説明

表示体及びラベル付き物品

【課題】より高い偽造防止効果を実現する。
【解決手段】本発明の表示体10は、一主面に複数の凹部が設けられた基材20と、前記複数の凹部の各々の壁面を部分的に被覆したカラーシフト層30とを備え、前記主面を第1方向から観察した場合には、前記カラーシフト層30のうち前記壁面を被覆している部分は、前記複数の凹部の壁面のうち前記カラーシフト層30で被覆されていない部分と比較して視認が容易であり、前記主面を前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合には、前記複数の凹部の壁面のうち前記カラーシフト層30で被覆されていない部分は、前記カラーシフト層30のうち前記壁面を被覆している部分と比較して視認が容易であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような物品には、偽造又は模造が困難であると共に偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。
【0003】
また、近年では、認証物品及び有価証券以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証物品及び有価証券に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【0004】
この偽造防止技術の代表例として、観察する角度に応じて反射光の色変化、即ちカラーシフトを生じるカラーシフト媒体の使用が挙げられる。例えば、特許文献1には、カラーシフトを生じる顔料及びそれを用いた印刷物が記載されている。
【特許文献1】特表2002−523606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、このようなカラーシフトを示す材料が様々な分野で利用されるようになり、その入手が比較的容易となってきた。そのため、材料自身が有するカラーシフト効果だけに依存した偽造防止技術では、十分な偽造防止効果が得られない可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、この問題点を解決し、より高い偽造防止効果を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面によると、一主面に複数の凹部が設けられた基材と、前記複数の凹部の各々の壁面を部分的に被覆したカラーシフト層とを備え、前記主面を第1方向から観察した場合には、前記カラーシフト層のうち前記壁面を被覆している部分は、前記複数の凹部の壁面のうち前記カラーシフト層で被覆されていない部分と比較して視認が容易であり、前記主面を前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合には、前記複数の凹部の壁面のうち前記カラーシフト層で被覆されていない部分は、前記カラーシフト層のうち前記壁面を被覆している部分と比較して視認が容易であることを特徴とする表示体が提供される。
【0008】
本発明の第2側面によると、基材の一主面上にカラーシフト層を形成し、次いで、エンボス加工を施すことにより前記主面に複数の凹部を設けると共にそれら凹部の位置で前記カラーシフト層を破断させることにより得られる構造を備えたことを特徴とする表示体が提供される。
【0009】
本発明の第3側面によると、第1又は第2側面に係る表示体とこれを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、より高い偽造防止効果を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の態様の一例に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。なお、このII−II線は、図1に示すX方向と平行である。
【0013】
表示体10は、一方の主面に複数の溝130が設けられた基材20を含んでいる。基材20の溝130が設けられた主面上には、光吸収層40とカラーシフト層30とがこの順に形成されている。基材20の溝130が設けられた面とは反対側の主面上には、粘着層50が設けられている。
【0014】
基材20は、不透明であってもよく、透明であってもよい。不透明な基材20としては、例えば、アート紙、コート紙若しくは上質紙等の洋紙、コートボール、コートマニラ若しくは両面カード等の板紙、特殊証券用紙、白色ポリエチレンテレフタレート又は白色塩化ビニルシートを使用することができる。透明な基材20としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)を使用することができる。基材20は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0015】
カラーシフト層30は、回折、干渉又は選択反射に基づいて観察角度に応じた表示色の変化を生じる層である。カラーシフト層30は、例えば、酸化チタン及び/又は酸化鉄を主成分とする金属酸化物で表面を被覆された天然雲母粒子、コレステリック液晶、又は、屈折率の異なる複数の無機酸化物を積層した光干渉膜を含んでいる。このカラーシフト層30は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法若しくはスクリーン印刷法等の印刷法、バーコート法、グラビア法若しくはロールコート法等の塗布法、又は、真空蒸着法等の蒸着法により形成する。
【0016】
光吸収層40は、カラーシフト層30を透過した照明光を吸収する。この光吸収層40を設けることにより、カラーシフト層30からの反射光を、より容易に視認できるようになる。したがって、カラーシフト層30が呈する上述の光学効果がより顕著となり、表示体10の偽造防止効果を向上させることができる。
【0017】
基材20が透明である場合には、光吸収層40を、基材20のカラーシフト層30が形成された面とは反対側の主面上、即ち、基材20と粘着層50との間に設けてもよい。この場合、光吸収層40は、カラーシフト層30及び基材20を透過した光を吸収する。したがって、この場合にも、カラーシフト層30からの反射光をより容易に視認できるようになる。
【0018】
光吸収層40は、例えば、濃色のインキ、典型的には、黒色のインキからなる。この光吸収層40は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法若しくはスクリーン印刷法等の印刷法、又は、バーコート法、グラビア法若しくはロールコート法等の塗布法により形成する。
【0019】
なお、表示体10から光吸収層40を省略してもよい。
【0020】
粘着層50は、表示体10を真正さが確認されるべき物品に支持させる際に、表示体10とその物品とを接着させる機能を有している。粘着層50は、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、又は、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系若しくはポリイソブチル系接着剤を含んでいる。この粘着層50は、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリロニトリル、スチレン若しくはビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー若しくはアクリロニトリル等の改質成分、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤又は酸化防止剤等を更に含んでいてもよい。この粘着層50は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法又はスクリーン印刷法により形成することができる。
【0021】
なお、表示体10から粘着層50を省略してもよい。この場合、表示体10は、真正さが確認されるべき物品に、他の方法で支持させる。
【0022】
表示体10は、平坦領域110と、凹凸領域120とからなる。
【0023】
平坦領域110は、平坦面111を有している。この平坦面111は、カラーシフト層30からなる。すなわち、平坦領域110は、通常のカラーシフト効果を示す領域である。
【0024】
凹凸領域120は、溝130を有している。溝130の長さ方向は、図1に示すY方向と平行である。溝130は、典型的には、それらの長さ方向と交差する方向に連続して設けられている。
【0025】
溝130は、例えば、高さ方向がZ方向に対して垂直な直角三角柱状である。各溝130は、基材20の主面に対して傾斜した傾斜面131と、基材20の主面に対して略垂直な垂直面132とを有している。以下、この傾斜面131の基材20の主面に対する傾斜角を、θ(0゜<θ<90゜)とする。
【0026】
傾斜面131は、平坦領域110の平坦面111と同様に、カラーシフト層30からなる。一方、垂直面132は、カラーシフト層30によって被覆されず、露出した基材20からなる。
【0027】
表示体10の溝130が設けられた面を傾斜面131の正面方向から観察した場合には、カラーシフト層30からなる傾斜面131は、基材20からなる垂直面132と比較して視認が容易である。一方、表示体10の溝130が設けられた面を傾斜面131と平行な方向から観察した場合には、基材20からなる垂直面132は、カラーシフト層30からなる傾斜面131と比較して視認が容易である。
【0028】
したがって、表示体10の領域110及び120は、以下に述べるように、異なるカラーシフトを生じる。
【0029】
図3は、観察角度の変化に伴って図1及び図2に示す表示体10の各領域が生じる色変化の一例を示す概略図である。
【0030】
図3Aは、表示体10を平坦面111の正面方向、即ち垂直面132に平行な方向(図2に示す観察方向2A)から観察した場合に、表示体10が呈する色の一例を示している。この場合、凹凸領域120のうち、カラーシフト層30からなる傾斜面131は視認可能であるが、垂直面132は視認不可能又は困難である。
【0031】
このとき、平坦領域110は、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約0゜である場合に対応した色(例えば、赤紫色)を呈する。一方、凹凸領域120は、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約θである場合に対応した色(例えば、緑色)を呈する。したがって、図3Aに例示するように、平坦領域110及び凹凸領域120は、異なる色の領域として観察される。
【0032】
図3Bは、表示体10を傾斜面131の正面方向(図2に示す観察方向2B)から観察した場合に、表示体10が呈する色の一例を示している。この場合、凹凸領域120のうち、カラーシフト層30からなる傾斜面131は視認可能であるが、垂直面132は視認不可能又は困難である。
【0033】
このとき、平坦領域110は、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約θである場合に対応した色(例えば、緑色)を呈する。一方、凹凸領域120は、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約0゜である場合に対応した色(例えば、赤紫色)を呈する。したがって、図3Bに例示するように、平坦領域110及び凹凸領域120の各々は、図3Aに示す場合とは互いに反転した色を呈する。
【0034】
図3Cは、表示体10を傾斜面131に平行な方向(図2に示す観察方向2C)から観察した場合に、表示体10が呈する色の一例を示している。この場合、凹凸領域120のうち、基材20からなる垂直面132は視認可能であるが、傾斜面131は視認不可能又は困難である。
【0035】
このとき、平坦領域110は、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約(90゜−θ)である場合に対応した色(例えば、緑色)を呈する。一方、凹凸領域120は、基材20の色(例えば、白色)を呈するか、又は、基材20が透明であり且つ基材20のカラーシフト層30が形成された主面とは反対側の主面上に光吸収層40を更に備えた場合には、光吸収層40の色(例えば、黒色)を呈する。したがって、図3Cに例示するように、平坦領域110及び凹凸領域120は、図3A及び図3Bに示す場合とは異なる組み合わせの色を呈する。特に、この場合、凹凸領域120は、カラーシフト材料に特有の光沢及び色彩を示さない。そのため、表示体10が基材20が露出した面を含まず、その全面がカラーシフト層30で被覆されている場合と比較して、真正品の識別がより容易となる。
【0036】
基材20が透明である場合、基材20のカラーシフト層30を形成した側とは反対側の主面に、文字又は図柄等の情報を表示する印刷層を設けてもよい。この場合、凹凸領域120の垂直面132を通して、これらの情報を視認することが可能となる。したがって、表示体10の偽造防止効果を更に向上させることができる。
【0037】
ここで、溝130の深さ、即ち垂直面132の高さは、例えば、カラーシフト層30の厚さの約2倍以上とする。溝130の深さが小さい場合、垂直面132において基材20を露出させることができず、十分な偽造防止効果が発揮できない可能性がある。
【0038】
また、上では溝130が直角三角柱状である場合について説明したが、溝130の形状は、凹凸領域120が、カラーシフト層30に被覆された面と、カラーシフト層30により被覆されず、基材20が露出した面とを有している限り、任意の形状でありうる。例えば、溝130は、直角三角柱状以外の三角柱状であってもよく、その他の多角柱状であってもよい。また、表示体10には、溝130の代わりに、溝以外の凹部を設けてもよい。例えば、円錐及び四角錘などの錘状の凹部を設けてもよく、切頭円柱及び切頭四角柱などの切頭柱状の凹部を設けてもよい。
【0039】
カラーシフト層30に被覆された面と、カラーシフト層30により被覆されず、基材20が露出した面とを有した凹部を備えていてもよい。
【0040】
なお、表示体10は、カラーシフト層30を被覆する最表層としての保護層を更に備えていてもよい。保護層は、表示体10の損傷及び/又は光による劣化を軽減すると共に、偽造者による型取り等を抑止する機能を有している。
【0041】
保護層としては、例えば、ポリエステル又はアクリル等の樹脂を使用することができる。保護層は、例えば、紫外線吸収剤、又はポリエチレンワックス等の滑剤を更に含んでいてもよい。この保護層は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法又はスクリーン印刷法により形成する。なお、塗布に際して、レベリング剤又は消泡剤等を更に添加してもよい。
【0042】
この表示体10は、例えば、以下のようにして製造する。
【0043】
まず、基材20の一方の主面上に、光吸収層40及びカラーシフト層30をこの順に積層する。次に、そのカラーシフト層30側の面に、例えば三角波状の断面形状を有する波形の凸部が設けられたエンボス板を押し当てて、エンボス板の凸部に対応した凹部を生じさせると共に、光吸収層40及びカラーシフト層30を破断させる。具体的には、エンボス処理により、基材20がカラーシフト層30によって被覆された傾斜面131と、基材20がカラーシフト層30によって被覆されず、基材20が露出した垂直面132とを生じさせる。続いて、基材20の他方の主面上に、粘着層50を形成する。以上のようにして、表示体10を得る。
【0044】
なお、上記のエンボス処理に先立って、カレンダリングによる平滑化処理を行ってもよい。この処理により、カラーシフト層30が示す光学効果をより顕著にすることができる。
【0045】
図4は、本発明の態様の他の例に係る表示体を概略的に示す平面図である。図5は、図4に示す表示体のV−V線に沿った断面図である。なお、このV−V線は、図4に示すX方向と平行である。
【0046】
図4及び図5に示す表示体10は、凹凸領域120に傾斜方向が互いに異なる2種類の溝130A及び130Bが設けられており、凹凸領域120が2種類の領域、即ち第1凹凸領域120A及び第2凹凸領域120Bからなること以外は、図1及び図2に示す表示体10と同様の構成を有している。溝130Aは、傾斜面131Aと垂直面132Aとを備え、溝130Bは、傾斜面131Bと垂直面132Bとを備えている。ここでは、一例として、傾斜面131A及び131Bの傾斜方向が図4及び図5に示すZ軸に対する回転対称の関係にあり、傾斜面131A及び131Bの傾斜角が共に45゜である場合について説明する。
【0047】
図6は、観察角度の変化に伴って図4及び図5に示す表示体10の各領域が生じる色変化の一例を示す概略図である。
【0048】
図6Aは、表示体10を平坦面111の正面方向、即ち垂直面132A及び132Bに平行な方向(図5に示す観察方向5A)から観察した場合に、表示体10が呈する色の一例を示している。この場合、第1凹凸領域120A及び第2凹凸領域120Bのうち、カラーシフト層30からなる傾斜面131A及び131Bは視認可能であるが、垂直面132A及び132Bは視認不可能又は困難である。
【0049】
このとき、平坦領域110は、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約0゜である場合に対応した色(例えば、赤紫色)を呈する。一方、第1凹凸領域120A及び第2凹凸領域120Bは、カラーシフト層30からの反射光の反射角が45゜である場合に対応した色(例えば、緑色)を呈する。したがって、図6Aに例示するように、平坦領域110と、第1凹凸領域120A及び第2凹凸領域120Bとは、異なる色の領域として観察される。特に、この場合、第1凹凸領域120A及び第2凹凸領域120Bは同じ色を呈する。したがって、表示体10を正面から観察しただけでは、凹凸領域120が複数の領域からなることは視認されない。
【0050】
図6Bは、表示体10を傾斜面131Aの正面方向(図5に示す観察方向5B)から観察した場合に、表示体10が呈する色の一例を示している。この場合、第1凹凸領域120Aのうち、カラーシフト層30からなる傾斜面131Aは視認可能であるが、垂直面132Aは視認不可能又は困難である。また、第2凹凸領域120Bのうち、基材20からなる垂直面132Bは視認可能であるが、傾斜面131Bは視認不可能又は困難である。
【0051】
このとき、平坦領域110は、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約45゜である場合に対応した色(例えば、緑色)を呈する。第1凹凸領域120Aは、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約0゜である場合に対応した色(例えば、赤紫色)を呈する。また、第2凹凸領域120Bは、基材20又は光吸収層40の色(例えば、白色又は黒色)を呈する。したがって、図6Bに例示するように、平坦領域110と第1凹凸領域120Aと第2凹凸領域120Bとは、互いに異なる色を呈する。この場合には、第1凹凸領域120A及び第2凹凸領域120Bは異なる色を呈するため、凹凸領域120が複数の領域からなることが視認される。
【0052】
図6Cは、表示体10を傾斜面131Bの正面方向(図5に示す観察方向5C)から観察した場合に、表示体10が呈する色の一例を示している。この場合、第1凹凸領域120Aのうち、基材20からなる垂直面132Aは視認可能であるが、傾斜面131Aは視認不可能又は困難である。また、第2凹凸領域120Bのうち、カラーシフト層30からなる傾斜面131Bは視認可能であるが、垂直面132Bは視認不可能又は困難である。
【0053】
このとき、平坦領域110は、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約45゜である場合に対応した色(例えば、緑色)を呈する。第1凹凸領域120Aは、基材20又は光吸収層40の色(例えば、白色又は黒色)を呈する。また、第2凹凸領域120Bは、カラーシフト層30からの反射光の反射角が約0゜である場合に対応した色(例えば、赤紫色)を呈する。したがって、図6Cに例示するように、第1凹凸領域120Aと第2凹凸領域120Bとは、図6Bに示す場合とは互いに反転した色を呈する。この場合にも、第1凹凸領域120A及び第2凹凸領域120Bは異なる色を呈するため、凹凸領域120が複数の領域からなることが視認される。
【0054】
なお、凹凸領域120A及び120Bは、溝130の傾斜角、長さ方向又は配列方向が異なっていてもよい。また、凹凸領域120は、溝130の傾斜角、傾斜方向、長さ方向又は配列方向等が異なる他の領域を更に含んでいてもよい。この場合、表示体10は、更に複雑な視覚効果を呈する。
【0055】
この表示体10は、エンボス処理の工程以外は、図1及び図2に示す表示体10について説明したのと同様の方法で製造することができる。このエンボス処理は、例えば、図5に示す複数の溝130A及び130Bに対応した凸部が設けられたエンボス板を用いて行うことができる。
【0056】
図7は、図1乃至図6を参照しながら説明した表示体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。このラベル付き物品200は、物品201と表示体10とを含んでいる。
【0057】
物品201は、真正さが確認されるべき物品である。物品201は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体である。物品201は、認証媒体及び有価証券媒体以外の物品でもよい。例えば、物品201は、工芸品又は美術品であってもよい。或いは、物品201は、包装体とこれに収容された内容物とを含んだ包装品であってもよい。
【0058】
表示体10は、物品201に支持されている。例えば、表示体10は、物品201に貼り付けられる。
【0059】
表示体10は、他の方法で物品201に支持させてもよい。
【0060】
例えば、物品201が紙を含んでいる場合、この紙の中に表示体10を埋め込んでもよい。この場合、ラベル付き物品200は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に表示体10を挟みこみ、その後、必要に応じて紙面への印刷等を行うことにより得られる。なお、表示体10の視認性を向上させるべく、紙のうち表示体10の前面を被覆している部分には開口を設けてもよい。また、紙に埋め込む表示体10の形状に特に制限はない。例えば、スレッド状の表示体10を紙に埋め込んでもよい。
【0061】
表示体10を含んだタグを物品201に取り付けることにより、表示体10を物品201に支持させてもよい。物品201へのタグの付け替えが一般ユーザにとって困難であれば、表示体10は、物品201の真正さを確認するのに十分に役立つ。
【0062】
また、表示体10について説明した上記の技術は、転写箔又は転写シート等にも適用することができる。
【0063】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0065】
(例1)
粘着層50を形成せず、光吸収層40を、基材20とカラーシフト層30との間に形成する代わりに基材20のカラーシフト層30が形成された主面とは反対側の主面上に形成したこと以外は、図1及び図2を参照しながら説明したのと同様の表示体を製造した。
【0066】
まず、厚さ50μmのPETフィルムの一方の主面に、光吸収性インキ SS NSA 911墨(東洋インキ製造社製)をスクリーン印刷した。このようにして、光吸収層を形成した。
【0067】
次に、PETフィルムの他方の主面に、Colorstream T10−01(メルク社製)15部とSS NSA メジウム(東洋インキ製造社製)85部とからなる光干渉性顔料をスクリーン印刷した。このようにして、カラーシフト層を形成した。
【0068】
続いて、カラーシフト層に、図2に示す複数の溝に対応した凸部が設けられたエンボス板を押し当てた。これにより、傾斜面の傾斜角θが約60゜、垂直面の高さが約25μmの複数の溝を形成すると共に、カラーシフト層を破断させた。
【0069】
以上のようにして、表示体を得た。以下、この表示体を、「表示体A」と呼ぶ。
【0070】
表示体Aは、その観察方向に応じて、以下の表1のような色の変化を生じた。なお、観察方向2A乃至2Cは、図2及び図3について説明したのと同様の方向を意味する。
【表1】

【0071】
(例2)
粘着層50を形成しなかったこと以外は、図4及び図5を参照しながら説明したのと同様の表示体を製造した。
【0072】
まず、アートコートタック紙の一方の主面に、光吸収性インキ SS NSA 911墨(東洋インキ製造社製)をスクリーン印刷した。このようにして、光吸収層を形成した。
【0073】
次に、この光吸収層上にColorstream T10−01(メルク社製)15部とSS NSA メジウム(東洋インキ製造社製)85部とからなる光干渉性顔料をスクリーン印刷した。このようにして、光吸収層上に、カラーシフト層を形成した。
【0074】
続いて、カラーシフト層に、図5に示す複数の溝に対応した凸部が設けられたエンボス板を押し当てた。これにより、垂直面の高さが約25μmの複数の溝を形成すると共に、光吸収層及びカラーシフト層を破断させた。
【0075】
以上のようにして、表示体を得た。以下、この表示体を、「表示体B」と呼ぶ。
【0076】
表示体Bは、その観察方向に応じて、以下の表2に示すような色の変化を生じた。なお、観察方向5A乃至5Cは、図5及び図6について説明したのと同様の方向を意味する。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の態様の一例に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す表示体の観察方向による色変化の一例を示す概略図。
【図4】本発明の態様の他の例に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図5】図4に示す表示体のV−V線に沿った断面図。
【図6】図4及び図5に示す表示体の観察方向による色変化の一例を示す概略図。
【図7】本発明の態様に係る表示体が支持されたラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0078】
2A,2B,2C,5A,5B,5C…観察方向、10…表示体、20…基材、30…カラーシフト層、40…光吸収層、50…粘着層、110…平坦領域、111…平坦面、120…凹凸領域、130,130A,130B…溝、131,131A,131B…傾斜面、132,132A,132B…垂直面、200…ラベル付き物品、201…物品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面に複数の凹部が設けられた基材と、前記複数の凹部の各々の壁面を部分的に被覆したカラーシフト層とを備え、前記主面を第1方向から観察した場合には、前記カラーシフト層のうち前記壁面を被覆している部分は、前記複数の凹部の壁面のうち前記カラーシフト層で被覆されていない部分と比較して視認が容易であり、前記主面を前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合には、前記複数の凹部の壁面のうち前記カラーシフト層で被覆されていない部分は、前記カラーシフト層のうち前記壁面を被覆している部分と比較して視認が容易であることを特徴とする表示体。
【請求項2】
基材の一主面上にカラーシフト層を形成し、次いで、エンボス加工を施すことにより前記主面に複数の凹部を設けると共にそれら凹部の位置で前記カラーシフト層を破断させることにより得られる構造を備えたことを特徴とする表示体。
【請求項3】
前記基材と前記カラーシフト層との間に介在した光吸収層を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
前記基材は透明であり、前記基材の前記カラーシフト層が形成された主面とは反対側の主面上に光吸収層を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体。
【請求項5】
前記基材に対して前記カラーシフト層とは反対側に最表層としての粘着層を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記カラーシフト層を被覆する最表層としての保護層を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体とこれを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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