説明

衣類

【課題】着脱が容易にでき、しかも装着者の体型に合わせて連結帯部の長さを自由に調節できるブラジャーなどの衣類を提供する。
【解決手段】左右一対のカップ部2,2と、上記カップ部2,2の両側に配設され背部で連結される一対の連結帯部3,3とを備えたブラジャー1において、上記連結帯部3,3のそれぞれの先端に帯状の面ファスナー5,5を装着する。各面ファスナー5は、連結帯部3,3の外側を向く面にフック部52が形成され、内側を向く面に上記フック部52と係合可能なループ部53が形成される。そして、これら面ファスナー5,5同士を接合することにより連結帯部3,3を連結可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は衣類に関し、より詳細には、左右一対のカップ部と、このカップ部の両側に配設されて装着者の背部で連結される一対の連結帯部とを備えた衣類(たとえば、ブラジャー)の連結帯部の長さを自在に調節可能にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
女性用下着として胸の線の補正等に用いられるブラジャーは、図5に示すように、左右一対のカップa,aの両側に連結帯部b,bが配設されてなり、これら連結帯部b、bの先端には、該連結帯部b、bの先端同士をブラジャー装着者の背部(具体的には胸背部)で連結するための連結具cが取り付けられている。
【0003】
従来、このようなブラジャーの連結具cとしては、一方の連結帯部bの先端に鉤状のフックdを設け、他方の連結帯部bの先端には上記フックdと係合可能なホックアイeを設け、上記ホックアイeにフックdを引っ掛けることによって連結帯部b,bの先端同士を連結する構造が採用されている。
【0004】
ところで、このような連結具cは、ブラジャー装着者の体型変化(特に肥満)に対応できるように、通常は、ホックアイeを所定間隔で複数列(図示例では2列)配置しておき、体型に合わせてフックdを引っ掛けるホックアイeの列を選択できるように構成されているが、体型変化の程度が大きい場合には、このようなホックアイeの複数列化だけでは十分に対応できない場合がある。
【0005】
そのため、本願の出願人は、上記連結帯部b,bの先端同士間にブラジャーとは別体の部材(具体的には上記連結具cのフックdと係合可能なホックアイと、上記ホックアイeと係合可能なフックをそれぞれ備えた帯状の部材)を介在させることにより、上記連結帯部b,bの長さを実質的に延長させることを提案している(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−317309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の手法による連結帯部b,bの長さ調節には以下のような問題がある。
【0008】
すなわち、従来の構成では、ブラジャーのサイズを調節する際に連結具cのフックdをホックアイeに引っ掛けなければならないが、これらは通常小さな金具で構成され、また、ホックアイeは上下二段または三段に配置されている(図5では二段に配置されている)ことから、これら全てにフックdを引っ掛けるのは面倒である。特にサイズ調整具を用いる場合にはその手間が倍になる。
【0009】
また、連結帯部b,bのサイズ調節幅はホックアイeの配列数や配列間隔によって自ずと決まってしまうため、体型に合わせて連結帯部b,bの長さを自由に設定することができない。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、着脱が容易にでき、しかも装着者の体型に合わせて連結帯部の長さを自由に調節できるブラジャーなどの衣類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の衣類は、左右一対のカップ部と、上記カップ部の両側に配設され背部で連結される一対の連結帯部とを備えた衣類において、上記連結帯部のそれぞれの先端に帯状の面ファスナーが装着され、これら面ファスナーを接合することにより上記連結帯部が連結される構造を備えたことを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の衣類によれば、連結帯部の先端に連結帯部の連結具として帯状の面ファスナーが装着されている。そのため、衣類の着用/脱衣は、この面ファスナーの接合/剥離によって容易に行なうことができる。しかも、衣類の着用にあたっては、任意の位置で面ファスナーを接合できるので、連結帯部の長さをまた体型に合わせて自由に調節することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の衣類は、請求項1に記載の衣類において、上記面ファスナーは、シート状のベース部材を有し、このベース部材の一方の面にフック部が形成されるとともに、他方の面に上記フック部と係合可能なループ部が形成されてなり、この面ファスナーのループ部側の面が装着者の背部に対面するように上記一対の連結帯部のそれぞれの先端に装着されていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項2に記載の衣類によれば、一対の連結帯部のそれぞれの先端に、一方の面にフック部が形成され、他方の面にループ部が形成された面ファスナーが装着されているので、左右いずれの連結帯部が上になるように重ね合わせても面ファスナーが接合されるので、衣類を着用する際に面ファスナーの表裏を気にせずに衣類を着用できる。しかも、この面ファスナーのループ部側の面が装着者の背部に対面するようにされているので、着用時に面ファスナーのフック部が肌に接触することがなく、着用感が不快にならない。
【0015】
また、請求項3に記載の衣類は、請求項1または2に記載の衣類において、上記連結帯部の先端に装着される面ファスナーのうちの少なくとも一方の面ファスナーが、長さ調節用の切断しろを含んで長尺に設定されていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項3に記載の衣類によれば、連結帯部の先端に装着される面ファスナーのうちの少なくとも一方の面ファスナーが長さ調節用の切断しろを含んで長尺に設定されるので、装着者は自己の体型に合わせて適宜面ファスナーの余分な切断しろ部分を切断して使用できる。しかも、アンダーバストが太るなどして連結帯部の長さが短くなった場合には、左右の連結帯部の面ファスナーの間に、切断した面ファスナーの断片を接合することにより、連結帯部の長さを長くすることができるので、体型変化に対して柔軟に対応できる。
【0017】
また、請求項4に記載の衣類は、請求項3に記載の衣類において、上記長さ調節用の切断しろが設定された面ファスナーに、所定間隔で切断用の切り取り線が設定されていることを特徴とする。
【0018】
すなわち、請求項4に記載の衣類によれば、上記長さ調節用の切断しろに所定間隔で切断用の切り取り線が設定されていることから、この切り取り線を参照しながら切断することで長さの調節を容易に行なうことができる。なお、この切り取り線としては、たとえば、切り取り線の部分を地色とは異なる色で着色したり、切り取り線にそってミシン目をいれるなど、切り取り線の部分が容易に判別できるようにされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る衣類によれば、連結帯部の先端に連結帯部の連結具として帯状の面ファスナーが装着されているので、衣類の着用/脱衣は、この面ファスナーの接合/剥離によって容易に行なうことができる。しかも、衣類の着用にあたっては、任意の位置で面ファスナーを接合できるので、連結帯部の長さをまた体型に合わせて自由に調節することができる。
【0020】
また、面ファスナーとして、一方の面にフック部が形成され、他方の面にループ部が形成された面ファスナーを用いることにより、左右いずれの連結帯部が上になるように重ね合わせても面ファスナーが接合されるので、衣類の装着の際に面ファスナーの表裏を気にせずに着用が容易に行なえる。しかも、この面ファスナーのループ部側の面が装着者の背部に対面するようにされているので、着用時に面ファスナーのフック部が肌に接触することがなく、着用感が不快にならない
【0021】
さらに、連結帯部の先端に装着される面ファスナーのうちの少なくとも一方の面ファスナーが長さ調節用の切断しろを含んで長尺に設定されるので、装着者は自己の体型に合わせて適宜面ファスナーの余分な切断しろ部分を切断して使用できる。しかも、一旦切断した面ファスナーは、連結帯部の長さ調節に再利用できるので体型変化に対して柔軟に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を適用したブラジャーの一例を示す正面図である。図示のように、本発明に係るこのブラジャー1は、左右一対のカップ部2,2と、上記カップ部2,2の両側に配設され背部で連結される一対の連結帯部3,3と、上記連結帯部3,3の先端同士を連結する連結部4,4とを主要部として備えている。なお、図において符号6で示すのは、上記カップ部2,2の間隔を設定する正面パネルを示している。また、符号7はアジャスター8を備えた肩ひもを示している。
【0023】
ここで、カップ部2,2、連結帯部3,3、正面パネル5及び肩ひも6の構成は周知であるので説明を省略する。そこで、本発明における特徴である連結部4,4の構成について説明する。
【0024】
連結部4,4は、上記一対の連結帯部3,3のそれぞれの先端に配設され、該連結帯部3,3の先端を連結するための部材であって、本実施形態ではこの連結部4,4として図示のような略矩形の面ファスナー8,8が用いられる。
【0025】
ここで、この面ファスナー5,5としては、シート状のベース部材51を有し、このベース部材51の一方の面にフック部52が形成されるとともに、他方の面に上記フック部52と係合可能なループ部53が形成されたものが好適に用いられる(図2参照)。
【0026】
具体的には、上記ベース部材51としては、たとえばプラスチック等の樹脂材料で構成された柔軟性を有する薄板状の部材が好適に使用される。そして、このベース部材51の一方の面には多数のフック54,54,…が形成されている。このフック54は、後述するように、他方の連結帯部3の先端に配設される面ファスナー5のループ部53と係合可能な形態とされる。本実施形態では図2に示すように先端が鉤状の形状とされ、フック部52をループ部53に押し当てることによりこの鉤の部分がループ部53に引っ掛かり、また、フック部52を引き剥がすことによってこの鉤の部分がループ部53から剥離されるように構成されている。
【0027】
なお、このフック54はループ部53と係合可能な形状であれば、たとえば先端がきのこのかさ状に形成されたようなものであっても良く、具体的な形状は適宜変更可能である。
【0028】
一方、ループ部53は、上記ベース部材51の他方の面(フック部52とは反対の面)に多数の環状のループ55,55,…を形成することにより構成されている。このループは、本実施形態では図2に示すように極細の糸状の部材が環状に植設されてなる形態とされるが、他方の連結帯部3の先端に配設される面ファスナー5のフック部52と係合可能な形態であれば、たとえば先端がきのこのかさ状に形成されたようなものであっても良く、具体的な形状は適宜変更可能である。
【0029】
このように、本実施形態に示すブラジャー1においては、一方の面にフック部52が、他方の面にループ部53が形成された面ファスナー5が連結部4,4として用いられる。なお、この面ファスナー5におけるフック部52及びループ部53の具体的な形態は、上述したように適宜設計変更可能であるが、面ファスナー5の接合面に対して面方向(水平方向)に働く引っ張りに対して接合力が強い(面方向の引っ張りによって容易に剥離しない)ものが好適に使用される。
【0030】
そして、本実施形態では、この面ファスナー5は、そのループ部53の側の面が装着者の背部に対面するように上記一対の連結帯部3,3のそれぞれの先端に装着さる。つまり、ループ部53側が連結帯部3,3の内側(装着者の肌と接する側)に向くように取り付けられている。なお、この面ファスナー5の取り付けにあたっては連結帯部3に対して縫着によるのが好ましいが、面ファスナー5が脱落しない態様であれば接着等、他の方法によって取り付けることも可能である。
【0031】
また、この面ファスナー5は、上記連結帯部3,3の少なくともいずれか一方の側に取り付けられるものが長さ調節用の切断しろを含んで長尺に設定される。すなわち、本発明を適用したブラジャー1においては、連結帯部3,3の先端同士の連結が面ファスナー5,5の接合によって行なわれるので、予め、一方または双方の面ファスナー5,5を長尺(たとえば、数cmから十数cm程度)に設定しておき、装着者は自己の体型(アンダーバス)に合わせて適宜余分な部分(この余分な部分が切断しろを構成する)を切断して使用する(図3の符号5′は、切断した面ファスナー5の断片を示している)。
【0032】
また、この切断しろの長さは適宜設定可能であるが、長さ調節時の目安となるように、この切断しろが設定された面ファスナー5には、所定間隔で切断用の切り取り線が設定されるのが好ましい。なお、この切り取り線としては、特に図示しないが、たとえば、切り取り線の部分を面ファスナー5の地色とは異なる色で着色したり、あるいは、切り取り線にそってミシン目をいれるなど、切り取り線の部分が容易に判別できるように構成される。
【0033】
しかして、このように構成されたブラジャー1は、まず着用に先立って装着者の体型に合わせて面ファスナー5,5の切断しろ部分を予め切断し、その後に通常のブラジャーと同様の手順で着用する。その際、本発明では、ブラジャー1の連結部4,4が面ファスナー5,5で構成されているので、これら面ファスナー5,5を接合することによって連結帯部3,3の先端同士を連結する(図4参照)。
【0034】
そのため、本実施形態に示すブラジャー1では、ブラジャー1の着用/脱衣を面ファスナー5,5の接合/剥離によって容易に行なうことができ、しかも、面ファスナー5,5は任意の位置で接合できるので、連結帯部3,3の長さをまた体型に合わせて自由に調節することができる。
【0035】
また、面ファスナー5,5は、いずれも一方の面にフック部52が形成され、他方の面にループ部53が形成されているので、左右いずれの連結帯部3,3に設けられた面ファスナー5が上になっても接合ができるので、着用する際に面ファスナー5,5の表裏を気にせずに容易に着用できる。さらに、この面ファスナー5は、ループ部53側の面が装着者の背部に対面するように取り付けられているので、着用時に面ファスナー5のフック部52が肌に接触して不快になることがない。
【0036】
また、面ファスナー5に切断しろを設けることにより、装着者は自己の体型に合わせて適宜面ファスナー5の余分な切断しろ部分を切断して使用でき、しかも、アンダーバストが太るなどして連結帯部3,3の長さが短くなった場合には、この切断した面ファスナー5の断片5′を左右の面ファスナー5,5間に継ぎ足すように接合することで、連結帯部3,3の長さを事後的に延長させることができる、体型変化に対して柔軟に対応することができる。
【0037】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0038】
たとえば、上述した実施形態では、本発明をブラジャーに適用した場合を示したが、本発明は左右一対のカップ部2,2と、該カップ部2,2の両側に配設され背部で連結される一対の連結帯部3,3とを備えた衣類であれば他の衣類にも適用可能である。また、図示例では肩ひも7を有するブラジャー1を示したが片ひものないブラジャーにも適用可能である。
【0039】
また、上述した実施形態では、連結帯部3,3の先端に取り付けられる連結部4,4として、一方の面にフック部52が形成され、他方の面にループ部53が形成された面ファスナー5を用いた場合を示したが、一方の連結帯部3にフック部52のみを有する面ファスナーを取り付け、他方の連結帯部3にループ部53のみを有する面ファスナーを取り付けるように構成することも可能である。なお、その場合、フック部52を有する面ファスナーは、フック部52が連結帯部3の外側に向くように取り付けられるのが好ましい。
【0040】
さらに、上述した実施形態では、連結帯部3,3の少なくともいずれか一方の側に取り付けられる面ファスナー5が長さ調節用の切断しろを含んで長尺に設定される場合を示したが、このような切断しろを設定せずに面ファスナー5の長さを短く(たとえば、3ないし4cm程度)に設定しておくことができる。なお、その場合は、上述した面ファスナー5の断片5′と同様に事後的に継ぎ足しができるように別途面ファスナーの小片を添付しておくのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用したブラジャーの概要を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿ってブラジャーの連結部を切断した状態を示す拡大断面図である。
【図3】同ブラジャーの使用状態を示す斜視図である。
【図4】同ブラジャーの着用時の状態を背面からみた説明図である。
【図5】従来のブラジャーの概略を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ブラジャー
2 カップ部
3 連結帯部
4 連結部
5 面ファスナー
5′ 面ファスナーの断片
6 正面パネル
7 肩ひも
51 ベース部材
52 フック部
53 ループ部
54 フック
55 ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のカップ部と、前記カップ部の両側に配設され背部で連結される一対の連結帯部とを備えた衣類において、
前記連結帯部のそれぞれの先端に帯状の面ファスナーが装着され、これら面ファスナーを接合することにより前記連結帯部が連結される構造を備えたことを特徴とする衣類。
【請求項2】
前記面ファスナーは、シート状のベース部材を有し、このベース部材の一方の面にフック部が形成されるとともに、他方の面に前記フック部と係合可能なループ部が形成されてなり、
この面ファスナーのループ部側の面が装着者の背部に対面するように前記一対の連結帯部のそれぞれの先端に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記連結帯部の先端に装着される面ファスナーのうちの少なくとも一方の面ファスナーが、長さ調節用の切断しろを含んで長尺に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の衣類。
【請求項4】
前記長さ調節用の切断しろが設定された面ファスナーに、所定間隔で切断用の切り取り線が設定されていることを特徴とする請求項3に記載の衣類。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−30207(P2009−30207A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197127(P2007−197127)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(395005000)株式会社バルジュ (3)
【Fターム(参考)】