説明

衛生設備及び衛生設備室

【課題】キャビネットが昇降しても、該キャビネットの見栄えが良好な衛生設備と、この衛生設備を設置した衛生設備室とを提供する。
【解決手段】キャビネット1の外面は化粧板よりなる前面板60、背面板61、左右の側面板62,63及び上面板64により構成されている。床板4に設けられた開口5内にベースフレーム10が設置され、該ベースフレーム10に設けられた受入部70内に、前面板60、背面板61及び側面板62,63の下端側が、それぞれ上方から上下動可能に入り込んでいる。キャビネット1が上昇すると、その分だけ前面板60、背面板61及び側面板62,63が受入部70内から床上側へ繰り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの側面の少なくとも下部が化粧板にて構成され、この側面に衛生機器が取り付けられるキャビネットを昇降装置により昇降可能とした衛生設備と、この衛生設備を設置した衛生設備室に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生機器取り付け用のキャビネットを昇降装置により昇降可能とした衛生設備を、衛生設備室内に設置することは公知である。
【0003】
特開平11−71804号公報には、トイレルーム内に、キャビネットを構成するケースを昇降可能に設置し、このケースの前面に洋風便器を取り付けた便器昇降ユニットが記載されている。同号公報では、該ケースは上ケースと下ケースとからなる。該下ケースは床上に固定設置されており、該上ケースが、該ケース内に配置された油圧シリンダの駆動力により昇降する。
【0004】
該上ケースは、化粧板よりなる上面板、前面板及び左右の側面板を有する無底箱状のものである。下ケースは、該上ケースの底面開口から該上ケース内に入り込んでいる。この下ケースも、化粧板よりなる前面板及び左右の側面板を有しており、これらが該上ケースの前面板及び左右の側面板の内面(ケース内側の面)にそれぞれ対面している。なお、同号公報では、該上ケース及び下ケースはトイレルームの壁面に沿って配置され、これらの背面は該壁面によって閉鎖されている。
【0005】
上ケースが下降限まで下降した状態において、下ケースのうち、該上ケースの内側に入り込んでいる部分の上下方向の幅員は、該上ケースが下降限から上昇限まで上昇したときの上下方向の移動距離よりも大となっている。
【0006】
該上ケースが上昇した場合、該上ケースの下端は床から離隔するが、下ケースによって該上ケースの下端と床との間の隙間が遮蔽される。これにより、上ケースが上昇しても、ケース内部構造が該ケース外部に露出することが防止される。
【0007】
同号公報の便器昇降ユニットにあっては、便器使用者が洋風便器に腰掛ける際、及び洋風便器から立ち上がる際に、上ケースを上昇させて洋風便器を持ち上げる。これにより、便器使用者の足腰に掛かる負荷が軽減され、該便器使用者が足腰の弱い人であっても、楽に洋風便器に腰掛けたり洋風便器から立ち上がったりすることができる。
【特許文献1】特開平11−71804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特開平11−71804号公報の便器昇降ユニットにあっては、上ケースが上昇した場合には、該上ケースの外面と下ケースの外面との間には段差が生じると共に、この段差が上ケースの昇降に伴って上下に移動するので、見栄えが悪い。
【0009】
本発明は、キャビネットが昇降しても、該キャビネットの見栄えが良好な衛生設備と、この衛生設備を設置した衛生設備室とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)の衛生設備は、衛生設備室内に設置される衛生設備であって、少なくとも1つの側面の少なくとも下部が化粧板によって構成されたキャビネットと、該キャビネットの該側面に取り付けられた衛生機器と、該キャビネットを昇降させる昇降装置と
を備えた衛生設備において、衛生設備室の床に埋設されるベースフレームを備えており、該ベースフレームに、前記化粧板の受入部が設けられており、該化粧板の下部が該受入部に対し上方から上下動可能に入り込んでいることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の衛生設備は、請求項1において、該ベースフレームに、前記化粧板の下部の外面に対面する外面側垂下片と、該化粧板の下部の内面に対面する内面側垂下片とが設けられており、該外面側垂下片と内面側垂下片との間が前記受入部となっていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の衛生設備は、請求項1又は2において、該ベースフレームは、衛生設備室の床下の根太の上面に重ね合わされるフランジを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4の衛生設備は、請求項1ないし3のいずれか1項において、該ベースフレームに前記昇降装置が設置されており、該昇降装置によって昇降されるアッパーフレームが設けられ、前記化粧板は該アッパーフレームに取り付けられていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5の衛生設備は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記昇降装置は、該ベースフレーム上に延設されたスライドレールと、該スライドレールの上側に該スライドレールと平行に延設されており、両端側が該ベースフレームに対し回転可能に支持されたドライブシャフトと、該ドライブシャフトの延在方向の一半側及び他半側の外周面にそれぞれ形成されており、互いに逆ねじの関係となっている第1雄ねじ部及び第2雄ねじ部と、該第1雄ねじ部及び第2雄ねじ部にそれぞれ螺合しており、該ドライブシャフトが正転することにより互いに接近方向に螺進し、該ドライブシャフトが逆転することにより互いに離反方向に螺進する第1スライドブロック及び第2スライドブロックと、該第1スライドブロック及び第2スライドブロックの上側に昇降可能に配置された昇降台と、該第1スライドブロック及び第2スライドブロックと該昇降台とをそれぞれ連結しており、該第1スライドブロックと第2スライドブロックとが接近方向及び離反方向の一方へ移動することにより起立回動して該昇降台を上昇させ、該第1スライドブロックと第2スライドブロックとが接近方向及び離反方向の他方へ移動することにより倒伏回動して該昇降台を降下させる第1アーム及び第2アームと、前記ドライブシャフトを正転又は逆転方向へ回転駆動する駆動装置とを備えており、該第1スライドブロック及び第2スライドブロックの下部は、それぞれ前記スライドレールにスライド可能に係合していることを特徴とするものである。
【0015】
本発明(請求項6)の衛生設備室は、衛生設備室内にキャビネットが設置され、該キャビネットの少なくとも1つの側面の少なくとも下部が化粧板によって構成され、該キャビネットの該側面に衛生機器が取り付けられ、該キャビネットを昇降させる昇降装置が設けられている衛生設備室において、該衛生設備室の床に、前記化粧板の受入部が設けられており、該化粧板の下部が該受入部に対し上方から上下動可能に入り込んでいることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7の衛生設備室は、請求項6において、前記衛生設備室の床は、根太と、該根太上に設置された床板とを備えており、該床板のうち前記キャビネットの設置域に開口が設けられ、該開口の内縁に沿って延在する枠状のベースフレームが設置されており、該ベースフレームに、前記化粧板の下部の外面に対面する外面側垂下片と、該化粧板の下部の内面に対面する内面側垂下片とが設けられており、該外面側垂下片と内面側垂下片との間が前記受入部となっていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8の衛生設備室は、請求項7において、前記ベースフレームは、前記根太の上面に重ね合わされたフランジを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明(請求項1,6)の衛生設備及び衛生設備室にあっては、キャビネットの衛生機器取り付け面の下部の化粧板が、衛生設備室の床に埋設されるベースフレームに設けられた受入部、又は該衛生設備室の床に設けられた受入部に対し上方から上下動可能に入り込んでおり、キャビネットが上昇した場合には、その分だけ化粧板がこの受入部から床上側に繰り出される。そのため、キャビネットが上昇しても、化粧板が床から離隔せず、キャビネットの下部の外面に段差や隙間が生じない。これにより、キャビネットが昇降しても該キャビネットの見栄えを良好に保つことができる。
【0019】
請求項2,7の態様にあっては、受入部を構成する、ベースフレームの外面側垂下片と内面側垂下片とによって化粧板の下部が内外両側から拘束されているため、化粧板は、押されたり引かれたりしても変形しにくく、この化粧板と、受入部や床の開口の縁部との間に隙間が生じることが防止される。
【0020】
請求項3,8のように、ベースフレームに、側外方へ張り出すフランジを設け、このフランジを根太の上面に重ね合わせることにより、該ベースフレームの床への設置を強固なものとすることができる。また、このようにベースフレームにフランジを設けることにより、ベースフレーム自体の剛性を高めることもできる。
【0021】
請求項4のように、このベースフレームに昇降装置を設置すると共に、この昇降装置によって昇降されるアッパーフレームを設け、このアッパーフレームに化粧板を取り付けてキャビネットを構成するようにした場合には、予めベースフレーム上に昇降装置及びアッパーフレームを組み付けてこれらユニット化しておくことにより、該ベースフレームを床に設置することでこれら全体の据え付けを行うことができるため、キャビネットの設置施工作業を容易にすることができる。
【0022】
本発明においては、請求項5のような構成の昇降装置を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0023】
なお、請求項5の昇降装置にあっては、第1及び第2スライドブロックが、それぞれ、ベースフレーム上に設けられたスライドレールによって下から支持されている。このため、昇降台から各アームを介してこれらのスライドブロックに掛かる荷重によってドライブシャフトが曲がったり折れたりすることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
第1図は実施の形態に係る衛生設備室としてのトイレルームのキャビネット付近の斜視図、第2図及び第3図は第1図のII−II線に沿う部分の断面図、第4図はベースフレーム、昇降装置及びベースフレームの斜視図、第5図及び第6図はベースフレーム及び昇降装置の斜視図である。なお、第1,2,4,5図はキャビネット下降時を示し、第3,6図はキャビネット上昇時を示している。
【0026】
この実施の形態では、衛生設備室はトイレルームである。このトイレルーム内に、衛生設備を構成する、衛生機器取り付け用のキャビネット1が昇降可能に設置され、このキャビネット1の1つの側面(この実施の形態では前面)に、衛生機器としての洋風便器2が取り付けられている。以下の説明において、前後左右とは、この洋風便器2に着座した便器使用者にとっての前後左右である。
【0027】
第1図に示すように、トイレルームの床は、水平に延設された複数の根太3と、該根太3上に敷設された床板4とにより構成されている。この床板4のうち、キャビネット1の設置領域には、該キャビネット1の下部を受け入れる開口5が設けられている。なお、図示の通り、この実施の形態ではキャビネット1は直方体形状のものであり、開口5は、このキャビネット1の水平断面形状と相似形状で且つ該キャビネット1の通過を許容する大きさの方形開口となっている。
【0028】
この実施の形態では、該開口5の前縁及び後縁に沿って、該開口5を挟むように1対の根太3,3が配設されている。
【0029】
衛生設備は、キャビネット1と、該開口5内に設置されたベースフレーム10と、該ベースフレーム10上に設置された昇降装置30と、該昇降装置30上に載設され、該昇降装置30によって昇降されるアッパーフレーム50と、該アッパーフレーム50の外面を覆う化粧板(後述の前面板60、背面板61、左右の側面板62,63及び上面板64)と、該ベースフレーム10に設けられた、該化粧板(前面板60、背面板61及び側面板62,63)の受入部70等を備えている。
【0030】
アッパーフレーム50は、開口5よりも一回り小さい方形枠状の底枠部51と、該底枠部51の四隅からそれぞれ垂直に立設されたピラー部52と、該ピラー部52の上端部同士を連結した上枠部(図示略)とを有する直方体形状のものである。このアッパーフレーム50の前面、背面、左右の側面及び上面に、それぞれ、化粧板よりなる前面板60、背面板61、側面板62,63及び上面板64が取り付けられている。これらの化粧板60〜64により、キャビネット1の全体の外面が構成されている。
【0031】
該前面板60、背面板61及び左右の側面板62,63の上下方向の長さは、いずれもアッパーフレーム50の高さよりも大となっており、第2,3図に示すように、各々の下端側は、底枠部51よりも所定距離下方にまで延在している。
【0032】
なお、この実施の形態では、該アッパーフレーム50の前面側の左右のピラー部52にそれぞれ便器取り付け片52aが設けられており、この便器取り付け片52aに対し、洋風便器2がボルト(図示略)等の固定具により固定されている。この実施の形態では、該洋風便器2はいわゆる壁掛けタイプのものであり、第2図の如く、キャビネット1(アッパーフレーム50)が下降限まで下降した状態においても、トイレルームの床面から若干上方へ浮いた状態でキャビネット1の前面から前方へ張り出すように、該便器取り付け片52aに取り付けられている。
【0033】
詳しい図示は省略するが、このアッパーフレーム50の上部には、便器洗浄、お尻洗浄等に用いられる水や温水を貯留するためのタンクが収容されている。また、このアッパーフレーム50内には、該タンクへの給水管や給湯管、該タンクから洋風便器2への給水管、該洋風便器2からの排水管、該排水管内が負圧になることを防止するための負圧破壊装置、オーバーフロー管等が配設されている。
【0034】
該タンクへの給水管や洋風便器2からの排水管、オーバーフロー管等の配管は、キャビネット1が昇降したときに、この昇降に追従して屈曲したり、伸縮するなどして給排水を持続しうるよう構成されている。
【0035】
底枠部51の左右の前後方向延在部51aには、それぞれ、このアッパーフレーム50を後述の各昇降装置30の昇降台37に固定するためのボルト54が挿通されるボルト挿通孔51bが設けられている。なお、第4図に示すように、この実施の形態では、各前後方向延在部51aに、該前後方向に間隔をおいて2個のボルト挿通孔51bが設けられているが、ボルト挿通孔51bの個数及び配置はこれに限定されない。
【0036】
前記ベースフレーム10は、開口5の内縁に沿って延在する方形枠状のものであり、このベースフレーム10の内側に、アッパーフレーム50の底枠部51から下方へはみ出した前面板60、背面板61及び側面板62,63の下端側が配置されている。
【0037】
この実施の形態では、該ベースフレーム10は、これらの前面板60、背面板61及び側面板62,63の下部の外面(キャビネット1の外側を向く面)にそれぞれ対面する外面側垂下片11と、該前面板60、背面板61及び側面板62,63の下部の内面(キャビネット1の内側を向く面)にそれぞれ対面する内面側垂下片12と、該外面側垂下片11及び内面側垂下片12の下端部同士を繋ぐ底板部13と、該外面側垂下片11の上端縁から側外方に張り出すフランジ14と、前記昇降装置30が設置される昇降装置設置部15等を備えている。
【0038】
この実施の形態では、該外面側垂下片11と内面側垂下片12との間が前記受入部70となっており、これらの間に、前面板60、背面板61及び側面板62,63の下端側がそれぞれ上方から上下動可能に入り込んでいる。
【0039】
なお、キャビネット1が下降限まで下降した状態において、該前面板60、背面板61及び側面板62,63のうち、この受入部70内に入り込んでいる部分の上下方向の長さは、いずれも、該キャビネット1が下降限から上昇限まで上昇したときの上下方向の移動距離よりも大となるように設定されている。
【0040】
このベースフレーム10は、開口5の両側の根太3,3間に配置され、フランジ14がこれらの根太3上に重ね合わされてボルト(図示略)等の固定具により固定されている。
【0041】
このベースフレーム10の上面のうち内面側垂下片12よりも内側の部分が昇降装置設置部15となっている。この実施の形態では、2機の昇降装置30がこの昇降装置設置部15の左半側と右半側とに並列に設置されている。また、この実施の形態では、前面板60と後面板61とに対面する前後の内面側垂下片12の上端側をそれぞれ上方へ延長するようにして、後述する各昇降装置30のドライブシャフト32の両端側を回転可能に支持するための軸受部16が形成されている。
【0042】
各昇降装置30は、該昇降装置設置部15の上面に沿って前後方向に略水平に延設されたスライドレール31と、該スライドレール31の上方に該スライドレール31と平行に延設され、両端側がそれぞれ前記軸受部16に回転可能に支持されたドライブシャフト32と、該ドライブシャフト32の延在方向の一半側及び他半側の外周面にそれぞれ形成された第1雄ねじ部33及び第2雄ねじ部34と、該第1雄ねじ部33及び第2雄ねじ部34にそれぞれ螺合した第1スライドブロック35及び第2スライドブロック36と、該第1スライドブロック35及び第2スライドブロック36の上方に昇降可能に配置された昇降台37と、該第1スライドブロック35及び第2スライドブロック36と該昇降台37とをそれぞれ連結した第1アーム38及び第2アーム39等を備えている。
【0043】
該第1スライドブロック35及び第2スライドブロック36は、それぞれ、下部がスライドレール31に対しスライド可能に係合している。
【0044】
該第1雄ねじ部33と第2雄ねじ部34とは互いに逆ねじの関係となっている。そのため、ドライブシャフト32が回転すると、該第1雄ねじ部33に螺合した第1スライドブロック35と、第2雄ねじ部36に螺合した第2スライドブロック36とは、互いに反対方向(互いに接近する方向又は互いに離反する方向)へ向って螺進することとなる。以下、第1スライドブロック35と第2スライドブロック36とを接近させる方向にドライブシャフト32が回転することを、ドライブシャフト32が正転するといい、第1スライドブロック35と第2スライドブロック36とを離反させる方向にドライブシャフト32が回転することを、ドライブシャフト32が逆転するという。
【0045】
第1アーム38及び第2アーム39は、それぞれ、一端側がヒンジ(符号略)を介して該第1スライドブロック又は第2スライドブロック36に回動可能に連結され、他端側が、ヒンジ(符号略)を介して昇降台37に回動可能に連結されている。この実施の形態では、第1スライドブロック35と第2スライドブロック36とが接近した位置から離反方向へ移動すると、該第1アーム38と第2アーム39とが起立回動して昇降台37を上昇させ、第1スライドブロック35と第2スライドブロック36とが離反した位置から接近方向へ移動すると、該第1アーム38と第2アーム39とが倒伏回動して昇降台37を降下させる。
【0046】
第4図の通り、前記アッパーフレーム50は、左右の各昇降装置30の昇降台37に跨って設置され、前記ボルト挿通孔51bを介して固定ボルト54によりこれらの昇降台37に固定されている。
【0047】
この実施の形態では、左右の昇降装置30,30同士が共通のモータ40により連動して昇降動作するよう構成されている。詳しくは、第5,6図の通り、各昇降装置30のドライブシャフト32の一端側にそれぞれ従動ギヤ41が設けられると共に、該モータ40の駆動軸(図示略)にはギヤボックス42を介して主動ギヤ43が連結されており、該主動ギヤ43が左右の各昇降装置30の従動ギヤ41,41間に配置され、これらに無端ベルト44が巻回されている。
【0048】
モータ40が起動すると、主動ギヤ43が回転し、無端ベルト44及び各従動ギヤ41を介して左右の各昇降装置30のドライブシャフト32が同一方向へ同一速度にて回転(正転又は逆転)駆動される。これにより、左右の昇降装置30が連動して同期的に昇降動作する。
【0049】
なお、このモータ40による各ドライブシャフト32の正転又は逆転駆動は、リモコン(図示略)のスイッチ操作に基づき、制御回路(図示略)により制御される。
【0050】
この昇降装置30にあっては、各スライドブロック35,36が、それぞれ、ベースフレーム10上に設けられたスライドレール31によって下から支持されているため、昇降台37から各アーム38,39を介して各スライドブロック35,36に掛かる荷重によりドライブシャフト32が曲がったり折れたりすることが防止される。
【0051】
かかる構成の洋風便器2付きキャビネット1を備えた衛生設備の使用方法は、前述の従来例と同様である。即ち、便器使用者が洋風便器2に腰掛ける際、及び洋風便器2から立ち上がる際に、前記リモコン操作によりキャビネット1を上昇させて洋風便器2を持ち上げる。これにより、便器使用者の足腰に掛かる負荷が軽減され、該便器使用者が足腰の弱い人であっても、楽に洋風便器2に腰掛けたり洋風便器2から立ち上がったりすることができる。
【0052】
この衛生設備にあっては、該キャビネット1の外面を構成する前面板60、背面板61及び側面板62,63の下端側が、それぞれ、床下に設置されたベースフレーム10の受入部70に対し上方から上下動可能に入り込んでおり、キャビネット1が上昇した場合には、その分だけこれらの前面板60、背面板61及び側面板62,63が該受入部70から床上側に繰り出される。そのため、キャビネット1が上昇しても、該前面板60、背面板61及び側面板62,63が床から離隔せず、キャビネット1の下部の外観は、該キャビネット1が下降限まで下降している状態のときと実質的に変わらない。これにより、キャビネット1が昇降しても該キャビネット1の見栄えが良好である。
【0053】
この実施の形態では、該受入部70を構成するベースフレーム10の外面側垂下片11と内面側垂下片12とにより、該前面板60、背面板61及び側面板62,63の下端側がそれぞれキャビネット1の内外両側から拘束されているため、該前面板60、背面板61及び側面板62,63は、押されたり引かれたりしても変形しにくく、これらの外面と床の開口5との間に隙間が生じることが防止される。
【0054】
この実施の形態では、ベースフレーム10から側外方にフランジ14が突設され、このフランジ14を根太3の上面に重ね合わせているため、該ベースフレーム10の床への設置が強固である。また、このようにベースフレーム10にフランジ14を設けたことにより、ベースフレーム10自体の剛性も高い。
【0055】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0056】
例えば、上記実施の形態では、衛生設備室はトイレルームであるが、本発明は、これ以外の衛生設備室(例えば洗面室やシャワールームなど)にも適用可能である。即ち、上記の実施の形態では、衛生機器として洋風便器2をキャビネット1に取り付けているが、本発明においては、洋風便器以外の衛生機器、例えば手洗い装置やシャワー装置等がキャビネット1に設けられてもよい。また、複数の衛生機器(同一種類であってもよく、異なる種類であってもよい。)がキャビネット1に取り付けられてもよい。
【0057】
キャビネット1の前面だけでなく、左右の側面や後面にも衛生機器を取り付けることができる。
【0058】
キャビネットの形状は、直方体状以外の形状(例えば円柱状など)とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態に係る衛生設備室としてのトイレルームのキャビネット付近の斜視図である。
【図2】キャビネット下降時を示す、図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】キャビネット上昇時を示す、図2と同一部分の断面図である。
【図4】ベースフレーム、昇降装置及びベースフレームの斜視図である。
【図5】キャビネット下降時におけるベースフレーム及び昇降装置の斜視図である。
【図6】キャビネット上昇時におけるベースフレーム及び昇降装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 キャビネット
2 洋風便器
3 根太
4 床板
5 開口
10 ベースフレーム
11 外面側垂下片
12 内面側垂下片
14 フランジ
30 昇降装置
31 スライドレール
32 ドライブシャフト
33,34 第1及び第2雄ねじ部
35,36 第1及び第2スライドブロック
37 昇降台
38,39 第1及び第2アーム
40 モータ
50 アッパーフレーム
60〜64 化粧板(前面板、背面板、左右の側面板及び上面板)
70 受入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生設備室内に設置される衛生設備であって、
少なくとも1つの側面の少なくとも下部が化粧板によって構成されたキャビネットと、
該キャビネットの該側面に取り付けられた衛生機器と、
該キャビネットを昇降させる昇降装置と
を備えた衛生設備において、
衛生設備室の床に埋設されるベースフレームを備えており、
該ベースフレームに、前記化粧板の受入部が設けられており、
該化粧板の下部が該受入部に対し上方から上下動可能に入り込んでいることを特徴とする衛生設備。
【請求項2】
請求項1において、該ベースフレームに、前記化粧板の下部の外面に対面する外面側垂下片と、該化粧板の下部の内面に対面する内面側垂下片とが設けられており、
該外面側垂下片と内面側垂下片との間が前記受入部となっていることを特徴とする衛生設備。
【請求項3】
請求項1又は2において、該ベースフレームは、衛生設備室の床下の根太の上面に重ね合わされるフランジを備えていることを特徴とする衛生設備。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該ベースフレームに前記昇降装置が設置されており、
該昇降装置によって昇降されるアッパーフレームが設けられ、前記化粧板は該アッパーフレームに取り付けられていることを特徴とする衛生設備。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記昇降装置は、該ベースフレーム上に延設されたスライドレールと、
該スライドレールの上側に該スライドレールと平行に延設されており、両端側が該ベースフレームに対し回転可能に支持されたドライブシャフトと、
該ドライブシャフトの延在方向の一半側及び他半側の外周面にそれぞれ形成されており、互いに逆ねじの関係となっている第1雄ねじ部及び第2雄ねじ部と、
該第1雄ねじ部及び第2雄ねじ部にそれぞれ螺合しており、該ドライブシャフトが正転することにより互いに接近方向に螺進し、該ドライブシャフトが逆転することにより互いに離反方向に螺進する第1スライドブロック及び第2スライドブロックと、
該第1スライドブロック及び第2スライドブロックの上側に昇降可能に配置された昇降台と、
該第1スライドブロック及び第2スライドブロックと該昇降台とをそれぞれ連結しており、該第1スライドブロックと第2スライドブロックとが接近方向及び離反方向の一方へ移動することにより起立回動して該昇降台を上昇させ、該第1スライドブロックと第2スライドブロックとが接近方向及び離反方向の他方へ移動することにより倒伏回動して該昇降台を降下させる第1アーム及び第2アームと、
前記ドライブシャフトを正転又は逆転方向へ回転駆動する駆動装置と
を備えており、
該第1スライドブロック及び第2スライドブロックの下部は、それぞれ前記スライドレールにスライド可能に係合していることを特徴とする衛生設備。
【請求項6】
衛生設備室内にキャビネットが設置され、
該キャビネットの少なくとも1つの側面の少なくとも下部が化粧板によって構成され、
該キャビネットの該側面に衛生機器が取り付けられ、
該キャビネットを昇降させる昇降装置が設けられている衛生設備室において、
該衛生設備室の床に、前記化粧板の受入部が設けられており、該化粧板の下部が該受入部に対し上方から上下動可能に入り込んでいることを特徴とする衛生設備室。
【請求項7】
請求項6において、前記衛生設備室の床は、根太と、該根太上に設置された床板とを備えており、
該床板のうち前記キャビネットの設置域に開口が設けられ、
該開口の内縁に沿って延在する枠状のベースフレームが設置されており、
該ベースフレームに、前記化粧板の下部の外面に対面する外面側垂下片と、該化粧板の下部の内面に対面する内面側垂下片とが設けられており、
該外面側垂下片と内面側垂下片との間が前記受入部となっていることを特徴とする衛生設備室。
【請求項8】
請求項7において、前記ベースフレームは、前記根太の上面に重ね合わされたフランジを備えていることを特徴とする衛生設備室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−321504(P2007−321504A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154955(P2006−154955)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】