説明

衣料用仕上げ剤組成物

【課題】衣料に対して、より高い退色防止効果を発現する衣料用仕上げ剤組成物を提供する。
【解決手段】分子内に炭素数7〜25の炭化水素基を一つ有するアミン化合物の中和物(a)の所定量と、シリコーン化合物(b)の所定量と、水とを含有し、(a)/(b)質量比が所定範囲にあり、且つpH(30℃)が所定範囲にある衣料用仕上げ剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣料用仕上げ剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料は着用後に洗濯を繰り返すことにより、その色柄が褪せていくことがある。退色の原因としては、洗剤中に含有される蛍光剤の影響や、天日干しした際の紫外線の影響なども挙げることができるが、特に水道水中に含まれる活性塩素の影響が大きく、洗浄のみならず濯ぎの際にも退色が生じることが明らかとなっている。また、洗濯時に衣料同士が擦れることによって生じるケバ立ちなども、衣料の色柄の劣化に影響を与える因子である。このため、塩素の影響を低減する手段や柔軟効果を衣料に付与できる手段を採用することは、衣料の色あせ防止に効果的であると考えられる。
【0003】
濯ぎ時の衣料の色あせを防ぐ技術としては特許文献1〜3を参考にすることができる。すなわち、特許文献1には、3級アミンもしくはその中和物もしくはその4級化物と、1級又は2級アミンを含む液体柔軟剤組成物が記載されている。特許文献2には、カチオン系4級アンモニウム化合物と、アミン、アンモニウム塩、アミノ酸などの塩素スカベンジャーとを含有する布帛柔軟化組成物が開示されている。特許文献3には、所定の第4級アンモニウム塩の混合物と所定の短鎖第3級アミンとを含有する液体柔軟剤組成物が開示されている。
【0004】
また、シリコーン化合物を利用した柔軟剤組成物などについては特許文献4〜7を参考にすることができる。すなわち、特許文献4、5には、シリコーン化合物、カチオン性を有する水溶性高分子化合物、酸性染料及び/又は直接染料、及び酸化防止剤を含有する液体柔軟剤組成物が開示されている。また、特許文献6には、特定のポリジメチルシリコーン、特定のアミノ変性シリコーン及び特定のポリエーテル変性シリコーンから選ばれるシリコーン化合物を特定割合で含有する透明な液体柔軟剤組成物が開示されている。また、特許文献7には、所定の比重、粘度を有するシリコーンを特定割合で含有する液体柔軟剤組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平10−1869号公報
【特許文献2】特表平10−506966号公報
【特許文献3】特開2007−107177号公報
【特許文献4】特開2004−131895号公報
【特許文献5】特開2004−131896号公報
【特許文献6】特開2004−263347号公報
【特許文献7】国際公開第2004/061197号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、衣料に対して、より高い退色防止効果を発現する衣料用仕上げ剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、より効果的に洗濯時の色あせを抑制するには、水道水中の活性塩素の働きを抑制し、更に潤滑性の高い物質を衣料上に処理する事によって衣料同士の摩擦を低減することが好ましいとの観点から、前記の目的を達成する手段として、所定のアミン化合物の中和物とシリコーン化合物とを所定の比率で併用することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、分子内に炭素数7〜25の炭化水素基を一つ有するアミン化合物の中和物(a)〔以下、(a)成分という〕0.1〜10質量%と、シリコーン化合物(b)〔以下、(b)成分という〕と、水とを含有し、(a)と(b)の質量比〔(a)は未中和のアミン換算〕が(a)/(b)=0.05〜20であり、且つ30℃におけるpHが1.5〜5の衣料用仕上げ剤組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、上記本発明の衣料用仕上げ剤組成物と水とを含有し、(a)成分の濃度が0.1〜500mg/水1kgである処理浴に衣料を浸漬する、衣料の処理方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より高い退色防止効果を発現する衣料用仕上げ剤組成物が得られる。本発明の衣料用仕上げ剤組成物では、アミン化合物により、洗濯の濯ぎ段階で効果的に水道水中の残留塩素を除去でき、更にシリコーンによって繊維表面に高潤滑性を付与することで、衣料同士の擦れによる繊維の劣化を抑制できる。そのため、これら効果の複合により、衣料の退色を効果的に抑制することが出来るものと推察される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<(a)成分>
(a)成分は、分子内に炭素数7〜25の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基を一つ有するアミン化合物の中和物であり、下記一般式(1)で表される化合物の酸塩が好ましい。
【0011】
【化2】

【0012】
〔式中、R1aは、炭素数7〜25のアルキル基又はアルケニル基であり、R1b、R1cは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。R1dは、炭素数1〜6のアルキレン基である。Aは、−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、nは0又は1の数である。〕
【0013】
一般式(1)の化合物において、R1aは炭素数11〜23のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。また、R1b、R1cはそれぞれ独立にメチル基又はヒドロキシエチル基が好ましい。また、R1dはエチレン基又はプロピレン基が好ましい。また、Aは−COO−又は−CONH−が好ましい。また、nは1が好ましい。
【0014】
また、上記一般式(1)の化合物の酸塩は、無機酸又は有機酸による中和により得ることができる。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸が挙げられる。
【0015】
<(b)成分>
(b)成分としては、ジメチルポリシロキサンのほか、アミノ基、アミド基、ポリエーテル基、カチオン基、アミドポリエーテル基、カルビノール変性基から選ばれる変性基を有するシリコーン化合物を挙げることができ、繊維の潤滑性、柔軟性の点からジメチルポリシロキサン化合物が最も好適である。
【0016】
(b)成分は、25℃における粘度が1,000〜10,000,000mm2/sが好ましく、より好ましくは5,000〜10,000,000mm2/s、更に10,000〜1,000,000mm2/sであるものが好ましい。
【0017】
(b)成分は、エマルションとして用いることができる。エマルションとしては、シリコーン化合物、好ましくは25℃における粘度が5,000〜10,000,000mm2/sであるシリコーン化合物を5〜70質量%、界面活性剤、好ましくは非イオン界面活性剤を0.5〜30質量%、及び水を含有するものが挙げられる。
【0018】
<衣料用仕上げ剤組成物>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、(a)成分を0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。
【0019】
また、本発明の衣料用仕上げ剤組成物では、退色防止効果の観点から、(a)成分と(b)成分の質量比〔(a)成分は未中和のアミン換算〕が(a)/(b)=0.05〜20であり、好ましくは(a)/(b)=0.1〜15、より好ましくは0.5〜10である。この質量比を満たした上で、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、(b)成分を好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.5〜4質量%、より好ましくは0.5〜3質量%含有する。
【0020】
一例として、本発明の衣料用仕上げ剤組成物が(a)成分を1〜7質量%含有する場合、(a)/(b)は1以上が好ましく、具体的には1〜10が好ましい。
【0021】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、(c)成分として、非イオン界面活性剤を含有することができる。(c)成分としては、下記一般式(c1)の化合物が好適である。(c)成分の含有量は、組成物中、0.5〜15質量%、更に1〜10質量%が好ましい。
【0022】
2a−E−[(R2bO)e−R2cg (c1)
〔式中、R2aは、炭素数8〜18、好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R2bは炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。R2cは、炭素数1〜3のアルキル基、又は水素原子である。eは2〜100、好ましくは5〜80、より好ましくは10〜70の数を示す。Eは−O−、−COO−、−CON−又は−N−であり、Eが−O−又は−COO−の場合はgは1であり、Eが−CON−又は−N−の場合はgは1又は2である。〕
【0023】
一般式(c1)の化合物の具体例として以下の化合物を挙げることができる。
2a−O−(C24O)h−H
〔式中、R2aは前記の意味を示す。hは8〜100、好ましくは10〜70の数である。〕
2a−O−[(C24O)i/(C36O)j]−H
〔式中、R2aは前記の意味を示す。i及びjはそれぞれ独立に2〜40、好ましくは5〜40の数であり、(C24O)と(C36O)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0024】
その他に、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、香料、染料、酸化防止剤、粘度調整剤、ゲル化防止剤、ハイドロトロープ剤、金属イオン封鎖剤などを適宜含有することができる。
【0025】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、30℃におけるpHが1.5〜5であり、2〜4であることが好ましい。pH調整剤としては、クエン酸、酢酸、りんご酸、コハク酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸や塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸などの酸剤、及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アルカノールアミンなどのアルカリ剤を用いることができる。
【0026】
また、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、30℃における粘度が5〜300mPa・s、更に15〜200mPa・sであることが好ましい。
【0027】
<衣料の処理方法>
上記本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、当該組成物と水とを含有する処理浴で衣料を処理する方法に用いられることが好ましい。好ましくは、本発明の衣料用仕上げ剤組成物を、(a)成分の濃度が0.1〜500mg/水1kgとなるように含有する処理浴に衣料を浸漬する方法である。この方法は、洗濯工程に組み込むことができ、具体的には、洗濯工程のすすぎ工程において、すすぎ水に本発明の組成物を添加して実施することができる。
【実施例】
【0028】
実施例1〜8及び比較例1〜7
下記配合成分を用いて、表1に示す組成の衣料用仕上げ剤組成物を下記調製方法に従い調製した。得られた衣料用仕上げ剤組成物の色あせ防止効果を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0029】
<(a)成分>
(a)成分として、下記式で表される(a−1)〜(a−3)を用いた。(a−1)〜(a−3)は、公知の方法により製造した。
【0030】
【化3】

【0031】
<(a’)成分(比較品)>
(a)成分として、下記式で表される(a’−1)〜(a’−3)を用いた。(a’−1)〜(a’−3)は、公知の方法により製造した。
【0032】
【化4】

【0033】
<(b)成分>
(b−1):25℃における動粘度が500,000mm2/sのシリコーンオイル60質量%、エチレンオキサイド平均付加モル数(以下、EOpと表記する)5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル2質量%、EOp23モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル5質量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.1質量%を含有し、残部が水であり、分散粒子の平均粒子径が500nmであるシリコーンエマルジョン。
(b−2):25℃における動粘度が20,000mm2/sのシリコーンオイル60質量%、EOp5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル1.5質量%、EOp23モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル4.5質量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.1質量%を含有し、残部が水であり、分散粒子の平均粒子径が500nmであるシリコーンエマルジョン
(b−3):25℃における動粘度が1,000mm2/sのシリコーンオイル60質量%、EOp5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル1.5質量%、EOp23モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル5.5質量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.1質量%を含有し、残部が水であり、分散粒子の平均粒子径が500nmであるシリコーンエマルジョン
【0034】
<(c)成分>
(c−1):ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを平均20モル付加させたもの
【0035】
<衣料用仕上げ剤組成物の調製法>
300mLビーカーに、衣料用仕上げ剤組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水と(c)成分を入れ、ウォーターバスで70℃に昇温した。一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(300r/min)、所要量の(a)成分を溶解させた。そのまま5分攪拌後、pH調整剤として塩酸と48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて目標のpHに調整し、出来あがり質量にするのに必要な量の70℃のイオン交換水を添加した。その後に、該混合物に(b)成分を添加した。その後10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら混合物を30℃に冷却して、衣料用仕上げ剤組成物を得た。pHは0.1N塩酸水溶液又は0.1N水酸化ナトリウム水溶液により調整した。表1の衣料用仕上げ剤組成物では、(a−1)〜(a−3)成分及び(a’−1)〜(a’−3)成分は、ほぼすべて酸塩の状態で衣料用仕上げ剤組成物中に存在する。
【0036】
<色あせ防止効果の評価法>
日本製紫色Tシャツ(Le Winner社製)を10cm×10cm角に裁断したものを試験布とし、市販木綿肌着2Kg、混紡Yシャツ0.7kgと共に全自動洗濯機(ナショナルNA−F70E)に入れ、市販の弱アルカリ洗剤(花王市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製アタック)で洗濯後、2回目の濯ぎ時に各衣料用仕上げ剤組成物を用いて累積10回処理を行った(標準コース、洗剤濃度0.0667質量%、衣料用仕上げ剤組成物量10ml、水道水40L使用、水温20℃)。その後、試験布を25℃、40%RH条件下で自然乾燥した後、パネラーによる未処理布との比較を行い、評価した。すなわち、10名のパネラー(男性10名)に未処理布と比較して下記の基準で判定し、平均点を求めた。
全く色あせしていない・・・・4
あまり色あせしていない・・・・3
やや色あせしている・・・・2
色あせしている・・・・1
色あせ評価において、累積10回洗濯後の評価が3.0点以上は洗濯による色あせを抑制する効果が非常に良好である。
【0037】
【表1】

【0038】
*(a)/(b)質量比:(a)成分、又は、(a’)成分に対する比。すなわち、表中、比較例では、(a’−1)〜(a’−3)を(a)成分として(a)/(b)質量比を示した。また、(b)成分の質量は、(b−1)、(b−2)、(b−3)中のシリコーンオイルの質量で計算した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に炭素数7〜25の炭化水素基を一つ有するアミン化合物の中和物(a)0.1〜10質量%と、シリコーン化合物(b)と水とを含有し、(a)と(b)の質量比〔(a)は未中和のアミン換算〕が(a)/(b)=0.05〜20であり、且つ30℃におけるpHが1.5〜5の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項2】
(a)が、下記一般式(1)で表される化合物の酸塩である、請求項1記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【化1】


〔式中、R1aは、炭素数7〜25のアルキル基又はアルケニル基であり、R1b、R1cは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。R1dは、炭素数1〜6のアルキレン基である。Aは、−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、nは0又は1の数である。〕
【請求項3】
(b)が、25℃における粘度が1,000〜10,000,000mm2/sであるシリコーン化合物である、請求項1又は2記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の衣料用仕上げ剤組成物と水とを含有し、(a)の濃度が0.1〜500mg/水1kgである処理浴に衣料を浸漬する、衣料の処理方法。

【公開番号】特開2009−91709(P2009−91709A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266285(P2007−266285)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】