説明

衝撃波連続発生装置

【課題】簡易な装置構成で収束衝撃波や平面衝撃波、あるいはこれらと略同等な効果が得られる発散衝撃波を繰り返し発生させることができる衝撃波連続発生装置を提供する。
【解決手段】デトネーション波を繰り返し発生させることが可能な連続デトネーション波発生装置20と、この装置20で発生させたデトネーション波から得られた衝撃波を反射させる衝撃波反射部材である衝撃波反射板50とを接続して衝撃波連続発生装置10を構成し、連続デトネーション波発生装置20でデトネーション波を繰り返し発生させてデトネーション管30内を伝播させ、デトネーション管30の出口31から外部へ拡がっていく衝撃波を衝撃波反射板50で反射することにより衝撃波の波面形状を整えて、特定点に収束する収束衝撃波、特定方向に平面状の波面で伝播する平面衝撃波、または特定方向に強い衝撃波部分を有する発散曲面状の波面で伝播する発散衝撃波を繰り返し生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃波を繰り返し発生させることが可能な衝撃波連続発生装置に係り、例えば、地雷の除去、除雪、火災の消火、危険または有害な動物や強盗等の駆除や撃退を行う場合等に利用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、デトネーション波を間欠的に発生させて、推力や仕事を獲得するパルスデトネーションエンジン(PDE:Pulse Detonation Engine)の研究開発が、日本、米国、欧州で行われている(非特許文献1参照)。このPDEでは、自走するデトネーション波が未燃ガスを圧縮するため、コンプレッサやポンプといった機構を用いることなく、またはそれらの負荷を低減させて推力や仕事を取り出すことができ、エンジン構造の単純化およびその結果として製造コストの削減を図ることができる。PDEの応用例としては、ロケットエンジン、空気吸い込み式ジェットエンジン、発電用エンジン等がある。なお、デトネーションとは、衝撃波と燃焼とが一つになって非常に高速(例えば、秒速1,000〜3,500m)で燃焼が伝播する現象であり、デトネーション波とは、燃焼による火炎(発熱反応部分)を伴って伝播する、すなわち高速な化学反応によるエネルギ放出を伴って伝播する衝撃波である。
【0003】
一方、上記のようなデトネーション波ではなく、燃焼を伴わない衝撃波も様々な形で応用されている。例えば、爆発の衝撃波で消火を行う技術等がある他、胆石破砕用の収束衝撃波発生装置等のように、衝撃波を特定点に収束させる技術もある(非特許文献2参照)。
【0004】
【非特許文献1】笠原次郎、「パルスデトネーションロケットと部分充填効果による推力増大法」、日本燃焼学会誌、日本燃焼学会、2005年5月31日、第47巻140号、p.84−89
【非特許文献2】高山和喜、「衝撃波ハンドブック」、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社、1995年12月6日、p.81−118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、離れた位置に大きな力を作用させようとした場合、これまでは固体や液体を用いなければならず、気体によって力(圧力)を作用させることはできなかった。これに対し、離れた位置に気体によって大きな力(圧力)を作用させることができれば、例えば、地雷の除去、高圧電線上の雪の除去等、離れた危険地域への力の伝達が可能となり便利である。
【0006】
また、離れた位置に気体の流れを発生させようとした場合、ファン等により特定の場所に遅い流れを発生させることや、爆弾による爆発により全方向に高速な流れを発生させることはできるが、特定の場所に高速な流れを発生させることはできなかった。これに対し、離れた位置の特定の場所に高速な気体の流れを発生させることができれば、例えば、効果的な消火を行うことが可能となり便利である。
【0007】
さらに、爆発音を発生させる場合、単発的に発生させることは比較的容易であるが、小規模な装置で連続的に、すなわち繰り返し何度も発生させることは困難であった。これに対し、小規模な装置で連続的に爆発音を発生させることができれば、例えば、熊や猪やカラス等の危険または有害な動物を撃退することが可能となり便利である。
【0008】
そして、以上のように、離れた位置に気体によって大きな力を作用させる、離れた位置の特定の場所に高速な気体の流れを発生させる、あるいは小規模な装置で連続的に爆発音を発生させるという要請があり、これらの要請を満たすには、特定の場所または特定方向に連続的に爆発音を伴う衝撃波を発生させればよいが、次のような理由で、これまで、パルスデトネーションエンジン(PDE)の技術を応用するという発想には至らなかった。すなわち、前述したように、PDEの技術は、デトネーション波を発生させ、これにより得られる高温高圧ガスを用いて推力や仕事を獲得することを目的としている。従って、PDEの研究では、そもそもデトネーションによって発生した高温高圧ガスをエネルギ源や推力源として利用することを前提としているため、デトネーション波から発生した衝撃波を利用するという発想が生じる余地はなかった。
【0009】
また、前述したように衝撃波の応用技術として衝撃波を収束させる技術は既に存在し、従来から、特定の場所または特定方向に伝播する収束衝撃波や平面衝撃波を発生させることは可能であったが、このような収束衝撃波や平面衝撃波を、簡易な装置で繰り返し何度も発生させることはできなかった。そして、PDEの技術として、簡易な装置構成でデトネーション波を繰り返し何度も発生させる技術はあるが、前述したように、そもそもPDEの研究からでは、デトネーション波から発生した衝撃波を利用するという発想は生じないので、デトネーション波を利用して衝撃波を連続発生させるという思想には結びつかず、さらには、PDEの技術と既存の衝撃波収束技術とを結び付ける動機付けも得られなかった。従って、簡易な装置で爆発音を伴う収束衝撃波や平面衝撃波、あるいはこれらの衝撃波と略同等な効果が得られるような特定方向に強い衝撃波部分を有する発散曲面状の波面で伝播する発散衝撃波の連続発生を実現することは困難であった。
【0010】
本発明の目的は、簡易な装置構成で収束衝撃波や平面衝撃波、あるいはこれらと略同等な効果が得られる発散衝撃波を繰り返し発生させることができる衝撃波連続発生装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、爆発波を連続的に発生させるパルスデトネーションエンジン(PDE)の技術と、既存の衝撃波収束技術とを組み合わせて前記目的を達成するものである。
【0012】
具体的には、本発明は、衝撃波を繰り返し発生させることが可能な衝撃波連続発生装置であって、デトネーション波を繰り返し発生させることが可能な連続デトネーション波発生装置と、この連続デトネーション波発生装置に接続されてこの連続デトネーション波発生装置で発生させたデトネーション波から得られた衝撃波を反射させる衝撃波反射部材とを備え、連続デトネーション波発生装置は、デトネーション波を伝播させる通路を形成するデトネーション管と、このデトネーション管内でデトネーションを開始させる開始装置とを含んで構成され、衝撃波反射部材は、デトネーション管の出口近傍に接続され、デトネーション管の出口に到達したデトネーション波が衝撃波となって出口位置から拡がる場合、デトネーション管の途中でデトネーション波が衝撃波となってこの衝撃波がデトネーション管の出口に到達して出口位置から拡がる場合、またはデトネーション管の出口の外部でデトネーション波が衝撃波となって出口の外部から拡がる場合に、拡がっていく衝撃波を反射させることにより衝撃波の波面形状を整えて特定点に収束する収束衝撃波、特定方向に平面状の波面で伝播する平面衝撃波、または特定方向に強い衝撃波部分を有する発散曲面状の波面で伝播する発散衝撃波を生成する構成とされていることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、「衝撃波反射部材」は、衝撃波の反射を行う内面形状が、衝撃波の波面形状の制御に適したものであれば、いずれの形状の部材でもよいが、装置の軽量化や製造容易化等の観点からは、板状部材であることが好ましい。
【0014】
また、「特定点に収束する」という意味は、厳密な意味での1点に収束する場合に限定されるものではなく、特定の場所や特定の領域のように、ある程度の大きさを持った収束点に向かって伝播していく場合も含まれる。
【0015】
さらに、「平面状の波面」とは、厳密な意味での平面に限定されるものではなく、略平面状になっていればよい趣旨である。
【0016】
このような本発明においては、連続デトネーション波発生装置の開始装置によりデトネーション管内でデトネーションを開始させると、発生したデトネーション波がデトネーション管内を伝播し、デトネーション管の出口に到達して出口位置から衝撃波となって拡がるか、または発生したデトネーション波がデトネーション管の途中で衝撃波となり、既に衝撃波となった状態でデトネーション管の出口に到達して出口位置から拡がるか、または発生したデトネーション波がデトネーション管の出口の外部まで伝播して出口の外部で衝撃波となって拡がる。その後、拡がっていく衝撃波は、衝撃波反射部材で反射され、波面形状を整えられて、特定点に収束する収束衝撃波、または特定方向に平面状の波面で伝播する平面衝撃波、または特定方向に強い衝撃波部分を有する発散曲面状の波面で伝播する発散衝撃波となる。そして、このようなサイクルが複数回繰り返される。
【0017】
従って、発生させた収束衝撃波または平面衝撃波、あるいはこれらと略同等な効果が得られる発散衝撃波を用いて、離れた位置に大きな力を作用させることが可能となる。このため、離れた危険地域への力の伝達が可能となる。例えば、発生させた衝撃波を地雷埋設場所に向かって伝播させ、そこで反射させることにより、その場所に大きな力(圧力)を作用させることができるので、地面に接することなく、地雷を安全に除去することが可能となる。また、例えば、平面衝撃波を雪面の広範囲に連続的かつ同時に反射させることにより、容易に雪崩を発生させることが可能となる。さらに、高圧電線上の雪の除去等も安全に行うことが可能となる。
【0018】
そして、離れた位置に容易に連続的に高速流れを生成することができるので、その高速流動により、火災を消火することが可能となる。また、連続的、かつ、特定点または特定方向に衝撃波を伝播させることができるので、爆発の衝撃波を単発的に全方向に伝播させる従来の消火方法に比べ、より効果的な消火方法が実現される。
【0019】
また、特定のタイミングで爆発音を発生させることができるので、電気がない場合等の災害時に救難信号として利用することが可能となる。さらに、連続的に特定方向に向けて爆発音を発生させることができるので、熊や猪やカラス等の危険または有害な動物の撃退や駆除、あるいは強盗やテロリスト等の撃退が可能となり、この際、相手に危害を加えることなく、相手を退散させることが可能となる。
【0020】
そして、本発明の衝撃波連続発生装置は、簡易かつ小規模な装置構成で実現可能であるため、以上のような様々な用途に適用するにあたり、装置を携帯可能な大きさとすることができ、使い勝手の良い装置を実現することが可能となり、これらにより前記目的が達成される。
【0021】
より具体的には、次のような装置構成とすることができる。すなわち、前述した衝撃波連続発生装置において、衝撃波反射部材の内面形状を回転楕円面とし、デトネーション管の出口を回転楕円面の一方の焦点位置に配置し、衝撃波反射部材を、回転楕円面の他方の焦点位置を収束点とする収束衝撃波を生成する構成とすることができる。
【0022】
また、前述した衝撃波連続発生装置において、衝撃波反射部材の内面形状を回転放物面とし、デトネーション管の出口を回転放物面の焦点位置に配置し、衝撃波反射部材を、回転放物面の中心軸に沿う方向に伝播する平面衝撃波を生成する構成としてもよい。
【0023】
さらに、平面衝撃波を生成する構成とする場合において、衝撃波反射部材の出口を管内空間に接続し、生成した平面衝撃波を管内空間へ伝播させる構成としてもよい。
【0024】
このように平面衝撃波を管内空間へ伝播させる構成とした場合には、管内部(デトネーション管のことではない。)に連続的に衝撃波を伝播させることができるので、管内壁に付着した物質を容易に取り除くことが可能となる。そして、管内空間の入口に本発明の衝撃波連続発生装置を接続するだけで、極めて長い管に対しても十分な付着物除去効果が得られる。
【0025】
また、以上に述べた衝撃波連続発生装置において、デトネーション管は、螺旋状に形成された部分を含む構成としてもよい。
【0026】
このようにデトネーション管を螺旋状にした場合には、装置の小型化を図ることが可能となり、より一層使い勝手の良い装置が実現される。
【0027】
そして、上記のようにデトネーション管を螺旋状にする場合において、デトネーション管の螺旋状に形成された部分を、衝撃波反射部材の外周に巻かれる状態で配置してもよい。
【0028】
このようにデトネーション管を螺旋状にして衝撃波反射部材の外周に巻かれる状態で配置した場合には、装置の小型化を、より一層図ることが可能となり、装置全体の大きさを衝撃波反射部材の大きさに近づけることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上に述べたように本発明によれば、連続デトネーション波発生装置と衝撃波反射部材とを接続し、連続デトネーション波発生装置でデトネーション波を繰り返し発生させ、このデトネーション波から得られる衝撃波を衝撃波反射部材で反射させることにより衝撃波の波面形状を整える構成としたので、簡易な装置構成で収束衝撃波や平面衝撃波、あるいはこれらと略同等な効果が得られる発散衝撃波を繰り返し発生させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本実施形態の衝撃波連続発生装置10の全体構成が示されている。図2は、衝撃波連続発生装置10の作動状況の説明図である。
【0031】
図1において、衝撃波連続発生装置10は、デトネーション波を繰り返し発生させることが可能な連続デトネーション波発生装置20と、この連続デトネーション波発生装置20に接続されて連続デトネーション波発生装置20で発生させたデトネーション波から得られた衝撃波を反射させる衝撃波反射板50とを備えている。
【0032】
連続デトネーション波発生装置20は、デトネーション波を伝播させる通路を形成するデトネーション管30と、このデトネーション管30内でデトネーションを開始させる開始装置40とを含んで構成されている。
【0033】
デトネーション管30は、本実施形態では、一例として、真っ直ぐに延びる円管であり、開始装置40が設けられた図中左側の端部が塞がれ、一方、これと反対側の図中右側の端部が開口し、ガスが噴出する出口31となっている。なお、図示のデトネーション管30は、本発明の機能を説明するために模式的に描かれたものであるため、管の長さと管径とは必ずしも実物の寸法比を反映しているものではない。また、デトネーション管30と衝撃波反射板50との大小関係や、デトネーション管30と開始装置40との大小関係も同様であり、必ずしも実物の寸法比を反映しているものではない。
【0034】
開始装置40は、デトネーション管30内に燃料(例えば、エチレンや水素等の気体燃料)を供給する燃料供給系41と、デトネーション管30内に酸化剤(例えば、酸素や一酸化二窒素(N2O)等)を供給する酸化剤供給系42と、デトネーション管30内の掃気(パージ)を行うための不活性ガス(例えば、ヘリウムや窒素等)を供給する不活性ガス供給系43と、デトネーション管30内に充填された燃料および酸化剤の予混合気体に点火(例えば、高電圧スパークによる点火等)してデトネーション波の伝播を開始させる点火器44と、開始装置40の動作を制御する制御装置45とを含んで構成されている。
【0035】
燃料供給系41は、ボンベ等の燃料供給源41Aと、この燃料供給源41Aとデトネーション管30内とを結ぶ燃料供給路41Bと、この燃料供給路41Bの途中に設けられた電磁バルブ等の開閉操作自在なバルブ41Cとを備えて構成されている。
【0036】
酸化剤供給系42は、ボンベ等の酸化剤供給源42Aと、この酸化剤供給源42Aとデトネーション管30内とを結ぶ酸化剤供給路42Bと、この酸化剤供給路42Bの途中に設けられた電磁バルブ等の開閉操作自在なバルブ42Cとを備えて構成されている。
【0037】
不活性ガス供給系43は、不活性ガス供給源43Aと、この不活性ガス供給源43Aとデトネーション管30内とを結ぶ不活性ガス供給路43Bと、この不活性ガス供給路43Bの途中に設けられた電磁バルブ等の開閉操作自在なバルブ43Cとを備えて構成されている。
【0038】
制御装置45は、例えば、コンピュータ、シーケンサ、またはリレー回路等により構成され、各バルブ41C,42C,43Cの開閉操作、および点火器44による点火のタイミングの制御を行うものである。
【0039】
衝撃波反射板50は、板状の衝撃波反射部材であり、デトネーション管30の出口31の近傍に接続されている。そして、衝撃波反射板50は、デトネーション管30の出口31に到達したデトネーション波が衝撃波となって出口位置から管外へ拡がる場合、デトネーション管30の途中でデトネーション波が衝撃波となってこの衝撃波がデトネーション管30の出口31に到達して出口位置から管外へ拡がる場合、またはデトネーション管30の出口31の外部でデトネーション波が衝撃波となって出口31の外部から拡がる場合に、拡がっていく衝撃波を反射させることにより衝撃波の波面形状を整えて特定点に収束する収束衝撃波を生成する構成とされている。より具体的には、本実施形態では、衝撃波反射板50の内面形状は、一例として、回転楕円面(楕円を長軸を中心として回転させて形成された面)の一部とされている。また、デトネーション管30の出口31は、衝撃波反射板50の回転楕円面の一方の焦点位置(図2(B)の焦点51の位置)に配置され、デトネーション管30の中心軸と衝撃波反射板50の回転楕円面の長軸とは一致している。従って、衝撃波反射板50は、回転楕円面の他方の焦点位置(図2(D)の焦点52の位置)を収束点とする収束衝撃波を生成する構成とされている。
【0040】
このような本実施形態においては、以下のようにして衝撃波連続発生装置10により衝撃波を繰り返し発生させる。
【0041】
先ず、連続デトネーション波発生装置20により、デトネーション波を発生させる。具体的には、制御装置45からの指令により、燃料供給系41のバルブ41Cおよび酸化剤供給系42のバルブ42Cを開け、燃料および酸化剤をデトネーション管30内に同時に供給し、デトネーション管30内に燃料および酸化剤の予混合気体(可燃性ガス)を充填する。本実施形態では、一例として、水素と酸素との組合せ、またはエチレンと酸素との組合せ等による爆轟性の予混合気体とする。この際、予混合気体は、デトネーション管30内の全体に充填してもよく、あるいはデトネーション管30の途中までの部分充填としてもよく、さらには、デトネーション管30の出口31から外部に溢れるように充填してもよい。
【0042】
続いて、制御装置45からの指令により、燃料供給系41のバルブ41Cおよび酸化剤供給系42のバルブ42Cを閉じ、点火器44で未燃の予混合気体に点火する。すると、デトネーションが開始され、図2(A)に示すように、燃焼を伴う衝撃波であるデトネーション波32が、点火器44の位置からデトネーション管30の出口31に向かって伝播し、その波面後方に高温高圧の既燃ガスが生成される。このデトネーション波32は、未燃の予混合気体がデトネーション管30内の全体に充填されている場合には、デトネーション管30の出口31まで伝播し、出口31の位置で可燃性ガスが無くなるので、空気中を伝播する衝撃波となる。また、未燃の予混合気体がデトネーション管30の途中まで部分充填されている場合には、デトネーション波32は、未燃の予混合気体が充填されている部分を伝播した後、可燃性ガスが無くなったところで空気中(または1サイクル前の既燃ガス)を伝播する衝撃波となり、この衝撃波が出口31まで伝播する。さらには、未燃の予混合気体がデトネーション管30の出口31から外部に溢れるように充填されている場合には、デトネーション波32は、出口31の外部の可燃性ガスが無くなる位置まで伝播して出口31の外部で空気中を伝播する衝撃波となる。そして、デトネーション波32(デトネーション管30の途中で衝撃波になっている場合には、衝撃波)がデトネーション管30の出口31に到達すると、デトネーション管30内で生成された高温高圧の既燃ガスは、出口31から排出される。なお、点火してから、デトネーション波32または衝撃波が出口31に到達するまでの時間は、例えば、全長数mのデトネーション管30の場合、10ms程度である。
【0043】
次に、図2(B)に示すように、デトネーション管30の出口31でデトネーション波(デトネーション管30の途中で衝撃波になっている場合には、衝撃波)を回折させ、放射状に伝播する回折衝撃波53を生成する。従って、衝撃波は、衝撃波反射板50の回転楕円面の焦点51の位置を中心として放射状に拡がっていく。
【0044】
さらに、図2(C)に示すように、放射状に拡がった衝撃波を衝撃波反射板50により反射させ、衝撃波の波面を整える。本実施形態では、衝撃波反射板50の内面形状は、回転楕円面であるため、収束衝撃波54が生成される。そして、収束衝撃波54は、図2(D)に示すように、やがて1点に収束する。この収束点は、本実施形態では、衝撃波反射板50の回転楕円面の焦点52である。
【0045】
その後、制御装置45からの指令により、不活性ガス供給系43のバルブ43Cを開け、不活性ガスをデトネーション管30内に送り込んでデトネーション管30内の掃気(パージ)を行い、掃気を完了したらバルブ43Cを閉める。
【0046】
そして、以上に述べたサイクルを、制御装置45からの指令により複数回繰り返す。この際、制御装置45からの指令は、例えば、衝撃波連続発生装置10を操作するユーザが、ボタンを押し続けまたはスイッチを入れ続ける間中ずっと、衝撃波が予め設定された所定の時間間隔(例えば、100ms間隔等)で連続発生するように出されてもよく、あるいはユーザが、1回ボタンを押しまたは1回スイッチを入れると、1サイクルの作動で衝撃波が1回発生するように指令が出されてもよい。後者のように指令を出す場合には、衝撃波を繰り返し発生させるには、繰り返しボタンを押しまたはスイッチを入れる必要がある。なお、前者のように指令を出す場合において、ユーザによるボタンやスイッチの操作時間が極めて短時間であった場合、あるいは後者のように指令を出す場合において、ユーザが、ボタンやスイッチを1回しか操作しなかった場合には、結果的に衝撃波が1回しか発生しないが、本発明の衝撃波連続発生装置は、衝撃波を連続発生させることが可能な構成となっていればよいので、結果的に衝撃波が1回しか発生しない場合があってもよい。また、ユーザが、1回ボタンを押しまたは1回スイッチを入れると、所定時間(例えば数秒間)に渡り、あるいは所定回数(例えば数回)だけ、衝撃波が繰り返し発生するようにしてもよい。さらに、衝撃波を発生させる時間間隔、すなわち1サイクルの所要時間は、通常の設定では、例えば、100ms程度であるが、ユーザが、ある程度自在に設定できるようにしてもよい。
【0047】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、衝撃波連続発生装置10は、連続デトネーション波発生装置20と衝撃波反射板50とを備えているので、収束衝撃波を繰り返し発生させることができる。
【0048】
従って、発生させた収束衝撃波を用いて、離れた位置(比較的近距離の位置であるが、衝撃波反射板50の回転楕円面の長軸と短軸との比を調整することで、収束点の位置を調整することができる。)に大きな力を作用させることができる。このため、離れた危険地域への力の伝達を行うことができ、例えば、地雷の除去、高圧電線上の雪の除去等を安全に行うことができる。
【0049】
そして、離れた位置に容易に連続的に高速流れを生成することができるので、その高速流動により、火災の消火を行うことができる。しかも、連続的かつ特定点に収束するように衝撃波を伝播させることができるので、従来に比べ、より効果的な消火方法を実現することができる。
【0050】
また、特定のタイミングで爆発音を発生させることができるので、電気がない場合等の災害時に救難信号として利用することができる。さらに、連続的に特定方向に向けて爆発音を発生させることができるので、熊や猪やカラス等の危険または有害な動物の撃退や駆除、あるいは強盗やテロリスト等の撃退を行うことができる。
【0051】
そして、連続デトネーション波発生装置20を用いてデトネーション波を繰り返し発生させることにより衝撃波を繰り返し発生させるので、衝撃波の連続発生を、簡易かつ小規模な装置構成で実現することができる。このため、携帯することが可能な装置とすることもでき、使い勝手の良い装置を実現することができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0053】
例えば、前記実施形態の衝撃波連続発生装置10は、衝撃波反射板50の内面形状が回転楕円面とされ、収束衝撃波を生成する構成とされていたが、図3に示すように、衝撃波反射部材の内面形状を回転放物面等として、平面衝撃波を生成する構成としてもよい。
【0054】
図3において、衝撃波連続発生装置200は、前記実施形態の場合と同じ構成の連続デトネーション波発生装置20と、前記実施形態の衝撃波反射板50とは異なる形状の衝撃波反射部材である衝撃波反射板250とを備えている。
【0055】
衝撃波反射板250は、前記実施形態の衝撃波反射板50の場合と同様に、デトネーション管30の出口31の近傍に接続されている。そして、衝撃波反射板250は、デトネーション管30の出口31に到達したデトネーション波が衝撃波となって出口位置から管外へ拡がる場合、デトネーション管30の途中でデトネーション波が衝撃波となってこの衝撃波がデトネーション管30の出口31に到達して出口位置から管外へ拡がる場合、またはデトネーション管30の出口31の外部でデトネーション波が衝撃波となって出口31の外部から拡がる場合に、拡がっていく衝撃波を反射させることにより衝撃波の波面形状を整えて特定方向に平面状の波面で伝播する平面衝撃波254を生成する構成とされている。より具体的には、衝撃波反射板250の内面形状は、一例として、回転放物面(放物線を対称軸を中心として回転させて形成された面)とされている。また、デトネーション管30の出口31は、衝撃波反射板250の回転放物面の焦点251の位置に配置され、デトネーション管30の中心軸と衝撃波反射板250の回転放物面の中心軸とは一致している。従って、衝撃波反射板250は、回転放物面の中心軸に沿う方向に伝播する平面衝撃波254を生成する構成とされている。
【0056】
このように平面衝撃波を連続発生させる衝撃波連続発生装置200とした場合にも、前記実施形態の衝撃波連続発生装置10の場合と同様に、発生させた平面衝撃波を用いて、離れた位置に大きな力を作用させることができるので、離れた危険地域への力の伝達を行うことができ、例えば、地雷の除去、高圧電線上の雪の除去等を安全に行うことができる。
【0057】
また、前記実施形態の衝撃波連続発生装置10の場合と同様に、離れた位置に容易に連続的に高速流れを生成することができるので、火災の消火を行うことができ、しかも、連続的かつ特定方向に衝撃波を伝播させることができるので、従来に比べ、より効果的な消火方法を実現することができる。
【0058】
さらに、前記実施形態の衝撃波連続発生装置10の場合と同様に、特定のタイミングで爆発音を発生させることができるので、災害時の救難信号としての利用、熊や猪やカラス等の危険または有害な動物の撃退や駆除、強盗やテロリスト等の撃退を行うことができる。
【0059】
そして、前記実施形態の衝撃波連続発生装置10の場合と同様に、連続デトネーション波発生装置20を用いてデトネーション波を繰り返し発生させることにより衝撃波を繰り返し発生させるので、衝撃波の連続発生を、簡易かつ小規模な装置構成で実現することができ、携帯可能な装置、使い勝手の良い装置を実現することができる。
【0060】
また、上記の図3に示した衝撃波連続発生装置200のように、平面衝撃波を生成する構成とする場合において、生成した平面衝撃波を自由空間へ伝播させるのではなく、図4に示すように、衝撃波反射部材の出口を管内空間に接続し、生成した平面衝撃波を管内空間へ伝播させる構成としてもよい。図4では、上記の図3に示した衝撃波連続発生装置200の衝撃波反射板250の出口を、管内空間260に接続している。このように平面衝撃波を管内空間260へ伝播させる構成とすれば、管内壁に付着した物質を容易に取り除くことができ、極めて長い管に対しても十分な付着物除去効果を得ることができる。
【0061】
さらに、前記実施形態では、内面形状を回転楕円面とされた衝撃波反射板50は、長軸方向について、回転楕円面の半分または半分に満たない大きさ(つまり、短軸の位置までか、または短軸に至らない位置までの大きさ)とされていたが、図5に示すように、回転楕円面の長軸方向について、半分を超える大きさ(つまり、短軸の位置を含む大きさ)の内面形状を有する衝撃波反射部材としてもよい。
【0062】
図5において、衝撃波連続発生装置300は、前記実施形態の場合と同じ構成の連続デトネーション波発生装置20と、前記実施形態の衝撃波反射板50よりも回転楕円面の全体に近い大きさの内面形状を有する衝撃波反射部材である衝撃波反射板350とを備えている。この衝撃波反射板350の内面形状は、回転楕円面の一部となっていて、前記実施形態の場合と同様に、デトネーション管30の出口31が一方の焦点351の位置に配置され、これにより他方の焦点352の位置を収束点とする収束衝撃波354が生成されるようになっているが、前記実施形態の場合とは異なり、長軸方向について、半分を超える大きさ(つまり、短軸の位置を含む大きさ)となっている。このようにした場合には、近距離の収束点に、より確実に力を伝達することができる。
【0063】
また、前記実施形態では、真っ直ぐに延びるデトネーション管30とされていたが、本発明におけるデトネーション管は、螺旋状に形成された部分を含む構成としてもよく、このようにした場合には、装置の小型化を図ることができ、より一層使い勝手の良い衝撃波連続発生装置を実現することができる。例えば、図6に示された衝撃波連続発生装置400のように、デトネーション管430の螺旋状に形成された部分を、衝撃波反射板450の外周に巻かれる状態で配置してもよい。このようにデトネーション管430を螺旋状にして衝撃波反射板450の外周に巻かれる状態で配置した場合には、装置の小型化を、より一層図ることができ、装置全体の大きさを衝撃波反射板450の大きさに近づけることができる。
【0064】
さらに、本発明における衝撃波反射部材の内面形状は、回転楕円面や回転放物面に限定されるものではなく、特定点(特定領域でよい。)に収束する収束衝撃波や、特定方向に平面状の波面(略平面状とみなせる程度の波面でよい。)で伝播する平面衝撃波、あるいは特定方向に強い衝撃波部分を有する発散曲面状の波面で伝播する発散衝撃波を生成することができる形状であればよく、例えば、図7に示す衝撃波連続発生装置500のように、ラッパ状の部材と円管状の部材とを連結した衝撃波反射板550としてもよい。また、図7の例では、衝撃波反射板550と、デトネーション管30との接続位置は、デトネーション管30の出口31よりも上流側の位置とされているが、本発明における衝撃波反射部材は、デトネーション管の出口位置に接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明の衝撃波連続発生装置は、例えば、地雷の除去、除雪、火災の消火、危険または有害な動物や強盗等の駆除や撃退を行う場合等に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態の衝撃波連続発生装置の全体構成図。
【図2】前記実施形態の衝撃波連続発生装置の作動状況の説明図。
【図3】本発明の第1の変形の形態を示す構成図。
【図4】本発明の第2の変形の形態を示す構成図。
【図5】本発明の第3の変形の形態を示す構成図。
【図6】本発明の第4の変形の形態を示す構成図。
【図7】本発明の第5の変形の形態を示す構成図。
【符号の説明】
【0067】
10,200,300,400,500 衝撃波連続発生装置
20 連続デトネーション波発生装置
30,430 デトネーション管
31 デトネーション管の出口
32 デトネーション波
40 開始装置
50,250,350,450,550 衝撃波反射部材である衝撃波反射板
51,351 回転楕円面の一方の焦点
52,352 回転楕円面の他方の焦点
54,354 収束衝撃波
251 回転放物面の焦点
254 平面衝撃波
260 管内空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃波を繰り返し発生させることが可能な衝撃波連続発生装置であって、
デトネーション波を繰り返し発生させることが可能な連続デトネーション波発生装置と、この連続デトネーション波発生装置に接続されてこの連続デトネーション波発生装置で発生させたデトネーション波から得られた衝撃波を反射させる衝撃波反射部材とを備え、
前記連続デトネーション波発生装置は、デトネーション波を伝播させる通路を形成するデトネーション管と、このデトネーション管内でデトネーションを開始させる開始装置とを含んで構成され、
前記衝撃波反射部材は、前記デトネーション管の出口近傍に接続され、前記デトネーション管の出口に到達したデトネーション波が衝撃波となって出口位置から拡がる場合、前記デトネーション管の途中でデトネーション波が衝撃波となってこの衝撃波が前記デトネーション管の出口に到達して出口位置から拡がる場合、または前記デトネーション管の出口の外部でデトネーション波が衝撃波となって出口の外部から拡がる場合に、拡がっていく衝撃波を反射させることにより衝撃波の波面形状を整えて特定点に収束する収束衝撃波、特定方向に平面状の波面で伝播する平面衝撃波、または特定方向に強い衝撃波部分を有する発散曲面状の波面で伝播する発散衝撃波を生成する構成とされている
ことを特徴とする衝撃波連続発生装置。
【請求項2】
前記衝撃波反射部材の内面形状は、回転楕円面とされ、
前記デトネーション管の出口は、回転楕円面の一方の焦点位置に配置され、
前記衝撃波反射部材は、回転楕円面の他方の焦点位置を収束点とする収束衝撃波を生成する構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の衝撃波連続発生装置。
【請求項3】
前記衝撃波反射部材の内面形状は、回転放物面とされ、
前記デトネーション管の出口は、回転放物面の焦点位置に配置され、
前記衝撃波反射部材は、回転放物面の中心軸に沿う方向に伝播する平面衝撃波を生成する構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の衝撃波連続発生装置。
【請求項4】
前記衝撃波反射部材の出口は、管内空間に接続され、生成した平面衝撃波を前記管内空間へ伝播させる構成とされていることを特徴とする請求項1または3に記載の衝撃波連続発生装置。
【請求項5】
前記デトネーション管は、螺旋状に形成された部分を含む構成とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の衝撃波連続発生装置。
【請求項6】
前記デトネーション管の螺旋状に形成された部分は、前記衝撃波反射部材の外周に巻かれる状態で配置されていることを特徴とする請求項5に記載の衝撃波連続発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−107821(P2007−107821A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299886(P2005−299886)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(504193837)国立大学法人室蘭工業大学 (70)