説明

衣類乾燥装置

【課題】乾燥行程の初期において圧縮機の圧縮能力を適切に変化させることにより、発生させた熱量を放出することなく、乾燥行程の比較的早い段階からエネルギーの消費を抑制することが可能な衣類乾燥装置を提供する。
【解決手段】ドラム式洗濯乾燥機100は、ヒートポンプ装置13と圧縮能力可変部15とサーミスタ16と制御部20とを備えている。ヒートポンプ装置13は、圧縮機7と凝縮器8と絞り部9と蒸発器10と冷媒配管14とを含む。サーミスタ16は、ヒートポンプ装置13の冷媒配管14の所定の箇所の表面温度を検知する。制御部20は、乾燥行程の初期において、サーミスタ16によって検知された冷媒配管14の表面温度の単位時間あたりの変化量が予め定められた数値範囲に収まるように、圧縮能力可変部15を制御することによって、圧縮機7の圧縮能力を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には衣類乾燥装置に関し、特定的にはヒートポンプを熱源に用いることによって被乾燥対象物を乾燥する衣類乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類乾燥装置の熱源として、ヒータの他に、ヒートポンプを用いたヒートポンプ装置が従来から知られている。
【0003】
ヒートポンプ装置は、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、絞り手段としての膨張弁とを備えている。圧縮機と凝縮器と蒸発器と膨張弁とが冷媒を流通させる配管によって連結されることにより、ヒートポンプ装置において冷凍サイクルが形成されている。ヒートポンプ装置では、この冷凍サイクルを冷媒が循環する。
【0004】
ヒートポンプ装置を備えた衣類乾燥装置において、圧縮機によって圧縮された冷媒ガスは、高温化且つ高圧化されて圧縮機から吐出される。凝縮器においては、圧縮機から吐出された冷媒ガスと凝縮器を通過する空気とが熱交換する。これにより、凝縮器を通過する空気が加熱される。衣類等の被乾燥対象物が収容されたドラムにこの加熱された空気が送風されることにより、被乾燥対象物に含まれる水分の蒸発が進行していく。
【0005】
一方、凝縮器において、冷媒ガスは冷却される。冷却された冷媒ガスは、膨張弁にて圧力が低下されることによって液化する。ドラムの内部からヒートポンプ装置に排出された水蒸気を含む空気は、蒸発器を通過するときに、液化した冷媒と熱交換される。これにより、ヒートポンプ装置に排出された水蒸気を含む空気は、冷却且つ除湿される。このときに冷媒は蒸発し、冷媒ガスとして圧縮機に戻される。
【0006】
被乾燥対象物の乾燥が進行するにつれ、ドラムの内部とヒートポンプ装置とを循環している空気(乾燥用空気)に、圧縮機が消費する電力に相当する熱量が蓄積されていく。そのため、乾燥用空気をそのまま循環し続ける場合には、乾燥用空気全体が有する熱量が増加するとともに、ヒートポンプ装置を循環する冷媒の熱量が増加して冷媒の圧力が増加する。このようにして、ヒートポンプ装置と乾燥用空気とが有するエネルギーが上昇していく。また、冷媒が高圧化且つ高温化されるにつれ、圧縮機の消費電力が増大していく。冷媒が高圧化且つ高温化される場合は、乾燥用空気が有する熱量が増加する一方で被乾燥対象物へ与えることができる熱量が同程度には増加しない。そのため、衣類乾燥装置の乾燥効率が低下する。
【0007】
ところで、以下の文献には、被乾燥対象物を乾燥させる際に、乾燥に係るエネルギーの消費を抑えるような方法等が提案されている。
【0008】
例えば、特開2003−240308号公報(特許文献1)に係る空気調和機の制御方法は、乾燥運転の起動に際して外気温度を検出し、検出した外気温度に基づいて起動運転モードを決定するような方法である。さらに、特開2003−240308号公報(特許文献1)に係る空気調和機の制御方法は、外気温度と、予め設定した設定温度との差の絶対値に応じて、圧縮機の回転数を決定するような方法である。
【0009】
特開2010−63752号公報(特許文献2)に係る洗濯乾燥機は、凝縮器の温度に基づいて、圧縮機の運転周波数を制御するように構成されている。具体的には、特開2010−63752号公報(特許文献2)に係る洗濯乾燥機は、凝縮器の温度が設定値に達するまで、圧縮機の運転周波数を50Hzに維持させている。さらに、凝縮器の温度が設定値に達した後には、運転周波数を徐々に低下させている。
【0010】
特開2010−29275号公報(特許文献3)に係る洗濯乾燥機は、当該洗濯乾燥機の運転に係るモードとして、節約コースを有している。節約コースにおいては、圧縮機の回転速度が低下されることにより、冷媒の循環が抑制されている。これにより、節約コースでは、少ない電力で洗濯物を乾燥させることが図られている。
【0011】
特開2004−236965号公報(特許文献4)に係る衣類乾燥装置は、乾燥用空気の熱の一部、または、冷媒の熱の一部を外部に放出する熱バランス手段と、圧縮機の圧縮能力を変化させる圧縮能力可変手段とを備えている。特開2004−236965号公報(特許文献4)に係る衣類乾燥装置は、圧縮機の圧縮能力を変化させることに加えて、熱を外部に放出する。これにより、特開2004−236965号公報(特許文献4)に係る衣類乾燥装置は、省エネルギー化の実現が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−240308号公報
【特許文献2】特開2010−63752号公報
【特許文献3】特開2010−29275号公報
【特許文献4】特開2004−236965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特開2003−240308号公報(特許文献1)に係る空気調和機の制御方法は、室温と設定温度とのみに基づいて、圧縮機の回転数を決定している。つまり、特開2003−240308号公報(特許文献1)に係る空気調和機の制御方法は、空気調和機が設置される外気の湿度、または、被乾燥物の状態を考慮したうえで圧縮機の回転数を決定するものではない。そのため、エネルギーの消費を必ずしも抑制することができるものではない。
【0014】
特開2010−63752号公報(特許文献2)洗濯乾燥機は、当該洗濯乾燥機が設置される環境の条件、または、被乾燥物の状態に基づいて、圧縮機の運転周波数を変化させることがない。そのため、少なくとも圧縮機の運転周波数を低下させるまでの間、つまり、乾燥行程の初期の圧縮機の回転数は、当該洗濯乾燥機が設置される環境の条件、または、被乾燥物の状態等の条件を考慮する場合に、必ずしも好ましいものではない。
【0015】
特開2010−29275号公報(特許文献3)洗濯乾燥機は、節約コースを利用することにより、少ない電力で洗濯物を乾燥させることが図られている。しかしながら、単に圧縮機の回転速度を低下させているだけでは、被乾燥物の容量が比較的多い場合または当該洗濯乾燥機が設置される環境が比較的低温である場合に、乾燥時間が長くなる。この場合には、当該洗濯乾燥機を作動させるため等に消費されるエネルギーの総量が増加する。
【0016】
特開2004−236965号公報(特許文献4)に係る衣類乾燥装置は、圧縮機の圧縮能力を変化させることに加えて、熱バランス手段によって熱を外部に放出している。これにより、省エネルギー化が図られている。しかしながら、熱バランス手段によって熱を外部に放出することは、放出した熱が無駄になるだけでなく、熱と共に放出される湿分により、当該衣類乾燥装置が設置される場所の近辺にカビを発生させる等の問題が生じる。
【0017】
そこで、本発明の目的は、乾燥行程の初期において圧縮機の圧縮能力を適切に変化させることにより、発生させた熱量を放出することなく、乾燥行程の比較的早い段階からエネルギーの消費を抑制することが可能な衣類乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に従った衣類乾燥装置は、圧縮機と凝縮器と絞り部と蒸発器と冷媒配管とを含むヒートポンプ装置を熱源として利用する衣類乾燥装置である。圧縮機は、冷媒を圧縮して冷媒の温度を上昇させる。凝縮器は、圧縮機によって圧縮された冷媒と空気とを熱交換させることによって空気を加熱させる。絞り部は、空気を加熱させた冷媒の圧力を減圧する。蒸発器は、減圧された冷媒と空気とを熱交換させることによって空気を冷却させる。冷媒配管は、圧縮機、凝縮器、絞り部、および、蒸発器の順に冷媒が循環するように、圧縮機と凝縮器と絞り部と蒸発器とを連結する。
【0019】
また、本発明に従った衣類乾燥装置は、乾燥室と送風機と空気循環経路と圧縮能力可変部と物理量検知部と制御部とを備えている。乾燥室は、被乾燥対象物を収納する。また、乾燥室には、凝縮器で加熱された空気が供給される。送風機は、凝縮器で加熱された空気を乾燥室へ送風する。空気循環経路は、第1の部分と第2の部分とを有している。第1の部分は、凝縮器で加熱された空気が乾燥室へ供給されるように凝縮器と乾燥室との間に配置されている。第2の部分は、乾燥室にて被乾燥対象物の乾燥に利用された空気が蒸発器に向かって流れるように乾燥室と蒸発器との間に配置されている。圧縮能力可変部は、圧縮機の圧縮能力を変化させる。物理量検知部は、ヒートポンプ装置の所定の箇所の温度、冷媒の圧力、および、空気循環経路の所定の箇所を流通する空気の温度からなる群より選ばれた少なくとも一つの物理量を検知する。制御部は、圧縮機の圧縮能力を変化させるように圧縮能力可変部を制御する。また、制御部は、乾燥行程の初期において、物理量の単位時間あたりの変化量が予め定められた数値範囲に収まるように圧縮能力可変部を制御する。
【0020】
本発明によれば、乾燥行程の初期において、ヒートポンプ装置の所定の箇所の温度、冷媒の圧力、および、空気循環経路の所定の箇所を流通する空気の温度からなる群より選ばれた少なくとも一つの物理量の単位時間あたりの変化量が予め定められた数値範囲に収まるように、制御部は圧縮機の圧縮能力を変化させる。このようにすることにより、乾燥行程の初期において、当該衣類乾燥装置の外部に漏出するエネルギーと、被乾燥対象物とヒートポンプ装置とのエネルギー交換量と、圧縮機に加えるエネルギーとがバランスした状態を維持することができる。
【0021】
したがって、本発明によれば、乾燥行程の初期において圧縮機の圧縮能力を適切に変化させることにより、発生させた熱量を放出することなく、乾燥行程の比較的早い段階からエネルギーの消費を抑制することが可能な衣類乾燥装置を提供することができる。
【0022】
本発明に従った衣類乾燥装置において、ヒートポンプ装置の所定の箇所の温度は、圧縮機の吐出部、凝縮器の中間部、または、絞り部のいずれかの温度であることが好ましい。
【0023】
乾燥行程において、圧縮機の吐出部、凝縮器の中間部、または、絞り部のいずれかの温度変化は、例えば蒸発器の所定の箇所の温度変化に比べて大きい。すなわち、本発明に従った衣類乾燥装置の構成によれば、乾燥用空気の状態によらずに、圧縮機の吐出部、凝縮器の中間部、または、絞り部のいずれかの温度を検知することにより、ヒートポンプ装置の冷凍サイクルの状態変化を比較的容易に推測することができる。そのため、ヒートポンプ装置の冷凍サイクルの状態変化に基づき、ヒートポンプ装置を含む当該衣類乾燥装置の全体のエネルギーバランスを被乾燥対象物の乾燥時に最適に維持することが可能である。これにより、より小さいエネルギーで被乾燥対象物を乾燥することができる。
【0024】
本発明に従った衣類乾燥装置において、物理量検知部は、ヒートポンプ装置の所定の箇所の冷媒圧力を検知するように、ヒートポンプ装置の高圧側に配置されていることが好ましい。
【0025】
ヒートポンプ装置の低圧側の冷媒圧力は、乾燥行程において略一定である。つまり、乾燥行程において、ヒートポンプ装置の低圧側の圧力の変化量は比較的小さい。そのため、冷凍サイクルの状態の変化を判断するための根拠として、ヒートポンプ装置の低圧側の圧力の変化量を用いることは好ましくない。しかしながら、本発明に従った衣類乾燥装置の構成によれば、物理量検知部がヒートポンプ装置の高圧側に配置されていることにより、乾燥用空気の状態によらずに、ヒートポンプ装置の冷凍サイクルの状態変化を冷媒圧力から比較的容易に推測することができる。そのため、より小さいエネルギーで被乾燥対象物を乾燥することができる。
【0026】
本発明に従った衣類乾燥装置において、空気循環経路の所定の箇所を流通する空気の温度は、第1の部分のうちの乾燥室の入口を流通する空気の温度であることが好ましい。
【0027】
乾燥室の入口は、空気循環経路と乾燥室との接続部分の近傍であるため、物理量検知部を容易に取り付けることができる。また、乾燥室の入口を含む第1の部分では、空気循環経路を流通する空気のうち、被乾燥対象物が受け取る前の熱量を有する空気が流通している。そのため、この構成によれば、乾燥用空気の状態変化に基づいて、圧縮機の圧縮能力を変化させることができる。つまり、乾燥時に被乾燥対象物が必要とする熱量に応じて、圧縮機の圧縮能力を変化させることが可能である。
【0028】
本発明に従った衣類乾燥装置において、空気循環経路は閉空間であることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、閉空間である空気循環経路を流通する乾燥用空気とヒートポンプ装置とのエネルギーバランスを被乾燥対象物の乾燥時に最適に維持することができる。また、この構成によれば、乾燥用空気を当該衣類乾燥装置の外部へ排出することがないため、無駄なエネルギー消費を抑制するとともに、当該衣類乾燥装置の周辺のカビの発生等を防止することができる。
【0030】
本発明に従った衣類乾燥装置において、制御部は、物理量の単位時間あたりの変化量を算出することが好ましい。また、制御部は、当該変化量に基づいて予め設定された目標の数値範囲に物理量の次回の単位時間あたりの変化量が収まるような圧縮機の圧縮能力を設定することが好ましい。さらに、制御部は、乾燥行程の初期よりも後においては、乾燥行程の初期において最後に設定された圧縮能力にて圧縮機が駆動するように圧縮能力可変部を制御することが好ましい。
【0031】
この構成によれば、当該衣類乾燥装置において、乾燥に係るエネルギーが適度にバランスされた状態が乾燥開始後から終了まで続けられることにより、エネルギーの消費量をより少なくすることが可能である。
【0032】
本発明に従った衣類乾燥装置において、制御部は、物理量の単位時間あたりの変化量を算出することが好ましい。また、制御部は、当該変化量に基づいて予め設定された目標の数値範囲に物理量の次回の単位時間あたりの変化量が収まるような圧縮機の圧縮能力を設定することが好ましい。乾燥行程の初期において最初に設定される圧縮能力は、少なくとも物理量検知部によって検出された値に応じて設定されるものであることが好ましい。
【0033】
この構成によれば、当該衣類乾燥装置において、乾燥に係るエネルギーが、乾燥行程の開始時からバランスされた状態であるため、乾燥行程の全体に消費されるエネルギーをより少なくすることが可能である。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、乾燥行程の初期において圧縮機の圧縮能力を適切に変化させることにより、発生させた熱量を放出することなく、乾燥行程の比較的早い段階からエネルギーの消費を抑制することが可能な衣類乾燥装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に従った衣類乾燥装置の一例であるドラム式洗濯乾燥機の構成を示す概略図である。
【図2】物理量検知部によって検知される温度または圧力の乾燥時間に対する推移と、検知される温度または圧力に基づいて設定される目標とする推移との概念を示すグラフである。
【図3】本発明に従った衣類乾燥装置において、ヒートポンプ装置の所定の箇所の温度としての圧縮機の吐出部の温度と乾燥時間との関係を圧縮機の回転数ごとに示すグラフである。
【図4】本発明に従った衣類乾燥装置の一例であるドラム式洗濯乾燥機が20℃65%RHの環境下に設置される場合に、乾燥行程が開始されてから5分経過後の圧縮機の吐出部の温度の上昇値、総乾燥行程時間、および、消費電力を圧縮機の回転数ごとに示す表である。
【図5】本発明に従った衣類乾燥装置の一例であるドラム式洗濯乾燥機が10℃65%RHの環境下に設置される場合に、乾燥行程が開始されてから5分経過後の圧縮機の吐出部の温度の上昇値、総乾燥行程時間、および、消費電力を圧縮機の回転数ごとに示す表である。
【図6】本発明に従った衣類乾燥装置の一例であるドラム式洗濯乾燥機が、20℃65%RHの環境下に設置される場合と、10℃65%RHの環境下に設置される場合とにおいて、乾燥行程が開始されてから5分経過後の圧縮機の吐出部の温度の上昇値と消費電力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1に、本発明に従った衣類乾燥装置の一例であるドラム式洗濯乾燥機100を示す。図1に示すように、ドラム式洗濯乾燥機100は、外箱1を備えている。外箱1は、ドラム式洗濯乾燥機100の本体の外形を形成している。外箱1は略直方体形状を有している。また、ドラム式洗濯乾燥機100は水槽2と回転ドラム3と駆動部としてモータ4とを備えている。
【0038】
回転ドラム3は、水平方向または水平方向から傾斜した方向に延びる回転軸線を中心に回転する。回転ドラム3の材質としては、ステンレス鋼板が一般的に用いられている。回転ドラム3の周壁3aと底部3bには、給水、排水および通気のための複数の小孔(図示せず)が形成されている。周壁3aは、回転ドラム3のうちの筒状の部分である。ドラム式洗濯乾燥機100では、周壁3aは略円筒形状を有している。また、周壁3aは、回転軸線が延びる方向と平行な方向に延びている。
【0039】
周壁3aには、複数のバッフル(図示せず)が配置されている。バッフルは、回転軸線と略平行に延びている。また、バッフルは、回転軸線を中心とする円の半径方向の内方に向かって周壁3aから突出している。
【0040】
水槽2は、有底筒形状を有している。回転ドラム3は、水槽2の内部の空間に収容されている。回転ドラム3の開口部の縁の外側には、図示しない液体バランサが取り付けられている。
【0041】
回転ドラム3は、被乾燥対象物としての洗濯物5を収納する。回転ドラム3の底部3bの外側面には、駆動軸41が固定されている。モータ4は、水槽2の底部2bの外側面に取り付けられている。モータ4は、駆動軸41に連結されている。
【0042】
ドラム式洗濯乾燥機100は、圧縮機7と凝縮器8と蒸発器10と膨張弁としての絞り部9とを備えたヒートポンプ装置13を熱源として利用する衣類乾燥装置である。圧縮機7は、冷媒を圧縮して冷媒の温度を上昇させる。凝縮器8は、圧縮機7によって圧縮された冷媒と空気とを熱交換させることによって空気を加熱させる。絞り部9は、空気を加熱させた冷媒の圧力を減圧する。蒸発器10は、減圧された冷媒と空気とを熱交換させることによって空気を冷却させる。また、ヒートポンプ装置13は、冷媒配管14を備えている。冷媒配管14は、圧縮機7、凝縮器8、絞り部9、および、蒸発器10の順に冷媒が循環するように、圧縮機7と凝縮器8と絞り部9と蒸発器10とを連結する。
【0043】
ドラム式洗濯乾燥機100は、乾燥室32と送風機11と空気循環経路18と圧縮能力可変部15とサーミスタ16と制御部20とを備えている。回転ドラム3の内部の空間が乾燥室32として機能する。また、乾燥室32には、凝縮器8で加熱された空気が供給される。送風機11は、凝縮器8で加熱された空気を乾燥室32へ送風する。空気循環経路18は、第1の部分としての往路12と第2の部分としての復路6を有している。往路12は、凝縮器8で加熱された空気が乾燥室32へ供給されるように凝縮器8と乾燥室32との間に配置されている。復路6は、乾燥室32にて洗濯物5の乾燥に利用された空気が蒸発器10に向かって流れるように乾燥室32と蒸発器10との間に配置されている。なお、ドラム式洗濯乾燥機100において、空気循環経路18は閉空間である。
【0044】
圧縮能力可変部15は、圧縮機7の駆動部(図示せず)を駆動させる。圧縮能力可変部15は、駆動部を駆動させるための電圧を制御するインバータ回路等から構成されている。物理量検知部は、ヒートポンプ装置13の所定の箇所の温度として、圧縮機7の吐出部、凝縮器8の中間部、または、絞り部9のいずれかの温度を検知する。ドラム式洗濯乾燥機100は、圧縮機7の吐出部を検知する物理量検知部の一例としてサーミスタ16を備えている。サーミスタ16は、冷媒配管14の表面温度として、圧縮機7の吐出部の温度を検知する。
【0045】
凝縮器8と蒸発器10とは、フィンチューブ型の熱交換器である。ヒートポンプ装置13の内部では、蒸発器10と凝縮器8とをこの順序で乾燥用空気が流れる。
【0046】
ドラム式洗濯乾燥機100において、算出部21は、サーミスタ16によって検知された圧縮機7の吐出部の温度の単位時間あたりの変化量を算出する。例えば算出部21は、図示しないタイマの機能を有している。制御部20は、サーミスタ16によって検知された圧縮機7の吐出部の温度の単位時間あたりの変化量に基づき、圧縮機7の圧縮能力を変化させるように圧縮能力可変部15を制御する。
【0047】
以上にように構成されたドラム式洗濯乾燥機100の乾燥動作を説明する。モータ4が駆動されることによって回転ドラム3が回転されると共に、送風機11とヒートポンプ装置13との駆動が開始される。乾燥用空気は、送風機11が発生させる気流により、白抜きの矢印のように空気循環経路18を流れる。なお、図1にて示す白抜きの矢印は、気流が流れる方向を概略的に示すものであり、気流の速度または規模を示すものではない。
【0048】
送風機11が発生させた気流により、乾燥室32に流入した空気は、乾燥室32で撹拌される洗濯物5から水分を得て、ヒートポンプ装置13へ向かって復路6を流通する。復路6からヒートポンプ装置13へ流入した空気は、蒸発器10で露点以下に除湿される。除湿された後の空気は、凝縮器8で加熱されて高温化且つ低湿度化され、乾燥用空気として再び回転ドラム3に流入する。このような空気の流れが繰り返されることにより、洗濯物5の乾燥が進行する。
【0049】
次に、ヒートポンプ装置13の冷凍サイクルと乾燥用空気との熱交換について説明する。圧縮機7によって高温化且つ高圧化された気体状態の冷媒(R134a)は、凝縮器8へ送られる。凝縮器8において、冷媒の熱量が乾燥用空気へ放熱されることにより、冷媒の液化が進行する。凝縮器8を通過した冷媒は、絞り部9で減圧される。絞り部9において、減圧と流量が制御された冷媒は、熱量を放出して、低温且つ低圧の液体に変化する。蒸発器10では、乾燥室32からヒートポンプ装置13に戻ってきた空気から吸熱することにより、冷媒のガス化が進行する。
【0050】
ここで、乾燥行程でのエネルギーの授受について考える。圧縮機7が駆動することによって冷媒を循環させることにより、凝縮器8で温熱が作り出され、且つ、蒸発器10で冷熱が作り出される。これら凝縮器8と蒸発器10とで作り出された熱エネルギーが洗濯物5に与えられる。ただし、圧縮機7の駆動によって作り出されたエネルギーのすべてが洗濯物5に与えられるわけではない。凝縮器8と蒸発器10とで作り出された熱エネルギーの一部は、洗濯物5の乾燥に使用されず、外箱1、ドラム式洗濯乾燥機100のその他の構成部品、もしくは、周辺空気が温められることに消費される。洗濯物5の乾燥に使用されないエネルギーと、洗濯物5に与えられることによって洗濯物5の乾燥に使われるエネルギーと、圧縮機7の駆動によって作り出されるエネルギーとのバランスは、洗濯物5の状態またはドラム式洗濯乾燥機100が設置される周囲の環境条件等によって変化する。
【0051】
これら乾燥に使用されないエネルギーと、乾燥に使われるエネルギーと、作り出されるエネルギーとのバランスを改善するためには、何らかの手段によって乾燥用空気の熱量を制御することが好ましい。
【0052】
ドラム式洗濯乾燥機100においては、制御部20は、乾燥行程の初期において、サーミスタ16によって検知された値の単位時間あたりの変化量に基づき、圧縮機7の圧縮能力を変化させるように圧縮能力可変部15を制御する。より詳細には、ドラム式洗濯乾燥機100において、算出部21によって算出された単位時間あたりの物理量の変化量に基づき、圧縮機7の圧縮能力が予め設定されている。制御部20は、物理量の次回の単位時間あたりの変化量が目標の数値範囲に収まるような圧縮機7の圧縮能力を設定する。さらに、制御部20は、設定された圧縮能力にて圧縮機7が作動するように、圧縮能力可変部15を制御する。このようにして、ドラム式洗濯乾燥機100は、乾燥行程の初期において、圧縮機7の駆動によって作り出されるエネルギーの量を調整することができる。
【0053】
サーミスタ16によって検知される値の単位時間あたりの変化量は、周囲環境条件または洗濯物5の状態によってそれぞれ異なる。例えば、圧縮機7の圧縮能力が一定である場合に、周囲環境条件のうちの周囲温度が比較的高いときには、単位時間あたりの変化量が大きい。周囲温度が比較的低いときには、単位時間あたりの変化量は小さい。また、洗濯物5の容量が大きいときには単位時間あたりの変化量は比較的小さく、洗濯物5の容量が小さいときには単位時間あたりの変化量は比較的大きい。
【0054】
ドラム式洗濯乾燥機100は、圧縮機7の圧縮能力を、検知される物理量の単位時間あたりの変化量が目標の数値範囲よりも大きい場合に減少させ、且つ、目標の数値範囲よりも小さい場合に増加させる。このようにして、検知される物理量の単位時間あたりの変化量と乾燥時間との関係を例えば図2中の真ん中の曲線のように推移させる。
【0055】
図3は、ドラム式洗濯乾燥機100において、ヒートポンプ装置13の所定の箇所の温度としての圧縮機7の吐出部の温度と、乾燥時間との関係を圧縮機7の回転数ごとに示すグラフである。圧縮機7の回転数が2590rpmである場合は、圧縮機7の駆動によって作り出される熱エネルギーが比較的大きい。そのため、圧縮機7の回転数が2590rpmである場合は、圧縮機7の回転数が2150または2400rpmである場合に比べて、各乾燥時間において比較的高い温度が検知される。一方、圧縮機7の回転数が2150rpmである場合は、圧縮機7の駆動によって作り出される熱エネルギーが比較的小さいため、各乾燥時間において比較的低い温度が検知される。
【0056】
図4は、ドラム式洗濯乾燥機100が20℃65%RHの環境下に設置される場合に、乾燥行程が開始されてから5分経過後の圧縮機7の吐出部の温度の上昇値、総乾燥行程時間、および、消費電力を圧縮機7の回転数ごとに示す表である。図4に示すように、圧縮機7の回転数が2400rpmである場合は、圧縮機7の回転数が2590rpmである場合に比べて総乾燥行程時間が長いにもかかわらず、表中において消費電力が最も小さい。一方、圧縮機7の回転数が2590rpmである場合は、表中において総乾燥行程時間が最も短いにもかかわらず、表中において消費電力が最も大きい。
【0057】
また、図5は、ドラム式洗濯乾燥機100が10℃65%RHの環境下に設置される場合に、乾燥行程が開始されてから5分経過後の圧縮機7の吐出部の温度の上昇値、総乾燥行程時間、および、消費電力を圧縮機7の回転数ごとに示す表である。図5に示すように、圧縮機7の回転数が2590rpmである場合は、圧縮機7の回転数が2800rpmである場合に比べて総乾燥行程時間が長いにもかかわらず、表中において消費電力が最も小さい。一方、圧縮機7の回転数が2800rpmである場合は、表中において総乾燥行程時間が最も短いにもかかわらず、表中において消費電力が最も大きい。
【0058】
なお、総乾燥行程時間は、乾燥行程が開始されてから終了されるまでの時間のことである。図4および図5に示す例では、乾燥行程は、乾燥度が100.1〜100.5%であることが判定される場合に終了されている。乾燥度とは、ドラム式洗濯乾燥機100が設置される環境温度・湿度と乾燥とに関して平衡状態にある洗濯物5の初期質量を乾燥行程中の洗濯物5の質量で除した値に、100を掛けた値(%)で表される。
【0059】
図6は、図4の表の値と図5の表の値とに基づいてプロップされたグラフである。詳細には、ドラム式洗濯乾燥機100が、20℃65%RHの環境下に設置される場合と、10℃65%RHの環境下に設置される場合とにおいて、乾燥行程が開始されてから5分経過後の圧縮機7の吐出部の温度の上昇値と消費電力との関係を示す表である。図6に示すように、単位時間ごとに物理量の最適な変化値が検知されるように圧縮機7の圧縮能力を調整することにより、ドラム式洗濯乾燥機100がどのような環境下に設置されたとしても、消費電力を抑制することが可能である。
【0060】
例えば、図4に示すように圧縮機7の回転数が2400rpmよりも大きい場合と、図5に示すように圧縮機7の回転数が2590rpmよりも大きい場合とには、圧縮機7の駆動によって作り出されるエネルギーが比較的大きいことによって、洗濯物5に与えられる熱エネルギーが比較的大きくなる。そのため、総乾燥行程時間を短縮させることができる。しかしながら、これらの場合には、洗濯物5の乾燥に使用されないエネルギーが増大することにより、洗濯物5に与えられる熱エネルギーと作り出されるエネルギーとの比率が小さくなる。このように、圧縮機7の回転数が所望の回転数よりも大きい場合には、エネルギーの消費を効果的に抑制することはできない。
【0061】
一方、図4に示すように圧縮機7の回転数が2400rpmよりも小さい場合と、図5に示すように圧縮機7の回転数が2590rpmよりも小さい場合とには、総乾燥行程時間が長くなる。総乾燥行程時間が長期化することは、ドラム式洗濯乾燥機100の利便性が高いとはいえない。総乾燥行程時間が長くなることにより、例えば、回転ドラム3を回転させるモータ4や送風機11等の駆動に必要な電力を含めた全体の消費エネルギーが増大する。このように、圧縮機7の回転数が所望の回転数よりも小さい場合にも、エネルギーの消費を効果的に抑制することはできない。
【0062】
以下では、例えば、20℃65%RHの環境に設置されたドラム式洗濯乾燥機100において、乾燥質量が6kgである洗濯物5の乾燥行程を行う場合に、サーミスタ16によって検知される温度の単位時間あたりの変化量に基づいて圧縮機7の圧縮能力を変化させる制御について説明する。
【0063】
まず、乾燥行程の初期において最初に設定される圧縮機7の回転数は、サーミスタ16(図1参照)によって検出された値に応じて設定される。例えば、サーミスタ16によって検知される吐出部の温度が23℃である場合には、圧縮機7の回転数が2400rpmに設定される。乾燥行程の初期において最初に設定される回転数の値は、少なくとも検出された物理量に対応するように予め実験等によって定められた値であって、例えば制御部20に記憶されている。検出される吐出部の温度が23℃よりも大きい場合には、設定された圧縮機7の回転数は2400rpmよりも小さい。検出される吐出部の温度が23℃よりも小さい場合には、設定された圧縮機7の回転数は2400rpmよりも大きい。検出される吐出部の温度と、設定された回転数の値との対応関係は、適宜設定されていればよい。
【0064】
また、乾燥行程の初期において最初に設定される圧縮機7の回転数は、サーミスタ16(図1参照)によって検出された値と、その他の物理量とに応じて設定されていてもよい。その他の物理量は、例えば洗濯物5の重量である。洗濯物5の重量が大きい程、設定される圧縮機7の回転数は大きい。洗濯物5の重量が小さい程、設定される圧縮機7の回転数は小さい。ところで、ドラム式洗濯乾燥機100は、洗濯行程等の作動前に、回転ドラム3を回転させることにより、洗濯物5の重量を判定することができる。例えば、作動開始時の回転ドラム3の回転のしやすさと、回転に対するブレーキの効きやすさとに基づいて、洗濯物5の重量が判定される。このような判定を利用することにより、サーミスタ16(図1参照)によって検出された値と、洗濯物5の重量とに応じて、乾燥行程の初期において圧縮機7の最初の回転数を設定することができる。
【0065】
乾燥行程が開始された後には、制御部20の算出部21は、吐出部の温度の単位時間あたりの変化量を算出する。また、算出した変化量と、当該変化量に基づいて予め設定された目標の数値範囲とを比較する。目標の数値範囲は、例えば、5分当たりの温度の変化量が10℃±0.5℃である。なお±0.5℃は、測定誤差と実験誤差とを含んだ値である。目標の数値範囲は、予め実験等によって定められた上限値と下限値との間の範囲であって、例えば制御部20に記憶されている。
【0066】
例えば乾燥行程が開始されてから5分経過した後に、サーミスタ16によって検出された温度の変化値が9.5℃以上10.5℃以内の範囲である場合には、乾燥行程の初期に設定された2400rpmの回転数のままで圧縮機7の駆動が継続される。一方、同時間にサーミスタ16によって検出された温度の変化値が10.5℃よりも大きい場合には、制御部20は、圧縮機7の圧縮能力を低下させる。この場合には、例えば温度の変化値と10.0℃との温度差1.0℃ごとに100rpmの回転数が現在の回転数から低下される。例えば、現在の回転数が2400rpmであって、温度の変化値が12.5℃である場合には、圧縮機7の回転数が2200rpmに低下される。また一方、同時間にサーミスタ16によって検出された温度の変化値が9.5℃よりも小さい場合には、制御部20は、圧縮機7の圧縮能力を増加させる。この場合には、例えば10.0℃と温度の変化値との温度差1.0℃ごとに100rpmの回転数が増加される。
【0067】
制御部20は、次回の単位時間あたりの温度の変化量についても同様に算出する。さらに、制御部20は、乾燥行程開始後の5分から10分の5分間において、目標の数値範囲に温度の変化量が収まっている場合は圧縮機7の回転数を変化させず、且つ、目標の数値範囲に温度の変化量が収まっていない場合は、次回の単位時間あたりの温度の変化量が目標の数値範囲に収まるように、圧縮機7の回転数を変化させる。これら変化量の算出と目標の数値範囲との比較等の制御は、乾燥行程の初期の間、例えば30分間(つまり合計6回)繰り返される。
【0068】
これら変化量の算出と目標の数値範囲との比較の制御は、乾燥行程が開始されてから、温度の変化または後述する圧力の変化が顕著である期間において実施されることが好ましい。例えば図3に示すように、乾燥行程の開始当初においては、乾燥時間に対して温度が比較的大きく変化する。しかしながら、乾燥行程が開始されてから例えば10分過ぎには、乾燥時間に対する温度の変化量が次第に小さくなり始める。乾燥行程の開始当初においては、外箱1(図1参照)等のドラム式洗濯乾燥機100の各部品の吸熱量と放熱量とがバランスされていないため、このように大きな変化量が表れる。すなわち、乾燥行程の初期とは、温度の変化または圧力の変化が顕著である期間であるといえる。このように、これら変化量の算出と目標の数値範囲との比較の制御は、乾燥行程が開始されてから、例えば1分間あたりの温度の変化量が所定の値以上である場合に実施されることが好ましい。
【0069】
なお、目標の数値範囲は、各5分間で設定され、つまり、合計6回設定される。さらに、制御部20は、乾燥行程の初期よりも後においては、乾燥行程の初期において最後に設定された回転数にて圧縮機7が駆動するように圧縮能力可変部15を制御する。つまり、6回目に設定された回転数が例えば2300rpmである場合には、乾燥行程の終了まで、2300rpmの回転数のままで圧縮機7の駆動が継続される。
【0070】
なお、予め設定された目標の数値範囲は、洗濯物5の重量に応じてそれぞれ異なっていてもよい。つまり、目標の数値範囲は、吐出部の温度の単位時間あたりの変化量と、洗濯物5の重量とに基づいて設定されていてもよい。
【0071】
続いて、例えば、20℃65%RHの環境に設置されたドラム式洗濯乾燥機100において、乾燥質量が6kgである洗濯物5の乾燥行程を行う場合に、圧力検知手段によって検知される圧力の単位時間あたりの変化量に基づき、圧縮機7の圧縮能力を変化させる制御について説明する。なお、物理量検知部の一例としての圧力検知手段は、ヒートポンプ装置13の高圧側の冷媒圧力を検知または測定する。圧力検知手段は、例えばヒートポンプ装置13の高圧側に配置されている。
【0072】
まず、乾燥行程の初期において最初に設定される圧縮機7の回転数は、サーミスタ16(図1参照)によって検出された値に応じて、例えば2400rpmに設定される。
【0073】
乾燥行程が開始された後には、制御部20の算出部21は、圧力検知手段によって検知された圧力の単位時間あたりの変化量を算出する。また、算出した変化量と、当該変化量に基づいて予め設定された目標の数値範囲とを比較する。目標の数値範囲は、例えば、5分当たりの温度の変化量が0.15MPa±0.01MPaである。なお±0.01MPaは、測定誤差と実験誤差とを含んだ値である。圧力の単位時間あたりの変化量に基づいて設定された目標の数値範囲は、予め実験等によって定められた上限値と下限値との間の範囲であって、例えば制御部20に記憶されている。
【0074】
例えば乾燥行程が開始されてから5分経過した後に、圧力検知手段によって検出された圧力の変化値が0.14MPa以上0.16MPa以内の範囲である場合には、乾燥行程の初期に設定された2400rpmの回転数のままで圧縮機7の駆動が継続される。一方、同時間に検出された圧力の変化値が0.16MPaよりも大きい場合には、制御部20は、圧縮機7の圧縮能力を低下させる。この場合には、例えば圧力の変化値と0.15MPaとの圧力差0.01MPaごとに50rpmの回転数が現在の回転数から低下される。例えば、現在の回転数が2400rpmであって、圧力の変化値が0.17MPaである場合には、圧縮機7の回転数が2300rpmに低下される。また一方、同時間に検出された圧力の変化値が0.14MPaよりも小さい場合には、制御部20は、圧縮機7の圧縮能力を増加させる。この場合には、例えば0.15MPaと温度の変化値との圧力差0.01MPaごとに50rpmの回転数が増加される。
【0075】
制御部20は、次回の単位時間あたりの圧力の変化量についても同様に算出する。さらに、制御部20は、乾燥行程開始後の5分から10分の5分間において、目標の数値範囲に圧力の変化量が収まっている場合は圧縮機7の回転数を変化させず、且つ、目標の数値範囲に圧力の変化量が収まっていない場合は、次回の単位時間あたりの圧力の変化量が目標の数値範囲に収まるように、圧縮機7の回転数を変化させる。これら変化量の算出と目標の数値範囲との比較等の制御は、乾燥行程の初期の間、例えば30分間(6回)繰り返される。また、圧力の単位時間あたりの変化量に基づいて設定された目標の数値範囲も、各5分間で設定され、つまり、6回設定される。
【0076】
なお、圧力についての目標の数値範囲も、洗濯物5の重量に応じてそれぞれ異なっていてもよい。つまり、目標の数値範囲は、圧力検知手段によって検知された圧力の単位時間あたりの変化量と、洗濯物5の重量とに基づいて設定されていてもよい。
【0077】
なお、ドラム式洗濯乾燥機100において、ドラム式洗濯乾燥機100の運転に必要な制御についての判定は、制御部20によって判断されている。また、制御部20は、ドラム式洗濯乾燥機100の運転に必要なデータ等を記憶している。
【0078】
以上のように、ドラム式洗濯乾燥機100において、サーミスタ16は、ヒートポンプ装置13の所定の箇所の温度として圧縮機7の吐出部の温度を検知する。制御部20は、圧縮機7の圧縮能力を変化させるように圧縮能力可変部15を制御する。また、制御部20は、乾燥行程の初期において、物理量の単位時間あたりの変化量が予め定められた数値範囲に収まるように圧縮能力可変部15を制御する。
【0079】
ドラム式洗濯乾燥機100によれば、乾燥行程の初期において、圧縮機7の吐出部の温度の単位時間あたりの変化量が予め定められた数値範囲に収まるように、制御部20は圧縮機7の圧縮能力を変化させる。このようにすることにより、乾燥行程の初期において、ドラム式洗濯乾燥機100の外部に漏出するエネルギーと、洗濯物5とヒートポンプ装置13とのエネルギー交換量と、圧縮機7に加えるエネルギーとがバランスした状態を維持することができる。
【0080】
このようにすることにより、乾燥行程の初期において圧縮機7の圧縮能力を適切に変化させることにより、発生させた熱量を放出することなく、乾燥行程の比較的早い段階からエネルギーの消費を抑制することが可能なドラム式洗濯乾燥機100を提供することができる。
【0081】
なお、ドラム式洗濯乾燥機100の物理量検知部は、冷媒配管14の表面温度として圧縮機7の吐出部の温度を検知する代わりに、凝縮器8の中間部、または、絞り部9の温度を検知もしくは測定するものであってもよい。
【0082】
さらに、ドラム式洗濯乾燥機100の物理量検知部は、空気循環経路18の所定の箇所を流通する空気の温度を測定または検知するものであってもよい。空気循環経路18の所定の箇所の一例は、往路12のうちの乾燥室32の入口33である。乾燥室32の入口33は、水槽2の底部2bに形成されている。これらのように、ドラム式洗濯乾燥機100の物理量検知部は、冷凍サイクルの高圧側の物理量として、乾燥室32に流入する前の空気の温度や高圧側の冷媒配管14の表面温度または冷媒の圧力を検知している。
【0083】
ドラム式洗濯乾燥機100において、圧縮機7の圧縮能力を可変させるためには、圧縮機7の吐出部の温度、凝縮器8の中間部、絞り部9の前の冷媒配管14の温度、もしくは、その他の冷媒配管14の温度の単位時間あたりの変化量が用いられていてもよい。また、圧縮機7の圧縮能力を可変させるために、冷媒配管14内の冷媒の圧力の単位時間あたりの変化量が用いられていてもよく、乾燥室32の入口33を流通する空気の温度の単位時間あたりの変化量が用いられていてもよい。なお、これらの温度の単位時間あたりの変化量は、圧縮機7の吐出部の温度が用いられる場合と同様に、例えば5分間当たり10℃±0.5℃であってもよく、または他の変化量であってもよい。
【0084】
なお、圧縮機7の圧縮能力を変化させる方法または手段としては、圧縮機7の回転数を変化させることに限定されず、他の方法または手段を用いて圧縮機7の圧縮能力を変化させることであってもよい。例えば、圧縮機7の圧縮部の容積を次第に変化させることにより、圧縮機7の圧縮能力を次第に変化させることができる。圧縮機7として複数の圧縮機をヒートポンプ装置13が備えている場合に、いずれかの圧縮機の圧縮部のシリンダを停止すること、または、いずれかの圧縮機に冷媒が流れないように冷媒の流路を構成すること等により、圧縮能力を低下させることができる。
【0085】
ドラム式洗濯乾燥機100において、ヒートポンプ装置13の所定の箇所の温度は、圧縮機7の吐出部、凝縮器8の中間部、または、絞り部9のいずれかの温度である。
【0086】
乾燥行程において、圧縮機7の吐出部、凝縮器8の中間部、または、絞り部9のいずれかの温度変化は、例えば蒸発器10の所定の箇所の温度変化に比べて大きい。すなわち、ドラム式洗濯乾燥機100の構成によれば、乾燥用空気の状態によらずに、圧縮機7の吐出部、凝縮器8の中間部、または、絞り部9のいずれかの温度を検知することにより、ヒートポンプ装置13の冷凍サイクルの状態変化を比較的容易に推測ことができる。そのため、ヒートポンプ装置13の冷凍サイクルの状態変化に基づき、ヒートポンプ装置13を含むドラム式洗濯乾燥機100の全体のエネルギーバランスを洗濯物5の乾燥時に最適に維持することが可能である。これにより、より小さいエネルギーで洗濯物5を乾燥することができる。
【0087】
また、ヒートポンプ装置13の所定の箇所の冷媒圧力を検知するようにヒートポンプ装置13の高圧側に圧力検知手段が配置されている場合には、乾燥用空気の状態によらずに、ヒートポンプ装置13の冷凍サイクルの状態変化を冷媒圧力から比較的容易に推測ことができる。そのため、より小さいエネルギーで洗濯物5を乾燥することができる。
【0088】
ドラム式洗濯乾燥機100において、空気循環経路18の所定の箇所を流通する空気の温度として、乾燥室32の入口33を流通する空気の温度をサーミスタ16が検知する。
【0089】
乾燥室32の入口33は、空気循環経路18と乾燥室32との接続部分の近傍であるため、サーミスタ16を容易に取り付けることができる。また、乾燥室32の入口33を含む往路12では、空気循環経路18を流通する空気のうち、洗濯物5が受け取る前の熱量を有する空気が流通している。そのため、この構成によれば、乾燥用空気の状態変化に基づいて、圧縮機7の圧縮能力を変化させることができる。つまり、乾燥時に洗濯物5が必要とする熱量に応じて、圧縮機7の圧縮能力を変化させることが可能である。
【0090】
ドラム式洗濯乾燥機100においては、閉空間である空気循環経路18を流通する乾燥用空気とヒートポンプ装置13とのエネルギーバランスを洗濯物5の乾燥時に最適に維持することができる。また、空気循環経路18が閉空間であるため、乾燥用空気をドラム式洗濯乾燥機100の外部へ排出することがないため、無駄なエネルギー消費を抑制するとともに、ドラム式洗濯乾燥機100の周辺のカビの発生等を防止することができる。
【0091】
ドラム式洗濯乾燥機100において、制御部20は、物理量の単位時間あたりの変化量を算出する。また、制御部20は、当該変化量に基づいて予め設定された目標の数値範囲に物理量の次回の単位時間あたりの変化量が収まるような圧縮機7の圧縮能力を設定する。さらに、制御部20は、乾燥行程の初期よりも後においては、乾燥行程の初期において最後に設定された圧縮能力にて圧縮機7が駆動するように圧縮能力可変部15を制御する。
【0092】
この構成によれば、ドラム式洗濯乾燥機100において、乾燥に係るエネルギーが適度にバランスされた状態が乾燥開始後から終了まで続けられることにより、エネルギーの消費量をより少なくすることが可能である。
【0093】
ドラム式洗濯乾燥機100において、制御部20は、物理量の単位時間あたりの変化量を算出する。また、制御部20は、当該変化量に基づいて予め設定された目標の数値範囲に物理量の次回の単位時間あたりの変化量が収まるような圧縮機7の圧縮能力を設定する。乾燥行程の初期において最初に設定される圧縮能力は、物理量検知部によって検出された値に応じて設定されるものである。
【0094】
この構成によれば、ドラム式洗濯乾燥機100において、乾燥に係るエネルギーが、乾燥行程の開始時からバランスされた状態であるため、乾燥行程の全体に消費されるエネルギーをより少なくすることが可能である。
【0095】
なお、ドラム式洗濯乾燥機100において制御部20が配置される位置は、特に限定されない。図1に示す制御部20は、概略的に示されるものであって、上述のように所望の機能を奏するものであればよい。
【0096】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【符号の説明】
【0097】
6:復路、7:圧縮機、8:凝縮器、9:絞り部、10:蒸発器、11:送風機、12:往路、13:ヒートポンプ装置、14:冷媒配管、15:圧縮能力可変部、16:サーミスタ、18:空気循環経路、20:制御部、32:乾燥室、100:ドラム式洗濯乾燥機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して冷媒の温度を上昇させる圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された冷媒と空気とを熱交換させることによって空気を加熱させる凝縮器と、空気を加熱させた冷媒の圧力を減圧する絞り部と、減圧された冷媒と空気とを熱交換させることによって空気を冷却させる蒸発器と、前記圧縮機、前記凝縮器、前記絞り部、および、前記蒸発器の順に冷媒が循環するように、前記圧縮機と前記凝縮器と前記絞り部と前記蒸発器とを連結する冷媒配管と、を含むヒートポンプ装置と、
被乾燥対象物を収納し、前記凝縮器で加熱された空気が供給される乾燥室と、
前記凝縮器で加熱された空気を前記乾燥室へ送風する送風機と、
前記凝縮器で加熱された空気が前記乾燥室へ供給されるように前記凝縮器と前記乾燥室との間に配置された第1の部分と、前記乾燥室にて被乾燥対象物の乾燥に利用された空気が前記蒸発器に向かって流れるように前記乾燥室と前記蒸発器との間に配置された第2の部分と、を有する空気循環経路と、
前記圧縮機の圧縮能力を変化させる圧縮能力可変部と、
前記ヒートポンプ装置の所定の箇所の温度、冷媒の圧力、および、前記空気循環経路の所定の箇所を流通する空気の温度からなる群より選ばれた少なくとも一つの物理量を検知する物理量検知部と、
前記圧縮機の圧縮能力を変化させるように前記圧縮能力可変部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、乾燥行程の初期において、前記物理量の単位時間あたりの変化量が予め定められた数値範囲に収まるように前記圧縮能力可変部を制御する、衣類乾燥装置。
【請求項2】
前記ヒートポンプ装置の前記所定の箇所の温度は、前記圧縮機の吐出部、前記凝縮器の中間部、または、前記絞り部のいずれかの温度である、
請求項1に記載の衣類乾燥装置。
【請求項3】
前記物理量検知部は、前記ヒートポンプ装置の前記所定の箇所の冷媒圧力を検知するように、前記ヒートポンプ装置の高圧側に配置されている、
請求項1に記載の衣類乾燥装置。
【請求項4】
前記空気循環経路の所定の箇所を流通する空気の温度は、前記第1の部分のうちの前記乾燥室の入口を流通する空気の温度である、請求項1に記載の衣類乾燥装置。
【請求項5】
前記空気循環経路は閉空間である、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の衣類乾燥装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記物理量の単位時間あたりの変化量を算出し、当該変化量に基づいて予め設定された目標の数値範囲に前記物理量の次回の単位時間あたりの変化量が収まるような前記圧縮機の圧縮能力を設定し、且つ、乾燥行程の初期よりも後においては、乾燥行程の初期において最後に設定された前記圧縮能力にて前記圧縮機が駆動するように前記圧縮能力可変部を制御する、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の衣類乾燥装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記物理量の単位時間あたりの変化量を算出し、且つ、当該変化量に基づいて予め設定された目標の数値範囲に前記物理量の次回の単位時間あたりの変化量が収まるような前記圧縮機の圧縮能力を設定し、
乾燥行程の初期において最初に設定される前記圧縮能力は、少なくとも前記物理量検知部によって検出された値に応じて設定される、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の衣類乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−17639(P2013−17639A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153135(P2011−153135)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】