説明

衣類へのラベル取付構造および該ラベル取り外し方法

【課題】衣類に取り付けられたラベルを容易に取り外すことができるようにする。
【解決手段】衣類の表面側にラベルが縫糸で取り付けられているラベル取付構造であって、ラベルの表面側に露出する上糸と、該ラベルが取り付けられる前記衣類の裏面側に露出する下糸とからなる前記縫糸で本縫いで縫着され、該本縫いによる縫い始め位置と縫い終わり位置とは、ラベルの左右両端より所定寸法離れた位置とされ、縫い終わり位置に連続する後方位置あるいは/および縫い始め位置へと連続する前方位置に0.3cm以上2.0cm以下の長さで、前記上糸あるいは下糸からなる縫着されていない抜取用糸を延在させ、該抜取用糸を引っ張って抜き取ることで前記ラベルが衣類より取り外される構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類ヘのラベル取付構造および該ラベル取り外し方法に関し、詳しくは、ショーツ等のインナーウエアへ紙ラベル等のラベルを縫着して取り付ける構造および縫着されたラベルの取り外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣類の製造会社名、製品名、サイズ、素材、価格、取り扱い方法等を記載したラベルを衣類に取り付ける場合、ショーツ等のインナーウエアでは、図8(A)(B)に示すように糸3を用いて紙ラベル2を衣類1に縫着している。
詳しくは、衣類1がショーツの場合、その表面側の上端縁に紙ラベル2を、図8(B)に示すように上糸3Aと下糸3Bとからなる縫着糸3を用い、本縫い一本針ミシンにて、上下糸3Aと3Bの糸の張力を略同一として、上下糸のループを交絡して衣類1に紙ラベル2を本縫いで取り付けている。上下糸による縫着長さLは、紙ラベル2の左右両端縁2a、2bから夫々所要寸法延在させた長さとし、縫い始め端P1から縫い終わり端P2まで本縫いし、両端P1とP2とにおいて上下糸3A、3Bを本縫いで終端させている。
【0003】
前記のように衣類1に紙ラベル2を縫着していると、着用時に紙ラベル2を取り外す際に、紙ラベル2を引っ張って衣類1より剥がすようにして取り外すか、衣類にしっかりと縫着されている糸をハサミを用いて切断せざるを得ない。
前記した紙ラベルを引きはがす方法では、紙ラベル2がちぎれて、縫着部分が衣類に残り易く、また、糸が衣類に残る場合も多い。さらに、ラベルを縫い付けてある衣類がレースなどの薄い生地の場合には、ラベルを衣類より取り外す際に生地にほつれや裂けが発生しやすい問題もある。一方、ハサミで糸を切断する場合、衣類の生地も切ってしまう恐れがあり細心の注意を払わなければならず非常に手間がかかる問題がある。
図9に示すように、紙ラベル2の中央部だけを衣類1に縫着する場合もあるが、この場合も図8と同様に紙ラベル2を引っ張って剥がすか、ハサミで糸を切断せざるをえず、前記と同様な問題がある。
【0004】
前記縫着により紙ラベルを取り付ける方法に代えて、安全ピンや係止具を用いて衣類にラベルを取り付ける場合もある。しかしながら、安全ピンを用いた場合、比較的小さい安全ピンが使われるため、取り外しにくく、取り外し作業中に安全ピンの針先が作業者の指先に突き刺さる恐れもあり、かつ、取り外した安全ピンを廃棄したり保管したり後処理が必要となる。
【0005】
係止具としては、特開平11−59637号公報(特許文献1)において、スリットを有する係止部を設け、スリットを取り付ける衣類のボタン穴に係止させる構成としたラベル係止具が提供されている。該ラベル係止具はボタン穴等を有するアウター衣類にラベルを取り付ける場合には使用できるが、ショーツ等のボタン穴が無い衣類には使用できず、汎用性がない問題がある。
また、該ラベル係止具や前記安全ピンを用いる場合に、これらの別部品となるため、コストがかかると共に、これらを用いてラベルに取り付ける作業工程が必要となり、製造上でコスト高になる問題もある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−59637公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ショーツ等のラベルを縫着して取り付ける場合に、ラベルを衣類から引き剥したり、ハサミで糸を切断することなく、ワンタッチでスムーズにラベルを衣類から取り外すことができるラベル取付構造、およびラベル取り外し方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、衣類の表面側にラベルが縫糸で取り付けられているラベル取付構造であって、
前記ラベルの表面側に露出する上糸と、該ラベルが取り付けられる前記衣類の裏面側に露出する下糸とからなる前記縫糸で本縫いで縫着され、該本縫いによる縫い始め位置と縫い終わり位置とは、ラベルの左右両端より所定寸法離れた位置とされ、
前記縫い終わり位置に連続する後方位置あるいは/および縫い始め位置へと連続する前方位置に0.3cm以上2.0cm以下の長さで、前記上糸あるいは下糸からなる縫着されていない抜取用糸を延在させ、該抜取用糸を引っ張って抜き取ることで前記ラベルが衣類より取り外される構成としていることを特徴とするラベル取付構造を提供している。
【0009】
前記のように、本発明では、本縫いする上下糸のうちの一方の抜取用糸の先端に、衣類に縫着されていないフリーな状態とした引張用の抜取部を設けておき、該抜取部を引っ張ることで糸の縫着が外れて、ラベルをワンタッチでスムーズに取り外せるようにしている。
具体的には、上糸と下糸とのループを交絡させる本縫いの縫い始め位置と縫い終わり位置とはラベルの左右両端より所定寸法離れた位置とすることにより、衣類に縫い付けられたラベルが不意に脱落することを防止している。なお、該所定寸法はラベルを縫い付ける生地により決定することが好ましい。
前記本縫い位置の縫い終わり位置あるいは/および縫い始め位置に連続して、抜取用糸には本縫いされていないフリーな状態の抜取部を延在させ、ラベル取り外し時には、該抜取部を指で摘まんで引っ張って取り外すことができるようにしている。
【0010】
前記抜取用糸の縫着されていない抜取部の糸の長さは、指で摘まんで抜取用糸を引っ張れることが出来る長さである0.3cm以上とし、かつ、不用意に糸が引っ張られない2.0cm以下に設定している。
より好ましくは0.5cm以上1.5cm以下で、0.5cm以上とすることで比較的指の大きな人でも確実に糸を摘まむことができ、1.5cm以下とすることで、衣類の梱包、搬送、展示作業時等において不用意に糸を引っ張たり、他物品との接触で糸が引っ張られて抜けることを防止することができる。
なお、抜取部の糸の長さは、0.7cm程度が最も適している。
【0011】
前記抜取用糸の縫着されていない抜取部は、本縫いによる縫い終わり端からのみ延在させても良いし、縫い始め側にのみ延在させてもよい。さらに、縫い始めと縫い終わりの両方に延在してもよいが、両方から引っ張ると糸は抜けないため、いずれか一方とする方が良い。
【0012】
衣類に取り付けられるラベルには、製造会社名、品番名、サイズ、素材、価格や取り扱い方法等が記載されている。この種のラベルのうち、衣類に縫着して取り付けられるラベルは、ショーツ等のインナーウエアに取り付けられるラベルであり、該ラベルとしては通常、紙ラベルが用いられている。よって、本発明が対象とするラベルは紙ラベルであるが、縫着して衣類に取り付けられるラベルであれば、布製ラベルや樹脂片からなるラベルであっても、本発明を適用することができる。
【0013】
前記上糸と下糸による本縫いは、本縫い一本針ミシンにより運針数を2.5cmの間に5〜9針として縫着することが好ましい。
前記のように運針数を5〜9針とすることにより、ラベルをしっかりと衣類に固定でき、抜取用糸を引っ張らない限り不用意に抜けることを防止することができる一方、適度の引っ張り力で縫着されていない抜取用糸を引っ張れば、無理なくスムーズに抜き取ることができる。
【0014】
前記抜取用糸を前記下糸とし、前記衣類の裏面側に抜取用糸を配置し、該抜取用糸を配置している領域の衣類の色と相違させた色の糸とすることが好ましい。
このように、抜取用糸を衣類の裏面側に露出する下糸として、抜取用糸を衣類裏面側に配置すると、不用意に抜取用糸が引っ張れて抜ける恐れが少なくなり、かつ、販売展示時に縫着されていない糸が外面に露出しないために、不良品として間違った印象をあたえることも防止でき、外観上から好ましいものとなる。
また、抜取用糸の色を、配置している領域の衣類の色と相違させると、抜取用糸の存在をユーザーに容易に知らしめることができる。
あるいは、縫着させずに延在させた抜取部に、持ち手ラベルを付着してもよい。この場合、抜取用糸の色を衣類の色と相違させる必要はない。
【0015】
前記抜取用糸は糸張力を高くして本縫いのループを小さくする一方、非抜取用糸は糸張力を低くして本縫いのループを大きくすることが好ましい。
具体的には、糸張力を高くしてループを小さくする抜取用糸は、例えば、1〜2N程度の引張力を負荷すれば、抜き取れる設定としている。
このように、抜取用糸の張力を高くしてループを小さくすると共に非抜取用糸の張力を低くしてループを大きくするため、使用する糸の長さに差異が生じ、抜取用糸の使用長さが短くなる。
このように、抜取用糸と非抜取用糸の糸張力に差を持たせることにより、ラベルを衣類にしっかりと取り付けることができる機能と、少しの力で糸を引っ張ればスムーズに抜き取ってラベルを取り外せる機能とを両立させることができる。
【0016】
紙ラベルを衣類に縫着するために用いる糸の種類としては、ナイロン系、ポリエステル系等の糸が挙げられるが、抜取用糸とする下糸はウーリー糸、上糸はフィラメント糸が好適である。
このように、抜取用糸を滑りの良いウーリー糸とするとスムーズに糸を引き抜ける一方、抜取用糸としない糸を伸縮力を有するフィラメント糸とすると、抜取用糸の抜き取り時に非抜取用糸が伸縮して抜取用糸を抜き取り易くすることができる。
【0017】
本発明のラベル取付構造は、ショーツ、ランジェリーを含む肌着からなる衣類の表面側に紙ラベルの上端を本縫いにより取り付け、衣類の裏面側に下糸からなる抜取用糸を配置して用いる場合に最も好適なものとなる。
前記したように、紙ラベルを縫着して取り付ける衣類は、通常、シューツ、ランジェリー等の肌着であるが、Tシャツ、レオタード等のアウターウエアにラベルを縫着して取り付ける場合にも用いることはできる。
【0018】
本発明は、前記のように抜取用糸を本縫いの先端から延在させて衣類に縫着したラベルの取り外す方法を提供している。
即ち、抜取用糸に適度な長さで縫着されていない抜取部を設けているため、ラベルを取り外す時に、指で抜取部の糸を摘まんで引っ張ることができ、この引っ張りで抜取用糸を衣類から取り除くことで、ラベルを衣類から取り外すことができる。このように、ラベルを衣類に縫着している糸を摘まんで引っ張るだけのワンタッチ作業で、確実にラベルを衣類から取り外すことができる。
特に、衣類の裏面側に露出する下糸を抜取用糸とし、該下糸の糸張力を上糸の糸張力よりも高くすると、該抜取用糸をスムーズに指で抜き取ることができる。
【発明の効果】
【0019】
前述したように、本発明のラベル取付構造によれば、ラベルを衣類に縫着する下糸あるいは/および上糸の先端に、衣類に縫われていないフリーな抜取部を設けているため、このフリーとした抜取部を指で摘まんで引っ張ることにより、糸をラベルおよび衣類より取り除かれて、ラベルを確実に衣類より取り外すことができる。
よって、従来のように、ラベルを摘まんで衣類から引き剥がすように取り外す必要はなく、ラベルの残り糸の残りがなく、かつ、ラベル取り外し時に衣類の生地にほつれや裂けの発生を防止することができる。
さらに、ラベルを縫着により衣類に取り付けるため、衣類自体の縫着工程に連続して縫着するだけでよく、安全ピンや係止具を用いてラベルを衣類に取り付ける場合と比較して、部品点数の削減および製造工程を削減でき、コストの低下を図ることができる。
【0020】
衣類へのラベル取付構造を前記構造としておくと、ユーザーは衣類からラベルを素早く、かつ、安全に取り外すことができる。また、ピンや係止具を用いてラベルを取り付けている場合に発生する取外後のピンや係止具を廃棄したり、保管したりする後処理の必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るラベル取付構造により、紙ラベル30を縫い付けたショーツ20を示す。該紙ラベル30はショーツ20の前面側(腹部側)のウエストラインに沿った上縁に取り付けている。
【0022】
ラベル30の縫着は、上糸11と下糸12からなる縫い糸を用いて本縫い一本針ミシンにより行っている。
前記上糸11とはショーツ20の上縁に沿った表面側に露出させる糸であり、下糸12が裏面側に露出させる糸である。この裏面側に露出する下糸12を抜取用糸とし、該下糸12の本縫い領域Sの縫い終わり位置P2から縫着せずにフリーな状態とした抜取部12aを延在させている。また、この下糸12はラベル縫着部分のショーツ20の生地の色と相違させ、例えば、生地が白色の場合、下糸は青色として、目立つようにしている。一方、非抜取糸とする上糸11は生地の色と同一白として目立たせず、展示販売時の外観を損なわないようにしている。
【0023】
上糸11と下糸12による本縫いは、本縫い一本針ミシンにより運針数を2.5cm間に7針として縫着している。本縫いは図2に示すように、抜取用糸とする下糸12の糸張力を高くしてループを小さくする一方、非抜取用糸の上糸11の糸張力は低くしてループを大きくしている。
【0024】
前記本縫い領域Sは、紙ラベル30の左右幅方向の全長と、該左右端縁よりそれぞれ3cm離れた位置までとしている。よって、縫い始め位置P1と縫い終わり位置P2とは紙ラベル30の左右両端より3cm離れている。
前記したように、下糸12は縫い終わり位置P2からフリーな状態とした抜取部12aを延在させており、その長さは0.7cmとしている。
本実施形態では上糸11は縫い始め位置P1から縫い終わり位置P2までとして、これらの端部からフリーな状態とした糸を延在させておらず、かつ、下糸12も縫い始め位置P1に達するまでにフリーな部分は設けていない。即ち、下糸12の縫い終わり位置P2からのみショーツ20に縫着されていない抜取部12aを設けている。
【0025】
前記下糸12としてウーリーナイロン糸を用い、上糸11としてナイロン糸を用いている。
【0026】
前記のように紙ラベル30を上下糸11、12で縫着したショーツ20から、ユーザーが紙ラベル30を取り外す時、図3に示すように、ショーツ20の裏面側で下糸12の一端側の抜取部12aを摘まむことができ、摘まんだ状態で引っ張ることにより、下糸12は上糸11との交絡を解きながら抜き取ることができる。その際、上糸11の糸張力を低くしてループが大きくなるように撓ませているため、下糸12を比較的小さい引張力を負荷するだけで、スムーズに抜き取ることができる。
また、下糸12を滑り良くすると共に耐引張力を有するウーリーナイロン糸としていることで、引っ張り時に糸が切断することなく、下糸12を確実に抜き取ることができる。さらに、下糸12の色をショーツの色と相違させていることで、抜取部12aを簡単に見分けることもできる。
このように、下糸12が抜き取られると、上糸11も当然にフリーな状態となって、紙ラベル30はショーツ20から取り外せることとなる。
【0027】
また、紙ラベル30は取り外す目的で抜取部12aが意図的に引っ張られない限り、該抜取部12aの長さを0.7cmと長くし、かつ、本縫い領域Sを紙ラベル30の左右両側に各3cm設けているため、ショーツ梱包時、運送時、店頭での展示作業時等において不用意に引き抜かれることはない。
また、生地と相違した色とした下糸12がショーツの表面側に露出せず、よって、ショーツ販売時に外観を阻害することはない。
【0028】
図4は、第1実施形態の変形例に係るラベル取付構造を示す。
第1実施形態との相違点は、下糸12の縫い始め位置P1の先端からも縫着していない抜取部12bを設けている点であり、よって、下糸12には本縫い領域Sの両側に抜取部12a、12bを設けている。該抜取部12bの長さは抜取部12aの長さと同等としているが、同一長さに限定する必要はなく、0.3〜2.0cmの範囲であればよい。
このように、下糸12の両端に抜取部12a、12bを設けると、いずれか一方の抜取部を指で摘まんで引っ張ればよく、使い勝手が良くなる。
他の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
図5は、本発明の第2実施形態に係るラベル取付構造にてラベル30を縫い付けたショーツ20を示す。
第2実施形態では、ショーツ20の表面側に露出する上糸11の縫い終わり位置P2から抜取部11aを延在させている。
第2実施形態では上糸11を抜取用糸としているため、逆に、図5(B)に示すように上糸11の糸張力を高くして本縫いのループを小さくする一方、抜取用糸としない下糸12の糸張力を低くして本縫いのループを大きくしている。
また、図5(C)に拡大して示すように、上糸の抜取部11aには持ち手ラベル15を取り付けている。この持ち手ラベル15は裏面に粘着剤が塗布されており、抜取部11aを挟んで二つ折りして取り付けている。該持ち手ラベル15の表面に引っ張り方向の矢印15aを表記しておくことが好ましい。
このように持ち手ラベル15を抜取部11aに付着しておくと、使用者は抜取部が一目で分かると共に抜取部を把持し易くなり、かつ、引っ張り方向も印されているため、矢印方向へ引っ張ることで、迷うことなくラベルを取り外すことができる。
他の構成は第1実施形態と同様としているため、説明を省略する。
【0030】
図6は、第2実施形態の変形例を示し、前記第1実施形態の変形例と同様に、上糸11の縫い始め位置P1から延在する縫取部11bも設け、縫い終わり位置P2から延在させた抜取部11aとのいずれからでも上糸を引き抜けるようにしている。
【0031】
前記図5に示す第2実施形態、図6に示す第2実施形態の変形例では、いずれも紙ラベル30をショーツ20から取り外す際に、紙ラベル30と同じ表面側に露出する上糸11を抜取糸としているため、抜き取り糸の存在を明示しやすくする利点はある。特に持ち手用ラベル15を取り付けると、使用者は一目でラベルを糸を引っ張って取り外せることが分かり、使い勝手が良くなる。
この場合、抜取糸はショーツの生地と同一色として目立たないようにしても良いし、抜取糸であることを認識させやすくするために、ショーツの生地と異なる色としてもよい。
【実施例】
【0032】
下記の実施例1〜14について、抜取用糸の抜取部が引き抜かれるのに必要な引張強度についての実験を、財団法人日本化学繊維検査協会 京都検査所に試験を依頼した。
試験方法および試験結果について下記の報告を受けた。
【0033】
試験方法は、図7に示すように、紙ラベル30の一辺30a側を試験片の基材100に上下糸を用いて本縫い一本針ミシンで2.5cm間に7針で縫着した。実施例1〜実施例14は抜取用糸となる下糸として同一のウーリーナイロン糸を用い、上糸として同一のナイロン糸(商品名フジックスのレジロン)を用いた。
紙ラベル30の縫着辺の寸法Lxは3.7cmで、該紙ラベル30の両端から0.65cmの位置まで本縫いした。よって、本縫い寸法Sは5cmとした。本縫いの縫い終わり端P2で上糸は切断し、下糸は抜取用糸として、P2から未縫着なフリーな抜取部110を延在させた。
【0034】
紙ラベル30を縫着する基材100として、下記の(1)〜(7)の7種類を用意した
(1)ストレッチレースの1枚
(2)ストレッチレース枚+柄サテン調パワーネット+平ゴムの各1枚の合計3枚重ね
(3)ストレッチテープ1枚
(4)ベア天竺を折り返して2枚重ねとした袋部
(5)横編みからなる伸縮性の厚い編地(毛糸)
(6)ナイロン糸で変性したテンビ組織の薄い編地
(7)ストレッチレース+天竺の各1枚の合計2枚重ね
【0035】
前記(1)〜(7)の基材を夫々用いた実施例1〜実施例7は、抜取用糸の下糸張力と上糸張力とは変えて、抜取用糸の下糸張力を上糸張力より大とした。
具体的には、基材の厚さが5mmで、本縫い部分の寸法が9.7cmの場合、上糸の使用長さが21.2cm、下糸の使用長さが10.4cmとなるような張力に設定した。
同様に、前記(1)〜(7)の基材を夫々用いた実施例8〜実施例14は上下糸張力を同じとした。
即ち、実施例1〜14は、抜取用糸の下糸を本縫い終端からフリーに延在させた抜取部を設けている点では同じで、本発明の請求項1に包含されるものであるが、上下糸張力を同一とした実施例8〜14は本発明の請求項5からは外れるものである。
【0036】
実施例1〜実施例14のいずれも、上記基材100を垂直配置し、その上下両側に、定速伸長形引張試験機(株式会社オリエンテック RTA−1T)のつかみ上部フェース102とつかみ下部フェース101を配置し、下部フェース101で基材100の下部をつかむ一方、上部フェース102でフリーとした抜取部110の先端をつかんだ。上下つかみ間隔は7cmとした。
下部フェース101は固定し、上部フェース102を上方へと速度30cm/分で引張して、縫着糸の抜取部110が基材100から引き抜かれる引張力を測定した。
【0037】
実施例1〜実施例14において抜取用下糸が基材から抜き取りに要した引張強度(N)は、各実施例について6回行い、その平均値は下記の通りであった。
実施例1 1.11(N)
実施例2 1.68
実施例3 1.31
実施例4 1.25
実施例5 1.16
実施例6 1.05
実施例7 1.35
実施例8 4.07
実施例9 3.33
実施例10 2.99
実施例11 5.45
実施例12 5.33
実施例13 4.38
実施例14 9.32
【0038】
前記実験結果より、抜取用糸の張力を非抜取用糸の張力より大とした実施例1〜実施例7では、基材の種類が相違しても引張強度が1.05〜1.68Nで抜き取れることが確認できた。一方、抜取用糸の張力と非抜取用糸の張力とを同じとした実施例8〜実施例14では、引張強度が約3N以上で抜き取ることが出来ることを確認できた。
【0039】
さらに、上下糸の種類と基材厚さとに対応して、抜取用糸とする下糸と、非抜取用糸の上糸の張力の設定度合(使用する糸の長さ)を種々実験した。
その結果、下糸を引張力2N以下で抜き取るためには、上下糸の引張力の差、即ち、使用する糸の長さを下記の表に示す設定にすれば良いことを究明した。
【0040】
基材厚さが5mm、本縫い寸法が9.7cmの場合において、上糸と下糸の種類による使用長さは下記の通りであった。
上糸 下糸
スパン糸 20.4cm スパン糸 10.3cm
ポリエステル糸19.6cm ポリエステルウーリ糸 10.8cm
【0041】
基材がレース1枚で厚さ1〜2mm、本縫い寸法が9.7cmにおける上下糸の種類による使用長さは下記の通りであった。
上糸 下糸
レジロン 12.6cm ウーリーナイロン糸 10.8cm
スパン糸 12.5cm スパン糸 10.6cm
ポリエステル糸12.3cm ポリエステルウーリ糸 11.0cm
【0042】
前記実施例の報告より明らかなように、本発明においては、特に、抜取用糸の糸張力を高くする一方、非抜取用糸の張力を低くすることで、抜取用糸を比較的小さい引張力で引く抜くことができ、それにより紙ラベルを基材から簡単に取り外すことができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は前記した実施形態に限定されず、紙ラベルをショーツ以外のランジェリー等に取り付ける場合にも適用できる。即ち、ラベルを縫着で衣類に取り付ける場合であれば、いずれの場合も適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態のラベル取付構造にてラベルを縫い付けたショーツを示し、(A)はショーツの正面図、(B)は要部拡大図である。
【図2】第1実施形態の本縫い部分の上糸と下糸との関係を示す図面である。
【図3】第1実施形態のラベル取り外す時の作業を示す概略図である。
【図4】第1実施形態の変形例を示す要部拡大図である。
【図5】第2実施形態を示し、(A)は要部拡大図、(B)は本縫い部分の上糸と下糸の関係を示す図面、(C)は一部拡大図である。
【図6】第2実施形態の変形例を示す要部拡大図である。
【図7】実施例の引張力の試験方法を示す概略図である。
【図8】従来例を示す図面である。
【図9】他の従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0045】
11 上糸
11a、11b 抜取部
12 下糸
12a、12b 抜取部
20 ショーツ
30 ラベル
S 本縫い領域
P1 縫い始め位置
P2 縫い終わり位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類の表面側にラベルが縫糸で取り付けられているラベル取付構造であって、
前記ラベルの表面側に露出する上糸と、該ラベルが取り付けられる前記衣類の裏面側に露出する下糸とからなる前記縫糸で本縫いで縫着され、該本縫いによる縫い始め位置と縫い終わり位置とは、ラベルの左右両端より所定寸法離れた位置とされ、
前記縫い終わり位置に連続する後方位置あるいは/および縫い始め位置へと連続する前方位置に0.3cm以上2.0cm以下の長さで、前記上糸あるいは下糸からなる縫着されていない抜取用糸を延在させ、該抜取用糸を引っ張って抜き取ることで前記ラベルが衣類より取り外される構成としていることを特徴とする衣類へのラベル取付構造。
【請求項2】
前記ラベルは紙ラベルからなり、前記抜取用糸の長さは0.5cm以上1.5cm以下とされている請求項1に記載の衣類へのラベル取付構造。
【請求項3】
前記上糸と下糸による本縫いは、一本針ミシンにより運針数を2.5cmの間に5〜9針として縫着されている請求項1または請求項2に記載の衣類へのラベル取付構造。
【請求項4】
該抜取用糸は前記下糸とされ、前記衣類の裏面側に抜取用糸を配置され、
前記抜取用糸は配置している領域の衣類の色と相違させた色の糸とされ、あるいは縫着させずに延在させた抜取部に持ち手ラベルを付着している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の衣類へのラベル取付構造。
【請求項5】
前記抜取用糸とする下糸あるいは上糸は、糸張力を高くして本縫いのループは小さくされる一方、他方の非抜取用糸となる上糸あるいは下糸は、糸張力を低くして本縫いのループは大きくされている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の衣類へのラベル取付構造。
【請求項6】
前記抜取用糸はウーリ糸とされ、非抜取用糸はフィラメント糸とされている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の衣類へのラベル取付構造。
【請求項7】
ショーツ、ランジェリーを含む肌着からなる前記衣類の表面側に対して、紙ラベルからなる前記ラベルの上端が本縫いされて取り付けられ、前記衣類の裏面側に前記下糸からなる前記抜取用糸が配置されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の衣類へのラベル取付構造。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の衣類に取り付けられたラベルを、前記抜取用糸を引っ張って前記衣類より早取りすることを特徴とする衣類からのラベル取り外し方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−155922(P2007−155922A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348374(P2005−348374)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)