説明

表示パネルおよび表示パネルの製造方法

【課題】製造コストを抑えつつ細かな表示設定が可能な表示パネルを提供する。
【解決手段】表示パネル3は、下端部に光が内部に入射可能な光入射面3dを有するとともに略平面状に広がった表示面3fを有した平板状のパネル本体3Hと、表示面3fに形成された拡散パターン3b,3cとから構成され、拡散パターン3b,3cが、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、界面活性剤、重合禁止剤および顔料である酸化チタンの分散剤からなる添加剤とを成分として有し光を透過させるベース成分に、光を拡散させる酸化チタンまたはジルコニアを含有させて構成されるパターン形成層により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を表示パネル(導光板)の側端部から入射させ、表示パネルに形成された所望の拡散パターン部分で拡散させることにより、この拡散パターン部分を光らせて表示させる、いわゆる面発光型の表示装置に用いられる表示パネル、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記表示装置の表示パネルは従来、例えば透明な表示パネルの表示面に、表示させたい図柄や文字等に対応させたエッチングを施して凹部を形成することにより、上記拡散パターンが形成されている。このようにして拡散パターンが形成された表示パネルに対して側端部から光源の光を入射させると、入射した光は、表示面のうち拡散パターンが形成されていない部分でほぼ全反射するとともに、拡散パターン部分(凹部)で拡散されて表示パネルの外部に出射される。そのため、外部に光が出射される拡散パターン部分を、拡散パターンが形成されていない部分に対して明るく浮かび上がるように光らせて表示させることができる。このように構成される面発光型の表示装置は、構成部品が少なく簡素な構成でありながら鮮明な表示が可能なため、近年様々な場所で看板等として用いられている。
【0003】
表示パネルの凹部の形成方法としては、例えば切削工具を用いて形成する方法、成形金型を用いて凹部を含めた表示パネル全体を一体的に射出成形により形成する方法、図柄形状に対応したマスクを用いてケミカルエッチングにより形成する方法、表示面にレーザー光を照射させて形成する方法等が従来知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−236218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した従来の凹部の形成方法のうち、切削工具を用いる方法においては、切削加工時に必然的に切削屑が発生し、その除去および廃棄に手間がかかるという課題があった。また、成形金型を用いる方法では、図柄形状毎の専用の成形金型が必要となり、製造コストの増大につながりやすいという課題があった。ケミカルエッチングによる方法では、図柄形状毎の専用のマスクに加えて処理液が必要となるために、製造コストが増大しがちであるという課題があった。さらに、レーザー光を照射させる方法では、確実に凹部を形成可能な高出力のレーザー照射装置が必要となり、製造コストが増大してしまうという課題があった。
【0006】
また、最近においては、拡散パターンを単に明るく表示させるのみならず、使用目的に応じて例えば表示の明るさを拡散パターンの部分毎に細かく設定したいという要望がある。表示面に凹部を形成する従来の方法では、凹部の深さや形状等を変更することで、限られた範囲内で上記要望を満たすことができるものの、十分に満たすことが難しいという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造コストの増大を抑えつつ、細かな表示設定が可能な表示パネルおよび表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る表示パネルは、側端に光が内部に入射可能な光入射面を有するとともに前面に略平面状に広がった表示面を有した平板状のパネル本体と、前記表示面に形成された拡散パターンとから構成される表示パネル(例えば、実施形態における前側表示パネル3、後側表示パネル4)であって、前記拡散パターンが、光を透過させるベース成分に光を拡散させる拡散成分を含有させて構成されるパターン形成層により形成される。
【0009】
なお、前記拡散パターンが、前記表示面に前記パターン形成層をドット状に付着させて形成されたことが好ましい。
【0010】
また、前記ベース成分が、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、界面活性剤、重合禁止剤および前記拡散成分の分散剤からなる添加剤とを備えており、前記ベース成分は、紫外線が照射されて硬化する性質を有していることが好ましい。
【0011】
本発明に係る表示パネルの製造方法は、側端に光が内部に入射可能な光入射面を有するとともに前面に略平面状に広がった表示面を有した平板状のパネル本体と、前記表示面に形成された拡散パターンとから構成される表示パネルの製造方法であって、光を透過させるベース成分に光を拡散させる拡散成分を含有させて構成されるパターン形成層を前記表示面に付着させて前記拡散パターンを形成する拡散パターン形成工程を備える。
【0012】
なお、前記拡散パターン形成工程において、前記表示面に前記パターン形成層をドット状に付着させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表示パネルは、平板状のパネル本体の表示面に形成される拡散パターンが、光を透過させるベース成分に光を拡散させる拡散成分を含有させたパターン形成層により形成されて構成される。そのため、表示面に凹部を形成することなく拡散パターンを簡便に形成できるので、製造コストを抑えつつ内部に入射させた光により確実に拡散パターンを表示させることができる。また、例えば拡散パターンの印刷量(印刷濃度)、拡散成分の種類および拡散成分の含有割合等を変えることで、使用目的に応じた細かな表示設定が可能となる。
【0014】
なお、拡散パターンが、表示面にパターン形成層をドット状に付着させて形成されたことが好ましい。このように拡散パターンを形成すると、ドット状のパターン形成層の表面部分でも光が拡散させるので、鮮明に拡散パターンを表示させることができる。
【0015】
また、ベース成分が、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、界面活性剤、重合禁止剤および拡散成分の分散剤からなる添加剤とを備えており、ベース成分は、紫外線が照射されて硬化する性質を有していることが好ましい。例えば、溶剤揮発型のソルベルトインク等を用いた場合には、溶剤が揮発して硬化する前に隣り合うインク同士が一体化して滲むことがあるが、一方、紫外線硬化型のベース成分を用いた場合には、表面に付着した(ドット状の)インク同士が一体化する前に紫外線を照射して硬化させることができるので、インクの滲みを防止できる。
【0016】
本発明に係る表示パネルの製造方法は、平板状のパネル本体の表示面に、光を透過させるベース成分に光を拡散させる拡散成分を含有させたパターン形成層を付着させて拡散パターンを形成する拡散パターン形成工程を備えている。そのため、表示面に凹部を形成することなく拡散パターンを簡便に形成でき、製造コストを抑えつつ確実に拡散パターンを表示させる表示パネルを製造可能となる。
【0017】
なお、表示面にパターン形成層をドット状に付着させることが好ましい。この場合、ドット状のパターン形成層の表面部分でも光が拡散させるので、鮮明に拡散パターンを表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る表示パネルを用いて構成された表示装置の斜視図である。
【図2】図1中のII−II部分の断面図である。
【図3】拡散パターンを形成するために用いるプリンタ装置の斜視図である。
【図4】実施例2に係る表示装置の断面図である。
【図5】変形例としての多層拡散パターンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1および2を参照しながら、本発明に係る方法により製造された前側表示パネル3および後側表示パネル4を用いて構成された面発光型の表示装置1について説明する。以下に説明する実施例1の表示装置1は、透明な前側表示パネル3(後側表示パネル4)の中に、例えば文字「A」を青色、文字「B」を赤色、文字「C」をマゼンタでそれぞれ表示できる構成となっている。説明の便宜上、各図面において矢印方向で表示装置1の前後、左右および上下方向を示し、以下この方向を用いて説明を行う。
【0021】
表示装置1は、光源2、前側表示パネル3および後側表示パネル4から構成され、上方に向けて開口した支持基台5の内部に光源2が収容されている。前側表示パネル3および後側表示パネル4は前後に貼り合わされ、その下部が支持基台5に挿入されて立設状態に保持されている。前後に貼り合わされた前側表示パネル3および後側表示パネル4の前後端部および上端部には、端部に達した光を効率良く内側に反射させるための白色の反射部材6が取り付けられている。
【0022】
なお、図2では、各拡散パターンを分かり易く図示するために、前側表示パネル3と後側表示パネル4との間に隙間が形成された状態を図示しているが、実際には、前側表示パネル3と後側表示パネル4とは前後にほぼ密着されており、前側表示パネル3と後側表示パネル4との間に、下方から光源2の光が入射しないようになっている(後述する図4についても同様)。
【0023】
光源2は、赤、緑または青色の光を発光する複数のLED(図示せず)を備えて、左右に延びたユニットとして構成される。この光源2は支持基台5内に収容されて、上方(前側表示パネル3および後側表示パネル4の下端部)に向けて光を照射するようになっている。
【0024】
前側表示パネル3は、矩形平板状の透明なアクリル板からなるパネル本体3Hの表示面3fに、所望形状の拡散パターン3b(文字「B」),3c(文字「C」)が形成されて構成される。パネル本体3Hの下端部には、パネル本体3Hの内部に光を入射可能な光入射面3dが形成されており、この光入射面3dに赤色カラーフィルタ3eが取り付けられている。この拡散パターン3b,3cについては後述する。
【0025】
後側表示パネル4は、上記前側表示パネル3と略同一形状の透明なアクリル板からなるパネル本体4Hの表示面4fに、所望形状の拡散パターン4a(文字「A」),4c(文字「C」)が形成されて構成される。パネル本体4Hの下端部には、パネル本体4Hの内部に光を入射可能な光入射面4dが形成されており、この光入射面4dに青色カラーフィルタ4eが取り付けられている。この拡散パターン4a,4cについては後述する。なお、パネル本体3H,4Hは、屈折率が例えば1.48程度の透明度の高いアクリル板により構成されている。
【0026】
以上ここまでは、表示装置1の構成について説明した。以下においては、この表示装置1の構成部材である前側表示パネル3(後側表示パネル4)の製造方法のうちで、特に拡散パターン3b,3c(拡散パターン4a,4c)を形成する方法について説明する。これらの拡散パターンは、図3に示すようなプリンタ装置10により印刷形成されるが、このプリンタ装置10について以下に説明する。
【0027】
プリンタ装置10は、図3に示すように、プリンタ装置10の土台部分であるベース部11と、ベース部11に対して前後にスライド移動可能に設けられた印刷ユニット21とから構成される。ベース部11は、複数の支持脚12と、この支持脚12により略水平に支持されて印刷対象物を吸着固定する載置テーブル13とから構成される。
【0028】
印刷ユニット21は、内部に左右に延びたガイドレール22を有し、このガイドレール22に対して左右に往復移動可能にキャリッジ23が取り付けられて構成される。キャリッジ23には、紫外線照射により硬化する紫外線硬化型のインク(以下、UVインクと称す)を下方に向けて吐出する複数のプリンタヘッド24、およびこのプリンタヘッド24の左右側方に一対となって配設されて下方に向けて紫外線を照射するUV照射装置25,25が搭載されている。
【0029】
プリンタヘッド24から吐出されるUVインクとして、透明または半透明で光を透過させるベース液に、例えば屈折率が2.5〜2.7程度の酸化チタンからなる白色の顔料を含有させて構成され、全体として略透明なものが用いられる。上記ベース液は、例えばラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、界面活性剤、重合禁止剤および顔料である酸化チタンの分散剤からなる添加剤とを成分として有している。なお、ベース液に含有させる顔料の色は特に限定されないが、上述のように白色のものを用いると効率良く光を拡散可能となる。
【0030】
このように構成されるプリンタ装置10は、印刷ユニット21の内部に設けられた制御部26により、ベース部11に対する印刷ユニット21の前後移動制御、ガイドレール22に対するキャリッジ23の左右移動制御、プリンタヘッド24におけるUVインクの吐出制御、およびUV照射装置25における紫外線の照射制御が行われる。
【0031】
以上、プリンタ装置10の構成について説明した。以下においては、このプリンタ装置10を用いて、パネル本体3Hに拡散パターン3b,3cを形成ときの形成方法について説明する。
【0032】
まず、パネル本体3Hを載置テーブル13に載置して固定させる。そして、印刷ユニット21を前後に移動させる作動と、キャリッジ23を左右に移動させる作動とを組み合わせて行いながら、プリンタヘッド24からUVインクを吐出させる制御を行うとともにUV照射装置25から紫外線を照射させる制御を行う。この工程が、特許請求の範囲における「拡散パターン形成工程」に該当する。これにより、パネル本体3Hに対して拡散パターン3b(文字「B」),3c(文字「C」)の形状にUVインクを付着させ、この付着したUVインクにUV照射装置25からの紫外線を照射して硬化させることで、パネル本体3Hに固定させることができる。
【0033】
ここで、プリンタヘッド24からUVインクを吐出させるときに、制御部26により、パネル本体3Hに付着して隣接するUVインク同士が混ざり合わないように吐出制御が行われるとともに、付着したUVインクが平らに広がる前に(UVインクを付着させた後速やかに)紫外線を照射してドット状のまま硬化させる照射制御が行われる(図2参照)。このように、UVインクをドット状のまま硬化させて固定することで、UVインクに含有される顔料としての酸化チタンばかりでなくUVインクの表面部分においても光を拡散させて、拡散パターン3b,3cを明るく鮮明に表示させることが可能となる。
【0034】
上述の説明からも分かるように、固定されたUVインクの形状に応じて光の拡散状態が微妙に変化し、それに伴って拡散パターンの表示状態(例えば明るさ)も変化する。そこで、プリンタ装置10においては、プリンタヘッド24およびUV照射装置25の作動を制御してUVインクの形状を変化させることにより、拡散パターンの表示状態を細かく設定できるようになっている。
【0035】
また、パネル本体4Hもパネル本体3Hと同様にして、UVインクが付着されるとともに紫外線が照射されて、拡散パターン4a(文字「A」),4c(文字「C」)が形成される(図2参照)。なお、パネル本体3Hの拡散パターン3cとパネル本体4Hの拡散パターン4cとは、表示装置1を前方から見たときに前後に重なる位置に形成される。ここで、図2に示すように、前側表示パネル3と後側表示パネル4とが、拡散パターンが形成された面を内側に向けて貼り合わされているので、拡散パターンの損傷を防止できる。
【0036】
以上のようにして、各表示パネルに各拡散パターンが形成されるが、各表示パネルにおいては、発光エリアである表示面の面積に対するUVインクの付着面積の割合(以下、面積率と称す)を約5%以下に抑えられ、ドット状のUVインクが直径約0.1mm以下となって固定されている。このように構成することで、各UVインクで確実に光を拡散させて拡散パターンを表示させつつ、光源2から光が照射されていないときの透明性を高めることが可能となる。さらには、面積率が2%以下となるように拡散パターンを形成することが好ましく、この場合には、光源2から光が照射されていないときの透明性を一層高めることができる。
【0037】
このように、プリンタ装置10を用いて拡散パターンを形成することにより、従来の拡散パターン形成方法で必要とされていた専用のマスクや成形金型が不要となって、製造コストを抑制できる。また、制御部26の制御内容を変更するだけで、様々な文字や図柄の拡散パターンが形成可能となって汎用性を高めることができ、多種の表示パネルを少量ずつ生産するときに特に有効である。さらに、プリンタ装置10を利用した場合、UVインクを一気に付着させて硬化させることで拡散パターンを形成でき、例えばエッチングにより少しずつ凹部を形成する場合と比較して、短時間のうちに効率良く拡散パターンを形成できる。
【0038】
以上、前側表示パネル3および後側表示パネル4の製造方法について説明した。以下においては、表示装置1の拡散パターンが表示される原理について、図2を参照しながら説明する。
【0039】
まず、前側表示パネル3について説明すると、光源2から照射された白色光が赤色カラーフィルタ3eを透過することで赤色光となって光入射面3dから前側表示パネル3に入射し、前側表示パネル3の前後表面間でほぼ全反射しながら進行する。その進行過程で拡散パターン3bに達した赤色光は、拡散パターン3bを形成するUVインク(主として酸化チタン)で拡散されて、前側表示パネル3の外部に出射される。この外部に出射された赤色光により、拡散パターン3b(文字「B」)を赤色に表示させることができる。
【0040】
後側表示パネル4について説明すると、光源2からの白色光が青色カラーフィルタ4eを透過することで青色光となって光入射面4dから後側表示パネル4に入射し、後側表示パネル4の前後表面間でほぼ全反射しながら進行する。このように進行する青色光のうち、拡散パターン4aに達した青色光は、拡散パターン4aを形成するUVインク(主として酸化チタン)で拡散され、後側表示パネル4の外部に出射される。この外部に出射された青色光により、拡散パターン4a(文字「A」)を青色に表示させることができる。また、前後に重なるように形成された拡散パターン3c(文字「C」)および拡散パターン4c(文字「C」)においては、それぞれ赤色光および青色光が外部に出射されており、これらの色が混ざることでマゼンタに表示させることができる。
【0041】
一方、光源2から光が照射されていない状態では、上述したように各表示パネルに付着されたUVインクが略透明なので、前側表示パネル3および後側表示パネル4には各拡散パターンが表示されず全体が透明に見える。このように表示装置1は、光源2から光を照射させたときだけ、各拡散パターンを透明な表示パネルの中に鮮明に浮かび上がらせて表示させることができるようになっている。
【実施例2】
【0042】
次に、図4を参照しながら、実施例2に係る表示装置30について説明する。この表示装置30は、実施例1に係る表示装置1と比較して、後側表示パネル4の後側に背景用パネル31を配設した点で異なっており、それ以外の点については表示装置1と同一構成となっている。そのため、表示装置1と同一構成の部分についは説明を省略し、異なる構成部分である背景用パネル31について、まず説明する。
【0043】
背景用パネル31は、例えば矩形平板状の透明なアクリル板からなるパネル本体31Hの前側表面に、前方から見たときに拡散パターン3bと前後に重なる位置(拡散パターン3bの後方)に背景図柄31bが形成されて構成される。この背景図柄31bは、プリンタ装置10を用いて例えば黒色のUVインクを付着させて形成され、前後に光が透過しないように形成されている。なお、パネル本体31Hは、透明なアクリル板以外にも、光を透過させない材料で形成されたものを用いても良い。
【0044】
この表示装置30は、光源2から光が照射されていない状態では、表示装置30を前方から見たときに黒色の背景図柄31bのみが見え、各拡散パターンは見えない。一方、光源2から光を照射させると、透明な背景に対して拡散パターン4a(文字「A」)が青色で、黒色の背景図柄31bに対して拡散パターン3b(文字「B」)が赤色で、透明な背景に対して拡散パターン3c(文字「C」)をマゼンタで表示することができる。
【0045】
この表示装置30のように、拡散パターンが形成された前側表示パネル3および後側表示パネル4に加えて、背景用の背景用パネル31を設けることにより、拡散パターンと背景とを組み合わせた様々なバリエーションの表示が可能となる。
【0046】
上述の実施例1および2において、隣接するUVインク同士を混ざらないような密度で1層分付着させて拡散パターンを形成した場合を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、図5に示す表示パネル40のように、透明なアクリル板からなるパネル本体41Hの表面に、UVインクを付着させることで第1層拡散パターン42を形成し、この第1層拡散パターンに42に重ねて第2層拡散パターン43を形成することで、全体として多層構造となった多層拡散パターン44を形成する構成も可能である。このとき、各UVインクが付着した後、速やかに紫外線を照射することにより、各UVインクをドット状のまま硬化させて固定させる。
【0047】
このようにして製造された表示パネル40の側端部から光を入射させると、多層拡散パターン44部分で光が拡散される。このとき、第1層拡散パターン42において拡散せず第2層拡散パターン43に達した光が存在する場合であっても、第2層拡散パターン43で確実に拡散させてパネル本体41Hの外部に出射させ、多層拡散パターン44を明るく鮮明に光らせることが可能となる。
【0048】
また、例えば第1層拡散パターン42および第2層拡散パターン43を形成するUVインクとして、白色顔料(酸化チタン)が含有させず透明になったものを用いることも可能である。このUVインクを用いると、光源2から光が照射されていないときには多層拡散パターン44部分が透明となって表示されず、一方、光源2から光を照射させたときには各UVインクの表面部分において光を拡散させて、多層拡散パターン44を浮かび上がらせて表示できる。
【0049】
さらには、第1層拡散パターン42のUVインクに含有される顔料と、第2層拡散パターン43のUVインクに含有される顔料とを、互いに屈折率の異なるものを用いることにより、例えば同一種類の顔料を用いる場合に対して拡散状態を微妙に変化させることが可能となる。
【0050】
上述の実施例1および2において、顔料として屈折率が2.5〜2.7程度の酸化チタンまたはジルコニアを用いた場合を例示したが、これらに代えて、アクリル板よりも大きな屈折率を有した他の顔料を用いることも可能である。他の顔料の一例としては、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、酸化クロム、酸化鉄、酸化銅、ダイヤモンドおよびチタン酸ストロンチウムが挙げられる。
【0051】
上述の実施例1および2において、アクリル樹脂(PMMA)を材料として形成されたパネル本体を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、光透過性の高い透明なアクリル−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネートおよび(光学)ガラスのいずれかを材料として用いて形成されたパネル本体でも良い。
【0052】
上述の実施例1および2においては、ドット状にUVインクを付着させた構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、付着したUVインク同士が繋がり表示面に沿って広がった状態で(いわゆるベタ印刷で)固定させても良い。
【符号の説明】
【0053】
3 前側表示パネル(表示パネル)
3H パネル本体
3b,3c 拡散パターン
4 後側表示パネル(表示パネル)
4H パネル本体
4a,4c 拡散パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側端に光が内部に入射可能な光入射面を有するとともに前面に略平面状に広がった表示面を有した平板状のパネル本体と、前記表示面に形成された拡散パターンとから構成される表示パネルであって、
前記拡散パターンが、光を透過させるベース成分に光を拡散させる拡散成分を含有させて構成されるパターン形成層により形成されたことを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記拡散パターンが、前記表示面に前記パターン形成層をドット状に付着させて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記ベース成分が、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、界面活性剤、重合禁止剤および前記拡散成分の分散剤からなる添加剤とを備えており、
前記ベース成分は、紫外線が照射されて硬化する性質を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の表示パネル。
【請求項4】
側端に光が内部に入射可能な光入射面を有するとともに前面に略平面状に広がった表示面を有した平板状のパネル本体と、前記表示面に形成された拡散パターンとから構成される表示パネルの製造方法であって、
光を透過させるベース成分に光を拡散させる拡散成分を含有させて構成されるパターン形成層を前記表示面に付着させて前記拡散パターンを形成する拡散パターン形成工程を備えたことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記拡散パターン形成工程において、
前記表示面に前記パターン形成層をドット状に付着させることを特徴とする請求項4に記載の表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−257449(P2011−257449A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129328(P2010−129328)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】