説明

衣類乾燥機

【課題】衣類乾燥機において、衣類の乾燥の仕上がり具合を変更でき、使用環境、衣類等の種類や使用者の好みに合った乾燥を行うことを実現する。
【解決手段】除湿手段17を構成する熱交換器16に注水ノズル15から供給されて熱交換を行った後の冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ42、及びヒータ19に至る直前の送風空気の温度を検出する送風空気温度センサ20による検出出力に応じて、乾燥工程から空冷工程に移行するようにし、乾燥工程から空冷工程に移行する際の判定値を、変更可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に乾燥機能を組み込んだ洗濯乾燥機あるいは乾燥専用に構成された電気乾燥機などの衣類乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣類乾燥機は、水分を含む衣類等を収容した衣類収容槽を回転させて衣類等を撹拌しながら衣類収容槽内の空気を排気して熱交換により除湿した後、ヒータによって加熱して再び衣類収容槽内に送風する空気循環を所定時間繰り返すことにより衣類等を乾燥させる。このような衣類乾燥機において、衣類の乾燥度を検出すると共に動作異常を検出するために、温度検出の機能が設けられている。
【0003】
例えば、衣類収容槽から排気された空気の温度を検出する第1の温度センサと、ヒータによって加熱される直前の空気の温度を検出する第2の温度センサとを配設しておくと、第1の温度センサによる検出温度は乾燥が進行したときに急上昇し、第2の温度センサによる検出温度は乾燥が進行したときに緩やかに下降する傾向が検出されるので、第1及び第2の各温度センサによる検出温度の差を求め、温度変化率から乾燥終了検知を行うことができる。また、送風ファンの異常によりヒータに送風がなされない状態になったとき、第2の温度センサの検出温度が上昇するので、送風異常に伴う過熱を検知して運転を停止することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2−309998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の構成では、乾燥終了検知のための温度変化率の値はある所定値に設定されているので、使用環境、衣類等の種類や使用者の好みによって、使用者が衣類の乾燥の仕上がり具合を変更するといったことは困難であった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、使用環境、衣類等の種類や使用者の好みによって、衣類の乾燥の仕上がり具合を変更できるようにし、使用者にとって使い勝手の良い衣類乾燥機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、乾燥対象物を収容した衣類収容槽から排気した空気中に含まれる湿気を除湿手段により除湿した後、加熱手段によって加熱して再び衣類収容槽内に送風する送風手段及び空気循環路が形成され、前記除湿手段を構成する熱交換器に冷媒供給手段から供給されて熱交換を行った後の冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段と、前記加熱手段に至る直前の送風空気の温度を検出する送風空気温度検出手段と、前記加熱手段、送風手段及び冷媒供給手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記冷媒温度検出手段及び送風空気温度検出手段による検出出力に応じて乾燥工程から空冷工程に移行するようにし、前記乾燥工程から空冷工程に移行する際の判定値を、変更可能としたことを特徴とする衣類乾燥機である。
【0007】
これにより、衣類の乾燥の仕上がり具合を変更できるので、使用環境、衣類等の種類や使用者の好みに合った乾燥を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の衣類乾燥機は、衣類の乾燥の仕上がり具合を変更できるので、使用環境、衣類等の種類や使用者の好みに合った乾燥を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、乾燥対象物を収容した衣類収容槽から排気した空気中に含まれる湿気を除湿手段により除湿した後、加熱手段によって加熱して再び衣類収容槽内に送風する送風手段及び空気循環路が形成され、前記除湿手段を構成する熱交換器に冷媒供給手段から供給されて熱交換を行った後の冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段と、前記加熱手段に至る直前の送風空気の温度を検出する送風空気温度検出手段と、前記加熱手段、送風手段及び冷媒供給手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記冷媒温度検出手段及び送風空気温度検出手段による検出出力に応じて乾燥工程から空冷工程に移行するようにし、前記乾燥工程から空冷工程に移行する際の判定値を、変更可能としたことを特徴とする衣類乾燥機ことにより、衣類の乾燥の仕上がり具合を変更できるので、使用環境、衣類等の種類や使用者の好みに合った乾燥を行うことができる。
【0010】
第2の発明は、特に、上記第1の発明において、制御手段は、冷媒温度検出手段によって検出された冷媒温度の所定時間内の変化量が所定変化量以下になったときの送風空気温度と冷媒温度との温度差を基準値として、送風空気温度と冷媒温度との温度差が前記基準値に対して所定値以上になったとき、加熱手段をオフに制御して乾燥工程から空冷工程に移行するようにし、前記所定値を変更可能としたことにより、衣類等の量や運転状態にかかわらず、衣類等の乾燥終了状態を正確に判断することができるとともに、衣類の乾燥の仕上がり具合を変更できるので、使用環境、衣類等の種類や使用者の好みに合った乾燥を行うことができる。
【0011】
第3の発明は、特に、上記第1または第2の発明において、運転コース等の設定や運転内容の設定を行うための入力設定手段を備え、前記入力設定手段に、判定値または所定値を変更するための専用の入力設定手段を設けたことにより、使用者はより簡単に判定値または所定値を変更することが可能になる。
【0012】
第4の発明は、特に、上記第1または第2の発明において、運転コース等の設定や運転内容の設定を行うための入力設定手段を備え、前記入力設定手段を通常の操作でない特殊な操作を行うことによりに、判定値または所定値を変更するようにしたことにより、変更のための部品追加の必要がなく、低コストで、判定値または所定値を変更する衣類乾燥機を実現できる。
【0013】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、運転コース等の設定状態を表示する表示手段を備え、前記表示手段に、判定値または所定値が変更になったことを表示する表示手段を設けたもので、使用者は判定値または所定値が変更されたことを視覚的に確認することができるようになる。
【0014】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明において、判定値または所定値を複数個設け、選択できるようにしたもので、使用者は判定値または所定値を簡単に変更設定することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機1の要部構成を示すもので、ドラム式洗濯機に衣類乾燥機の機能を組み込んでドラム式洗濯乾燥機1に構成されたものである。
【0017】
図1において、洗濯機筐体2内には図示しないサスペンション構造によって水槽3が斜め傾斜した状態に支持され、水槽3内には有底円筒形に形成された回転ドラム(衣類収容槽)4が回転自在に支持されている。回転ドラム4は水槽3の背面に取り付けられたドラム駆動モータ5によって回転速度可変及び回転方向切換可能に回転駆動される。また、回転ドラム4は、その回転軸方向が図示するように開口する正面側から底面となる背面側に向けて下向き傾斜となるように傾斜配置されているため、洗濯機筐体2の正面側に形成された傾斜面2aに開閉自在に設けられた扉体6を開くと、回転ドラム4に対する衣類(乾燥対象物)の出し入れする作業に際して腰を屈める具合が少なくてすみ、ドラム式洗濯乾燥機1の正面側に余裕のある空間を確保する必要もないので、洗面所などの狭い空間にも設置可能なドラム式洗濯乾燥機1に構成することができる。
【0018】
洗濯機筐体2内には、上記構成要素の他に、水槽3内に水を給水するための給水弁7や、水槽3内の水を外部に排水するための排水弁8などが配設され、更に、図2、図3に示すように、回転ドラム4内に収容した衣類を乾燥する乾燥行程が実施できるように、排気口9から排気した水槽3内の空気を除湿管路10、糸屑回収フィルタ11、送風管路12、加熱管路13を通して送風口14から再び水槽3内に送風する乾燥用空気循環経路が構成されている。
【0019】
図2に示すように、除湿管路10は水槽3の側周面に隣接して形成されており、水槽3の側周面に開口する排気口9によって水槽3内に連通している。除湿管路10内には注水ノズル(冷媒供給手段)15と、注水ノズル15から散水される水が流れる熱交換器16とを備えた除湿手段17が配設され、排気口9から排気された水槽3内の空気は熱交換器16により冷却されることによって除湿される。この除湿管路10は洗濯機筐体2の正面側で送風管路12に連結され、送風管路12の入口には空気中に含まれる糸屑等のリントを濾過する糸屑回収フィルタ11が配設されている。送風管路12は水槽3の背面側に配設された加熱管路13に空気を案内するための管路で、水槽3の側周面に除湿管路10と共に隣接配置されている。図3に示すように、送風管路12は水槽3の背面側にドラム駆動モータ5を囲むように略円弧状に形成された加熱管路13に連結され、連結部位に配設された送風ファン(送風手段)18により乾燥用空気循環経路に一方通行の空気の流れが形成される。
【0020】
加熱管路13内にはヒータ(加熱手段)19が配設され、送風管路12から流れてきた空気を加熱して水槽3内に通じる送風口14から加熱乾燥した温風として水槽3内に送給する。また、加熱管路13には、送風管路12から送風されてきた空気の温度を検出する送風空気温度センサ(送風空気温度検出手段)20と、ヒータ19によって加熱されて送風口14から送風される温風の温度を検出する温風温度センサ21とが配設され、ヒータ19の異常過熱状態を検出してヒータ19への通電を遮断する温度ヒューズ22や、送風口14から逆流した水や泡が送風ファン18側に流入する溢水水位を検出する溢水水位センサ23が配設されている。
【0021】
また、水槽3の底部には、除湿に用いた水の温度を検出する冷却水温度センサ(冷媒温度検出手段)42が設けられている。
【0022】
上記構成になるドラム式洗濯乾燥機1は、図4に示すように構成された制御装置24による制御動作により洗濯行程、すすぎ行程、脱水行程を実行すると共に、必要に応じて乾燥行程が実行される。
【0023】
図4において、制御装置24は、モータ5、排水弁8、給水弁7、除湿手段17に注水するための注水弁25、ヒータ19、送風ファン18などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の一連の行程を逐次制御するマイクロコンピュータからなる制御手段26を有している。制御手段26は、運転コース等を設定するための入力設定手段27からの情報を入力して、その情報を基に表示手段28で表示して使用者に知らせるとともに、入力設定手段27により運転開始が設定されると、スイッチング手段駆動回路29を介してスイッチング手段30を制御し、モータ5、排水弁8、給水弁7、注水弁25、ヒータ19、送風ファン18などの動作を制御し、洗濯運転を行う。
【0024】
このとき、制御手段26は、モータ5のロータの位置を検出する位置検出手段31からの情報に基づいて、インバータ駆動回路32を介してインバータ33を制御することによりモータ5を回転制御するようにしている。モータ5は直流ブラシレスモータで、図示していないが、3相巻線を有するステータと、リング上に2極の永久磁石を配設しているロータとで構成し、ステータは3相巻線を構成する第1の巻線5a、第2の巻線5b、第3の巻線5cをスロットに設けた鉄心に巻き付けて構成している。
【0025】
インバータ33は、パワートランジスタ(IGBT)と逆導通ダイオードの並列回路からなるスイッチング素子で構成している。第1のスイッチング素子33aと第2のスイッチング素子33bの直列回路と、第3のスイッチング素子33cと第4のスイッチング素子33dの直列回路と、第5のスイッチング素子33eと第6のスイッチング素子33fの直列回路で構成し、各スイッチング素子の直列回路は並列接続している。
【0026】
ここで、スイッチング素子の直列回路の両端は入力端子で、直流電源を接続し、スイッチング素子の直列回路を構成する2つのスイッチング素子の接続点に、それぞれ出力端子を接続している。出力端子は、3相巻線のU端子、V端子、W端子に接続し、スイッチング素子の直列回路を構成する2つのスイッチング素子のオン・オフの組合せにより、U端子、V端子、W端子をそれぞれ正電圧、零電圧、解放の3状態にする。
【0027】
スイッチング素子のオン・オフは、ホールICからなる3つの位置検出手段31a、31b、31cからの情報に基づいて制御手段26により制御される。位置検出手段31a、31b、31cは電気角で120度の間隔でロータが有する永久磁石に対向するように、ステータに配設されている。
【0028】
ロータが1回転する間に、3つの位置検出手段31a、31b、31cは、それぞれ電気角で120度の間隔でパルスを出力する。制御手段26は、3つの位置検出手段31a、31b、31cのいずれかの信号の状態が変わったときを検知し、位置検出手段31a、31b、31cの信号を基に、スイッチング素子33a〜33fのオン・オフ状態を変えていくことで、U端子、V端子、W端子を正電圧、零電圧、解放の3状態にし、ステータの第1の巻線5a、第2の巻線5b、第3の巻線5cに通電して磁界を作り、ロータを回転させるよう構成している。
【0029】
また、スイッチング素子33a、33c、33eはそれぞれパルス幅変調(PWM)制御され、例えば、繰り返し周波数10kHzでハイ、ローの通電比を制御することで、ロータの回転数を制御するようにしてあり、制御手段26は、3つの位置検出手段31a、31b、31cのいずれかの信号の状態が変わるたびにその周期を検出し、その周期よりロータの回転数を算出して、設定回転数になるようにスイッチング素子33a、33c、33eをPWM制御する。
【0030】
電流検知手段34は、インバータ33の一方の入力端子に接続した抵抗35と、この抵抗35に接続した電流検知回路36とで構成し、インバータ33の入力電流、すなわちモータ5の電流を検知して電圧信号に変換し、その電圧信号を制御手段26に入力している。また、制御手段26は、入力した電圧信号をA/D変換してデジタルデータとして演算処理し、モータ5を制御するようにしている。
【0031】
モータ5が直流ブラシレスモータの場合は、トルクは入力電流にほぼ比例するので、抵抗35に接続した電流検知回路36により、インバータ33の入力電流値を検知することで、モータ5のトルクを検知することができる。
【0032】
商用電源37は、ダイオードブリッジ38、チョークコイル39、平滑用コンデンサ40からなる直流電源変換装置を介して、インバータ33に接続している。ただし、これは一例であり、直流ブラシレスモータ5の構成、インバータ33の構成等は、これに限定されるものではない。
【0033】
記憶手段41は、電源を供給しなくても記憶内容が消滅しない不揮発性メモリ等からなり、運転設定内容や、運転回数等を記憶することができる。
【0034】
位置検出手段31は、モータ5のロータの位置を検出するとともに、ロータの回転によって、回転ドラム1が1回転する間に3個のパルスを出力(本実施例の形態では、回転ドラム1の回転数とモータ5の回転数が同じであるので、モータ5が1回転する間にも3個のパルスを出力する)し、この出力パルスによりモータ5の回転を検知することができる、回転ドラム1またはモータ5の回転状態を検知する回転検知手段手段として機能することができる。
【0035】
また、制御装置24は、送風空気温度センサ44及び冷却水温度センサ49の検知出力を制御手段26に入力し、温度状態を検出する温度検知手段回路50を有している。
【0036】
入力設定手段27は、図5に示すように、洗い時間を設定する洗い時間設定スイッチ27a、すすぎ回数を設定するすすぎ回数設定スイッチ27b、脱水時間を設定する脱水時間設定スイッチ27c、乾燥時間を設定する乾燥設定スイッチ27d、コース設定スイッチ27e、スタート・一時停止スイッチ27f、電源入りスイッチ27g、電源切りスイッチ27hなどを有している。
【0037】
また、表示手段28は、洗い時間表示部28a、すすぎ回数表示部28b、脱水時間表示部28c、乾燥時間表示部28d、コース設定表示部28e、洗剤量表示部28f、残り時間表示部28g、数字表示部28hなどを有している。
【0038】
上記構成になるドラム式洗濯乾燥機は、洗濯行程、すすぎ行程、脱水行程の終了後、引き続いて脱水された衣類を乾燥させるために乾燥行程を実行することも、濡れた衣服等を乾かすために乾燥行程だけを実行することも任意に選択実施することができる。入力設定手段27から乾燥行程の実施が選択入力された場合には、制御手段26はドラム駆動モータ5により回転ドラム4を回転駆動し、送風ファン18及びヒータ19をON動作させると共に、注水弁25を開く制御指令をスイッチング手段駆動回路29を介してスイッチング手段30に出力するので、送風ファン18が回転駆動されて乾燥用空気循環経路に水槽3内の空気を循環させる乾燥動作が実施される。
【0039】
図2に白抜き矢印で空気の流れを示すように、送風ファン18の回転により回転ドラム4内の空気は周面に形成された透孔4aから水槽3内に出て排気口9から除湿管路10内に排気される。除湿管路10内に配設された熱交換器16には、注水弁25が開かれることにより給水された水が注水ノズル15から注水されて冷却されているので、除湿管路10内に排気された湿気を含む空気は熱交換器16で冷却されることにより空気中に含まれる水蒸気が凝結し、水となって除去されるので排気された空気中の湿気は除湿される。除湿管路10で除湿された空気は糸屑回収フィルタ11を通過して送風管路12を通って水槽3の後方に導かれ、水槽3の背面に設けられた加熱管路13に流れ、ヒータ19によって加熱されて送風口14から水槽3内に送風される。水槽3内に送風された空気は回転ドラム4の底面に形成された通気孔4bや透孔4aから回転ドラム4内に流入するので、除湿加熱された空気により衣類から湿気が奪い取られ、回転ドラム4の回転による撹拌により全ての衣類の乾燥が促進され、この空気循環が所定時間繰り返されることにより衣類の乾燥がなされる。
【0040】
回転ドラム2の底面(背面)には、水槽3に形成された送風口14に対応する円周上に複数の通気孔4bが形成されており、送風口14から水槽3内に送風される温風の多くは通気孔4bから回転ドラム2内に送給される。送風口14は回転ドラム4の中心より下方に形成されているので、温風は通気孔4bを経て回転ドラム4の下方寄りから送風されて上昇するので、回転ドラム4内で撹拌される衣類に広範囲に触れて効率よく衣類から水分を奪うことができる。
【0041】
上記乾燥工程は設定された所要時間にわたって実行されるが、過度の乾燥は衣類などにあっては好ましくなく、電力消費の無駄にもなるので、乾燥度を検知して所定の乾燥度が検知されたとき、ヒータ20による加熱を停止して送風だけの空冷工程に移行させる制御がなされる。以下、乾燥度の検知に基づく乾燥工程から空冷工程への切り換え制御について説明する。
【0042】
乾燥度の検知は、加熱管路13内に配設された送風空気温度センサ20により検出される送風空気温度と、除湿管路10内に配設された熱交換器16に注水された冷却水が熱交換器16を冷却した後、図2に破線で示すように、排水される冷却水の温度を水槽3の底部に設けた冷却水温度センサ42で検出した冷却水温度とを用いてなされる。
【0043】
図6に示すように、乾燥工程の開始とともに送風空気温度A及び冷却水温度Wを所定時間間隔(例えば、2分毎)で検出すると、予熱乾燥期においては共に温度上昇し、それを過ぎると温度変化が少ない恒率乾燥期に移行し、乾燥が進行した減率乾燥期に至って送風空気温度Aは再び温度上昇し、冷却水温度は下降する傾向を示す。この温度変化の送風空気温度Aと冷却水温度Wとの温度差(A−W)を見ると、図6に破線で示すようになる。
【0044】
そこで、冷却水温度Wの所定時間(例えば、10分間)での変化量を検出すると、乾燥工程を開始した予熱乾燥期では変化量が大きく、恒率乾燥期に至ると変化量が小さくなるので、予熱乾燥期から恒率乾燥期に移行した付近、すなわち、冷却水温度変化量ΔWが第1の所定値温度T1以下になったときの送風空気温度Aと冷却水温度Wとの温度差(A−W)を基準値温度(基準値)T2とする。その後、送風空気温度Aと冷却水温度Wとの温度差(A−W)が前記基準値温度T2に対して第2の所定値温度(判定値または所定値)Ts(T3−T2)以上になる状態を検出すると、乾燥が終了したものと判断する。この第2の所定値温度Tsは、あらかじめ実験にて確認しておいた適度な乾燥度を得ることができる温度である。そこで、この状態が検出されたとき、所要の乾燥度が得られた状態となっていることとなるので乾燥工程を終了し、ヒータ19への通電を遮断して送風だけを継続する空冷工程に移行させる。
【0045】
上述したように第2の所定値温度Tsは、予め実験において確認していた適度な乾燥度が得られる状態である。しかしながら、ドラム式洗濯乾燥機1の使用環境、乾燥する衣類の種類などにより、乾燥度の仕上がりも異なるものであり、また、使用者の好みにより、適度な乾燥度に満足できない場合等がある。使用者の好みには、乾燥度をさらに進めて、より衣類を乾燥させたい場合や、生乾き状態で乾燥を終了させて太陽光等で衣類を乾かした場合、衣類へのシワが低減するので、生乾き状態で乾燥を早めに終了したい場合等がある。
【0046】
第2の所定温度Tsを通常時より高い所定温度Tshにすれば、乾燥時間は長くなり、乾燥度は進み、第2の所定温度Tsを通常時より低く所定温度Tslすれば、早く乾燥が終了する。
【0047】
また、この第2の所定温度Tsは、表1に示すように、周囲温度と、衣類の量(検知方法は省略)により、変える必要がある。すなわち、周囲温度が低い場合は、乾燥度が進んでも、周囲の温度が低い分、送風空気温度Aと冷却水温度Wともに、低くなる傾向になり、そして、温度差(A−W)も低くなる。また、衣類の量によっても、乾燥度と温度差(A−W)に変化がある。布量が多い場合は、その分、温度差(A−W)も開きにくい傾向にある。この設定も、予め実験により得られる温度である。
【0048】
【表1】

【0049】
まず、より衣類を乾燥させたい場合には、表2に記すような、第2の所定温度Tshにする。この設定温度は、周囲温度と衣類の量に対応して、それぞれの条件において、より乾燥をさせた状態で乾燥が終了する設定であり、それぞれ予め実験より得られる温度である。
【0050】
【表2】

【0051】
一方、生乾き状態で乾燥を終了させたい場合には、表3に記すような、第2の所定温度Tslにする。この設定温度は、周囲温度と衣類の量に対応して、それぞれの条件において、乾燥が生乾き状態で終了するように設定した所定温度であり、この温度も予め実験により得られる温度である。
【0052】
【表3】

【0053】
また、乾燥時間を長くする方法として、第2の所定温度Tsを変えて、乾燥検知までの時間を伸ばす方法を前記したが、第2の所定温度Tsはそのままにして、乾燥検知後、更に一定時間(遅延時間)乾燥動作を行うようにすることで乾燥時間を長くすることができる。この時は、周囲温度と布量により、遅延時間を設定し、より乾燥させた状態での乾燥を実現できる。
【0054】
上記第2の所定温度Tsの変更方法としては、入力設定手段27の操作により、修理検査用の特殊運転モードに設定し、この特殊運転モードで、第2の所定温度Tsを設定する。例えば、特殊運転モードで、工場出荷時の乾燥度(a)と、より衣類を乾燥させたい場合の乾燥度(b)と、衣類を生乾き状態させたい場合の乾燥度(c)を調整できるようにする。このとき、どのような設定になっているかを表示手段28により、図7(a)、(b)、(c)に示すように表示する。
【0055】
上記構成において、図8、図9を参照しながら動作を説明する。図8のステップ90にて動作を開始し、ステップ91にて電源入りスイッチ27gをオンし、このとき、ステップ92にて洗い時間設定スイッチ27aがオンされているとステップ93は進み、修正検査用の運転モードに設定される。修理検査用の運転モードは、モータ5、給水弁7、排水弁8などの、アクチュエータを強制的に駆動させて、正常に動作することを確認するための運転モードと、出荷後に、経年変化や量産バラツキを考慮にいれて通常時の運転状態を調整(例えば、乾燥運転時の乾燥度合い検知レベル等)する機能を有している。
【0056】
ステップ94にて、すすぎ回数設定スイッチ27bにより、修理検査用の運転モード中の設定を切り換える。モータ5を駆動させて回転ドラム1を左右に反転する設定等があり、ステップ95で、乾燥運転時の乾燥度合いを調整する設定モードであるか判定し、ステップ96で、実際の乾燥度合いを、乾燥時間設定スイッチ16dにより切り換えて設定する。
【0057】
すなわち、乾燥度合いを調整するレベルとしては、工場出荷時の標準的な乾燥度と、より衣類を乾燥させたい場合の乾燥度と、衣類を生乾き状態させたい場合の3レベル等である。この乾燥度合いの調整は、前記したように、乾燥度の検知で用いている、第2の所定温度Tsをそれぞれ設定することにより実現する。この時の設定状態を、表示手段28により図7に示すように表示し、設定状態を区別できるようにする。また、この時、スタートスイッチ(スタート・一時停止スイッチ)27fを押すことによって、ステップ96で設定した内容を、記憶手段31に記憶し、次に乾燥運転を行う時、この設定の基づいて動作する。ステップ97で、スタートスイッチ27fを押されたか否かを判定し、押された場合は、ステップ98で、設定した内容を記憶手段41により記憶する。また、ステップ92で、洗いスイッチ16aが押されていない場合は、通常の乾燥運転を行う。
【0058】
次に、図9のフローチャートで、洗濯乾燥運転時の動作を説明する。ステップ100にて、動作を開始し、ステップ101にて電源入りスイッチ27gをオンし、このとき、ステップ102にて洗い時間設定スイッチ27aがオンされていないときはステップ103に進み、通常洗濯乾燥運転を行う。ステップ103で、入力設定手段16により、運転するコース等を設定してステップ104で、スタートスイッチ16fが押されかを判定し、スタートスイッチ16fが押された場合は、ステップ105に進み洗濯乾燥運転を開始する。以降、ステップ106で、図10に示すように、洗い、すすぎ、脱水、乾燥行程を順次行う。
【0059】
ステップ107で、乾燥行程に移行する順番であると判定したならば、ステップ108で乾燥運転を開始する。制御手段26により、モータ5を駆動して回転ドラム1を左右に反転することにより、回転ドラム1内の衣類を回転させるとともに、送風ファン18およびヒータ19を動作させ、注水弁25を動作させることで、回転ドラム1内に空気を循環させ除湿することで、乾燥動作を行う。
【0060】
この乾燥動作中は、ステップ109で、回転ドラム4内の衣類の乾燥度合いを、図6に示したように送風空気温度A及び冷却温度Wにより検知する。乾燥度合いが進んだかは、前記したように温度差(A−W)が第2の所定温度Tsに達したか否かで判定する。第2の所定温度Tsは、上記ステップ102で修理検査用の運転モードで設定された状態であり、乾燥の仕上がり状態に応じて設定されている。
【0061】
ステップ110で、温度差(A−W)が第2の所定温度Tsに達して、乾燥検知を終了するか否かを判定し、乾燥検知を終了すると判定した場合は、ステップ111に進む。乾燥検知を終了しないと判定した場合は、乾燥検知を行うまで、乾燥運転を継続する。乾燥検知後、所定時間乾燥運転を継続(遅延乾燥工程)する場合は、ステップ111で乾燥運転を行い、ステップ112で所定時間経過したと判定された場合は、乾燥運転を終了して、ステップ113で送風運転を行う。送風運転終了後、洗濯乾燥動作を終了させる。
【0062】
このように、使用者の要望に応じて、乾燥度合いを調整することができるようになるので、使用者のより満足する乾燥機として運転することが可能になる。
【0063】
また、制御手段26は、入力設定手段27を特殊操作することにより設定された設定状態を記憶手段41に記憶し、記憶手段41により設定状態を記憶した後は、洗濯動作を記憶手段41により記憶された設定状態により動作するようにしたことにより、設定以降は、必ず設定された条件で洗濯運転を行うようになるので、運転の都度設定するような手間を省くことができ、操作性を向上することができる。
【0064】
また、制御手段26は、入力設定手段27による特殊操作を、修理検査用に行うための運転動作を設定する操作方法と同じようにしたことにより、修理者は容易に運転状態を設定できるようになるとともに、使用者等が誤操作で、誤って別の運転状態に設定してしまうことを防止することができる。
【0065】
なお、上記実施の形態では、第2の所定温度Tsの変更を入力設定手段27の特殊操作によって行ったが、変更のための専用の入力設定手段を設けてもよい。この場合、使用者はより簡単に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明にかかる衣類乾燥機は、衣類の乾燥の仕上がり具合を変更できるので、使用環境、衣類等の種類や使用者の好みに合った乾燥を行うことが可能となるので、衣類乾燥機や衣類の乾燥機能を有した洗濯機等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1の実施形態におけるドラム式洗濯乾燥機の要部構成を示す断面図
【図2】同ドラム式洗濯乾燥機の乾燥機能の構成を示す断面図
【図3】同ドラム式洗濯乾燥機の乾燥機能を構成する加熱管路内の構成を示す平面図
【図4】同ドラム式洗濯乾燥機が備える制御装置の構成を示すブロック図
【図5】同ドラム式洗濯乾燥機の入力設定手段及び表示手段の拡大正面図
【図6】同ドラム式洗濯乾燥機の乾燥終了状態の検知を説明する温度変化グラフ
【図7】(a)同ドラム式洗濯乾燥機の表示手段28による工場出荷時の乾燥度の表示を示す図(b)同ドラム式洗濯乾燥機の表示手段28によるより衣類を乾燥させたい場合の乾燥度の表示を示す図(c)同ドラム式洗濯乾燥機の表示手段28による衣類を生乾き状態させたい場合の乾燥度の表示を示す図
【図8】同ドラム式洗濯乾燥機の設定フローチャート
【図9】同ドラム式洗濯乾燥機の動作フローチャート
【図10】同ドラム式洗濯乾燥機の洗濯乾燥動作時のタイミングチャート
【符号の説明】
【0068】
4 回転ドラム(衣類収容槽)
10 除湿管路(空気循環路)
12 送風管路(空気循環路)
13 加熱管路(空気循環路)
15 注水ノズル(冷媒供給手段)
16 熱交換器
17 除湿手段
18 送風ファン(送風手段)
19 ヒータ(加熱手段)
20 送風空気温度センサ(送風空気温度検出手段)
26 制御手段
42 冷却水温度センサ(冷媒温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥対象物を収容した衣類収容槽から排気した空気中に含まれる湿気を除湿手段により除湿した後、加熱手段によって加熱して再び衣類収容槽内に送風する送風手段及び空気循環路が形成され、前記除湿手段を構成する熱交換器に冷媒供給手段から供給されて熱交換を行った後の冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段と、前記加熱手段に至る直前の送風空気の温度を検出する送風空気温度検出手段と、前記加熱手段、送風手段及び冷媒供給手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記冷媒温度検出手段及び送風空気温度検出手段による検出出力に応じて乾燥工程から空冷工程に移行するようにし、前記乾燥工程から空冷工程に移行する際の判定値を、変更可能としたことを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項2】
制御手段は、冷媒温度検出手段によって検出された冷媒温度の所定時間内の変化量が所定変化量以下になったときの送風空気温度と冷媒温度との温度差を基準値として、送風空気温度と冷媒温度との温度差が前記基準値に対して所定値以上になったとき、加熱手段をオフに制御して乾燥工程から空冷工程に移行するようにし、前記所定値を変更可能としたことを特徴とする請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
運転コース等の設定や運転内容の設定を行うための入力設定手段を備え、前記入力設定手段に、判定値または所定値を変更するための専用の入力設定手段を設けた請求項1または2に記載の衣類乾燥機。
【請求項4】
運転コース等の設定や運転内容の設定を行うための入力設定手段を備え、前記入力設定手段を通常の操作でない特殊な操作を行うことによりに、判定値または所定値を変更するようにした請求項1または2に記載の衣類乾燥機。
【請求項5】
運転コース等の設定状態を表示する表示手段を備え、前記表示手段に、判定値または所定値が変更になったことを表示する表示手段を設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項6】
判定値または所定値を複数個設け、選択できるようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−68052(P2006−68052A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251560(P2004−251560)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】