説明

表示体及びその製造方法

【課題】耐アルカリ性に優れた表示体を提供する。
【解決手段】本発明によると、一方の主面に中心領域A1と前記中心領域A1を取り囲む周縁領域A2とを備えた光透過層11と、前記主面のうち前記中心領域A1又はその一部のみを被覆した反射層13と、前記反射層13の背面及び端面並びに前記周縁領域A2を被覆した保護層15とを具備し、前記中心領域A1には複数の第1の凹部又は凸部RP1が設けられ、前記周縁領域A2の全体には前記複数の第1の凹部又は凸部RP1と比較して凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きな複数の第2の凹部又は凸部RP2が設けられていることを特徴とする表示体10が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学技術に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような物品には、偽造又は模造が困難であると共に偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。そのようなラベルは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
ところで、このような偽造防止効果を有した表示体の多くには、その視覚特性を向上させるべく、アルミニウムなどの金属を含んだ反射層が設けられている。
【特許文献1】特開2005−91699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、反射層を構成する金属材料は、アルカリ性雰囲気に対する耐久性(以下、耐アルカリ性という)が低いことが多い。それゆえ、このような表示体は、耐アルカリ性が不十分である場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、耐アルカリ性に優れた表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、一方の主面に中心領域と前記中心領域を取り囲む周縁領域とを備えた光透過層と、前記主面のうち前記中心領域又はその一部のみを被覆した反射層と、前記反射層の背面及び端面並びに前記周縁領域を被覆した保護層とを具備し、前記中心領域には複数の第1の凹部又は凸部が設けられ、前記周縁領域の全体には前記複数の第1の凹部又は凸部と比較して凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きな複数の第2の凹部又は凸部が設けられていることを特徴とする表示体が提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、一方の主面に中心領域と前記中心領域を取り囲む周縁領域とを備えた光透過層と、前記主面のうち前記中心領域又はその一部のみを被覆した反射層と、前記反射層の背面及び端面並びに前記周縁領域を被覆した保護層とを具備し、前記中心領域には複数の凹部又は凸部が設けられ、前記周縁領域には、前記周縁領域の外周に沿って1つ又は複数の溝が設けられていることを特徴とする表示体が提供される。
【0008】
本発明の第3側面によると、一方の主面に複数の凹部又は凸部が設けられた光透過層と、前記主面を部分的に被覆した反射層と、前記反射層の背面及び端面並びに前記主面のうち前記反射層によって被覆されていない領域を被覆した保護層とを具備し、前記反射層の前記端面と前記保護層の端面との最短距離は1.0mm以上であることを特徴とする表示体が提供される。
【0009】
本発明の第4側面によると、表示体の製造方法であって、一方の主面の一部に前記表示体が表示すべき像が複数の凹部又は凸部として記録された光透過層と、前記主面のうち前記複数の凹部又は凸部が設けられた領域を含んだ中心領域とこれを取り囲んだ周縁領域とを被覆した金属層との積層体に、マスクを介してアルカリ性溶液を適用して、前記金属層のうち前記周縁領域上に位置した部分を溶解させることにより、前記主面の一部を被覆した反射層を形成することと、前記反射層の背面及び端面並びに前記周縁領域を被覆した保護層を形成することとを具備したことを特徴とする表示体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、耐アルカリ性に優れた表示体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の第1態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。
【0013】
この表示体10は、光透過層11と反射層13と保護層15とを備えている。光透過層11の一方の主面には、複数の凹部又は凸部RPが設けられている。反射層13は、光透過層11の上記主面を部分的に被覆している。保護層15は、反射層13の背面及び端面並びに光透過層11の上記主面のうち反射層13によって被覆されていない領域を被覆している。そして、反射層13の端面と保護層15の端面との最短距離は1.0mm以上である。
【0014】
光透過層11は、典型的には、透明又はほぼ透明である。但し、光透過層11は、複数の凹部又は凸部RPによる回折光等の視認又は検出感度が不十分とならない範囲において、僅かな光散乱性を有していてもよい。
【0015】
光透過層11は、例えば、光透過性基材と光透過性樹脂層との積層体である。この場合、光透過性樹脂層側の主面に、上述した複数の凹部又は凸部RPを形成する。これら複数の凹部又は凸部RPについては、後で詳しく説明する。
【0016】
光透過性基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート及びポリエチレンなどからなる光透過性のプラスチックシートを使用する。この光透過性基材の厚みは、例えば10μm乃至100μmの範囲内とする。光透過性基材は、省略してもよい。
【0017】
光透過性樹脂層の材料としては、典型的には、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用する。この場合、原版を用いた転写により、一方の主面に複数の凹部又は凸部RPが設けられた光透過層11を容易に形成することができる。
【0018】
光硬化性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを使用する。熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂又はアルキド樹脂を使用する。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリアセタール樹脂を使用する。或いは、光透過性樹脂層の材料として、これら樹脂とポリイソシアネート樹脂との混合物を使用してもよい。この場合、光透過性樹脂層は、より優れた耐熱性及び耐溶剤性を発揮する。
【0019】
光透過層11の一方の主面には、上述したように、複数の凹部又は凸部RPが設けられている。複数の凹部又は凸部RPの各々は、例えば、角錐、円錐及び半紡錘形状などの順テーパ形状を有している。
【0020】
これら凹部又は凸部RPの各々は、例えば、一次元的又は二次元的に配列している。凹部又は凸部RPは、例えば、正方格子、矩形格子又は三角格子をなしている。或いは、これら凹部又は凸部RPは、複数の溝を構成していてもよい。
【0021】
複数の凹部又は凸部RPは、典型的には、光学素子を構成している。即ち、これら凹部又は凸部RPは、表示体10の光学特性及び視覚効果に影響する。
【0022】
複数の凹部又は凸部RPは、例えば、回折格子又はホログラムを構成している。或いは、これら凹部又は凸部RPは、光散乱体を構成していてもよい。或いは、これら凹部又は凸部RPは、レンズ又はプリズムを構成していてもよい。例えば、これら凹部又は凸部RPが回折格子又はホログラムを構成している場合、表示体10は、観察方向に応じて、異なる色を表示する。このような視覚効果は、複写機等による複製によっては再現できない。また、このような凹凸構造は、模造又は偽造することが比較的困難である。それゆえ、表示体10は、これら凹部又は凸部RPが設けられていない場合と比較してより優れた偽造防止効果を発揮する。
【0023】
複数の凹部又は凸部RPは、光透過層11の主面の一部にのみ設けられていてもよい。この場合、上記主面のうち複数の凹部又は凸部RPが設けられた領域A1aは、上述したような光学特性及び視覚効果を有している。他方、上記主面のうち凹部又は凸部RPが設けられていない領域A1bは、このような光学特性及び視覚効果を有していない。即ち、これら両領域は、光学特性及び視覚効果が互いに異なっている。従って、これら領域の対比により、表示体10に像を表示させることができる。図1では、一例として、上記主面のうち複数の凹部又は凸部RPが設けられた領域A1aが、文字「P」なる像を表示する場合を描いている。
【0024】
反射層13は、上述したように、光透過層11の複数の凹部又は凸部RPが設けられた主面を部分的に被覆している。典型的には、反射層13は、複数の凹部又は凸部RPの少なくとも一部と向き合っている。反射層13としては、例えば、アルミニウム、銀、及びそれらの合金などの金属材料からなる金属層を使用する。
【0025】
反射層13の厚みは、例えば5nm乃至60nmの範囲内、典型的には40nm乃至60nmの範囲内とする。反射層13の厚みが40nm以上である場合、表示体10の反射率が面内方向で均一となり易い。
【0026】
保護層15は、上述したように、反射層13の背面及び端面並びに光透過層11の上記主面のうち反射層13によって被覆されていない領域を被覆している。それゆえ、保護層15の存在により、反射層13の背面及び端面を表示体10の表面及び側面に露出しないようにすることができる。従って、後で詳しく説明するように、アルカリ性溶液等のアルカリ性雰囲気による反射層13の腐食を生じ難くすることができる。加えて、この保護層15の存在により、上述した複数の凹部又は凸部RPの構造を外部から把握され難くすることができる。これにより、表示体10の模造及び偽造が更に困難となる。
【0027】
保護層15の材料としては、耐アルカリ性に優れた材料を使用する。保護層15は、例えば、接着層である。この場合、光透過層11と反射層13との積層体は、接着層を介して支持体に支持されていてもよい。この支持体としては、例えば、紙又はプラスチックを使用する。
【0028】
上述したように、反射層13の端面と保護層15の端面との最短距離は、1.0mm以上とする。こうすると、反射層13の端面を、表示体10の側面から十分に隔離することができる。従って、表示体10がアルカリ性溶液等のアルカリ性雰囲気に曝された場合であっても、反射層13とアルカリ性雰囲気との接触が比較的生じ難い。それゆえ、この表示体10では、アルカリ性雰囲気による反射層13の腐食が生じ難い。
【0029】
以下、本発明の他の態様に係る表示体について説明する。
図3は、本発明の第2態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図4は、図3に示す表示体のIV−IV線に沿った断面図である。
【0030】
この表示体10は、光透過層11と反射層13と保護層15とを備えている。光透過層11は、一方の主面に、中心領域A1と、中心領域A1を取り囲む周縁領域A2とを備えている。中心領域A1には、複数の第1の凹部又は凸部RP1が設けられている。周縁領域A2の全体には、複数の第2の凹部又は凸部RP2が設けられている。反射層13は、光透過層11の上記の主面のうち、中心領域A1又はその一部のみを被覆している。保護層15は、反射層13の背面及び端面並びに光透過層11の周縁領域A2を被覆している。
【0031】
光透過層11、反射層13及び保護層15の材料としては、第1態様に係る表示体と同様のものを使用する。
【0032】
複数の凹部又は凸部RP1は、典型的には、光学素子を構成している。即ち、これら凹部又は凸部RP1は、表示体10の光学特性及び視覚効果に影響する。複数の第1の凹部又は凸部RP1としては、例えば、第1態様に係る表示体の複数の凹部又は凸部RPと同様の構造を採用する。
【0033】
図3及び図4には、一例として、光学素子を構成する複数の第1の凹部又は凸部RP1が、中心領域A1の一部のみに設けられた場合を描いている。この場合、中心領域A1のうち凹部又は凸部RP1が設けられた領域A1aは、第1態様に係る表示体について上述したような光学特性及び視覚効果を有している。他方、中心領域A1のうち凹部又は凸部RP1が設けられていない領域A1bは、このような光学特性及び視覚効果を有していない。従って、これら領域の対比により、表示体10に像を表示させることができる。図3では、一例として、中心領域A1のうち凹部又は凸部RP1が設けられた領域A1aが、文字「P」なる像を表示する場合を描いている。
【0034】
複数の第2の凹部又は凸部RP2の各々は、例えば、角錐、円錐及び半紡錘形状などの順テーパ形状を有している。これら凹部又は凸部RP2の各々は、例えば、一次元的又は二次元的に配列している。凹部又は凸部RP2は、例えば、正方格子、矩形格子又は三角格子をなしている。或いは、これら凹部又は凸部RP2は、複数の溝を構成していてもよい。
【0035】
複数の第2の凹部又は凸部RP2は、複数の第1の凹部又は凸部RP1と比較して、凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比、又は、凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比(以下、共にアスペクト比という)の平均値がより大きい。典型的には、第2の凹部又は凸部RP2のアスペクト比の最小値は、第1の凹部又は凸部RP1のアスペクト比の最大値と比較してより大きい。
【0036】
これらの場合、周縁領域A2が平坦面である場合及び周縁領域A2にアスペクト比の平均値が複数の第1の凹部又は凸部RP1と同じであるか又はより小さい凹部又は凸部を設けた場合と比較して、周縁領域A2と保護層15との界面を通じたアルカリ性溶液等の拡散がより生じ難い。従って、この場合、中心領域A1の少なくとも一部を被覆した反射層13とアルカリ性溶液等との接触がより生じ難い。即ち、アルカリ性雰囲気による反射層13の腐食がより生じ難い。それゆえ、表示体10は、特に優れた耐アルカリ性を発揮する。
【0037】
なお、図3及び図4には、光透過層11の一方の主面が中心領域A1及び周縁領域A2のみからなる場合を描いているが、上記の主面には、周縁領域A2を間に挟んで中心領域A1と隣り合った第3の領域A3が存在していてもよい。この領域A3は、凹部又は凸部を備えていてもよく、凹部又は凸部を備えていなくてもよい。
【0038】
この表示体10では、中心領域A1と周縁領域A2との境界と周縁領域A2の外周との最短距離は、例えば0.5mm以上とする。この距離が大きい程、表示体10の耐アルカリ性は高くなる。
【0039】
上述した複数の第2の凹部又は凸部RP2は、第1の凹部又は凸部RP1とは対照的に、上記界面を介したアルカリ性溶液等の拡散をより生じ難くするために設けられている。それゆえ、複数の第2の凹部又は凸部RP2は、光学素子を構成していてもよく、光学素子を構成していなくてもよい。例えば、第2の凹部又は凸部RP2は、回折構造を構成していなくてもよい。即ち、これら第2の凹部又は凸部RP2は、白色光を照明された際に、観察可能な角度に可視光を射出しない構造を有していてもよい。或いは、これら第2の凹部又は凸部RP2は、反射率が極めて低い構造を有していてもよい。この場合、表示体10のうちこれら第2の凹部又は凸部RP2に対応した部分は、典型的には、第1の凹部又は凸部RP1に対応した部分と比較してより暗く見える。
【0040】
保護層15が接着層である場合、これら凹部又は凸部RP2は、光透過層11と接着層との接着性を向上させる役割も果たす。この接着性が向上すると、上記の拡散も生じ難くなる。従って、優れた耐アルカリ性を達成できる。
【0041】
図5は、本発明の第3態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図6は、図5に示す表示体のVI−VI線に沿った断面図である。
【0042】
図5及び図6に示す表示体10は、周縁領域A2に、複数の第2の凹部又は凸部RP2の代わりに、周縁領域A2の外周に沿った1つ又は複数の溝Gを備えていること以外は、図3及び図4を参照しながら説明した表示体10と同様の構成を有している。
【0043】
1つ又は複数の溝Gは、上述した通り、周縁領域A2の外周に沿って設けられている。例えば、1つ又は複数の溝Gは、その長さ方向が周縁領域A2の外周に平行又は略平行となるように設けられている。これらの場合、周縁領域A2と保護層15との界面において、周縁領域A2の外周に垂直又は略垂直な方向へのアルカリ性溶液等の拡散が極めて生じ難い。即ち、この表示体10では、光透過層11及び保護層15に被覆された反射層13へのアルカリ性溶液等の侵入が極めて生じ難い。従って、この表示体10では、アルカリ性雰囲気による反射層13の腐食が極めて生じ難い。よって、この表示体10は、優れた耐アルカリ性を有している。
【0044】
典型的には、周縁領域A2は、複数の溝Gを備えている。そして、これら複数の溝Gのうち中心領域A1に最も近い溝の中心領域A1側の側壁と、これら複数の溝Gのうち中心領域A1から最も遠い溝の周縁領域A2の外周側の側壁との間の最短距離は、例えば0.5mm以上とする。この距離が大きい程、表示体10の耐アルカリ性が高くなる。
【0045】
溝Gのアスペクト比には、特に制限はない。但し、溝Gのアスペクト比又はその平均値は、図3及び図4を参照しながら説明した表示体10と同様に、複数の第1の凹部又は凸部RP1のアスペクト比の平均値と比較してより大きいことが望ましい。特には、溝Gのアスペクト比の最小値は、複数の第1の凹部又は凸部RP1のアスペクト比の最大値と比較してより大きいことが望ましい。これらの場合、周縁領域A2と保護層15との界面におけるアルカリ性溶液等の拡散が更に生じ難くなる。それゆえ、表示体10の耐アルカリ性が更に向上する。
【0046】
図1乃至図6を参照しながら説明した表示体10は、例えば、以下のようにして製造する。
【0047】
まず、一方の主面の一部に表示体10が表示すべき像が複数の凹部又は凸部として記録された光透過層11と、この主面のうち複数の凹部又は凸部RPが設けられた領域A1aを含んだ中心領域A1及びこれを取り囲んだ周縁領域A2を被覆した金属層との積層体を準備する。この積層体では、周縁領域A2に、上述した複数の第2の凹部又は凸部RP2が設けられていてもよい。或いは、周縁領域A2に、上述した1つ又は複数の溝Gが設けられていてもよい。
【0048】
次に、この積層体に、光透過層11の主面のうち反射層13を形成すべき領域のみを遮蔽するマスクを介して、アルカリ性溶液を適用する。こうすると、当該領域以外の領域上に存在する金属層のみを溶解させることができる。このマスクとしては、例えば、中心領域A1のみを遮蔽し且つ周縁領域A2を遮蔽しないものを使用する。この場合、金属層のうち周縁領域A2上に形成された部分のみを溶解させることができる。このようにして、光透過層11の一方の主面のうち所望の領域のみを被覆した反射層13を得る。
【0049】
次いで、反射層13の背面及び端面並びに周縁領域A2を、保護層15により被覆する。例えば、反射層13の背面及び端面並びに周縁領域A2に接着剤を塗布し、この接着剤からなる接着層を保護層15とする。
【0050】
以上のようにして、表示体10を得る。
【実施例】
【0051】
<例1:表示体D1の製造>
以下のようにして、第1態様に係る表示体10を製造した。
まず、紫外線硬化性のウレタンアクリレートを、メチルエチルケトン(MEK)とトルエンとの1:1混合溶剤で希釈した。そして、得られた希釈液を、グラビアロールコータを用いて、25μmの厚みを有したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製ルミラー)上に塗布した。このようにして、PETフィルム上に、2μmの厚みを有したウレタンアクリレート樹脂からなる層(以下、光透過性樹脂層と呼ぶ)を形成した。
【0052】
次に、この光透過性樹脂層に、型を用いてエンボス加工を施した。具体的には、上記の中心領域A1に対応した領域に100nmの深さを有した凹部が1.0μmのピッチで隙間無く規則的に配置された金属製の型を準備した。なお、これら凹部の形状は、円錐状とした。
【0053】
そして、この型をロールエンボス装置に設置し、ロール型を95℃まで昇温させてから、この型を光透過性樹脂層に押し当てた。そして、紫外線を約500mJ照射して、ウレタンアクリレート樹脂を硬化させた。その後、型を剥離して、当該層の一方の主面のうち中心領域A1に対応した領域に、100nmの高さを有した凸部が1.0μmのピッチで隙間無く規則的に配列した複数の凸部を形成した。このようにして、光透過層11を得た。なお、周縁領域A2には、凹部又は凸部を形成しなかった。即ち、周縁領域A2は、平坦面とした。
【0054】
次いで、この光透過層11の複数の凸部が設けられた主面の全体に、アルミニウムからなる金属層を、真空蒸着により形成した。この金属層の厚みは、約40nmとした。
【0055】
続いて、当該金属層上に、グラビア印刷版を用いて、マスキング用のインキを印刷した。具体的には、金属層の背面のうち上記の中心領域A1に対応した領域のみをマスキングした。その後、水酸化ナトリウム溶液を適用し、当該領域以外の領域に存在していた金属層を溶解させた。このようにして、光透過層11の一方の主面のうち中心領域A1のみを被覆した反射層13を得た。
【0056】
最後に、反射層13の背面及び端面並びに周縁領域A2に接着剤を塗布して、保護層15としての接着層を得た。そして、この接着層を介して、紙をラミネートした。反射層13の端面と保護層15の端面との最短距離(以下、最短距離d1と呼ぶ)は、5.0mmとした。
【0057】
以上のようにして、表示体10を得た。以下、この表示体を「表示体D1」と呼ぶ。
【0058】
<例2:表示体D2の製造>
最短距離d1を5.0mmとする代わりに、当該距離を2.0mmとしたこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D2」と呼ぶ。
【0059】
<例3:表示体D3の製造>
最短距離d1を5.0mmとする代わりに、当該距離を1.4mmとしたこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D3」と呼ぶ。
【0060】
<例4:表示体D4の製造>
最短距離d1を5.0mmとする代わりに、当該距離を1.0mmとしたこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D4」と呼ぶ。
【0061】
<例5:表示体D5の製造(比較例)>
最短距離d1を5.0mmとする代わりに、当該距離を0.8mmとしたこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D5」と呼ぶ。
【0062】
<例6:表示体D6の製造(比較例)>
最短距離d1を5.0mmとする代わりに、当該距離を0.4mmとしたこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D6」と呼ぶ。
【0063】
<例7:表示体D7の製造(比較例)>
水酸化ナトリウム溶液によるエッチングの工程を省略したこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。即ち、最短距離d1を5.0mmとする代わりに、当該距離を0mmとしたこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D7」と呼ぶ。
【0064】
<例8:表示体D8の製造(比較例)>
保護層15の形成を省略したこと以外は、表示体D7について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D8」と呼ぶ。
【0065】
<表示体D1乃至D8の耐久試験>
以上のようにして製造した表示体D1乃至D8について、耐久試験を行った。
【0066】
(耐アルカリ性試験)
表示体D1乃至D8の各々を、水酸化ナトリウム水溶液に、24時間に亘って浸漬させた。その後、各表示体の外観の変化の有無を目視で確認した。表示体の外観の変化が全く生じなかった場合を「◎」とし、外観の変化が殆ど生じなかった場合を「○」とし、外観に若干の変化が生じた場合を「△」とし、外観に大きな変化を生じた場合を「×」として評価を行った。その結果を表1に示す。
【表1】

【0067】
表1から分かるように、最短距離d1を1.0mm以上とすることにより、優れた耐アルカリ性を達成することができた。
【0068】
(耐溶剤性試験)
表示体D1乃至D8の各々を、エタノール及びアセトンに、24時間に亘って浸漬させた。その後、上記の耐アルカリ性試験の場合と同様にして、外観の変化を評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
表1から分かるように、表示体D1乃至D8は、優れた耐エタノール性及び耐アセトン性を有していた。
【0070】
(耐熱性試験)
表示体D1乃至D8の各々を、150℃のオーブンを用いて、3分間に亘って加熱した。その後、上記の耐アルカリ性試験の場合と同様にして、外観の変化を評価した。その結果を表1に示す。
【0071】
表1から分かるように、表示体D1乃至D8は、優れた耐熱性を有していた。
【0072】
<例9:表示体D9の製造>
以下のようにして、第2態様に係る表示体10を製造した。
まず、型の形状を異ならしめたこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、中心領域A1に複数の第1の凸部が設けられ且つ周縁領域A2の全体に複数の第2の凸部が設けられた光透過層11を準備した。なお、第1の凸部及び第2の凸部の形状は、共に円錐状とした。
【0073】
第1の凸部の各々の底部における径は1.0μmとした。第1の凸部の各々の高さは200nmとした。即ち、これら第1の凸部のアスペクト比の平均値は200nm/1.0μm=0.2とした。
【0074】
第2の凸部の各々の底部における径は1.0μmとした。第2の凸部の各々の高さは300nmとした。即ち、これら第2の凸部のアスペクト比の平均値は300nm/1.0μm=0.3とした。
【0075】
なお、中心領域A1と周縁領域A2との境界と周縁領域A2の外周との最短距離(以下、最短距離d2と呼ぶ)は、5.0mmとした。
【0076】
次に、表示体D1について述べたのと同様にして、光透過層11の主面のうち中心領域A1のみに反射層13を設けた。その後、表示体D1について述べたのと同様にして、反射層13の背面及び端面並びに光透過層11の周縁領域A2を被覆した保護層15を形成した。
【0077】
以上のようにして、表示体10を得た。以下、この表示体を「表示体D9」と呼ぶ。
【0078】
<例10:表示体D10の製造>
最短距離d2を5.0mmとする代わりに、当該距離を2.0mmとしたこと以外は、表示体D9について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D10」と呼ぶ。
【0079】
<例11:表示体D11の製造>
最短距離d2を5.0mmとする代わりに、当該距離を1.4mmとしたこと以外は、表示体D9について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D11」と呼ぶ。
【0080】
<例12:表示体D12の製造>
最短距離d2を5.0mmとする代わりに、当該距離を1.0mmとしたこと以外は、表示体D9について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D12」と呼ぶ。
【0081】
<例13:表示体D13の製造>
最短距離d2を5.0mmとする代わりに、当該距離を0.5mmとしたこと以外は、表示体D9について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D13」と呼ぶ。
【0082】
<例14:表示体D14の製造>
最短距離d2を5.0mmとする代わりに、当該距離を0.3mmとしたこと以外は、表示体D9について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D14」と呼ぶ。
【0083】
<表示体D9乃至D14の耐久試験>
以上のようにして製造した表示体D9乃至D14について、耐久試験を行った。具体的には、上述したのと同様にして、耐アルカリ性試験、耐溶剤性試験及び耐熱性試験を行った。その結果を、表示体D7についての結果と共に、表2に示す。
【表2】

【0084】
表2から分かるように、表示体D9乃至D14は、表示体D7と比較してより優れた耐アルカリ性を有していた。特には、表示体D9乃至D13は、表示体D14と比較して更に優れた耐アルカリ性を有していた。なお、表示体D9乃至D14は、優れた耐溶剤性及び耐熱性を有していた。
【0085】
<例15:表示体D15の製造>
以下のようにして、第3態様に係る表示体10を製造した。
まず、型の形状を異ならしめたこと以外は、表示体D1について述べたのと同様にして、中心領域A1に複数の凸部が設けられ且つ周縁領域A2に複数の溝が設けられた光透過層11を準備した。なお、複数の凸部の形状は、円錐状とした。また、複数の溝の断面形状は、二等辺三角形状とした。これら複数の溝は、周縁領域A2の外周に沿って形成した。
【0086】
複数の凸部の各々の底部における径は1.0μmとした。複数の凸部の各々の高さは200nmとした。即ち、これら凸部のアスペクト比の平均値は200nm/1.0μm=0.2とした。
【0087】
複数の溝の各々の開口部における幅は1.0μmとした。複数の溝の各々の深さは300nmとした。即ち、これら溝のアスペクト比の平均値は300nm/1.0μm=0.3とした。
【0088】
なお、複数の溝のうち中心領域A1に最も近い溝の中心領域A1側の側壁と、複数の溝のうち中心領域A1から最も遠い溝の周縁領域A2の外周側の側壁との間の最短距離(以下、最短距離d3と呼ぶ)は、5.0mmとした。
【0089】
次に、表示体D1について述べたのと同様にして、光透過層11の主面のうち中心領域A1のみに反射層13を設けた。その後、表示体D1について述べたのと同様にして、反射層13の背面及び端面並びに光透過層11の周縁領域A2を被覆した保護層15を形成した。
【0090】
以上のようにして、表示体10を得た。以下、この表示体を「表示体D15」と呼ぶ。
【0091】
<例16:表示体D16の製造>
最短距離d3を5.0mmとする代わりに、当該距離を2.0mmとしたこと以外は、表示体D15について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D16」と呼ぶ。
【0092】
<例17:表示体D17の製造>
最短距離d3を5.0mmとする代わりに、当該距離を1.4mmとしたこと以外は、表示体D15について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D17」と呼ぶ。
【0093】
<例18:表示体D18の製造>
最短距離d3を5.0mmとする代わりに、当該距離を1.0mmとしたこと以外は、表示体D15について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D18」と呼ぶ。
【0094】
<例19:表示体D19の製造>
最短距離d3を5.0mmとする代わりに、当該距離を0.5mmとしたこと以外は、表示体D15について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D19」と呼ぶ。
【0095】
<例20:表示体D20の製造>
最短距離d3を5.0mmとする代わりに、当該距離を0.3mmとしたこと以外は、表示体D15について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D20」と呼ぶ。
【0096】
<表示体D15乃至D20の耐久試験>
以上のようにして製造した表示体D15乃至D20について、耐久試験を行った。具体的には、上述したのと同様にして、耐アルカリ性試験、耐溶剤性試験及び耐熱性試験を行った。その結果を、表示体D7について得られた結果と共に、表3に示す。
【表3】

【0097】
表3から分かるように、表示体D15乃至D20は、表示体D7と比較してより優れた耐アルカリ性を有していた。特には、表示体D15乃至D19は、表示体D20と比較して更に優れた耐アルカリ性を有していた。なお、表示体D15乃至D20は、優れた耐溶剤性及び耐熱性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】本発明の第2態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図4】図3に示す表示体のIV−IV線に沿った断面図。
【図5】本発明の第3態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図6】図5に示す表示体のVI−VI線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0099】
10…表示体、11…光透過層、13…反射層、15…保護層、A1…中心領域、A1a…領域、A1b…領域、A2…周縁領域、G…溝、RP…凹部又は凸部、RP1…第1の凹部又は凸部、RP2…第2の凹部又は凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に中心領域と前記中心領域を取り囲む周縁領域とを備えた光透過層と、前記主面のうち前記中心領域又はその一部のみを被覆した反射層と、前記反射層の背面及び端面並びに前記周縁領域を被覆した保護層とを具備し、
前記中心領域には複数の第1の凹部又は凸部が設けられ、前記周縁領域の全体には前記複数の第1の凹部又は凸部と比較して凹部の開口部の径若しくは幅に対する深さの比又は凸部の底部の径若しくは幅に対する高さの比の平均値がより大きな複数の第2の凹部又は凸部が設けられていることを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記中心領域と前記周縁領域との境界と前記周縁領域の外周との最短距離は0.5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
一方の主面に中心領域と前記中心領域を取り囲む周縁領域とを備えた光透過層と、前記主面のうち前記中心領域又はその一部のみを被覆した反射層と、前記反射層の背面及び端面並びに前記周縁領域を被覆した保護層とを具備し、
前記中心領域には複数の凹部又は凸部が設けられ、前記周縁領域には、前記周縁領域の外周に沿って1つ又は複数の溝が設けられていることを特徴とする表示体。
【請求項4】
前記周縁領域には前記複数の溝が設けられ、前記複数の溝のうち前記中心領域に最も近い溝の前記中心領域側の側壁と、前記複数の溝のうち前記中心領域から最も遠い溝の前記周縁領域の前記外周側の側壁との間の最短距離は0.5mm以上であることを特徴とする請求項3に記載の表示体。
【請求項5】
一方の主面に複数の凹部又は凸部が設けられた光透過層と、前記主面を部分的に被覆した反射層と、前記反射層の背面及び端面並びに前記主面のうち前記反射層によって被覆されていない領域を被覆した保護層とを具備し、
前記反射層の前記端面と前記保護層の端面との最短距離は1.0mm以上であることを特徴とする表示体。
【請求項6】
前記保護層は接着層であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
表示体の製造方法であって、一方の主面の一部に前記表示体が表示すべき像が複数の凹部又は凸部として記録された光透過層と、前記主面のうち前記複数の凹部又は凸部が設けられた領域を含んだ中心領域とこれを取り囲んだ周縁領域とを被覆した金属層との積層体に、マスクを介してアルカリ性溶液を適用して、前記金属層のうち前記周縁領域上に位置した部分を溶解させることにより、前記主面の一部を被覆した反射層を形成することと、
前記反射層の背面及び端面並びに前記周縁領域を被覆した保護層を形成することと
を具備したことを特徴とする表示体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−128096(P2010−128096A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301346(P2008−301346)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】