説明

衣類乾燥機

【課題】衣類乾燥機において、衣類乾燥機において、衣類に付着した油脂類等による自己発熱について、衣類の表面だけでなく、折り重なった衣類の内部温度を検知することを実現するものである。
【解決手段】ドラムに収容された衣類の温度を非接触で検出する衣類温度検出部と、当該衣類温度検出部により得られた検出温度に基づいて前記ドラムの回転制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置が、前記検出温度に基づいて衣類乾燥運転を終了させるとともに、当該衣類乾燥運転終了後に前記衣類温度検出部から得られた検出温度を用いて、前記衣類の自然発火を監視する自然発火監視運転を行うものであり、さらに前記制御装置が、前記自然発火監視運転において、前記ドラムを回転させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の衣類乾燥機において、油脂類が付着した衣類は、乾燥終了後も酸化反応により自己発熱し、温度が油脂類の発火温度に達すると自然発火を起こすといった問題がある。
【0003】
この衣類の自然発火の防止方法としては、特許文献1に示すように、乾燥運転中にガス濃度センサを用いて衣類に含まれる溶剤や油分から発生するガス濃度を検知し、火災の発生を検知し、乾燥運転を中止することで未然に火災発生を防止するものが考えられている。
【0004】
しかしながら、この防止方法は、乾燥運転中に設定値以上のガス濃度が検出された場合に、乾燥運転を中止するものであって、乾燥運転終了後に酸化反応による自己発熱を検知するものではない。
【0005】
また、特許文献2に示すように、ドラム内の衣類に接触して温度を検知する衣類温度センサを有し、前記衣類温度センサの検知温度が自然発火する危険温度に基づく基準値を超えた場合、前記ドラム内からポンプで酸素を排出しドラム内部の酸素濃度を下げ、発火を防止するものが考えられている。
【0006】
しかしながら、この防止方法は、接触型の衣類温度センサでは衣類の表面温度しか検知できず、折り重なった衣類の内部で油脂類が自己発熱していた場合、油脂類の自己発熱を検知することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−56995号公報
【特許文献2】特開2011−10977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、衣類乾燥機において、衣類に付着した油脂類等による自己発熱について、衣類の表面だけでなく、折り重なった衣類の内部温度を検知することを主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る衣類乾燥機は、ドラムに収容された衣類の温度を非接触で検出する衣類温度検出部と、当該衣類温度検出部により得られた検出温度に基づいて前記ドラムの回転制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置が、前記検出温度に基づいて衣類乾燥運転を終了させるとともに、当該衣類乾燥運転終了後に前記衣類温度検出部から得られた検出温度を用いて、前記衣類の自然発火を監視する自然発火監視運転を行うものであり、さらに前記制御装置が、前記自然発火監視運転において、前記ドラムを回転させることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、衣類乾燥運転終了後も、前記衣類温度検出部にて衣類温度を検出し、制御装置が前記衣類温度検出部から得られた検出温度を用いて自然発火監視運転を行うことで、衣類乾燥運転終了後に衣類の温度上昇及び発火の監視を行うことができる。また、前記自然発火監視運転において、ドラムを回転させることにより、衣類が攪拌し衣類の重なりが解消でき、折り重なった衣類の内部温度を検出することが可能になる。したがって、自然発火監視運転をより確実にできる。
【0011】
ここで、より精度良くドラム内の折り重なった衣類の内部温度を検知するためには、前記ドラムの回転軸が略水平方向であり、前記衣類温度検出部が、前記ドラムの回転中に前記ドラム上部から落下する衣類の温度を検出することが望ましい。
【0012】
さらに、衣類全体の温度に加え、衣類の温度分布を検知するためには、前記衣類温度検出部が、衣類の温度分布を検出することが可能な、複数のセンサ素子を有する赤外線センサであり、前記制御装置が、前記衣類温度検出部により得られた検出温度に基づいて衣類の温度分布を検知することが望ましい。
【0013】
前記自然発火監視運転において、衣類乾燥運転終了後における衣類に付着した油脂類の酸化反応による自己発熱を検知するためには、前記制御装置が、前記自然発火監視運転において、前記ドラムを間欠回転させることが望ましい。
【0014】
前記自然発火監視運転において、衣類乾燥運転終了後における衣類に付着した油脂類の酸化反応による自己発熱をより精度よく検知するためには、前記ドラムの間欠回転でのドラム停止時間が10分以内であることが望ましい。
【0015】
前記自然発火監視運転において、前記ドラムの間欠回転での衣類温度の検知をより確実なものにするためには、前記ドラムの間欠回転で前記ドラムが回転する場合は、前記ドラムが少なくとも1回転以上することが望ましい。
【0016】
前記衣類温度検出部により得られた検出温度が異常検知温度を超え、衣類の温度上昇又は発火の恐れがある場合、前記制御装置が、温度異常を検知することが望ましく、さらに、油脂類の発火温度を考慮し、前記異常検知温度が200℃であることが望ましい。
【0017】
衣類乾燥機の利用者に対して異常を報知するためには、前記制御装置により、温度異常が検知された場合に、利用者に対して温度異常を報知することが望ましい。
【0018】
前記制御装置が、温度異常を検知した場合に、更なる温度上昇又は発火を防止するためには、前記制御装置が、衣類乾燥機の各部を制御して衣類冷却運転を行うことが望ましい。
【0019】
効率よく衣類の冷却及び発火した際の消火を行うためには、前記ドラム内部に給水する給水機構を備え、前記制御装置が、温度異常を検知した場合に、前記給水機構を制御し、前記ドラム内部に給水することで衣類の冷却を行うことが望ましい。
【0020】
また、効率よく衣類の冷却を行う他の方法として、前記ドラム内部に送風する送風ファンを備え、前記制御装置が、温度異常を検知した場合に、前記送風ファンが作動し前記ドラム内部に送風することで衣類の冷却を行うことが挙げられる。さらに、衣類への送風による冷却効率を高めるためには、前記制御装置が、温度異常を検知した場合に、前記送風ファンが作動して衣類を冷却する場合に、同時に前記ドラムを回転させることで、衣類が均一に冷却されるようにすることが望ましい。
【0021】
ヒートポンプを用いた衣類乾燥機において、衣類乾燥運転に必要な装置をそのまま用いて衣類を冷却するためには、前記衣類乾燥運転に対して冷凍サイクル内の冷媒の流れを反転させ、前記ドラム内に冷風を送ることで衣類の冷却を行うものが望ましい。
【0022】
ヒートポンプを用いた衣類乾燥機において、衣類乾燥運転に必要な装置をそのまま用いて衣類を冷却する他の構成として、前記衣類乾燥運転に対して前記ドラムへ流入する空気の流れを反転させ、前記ドラム内に冷風を送ることで衣類の冷却を行うものが挙げられる。
【0023】
必要以上の冷却運転を防止し、最小限の電力消費を実現するためには、前記制御装置が、前記衣類温度検出部から得られた検出温度が予め設定された冷却終了温度を下回った場合、冷却運転を終了させることが望ましい。
【0024】
必要以上の冷却運転を防止し、最小限の電力消費を実現するためには、前記制御装置が、前記衣類温度検出部から得られた検出温度が予め設定された冷却終了温度を下回った場合、冷却運転を終了させることが望ましい。例えば、前記冷却終了温度が、外気温度以下の温度とすることなどが考えられる。
【0025】
継続的に使用される衣類乾燥機において、衣類の温度上昇や発火のリスクを低減させ、冷却運転の頻度を減らすためには、前記制御装置が、温度異常を検知した場合には、当該温度異常を検知する直前に行った衣類乾燥運転のクールダウン工程に用いたクールダウン終了温度に対して、次回の衣類乾燥運転のクールダウン終了温度を引き下げることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
このように構成した本発明によれば、衣類乾燥運転終了後も、乾燥制御に用いる衣類温度検出部にて衣類温度を検出し、制御装置が前記衣類温度検出部から得られた検出温度を用いて自然発火監視運転を行うことで、衣類乾燥運転終了後に衣類の温度上昇及び発火の監視を行うことが可能になる。また、前記自然発火監視運転において、ドラムを回転させることにより、衣類が攪拌し衣類の重なりが解消でき、折り重なった衣類の内部温度を検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る衣類乾燥機の構成を示す模式図。
【図2】乾燥運転における衣類温度検出方法を示す図。
【図3】自然発火監視運転における衣類温度検出方法を示す図。
【図4】第2実施形態に係るヒートポンプ式衣類乾燥機の構成を示す模式図。
【図5】ヒートポンプ式乾燥機の乾燥運転の冷凍サイクルを示す図。
【図6】ヒートポンプ式乾燥機の衣類冷却運転の冷凍サイクルを示す図。
【図7】第3実施形態に係る衣類乾燥機の乾燥運転の構成を示す模式図。
【図8】第3実施形態に係る衣類乾燥機の衣類冷却運転の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0029】
<第1実施形態>
第1実施形態における衣類乾燥機100は、図1に示すように、ドラム1と、ドアガラス4を備えた前部パネル2と、後部パネル3と、ドラム1を保持するローラー5と、ドラム1を回転させるためのモーター7と、モーター7の動力をドラム1に伝達するベルト8と、衣類温度検出部9と、衣類温度検出部9より得られた検出温度を用いて衣類乾燥機100の各部を制御する制御装置10とを備えたものである。
【0030】
ドラム1は、円筒形状をなしており、ドラム1の両開口部にあたる部分に前部パネル2及び後部パネル3がドラム1の両開口を覆うようにして配置され、ドラム1と前部パネル2と、後部パネル3とに囲まれた衣類等を収容する空間を形成する。そして、前部パネル2及び後部パネル3はドラム1の回転に伴って回転しないように固定されており、ドラム1のみが回転する。なお、本実施形態ではドラムとパネルが別体のもので説明するが、他の形態として、ドラム1と、前部パネル2と、後部パネル3とが一体になっているものでも良い。
【0031】
ドラム1はローラー5に乗った状態で配置されており、ドラム1の回転軸は略水平方向である。当該ドラム1はモーター7と、ドラム1及びモーター7にそれぞれ掛渡したベルト8で構成するドラム回転機構により回転する。また、ドラム1には、例えば後部パネル3に開口する吸気流路18が接続され、当該吸気流路18には送風ファン6及びヒーター17が設けられている。この送風ファン6により吸気流路18の外部開口である吸気口16から外気が吸気されて、ドラム1内に送風される。
【0032】
衣類温度検出部9は、回転するドラム1上部から落下する衣類の温度を検出する。衣類温度検出部9は複数の赤外線検出素子を一列に配置した赤外線ラインセンサであり、前部パネル2の上部に配置されている。これにより、落下時にほぐれた衣類の温度を検出できるように構成している。
【0033】
制御装置10は、CPU、メモリ、I/Oチャネル、ディスプレイ等の出力機器、キーボードなどの入力機器、ADコンバータ等を有したいわゆる専用ないし汎用のコンピュータであり、前記メモリに格納した制御プログラムにしたがってCPUやその周辺機器が動作することによって、衣類温度検出部9から得られた検出温度に応じて衣類乾燥機の各部を制御する。
【0034】
次に、衣類乾燥機100の衣類乾燥運転について説明する。なお、衣類乾燥運転は、衣類乾燥工程と、クールダウン工程とで構成される。
【0035】
まず、衣類乾燥運転時の空気の流れを説明する。送風ファン6によって吸気口16より吸入された空気がヒーター17で加熱され、ドラム1内部に流れ込む。この加熱された空気によりドラム1内部の衣類が加熱されて水分が蒸発する。蒸発した水分を含み高温多湿となった空気は、例えば前部パネル2に設けられた排気口より衣類乾燥機100の外部に排出される。
【0036】
次に衣類乾燥運転時の衣類温度検出方法と検出温度に基づく乾燥運転の制御について説明する。衣類温度検出方法を図2に示す。
【0037】
衣類が全て乾燥すると衣類温度検出部9が検出する温度はほぼ一定になる。しかしながら、完全に乾燥できていない衣類がある場合は、水の気化熱により乾いていない衣類もしくは衣類の一部の温度が低くなり、衣類温度検出部9は局所的に低い温度を検出する。衣類温度が低く、検出した温度が予め定められた乾燥運転終了温度に達しない場合は、衣類温度検出部9から得られた検出温度に基づいて、制御装置10が衣類乾燥機100の各部を制御し、乾燥運転を継続する。
【0038】
全ての衣類が完全に乾燥し、衣類温度検出部9から得られた検出温度が、前記乾燥運転終了温度を超えた場合、制御装置10がヒーター17をOFFにする。なお、衣類温度検出部9は直接衣類の温度を検出しているので、衣類乾燥運転中における衣類の過熱も検出することができ、制御装置10が衣類温度検出部9から得られた検出温度から衣類の過熱を検知した場合、ヒーター17を制御してドラム1内部に流入する熱風の温度を調節し、乾燥中の発火や衣類の縮みを防止することができる。
【0039】
ヒーター17がOFFになると、乾燥運転終了前の工程として、クールダウン工程に入る。ヒーター17がOFFであり空気が加熱されないため、ドラム1内に冷風が流入する。この冷風により乾燥時に高温状態になった衣類の温度や、ドアガラス4等、ドラム1内の温度が下がる。衣類及びドアガラス4等の温度が低下し、衣類温度検出部9から得られた温度が、予め定められた使用者が火傷をする危険性がないクールダウン終了温度まで低下した場合、制御装置10が送風ファン6を停止させ、クールダウン工程を終了する。そしてクールダウン工程の終了によって、衣類乾燥運転が終了する。
【0040】
次に、衣類乾燥機100の自然発火監視運転について説明する。自然発火監視運転における衣類温度検出方法を図3に示す。
【0041】
乾燥運転終了後、衣類中に洗濯しても取りきれなかった油脂が残っている場合、乾燥運転終了直後の衣類温度は通常の外気温度より温度が高いため、油脂の酸化反応が進行し易い状態になっている。
【0042】
油脂は、温度が上がれば酸化反応速度が速くなるのが一般的である。特に乾燥運転終了後の10分程度は衣類温度が温かい状態が続き、油脂類が酸化し易く、自己発熱する可能性が高い。また、折り重なった衣類の内部において油脂類による自己発熱が発生した場合、折り重なった衣類の表面温度を検出しただけでは、折り重なった衣類の内部での温度上昇を検知できないため、折り重なった衣類の内部温度を検出する必要がある。
【0043】
そこで自然発火監視運転では、折り重なった衣類の内部温度を検出するために、乾燥運転終了後もドラム1が回転し、衣類温度検出部9が回転するドラム1上部から落下する衣類の温度を検出する。この衣類温度検出部9から得られた温度を用いて、制御装置10が衣類の自然発火を監視する。
【0044】
また、回転するドラム1上部から落下する衣類の温度を検出することで、温度分布も検出することが可能になり、衣類の一部に付着した油脂類による自己発熱を検出することができる。
【0045】
また、自然発火監視運転におけるドラム1の回転を間欠回転とすることで衣類の傷みを防止できる。間欠回転を行う場合は、油脂類の自己発熱を的確に検出するために、温度変化に対する油脂類の酸化反応速度の特徴を踏まえ、ドラム1の停止時間を10分以内とし、かつ、衣類温度検出部9が衣類全体の温度検出を行うため、ドラム1が回転する場合は少なくとも1回転以上する。
【0046】
制御装置10において、予め異常検知温度を定めておくことで、衣類温度検出部9から得られた温度が異常検知温度を超えた場合、温度異常を的確に検知することができる。
【0047】
タオル、ウエス等を含む一般的な衣類の自然発火温度は400〜500℃であるのに対し、油脂類の自然発火温度は、約200〜400℃である。したがって、異常検知温度を自然発火温度が低い油脂類の発火温度に合わせ、200℃以下に設定することにより、衣類に付着した油脂類による自然発火を防止することができる。
【0048】
制御装置10が、温度異常を検知した場合、クールダウン工程同様に、ヒーター17が停止している状態で送風ファン6を作動させてドラム1内に冷風を送ることで衣類冷却運転を行う。したがって、油脂類又は衣類の温度上昇及び自然発火を防止することができる。その上で、ドラム1が回転し、衣類が攪拌されることで衣類の冷却効率をより上げることができる。
【0049】
そして、ドラム1内の冷却を行ったことでドラム1内の衣類温度が低下し、衣類温度検出部9から得られた温度が、予め定められた冷却終了温度を下回った場合、制御装置10が送風ファン6を停止させ、冷却運転を終了する。
【0050】
制御装置10が、温度異常を検知した場合に、当該温度異常を検知する直前に行った衣類乾燥運転のクールダウン工程に用いたクールダウン終了温度に対して、次回の衣類乾燥運転のクールダウン終了温度を引き下げる。
【0051】
クールダウン終了温度を引き下げることで、次回運転時のクールダウン工程が延長され、乾燥運転終了時の衣類の温度が低下し、油脂類が付着している場合でも油脂類が酸化しにくくなり、自己発熱による衣類の温度上昇や発火のリスクを低減できる。
【0052】
このような自然発火監視運転を行う衣類乾燥機によれば、衣類に付着した油脂類などによる自己発熱について、衣類乾燥制御に用いる検知手段を用いて検知することが可能であり、さらに、乾燥運転に必要な装置のみを用いて衣類の冷却及び火災発生の防止を実現できる。
【0053】
また、自然発火監視運転においてドラムを回転させることで、衣類が攪拌される。衣類が攪拌されることで衣類の重なりが解消し、全体的な衣類温度を検出することができる上、衣類を冷却する際にも冷却効率をより上げることが可能になる。
【0054】
<第2実施形態>
第2実施形態における衣類乾燥機100は、図4、図5に示すように、圧縮機21から四方弁22を通じて第1熱交換器11、膨張弁23、第2熱交換器12の順に環状に接続されたヒートポンプサイクルを備える。この衣類乾燥機100では、第1熱交換器11で加熱された空気がドラム1に流入し、衣類を加熱する。衣類加熱後にドラム1を出た空気は第2熱交換器12にて冷却され、機体外部に排出される。
【0055】
衣類乾燥運転終了後、折り重なった衣類の内部温度を検出するために、乾燥運転終了後もドラム1が回転し、衣類温度検出部9が回転するドラム1上部から落下する衣類の温度を検出する。この衣類温度検出部9から得られた温度を用いて、制御装置10が衣類の自然発火を監視する。制御装置10が温度異常を検知した場合には、制御装置10が衣類乾燥機100の各部を制御して衣類冷却運転を行う。
【0056】
衣類冷却運転を行う場合のヒートポンプサイクルを図6に示す。衣類冷却運転では、乾燥運転時に対して四方弁22にて冷媒の流れを反転させることで、第1熱交換器11と第2熱交換器12の放熱及び吸熱の作用が逆転し、第1熱交換器11では吸気した空気から吸熱し、第2熱交換器12ではドラム1より出た排気空気に放熱する。
【0057】
したがって、前記風路を通る空気は、吸気されたのち第1熱交換器11にて冷却され、ドラム1内部に流れ込む。この冷却された空気によりドラム1内部の衣類が冷却されて衣類温度が下がる。そしてドラム1を出た空気は第2熱交換器12にて加熱され、機体外部に排出される。
【0058】
このように構成した第2実施形態に係るヒートポンプサイクルを備えた衣類乾燥機によれば、ヒートポンプサイクルにおける冷媒の流れを反転させることにより、衣類乾燥運転に必要な装置のみを用いて衣類の冷却及び火災発生の防止を実現することができる。さらに、ヒートポンプサイクルにて冷媒と熱交換して空気を冷却するため、通常の空気を送風するよりもより低い温度の冷風をドラム1内に送ることができ、より効率の良い衣類の冷却を行うことができる。
【0059】
<第3実施形態>
第2実施形態における衣類乾燥機100は、図7に示すように、第1熱交換器11と、第1送風ファン14と、ドラム1と、第2送風ファン15と、第2熱交換器12の順に風路が接続され、第1送風ファン14及び第2送風ファン15を駆動するためのモーター13を有し、さらにヒートポンプサイクルを備えたものである。
【0060】
ここで、衣類乾燥運転時のヒートポンプサイクルは図5のものと同一である。したがって、乾燥運転時において前記風路を通る空気は、吸気されたのち第1熱交換器11にて加熱され、ドラム1内部に流れ込む。この加熱された空気によりドラム1内部の衣類が加熱されて水分が蒸発する。蒸発した水分を含み高温多湿となった空気は第2熱交換器12にて冷却され、機体外部に排出される。
【0061】
衣類乾燥運転終了後、折り重なった衣類の内部温度を検出するために、乾燥運転終了後もドラム1が回転し、衣類温度検出部9が回転するドラム1上部から落下する類の温度を検出する。この衣類温度検出部9から得られた温度を用いて、制御装置10が衣類の自然発火を監視する。制御装置10が温度異常を検知した場合には、制御装置10がモーター13を制御して衣類冷却運転を行う。
【0062】
衣類冷却運転を行う場合の空気の流れを図8に示す。ここで、ヒートポンプサイクルは衣類乾燥運転時と同一である。モーター13が逆回転することで乾燥運転時に対して第1送風ファン14及び第2送風ファン15の回転が反転し、空気の流れが反転する。
【0063】
したがって、前記風路を通る空気は、吸気されたのち第2熱交換器12にて冷却され、ドラム1内部に流れ込む。この冷却された空気によりドラム1内部の衣類が冷却されて衣類温度が下がる。そしてドラム1を出た空気は第1熱交換器11にて加熱され、機体外部に排出される。
【0064】
このように構成した第3実施形態に係るヒートポンプサイクルを備えた衣類乾燥機によれば、衣類乾燥機における空気の流れを反転させることにより、乾燥運転に必要な装置のみを用いて衣類の冷却及び火災発生の防止を実現することができる。さらに、ヒートポンプサイクルにて冷媒と熱交換して空気を冷却するため、通常の空気を送風するよりもより低い温度の冷風をドラム1内に送ることができ、より効率の良い冷却能力を発揮することができる。
【0065】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、衣類乾燥機100に給水機構を設け、制御装置10が、温度異常を検知した場合、前記給水機構を制御し、ドラム1内に給水することで衣類冷却運転を行い、油脂類又は衣類の温度上昇及び自然発火を防止することができる。
【0066】
また、送風ファン6とは別に冷却専用の送風ファンを設け、ドラム内への送風能力を増加させることで、冷却効率を上げることができる。この際、冷却専用の送風ファンの駆動力をモーター7の駆動力を用いるようにすることで装置の大型化を必要最小限にすることができる。
【0067】
衣類乾燥機100に異常報知手段を設け、制御装置10が、温度異常を検知した場合、温度異常信号を出し、当該温度異常信号を取得した異常報知手段が利用者に温度異常を報知することで、温度異常が発生した場合、利用者に温度異常を認知させることができる。
【0068】
衣類温度検出部9は、衣類乾燥運転時に衣類温度を検出するものと、衣類冷却運転時に衣類温度を検出するものとが別体で構成されていても良いし、一体のもので衣類乾燥運転時と衣類冷却運転時の両方の衣類温度を検出するものでも良い。
【0069】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
100・・・衣類乾燥機
1 ・・・ドラム
2 ・・・前部パネル
3 ・・・後部パネル
4 ・・・ドアガラス
5 ・・・ローラー
6 ・・・送風ファン
7 ・・・モーター
8 ・・・ベルト
9 ・・・衣類温度検出部
10 ・・・制御装置
11 ・・・第1熱交換器
12 ・・・第2熱交換器
13 ・・・モーター
14 ・・・第1送風ファン
15 ・・・第2送風ファン
16 ・・・吸気口
17 ・・・ヒーター
18 ・・・吸気流路
21 ・・・圧縮機
22 ・・・四方弁
23 ・・・膨張弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムに収容された衣類の温度を非接触で検出する衣類温度検出部と、当該衣類温度検出部により得られた検出温度に基づいて前記ドラムの回転制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置が、前記検出温度に基づいて衣類乾燥運転を終了させるとともに、当該衣類乾燥運転終了後に前記衣類温度検出部から得られた検出温度を用いて、前記衣類の自然発火を監視する自然発火監視運転を行うものであり、
さらに前記制御装置が、前記自然発火監視運転において、前記ドラムを回転させることを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項2】
前記ドラムの回転軸が略水平方向であり、
前記衣類温度検出部が、前記ドラムの回転中に前記ドラム内にて落下する衣類の温度を検出することを特徴とする請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
前記衣類温度検出部が、衣類の温度分布を検出することが可能な、複数のセンサ素子を有する赤外線センサであり、
前記制御装置が、前記衣類温度検出部により得られた検出温度に基づいて衣類の温度分布を検知することを特徴とする請求項1又は2記載の衣類乾燥機。
【請求項4】
前記制御装置が、前記自然発火監視運転において、前記ドラムを間欠回転させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の衣類乾燥機。
【請求項5】
前記ドラムの間欠回転でのドラム停止時間が10分以内であることを特徴とする請求項4記載の衣類乾燥機。
【請求項6】
前記ドラムの間欠回転で前記ドラムが回転する場合は、前記ドラムが少なくとも1回転以上することを特徴とする請求項4又は5記載の衣類乾燥機。
【請求項7】
前記制御装置が、前記自然発火監視運転において、前記衣類温度検出部から得られた検出温度が予め定められた異常検知温度を超える場合、温度異常を検知することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の衣類乾燥機。
【請求項8】
前記異常検知温度が200℃であることを特徴とする請求項7記載の衣類乾燥機。
【請求項9】
前記制御装置により、温度異常が検知された場合に、利用者に対して温度異常を報知する請求項7又は8記載の衣類乾燥機。
【請求項10】
前記制御装置が、温度異常を検知した場合に、衣類乾燥機の各部を制御して衣類冷却運転を行うことを特徴とする請求項7、8又は9記載の衣類乾燥機。
【請求項11】
前記ドラム内部に給水する給水機構を備え、
前記制御装置が、温度異常を検知した場合に、前記給水機構を制御し、前記ドラム内部に給水することで衣類の冷却を行うことを特徴とする請求項7、8、9又は10記載の衣類乾燥機。
【請求項12】
前記ドラム内部に送風する送風ファンを備え、
前記制御装置が、温度異常を検知した場合に、前記送風ファンが作動し前記ドラム内部に送風することで衣類の冷却を行う請求項7、8、9、10又は11記載の衣類乾燥機。
【請求項13】
前記制御装置が、温度異常を検知した場合に、前記送風ファンが作動して衣類を冷却する場合に、同時に前記ドラムを回転させることで、衣類が均一に冷却されるようにすることを特徴とする請求項12記載の衣類乾燥機。
【請求項14】
ヒートポンプサイクルを用いたものであり、
前記衣類乾燥運転に対して冷凍サイクル内の冷媒の流れを反転させ、前記ドラム内に冷風を送ることで衣類の冷却を行う請求項10、11、12又は13記載の衣類乾燥機。
【請求項15】
ヒートポンプサイクルを用いたものであり、
前記衣類乾燥運転に対して前記ドラムへ流入する空気の流れを反転させ、前記ドラム内に冷風を送ることで衣類の冷却を行う請求項10、11、12又は13記載の衣類乾燥機。
【請求項16】
前記制御装置が、前記衣類温度検出部から得られた検出温度が予め設定された冷却終了温度を下回った場合、冷却運転を終了させること特徴とする請求項9、10、11、12、13、14又は15記載の衣類乾燥機。
【請求項17】
前記冷却終了温度が、外気温度以下の温度である請求項16記載の衣類乾燥機。
【請求項18】
前記制御装置が、温度異常を検知した場合には、当該温度異常を検知する直前に行った衣類乾燥運転のクールダウン工程に用いたクールダウン終了温度に対して、次回の衣類乾燥運転のクールダウン終了温度を引き下げることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17記載の衣類乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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