衣服
【課題】扁平に折り畳むことを可能とし、かつその衣服の外観デザインの視覚的アピールに寄与する衣服を提供することにある。
【解決手段】1シート又は相互に継合わされた複数シートの服地103である衣服本体101を備え、衣服本体の各シートの服地が、人に着用されたとき、人の身体の所定部分を貫通させる少なくとも2つの開口を有する中空の立体形状を形成し、各シートの服地は、その面積の全体に行列状に配列された多数の多角形パターン105を画成する多数の恒常的な折り線107、109を有し、多数の折り線は、それらに沿って服地が扁平に折り畳まれることを可能とする幾何学的条件を満たし、各シートの服地が、人に着用されたとき、多数の折り線に沿った折れが維持されるように、異なる多角形パターン上の少なくとも2箇所が、相互に結合されるための結合手段115a〜115dを有する。
【解決手段】1シート又は相互に継合わされた複数シートの服地103である衣服本体101を備え、衣服本体の各シートの服地が、人に着用されたとき、人の身体の所定部分を貫通させる少なくとも2つの開口を有する中空の立体形状を形成し、各シートの服地は、その面積の全体に行列状に配列された多数の多角形パターン105を画成する多数の恒常的な折り線107、109を有し、多数の折り線は、それらに沿って服地が扁平に折り畳まれることを可能とする幾何学的条件を満たし、各シートの服地が、人に着用されたとき、多数の折り線に沿った折れが維持されるように、異なる多角形パターン上の少なくとも2箇所が、相互に結合されるための結合手段115a〜115dを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣服、例えばドレス、ジャケット、シャツ、スカート、キュロットスカート及びパンツなどに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベルトのような形状に折り畳むことができ、それにより、非使用時に腰のまわりにベルトのように装着することができる防水衣服が開示されている。
【0003】
特許文献2には、非着用時にコンパクトに折り畳むことができる外科用ガウンが開示されている。
【0004】
特許文献3には、一部分にプリーツを有する医師用ガウンであって、非着用時にそのガウンを折り畳むとき、その一部分がプリーツの折り目に沿って折り畳めるようになったものが開示されている。
【0005】
特許文献4には、プリーツを有し、そのプリーツの折り目に沿って小さく折り畳めるスカートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−140101号公報
【特許文献2】特開昭60−88545号公報
【特許文献3】特開昭64−26703号公報
【特許文献4】実開昭58−148013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
衣服には、人に着用されるときのその衣服の形状が、人体の複雑な形状に適合すること、及び、人の動きに応じて柔軟に変化できることも要求される。また、衣服には、その衣服が人に着用されるときに視覚的にアピールする美的な外観をもつことが望まれる。加えて、衣服には、その衣服の収納スペースを節約し、かつその衣服の運搬を容易にするために、扁平な形状に折り畳めることが望まれる。
【0008】
しかし、従来、視覚的アピールが重視される通常の衣服の場合、その衣服を扁平に折り畳んだならば、その折り畳み線が、その衣服の着用時における、美的にデザインされた外観を損なう結果になる。それゆえ、人々は通常、その美的な外観に価値のある衣服を収納するとき、その外観を損なわないように、それを折り畳むのではなく、それを例えばハンガーに吊るす。
【0009】
他方、その折り目に沿って小さく折り畳むことができるプリーツを有する従来のスカートの場合、その外観のデザインがプリーツだけに制限される。プリーツだけに制限されたそのデザインは、そのスカートの視覚的アピールへの寄与が弱いであろう。
【0010】
本発明の目的は、衣服を扁平に折り畳むことを可能とし、かつその衣服の外観デザインの視覚的アピールに寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に従う衣服は、1シートの服地又は相互に継合わされた複数シートの服地である衣服本体を備え、前記衣服本体の各シートの服地が、人に着用されたとき、前記人の身体の所定部分を貫通させる少なくとも2つの開口を有する中空の立体形状を形成し、前記各シートの服地は、前記各シートの服地の面積の全体に行列状に配列された多数の多角形パターンを画成する多数の恒常的な折り線を有し、前記多数の折り線は、これら多数の折り線に沿って前記各シートの服地が扁平に折り畳まれることを可能とする幾何学的条件を満たし、前記各シートの服地が、人に着用されたとき、前記多数の折り線に沿った折れが維持されるように、異なる多角形パターン上の少なくとも2箇所が、相互に結合されるための結合手段を有する。
【0012】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、扁平に折り畳むことができるとともに、外観デザインの視覚的アピールに寄与することができる。すなわち、この衣服は、衣服本体の多数の折り線により形成される衣服本体の表面の凹凸が、着用時には衣服の外観デザインを提供する。他方、この衣服本体の多数の折り線に沿って、その衣服は扁平に折り畳むことができるので、非着用時には、その収容のためのスペースが小さくてすみ、持ち運びも容易である。また、従来の衣服のように、折り畳みでできた服地の折れ目が着用時の衣服の外観デザインを損なうという問題がない。
【0013】
好適な実施形態では、前記結合手段は、前記衣服本体が扁平に折り畳まれたときに相互に重なり接触し合う位置に配置される。
【0014】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、折り線を維持することによる、衣服の高いデザイン性、及び、人体の形状及び動きにフィットした衣服の形状が、衣服が扁平に折り畳まれること、即ち衣服の収容の容易さを阻害しない。
【0015】
好適な実施形態では、前記衣服本体は、前記各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所を相互に閉じ合わせる、閉じ合わせ手段を有し、前記閉じ合わせ手段は、前記衣服本体が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置関係にある、前記各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所に設けられる。
【0016】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、人体を覆うという衣服本来の形状が、衣服が扁平に折り畳まれること、即ち衣服の収容の容易さを阻害しない。
【0017】
好適な実施形態では、前記恒常的な折り線は、複数の山折り線及び複数の谷折り線からなり、前記複数の谷折り線は、衣服の着用時において、人体の関節運動による変形を受け入れるために、衣服が伸縮すべき方向に選ばれている。
【0018】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、多数の折り線での折れ角度の変化(つまり、折れが深くなったり、浅くなったりすること)により、衣服が伸縮すべき方向へ(他の方向と比較して)比較的容易に伸縮することができる。
【0019】
好適な実施形態では、前記衣服本体は、前記多数の恒常的な折り線の位置を視覚的に表示する色彩又は模様を備える。
【0020】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、服地上の折り線の位置が視認可能となるとともに、折り線の位置を視覚的に表示する色彩又は模様が、衣服の外観デザインの構成要素になる。
【0021】
好適な実施形態では、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様は、前記衣服の製造工程において、前記恒常的な折り線が前記各シートの服地に形成されるより前に、前記各シートの服地上に形成されたものである。
【0022】
この構成により、本実施形態に係る衣服を製造する際に、服地の何処に折り線を形成すべきなのかを容易に理解できる。
【0023】
好適な実施形態では、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様が、前記各シートの服地上の互いに隣接する多角形パターンが互いに異なる色彩又は模様をもつように、前記多数の多角形パターンの領域にそれぞれ施された色彩又は模様を含む。
【0024】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、折り線の位置が、それぞれ異なる色彩又は模様が施された互いに隣接する多角形パターンの境界線として、明確に視認可能である。そして、その境界線に沿って服地を折ることで、正しい位置に折り線が形成され、衣服としての正しい形状が形成されることとなる。加えて、異なる色彩又は模様で塗り分けられた多角形パターンが、衣服の外観デザインの構成要素となる。
【0025】
好適な実施形態では、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様が、前記各シートの服地上の前記折り線に相当する位置に施された線模様を含む。
【0026】
この構成により、本実施形態に係る衣服を製造する際には、服地を線模様に沿って折ることで、恒常的な折り線が正しい位置に形成されて、衣服としての正しい形状が形成されることとなる。加えて、折り線に沿った線模様が、衣服の外観デザインの構成要素になる。
【0027】
好適な実施形態では、前記衣服本体は、その全体表面のうち、扁平に折り畳まれた状態で外部に露出する表面部分に、前記衣服本体の他の表面部分とは異なる色彩及び/又は模様が施される。
【0028】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、着用時において、色彩又は模様が分散する、独特な面白みのあるデザイン性を備える。また、扁平に折り畳まれた状態の衣服は、その外部に露出する部分全体に色彩又は模様が施されているため、着用時の場合とはまた異なった、独特なデザイン性を備える。
【0029】
好適な実施形態では、前記衣服本体の各シートの服地に、人の体の所定部分を貫通させるための切開口が形成される。
【0030】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、より人体の形状にフィットした衣服本来の形状として形成されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一つの実施形態の第1の例にかかるワンピース・ドレスの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図2】図1のワンピース・ドレスを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図3】図1のワンピース・ドレスの着用時の状態を示す正面図である。
【図4】図2の扁平に折り畳んだ状態のワンピース・ドレスに色づけを施した状態を示す平面図である。
【図5】図4の色づけされたワンピース・ドレスの着用時の状態を示す正面図である。
【図6】本実施形態の第2の例にかかるジャケットの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図7】図6のジャケットを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図8】図6のジャケットの着用時の状態を示す正面図である。
【図9】本実施形態の第3の例にかかるシャツの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図10】図9のシャツを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図11】図9のシャツの着用時の状態を示す正面図である。
【図12】本実施形態の第4の例にかかるスカートの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図13】図12のスカートを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図14】図12のスカートの着用時の状態を示す正面図である。
【図15】本実施形態の第5の例にかかるシャツの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図16】図15のシャツを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図17】図15のシャツの着用時の状態を示す正面図である。
【図18】本実施形態の第6の例にかかるスカートの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図19】図18のスカートを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図20】図18のスカートの着用時の状態を示す正面図である。
【図21】本実施形態の第7の例にかかるシャツの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図22】図21のシャツ及び図24のスカートを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図23】図21のシャツの着用時の状態を示す正面図である。
【図24】本実施形態の第8の例にかかるスカートの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図25】図24のスカートの着用時の状態を示す正面図である。
【図26】本実施形態の第9の例にかかるシャツの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図27】図26のシャツを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図28】図26のシャツの着用時の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明にかかる衣服の一実施形態を説明する。本実施形態にかかる衣服は、様々な形態の衣服、例えば、女性用のワンピース・ドレス、ジャケット、シャツ、スカート、キュロットスカート又はパンツ等の衣服であり得る。
【0033】
まず、本実施形態にかかる衣服の基本的構成を説明する。本実施形態にかかる衣服は、1シートの服地又は相互に継合わされた複数シート(典型的には2シート、又は多くても数シート)の服地から作られた衣服本体を備える。ここで、本明細書における衣服本体とは、衣服の主要機能、つまり、人体を覆うとともに衣服の基本的な外観デザインを決定する機能を提供する衣服の主要部分をいう。よって、衣服の主要機能を助ける補助機能又は他の機能を提供する衣服の部分、例えば、衣服を人体に取り付けるための部材(例えば、ストラップ、ベルト、ボタン、ホック等)、衣服を補強するための部材(例えば、裏地、見返し等)、及び装飾部材(例えば、飾り布、コサージュ等)は、衣服本体に含まない。
【0034】
衣服本体を構成する各シートの服地は、多数の恒常的な折り線を有し、それら恒常的な折り線は、その服地の面積の全体に行列状に(つまり、二次元に)配列された多数の多角形パターンを画成する。ここで、恒常的な折り線とは、通常の着用や洗濯によっては折り線が消えないことであって、それにより、ユーザは常にそれらの折り線を認識できる。
【0035】
各シートの服地の多数の恒常的な折り線は、その衣服本体を扁平に(つまり、服地の厚みを無視すれば平面形状に)折り畳むことを可能にするための或る幾何学的条件を満たしている。さらに、上述の多数の恒常的な折り線は、それらの折り線での服地の折れをある程度開いたときにその服地が立体形状になるための別の幾何学的条件も満たしている。因みに、上記2種類の幾何学的条件を満たすシートそれ自体は、所謂「立体折り紙」として経験的に公知であり、それら幾何学的条件の数学的解説は、例えば特許第4253145号公報に記述されているから、本明細書ではその詳細な説明は省略する。
【0036】
上記1シート又は複数シートの服地(つまり衣服本体)により形成される上記立体形状は、衣服(例えば、ワンピース・ドレス、ジャケット、シャツ、スカート、キュロットスカート又はパンツ等)として使用できる立体形状である。すなわち、この立体形状は、身体の所定部分(例えば、首、胴、腰、脚及び/又は腕等)を貫通させる少なくとも2つの開口(例えば、襟ぐり、裾、袖ぐり及び/又は袖口等に相当する開口)を有する中空の形状である。換言すれば、上記立体形状は、1つの開口のみをもつ容器のような形状、又は、開口の全く無いボールのような閉じた形状ではない。
【0037】
前記立体形状(複数の開口を有する中空形状)を形成するために、衣服本体は、好ましくは、以下の閉じ合わせ(seaming)手段及び/又は切開口を有することができる。
【0038】
閉じ合わせ手段は、衣服本体が、人に着用されたとき、人の身体の所定部分を包囲するチューブを形作るように、衣服本体の各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所を、閉じ合わせる(seam)手段である。閉じ合わせ手段には、恒常的に閉じ合わせる手段(恒常的にその2箇所が閉じ合わされているように、例えば、縫い合わせや接着のような、通常の使用状態においては、その閉じ合わせを開くことができない閉じ合わせ)が含まれてもよいし、一時的に閉じ合わせる手段(例えば、ボタンとホール、スナップ・ファスナー、ジッパー、ベルトや紐による締結などのように、ユーザがその閉じ合わせを開いたり再び閉じ合わせたりすることができる閉じ合わせ)が含まれてもよい。
【0039】
恒常的な閉じ合わせ手段は、衣服本体が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う(つまり、重なり合う、又は隣接し合う)という位置関係にある、衣服本体の2箇所に設けられて、それらの箇所を閉じ合わせる。このため、衣服本体は、その恒常的な閉じ目を維持したままで、扁平に折り畳むことが可能である。他方、一時的に閉じ合わせる手段は、衣服本体の上記位置関係にある2箇所に設けられてもよいし、あるいは、上記位置関係にない(つまり、衣服本体が扁平に折り畳まれた状態では相互間に間隔を空けて位置する)2箇所に設けられて、それらの箇所を相互に閉じ合わせるようになっていてもよい。一時的な閉じ合わせ手段が上記位置関係にない2個所に設けられた場合には、その衣服を収納する時に、その閉じ合わせ手段による閉じ合わせを解除すれば、その衣服本体を扁平に折り畳むことが可能となる。
【0040】
また、切開口は、各シートの服地の適宜箇所を切開することで形成された、人体の所定部分(例えば、頭、腕、脚、腰など)を貫通させるための開口である。切開口は、例えば、或る折り線に沿った切れ目でもよいし、折り線ではない或る直線又は曲線に沿った切れ目でもよいし、又は、円形あるいは多角形のような二次元形状の穴であってもよい。
【0041】
さらに、衣服本体の各シートの服地は、好ましくは、複数の折り線により画成された異なる多角形パターン上にそれぞれ存在する複数箇所を、互いに接触するように結合する、所定の結合手段を有することができる。それにより、その衣服の着用時に、その衣服本体の多数の折り線での折れが完全に開いてしまわない(つまり、折れ角度が180度にまで完全には開かない)ようになっている。その結果、その衣服の着用時に、その衣服本体の多数の折れが提供するその衣服本体の外観の凹凸デザインが維持される。また、その衣服の着用時、その衣服本体が折れ線に沿って或る程度折れている状態にあるから、その衣服の3次元の形状やサイズが容易に変化でき、その結果、その衣服を着ている人体の様々な運動を楽に許容できる。
【0042】
ここで、上記所定の結合手段は、恒常的な結合手段(恒常的にそれら複数箇所が結合されているように、例えば縫い合わせ又は接着のような、その結合を解除することが困難な結合)であっても、あるいは、一時的な結合手段(例えばボタンとボタンホール、スナップ・ファスナー、ジッパー、紐やベルトによる結合のように、その結合を解除することが容易である結合)であってもよい。恒常的な結合手段を採用する場合は、その結合手段により結合される上記少なくとも2箇所は、衣服本体が扁平に折り畳まれたときに互いに接触し合う(つまり、重なり合う、又は隣接し合う)という相互位置関係の条件を満たす必要がある。他方、一時的な結合手段を採用する場合は、その結合手段は、その結合手段により結合される上記少なくとも2箇所は、上記の相互位置関係の条件を満たしても、満たさなくてよい。いずれの場合でも、常に衣服本体は扁平に折り畳むことができる。
【0043】
本発明の実施形態に従う衣服の衣服本体は、好ましくは、上記多数の折り線での折れ角度の変化(つまり、折れが深くなったり、浅くなったりすること)により、或る方向へ(他の方向と比較して)比較的容易に伸縮することができる。この衣服本体の比較的容易な伸縮の方向は、その衣服の着用時に、人体の関節運動による変形を受け入れるために衣服が伸縮すべき方向と一致するように、選ばれている。つまり、その衣服本体の多数の折り線の配置は、その衣服本体が上記伸縮すべき方向に比較的容易に伸縮可能になるように設定されている。その典型的な例として、次のように折れ線を配置することができる。すなわち、その衣服を外側から見たときの谷折れ線(人体の方へ凹んでいる折れ線)のすべてが、上記伸縮すべき方向に対して交差する方向にある(換言すれば、上記伸縮すべき方向と同じ方向ではない)。
【0044】
例えば、後述されるワンピース・ドレス100の実施例の場合(図1〜3参照)、そのワンピース・ドレス100は、人体の腰椎関節でのウエストの曲げ運動及び股関節での大腿のスウィング運動を受け入れる必要がある。そのためには、そのワンピース・ドレス100は、少なくともウエストからスカートの部分において、上下方向に伸縮する必要がある。そこで、そのワンピース・ドレス100の衣服本体101の多数の折り線は、そこでの折れ角度の変化によりその衣服本体101が上下方向に比較的容易に伸縮するように、配置されている。図3から分かるように、全ての谷折れ線(破線で示される)は、上下方向に対して交差した方向である。あるいは、後述される短丈のジャケット(ボレロ風ジャケット)200の実施例の場合(図4〜6参照)、そのジャケット200は、人体の肩関節での上腕のスウィング運動を受け入れる必要がある。そのためには、そのジャケット200は、少なくとも肩周辺の部分において、水平(左右)方向に伸縮する必要がある。そこで、そのジャケット200の衣服本体201の多数の折り線は、そこでの折れ角度の変化によりその衣服本体201が水平方向に比較的容易に伸縮するように、配置されている。図6から分かるように、全ての谷折れ線(破線で示される)は、水平方向に対して交差した方向である。
【0045】
本実施形態にかかる衣服は、着用時には、衣服本体の多数の折り線により形成される衣服本体の表面の凹凸が、衣服の外観デザインを提供する。本実施形態にかかる衣服は、非着用時には衣服本体の多数の折り線に沿って扁平に折り畳むことができるので、その収容のためのスペースが小さくてすみ、持ち運びも容易である。収容時の衣服の折り畳みに使われる折り線と、着用時の衣服の外観の凹凸デザインを形成するための折り線とが同じであるから、従来の衣服のように折り畳みでできた服地の折れ目が着用時の衣服の外観デザインを損なうという問題がない。さらに、この多数の折り線が形成されたシート(服地)自体は、前述したように、所謂「立体折り紙」としての形状を有する。このため、衣服が扁平に折り畳まれたとき(収納時)にもまた、非常に優れた外観デザインを提供する。
【0046】
本実施形態にかかる衣服によれば、各シートの服地の形状、サイズ、及び/又は多数の折り線の配置を変えることで、様々な異なる外観デザインをもった衣服を設計できる。1シート、2シート又は多くても数シートの服地を折ることで衣服本体が作られるので、衣服の製造工程が簡素化される。
【0047】
上述した本実施形態にかかる衣服の複数の実施例を説明する。
<第1実施例>
【0048】
図1〜図3は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるワンピース・ドレスを示す。図1は、そのワンピース・ドレス100の衣服本体を展開した状態を示す平面図である。図2は、そのワンピース・ドレス100を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図3は、そのワンピース・ドレス100の着用時の状態を示す正面図である。
【0049】
衣服としてのワンピース・ドレス100は、1つの衣服本体101と、衣服本体101を身体の肩から吊るための衣服本体101に取り付けられた2本のストラップ102aと、この2本のストラップを衣服本体101に留めるための1組のスナップ102bとを備える。衣服本体101は、1シートの服地103から作られる。その服地は103は、図1から分かるように、その面積の全体に行列状に(つまり、二次元に)配列された多数の多角形パターン105を画成する多数の恒常的な折り線107、109を有する。図中、実線で示された折り線107は、ワンピース・ドレス100を外側から見た場合の山折り線(外へ向けて出っ張っている折れ線)であり、破線で示された折り線109は、谷折り線(内へ向けて凹んでいる折れ線)である。
【0050】
従来の一般的な衣服の衣服本体は、例えば前身頃、後身頃及び左右の袖等のような、人体の対応部分の形状に合わせて曲線的な形状に裁断された多数シートの服地が、相互に縫製されることで作られる。それら多数シートの服地の形状が、衣服の形状を人体の曲線的な形状やその変化に適合させる。これに対し、この実施例にかかる衣服(ワンピース・ドレス100)の衣服本体101は、恒常的な折り線107、109で画成された多数の多角形パターン105をもつ1シートの服地103で作られる。それらの多角形パターン105は、人体の対応部分の形状に合わせた曲線的な形状ではなく、複数の直線的な折り線107、109で画成された、例えば三角形や四角形などの単純幾何学形状である。衣服本体101では、服地103それ自体又は多角形パターン105それ自体の形状ではなく、多数の多角形パターン105間の折れ具合とその変化が、衣服(ワンピース・ドレス100)の形状を人体の曲線的形状やその変化に適合させるという機能を提供する。
【0051】
服地103の多角形パターン105を画成する多数の折り線107、109は、これら多数の折り線107、109に沿って、1シートの服地103が扁平に折り畳まれることを可能とする公知の幾何学的条件を満たす。加えて、これら折り線107、109での服地103の折れをある程度開いたときにその服地103が立体形状になるための別の公知の幾何学的条件も満たす。この服地103からなる衣服本体101は、扁平に折り畳まれた状態のときにも、非常に高いデザイン性を有する(この点については、本実施例でのみ以下に具体的に説明するが、他の実施例についても同様である。)。図2は、図1の衣服本体101が扁平に折り畳まれた状態である。この衣服本体101は、所定の一方向(図3における上下方向)に、捩られながら折り畳み可能(伸縮可能)となる。
【0052】
服地103の恒常的な折り線107、109は、例えば、服地103の素材が熱可塑性を有するポリエステルなどの化学繊維である場合には、服地103を折り線107、109で折った状態で熱プレスを加えるというような熱処理加工によって形成することができる。あるいは、恒常的な折り線107、109は、折り線107、109に沿ったステッチ、又はその他の方法によって形成することもできる。
【0053】
衣服本体101は、その服地103上に、上述した恒常的な閉じ合わせ手段である縫合部111を有する(図1参照)。縫合部111は、服地103上の異なる辺縁上の2箇所(参照番号111で示される)の縫い合わせである。これにより、衣服本体101は、人体のウエストから脚部を貫通させる2つの開口を有するチューブを形成する。そして、衣服本体101が、ワンピース・ドレス100としての立体形状となる。
【0054】
縫合部111により縫合される上記2箇所(参照番号111で示される)は、服地103が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置に配置されている。従って、衣服本体101は、図2に示すように、常に扁平に折り畳むことが可能となる。なお、図1において、服地103の縫合部111の上方に形成された2組のスナップ113a、113bは、上述した一時的な閉じ合わせ手段として、縫合部111を補助する機能を有する。これらスナップ113a、113bは、収納時には解除されてもよい。変形例として、縫合部111に代えて、上述した一時的な閉じ合わせ手段としてのボタンとホール、スナップ・ファスナー又はジッパー等を用いてもよい。
【0055】
衣服本体101は、着用時(図3参照)には、多角形パターン105を画成する折り線107、109により、ウエストの曲げ運動及び大腿のスウィング運動を受け入れるように伸縮可能となる。特に、谷折れ線109のすべてが上下方向に交差する方向であるため、衣服本体101は上下方向に比較的容易に伸縮可能である。また、関節部分の動きに合わせた衣服本体101の外形の変化によってワンピース・ドレス100の外観のデザイン性を高めることができる。
【0056】
衣服本体101は、その服地103上に、上述した恒常的な結合手段としての複数の括り合わせ部115a、115b、115c、115d、115e、115fを有する。括り合わせ部115a〜115fの各々は、衣服本体101の異なる多角形パターン上にそれぞれ存在する複数箇所同士を、互いに接触するよう、それらを縫い合わせることで結合する(例えば、括り合わせ部115aは、図1に参照番号115aで指示される4つの箇所を相互に結合し、また、括り合わせ部115bは、図1に参照番号115bで指示される2つの箇所を相互に結合する)。それにより、衣服本体101を扁平に折り畳むための折り線107、109に沿った服地103の折れが、着用時にも完全に開いてしまわずに維持されるように形成される。図示例にあっては、衣服本体101の胸囲及びウエスト部周辺の異なる位置に配置された複数の括り合わせ部115a〜115fがある。括り合わせ部115a〜115fの各々により相互に結合される複数個所(例えば、括り合わせ部115aの場合、図1に参照番号115aで指示される4つの箇所)は、服地103を扁平に折り畳んだときに接触し合う(つまり、重なり合う、又は隣接し合う)位置に存在する。そのため、衣服(ワンピース・ドレス100)の収納時には、括り合わせ部115a〜115fによる結合を維持したままで、衣服(ワンピース・ドレス100)を扁平に折り畳むことができる。この実施例では、括り合わせ部115a〜115fは、縫合するという恒常的な結合手段であるが、変形例として、括り合わせ部115a〜115fに代えてファスナー、スナップ等の一時的な結合手段を用いてもよい。
【0057】
前述したように、ワンピース・ドレス100の外観デザインは、衣服本体101の表面の全体に行列状に(つまり、二次元に)配列された多角形パターン105に対応した凹凸によって、ワンピース・ドレス100の外観の視覚的アピールに貢献する。そしてこの際、結合手段(括り合わせ部115a〜115f)によって、衣服本体101の折れを着用時に維持することで、衣服本体101を人体の形状に適した形状にできる。さらには、人の動きに応じてワンピース・ドレス100の形状が柔軟に変化させることもできる。
【0058】
また、このワンピース・ドレス100の衣服本体101は、扁平に折り畳まれた状態においても、通常のワンピース・ドレスとは異なり、高いデザイン性を備えたものとなる。例えば、折り線107、109に沿って服地103を折り畳むことにより、扁平に折り畳まれた衣服本体101の表面(図2に示すように、扁平に折り畳まれた状態での表面)に、重ね合わされた多角形パターン105の一部が露出される。これにより、扁平に折り畳まれた状態での衣服本体101それ自体が図2に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0059】
次に、上述した衣服(ワンピース・ドレス100)に施された、色彩又は模様の一例について説明する。
【0060】
図4に示すように、衣服本体101の全体表面のうち、衣服本体101が、扁平に折り畳まれた状態で外部に露出しているその表面部分に、それ以外の部分とは異なる所定の色彩又は模様が施される。
【0061】
このワンピース・ドレス100の着用時には、図5に示すように、上記所定の色彩又は模様が施された部分(グレーで示される)が、ワンピース・ドレス100の表面上に、あるパターンで分散して表示され、このパターンは、ユーザにとり、図に示されたような扁平な折り畳み状態からは容易に予測しがたい面白みをもつ。このように、着用時のワンピース・ドレス100は、色彩又は模様が、面白みのあるパターンで分散するため、図示例のような、独特なデザイン性を備える。また、上述したように、収納時(扁平に折り畳まれた状態)には、その外部に露出している部分全体に色彩又は模様が施されるため、着用時の場合とはまた異なった、独特なデザイン性を備える。なお、この色彩又は模様は、例えば、染料の塗布、シートの熱転写等の方法で行われる。
【0062】
次に、衣服(ワンピース・ドレス100)に施された、色彩又は模様の変形例について説明する。
【0063】
本変形例では、服地103は、多数の恒常的な折り線107、109の位置を視覚的に表示する(人がそれを視覚的に識別することを可能にする)或る色彩をもった模様を備える。以下、図1及び図3を用いて説明する。例えば、図1に示す展開図と同様に、服地103には、山折り線107の位置に、その服地103の地色とは異なる或る色彩をもつ線模様、例えば実線の模様が描かれ、谷折線109の位置には、その服地103の地色とは異なる或る色彩をもつ線模様、例えば破線の模様が描かれる。折り線107、109の位置に上記実線と破線の模様を施す作業は、衣服(ワンピース・ドレス100)の製造過程において、服地103に折り線107、109を形成するより前に実行されることが好ましい。このようにすれば、図3に示すように、服地103上の折り線107、109の位置が、上記の実線と破線の模様により視認可能であり、ワンピース・ドレス100を製造する人々にとり、服地103の何処に折り線107、109を形成すべきなのかを容易に理解できる。このため、ワンピース・ドレス100を製造する際には、服地103を上記実線と破線の模様とに沿って折る(実線模様に沿って山折りし、破線模様に沿って谷折りする)ことで、恒常的な折り線107、109が正しい位置に形成されて、ワンピース・ドレス100としての正しい形状が形成されることとなる。加えて、折り線107、109に沿った上記実線と破線の模様が、ワンピース・ドレス100の外観デザインの構成要素になる。なお、折り線107、109の位置に施された模様のバリエーションは、上記したような山折り線107に沿った実線模様と谷折線109に沿った破線模様だけに限られず、多種多様であり得る。
【0064】
また、図示はしないが、衣服(ワンピース・ドレス100)に施された、色彩又は模様の他の変形例の一つを以下に説明する。すなわち、服地103の全面に存在する、折り線107、109によって画成された多数の多角形パターン105の領域に、次の条件を満たすように、異なる色彩又は模様が施される。その条件とは、互いに隣接する多角形パターン105が互いに異なる色彩又は模様をもつことである。この色彩又は模様を施す作業も、衣服(ワンピース・ドレス100)の製造過程において、服地103に折り線107、109を形成するより前に実行されることが好ましい。このようにすれば、折り線107、109の位置が、それぞれ異なる色彩又は模様が施された互いに隣接する多角形パターン105の境界線として、明確に視認可能である。そして、その境界線に沿って服地103を折ることで、正しい位置に折り線107、109が形成され、ワンピース・ドレス100としての正しい形状が形成されることとなる。加えて、異なる色彩又は模様で塗り分けられた多角形パターン105が、ワンピース・ドレス100の外観デザインの構成要素となる。
【0065】
衣服本体101の全体表面のうち、衣服本体101が、扁平に折り畳まれた状態で外部に露出しているその表面部分に施された色彩又は模様、若しくは、折り線107、109を表示するように衣服に施された色彩又は模様については、本実施例のワンピース・ドレス100だけでなく、以下に説明する他の実施例を含む、本発明に従うあらゆる衣服に適用可能である。
<第2実施例>
【0066】
図6〜図8は、本実施形態にかかる2シートの服地から作られる短尺のジャケットを示す。図6は、そのジャケット200の衣服本体201を展開した状態を示す平面図である。図7は、そのジャケット200を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図8は、そのジャケット200の着用時の状態を示す正面図である。
【0067】
衣服としてのジャケット200は、1つの衣服本体201を備える。衣服本体201は、2シートの服地203a、203bから作られる。
【0068】
各シートの服地203a、203bは、それぞれ、図6に示すように、その面積の全体に行列状(つまり、二次元)に配列された多数の多角形パターン205を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線207、谷折り線209)を有する。なお、本実施例の各シートの服地203a、203bの多角形パターン205の形状は、第1実施例と同じか又は相似である。
【0069】
衣服本体201は、図6に示すように、各シートの服地203a、203b上に、恒常的な閉じ合わせ手段である縫合部211a、211bをそれぞれ有する。縫合部211a、211bは、各々、同符号を付した2箇所同士の縫い合わせである。服地203a、203bは、それぞれ、人体の右腕部分及び左腕部分が貫通される立体のチューブを形成する。各縫合部211a、211bにより縫合される各々2箇所は、服地203a、203bそれぞれが扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置に配置されている。従って、衣服本体201は、図7に示すように、常に扁平に折り畳むことが可能となる。
【0070】
また、2枚の服地203a、203bは、図6の継合わせ位置213で、相互に継合わされる(図7及び8の例では縫合されている)。これにより、右腕部分の服地203b及び左腕部分の服地203aが連結されて、図8に示すように、衣服本体201はジャケット200としての立体形状となる。
【0071】
この衣服本体201は、服地203a、203bに形成された折り線207、209により図6及び図8の左右方向(腕の軸方向)に捩られながら伸縮可能である。そして、2シートの服地203a、203bそれぞれが、折り線207、209に沿って扁平に折り畳まれることにより、衣服本体201が収納可能となる。図7に示す、扁平に折り畳まれた衣服本体201は、扁平に折り畳まれた、右腕部分の服地203b及び左腕部分の服地203aを、並べて配置した形状となる。扁平に折り畳まれた衣服本体201は、それ自体が図7に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0072】
衣服本体201は、結合手段として複数の括り合わせ部を有する。括り合わせ部215a、215b、215c、215d、215e、216a、216b、216c、216d、216eは、衣服本体201の異なる多角形パターン205上にそれぞれ存在する複数箇所同士(同符号が付された縫合線)を、互いに接触するように縫い合わせている。括り合わせ部215a〜215e、216a〜216eは、衣服本体201の肩周辺及び胸囲周辺の適宜位置に、それぞれ配置される。これにより、衣服本体201は、その着用時に、折り線207、209の折りが開ききることなく、肩周辺及び胸部周辺に、肩先のライン及び胸の凹凸等を強調させた、ジャケット200にふさわしい外観デザインとなる。
【0073】
また、括り合わせ部215a〜215e、216a〜216eそれぞれの、相互に結合される複数個所(例えば、括り合わせ部215aの場合、図6に参照番号215aで指示される3箇所、また、括り合わせ部216aの場合、図6に参照番号216aで指示される3箇所、)は、各々、服地203aを扁平に折り畳んだときに接触し合う(つまり、重なり合う、又は隣接し合う)位置に存在する。そのため、ジャケット200の収納時には、括り合わせ部215a〜215e、216a〜216eによる結合を維持したままで、各シートの服地203a、203bそれぞれが、扁平に折り畳まれ、その結果、ジャケット200を扁平に折り畳むことができる。
【0074】
本実施例の衣服本体201は、少なくとも肩周辺の部分において、肩関節の動きを受け入れるように、水平(左右)方向に伸縮可能となる。特に、衣服本体201の谷折れ線が、水平(左右)方向に交差する方向であるため、衣服本体201は水平(左右)方向に比較的容易に伸縮可能である。また、衣服本体201の外形の変化によって、ジャケット200の外観のデザイン性を高めることができる。
【0075】
なお、各シートの服地203a、203bは、図示例のように、一時的な閉じ合わせ手段として、開閉自在な前ひも202a、202bを有してもよい。この場合、前ひも202a、202bは、衣服本体201を扁平に折り畳んだときに、重ならない位置に取り付けられている。このため、前ひも202a、202bは、衣服本体201を収納する際は解除されて、衣服本体201を扁平に折り畳むことを可能にしている。
<第3実施例>
【0076】
図9〜図11は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られる半袖のシャツを示す。図9は、そのシャツ300の衣服本体301を展開した状態を示す平面図である。図10は、そのシャツ300を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図11は、そのシャツ300の着用時の状態を示す正面図である。
【0077】
衣服としてのシャツ300は、1つの衣服本体301と、ウエストラインを絞るためのひも302とを備える。衣服本体301は、1シートの服地303から作られる。その服地303は、図9に示すような多角形パターン305を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線307、谷折り線309)を有する。
【0078】
図9に示すように、服地303には、襟口となる切開口317が形成される。切開口317は、服地303をその略中央に位置する山折り線307及び谷折り線309に沿って裁断して形成される。切開口317には、周知の衣服と同様の見返し(補強布)が取り付けられる。
【0079】
また、図示例にあっては、衣服本体301は、その側部(脇腹周辺)に、恒常的な閉じ合わせ手段としての、複数(左右の脇腹周辺に1つずつ)の縫合部311a、311bを有する。縫合部311a、311bは、服地303上の同符号を付した2箇所それぞれの縫い合わせである。服地303には、縫合部311a、311bの内側(図9中、前後方向の中心側)に位置して、一時的な閉じ合わせ手段としての1組のスナップ311c、311dが取り付けられる。1組のスナップ311c、311dは、それぞれ、縫合部311a、311bの補助的機能を備える。これら縫合部311a、311b及びスナップ311c、311dにより、衣服本体301は、襟口の他に、ウエスト周りを貫通させる開口及び袖口を備えた、シャツ300としての立体形状となる。縫合部311a、311b及びスナップ311c、311dは、服地303が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置に形成される。従って、衣服本体301は、図10に示すように、常に扁平に折り畳むことができる。なお、スナップ311c、311dは、服地303が扁平に折り畳まれる際には、解除されてもよい。
【0080】
服地303に折り線307、309が形成されていることにより、衣服本体301は、首元から肩にかけて(図9及び図11の左右方向に)、直線状に伸縮可能である。、服地303が折り線307、309に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体301は収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体301は、それ自体が図10に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備える。
【0081】
図9の、衣服本体301は、人体の前側及び後ろ側に、恒常的な結合手段としての複数の括り合わせ部313a、313b、313c、313d、313e、313f、313gを有する。括り合わせ部313a〜313gは、衣服本体301の異なる多角形パターン305上にそれぞれ存在する複数箇所同士(同符号が付された縫合線)を、互いに重ね合わせた縫い合わせである。衣服本体301に、これら括り合わせ部313a〜313gを備えたことによって、着用時にも、折り線307、309の折りが開ききることなく、肩、袖及び胸囲周囲に凹凸が維持され、シャツ300独自の立体感のある外観デザインとなる。
【0082】
本実施例の衣服本体301は、服地303に形成された折り線307、309により、水平(左右)方向に伸縮可能に形成されている。従って、衣服本体301は、少なくとも肩周辺の部分において、肩関節の動きを受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体301の谷折れ線309のすべては、水平(左右)方向に交差する方向であるため、衣服本体301は、水平(左右)方向に比較的容易に伸縮可能である。また、衣服本体301の外形の変化によって、シャツ300の外観のデザイン性を高めることができる。
【0083】
<第4実施例>
【0084】
図12〜図14は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるミニスカートを示す。図12は、そのスカート400の衣服本体401を展開した状態を示す平面図である。図13は、そのスカート400を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図14は、そのスカート400の着用時の状態を示す正面図である。
【0085】
衣服としてのスカート400は、1つの衣服本体401を備える。衣服本体401は1シートの服地403から作られる。この服地403の多角形パターン405の形状は、実質的に第3実施例と同じか又は相似である。この服地403の多角形パターン405を画成する折り線を、山折り線407、谷折り線409と表す。
【0086】
図12に示すように、服地403には、人体のウエスト部分を貫通させる切開口417が形成される。切開口417は、服地403の略中央位置に形成される。切開口417は、図12の左右方向に(折り線407、409に交差するように)裁断して形成される。切開口417には、見返し(補強布)が取り付けられる。
【0087】
衣服本体401は、その服地403の側部(脇腹周辺)に、恒常的な閉じ合わせ手段である複数の縫合部411a、411bを有する。これら縫合部411a、411bは、同符号が付されたの縫合線各々の縫い合わせである。上述した切開口417及び縫合部411a、411bにより、衣服本体401は、ウエストから脚へかけて貫通される2つの開口を備えた、スカート400としての立体形状となる。なお、縫合部411a、411bは、服地403が扁平に折り畳まれた状態で重なりあう位置に形成される。
【0088】
服地403が折り線407、409を有することにより、衣服本体401は、図12及び図14の水平(左右)方向に、直線状に伸縮可能である。そして、服地403が、折り線407、409に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体401が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体401は、それ自体が図13に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0089】
なお、服地403は、切開口417の左右両端部に、ウエストサイズに合わせて切開口417の大きさを調整するための1組ずつのスナップ419a、419bを有する。
【0090】
さらに、衣服本体401は、図示されるように、恒常的な結合手段である括り合わせ部415a、415b、415c、415d、415e、415f、415g、415h、415i、415j、415k、415lを有する。括り合わせ部415a〜415lは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士を、それぞれ、重ね合わせた状態で縫合する。括り合わせ部415a〜415lによって、衣服本体401は、着用時にも、折り線407、409の折れが開ききることなく、2段のフレアスカート400としての外観デザインとなる。
【0091】
<第5実施例>
【0092】
図15〜図17は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるノースリーブのシャツを示す。図15は、そのシャツ500の衣服本体501を展開した状態を示す平面図である。図16は、そのシャツ500を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図17は、そのシャツ500の着用時の状態を示す正面図である。
【0093】
衣服としてのシャツ500は、1つの衣服本体501を備える。衣服本体501は、1シートの服地503から作られる。その服地503は、図15に示すような多角形パターン505を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線507、谷折り線509)を有する。
【0094】
衣服本体501は、その服地503上に、閉じ合わせ手段である縫合部511を有する(図15参照)。縫合部511は、同符号が付された縫合線各々の縫い合わせである。図示例では、縫合線は服地503の左右両端に位置する。縫合部511により、衣服本体501は、人体の胴部を貫通させるチューブを形成する。縫合部511は、服地503が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置に配置されている。
【0095】
また、服地503には、左右の腕部をそれぞれ貫通させる袖口となる、切開口517a、517bが形成される。切開口517a、517bは、他の実施例と同様、服地503の所定位置をそれぞれ裁断して形成され、見返し(補強布)が取り付けられる。
【0096】
服地503に折り線507、509が形成されていることにより、衣服本体501は、人体の胴部の軸方向(図15及び図17の上下方向)に、捩られながら伸縮可能である。そして、服地503が、折り線507、509に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体501が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体501は、それ自体が図16に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0097】
衣服本体501は、襟口及びウエストの周囲に、恒常的な結合手段としての複数の括り合わせ部515a、515b、515c、515d、515e、515f、515g、515h、515i、515j、515k、515lを有する。括り合わせ部515a〜515lは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士を、それぞれ重ね合わせた縫い合わせである。これら括り合わせ部515a〜515lを備えたことにより、衣服本体501は、着用時にも、折り線507、509の折れが開ききることなく、襟口及びウエストの周囲が絞られた、シャツ500独自の立体感のある外観デザインとなる。
【0098】
本実施例の衣服本体501は、服地503に形成された折り線507、509により、上半身の動きを受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体501の谷折れ線509のすべては、上半身の軸方向に交差する方向に形成されているため、衣服本体501は上半身の軸方向に比較的容易に伸縮可能となる。
<第6実施例>
【0099】
図18〜図20は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるミニスカートを示す。図18は、そのスカート600の衣服本体601を展開した状態を示す平面図である。図19は、そのスカート600を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図20は、そのスカート600の着用時の状態を示す正面図である。
【0100】
衣服としてのスカート600は、1つの衣服本体601を備える。衣服本体601は、1シートの服地603から作られる。その服地603は、図18に示すような多角形パターン605を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線607、谷折り線609)を有する。
【0101】
衣服本体601は、その服地603上に、恒常的な閉じ合わせ手段である縫合部611を有する(図18参照)。縫合部611は、同符号が付されたの縫合線を、各々縫い合わせることである。図18に示す縫合線は、服地の左右両端に位置する。これにより、衣服本体601は、人体の胴部を貫通させるチューブを形成する。縫合部611は、服地603が扁平に折り畳まれた状態で重なりあう位置に配置される。
【0102】
服地603が、折り線607、609を有することにより、衣服本体601は、人体の胴部の軸方向(図18及び図20の上下方向)に、捩られながら伸縮可能である。そして、服地603が、折り線607、609に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体601が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体601は、それ自体が図19に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0103】
衣服本体601は、図18に示すように、ウエストラインに沿って適宜間隔をあけて、複数の括り合わせ部615a、615b、615c、615d、615e、615f、615g、615h、615i、615j、615k、615l、615m、615n、615o、615pを有する。括り合わせ部615a〜615pは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士を、それぞれ接触させて縫合する。
【0104】
さらに、本実施例にあっては、服地603は、ベルトBを通す、複数のベルトループ620を備える。ベルトループ620は、図18に示すように、前記括り合わせ部615a〜615pを縫合する際に、併せて取り付けられる。ウエスト周囲に括り合わせ部615a〜615pを設けることによって、衣服本体601は、着用時にも、折り線607、609の折れが開ききることなく、ウエストを絞られ裾が広がる(フレア)スカート600としての立体形状となる。なお、ベルトループ620及びベルトBは、衣服本体601のウエスト周囲のサイズを調整する機能を有する。
【0105】
本実施例の衣服本体601は、服地603に形成された折り線607、609により、ウエストから脚にかけての動きを受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体601の谷折れ線609のすべては、ウエストから脚への方向に交差する方向に形成されているため、衣服本体601はウエストから脚にかけて比較的容易に伸縮可能となる。
<第7実施例>
【0106】
図21〜図23は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるシャツを示す。図21は、そのシャツ700の衣服本体701を展開した状態を示す平面図である。図22は、そのシャツ700を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図23は、そのシャツ700の着用時の状態を示す正面図である。
【0107】
衣服としてのシャツ700は、1つの衣服本体701を備える。衣服本体701は、1シートの服地703から作られる。その服地703は、図21に示すような多角形パターン705を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線707、谷折り線709)を有する。
【0108】
図21に示すように、服地703には、襟口となる切開口717が形成される。切開口717は、服地703の略中央に、谷折り線709に沿って形成される。切開口717は、他の実施例と同様に、服地703を裁断して形成され、見返し(補強布)を取り付けられる。
【0109】
衣服本体701は、一時的に閉じ合わせ手段としての、右側スナップ711a、711bと、左側スナップ711c、711dとを有する。衣服本体701は、その着用時には、それぞれ結合されたスナップ711a〜711dと、切開口717とを備えたことによって、人体の上半身を覆うシャツ700としての立体形状となる。
【0110】
これら多数の折り線707、709が服地703に形成されていることにより、衣服本体701は、腕部の軸方向(図21及び図23の左右方向)に、直線状に伸縮可能である。そして、服地703が、折り線707、709に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体701が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体701は、それ自体が図22に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えた衣服となる。なお、衣服本体701を折り畳んで収納する際には、スナップ711a〜711dそれぞれの結合が解除されるため、図22に示すように、扁平な折り畳みが可能となる。
【0111】
衣服本体701は、図21に示すように、服地703全体の適宜位置に、複数の括り合わせ部715a、715b、715c、715d、715e、715f、715g、715h、715i、715jを有する。括り合わせ部715a〜715jは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士の縫い合わせである。これら括り合わせ部715a〜715jを備えたことによって、衣服本体701は、着用時にも、折り線707、709の折れが開ききることなく、肩、袖及び胸囲の周囲の凹凸が維持されてシャツ700独自の立体感のある外観デザインとなる。また、この括り合わせ部715a〜715jによって、服地703の伸縮方向の折れが維持されるため、腕部のスウィング運動を許容できる。
【0112】
本実施例の衣服本体701は、服地703に形成された折り線707、709により、図21及び図23の左右方向に伸縮可能に形成されている。このため、この衣服本体701は、少なくても肩関節から腕の動きを受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体701の谷折れ線709のすべては、腕の軸方向に交差する方向であるため、衣服本体701は腕の軸方向に比較的容易に伸縮可能となる。
<第8実施例>
【0113】
図24及び図25は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるスカートを示す。図24は、そのスカート800の衣服本体801を展開した状態を示す平面図である。図25は、そのスカート800の着用時の状態を示す正面図である。
【0114】
衣服としてのスカート800は、1つの衣服本体801を備える。衣服本体801は、1シートの服地803から作られる。この服地803の多角形パターン805の形状は、実質的に第7実施例と同じか又は相似である。この服地803の多角形パターン805を画成する折り線を、山折り線を807、谷折り線809と表す。
【0115】
図24に示すように、服地803には、襟口となる切開口817が形成される。切開口817は、服地803の略中央位置に形成される。切開口817は、他の実施例と同様に、服地803を裁断して形成される。切開口817には、見返り(補強布)が取り付けられる。
【0116】
切開口817を備えたこによって、衣服本体801は、人体のウエストから脚を貫通するスカート800としての立体形状となる。また、切開口817の周囲に、複数組のスナップ811a、811b、811c、811d、811e、811f、811g、811hを設けたことにより、衣服本体801のウエストの大きさは、調整可能となる。
【0117】
服地803に多数の折り線807、809が形成されることによって、衣服本体801は、図24及び25の上下方向に伸縮可能となる。そして、服地803が、折り線807、809に沿って扁平に折り畳まれることにより、衣服本体801は収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体801は、それ自体が図22に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備える。なお、この衣服本体801が扁平に折り畳まれた形状は、図22に示す第7実施例と同様である(ただし、図中のスナップ711a、711b除く。)。
【0118】
衣服本体801は、その服地803上の適宜位置に(図24参照)、複数の括り合わせ部815a、815b、815c、815dを有する。この括り合わせ部815a〜815dにより、衣服本体801は、着用時にも、折り線807、809の折れが開ききることなく、複数の部分で、凹凸形状が維持されて立体感のある外観デザインとなる。
【0119】
本実施例の衣服本体801は、服地803に形成された折り線807、809により、ウエストから脚にかけてのの曲げ運動を受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体801の谷折れ線809のすべては、ウエストから脚にかけて方向に交差する方向であるため、衣服本体801はウエストから脚にかけての方向に比較的容易に伸縮可能となる。
<第9実施例>
【0120】
図26〜図28は、本実施形態にかかる2シートの服地から作られるシャツを示す。図26は、そのシャツ900の衣服本体901を展開した状態を示す平面図である。図27は、そのシャツ900を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図28は、そのシャツ900の着用時の状態を示す正面図である。
【0121】
衣服としてのシャツ900は、1つの衣服本体901と、衣服本体901を肩から吊るすための2本の肩ひも902aと、これら肩ひも902aを衣服本体に固定する1組のスナップ902bとを備える。衣服本体901は、2シートの服地903a、903bから作られる。服地903a、903bには、それぞれ、図26に示すような多角形パターン905を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線907、谷折り線909)が形成される。
【0122】
2枚の服地903a、903bは、図27の継合わせ位置(右脇腹部周辺の位置911a、及び、右肩部周辺の位置911b)で、相互に継合わされる(図示例では縫合されている)。また、服地903a、903bは、人体の左脇腹部周辺に、2枚の服地903a、903bを互いに一時的に閉じ合わせる手段としての、複数のスナップ913a、913b、913cを有する(図26参照)。衣服本体901は、これら継合わせ位置911a、911bでの縫合、及びスナップ913a、913b、913cによって、右側の袖口、及び、人体を貫通させる開口を備えたシャツ900としての形状となる。
【0123】
継合わせ位置911a、911bで縫合されることにより、継ぎ合わされた2枚の服地903a、903bは、その中央に、山折り線907に囲まれた八角形パターン905aが配置される。継ぎ合わされた2枚の服地903a、903b(すなわち衣服本体901)は、恒常的な折り線907、909により、中央の八角形パターン905aを中心として、その周方向に伸縮可能となる。そして、服地903a、903bが、折り線907、909に沿って扁平に折り畳まれることにより、衣服本体901が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体901は、それ自体が図27に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えた衣服となる。
【0124】
衣服本体901は、着用時には、中央の八角形パターン905aが人体の右脇腹部周辺に配置される。このため、衣服本体901は、人体の右側から左側にかけて広がりをもった形状となる。
【0125】
また、衣服本体901は、各シートの服地903a、903bそれぞれの適宜位置に、複数の括り合わせ部915a、915b、915c、915dを有する。括り合わせ部915a〜915dは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士の縫い合せである。これら括り合わせ部915a〜915dによって、衣服本体901は、着用時にも、折り線907、909の折れが開ききることなく、折れが維持されてシャツ900独自の立体感のある外観デザインとなる。
【0126】
次に本実施形態にかかる衣服の基本的な製造方法を図1〜5のワンピースを例にとり説明する。
【0127】
化学繊維等の熱可塑性を有する服地を1シート用意する。まず、この服地103に、所望の多角形パターン105を画成する、山折り線及び谷折り線を折り畳んでいく。この場合、例えば、アイロンなどを用いて、服地103に一時的な折り線を形成するようにしてもよい。
【0128】
次に、すべての山折り線及び谷折り線が一時的に形成された状態(一時的に、図2の形状が形成された状態)で、服地103全体に一気に熱加工処理(熱プレス加工)を施す。これにより、服地103は、恒常的な折り線107、109を有した服地103となる。
【0129】
必要な場合には、例えば図4に示すように、服地103に色彩又は模様を施す。服地103に色彩又は模様を施す際には、例えば扁平に折り畳んだ服地103の表面に、服地103の全体表面とは異なる色彩を施す。この色彩は、例えば、染料の塗布、色彩を有するシートの熱転写等の方法で行われる。これにより、図5に示すように、着用時のワンピース・ドレス100は、色彩又は模様が、所定パターンで分散するため、図示例のような、面白みのある独特なデザイン性を備える。
【0130】
次に、服地103に閉じ合わせ手段を設ける。具体的には、縫合部111を縫合し、スナップ113a、113bを取り付ける。さらに、服地103に結合手段を設ける。具体的には、括り合わせ部115a〜115fの同符号が付された複数箇所の縫合線を重ねて縫い合わせる。最後に、服地103に、肩ひも102a及びスナップ102bを取り付けて、ワンピース・ドレス100が完成する。
【0131】
上述した衣服の製造方法によれば、熱加工処理によって、服地に、前述の条件を満たす恒常的な折り線を予め形成することにより、その1シートの服地(又は複数シートを継ぎ合わせた服地)に結合手段(人体の所定箇所を覆うため、服地の端部を縫合するなどの手段)及び閉じ合わせ手段(恒常的な折り線を維持するため、扁平に折り畳まれた服地の重ね合わされた部分を縫合するなどの手段)を形成するだけで、デザイン性の高い複雑な形状の衣服を形成することができる。
【0132】
上記衣服の製造方法は、服地を、人体の形状に合わせた身頃や袖等をそれぞれ個別に切断し縫合する、従来の衣服の製造方法に比べ、極めて簡易な工程で衣服を製造することが可能となる。また、服地に(前述の条件を満たす)恒常的な折り線を形成することで、服地に結合手段及び閉じ合わせ手段を形成するだけという、極めて簡易な工程であっても、非常にデザイン性の高い衣服を作成することができる。また、服地を扁平に折り畳んだ状態で、色彩を施すだけで、着用時の衣服を伸展させた状態(結合手段により、完全な伸展ではないが)においては、衣服のところどころに、色彩(又は模様でもよい)が施された、個性的な外観デザインを形成することが可能となる。
【0133】
なお、服地103に模様又は色彩を施す例として、扁平に折り畳んだ服地103の表面に、服地103の全体表面とは異なる色彩を施す例を示した。しかし、これに代えて、前述したように、服地103に、多数の恒常的な折り線107、109の位置を視覚的に表示する、或る色彩をもった模様を施してもよい(第一実施例参照)。この場合、折り線107、109の位置を表示する工程は、服地103に折り線107、109を形成するより前に実行されることが好ましい。これにより、折り線を形成する工程において、服地103の何処に折り線107、109を形成すべきなのかを容易に理解できる。
【0134】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0135】
100 ワンピース・ドレス
101 衣服本体
102a ストラップ
102b スナップ
103 服地
105 多角形パターン
107 折り線
109 折り線
111 縫合部
113a スナップ
115a〜115e 括り合わせ部
【技術分野】
【0001】
本発明は衣服、例えばドレス、ジャケット、シャツ、スカート、キュロットスカート及びパンツなどに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベルトのような形状に折り畳むことができ、それにより、非使用時に腰のまわりにベルトのように装着することができる防水衣服が開示されている。
【0003】
特許文献2には、非着用時にコンパクトに折り畳むことができる外科用ガウンが開示されている。
【0004】
特許文献3には、一部分にプリーツを有する医師用ガウンであって、非着用時にそのガウンを折り畳むとき、その一部分がプリーツの折り目に沿って折り畳めるようになったものが開示されている。
【0005】
特許文献4には、プリーツを有し、そのプリーツの折り目に沿って小さく折り畳めるスカートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−140101号公報
【特許文献2】特開昭60−88545号公報
【特許文献3】特開昭64−26703号公報
【特許文献4】実開昭58−148013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
衣服には、人に着用されるときのその衣服の形状が、人体の複雑な形状に適合すること、及び、人の動きに応じて柔軟に変化できることも要求される。また、衣服には、その衣服が人に着用されるときに視覚的にアピールする美的な外観をもつことが望まれる。加えて、衣服には、その衣服の収納スペースを節約し、かつその衣服の運搬を容易にするために、扁平な形状に折り畳めることが望まれる。
【0008】
しかし、従来、視覚的アピールが重視される通常の衣服の場合、その衣服を扁平に折り畳んだならば、その折り畳み線が、その衣服の着用時における、美的にデザインされた外観を損なう結果になる。それゆえ、人々は通常、その美的な外観に価値のある衣服を収納するとき、その外観を損なわないように、それを折り畳むのではなく、それを例えばハンガーに吊るす。
【0009】
他方、その折り目に沿って小さく折り畳むことができるプリーツを有する従来のスカートの場合、その外観のデザインがプリーツだけに制限される。プリーツだけに制限されたそのデザインは、そのスカートの視覚的アピールへの寄与が弱いであろう。
【0010】
本発明の目的は、衣服を扁平に折り畳むことを可能とし、かつその衣服の外観デザインの視覚的アピールに寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に従う衣服は、1シートの服地又は相互に継合わされた複数シートの服地である衣服本体を備え、前記衣服本体の各シートの服地が、人に着用されたとき、前記人の身体の所定部分を貫通させる少なくとも2つの開口を有する中空の立体形状を形成し、前記各シートの服地は、前記各シートの服地の面積の全体に行列状に配列された多数の多角形パターンを画成する多数の恒常的な折り線を有し、前記多数の折り線は、これら多数の折り線に沿って前記各シートの服地が扁平に折り畳まれることを可能とする幾何学的条件を満たし、前記各シートの服地が、人に着用されたとき、前記多数の折り線に沿った折れが維持されるように、異なる多角形パターン上の少なくとも2箇所が、相互に結合されるための結合手段を有する。
【0012】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、扁平に折り畳むことができるとともに、外観デザインの視覚的アピールに寄与することができる。すなわち、この衣服は、衣服本体の多数の折り線により形成される衣服本体の表面の凹凸が、着用時には衣服の外観デザインを提供する。他方、この衣服本体の多数の折り線に沿って、その衣服は扁平に折り畳むことができるので、非着用時には、その収容のためのスペースが小さくてすみ、持ち運びも容易である。また、従来の衣服のように、折り畳みでできた服地の折れ目が着用時の衣服の外観デザインを損なうという問題がない。
【0013】
好適な実施形態では、前記結合手段は、前記衣服本体が扁平に折り畳まれたときに相互に重なり接触し合う位置に配置される。
【0014】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、折り線を維持することによる、衣服の高いデザイン性、及び、人体の形状及び動きにフィットした衣服の形状が、衣服が扁平に折り畳まれること、即ち衣服の収容の容易さを阻害しない。
【0015】
好適な実施形態では、前記衣服本体は、前記各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所を相互に閉じ合わせる、閉じ合わせ手段を有し、前記閉じ合わせ手段は、前記衣服本体が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置関係にある、前記各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所に設けられる。
【0016】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、人体を覆うという衣服本来の形状が、衣服が扁平に折り畳まれること、即ち衣服の収容の容易さを阻害しない。
【0017】
好適な実施形態では、前記恒常的な折り線は、複数の山折り線及び複数の谷折り線からなり、前記複数の谷折り線は、衣服の着用時において、人体の関節運動による変形を受け入れるために、衣服が伸縮すべき方向に選ばれている。
【0018】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、多数の折り線での折れ角度の変化(つまり、折れが深くなったり、浅くなったりすること)により、衣服が伸縮すべき方向へ(他の方向と比較して)比較的容易に伸縮することができる。
【0019】
好適な実施形態では、前記衣服本体は、前記多数の恒常的な折り線の位置を視覚的に表示する色彩又は模様を備える。
【0020】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、服地上の折り線の位置が視認可能となるとともに、折り線の位置を視覚的に表示する色彩又は模様が、衣服の外観デザインの構成要素になる。
【0021】
好適な実施形態では、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様は、前記衣服の製造工程において、前記恒常的な折り線が前記各シートの服地に形成されるより前に、前記各シートの服地上に形成されたものである。
【0022】
この構成により、本実施形態に係る衣服を製造する際に、服地の何処に折り線を形成すべきなのかを容易に理解できる。
【0023】
好適な実施形態では、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様が、前記各シートの服地上の互いに隣接する多角形パターンが互いに異なる色彩又は模様をもつように、前記多数の多角形パターンの領域にそれぞれ施された色彩又は模様を含む。
【0024】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、折り線の位置が、それぞれ異なる色彩又は模様が施された互いに隣接する多角形パターンの境界線として、明確に視認可能である。そして、その境界線に沿って服地を折ることで、正しい位置に折り線が形成され、衣服としての正しい形状が形成されることとなる。加えて、異なる色彩又は模様で塗り分けられた多角形パターンが、衣服の外観デザインの構成要素となる。
【0025】
好適な実施形態では、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様が、前記各シートの服地上の前記折り線に相当する位置に施された線模様を含む。
【0026】
この構成により、本実施形態に係る衣服を製造する際には、服地を線模様に沿って折ることで、恒常的な折り線が正しい位置に形成されて、衣服としての正しい形状が形成されることとなる。加えて、折り線に沿った線模様が、衣服の外観デザインの構成要素になる。
【0027】
好適な実施形態では、前記衣服本体は、その全体表面のうち、扁平に折り畳まれた状態で外部に露出する表面部分に、前記衣服本体の他の表面部分とは異なる色彩及び/又は模様が施される。
【0028】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、着用時において、色彩又は模様が分散する、独特な面白みのあるデザイン性を備える。また、扁平に折り畳まれた状態の衣服は、その外部に露出する部分全体に色彩又は模様が施されているため、着用時の場合とはまた異なった、独特なデザイン性を備える。
【0029】
好適な実施形態では、前記衣服本体の各シートの服地に、人の体の所定部分を貫通させるための切開口が形成される。
【0030】
この構成により、本実施形態に係る衣服は、より人体の形状にフィットした衣服本来の形状として形成されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一つの実施形態の第1の例にかかるワンピース・ドレスの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図2】図1のワンピース・ドレスを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図3】図1のワンピース・ドレスの着用時の状態を示す正面図である。
【図4】図2の扁平に折り畳んだ状態のワンピース・ドレスに色づけを施した状態を示す平面図である。
【図5】図4の色づけされたワンピース・ドレスの着用時の状態を示す正面図である。
【図6】本実施形態の第2の例にかかるジャケットの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図7】図6のジャケットを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図8】図6のジャケットの着用時の状態を示す正面図である。
【図9】本実施形態の第3の例にかかるシャツの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図10】図9のシャツを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図11】図9のシャツの着用時の状態を示す正面図である。
【図12】本実施形態の第4の例にかかるスカートの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図13】図12のスカートを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図14】図12のスカートの着用時の状態を示す正面図である。
【図15】本実施形態の第5の例にかかるシャツの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図16】図15のシャツを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図17】図15のシャツの着用時の状態を示す正面図である。
【図18】本実施形態の第6の例にかかるスカートの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図19】図18のスカートを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図20】図18のスカートの着用時の状態を示す正面図である。
【図21】本実施形態の第7の例にかかるシャツの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図22】図21のシャツ及び図24のスカートを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図23】図21のシャツの着用時の状態を示す正面図である。
【図24】本実施形態の第8の例にかかるスカートの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図25】図24のスカートの着用時の状態を示す正面図である。
【図26】本実施形態の第9の例にかかるシャツの衣服本体を展開した状態を示す平面図である。
【図27】図26のシャツを扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図28】図26のシャツの着用時の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明にかかる衣服の一実施形態を説明する。本実施形態にかかる衣服は、様々な形態の衣服、例えば、女性用のワンピース・ドレス、ジャケット、シャツ、スカート、キュロットスカート又はパンツ等の衣服であり得る。
【0033】
まず、本実施形態にかかる衣服の基本的構成を説明する。本実施形態にかかる衣服は、1シートの服地又は相互に継合わされた複数シート(典型的には2シート、又は多くても数シート)の服地から作られた衣服本体を備える。ここで、本明細書における衣服本体とは、衣服の主要機能、つまり、人体を覆うとともに衣服の基本的な外観デザインを決定する機能を提供する衣服の主要部分をいう。よって、衣服の主要機能を助ける補助機能又は他の機能を提供する衣服の部分、例えば、衣服を人体に取り付けるための部材(例えば、ストラップ、ベルト、ボタン、ホック等)、衣服を補強するための部材(例えば、裏地、見返し等)、及び装飾部材(例えば、飾り布、コサージュ等)は、衣服本体に含まない。
【0034】
衣服本体を構成する各シートの服地は、多数の恒常的な折り線を有し、それら恒常的な折り線は、その服地の面積の全体に行列状に(つまり、二次元に)配列された多数の多角形パターンを画成する。ここで、恒常的な折り線とは、通常の着用や洗濯によっては折り線が消えないことであって、それにより、ユーザは常にそれらの折り線を認識できる。
【0035】
各シートの服地の多数の恒常的な折り線は、その衣服本体を扁平に(つまり、服地の厚みを無視すれば平面形状に)折り畳むことを可能にするための或る幾何学的条件を満たしている。さらに、上述の多数の恒常的な折り線は、それらの折り線での服地の折れをある程度開いたときにその服地が立体形状になるための別の幾何学的条件も満たしている。因みに、上記2種類の幾何学的条件を満たすシートそれ自体は、所謂「立体折り紙」として経験的に公知であり、それら幾何学的条件の数学的解説は、例えば特許第4253145号公報に記述されているから、本明細書ではその詳細な説明は省略する。
【0036】
上記1シート又は複数シートの服地(つまり衣服本体)により形成される上記立体形状は、衣服(例えば、ワンピース・ドレス、ジャケット、シャツ、スカート、キュロットスカート又はパンツ等)として使用できる立体形状である。すなわち、この立体形状は、身体の所定部分(例えば、首、胴、腰、脚及び/又は腕等)を貫通させる少なくとも2つの開口(例えば、襟ぐり、裾、袖ぐり及び/又は袖口等に相当する開口)を有する中空の形状である。換言すれば、上記立体形状は、1つの開口のみをもつ容器のような形状、又は、開口の全く無いボールのような閉じた形状ではない。
【0037】
前記立体形状(複数の開口を有する中空形状)を形成するために、衣服本体は、好ましくは、以下の閉じ合わせ(seaming)手段及び/又は切開口を有することができる。
【0038】
閉じ合わせ手段は、衣服本体が、人に着用されたとき、人の身体の所定部分を包囲するチューブを形作るように、衣服本体の各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所を、閉じ合わせる(seam)手段である。閉じ合わせ手段には、恒常的に閉じ合わせる手段(恒常的にその2箇所が閉じ合わされているように、例えば、縫い合わせや接着のような、通常の使用状態においては、その閉じ合わせを開くことができない閉じ合わせ)が含まれてもよいし、一時的に閉じ合わせる手段(例えば、ボタンとホール、スナップ・ファスナー、ジッパー、ベルトや紐による締結などのように、ユーザがその閉じ合わせを開いたり再び閉じ合わせたりすることができる閉じ合わせ)が含まれてもよい。
【0039】
恒常的な閉じ合わせ手段は、衣服本体が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う(つまり、重なり合う、又は隣接し合う)という位置関係にある、衣服本体の2箇所に設けられて、それらの箇所を閉じ合わせる。このため、衣服本体は、その恒常的な閉じ目を維持したままで、扁平に折り畳むことが可能である。他方、一時的に閉じ合わせる手段は、衣服本体の上記位置関係にある2箇所に設けられてもよいし、あるいは、上記位置関係にない(つまり、衣服本体が扁平に折り畳まれた状態では相互間に間隔を空けて位置する)2箇所に設けられて、それらの箇所を相互に閉じ合わせるようになっていてもよい。一時的な閉じ合わせ手段が上記位置関係にない2個所に設けられた場合には、その衣服を収納する時に、その閉じ合わせ手段による閉じ合わせを解除すれば、その衣服本体を扁平に折り畳むことが可能となる。
【0040】
また、切開口は、各シートの服地の適宜箇所を切開することで形成された、人体の所定部分(例えば、頭、腕、脚、腰など)を貫通させるための開口である。切開口は、例えば、或る折り線に沿った切れ目でもよいし、折り線ではない或る直線又は曲線に沿った切れ目でもよいし、又は、円形あるいは多角形のような二次元形状の穴であってもよい。
【0041】
さらに、衣服本体の各シートの服地は、好ましくは、複数の折り線により画成された異なる多角形パターン上にそれぞれ存在する複数箇所を、互いに接触するように結合する、所定の結合手段を有することができる。それにより、その衣服の着用時に、その衣服本体の多数の折り線での折れが完全に開いてしまわない(つまり、折れ角度が180度にまで完全には開かない)ようになっている。その結果、その衣服の着用時に、その衣服本体の多数の折れが提供するその衣服本体の外観の凹凸デザインが維持される。また、その衣服の着用時、その衣服本体が折れ線に沿って或る程度折れている状態にあるから、その衣服の3次元の形状やサイズが容易に変化でき、その結果、その衣服を着ている人体の様々な運動を楽に許容できる。
【0042】
ここで、上記所定の結合手段は、恒常的な結合手段(恒常的にそれら複数箇所が結合されているように、例えば縫い合わせ又は接着のような、その結合を解除することが困難な結合)であっても、あるいは、一時的な結合手段(例えばボタンとボタンホール、スナップ・ファスナー、ジッパー、紐やベルトによる結合のように、その結合を解除することが容易である結合)であってもよい。恒常的な結合手段を採用する場合は、その結合手段により結合される上記少なくとも2箇所は、衣服本体が扁平に折り畳まれたときに互いに接触し合う(つまり、重なり合う、又は隣接し合う)という相互位置関係の条件を満たす必要がある。他方、一時的な結合手段を採用する場合は、その結合手段は、その結合手段により結合される上記少なくとも2箇所は、上記の相互位置関係の条件を満たしても、満たさなくてよい。いずれの場合でも、常に衣服本体は扁平に折り畳むことができる。
【0043】
本発明の実施形態に従う衣服の衣服本体は、好ましくは、上記多数の折り線での折れ角度の変化(つまり、折れが深くなったり、浅くなったりすること)により、或る方向へ(他の方向と比較して)比較的容易に伸縮することができる。この衣服本体の比較的容易な伸縮の方向は、その衣服の着用時に、人体の関節運動による変形を受け入れるために衣服が伸縮すべき方向と一致するように、選ばれている。つまり、その衣服本体の多数の折り線の配置は、その衣服本体が上記伸縮すべき方向に比較的容易に伸縮可能になるように設定されている。その典型的な例として、次のように折れ線を配置することができる。すなわち、その衣服を外側から見たときの谷折れ線(人体の方へ凹んでいる折れ線)のすべてが、上記伸縮すべき方向に対して交差する方向にある(換言すれば、上記伸縮すべき方向と同じ方向ではない)。
【0044】
例えば、後述されるワンピース・ドレス100の実施例の場合(図1〜3参照)、そのワンピース・ドレス100は、人体の腰椎関節でのウエストの曲げ運動及び股関節での大腿のスウィング運動を受け入れる必要がある。そのためには、そのワンピース・ドレス100は、少なくともウエストからスカートの部分において、上下方向に伸縮する必要がある。そこで、そのワンピース・ドレス100の衣服本体101の多数の折り線は、そこでの折れ角度の変化によりその衣服本体101が上下方向に比較的容易に伸縮するように、配置されている。図3から分かるように、全ての谷折れ線(破線で示される)は、上下方向に対して交差した方向である。あるいは、後述される短丈のジャケット(ボレロ風ジャケット)200の実施例の場合(図4〜6参照)、そのジャケット200は、人体の肩関節での上腕のスウィング運動を受け入れる必要がある。そのためには、そのジャケット200は、少なくとも肩周辺の部分において、水平(左右)方向に伸縮する必要がある。そこで、そのジャケット200の衣服本体201の多数の折り線は、そこでの折れ角度の変化によりその衣服本体201が水平方向に比較的容易に伸縮するように、配置されている。図6から分かるように、全ての谷折れ線(破線で示される)は、水平方向に対して交差した方向である。
【0045】
本実施形態にかかる衣服は、着用時には、衣服本体の多数の折り線により形成される衣服本体の表面の凹凸が、衣服の外観デザインを提供する。本実施形態にかかる衣服は、非着用時には衣服本体の多数の折り線に沿って扁平に折り畳むことができるので、その収容のためのスペースが小さくてすみ、持ち運びも容易である。収容時の衣服の折り畳みに使われる折り線と、着用時の衣服の外観の凹凸デザインを形成するための折り線とが同じであるから、従来の衣服のように折り畳みでできた服地の折れ目が着用時の衣服の外観デザインを損なうという問題がない。さらに、この多数の折り線が形成されたシート(服地)自体は、前述したように、所謂「立体折り紙」としての形状を有する。このため、衣服が扁平に折り畳まれたとき(収納時)にもまた、非常に優れた外観デザインを提供する。
【0046】
本実施形態にかかる衣服によれば、各シートの服地の形状、サイズ、及び/又は多数の折り線の配置を変えることで、様々な異なる外観デザインをもった衣服を設計できる。1シート、2シート又は多くても数シートの服地を折ることで衣服本体が作られるので、衣服の製造工程が簡素化される。
【0047】
上述した本実施形態にかかる衣服の複数の実施例を説明する。
<第1実施例>
【0048】
図1〜図3は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるワンピース・ドレスを示す。図1は、そのワンピース・ドレス100の衣服本体を展開した状態を示す平面図である。図2は、そのワンピース・ドレス100を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図3は、そのワンピース・ドレス100の着用時の状態を示す正面図である。
【0049】
衣服としてのワンピース・ドレス100は、1つの衣服本体101と、衣服本体101を身体の肩から吊るための衣服本体101に取り付けられた2本のストラップ102aと、この2本のストラップを衣服本体101に留めるための1組のスナップ102bとを備える。衣服本体101は、1シートの服地103から作られる。その服地は103は、図1から分かるように、その面積の全体に行列状に(つまり、二次元に)配列された多数の多角形パターン105を画成する多数の恒常的な折り線107、109を有する。図中、実線で示された折り線107は、ワンピース・ドレス100を外側から見た場合の山折り線(外へ向けて出っ張っている折れ線)であり、破線で示された折り線109は、谷折り線(内へ向けて凹んでいる折れ線)である。
【0050】
従来の一般的な衣服の衣服本体は、例えば前身頃、後身頃及び左右の袖等のような、人体の対応部分の形状に合わせて曲線的な形状に裁断された多数シートの服地が、相互に縫製されることで作られる。それら多数シートの服地の形状が、衣服の形状を人体の曲線的な形状やその変化に適合させる。これに対し、この実施例にかかる衣服(ワンピース・ドレス100)の衣服本体101は、恒常的な折り線107、109で画成された多数の多角形パターン105をもつ1シートの服地103で作られる。それらの多角形パターン105は、人体の対応部分の形状に合わせた曲線的な形状ではなく、複数の直線的な折り線107、109で画成された、例えば三角形や四角形などの単純幾何学形状である。衣服本体101では、服地103それ自体又は多角形パターン105それ自体の形状ではなく、多数の多角形パターン105間の折れ具合とその変化が、衣服(ワンピース・ドレス100)の形状を人体の曲線的形状やその変化に適合させるという機能を提供する。
【0051】
服地103の多角形パターン105を画成する多数の折り線107、109は、これら多数の折り線107、109に沿って、1シートの服地103が扁平に折り畳まれることを可能とする公知の幾何学的条件を満たす。加えて、これら折り線107、109での服地103の折れをある程度開いたときにその服地103が立体形状になるための別の公知の幾何学的条件も満たす。この服地103からなる衣服本体101は、扁平に折り畳まれた状態のときにも、非常に高いデザイン性を有する(この点については、本実施例でのみ以下に具体的に説明するが、他の実施例についても同様である。)。図2は、図1の衣服本体101が扁平に折り畳まれた状態である。この衣服本体101は、所定の一方向(図3における上下方向)に、捩られながら折り畳み可能(伸縮可能)となる。
【0052】
服地103の恒常的な折り線107、109は、例えば、服地103の素材が熱可塑性を有するポリエステルなどの化学繊維である場合には、服地103を折り線107、109で折った状態で熱プレスを加えるというような熱処理加工によって形成することができる。あるいは、恒常的な折り線107、109は、折り線107、109に沿ったステッチ、又はその他の方法によって形成することもできる。
【0053】
衣服本体101は、その服地103上に、上述した恒常的な閉じ合わせ手段である縫合部111を有する(図1参照)。縫合部111は、服地103上の異なる辺縁上の2箇所(参照番号111で示される)の縫い合わせである。これにより、衣服本体101は、人体のウエストから脚部を貫通させる2つの開口を有するチューブを形成する。そして、衣服本体101が、ワンピース・ドレス100としての立体形状となる。
【0054】
縫合部111により縫合される上記2箇所(参照番号111で示される)は、服地103が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置に配置されている。従って、衣服本体101は、図2に示すように、常に扁平に折り畳むことが可能となる。なお、図1において、服地103の縫合部111の上方に形成された2組のスナップ113a、113bは、上述した一時的な閉じ合わせ手段として、縫合部111を補助する機能を有する。これらスナップ113a、113bは、収納時には解除されてもよい。変形例として、縫合部111に代えて、上述した一時的な閉じ合わせ手段としてのボタンとホール、スナップ・ファスナー又はジッパー等を用いてもよい。
【0055】
衣服本体101は、着用時(図3参照)には、多角形パターン105を画成する折り線107、109により、ウエストの曲げ運動及び大腿のスウィング運動を受け入れるように伸縮可能となる。特に、谷折れ線109のすべてが上下方向に交差する方向であるため、衣服本体101は上下方向に比較的容易に伸縮可能である。また、関節部分の動きに合わせた衣服本体101の外形の変化によってワンピース・ドレス100の外観のデザイン性を高めることができる。
【0056】
衣服本体101は、その服地103上に、上述した恒常的な結合手段としての複数の括り合わせ部115a、115b、115c、115d、115e、115fを有する。括り合わせ部115a〜115fの各々は、衣服本体101の異なる多角形パターン上にそれぞれ存在する複数箇所同士を、互いに接触するよう、それらを縫い合わせることで結合する(例えば、括り合わせ部115aは、図1に参照番号115aで指示される4つの箇所を相互に結合し、また、括り合わせ部115bは、図1に参照番号115bで指示される2つの箇所を相互に結合する)。それにより、衣服本体101を扁平に折り畳むための折り線107、109に沿った服地103の折れが、着用時にも完全に開いてしまわずに維持されるように形成される。図示例にあっては、衣服本体101の胸囲及びウエスト部周辺の異なる位置に配置された複数の括り合わせ部115a〜115fがある。括り合わせ部115a〜115fの各々により相互に結合される複数個所(例えば、括り合わせ部115aの場合、図1に参照番号115aで指示される4つの箇所)は、服地103を扁平に折り畳んだときに接触し合う(つまり、重なり合う、又は隣接し合う)位置に存在する。そのため、衣服(ワンピース・ドレス100)の収納時には、括り合わせ部115a〜115fによる結合を維持したままで、衣服(ワンピース・ドレス100)を扁平に折り畳むことができる。この実施例では、括り合わせ部115a〜115fは、縫合するという恒常的な結合手段であるが、変形例として、括り合わせ部115a〜115fに代えてファスナー、スナップ等の一時的な結合手段を用いてもよい。
【0057】
前述したように、ワンピース・ドレス100の外観デザインは、衣服本体101の表面の全体に行列状に(つまり、二次元に)配列された多角形パターン105に対応した凹凸によって、ワンピース・ドレス100の外観の視覚的アピールに貢献する。そしてこの際、結合手段(括り合わせ部115a〜115f)によって、衣服本体101の折れを着用時に維持することで、衣服本体101を人体の形状に適した形状にできる。さらには、人の動きに応じてワンピース・ドレス100の形状が柔軟に変化させることもできる。
【0058】
また、このワンピース・ドレス100の衣服本体101は、扁平に折り畳まれた状態においても、通常のワンピース・ドレスとは異なり、高いデザイン性を備えたものとなる。例えば、折り線107、109に沿って服地103を折り畳むことにより、扁平に折り畳まれた衣服本体101の表面(図2に示すように、扁平に折り畳まれた状態での表面)に、重ね合わされた多角形パターン105の一部が露出される。これにより、扁平に折り畳まれた状態での衣服本体101それ自体が図2に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0059】
次に、上述した衣服(ワンピース・ドレス100)に施された、色彩又は模様の一例について説明する。
【0060】
図4に示すように、衣服本体101の全体表面のうち、衣服本体101が、扁平に折り畳まれた状態で外部に露出しているその表面部分に、それ以外の部分とは異なる所定の色彩又は模様が施される。
【0061】
このワンピース・ドレス100の着用時には、図5に示すように、上記所定の色彩又は模様が施された部分(グレーで示される)が、ワンピース・ドレス100の表面上に、あるパターンで分散して表示され、このパターンは、ユーザにとり、図に示されたような扁平な折り畳み状態からは容易に予測しがたい面白みをもつ。このように、着用時のワンピース・ドレス100は、色彩又は模様が、面白みのあるパターンで分散するため、図示例のような、独特なデザイン性を備える。また、上述したように、収納時(扁平に折り畳まれた状態)には、その外部に露出している部分全体に色彩又は模様が施されるため、着用時の場合とはまた異なった、独特なデザイン性を備える。なお、この色彩又は模様は、例えば、染料の塗布、シートの熱転写等の方法で行われる。
【0062】
次に、衣服(ワンピース・ドレス100)に施された、色彩又は模様の変形例について説明する。
【0063】
本変形例では、服地103は、多数の恒常的な折り線107、109の位置を視覚的に表示する(人がそれを視覚的に識別することを可能にする)或る色彩をもった模様を備える。以下、図1及び図3を用いて説明する。例えば、図1に示す展開図と同様に、服地103には、山折り線107の位置に、その服地103の地色とは異なる或る色彩をもつ線模様、例えば実線の模様が描かれ、谷折線109の位置には、その服地103の地色とは異なる或る色彩をもつ線模様、例えば破線の模様が描かれる。折り線107、109の位置に上記実線と破線の模様を施す作業は、衣服(ワンピース・ドレス100)の製造過程において、服地103に折り線107、109を形成するより前に実行されることが好ましい。このようにすれば、図3に示すように、服地103上の折り線107、109の位置が、上記の実線と破線の模様により視認可能であり、ワンピース・ドレス100を製造する人々にとり、服地103の何処に折り線107、109を形成すべきなのかを容易に理解できる。このため、ワンピース・ドレス100を製造する際には、服地103を上記実線と破線の模様とに沿って折る(実線模様に沿って山折りし、破線模様に沿って谷折りする)ことで、恒常的な折り線107、109が正しい位置に形成されて、ワンピース・ドレス100としての正しい形状が形成されることとなる。加えて、折り線107、109に沿った上記実線と破線の模様が、ワンピース・ドレス100の外観デザインの構成要素になる。なお、折り線107、109の位置に施された模様のバリエーションは、上記したような山折り線107に沿った実線模様と谷折線109に沿った破線模様だけに限られず、多種多様であり得る。
【0064】
また、図示はしないが、衣服(ワンピース・ドレス100)に施された、色彩又は模様の他の変形例の一つを以下に説明する。すなわち、服地103の全面に存在する、折り線107、109によって画成された多数の多角形パターン105の領域に、次の条件を満たすように、異なる色彩又は模様が施される。その条件とは、互いに隣接する多角形パターン105が互いに異なる色彩又は模様をもつことである。この色彩又は模様を施す作業も、衣服(ワンピース・ドレス100)の製造過程において、服地103に折り線107、109を形成するより前に実行されることが好ましい。このようにすれば、折り線107、109の位置が、それぞれ異なる色彩又は模様が施された互いに隣接する多角形パターン105の境界線として、明確に視認可能である。そして、その境界線に沿って服地103を折ることで、正しい位置に折り線107、109が形成され、ワンピース・ドレス100としての正しい形状が形成されることとなる。加えて、異なる色彩又は模様で塗り分けられた多角形パターン105が、ワンピース・ドレス100の外観デザインの構成要素となる。
【0065】
衣服本体101の全体表面のうち、衣服本体101が、扁平に折り畳まれた状態で外部に露出しているその表面部分に施された色彩又は模様、若しくは、折り線107、109を表示するように衣服に施された色彩又は模様については、本実施例のワンピース・ドレス100だけでなく、以下に説明する他の実施例を含む、本発明に従うあらゆる衣服に適用可能である。
<第2実施例>
【0066】
図6〜図8は、本実施形態にかかる2シートの服地から作られる短尺のジャケットを示す。図6は、そのジャケット200の衣服本体201を展開した状態を示す平面図である。図7は、そのジャケット200を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図8は、そのジャケット200の着用時の状態を示す正面図である。
【0067】
衣服としてのジャケット200は、1つの衣服本体201を備える。衣服本体201は、2シートの服地203a、203bから作られる。
【0068】
各シートの服地203a、203bは、それぞれ、図6に示すように、その面積の全体に行列状(つまり、二次元)に配列された多数の多角形パターン205を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線207、谷折り線209)を有する。なお、本実施例の各シートの服地203a、203bの多角形パターン205の形状は、第1実施例と同じか又は相似である。
【0069】
衣服本体201は、図6に示すように、各シートの服地203a、203b上に、恒常的な閉じ合わせ手段である縫合部211a、211bをそれぞれ有する。縫合部211a、211bは、各々、同符号を付した2箇所同士の縫い合わせである。服地203a、203bは、それぞれ、人体の右腕部分及び左腕部分が貫通される立体のチューブを形成する。各縫合部211a、211bにより縫合される各々2箇所は、服地203a、203bそれぞれが扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置に配置されている。従って、衣服本体201は、図7に示すように、常に扁平に折り畳むことが可能となる。
【0070】
また、2枚の服地203a、203bは、図6の継合わせ位置213で、相互に継合わされる(図7及び8の例では縫合されている)。これにより、右腕部分の服地203b及び左腕部分の服地203aが連結されて、図8に示すように、衣服本体201はジャケット200としての立体形状となる。
【0071】
この衣服本体201は、服地203a、203bに形成された折り線207、209により図6及び図8の左右方向(腕の軸方向)に捩られながら伸縮可能である。そして、2シートの服地203a、203bそれぞれが、折り線207、209に沿って扁平に折り畳まれることにより、衣服本体201が収納可能となる。図7に示す、扁平に折り畳まれた衣服本体201は、扁平に折り畳まれた、右腕部分の服地203b及び左腕部分の服地203aを、並べて配置した形状となる。扁平に折り畳まれた衣服本体201は、それ自体が図7に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0072】
衣服本体201は、結合手段として複数の括り合わせ部を有する。括り合わせ部215a、215b、215c、215d、215e、216a、216b、216c、216d、216eは、衣服本体201の異なる多角形パターン205上にそれぞれ存在する複数箇所同士(同符号が付された縫合線)を、互いに接触するように縫い合わせている。括り合わせ部215a〜215e、216a〜216eは、衣服本体201の肩周辺及び胸囲周辺の適宜位置に、それぞれ配置される。これにより、衣服本体201は、その着用時に、折り線207、209の折りが開ききることなく、肩周辺及び胸部周辺に、肩先のライン及び胸の凹凸等を強調させた、ジャケット200にふさわしい外観デザインとなる。
【0073】
また、括り合わせ部215a〜215e、216a〜216eそれぞれの、相互に結合される複数個所(例えば、括り合わせ部215aの場合、図6に参照番号215aで指示される3箇所、また、括り合わせ部216aの場合、図6に参照番号216aで指示される3箇所、)は、各々、服地203aを扁平に折り畳んだときに接触し合う(つまり、重なり合う、又は隣接し合う)位置に存在する。そのため、ジャケット200の収納時には、括り合わせ部215a〜215e、216a〜216eによる結合を維持したままで、各シートの服地203a、203bそれぞれが、扁平に折り畳まれ、その結果、ジャケット200を扁平に折り畳むことができる。
【0074】
本実施例の衣服本体201は、少なくとも肩周辺の部分において、肩関節の動きを受け入れるように、水平(左右)方向に伸縮可能となる。特に、衣服本体201の谷折れ線が、水平(左右)方向に交差する方向であるため、衣服本体201は水平(左右)方向に比較的容易に伸縮可能である。また、衣服本体201の外形の変化によって、ジャケット200の外観のデザイン性を高めることができる。
【0075】
なお、各シートの服地203a、203bは、図示例のように、一時的な閉じ合わせ手段として、開閉自在な前ひも202a、202bを有してもよい。この場合、前ひも202a、202bは、衣服本体201を扁平に折り畳んだときに、重ならない位置に取り付けられている。このため、前ひも202a、202bは、衣服本体201を収納する際は解除されて、衣服本体201を扁平に折り畳むことを可能にしている。
<第3実施例>
【0076】
図9〜図11は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られる半袖のシャツを示す。図9は、そのシャツ300の衣服本体301を展開した状態を示す平面図である。図10は、そのシャツ300を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図11は、そのシャツ300の着用時の状態を示す正面図である。
【0077】
衣服としてのシャツ300は、1つの衣服本体301と、ウエストラインを絞るためのひも302とを備える。衣服本体301は、1シートの服地303から作られる。その服地303は、図9に示すような多角形パターン305を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線307、谷折り線309)を有する。
【0078】
図9に示すように、服地303には、襟口となる切開口317が形成される。切開口317は、服地303をその略中央に位置する山折り線307及び谷折り線309に沿って裁断して形成される。切開口317には、周知の衣服と同様の見返し(補強布)が取り付けられる。
【0079】
また、図示例にあっては、衣服本体301は、その側部(脇腹周辺)に、恒常的な閉じ合わせ手段としての、複数(左右の脇腹周辺に1つずつ)の縫合部311a、311bを有する。縫合部311a、311bは、服地303上の同符号を付した2箇所それぞれの縫い合わせである。服地303には、縫合部311a、311bの内側(図9中、前後方向の中心側)に位置して、一時的な閉じ合わせ手段としての1組のスナップ311c、311dが取り付けられる。1組のスナップ311c、311dは、それぞれ、縫合部311a、311bの補助的機能を備える。これら縫合部311a、311b及びスナップ311c、311dにより、衣服本体301は、襟口の他に、ウエスト周りを貫通させる開口及び袖口を備えた、シャツ300としての立体形状となる。縫合部311a、311b及びスナップ311c、311dは、服地303が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置に形成される。従って、衣服本体301は、図10に示すように、常に扁平に折り畳むことができる。なお、スナップ311c、311dは、服地303が扁平に折り畳まれる際には、解除されてもよい。
【0080】
服地303に折り線307、309が形成されていることにより、衣服本体301は、首元から肩にかけて(図9及び図11の左右方向に)、直線状に伸縮可能である。、服地303が折り線307、309に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体301は収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体301は、それ自体が図10に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備える。
【0081】
図9の、衣服本体301は、人体の前側及び後ろ側に、恒常的な結合手段としての複数の括り合わせ部313a、313b、313c、313d、313e、313f、313gを有する。括り合わせ部313a〜313gは、衣服本体301の異なる多角形パターン305上にそれぞれ存在する複数箇所同士(同符号が付された縫合線)を、互いに重ね合わせた縫い合わせである。衣服本体301に、これら括り合わせ部313a〜313gを備えたことによって、着用時にも、折り線307、309の折りが開ききることなく、肩、袖及び胸囲周囲に凹凸が維持され、シャツ300独自の立体感のある外観デザインとなる。
【0082】
本実施例の衣服本体301は、服地303に形成された折り線307、309により、水平(左右)方向に伸縮可能に形成されている。従って、衣服本体301は、少なくとも肩周辺の部分において、肩関節の動きを受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体301の谷折れ線309のすべては、水平(左右)方向に交差する方向であるため、衣服本体301は、水平(左右)方向に比較的容易に伸縮可能である。また、衣服本体301の外形の変化によって、シャツ300の外観のデザイン性を高めることができる。
【0083】
<第4実施例>
【0084】
図12〜図14は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるミニスカートを示す。図12は、そのスカート400の衣服本体401を展開した状態を示す平面図である。図13は、そのスカート400を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図14は、そのスカート400の着用時の状態を示す正面図である。
【0085】
衣服としてのスカート400は、1つの衣服本体401を備える。衣服本体401は1シートの服地403から作られる。この服地403の多角形パターン405の形状は、実質的に第3実施例と同じか又は相似である。この服地403の多角形パターン405を画成する折り線を、山折り線407、谷折り線409と表す。
【0086】
図12に示すように、服地403には、人体のウエスト部分を貫通させる切開口417が形成される。切開口417は、服地403の略中央位置に形成される。切開口417は、図12の左右方向に(折り線407、409に交差するように)裁断して形成される。切開口417には、見返し(補強布)が取り付けられる。
【0087】
衣服本体401は、その服地403の側部(脇腹周辺)に、恒常的な閉じ合わせ手段である複数の縫合部411a、411bを有する。これら縫合部411a、411bは、同符号が付されたの縫合線各々の縫い合わせである。上述した切開口417及び縫合部411a、411bにより、衣服本体401は、ウエストから脚へかけて貫通される2つの開口を備えた、スカート400としての立体形状となる。なお、縫合部411a、411bは、服地403が扁平に折り畳まれた状態で重なりあう位置に形成される。
【0088】
服地403が折り線407、409を有することにより、衣服本体401は、図12及び図14の水平(左右)方向に、直線状に伸縮可能である。そして、服地403が、折り線407、409に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体401が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体401は、それ自体が図13に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0089】
なお、服地403は、切開口417の左右両端部に、ウエストサイズに合わせて切開口417の大きさを調整するための1組ずつのスナップ419a、419bを有する。
【0090】
さらに、衣服本体401は、図示されるように、恒常的な結合手段である括り合わせ部415a、415b、415c、415d、415e、415f、415g、415h、415i、415j、415k、415lを有する。括り合わせ部415a〜415lは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士を、それぞれ、重ね合わせた状態で縫合する。括り合わせ部415a〜415lによって、衣服本体401は、着用時にも、折り線407、409の折れが開ききることなく、2段のフレアスカート400としての外観デザインとなる。
【0091】
<第5実施例>
【0092】
図15〜図17は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるノースリーブのシャツを示す。図15は、そのシャツ500の衣服本体501を展開した状態を示す平面図である。図16は、そのシャツ500を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図17は、そのシャツ500の着用時の状態を示す正面図である。
【0093】
衣服としてのシャツ500は、1つの衣服本体501を備える。衣服本体501は、1シートの服地503から作られる。その服地503は、図15に示すような多角形パターン505を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線507、谷折り線509)を有する。
【0094】
衣服本体501は、その服地503上に、閉じ合わせ手段である縫合部511を有する(図15参照)。縫合部511は、同符号が付された縫合線各々の縫い合わせである。図示例では、縫合線は服地503の左右両端に位置する。縫合部511により、衣服本体501は、人体の胴部を貫通させるチューブを形成する。縫合部511は、服地503が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置に配置されている。
【0095】
また、服地503には、左右の腕部をそれぞれ貫通させる袖口となる、切開口517a、517bが形成される。切開口517a、517bは、他の実施例と同様、服地503の所定位置をそれぞれ裁断して形成され、見返し(補強布)が取り付けられる。
【0096】
服地503に折り線507、509が形成されていることにより、衣服本体501は、人体の胴部の軸方向(図15及び図17の上下方向)に、捩られながら伸縮可能である。そして、服地503が、折り線507、509に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体501が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体501は、それ自体が図16に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0097】
衣服本体501は、襟口及びウエストの周囲に、恒常的な結合手段としての複数の括り合わせ部515a、515b、515c、515d、515e、515f、515g、515h、515i、515j、515k、515lを有する。括り合わせ部515a〜515lは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士を、それぞれ重ね合わせた縫い合わせである。これら括り合わせ部515a〜515lを備えたことにより、衣服本体501は、着用時にも、折り線507、509の折れが開ききることなく、襟口及びウエストの周囲が絞られた、シャツ500独自の立体感のある外観デザインとなる。
【0098】
本実施例の衣服本体501は、服地503に形成された折り線507、509により、上半身の動きを受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体501の谷折れ線509のすべては、上半身の軸方向に交差する方向に形成されているため、衣服本体501は上半身の軸方向に比較的容易に伸縮可能となる。
<第6実施例>
【0099】
図18〜図20は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるミニスカートを示す。図18は、そのスカート600の衣服本体601を展開した状態を示す平面図である。図19は、そのスカート600を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図20は、そのスカート600の着用時の状態を示す正面図である。
【0100】
衣服としてのスカート600は、1つの衣服本体601を備える。衣服本体601は、1シートの服地603から作られる。その服地603は、図18に示すような多角形パターン605を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線607、谷折り線609)を有する。
【0101】
衣服本体601は、その服地603上に、恒常的な閉じ合わせ手段である縫合部611を有する(図18参照)。縫合部611は、同符号が付されたの縫合線を、各々縫い合わせることである。図18に示す縫合線は、服地の左右両端に位置する。これにより、衣服本体601は、人体の胴部を貫通させるチューブを形成する。縫合部611は、服地603が扁平に折り畳まれた状態で重なりあう位置に配置される。
【0102】
服地603が、折り線607、609を有することにより、衣服本体601は、人体の胴部の軸方向(図18及び図20の上下方向)に、捩られながら伸縮可能である。そして、服地603が、折り線607、609に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体601が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体601は、それ自体が図19に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えることとなる。
【0103】
衣服本体601は、図18に示すように、ウエストラインに沿って適宜間隔をあけて、複数の括り合わせ部615a、615b、615c、615d、615e、615f、615g、615h、615i、615j、615k、615l、615m、615n、615o、615pを有する。括り合わせ部615a〜615pは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士を、それぞれ接触させて縫合する。
【0104】
さらに、本実施例にあっては、服地603は、ベルトBを通す、複数のベルトループ620を備える。ベルトループ620は、図18に示すように、前記括り合わせ部615a〜615pを縫合する際に、併せて取り付けられる。ウエスト周囲に括り合わせ部615a〜615pを設けることによって、衣服本体601は、着用時にも、折り線607、609の折れが開ききることなく、ウエストを絞られ裾が広がる(フレア)スカート600としての立体形状となる。なお、ベルトループ620及びベルトBは、衣服本体601のウエスト周囲のサイズを調整する機能を有する。
【0105】
本実施例の衣服本体601は、服地603に形成された折り線607、609により、ウエストから脚にかけての動きを受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体601の谷折れ線609のすべては、ウエストから脚への方向に交差する方向に形成されているため、衣服本体601はウエストから脚にかけて比較的容易に伸縮可能となる。
<第7実施例>
【0106】
図21〜図23は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるシャツを示す。図21は、そのシャツ700の衣服本体701を展開した状態を示す平面図である。図22は、そのシャツ700を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図23は、そのシャツ700の着用時の状態を示す正面図である。
【0107】
衣服としてのシャツ700は、1つの衣服本体701を備える。衣服本体701は、1シートの服地703から作られる。その服地703は、図21に示すような多角形パターン705を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線707、谷折り線709)を有する。
【0108】
図21に示すように、服地703には、襟口となる切開口717が形成される。切開口717は、服地703の略中央に、谷折り線709に沿って形成される。切開口717は、他の実施例と同様に、服地703を裁断して形成され、見返し(補強布)を取り付けられる。
【0109】
衣服本体701は、一時的に閉じ合わせ手段としての、右側スナップ711a、711bと、左側スナップ711c、711dとを有する。衣服本体701は、その着用時には、それぞれ結合されたスナップ711a〜711dと、切開口717とを備えたことによって、人体の上半身を覆うシャツ700としての立体形状となる。
【0110】
これら多数の折り線707、709が服地703に形成されていることにより、衣服本体701は、腕部の軸方向(図21及び図23の左右方向)に、直線状に伸縮可能である。そして、服地703が、折り線707、709に沿って扁平に折り畳まれることで、衣服本体701が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体701は、それ自体が図22に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えた衣服となる。なお、衣服本体701を折り畳んで収納する際には、スナップ711a〜711dそれぞれの結合が解除されるため、図22に示すように、扁平な折り畳みが可能となる。
【0111】
衣服本体701は、図21に示すように、服地703全体の適宜位置に、複数の括り合わせ部715a、715b、715c、715d、715e、715f、715g、715h、715i、715jを有する。括り合わせ部715a〜715jは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士の縫い合わせである。これら括り合わせ部715a〜715jを備えたことによって、衣服本体701は、着用時にも、折り線707、709の折れが開ききることなく、肩、袖及び胸囲の周囲の凹凸が維持されてシャツ700独自の立体感のある外観デザインとなる。また、この括り合わせ部715a〜715jによって、服地703の伸縮方向の折れが維持されるため、腕部のスウィング運動を許容できる。
【0112】
本実施例の衣服本体701は、服地703に形成された折り線707、709により、図21及び図23の左右方向に伸縮可能に形成されている。このため、この衣服本体701は、少なくても肩関節から腕の動きを受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体701の谷折れ線709のすべては、腕の軸方向に交差する方向であるため、衣服本体701は腕の軸方向に比較的容易に伸縮可能となる。
<第8実施例>
【0113】
図24及び図25は、本実施形態にかかる1シートの服地から作られるスカートを示す。図24は、そのスカート800の衣服本体801を展開した状態を示す平面図である。図25は、そのスカート800の着用時の状態を示す正面図である。
【0114】
衣服としてのスカート800は、1つの衣服本体801を備える。衣服本体801は、1シートの服地803から作られる。この服地803の多角形パターン805の形状は、実質的に第7実施例と同じか又は相似である。この服地803の多角形パターン805を画成する折り線を、山折り線を807、谷折り線809と表す。
【0115】
図24に示すように、服地803には、襟口となる切開口817が形成される。切開口817は、服地803の略中央位置に形成される。切開口817は、他の実施例と同様に、服地803を裁断して形成される。切開口817には、見返り(補強布)が取り付けられる。
【0116】
切開口817を備えたこによって、衣服本体801は、人体のウエストから脚を貫通するスカート800としての立体形状となる。また、切開口817の周囲に、複数組のスナップ811a、811b、811c、811d、811e、811f、811g、811hを設けたことにより、衣服本体801のウエストの大きさは、調整可能となる。
【0117】
服地803に多数の折り線807、809が形成されることによって、衣服本体801は、図24及び25の上下方向に伸縮可能となる。そして、服地803が、折り線807、809に沿って扁平に折り畳まれることにより、衣服本体801は収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体801は、それ自体が図22に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備える。なお、この衣服本体801が扁平に折り畳まれた形状は、図22に示す第7実施例と同様である(ただし、図中のスナップ711a、711b除く。)。
【0118】
衣服本体801は、その服地803上の適宜位置に(図24参照)、複数の括り合わせ部815a、815b、815c、815dを有する。この括り合わせ部815a〜815dにより、衣服本体801は、着用時にも、折り線807、809の折れが開ききることなく、複数の部分で、凹凸形状が維持されて立体感のある外観デザインとなる。
【0119】
本実施例の衣服本体801は、服地803に形成された折り線807、809により、ウエストから脚にかけてのの曲げ運動を受け入れるように伸縮可能となる。特に、衣服本体801の谷折れ線809のすべては、ウエストから脚にかけて方向に交差する方向であるため、衣服本体801はウエストから脚にかけての方向に比較的容易に伸縮可能となる。
<第9実施例>
【0120】
図26〜図28は、本実施形態にかかる2シートの服地から作られるシャツを示す。図26は、そのシャツ900の衣服本体901を展開した状態を示す平面図である。図27は、そのシャツ900を扁平に折り畳んだ状態を示す平面図である。図28は、そのシャツ900の着用時の状態を示す正面図である。
【0121】
衣服としてのシャツ900は、1つの衣服本体901と、衣服本体901を肩から吊るすための2本の肩ひも902aと、これら肩ひも902aを衣服本体に固定する1組のスナップ902bとを備える。衣服本体901は、2シートの服地903a、903bから作られる。服地903a、903bには、それぞれ、図26に示すような多角形パターン905を画成する多数の恒常的な折り線(山折り線907、谷折り線909)が形成される。
【0122】
2枚の服地903a、903bは、図27の継合わせ位置(右脇腹部周辺の位置911a、及び、右肩部周辺の位置911b)で、相互に継合わされる(図示例では縫合されている)。また、服地903a、903bは、人体の左脇腹部周辺に、2枚の服地903a、903bを互いに一時的に閉じ合わせる手段としての、複数のスナップ913a、913b、913cを有する(図26参照)。衣服本体901は、これら継合わせ位置911a、911bでの縫合、及びスナップ913a、913b、913cによって、右側の袖口、及び、人体を貫通させる開口を備えたシャツ900としての形状となる。
【0123】
継合わせ位置911a、911bで縫合されることにより、継ぎ合わされた2枚の服地903a、903bは、その中央に、山折り線907に囲まれた八角形パターン905aが配置される。継ぎ合わされた2枚の服地903a、903b(すなわち衣服本体901)は、恒常的な折り線907、909により、中央の八角形パターン905aを中心として、その周方向に伸縮可能となる。そして、服地903a、903bが、折り線907、909に沿って扁平に折り畳まれることにより、衣服本体901が収納可能となる。扁平に折り畳まれた状態での衣服本体901は、それ自体が図27に示すような幾何学形状を有する、高いデザイン性を備えた衣服となる。
【0124】
衣服本体901は、着用時には、中央の八角形パターン905aが人体の右脇腹部周辺に配置される。このため、衣服本体901は、人体の右側から左側にかけて広がりをもった形状となる。
【0125】
また、衣服本体901は、各シートの服地903a、903bそれぞれの適宜位置に、複数の括り合わせ部915a、915b、915c、915dを有する。括り合わせ部915a〜915dは、同符号が付された複数箇所の縫合線同士の縫い合せである。これら括り合わせ部915a〜915dによって、衣服本体901は、着用時にも、折り線907、909の折れが開ききることなく、折れが維持されてシャツ900独自の立体感のある外観デザインとなる。
【0126】
次に本実施形態にかかる衣服の基本的な製造方法を図1〜5のワンピースを例にとり説明する。
【0127】
化学繊維等の熱可塑性を有する服地を1シート用意する。まず、この服地103に、所望の多角形パターン105を画成する、山折り線及び谷折り線を折り畳んでいく。この場合、例えば、アイロンなどを用いて、服地103に一時的な折り線を形成するようにしてもよい。
【0128】
次に、すべての山折り線及び谷折り線が一時的に形成された状態(一時的に、図2の形状が形成された状態)で、服地103全体に一気に熱加工処理(熱プレス加工)を施す。これにより、服地103は、恒常的な折り線107、109を有した服地103となる。
【0129】
必要な場合には、例えば図4に示すように、服地103に色彩又は模様を施す。服地103に色彩又は模様を施す際には、例えば扁平に折り畳んだ服地103の表面に、服地103の全体表面とは異なる色彩を施す。この色彩は、例えば、染料の塗布、色彩を有するシートの熱転写等の方法で行われる。これにより、図5に示すように、着用時のワンピース・ドレス100は、色彩又は模様が、所定パターンで分散するため、図示例のような、面白みのある独特なデザイン性を備える。
【0130】
次に、服地103に閉じ合わせ手段を設ける。具体的には、縫合部111を縫合し、スナップ113a、113bを取り付ける。さらに、服地103に結合手段を設ける。具体的には、括り合わせ部115a〜115fの同符号が付された複数箇所の縫合線を重ねて縫い合わせる。最後に、服地103に、肩ひも102a及びスナップ102bを取り付けて、ワンピース・ドレス100が完成する。
【0131】
上述した衣服の製造方法によれば、熱加工処理によって、服地に、前述の条件を満たす恒常的な折り線を予め形成することにより、その1シートの服地(又は複数シートを継ぎ合わせた服地)に結合手段(人体の所定箇所を覆うため、服地の端部を縫合するなどの手段)及び閉じ合わせ手段(恒常的な折り線を維持するため、扁平に折り畳まれた服地の重ね合わされた部分を縫合するなどの手段)を形成するだけで、デザイン性の高い複雑な形状の衣服を形成することができる。
【0132】
上記衣服の製造方法は、服地を、人体の形状に合わせた身頃や袖等をそれぞれ個別に切断し縫合する、従来の衣服の製造方法に比べ、極めて簡易な工程で衣服を製造することが可能となる。また、服地に(前述の条件を満たす)恒常的な折り線を形成することで、服地に結合手段及び閉じ合わせ手段を形成するだけという、極めて簡易な工程であっても、非常にデザイン性の高い衣服を作成することができる。また、服地を扁平に折り畳んだ状態で、色彩を施すだけで、着用時の衣服を伸展させた状態(結合手段により、完全な伸展ではないが)においては、衣服のところどころに、色彩(又は模様でもよい)が施された、個性的な外観デザインを形成することが可能となる。
【0133】
なお、服地103に模様又は色彩を施す例として、扁平に折り畳んだ服地103の表面に、服地103の全体表面とは異なる色彩を施す例を示した。しかし、これに代えて、前述したように、服地103に、多数の恒常的な折り線107、109の位置を視覚的に表示する、或る色彩をもった模様を施してもよい(第一実施例参照)。この場合、折り線107、109の位置を表示する工程は、服地103に折り線107、109を形成するより前に実行されることが好ましい。これにより、折り線を形成する工程において、服地103の何処に折り線107、109を形成すべきなのかを容易に理解できる。
【0134】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0135】
100 ワンピース・ドレス
101 衣服本体
102a ストラップ
102b スナップ
103 服地
105 多角形パターン
107 折り線
109 折り線
111 縫合部
113a スナップ
115a〜115e 括り合わせ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1シートの服地又は相互に継合わされた複数シートの服地である衣服本体を備え、
前記衣服本体の各シートの服地が、人に着用されたとき、前記人の身体の所定部分を貫通させる少なくとも2つの開口を有する中空の立体形状を形成し、
前記各シートの服地は、前記各シートの服地の面積の全体に二次元的に配列された多数の多角形パターンを画成する多数の恒常的な折り線を有し、
前記多数の折り線は、これら多数の折り線に沿って前記各シートの服地が扁平に折り畳まれることを可能とする幾何学的条件を満たし、
前記各シートの服地が、人に着用されたとき、前記多数の折り線に沿った折れが維持されるように、異なる多角形パターン上の少なくとも2箇所を、相互に結合するための結合手段を有する衣服。
【請求項2】
請求項1記載の衣服において、前記結合手段を有する前記少なくとも2箇所は、前記衣服本体が扁平に折り畳まれたときに相互に接触し合う位置に配置されている衣服。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかの項に記載の衣服において、前記衣服本体は、前記各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所を相互に閉じ合わせる、閉じ合わせ手段を有し、
前記閉じ合わせ手段は、前記衣服本体が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置関係にある、前記各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所に設けられる衣服。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の衣服において、前記恒常的な折り線は、複数の山折り線及び複数の谷折り線からなり、前記複数の谷折り線は、前記衣服の着用時において人体の関節運動による人体の変形を受け入れるために衣服が伸縮すべき方向に対して交差する方向に選ばれている衣服。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の衣服において、前記衣服本体は、前記多数の恒常的な折り線の位置を視覚的に表示する色彩又は模様を備える衣服。
【請求項6】
請求項5に記載の衣服において、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様は、衣服の製造工程において、前記恒常的な折り線が前記各シートの服地に形成されるより前に、前記各シートの服地上に形成されたものである衣服。
【請求項7】
請求項5又は6のいずれか一項に記載の衣服において、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様が、前記各シートの服地上の互いに隣接する多角形パターンが互いに異なる色彩又は模様をもつように、前記多数の多角形パターンの領域にそれぞれ施された色彩又は模様を含む衣服。
【請求項8】
請求項5又は6のいずれか一項に記載の衣服において、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様が、前記各シートの服地上の前記折り線に相当する位置に施された線模様を含む衣服。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの項に記載の衣服において、前記衣服本体には、その全体表面のうち、扁平に折り畳まれた状態で外部に露出する表面部分に、前記衣服本体の他の表面部分とは異なる色彩及び/又は模様が施される衣服。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの項に記載の衣服において、前記衣服本体の各シートの服地に、人の体の所定部分を貫通させるための切開口が形成される衣服。
【請求項1】
1シートの服地又は相互に継合わされた複数シートの服地である衣服本体を備え、
前記衣服本体の各シートの服地が、人に着用されたとき、前記人の身体の所定部分を貫通させる少なくとも2つの開口を有する中空の立体形状を形成し、
前記各シートの服地は、前記各シートの服地の面積の全体に二次元的に配列された多数の多角形パターンを画成する多数の恒常的な折り線を有し、
前記多数の折り線は、これら多数の折り線に沿って前記各シートの服地が扁平に折り畳まれることを可能とする幾何学的条件を満たし、
前記各シートの服地が、人に着用されたとき、前記多数の折り線に沿った折れが維持されるように、異なる多角形パターン上の少なくとも2箇所を、相互に結合するための結合手段を有する衣服。
【請求項2】
請求項1記載の衣服において、前記結合手段を有する前記少なくとも2箇所は、前記衣服本体が扁平に折り畳まれたときに相互に接触し合う位置に配置されている衣服。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかの項に記載の衣服において、前記衣服本体は、前記各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所を相互に閉じ合わせる、閉じ合わせ手段を有し、
前記閉じ合わせ手段は、前記衣服本体が扁平に折り畳まれた状態で接触し合う位置関係にある、前記各シートの服地の異なる辺縁に沿う少なくとも2箇所に設けられる衣服。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の衣服において、前記恒常的な折り線は、複数の山折り線及び複数の谷折り線からなり、前記複数の谷折り線は、前記衣服の着用時において人体の関節運動による人体の変形を受け入れるために衣服が伸縮すべき方向に対して交差する方向に選ばれている衣服。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の衣服において、前記衣服本体は、前記多数の恒常的な折り線の位置を視覚的に表示する色彩又は模様を備える衣服。
【請求項6】
請求項5に記載の衣服において、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様は、衣服の製造工程において、前記恒常的な折り線が前記各シートの服地に形成されるより前に、前記各シートの服地上に形成されたものである衣服。
【請求項7】
請求項5又は6のいずれか一項に記載の衣服において、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様が、前記各シートの服地上の互いに隣接する多角形パターンが互いに異なる色彩又は模様をもつように、前記多数の多角形パターンの領域にそれぞれ施された色彩又は模様を含む衣服。
【請求項8】
請求項5又は6のいずれか一項に記載の衣服において、前記折り線の位置を視覚的に表示する前記模様が、前記各シートの服地上の前記折り線に相当する位置に施された線模様を含む衣服。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの項に記載の衣服において、前記衣服本体には、その全体表面のうち、扁平に折り畳まれた状態で外部に露出する表面部分に、前記衣服本体の他の表面部分とは異なる色彩及び/又は模様が施される衣服。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの項に記載の衣服において、前記衣服本体の各シートの服地に、人の体の所定部分を貫通させるための切開口が形成される衣服。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−41648(P2012−41648A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183492(P2010−183492)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【特許番号】特許第4625878号(P4625878)
【特許公報発行日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(390033891)株式会社三宅デザイン事務所 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【特許番号】特許第4625878号(P4625878)
【特許公報発行日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(390033891)株式会社三宅デザイン事務所 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]