボスパターンは、単位エンボス付与凸部が、1.0〜3.0mmの間隔で並列された直線又は曲線のエンボス付与凸部列で描かれる模様である、請求項5記載の衛生薄葉紙の製造方法。
【0010】
<請求項7記載の発明>
前記エンボスロールは、エンボス付与凸部の総面積がエンボス付与ロール面の3〜30%である、請求項5又は6記載の衛生薄葉紙の製造方法。
【0011】
<請求項8記載の発明>
エンボス付与凸部列による直線又は曲線の延在長さ10mm以上あり、かつ、直線又は曲線間の相互間距離が1〜10mmある、請求項5〜7の何れか1項に記載の衛生薄葉紙の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、シングルエンボスが付与された衛生薄葉紙における、肌に触れたときのざらつき感、凹凸感が低減され、肌触りに優れたものとなる。
また、ポップアップ形式で取り出すティシュペーパー製品に好適に利用できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。
〔エンボスを有する衛生薄葉紙〕
図1は、本発明の実施形態のエンボス10を有する衛生薄葉紙X1の平面図である。図2はそのII−II線断面図を表している。
【0014】
図示の本形態の衛生薄葉紙X1は、一方面にエンボス凸部11、他方の面にこのエンボス凸部11に対応するエンボス凹部12を有する所謂シングルエンボスが付与された衛生薄葉紙である。
そのプライ数については特に限定されないが、ティシュペーパー用途であれば1〜3プライ程度、好適には2プライである。
本形態の衛生薄葉紙X1は、平面視においてエンボス10による模様を有する。
【0015】
このエンボス10は、平面視形状が円形又は楕円形の単位エンボス1が1.0〜3.0mmの間隔で並列して形成される直線又は曲線のエンボス列1L(図中の符号1Lはエンボス列の一部を示している。以下、同じ)で構成され、そのエンボス列によって衛生薄抄紙に前記模様が描かれている。1.0mm未満であるとエンボスの明瞭性が低下し、3.0mmを超えると肌触り性が悪化する。
エンボス列1Lの延在長は10mm以上であるのがよく、また、エンボス列間の相互間距離D1が1〜15mmであるのがよい(なお、図中の符号D1で示す部分は、一例であり、この部位に限定されるわけではない)。この範囲のエンボス列であると、模様が視認されやすくなる。
【0016】
模様の具体例については特に限定されない。図示例のようなツタ柄のほか、円、三角形、四角形等の幾何学柄、花、木、草等の植物や、人、動物、魚、貝、昆虫等の生き物、山、川、海、雲、森、林等の自然、月、太陽、星等の惑星・衛星、車、飛行機、電車等の人工物の絵柄、その他文字やこれらの組み合わせからなるデザイン性のあるものが挙げられる。
【0017】
他方、本形態の衛生薄葉紙X1は、エンボス部分の総面積が3〜30%であるのが望ましい。すなわち、一方面の全面積に対する、単位エンボス凸部又は凹部の平面視の面積の総和の割合が、3〜30%の範囲であるのが望ましい。この範囲とすると、非エンボス部分に対してエンボス部分が明瞭に視認されるようになり、模様がはっきりとする。また、総面積が3%未満であると、エンボスによる柔軟効果が少なくなり、30%を超えると、エンボスにより押しつぶされた部分が増え、これも柔軟効果が低下する。
【0018】
他方、本形態の衛生薄葉紙X1は、非エンボス部分の紙厚T1とエンボス部分の紙厚の差T2が50〜500μmである。差が50μm未満であるとエンボスが不明瞭となり模様がぼやけた感じとなり、500μmを超えると肌に触れたときにざらつき感のあるものとなる。なお、非エンボス部分の紙厚は、70〜300μmであるのがよい。300μmを超えると、硬くなり、特にティシュペーパー用途に適さなくなる。
ここでの紙厚差を算出する場合の紙厚は、レーザー顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス製、VK−9510)等により測定する。
【0019】
他方、本形態の衛生薄葉紙X1のJIS P 8124による坪量は、プライ数に関係なく、全体として10〜40g/m2である。複数プライ数とする場合には、前記坪量の範囲内に収まるように、各プライの坪量を調整する。坪量の下限を10g/m2と規定したのは、10g/m2を下回ると、柔らかさの向上の観点からは好ましいが強度を適正に確保することができないためである。また、上限を40g/m2と規定したのは、40g/m2を上回ると、硬くなりすぎて、肌触りが悪化するためである。
【0020】
他方、本形態の衛生薄葉紙X1は、エンボス凸部が形成されている面とエンボス凹部が形成されている面の摩擦係数の平均偏差MMDの差が1.0以下である。ティシュペーパー製品を使用する場合、表面、裏面とも使用するため、表裏差がないものが好まれる。MMDの差が1.0を超えると表裏差が大きくなり、使用感に違いがでてくる。
また、本形態の衛生薄葉紙X1は、エンボス凸部が形成されている面の摩擦係数の平均偏差MMDが、7〜11であるのが望ましい。11を超えるとざらつきが顕著に感じられるようになる。
このMMDの測定は、例えば、カトーテック株式会社製「摩擦感テスター KESSE」を用いることができる。測定に際しては、図3に示すように、横断面直径0.5mmのピアノ線からなり、その接触面の長さは5mmである摩擦子を、紙試料に10gの接触圧で接触させながら、移動方向に20g/cmの張力を紙試料に与えつつ、0.1cm/秒の速度で2cm移動させたときの、摩擦係数を測定する。すなわち、摩擦係数の平均偏差MMDは、摩擦子を移動させたときの表面厚さの変動量の面積を移動距離(2cm)で割り算した値である。MMDは一般に滑らかさとの相関がある。
【0021】
また、本形態の衛生薄葉紙X1は、特に、ポップアップ式のティシュペーパーとする場合には縦強度(MDT)が100〜800gf/25mm、横強度(CDT)が70〜400gf/25mmであり、縦伸び(MDS)が5〜30%(測定はJIS P 8113に準拠)であることが好ましい。なお、この縦横の強度は、プライ数に関係なく製品時の単位枚あたりの値である。これらの下限値以下ではシートの破断等が起きやすく、上限値以上では風合いが悪化する。また、伸びがこれらの下限値以下ではシートの破断等が起き、上限値以上ではシートにしわ等が発生して操業性が悪化する。
【0022】
ここで、本発明においては、衛生薄葉紙の原料は、特に限定されない。衛生薄葉紙X1の用途に応じて、パルプ繊維や、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等のフィルム、などの適宜の原料を使用することができる。
具体的には、原料が、パルプ繊維である場合、このパルプ繊維(原料パルプ)としては、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0023】
パルプ繊維等からなる原料は、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、エンボス付与の対象となる衛生薄葉紙とする。
この抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0024】
〔エンボスを有する衛生薄葉紙の製造方法〕
次いで、本発明のエンボスを有する衛生薄葉紙の製造方法を図面を参照しながらさらに説明する。図4は、本発明のエンボス付与ロールを説明するための図であり、図5は、本発明の単位エンボス付与凸部を説明するための図である。
上述のとおり本発明に用いる衛生薄葉紙X1の原料、抄紙方法は特に限定されない。従って、ここでは、特徴的なエンボス付与方法について説明する。
【0025】
エンボスを付与する衛生薄葉紙Y1(以下、被加工衛生薄葉紙という)は、十分な強度と上述の好適なエンボス模様を得るべく、また、エンボス加工時におけるトラブル防止の確保のため、その紙厚70〜300μm、坪量10〜40g/m2のものを用いる。
本形態では、好適な例として、1枚当たりの坪量が10〜15g/m2の衛生薄葉紙を2枚重ねとした紙厚80〜200μmの2プライの被加工衛生薄葉紙Y1に対してエンボスを付与する。
なお、被加工衛生薄葉紙の紙厚は、測定子径10mmのピーコック(例えば、株式会社尾崎製作所製:G型等)を用いて測定するのがよい。
エンボス付与は、図4に示されるように、ニップロール30とエンボスパターンを有するエンボスロール40とで構成される一対のエンボス付与ロール間に被加工衛生薄葉紙Y1を通し、前記エンボスパターンを被加工衛生薄葉紙Y1に押しつけて付与する。
【0026】
本発明では、図5に示されるとおり、特徴的に、そのエンボスパターンを構成する個々の単位エンボス付与凸部4の形状が、頂面部4tの面積が0.3〜1.8mm2、テーパー角θが20〜50度、高さ4hが0.3〜1.5mmである円錐台の頂縁が面取りされた立体形状の単位エンボス付与凸部4である。なお、単位エンボス付与凸部4は、頂縁が面取りされている楕円錐台、頂縁が面取りされていない通常の円錐台及び楕円錐台をも採用できる。好適な例は、図示例の円錐台の頂縁を面取りした立体形状である。図5中、面取り部分は符号4rで示す。頂縁が面取りされていると、付与されるエンボス凸部にエッジが形成されなくなり、似半球状のエンボス凸部が形成される。これにより、エンボス凸部形成面の滑らかさの発現性が向上する。なお、面取り部分4rの曲率半径Rは、0.1〜0.8であるのが望ましい。また、面取りした形状の場合の頂面部の面積は、面取り前の頂面の面積とする。
【0027】
単位エンボス付与凸部4の形状をこのようにすると、前述の被加工衛生薄葉紙Y1の物性及び後述のエンボス付与条件との関係で、衛生薄葉紙に形成される単位エンボス1の形状が似半球状となり、これにより極めてざらつき感がなく、表裏差の少ないものとなる。
さらに、この単位エンボス1を有する衛生薄葉紙X1は、表面の滑らかさにも優れ、特にポップアップ形式で取り出すティシュペーパー製品に利用しても取出し時に紙粉の発生が少なく好適に利用できる。
【0028】
他方、前記エンボスパターンは、前記単位エンボス付与凸部4が、1.0〜3.0mmの間隔(図中D2)で並列された直線又は曲線のエンボス付与凸部列4Lで描かれる模様とすることで、上記説明の意匠性に優れるエンボス模様を付与することができる。従来、この種のエンボス模様はざらつき感を感じやすいものであったが、本発明によって得られる衛生薄葉紙X1では、そのようなざらつき感は極めて少ない。
また、前記エンボスロール40は、エンボス付与凸部の総面積がエンボスロール面の3〜30%であるのがよい。かかるエンボスロール40を用いると、非エンボス部分に対してエンボス部分が明瞭に視認され、エンボスによる模様がはっきりとした衛生薄葉紙が得られる。
また、エンボス付与凸部列による直線又は曲線の延在長さ10mm以上あり、かつ、直線又は曲線間の相互間距離が1〜15mmであるのが望ましい。このようにすると視認されやすいエンボス模様が得られる。
【0029】
ここで、前記ニップロール30は、少なくとも表面がゴム等の弾性部材で構成される弾性ニップロールが適し、エンボスロール40は樹脂製のものが好適である。ただし、金属製のものも用いうる。
弾性ニップロールを用いる場合、その表面のショア硬度(Shore hardness)が、40〜60度であるのが好ましい。ショア硬度が低すぎると、つまり弾性ロール表面がやわらかすぎると、シート又はシート地が破断するおそれがある。他方、ショア硬度が高すぎると、つまり弾性ロール表面が硬すぎると、エンボスが入らなくなるおそれがある。
エンボス付与するにあたってのニップ圧(エンボス圧、線圧とも言われる)は、5〜30kgf/cm、好ましくは10〜25kgf/cmとなるように行う。ニップ圧が低すぎると、エンボスが鮮明になるとの効果が、十分に発揮されないおそれがある。他方、エンボス圧が高すぎると、被加工衛生薄葉紙がちぎれてしまうおそれがある。
【0030】
以上のように、エンボス付与された衛生薄葉紙は、長紙管に巻き付けられた後、細幅のトイレットペーパーロールとされたり、インターホルダに導かれてティシュペーパーなどの製品とされる。
なお、本発明は上記説明のシングルエンボスの形態に極めて好適であるが、本発明は一方の面にエンボス凸部を有するものであるから、シングルエンボスに限定されず、例えば、両面のそれぞれにエンボス凸部と反対面のエンボス凸部に対応するエンボス凹部を有する形態についても適用しうる。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例1、2と比較例1〜4とについて、MMDと肌触り感、エンボスの明瞭性について測定、評価した。
なお、各例は、エンボス付与に用いたエンボスロールにおける、単位エンボス付与凸部のテーパー角と、頂面部の面積とが異なる。
その他の構成は全て同一であり、単位エンボス付与凸部の高さは全て1.0mmであり、形状は円錐台とした。また、被加工衛生薄葉紙は、2プライで坪量22g/m2、紙厚110μmのものとし、各例に付与したエンボス模様も同様とした。なお、エンボスはシングルエンボスとした。
各例のテーパー角と、頂面部の面積、評価などは、下記表1のとおりである。評価方法は、次記の通りである。
〔MMD〕
カトーテック株式会社製「摩擦感テスター KESSE」を用い、上記説明の方法に従って測定した。
〔肌触り感〕
15人の官能評価とした。肌触りがよいと感じた被験者が8人以上の例を○、8人未満の例を×と評価した。
〔エンボスの明瞭性〕
15人の官能評価とした。エンボスが明瞭であると感じた被験者が8人以上の例を○、8人未満の例を×と評価した。
【0032】
【表1】

【0033】
表に示される結果からも明らかなとおり、本発明の実施例についてはエンボスの明瞭性が感じられる上に、エンボス凸部を有する面の肌触り感にも優れるという評価が得られた。それに対して、比較例については、肌触り感とエンボスの明瞭性の何れかで劣るという評価が得られた。このように評価の結果、本発明に係るエンボスを有する衛生薄葉紙についての効果が示されたといえる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、ティシュペーパーの他、キッチンペーパー、トイレットペーパー、トイレットロール等の衛生薄葉紙を素材とするシート製品に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の衛生薄葉紙の例の平面図である。
【図2】そのII−II断面図である。
【図3】MMDの測定装置を示す図である。
【図4】本発明に係るエンボス付与ロールを説明するための図である。
【図5】本発明の単位エンボス付与凸部を説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
1…単位エンボス,1L…エンボス列、10…エンボス、11…エンボス凸部、12…エンボス凹部、30…ニップロール、40…エンボスロール、4…単位エンボス付与凸部、4t…単位エンボス付与凸部の頂面部、4h…単位エンボス付与凸部、4r…エンボス付与凸部の面取り部分、θ…単位エンボス付与凸部のテーパー角、D1…エンボス列間の相互間距離、T1…非エンボス部分の紙厚、T2…エンボス部分の紙厚、X1…エンボスを有する衛生薄葉紙、Y1…被加工衛生薄葉紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスを有する衛生薄葉紙であって、
平面視形状が円形又は楕円形の単位エンボスが1.0〜3.0mmの間隔で並列して形成される直線又は曲線のエンボス列により描かれる模様を有し、
前記単位エンボスの一部又は全部が一方の面にエンボス凸部を形成するものであり、
かつ、非エンボス部分とエンボス部分との紙厚の差が50〜500μmであり、前記エンボス凸部が形成されている面とエンボス凹部が形成されている面の摩擦係数の平均偏差MMDの差が1.0以下であることを特徴とするエンボスが付与された衛生薄葉紙。
【請求項2】
エンボス部分の総面積が3〜30%である、請求項1記載の衛生薄葉紙。
【請求項3】
エンボス列の延在長が10mm以上あり、かつ、エンボス列間の相互間距離が1〜10mmある、請求項1又は2記載の衛生薄葉紙。
【請求項4】
頂面部の面積が0.3〜1.8mm2、テーパー角が20〜50度、高さが0.3〜1.5mmである円錐台、楕円錐台又はこれらの頂縁が面取りされた立体形状の単位エンボス付与凸部で構成されるエンボスパターンを有するエンボスロールとニップロールとで構成される一対のエンボス付与ロール間に、ニップ圧5〜30kg/cmの条件下で、紙厚70〜300μm、坪量10〜40g/m2の衛生薄葉紙を通して製造された、請求項1〜3の何れか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項5】
ニップロールとエンボスパターンを有するエンボスロールとで構成される一対のエンボス付与ロール間に衛生薄葉紙を通して、衛生薄葉紙にエンボスを形成するエンボスを有する衛生薄葉紙の製造方法であって、
前記衛生薄葉紙を紙厚70〜300μm、坪量10〜40g/m2のものとし、
前記エンボスパターンを構成する単位エンボス付与凸部を、頂面部の面積が0.3〜1.8mm2、テーパー角が20〜50度、高さが0.3〜1.5mmである円錐台、楕円錐台又はこれらの頂縁が面取りされた立体形状の単位エンボス付与凸部とし、
前記エンボス付与ロール間におけるニップ圧5〜30kg/cmとする、
ことを特徴とする衛生薄葉紙の製造方法。
【請求項6】
前記エンボスパターンは、単位エンボス付与凸部が、1.0〜3.0mmの間隔で並列された直線又は曲線のエンボス付与凸部列で描かれる模様である、請求項5記載の衛生薄葉紙の製造方法。
【請求項7】
前記エンボスロールは、エンボス付与凸部の総面積がエンボス付与ロール面の3〜30%である、請求項5又は6記載の衛生薄葉紙の製造方法。
【請求項8】
エンボス付与凸部列による直線又は曲線の延在長さ10mm以上あり、かつ、直線又は曲線間の相互間距離が1〜10mmある、請求項5〜7の何れか1項に記載の衛生薄葉紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−28457(P2009−28457A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198166(P2007−198166)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】