説明

表示体及びラベル付き物品

【課題】回折構造はその製造に高度な技術を要するが、近年の微細構造の解析技術の向上や微細加工技術の普及に伴い、回折構造を含んだ表示体の偽造が可能となりつつある。また、回折構造を含んだ表示体の普及に伴い、回折構造が提供する視覚効果の特殊性は低下しつつある。このような問題に対し、偽造防止効果の優れた表示体を提供すること。
【解決手段】本発明の表示体10は、光透過層の一方の主面に、一次元あるいは二次元的に配列した凹部12b又は凸部12a又はその両方を含む凹凸構造領域12を備え、前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域12の少なくとも一部を被覆する反射層を具備しており、前記複数の凹部12b又は凸部12a又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあること、また反射層の厚みにより反射率を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止技術に関する。例えば、偽造防止技術の施された表示体やラベル付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのために従来から、そのような物品にはその偽造を抑止すべく、偽造又は模造が困難であると共に、偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。
また、近年では、認証物品及び有価証券以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証物品及び有価証券に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【0003】
このような目的では、従来から、観察角度等に応じた色変化(カラーシフト)を生じるOVD(optical variable device)などが利用されている。OVDとしては、例えば、多層膜、ホログラム及び回折格子がある。
【0004】
多層膜は、光学特性が異なるセラミックや金属を幾重にも積層した構造を有している。多層膜では、各層の光学的厚さを適宜設計することにより、或る波長の光に強め合う干渉を生じさせ、他の波長の光に弱め合う干渉を生じさせることができる。界面間の光路長は観察角度に応じて変化するので、観察角度を変化させると、強め合う干渉を生じる光の波長と弱め合う干渉を生じる光の波長とが変化する。このような原理で、多層膜は、観察角度に応じたカラーシフトを生じる。
【0005】
ホログラム及び回折格子などの回折構造は、例えば、微細な凹凸パターンからなるか、又は、縞状の屈折率分布が設けられた層からなる。回折構造は、白色光で照明すると、回折光を波長に応じて異なる角度で射出する。回折構造がカラーシフトを生じるのは、この分光作用などのためである。
【0006】
このように、OVD、特に回折構造は、特徴的な視覚効果を有している。そして、回折構造を利用すると、立体画像や虹色に輝く特殊な装飾画像などの複雑な画像を表示させることができる。加えて、以下に説明するように、回折構造は、その製造に高度な技術を要する。
【0007】
ホログラムは、例えば、体積型ホログラムとレリーフ型ホログラムとに分類することが
できる。
【0008】
体積型ホログラムの製造では、感光性樹脂等の記録材料からなる層に3次元的に干渉縞を記録する。体積型ホログラムとしては、リップマンホログラムが一般的に使用されている。
【0009】
レリーフ型ホログラムの製造では、まず、レーザー光の干渉を利用した光学的撮影方法、又は電子線描画などにより、表面に微細な凹凸パターンが設けられた樹脂層を含んだ原版を作製する。次に、この原版から、電鋳等により金属製スタンパを作製する。その後、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる基材の平坦面上に熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂等を塗布し、これに先の金属製スタンパを密着させる。この状態で熱や光を与えて樹脂を硬化させ、更に樹脂層から金属性スタンパを剥離することによりレリーフ型ホログラムを得る。
【0010】
回折格子の製造は、例えば、レリーフ型ホログラムの製造について説明したのと同様の方法により行う。
【0011】
なお、特許文献1には、回折格子を用いて立体画像を表示する表示体が記載されている。また、特許文献2には、画素構造を採用した表示体が記載されている。回折格子に対する照明光の入射角を固定して回折格子を白色光で照明した場合、この回折格子が表示する色は、回折格子の格子定数、即ち、回折格子を構成している格子線の空間周波数と、観察方向が回折格子の法線に対して為す角度と、格子線が観察方向と回折格子の法線とに平行な平面に対して為す角度とによって決定される。従って、表示体を複数の画素で構成した場合、表示すべき画像の色から、各画素の回折格子に採用すべき構造を特定することができる。このような画素構造を採用すると、表示体の設計が容易になる。
【0012】
上記の通り、回折構造は、特徴的な視覚効果を提供することができ、その製造に高度な技術を要する。このため、偽造防止効果を期待して、回折構造を含んだ表示体を上述した物品に支持させることがある。また、上記の通り、回折構造は特徴的な視覚効果を提供し得るため、装飾材や絵本及びカタログ等の一般的な印刷物に利用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5058992号明細書
【特許文献2】特開平6−82612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、回折構造はその製造に高度な技術を要するが、近年の微細構造の解析技術の向上や微細加工技術の普及に伴い、回折構造を含んだ表示体の偽造が可能となりつつある。即ち、回折構造を含んだ表示体の偽造防止効果は低下しつつある。
また、回折構造を含んだ表示体の普及に伴い、回折構造が提供する視覚効果の特殊性は低下しつつある。
【0015】
本発明の目的は、偽造が困難であり且つ特殊な視覚効果を提供し得る表示体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、光透過層の一方の主面の少なくとも一部に、一次元あるいは二次元的に配列した複数の凹部又は凸部又はその両方を含む凹凸構造領域を備え、前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域の少なくとも一部を被覆する反射層を具備しており、
前記複数の凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあり、かつ前記反射層の少なくとも一部の厚みが130nm以上500nm以下であることを特徴とする表示体である。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、前記光透過層の一方の主面に、前記凹凸構造12と共に、構造のない平坦領域14を有することを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、前記光透過層の一方の主面に、前記複数の凹部12b又は凸部12aの深さ又は高さが前記中心間距離の1/2以上であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の表示体である。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、前記反射層の少なくとも一部の厚みが、他の反射層と厚みが異なることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の表示体である。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、 前記光透過層11の一方の主面に前記凹凸構造領域12を備え、 前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域12の少なくとも一部を被覆する反射層13と、 前記一方の主面に支持され、少なくとも前記凹凸構造領域12を被覆する樹脂層と、を順次具備することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の表示体である。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の表示体とこれを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、見易い正面からの観察では、従来のホログラムや回折格子には見られない黒さを表現することができ、また、従来のホログラムや回折格子と組み合わせることにより、偽造防止効果と意匠性を高めるとともに、正面から大きく傾けて観察したときは絵柄、文字、記号等を表示することで真偽判定を容易にすることができる表示体及びこれを用いた物品を提供することを目的とする。
なお、表示体とは、文字、絵、図柄等の情報を光強度の変化で提示し、目視や、機械読
み取りによって確認できるものである。
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、光透過層の一方の主面の少なくとも一部に、一次元あるいは、二次元的に配列した複数の凹部12b又は凸部12a又はその両方を含む凹凸構造領域12を備え、前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域12の少なくとも一部を被覆する反射層を具備しており、前記複数の凹部12b又は凸部12a又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にすることで、凹部12bまたは凸部12aの表面積を大きくでき、これによって、光の吸収を大きくし、従来のホログラムや回折格子では表現できなかった黒色乃至灰色を表現することが可能となり、かつ前記反射層の少なくとも一部の厚みが130nm以上500nm以下にすることで、反射層の精確な厚み制御を行わずして均一な性能を発揮することが可能となる。なお、「黒色乃至灰色」は、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が50%以下であることを意味する。
【0024】
本発明の概要を、図1、3を用いて説明する。図1は凹凸構造12の説明用斜視図である。図2は図1に示すA−A’線に沿った凹凸構造12の断面図、図3は表示体10を観察するときの説明図である。
光透過層11の一方の主面に、一次元あるいは、二次元的に配列した凹部12b又は凸部12a又はその両方を含む凹凸構造領域12の少なくとも一部を反射層13で被覆することで、反射層13の表面積を大きくでき、それにより、光の吸収を大きくする。
正面で観察した場合(VW1)、光源LSから照明光LIの正反射光LR1が小さくなり、黒色乃至灰色を表現することができる。また、前記凹凸構造12の中心間距離200nm以上乃至500nm以下にすることにより、凹凸構造12による回折光LD1が表示体の正面方向に発生せず、正面方向に対し、大きな角度に回折光が発生するので、正面から大きく傾けて観察したとき(VW2)のみ、回折光による絵柄、文字、記号等を表示することが可能になる。
【0025】
次に、前記反射層13の厚みによる前記凹凸構造の反射率、透過率の変化を図4に示す。
図4は、図1に斜視図、図2に断面図を示している椀形状凹部12b(高さH400nm、中心間距離P300nm)と椀形状凹部12b(高さH400nm、中心間距離P400nm)、平坦部のそれぞれが正方格子状に設けられたアルミニウム(Al)からなる反射層について、FDTD(finite difference time domain)法による垂直入射の反射率、透過率シミュレーションを光の波長532nmで行うことによって得られたデータを示している。
【0026】
このシミュレーション結果より、前記反射層Alの厚みが150nm以上500nm以下であるとき、凹凸構造のAlの厚みによる変化および、平坦部のAlの厚みによる変化はない。
この範囲では、Alの厚みを精確に制御しなくても安定した性能を示すことが可能である。図2に示す反射層の厚みムラ13bが発生しても、観察者はその違いを区別することができないため、欠陥とはならない。また、500nm以下にすることにより、前記表示体を大量生産に向く、フィルム形状で作製することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、前記光透過層11の一方の主面に、前記凹凸構造12と共に、平坦領域14を有することで、凹凸構造領域12の黒色乃至灰色と、平坦領域14の鏡面反射を並べることによりコントラストの高い表現が可能となる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、前記凹凸構造領域12の凹部12b又は凸部12aの深さ又は高さが前記中心間距離の1/2以上にすることで、光の吸収を大きくし、より暗い黒を表現することができる。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば、前記凹凸構造領域12の凹部12b又は凸部12aの深さ又は高さが前記中心間距離の1/2以上にすることで、光の吸収を大きくし、より暗い黒を表現することができる。
【0030】
請求項4に記載の発明によれば、前記反射層の少なくとも一部の厚みを、前記反射層の他の一部と厚みと異なるせることで、前記反射層の両方の厚みが130nmから500nmの場合は、前記反射層の厚みの違いを観察者に隠すことができ、また、前記反射層の片方の厚みを130nm以下にすることで、前記凹凸構造の形状起因ではなく、前記反射層の厚み起因による違いを明確に観察者に示すことが可能となる。
【0031】
請求項5に記載の発明によれば、前記光透過層11の一方の主面に前記凹凸構造領域12を備え、 前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域12の少なくとも一部を被覆する反射層13と、前記一方の主面に支持され、少なくとも前記凹凸構造領域を被覆する樹脂層と、を順次具備することで、前記凹凸構造領域12を保護することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明によれば、物品に前記表示体を具備することにより、偽造防止効果の高いラベル付き物品が提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の凹凸構造12の説明用斜視図。
【図2】図1に示すA−A’線に沿った凹凸構造の断面図。
【図3】本発明の表示体10を観察するときの効果説明図。
【図4】本発明の表示体10の反射層13の厚みと反射率/透過率との関係の一例を示すグラフ。
【図5】本発明の第1態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図6】本発明の第2態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示すB−B’線に沿った凹凸構造12の断面図。
【図8】図6に示すB−B’線に沿った凹凸構造12に被覆している反射層13の厚みを示すグラフ。
【図9】本発明の第3態様に掛かる偽造防止用又は識別用ラベルを物品に支持させてなるラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【図10】粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図11】凹凸構造12に採用可能な構造の例を概略的に示す斜視図。
【図12】凹凸構造12に採用可能な構造の例を概略的に示す斜視図。
【図13】凹凸構造12に採用可能な構造の例を概略的に示す斜視図。
【図14】凹凸構造12に採用可能な構造の例を概略的に示す斜視図。
【図15】表示体の一変形例を概略的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る表示体及びこれを用いた物品の具体的な実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0035】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図5は、本発明の第1態様に係る表示体10を概略的に示す平面図である。DP1は椀形状凹部12b(高さH400nm、中心間距離P300nm)で構成された領域で、DP2は椀形状凹部12b(高さH400nm、中心間距離P400nm)で構成された領域である。DP3は平坦領域である。また、前記表示体10は反射層13として全体に150nmのAlが被覆されている。
反射層13としては、例えば、アルミニウム、銀、金及びそれらの合金などの金属材料また、金属インクからなる金属層を使用することができる。或いは、反射層13として、光透過性とは屈折率が異なる誘電体層を使用してもよい。或いは、反射層13として、隣り合うもの同士の屈折率が異なる誘電体層の積層体、すなわち、誘電体多層膜、を使用してもよい。但し、誘電体多層膜が含む誘電体層のうち光透過層と接触しているものの屈折率は、光透過層の屈折率とは異なっている必要がある。
本発明の表自体10を図4と同様に光源LSからの照明光LI角度を30度とし、正反射方向で観察した場合(VW1)、DP1、DP2からの反射光は弱く(図4より)、違いを識別することは難しい。また、鏡面となるDP3からの反射光はDP1、DP2に対し、高い反射率を有するため、コントラストの高い画像が表示される。
次に正面から大きく傾けて観察した場合(観察角度70度VW2)、DP1からは青い回折光LD1(波長432nm)が、また、DP2からは黄色い回折光LD1(波長576nm)を観察することができ、DP1とDP2を識別することが可能となる。また、DP3の平坦領域は暗くなる。以上の特殊な視覚効果を有することで、偽造防止効果を高め、また、表示体の審議判定も容易に行うことが可能となる。
【実施例2】
【0036】
図6は、本発明の第2態様に係る表示体10を概略的に示す平面図である。図7は図6に示す表示体のB−B’線に沿った断面図であり、図8は図6に示す表示体のB−B’線上の反射層(Al)の厚みの分布を示した図である。
図6の表示体は第1態様と同様にDP1、DP2、DP3から構成されている。しかし、図7、8に示すとおり、反射層として皮膜されているAlの厚みを50nmから200nmへと、連続的に変化させている。
DP2aでは、反射層Alの厚みは50nmから130nmと連続的に変化している。そのため、図4に示すとおり連続的に反射率が変化するため、黒色乃至灰色のグラデーションを表現することが可能である。しかし、凹凸構造12の違いはないため、凹凸構造12の解析では違いは現れない。また、DP2bにおいては、反射層Alの厚みは150nmから200nmまで変化しているが、DP2b内の反射率の変化はなく、均一の反射率を示すことが可能となる。
また、平坦領域であるDP3では、Alの厚みの差異にかかわらず、ほぼ等しい反射率を有するため、表示体10を目視するだけでは、反射体13の厚みの違いを認識することは困難であり、偽造防止効果を高めることが可能である。
【実施例3】
【0037】
図10は、偽造防止用又は識別用ラベルを物品に支持させてなるラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。
【0038】
図10には、ラベル付き物品の一例として、印刷物を描いている。この印刷物は、ID(identification)カードであって、印刷物本体20を含んでいる。
【0039】
印刷物本体20は、基材210を含んでいる。基材210は、例えば、プラスチックからなる。基材210上には、印刷層220が形成されている。基材210の印刷層220が形成された面には、上述した表示体10が例えば粘着層30を介して固定されている。表示体10は、例えば、粘着層30又は接着層50を介して貼りつけることにより、基材210に固定する。
【0040】
この印刷物は、表示体10を含んでいる。それゆえ、この印刷物の偽造又は模造は困難である。また、この印刷物は、表示体10を含んでいるので、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。しかも、この印刷物20は、表示体10に加えて、印刷層220を更に含んでいるため、これを利用した偽造防止対策を採用することができる。
【0041】
なお、図10には、表示体10を含んだ印刷物としてIDカードを例示しているが、表示体10を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物は、磁気カード、無線カード及びIC(integrated circuit)カードなどの他のカードであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物20は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物20は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0042】
また、図10に示す印刷物20では、表示体10を基材40に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0043】
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体10を支持させてもよい。例えば、表示体10は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
【0044】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【0045】
これらのラベル付き物品の製造には、例えば、粘着ラベル又は転写箔を利用することができる。
【0046】
図9は、粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。
この粘着ラベルは、上述した表示体10と粘着層30とを含んでいる。粘着層30は、表示体10にその表示面の裏面側で支持されている。即ち、粘着層30は、表示体10の表示面の裏面を被覆している。粘着ラベルは、粘着層30を剥離可能に被覆する剥離紙を更に含んでいてもよい。
【0047】
上述した表示体10には、様々な変形が可能である。例えば、先の表示体10は、二次元的に配列した椀形状凹部12bからなる凹凸構造12を含んだ表示部として、2つの表示部DP1及びDP2のみを含んでいるが、表示体10は、このような表示部を3つ以上含んでいてもよい。また、凹凸構造12として一次元的に配列した回折格子でもよい。
【0048】
また、ここでは、凹部12bが椀形状凹部12bである例を説明したが、それら凹凸構造の形状は椀形状凹部12bに限られない。
【0049】
図11乃至図14は、凹凸構造12に採用可能な構造の例を概略的に示す斜視図である。
凹凸構造12は、柱状や、截頭錐体形状、錐体形状、錐体と柱体とを組み合わせた形状、半球体、半楕円体又はそれらを変形させた形状を有していてもよい。
【0050】
また、光透過層11には、凹部12bの代わりに、凸部12aを設けてもよい。
【0051】
図15は、表示体の一変形例を概略的に示す斜視図である。
なお、図15では、表示体10の一部を観察した様子を描いている。
【0052】
この表示体10は、凹凸構造12に、凹部12bの代わりに凸部12aが設けられていること以外は先に説明した表示体10と同様である。このように、凹部12b代わりに凸部12aを設けた場合も、上述した効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
10…表示体、11…光透過層、12…凹凸構造、13…反射層、14…平坦領域、
20…印刷物本体、30…粘着層、40…基材、50…接着層、130…剥離保護層、
210…基材、220…印刷層、DP1…表示部、DP2…表示部、DP3…表示部、
LD1…回折光、LR1…反射光、LS…光源、LI・・・照明光、VW1…観察者、
VW2…観察者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過層の一方の主面の少なくとも一部に、一次元あるいは二次元的に配列した複数の凹部又は凸部又はその両方を含む凹凸構造領域を備え、前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域の少なくとも一部を被覆する反射層を具備しており、
前記複数の凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあり、かつ前記反射層の少なくとも一部の厚みが130nm以上500nm以下であることを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記光透過層の一方の主面に、前記凹凸構造領域と共に、構造のない平坦領域を有することを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記光透過層の一方の主面に、前記凹凸構造領域の凹部又は凸部の深さ又は高さが前記中心間距離の1/2以上であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の表示体。
【請求項4】
前記反射層の少なくとも一部の厚みが、前記反射層の他の一部と厚みが異なることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の表示体。
【請求項5】
前記光透過層の一方の主面に前記凹凸構造領域を備え、
前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域の少なくとも一部を被覆する反射層と、
前記一方の主面に支持され、少なくとも前記凹凸構造領域を被覆する樹脂層と、
を順次具備することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の表示体とこれを支持した物品とを具備したことを
特徴とするラベル付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−231002(P2010−231002A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78816(P2009−78816)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】