説明

表示制御装置、表示制御方法および表示制御プログラム

【課題】地表画像を描画するために読み込むデータのデータ量を抑制する。
【解決手段】地図上に設定された複数の区画のそれぞれに対して、複数の区画のそれぞれを所定距離以内の他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第1地表データと、複数の区画のそれぞれを所定距離よりも遠い他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第2地表データとを対応付けて記録し、複数の区画のうち視点が設けられる視点区画から所定距離以内の他の区画である第1周辺区画と、複数の区画のうち視点区画から所定距離よりも遠い他の区画である第2周辺区画とを特定し、第1周辺区画についての第1地表データと、第2周辺区画についての第2地表データとがそれぞれ示す代表高さによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩を付すことにより視点位置から見た地表を表す地表画像を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、表示制御方法および表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元形状データに基づいて2次元の表示画像を描画するにあたり、視点からの距離が長い領域ほど簡略化レベルを大きくして表示画像を描画する技術が提案されている(特許文献1,参照)。具体的には、3次元形状データに基づく3次元立体に対する多角形近似を行う際の許容誤差を緩和することにより、簡略化レベルを大きくする。これにより、視点からの距離が長い領域についての表示画像を描画する際の処理負荷が軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−266213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、視点からの距離に拘わらず、すなわち簡略化レベルの大きさに拘わらず描画に使用する3次元形状データは同じとなる。従って、視点からの距離が長い領域についての描画を行う場合であっても、視点からの距離が短い領域についての描画を行う場合と同様に3次元形状データを読み込まなければならないという問題があった。すなわち、視点からの距離が長い領域についての描画を行う場合であっても、詳細に描画が可能な3次元形状データを読み込む必要があり、データのキャッシュ容量やデータ読み込み時間が抑制できないという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたものであり、地表画像を描画するために読み込むデータのデータ量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明の表示制御装置は、地図上に設定された複数の区画のそれぞれに対して第1地表データと第2地表データとを対応付けて記録する。第1地表データは、複数の区画のそれぞれを所定距離以内の他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す。一方、第2地表データは、複数の区画のそれぞれを所定距離よりも遠い他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す。すなわち、第1地表データと第2地表データとは、互いに距離の異なる他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す。視点区画特定手段は、複数の区画のうち視点が設けられる視点区画を特定する。周辺区画特定手段は、複数の区画のうち視点区画から所定距離以内の他の区画である第1周辺区画と、複数の区画のうち視点区画から所定距離よりも遠い他の区画である第2周辺区画とを特定する。描画手段は、第1周辺区画についての第1地表データと、第2周辺区画についての第2地表データとがそれぞれ示す代表高さによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩を付すことにより視点から見た地表を表す地表画像を描画する。そして、表示制御手段は、地表画像を含む画像を表示させる。
【0006】
前記の構成において、複数の区画のそれぞれを見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第1地表データと第2地表データを記録しておくことにより、第1地表データと第2地表データとが示す代表高さと代表色彩とに基づいて視点から見た地表を表す地表画像を描画できる。第1地表データと第2地表データとは区画を見た場合の地表の代表的な高さと色彩とを示すため、第1地表データと第2地表データとを1個の区画につき最少2個の値で構成することができる。従って、第1地表データと第2地表データを読み込んで地表画像を描画すれば、区画に存在する個々の地物の3次元形状を示すデータを読み込むよりも、地表画像の描画のために読み込むデータ量を抑制できる。第1地表データと第2地表データとは、複数の区画のそれぞれを所定距離以内の他の区画および所定距離よりも遠い他の区画から見た場合における地表の代表高さとをそれぞれ示すため、描画手段は、視点区画から所定距離以内の第1周辺区画と、視点区画から所定距離よりも遠い第2周辺区画とを見た地表を表す地表画像を描画できる。予め複数の距離から見られることを想定して第1地表データと第2地表データとがそれぞれ記録されるため、視点区画からの距離に応じて描画のために読み込むデータ量を調整することができる。上述のように第1地表データと第2地表データとは少ない種類の情報で構成できるため、視点からの距離別に第1地表データと第2地表データとを用意したとしても、描画のために読み込むデータ量を抑制できる。
【0007】
記録手段は描画手段が第1地表データと第2地表データとを取得できるように第1地表データと第2地表データとを記録すればよく、記録手段は描画手段と実体的に同じ装置に備えられてもよいし、実体的に別の装置に備えられてもよい。後者の一例として、記録手段は、描画手段が描画に必要とする第1地表データと第2地表データとを通信手段を介して送信するサーバに備えられもよい。
第1地表データと第2地表データとが示す代表高さとは、他の区画から区画を見た場合における代表的な高さであり、種々の手法により決定できる。例えば、区画内に存在する地物のうち区画を見た場合に最も印象的に視認される種別の地物が有する高さであってもよいし、区画内の複数の地点における地表の平均高さであってもよい。また、最も印象的に視認される種別の地物とは、区画内に最も多く存在する種別の地物であってもよいし、区画内の地表における占有面積が最も大きい種別の地物であってもよい。また、データ量や処理負荷の抑制のため、代表高さは所定数よりも少ない階調数で表現されることが望ましい。第1地表データと第2地表データとが示す代表色彩は、区画内に存在する地物のうち区画を見た場合に最も印象的に視認される種別の地物が有する色彩であってもよいし、区画内の複数の地点における地表の平均色彩であってもよい。
【0008】
また、予め複数の距離から見られることを想定して第1地表データと第2地表データとがそれぞれ記録されるため、第1周辺区画についての描画を行うために読み込む第1地表データのデータ量と、第2周辺区画についての描画を行うために読み込む第2地表データのデータ量とを個別に調整できる。例えば、第2地表データが示す代表高さや代表色彩の階調数を、第1地表データが示す代表高さや代表色彩の階調数よりも少なくしてもよい。さらに、予め複数の距離から見られることを想定して第1地表データと第2地表データとがそれぞれ記録されるため、代表高さと代表色彩とを区画を見る距離に依存した手法により決定することもできる。例えば、第1地表データが示す代表色彩と第2地表データが示す代表色彩とが、地表を表す色彩に対して互いに異なる色調補正を行うことにより決定されてもよい。これにより、描画手段が区画を見る距離に依存した色調補正を行わなくても済むため、描画のための処理負荷を抑制できる。
【0009】
周辺区画特定手段は、視点区画からの距離に基づいて第1周辺区画と第2周辺区画とを特定すればよく、視点区画からの方向が所定の視野角内の第1周辺区画と第2周辺区画とを特定してもよい。これにより、所定の視野角において視認される地表画像の描画に必要な第1地表データと第2地表データとを読み込むことができる。
視点区画特定手段は、画像の表示用途に応じた手法により視点区画を特定してもよい。例えば、車両から見た風景を示す画像を表示させる場合には車両が走行する区画を視点区画とすればよいし、ユーザが任意に指定した位置に対応する区画を視点区画としてもよい。
【0010】
描画手段は、第1地表データと第2地表データとがそれぞれ示す代表高さによって代表色彩を付すための画像領域を特定する。すなわち、画像の所定方向が地表の高さに対応しており、代表高さが高いほど当該所定方向における画像領域の大きさを大きくする。
【0011】
表示制御手段は、地表画像を含む画像を表示させればよく、地表画像をのみを含む画像を表示させてもよいし、地表画像と他の画像を結合した画像を表示させてもよい。また、表示制御手段は、表示制御装置が備える表示部において画像を表示させてもよいし、表示制御装置とは別の装置に備えられた表示部に対して所定の通信手段を介して画像データを送信してもよい。
【0012】
第1地表データと第2地表データとは、区画を見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示すが、区画を分割した補助区画を見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示すように構成されてもよい。補助区画の分割数を調整することにより、第1周辺区画についての描画を行うために読み込む第1地表データのデータ量と、第2周辺区画についての描画を行うために読み込む第2地表データのデータ量とを個別に調整できる。さらに、複数の区画のそれぞれを分割した複数の第1補助区画のそれぞれに対して第1地表データが対応付けられるとともに、複数の区画のそれぞれを複数の第1補助区画よりも粗く分割した複数の第2補助区画のそれぞれに対して第2地表データが対応付けられてもよい。これにより、視点区画から所定距離よりも遠い第2周辺区画については、視点区画から所定距離以内の第1周辺区画よりも空間的に粗く代表高さと代表色彩とを決定することができ、データ量や処理負荷を抑制できる。なお、視点区画から所定距離よりも遠い第2周辺区画については第1周辺区画よりも地表がぼやけて見えるため、第1周辺区画よりも空間的に粗く決定された代表高さと代表色彩とに基づいて地表画像が描画されても、地表画像の粗さが問題となりにくい。
【0013】
さらに、第1地表データと第2地表データとは少なくとも地表の代表高さと代表色彩とを示せばよく、第1地表データと第2地表データとはさらに地表の代表模様を示してもよい。この場合、描画手段は、第1地表データと第2地表データとが示す代表高さによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩と代表模様とを付すことにより地表画像を描画すればよい。このようにすることにより、地表を表す模様が付された地表画像を表示させることができる。代表模様と代表色彩との組み合わせにより、多様な地表の表面状態を表現できる。
【0014】
第1地表データと第2地表データとはさらに地表の代表輪郭形状を示してもよい。この場合、描画手段は、第1地表データと第2地表データとが示す代表高さと代表輪郭形状とに基づいて、代表色彩を付すための画像領域を特定すればよい。このようにすることにより、地表の稜線形状や表面形状に忠実な輪郭形状の地表画像を表示させることができる。例えば、代表輪郭形状は、地表の稜線や表面の起伏度等を示す。
【0015】
さらに、複数の区画のそれぞれを所定距離以内の他の区画上における所定高さ以上の視点高さの位置から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とが、当該複数の区画のそれぞれに存在する地物のうち当該他の区画に近い地物の高さと色彩ほど重視して決定されてもよい。すなわち、視点に近い地物ほど他の地物に遮蔽されることなく印象的に視認される可能性が高いため、視点に近い地物の高さと色彩とを重視して代表高さと代表色彩とが決定されるのが望ましい。この場合において、第1地表データが示す代表高さと代表色彩よりも、第2地表データが示す代表高さと代表色彩の方が大きい重視度により、視点に近い地物の高さと色彩とを重視して決定されるのがより望ましい。所定距離よりも遠い他の区画上の所定の視点高さから区画を見た場合、所定距離以内の他の区画上の同じ視点高さから区画を見た場合よりも、区画を見る角度が浅くなり、視点に近い地物によって当該地物よりも遠い地物が遮蔽される可能性が高くなるからである。
【0016】
本発明の手法により使用する地図データベースを作成する地図データベース作成装置も本発明と同一または対応する特別な技術的特徴を有するとともに、本発明特有の効果を奏する。なお、本発明のように、代表的な地表を区画ごとに示す地表データに基づいて地表画像を描画する手法は、この処理を行う方法やプログラムとしても適用可能である。また、本発明の手法を適用した表示制御装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置として実現される場合もある。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、表示制御装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】(2A)は近距離視点メッシュの説明図、(2B)は近距離補助メッシュの説明図である。
【図3】(3A)は中距離視点メッシュの説明図、(3B),(3C)は中距離補助メッシュの説明図である。
【図4】(4A)は遠距離視点メッシュの説明図、(4B),(4C)は遠距離補助メッシュの説明図である。
【図5】(5A)は周辺メッシュの説明図、(5B)は視点メッシュまわりの補助メッシュの説明図である。
【図6】(6A)は地表画像を示す図、(6B)は表示画像を示す図である。
【図7】表示制御処理のフローチャートである。
【図8】(8A),(8B),(8C)は補助メッシュにおける重みを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)表示制御処理:
(3)他の実施形態:
【0019】
(1)ナビゲーション装置の構成:
(1−1)ナビゲーション装置の概要:
図1は、本発明の表示制御装置としてのナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、車両Tに備えられている。車両Tは、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とユーザI/F部44とを備えている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Tの現在位置を算出するための信号をナビゲーション装置10に出力する。車速センサ42は、車両Tが備える車輪の回転速度に対応した信号をナビゲーション装置10に出力する。ジャイロセンサ43は、車両Tに作用する角速度に対応した信号をナビゲーション装置10に出力する。車速センサ42とジャイロセンサ43とは、ナビゲーション装置10において、GPS受信部41の出力信号から特定される車両Tの現在位置を補正するなどのために利用される。ユーザI/F部44は、ナビゲーション装置10から出力された画像データに基づいて地図を表示するディスプレイを含む。
【0020】
ナビゲーション装置10は、制御部20と記録媒体30とを備えている。制御部20は、CPUとRAMとROM等を備え、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行する。記録媒体30は、地図情報MDを記録する。地図情報MDは、道路上に設定されたノードを示すノードデータ(不図示)と、ノード間の道路に関する情報を示すリンクデータ(不図示)と、地上に存在する地物を示す地物データODと、地表を表す地表画像を描画するための地表データベースSD等を含んでいる。
【0021】
(1−2)地図データベースの構成:
地図情報MDは、地図上に設定された複数のメッシュ(区画)ごとに区分して各データOD,SDが管理されるデータ構造を有する。メッシュとは、地図平面(水平面)上における各辺の長さがLの正方形状の単位区画であり、複数のメッシュは地図上において行列状に隙間なく配列される。地物データODはメッシュに対応する実空間の領域上に存在する地物に関する情報を規定したデータである。
【表1】

表1において、地物データODの一部(複数のメッシュのうちのあるメッシュMに関する部分)を模式的に示す。メッシュM内の各位置(x,y)に対応する位置に存在する地物Onについての地物種別Knと高さHnと形状データPDnとテクスチャデータTDnとが規定されている。x,yは地物の水平方向の位置を示す。nは地物Onを識別する識別符号(自然数)であり、メッシュMには全部でN個の地物Onについての情報が対応付けられている。地物種別Knは地物の属性(住宅,ビル,山,田畑,丘陵等)を示す。高さHnは、地物の最高点の高さ(海抜)を示す。形状データPDnは地物Onの形状を3次元空間にて特定するポリゴンデータであり、テクスチャデータTDnは地物Onの表面の色彩・模様を表す画像データである。
【0022】
地表データベースSDは、近距離地表データSD1と中距離地表データSD2と遠距離地表データSD3とを含む。まず、近距離地表データSD1について説明する。
【表2】

表2において、地表データベースSDの一部(複数のメッシュのうちのあるメッシュMに対応付けられた近距離地表データSD1に関する部分)を示す。表2に示すように、地表データベースSDにおいてはメッシュMに対して複数の近距離視点メッシュAiが対応付けられており、複数の近距離視点メッシュAiのそれぞれに対して複数の近距離補助メッシュMAijが対応付けられている。さらに、複数の近距離補助メッシュMAijのそれぞれに対して近距離地表データSD1が対応付けられている。ここで、iは複数の近距離視点メッシュAiを識別する自然数の識別符号(本実施形態ではiの最大値Iは4)であり、jは複数の近距離補助メッシュMAijを識別する自然数の識別符号(本実施形態ではjの最大値Jは6)である。
【0023】
図2Aは、メッシュMと複数の近距離視点メッシュAiとの位置関係を示す図である。図2Aに示すように複数の近距離視点メッシュAi(A1〜A4)のそれぞれは、メッシュMと辺を介して隣接する位置関係を有する。すなわち、複数の近距離視点メッシュAiは、メッシュMに対して最も近い他のメッシュである。また、地図平面上におけるメッシュMの位置をメッシュMの各辺に平行な直交軸に関する整数座標(X,Y)で表し、近距離視点メッシュAiの位置を座標(X+XA,Y+YA)で表すとすると、XAの絶対値とYAの絶対値との和は1となる。なお、Xが1変化することは近距離視点メッシュAiの位置がX軸方向にLだけ移動することを意味し、Yが1変化することは近距離視点メッシュAiの位置がX軸方向に直交するY軸方向にLだけ移動することを意味することとする。図2Aに示す近距離視点メッシュAi内に近距離視点メッシュAiの座標(X+XA,Y+YA)を示す。XAの絶対値とYAの絶対値との和は、メッシュMの辺に平行な方向への移動により、地図平面上においてメッシュMの重心から近距離視点メッシュAiの重心まで到達するための最短の移動距離を意味する。以下、移動距離とはメッシュMの辺に平行な方向への移動距離を意味することとする。近距離視点メッシュAiは、メッシュMまでの最短の移動距離が第1距離(=1×L)以内のメッシュMに相当する。なお、iは注目するメッシュMを中心として時計回りに1ずつ大きくなることとする。
【0024】
複数の近距離補助メッシュMAijは、メッシュMを分割することにより作成される。図2Bは、近距離視点メッシュA1について設定される複数の近距離補助メッシュMAijを説明する図である。図2Bに示すように、近距離視点メッシュA1の重心からメッシュMの重心に向かう視線方向の線分によってメッシュMをJ分割することにより複数の近距離補助メッシュMAijが形成される。図示しないが他の近距離視点メッシュAiについても視線方向の線分によってJ分割することにより複数の近距離補助メッシュMAijが形成される。すなわち、近距離視点メッシュA1に対応する領域から近距離補助メッシュMに対応する領域を視認した場合の視線方向に直交する方向にメッシュMが分割される。従って、近距離補助メッシュMは視線方向に細長の形状となる。なお、メッシュMについてI×J(4×6=24個)の近距離補助メッシュMAijが形成される。なお、jは近距離視点メッシュAiを中心として時計回りに大きくなることとする。
【0025】
表2に示すように、近距離地表データSD1は、複数の近距離補助メッシュMAijのそれぞれに対して代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを対応付けたデータである。すなわち、近距離視点メッシュAiの重心に対応する位置に設けられる視点VPから、複数の近距離補助メッシュMAijのそれぞれに対応する領域を見た場合の像(近距離像)を想定して、代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とが規定される。本実施形態では、複数の近距離補助メッシュMAijについての近距離像にて最も印象的に視認される地物の地物種別が代表地物種別とされる。具体的には、近距離補助メッシュMAijにおいて最も多く存在する地物の地物種別が代表地物種別とされる。そして、代表地物種別に属する地物が有する高さと輪郭形状と色彩と模様とが、複数の近距離補助メッシュMAijについての代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様として規定される。ここにおける地物種別とは、上述した地物データOD(表1)に示される各地物Onの地物種別Knと同義である。例えば、近距離補助メッシュMAijに対応する領域の大半が住宅街である場合には、住宅が代表地物種別となる可能性が高い。
【0026】
【表3】

表3は、代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを代表地物種別ごとに示す表である。代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とは、代表地物種別に属する地物が一般的・平均的に有する高さと輪郭形状と色彩と模様であり、上述した地物データOD(表1)における形状データPDnとテクスチャデータTDnとから導出できる。例えば、地物データODに規定されたすべての地物についての形状データPDnによって特定される地物の稜線や表面の形状を、地物種別ごとに平均した形状に基づいて地物種別ごとの代表輪郭形状が導出されてもよい。例えば、地物データODに規定されたすべての地物についてのテクスチャデータTDnによって特定される地物表面の色彩と模様とを、地物種別ごとに平均することにより地物種別ごとの代表色彩と代表模様とが導出されてもよい。なお、近距離地表データSD1の代表高さは、地物データODに規定された地物のうち注目する近距離補助メッシュMAijに存在し、かつ、代表地物種別に属するすべての地物の高さHnを平均し、当該平均した値を所定の階調数に量子化することにより導出される。本実施形態において、代表高さは0〜5の6階調によって表される。代表高さは値が大きいほど、鉛直方向の高さが高いことを意味する。代表高さ0は鉛直方向における描画範囲の下限高さを意味し、代表高さ5は鉛直方向における描画範囲の上限高さを意味する。本実施形態において、鉛直方向における描画範囲の下限高さと上限高さはそれぞれ海抜0m,3500mとする。従って、代表高さ1〜4は、それぞれ海抜700,1400,2100,2800mの高さを意味する。本明細書では、地表データベースSDに規定された各情報の概念を説明するために、地物データODに規定された情報を引用するが、必ずしも地表データベースSDは地物データODから導出されたものでなくてもよく、地物データODよりも詳細に地物を規定するデータベースに基づいて地表データベースSDが作成されていてもよい。次に、中距離地表データSD2について説明する。
【0027】
【表4】

表4において、地表データベースSDのうち、メッシュMに対応付けられた中距離地表データSD2に関する部分を示す。表4に示すように、地表データベースSDにおいてはメッシュMに対して複数の中距離視点メッシュBeが対応付けられており、複数の中距離視点メッシュBeのそれぞれに対して複数の中距離補助メッシュMBefが対応付けられている。さらに、複数の中距離補助メッシュMBefのそれぞれに対して中距離地表データSD2が対応付けられている。ここで、eは複数の中距離視点メッシュBeを識別する自然数の識別符号(本実施形態ではeの最大値Eは8)であり、fは複数の中距離補助メッシュMBefを識別する自然数の識別符号(本実施形態ではfの最大値F(<J)は3)である。
【0028】
図3Aは、メッシュMと複数の中距離視点メッシュBeとの位置関係を示す図である。複数の中距離視点メッシュBe(B1〜B8)のそれぞれは、複数の近距離視点メッシュAiのいずれかと辺を介して隣接する位置関係を有する。すなわち、複数の中距離視点メッシュBeは、メッシュMに対して複数の近距離視点メッシュAiの次に近い他のメッシュである。また、地図平面上における中距離視点メッシュBeの位置を座標(X+XB,Y+YB)で表すとすると、XBの絶対値とYBの絶対値との和は2となる。図3Aにおいて、複数の中距離視点メッシュBe内に中距離視点メッシュBeの座標(X+XB,Y+YB)を示す。中距離視点メッシュBeはメッシュMまでの最短の移動距離が第1距離(=1×L)よりも遠く、かつ、第2距離(=2×L)以内のメッシュMに相当する。
【0029】
複数の中距離補助メッシュMBefは、メッシュMを分割することにより作成される。図3Bは、中距離視点メッシュB1について設定される複数の中距離補助メッシュMBefを説明する図である。図3Bに示すように、中距離視点メッシュB1の重心からメッシュMの重心に向かう方向と平行な線分によってメッシュMをF分割することにより複数の中距離補助メッシュM B1fが形成される。なお、図3Cのように、中距離視点メッシュB2の重心からメッシュMの重心に向かう方向がメッシュMの対角線方向となる場合にも、同様に中距離視点メッシュB2の重心からメッシュMの重心に向かう方向と平行な線分によってメッシュMを分割する。単一のメッシュMについてE×F(8×3=24個)の中距離補助メッシュMBefが形成される。また、単一のメッシュMにおける複数の中距離補助メッシュMBefの分割数を意味するFは、単一のメッシュMにおける複数の近距離補助メッシュMAijの分割数を意味するJよりも小さく、複数の中距離補助メッシュMBefは複数の近距離補助メッシュMAijよりも粗く分割されている。
【0030】
表4に示すように、中距離地表データSD2は、複数の中距離補助メッシュMBefのそれぞれに対して代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを対応付けたデータである。図3B,3Cに示すように、実空間において中距離視点メッシュBeの重心に対応する位置に設けられる視点VPから、実空間において複数の中距離補助メッシュMBefのそれぞれに対応する領域を見た場合の像(中距離像)を想定して、代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とが規定される。すなわち、中距離補助メッシュMBefにおいて最も多く存在する地物の地物種別である代表地物種別に対応づけられた代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とが、近距離地表データSD1と同様に規定されている。次に、遠距離地表データSD3について説明する。
【0031】
【表5】

表5において、地表データベースSDのうち、メッシュMに対応付けられた遠距離地表データSD3に関する部分を示す。表5に示すように、地表データベースSDにおいてはメッシュMに対して複数の遠距離視点メッシュCuが対応付けられており、複数の遠距離視点メッシュCuのそれぞれに対して複数の遠距離補助メッシュMCuvが対応付けられている。さらに、複数の遠距離補助メッシュMCuvのそれぞれに対して遠距離地表データSD3が対応付けられている。ここで、uは複数の遠距離視点メッシュCuを識別する自然数の識別符号(本実施形態ではuの最大値Uは12)であり、vは複数の遠距離補助メッシュMCuvを識別する自然数の識別符号(本実施形態ではvの最大値V<Fは2)である。
【0032】
図4Aは、メッシュMと複数の遠距離視点メッシュCuとの位置関係を示す図である。複数の遠距離視点メッシュCu(C1〜C12)のそれぞれは、複数の中距離視点メッシュBeのいずれかと辺を介して隣接する位置関係を有する。すなわち、複数の遠距離視点メッシュCuは、メッシュMに対して複数の中距離視点メッシュBeの次に近い他のメッシュである。また、地図平面上における遠距離視点メッシュCuの位置を座標(X+XC,Y+YC)で表すとすると、XCの絶対値とYCの絶対値との和は3となる。図4Aにおいて、複数の遠距離視点メッシュCu内に遠距離視点メッシュCuの座標(X+XB,Y+YB)を示す。遠距離視点メッシュCuはメッシュMまでの最短の移動距離が第2距離(=2×L)よりも遠く、かつ、第3距離(=3×L)以内のメッシュMに相当する。
【0033】
複数の遠距離補助メッシュMCuvは、メッシュMを分割することにより作成される。図4B,4Cは、遠距離視点メッシュC1,C2について設定される複数の遠距離補助メッシュMCuvを説明する図である。図4B,4Cに示すように、遠距離視点メッシュC1,C2の重心からメッシュMの重心に向かう方向と平行な線分によってメッシュMをV分割することにより複数の遠距離補助メッシュM C1v,M C2vが形成される。単一のメッシュMについてU×V(12×2=24個)の遠距離補助メッシュMCuvが形成される。また、単一のメッシュMにおける複数の遠距離補助メッシュMCuvの分割数を意味するVは、単一のメッシュMにおける複数の中距離補助メッシュMBefの分割数を意味するFよりも小さく、複数の遠距離補助メッシュMCuvは複数の中距離補助メッシュMBefよりも粗く分割されている。
【0034】
表5に示すように、遠距離地表データSD3は、複数の遠距離補助メッシュMCuvのそれぞれに対して代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを対応付けたデータである。実空間において遠距離視点メッシュCuの重心に対応する位置に設けられる視点VPから、実空間において複数の遠距離補助メッシュMCuvのそれぞれに対応する領域を見た場合の像(遠距離像)を想定して、代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とが規定される。すなわち、遠距離補助メッシュMCuvにおいて最も多く存在する地物の地物種別である代表地物種別に対応づけられた代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とが、近距離地表データSD1および中距離地表データSD2と同様に規定されている。
【0035】
以上においては、あるメッシュMに対応付けられた近距離地表データSD1と中距離地表データSD2と遠距離地表データSD3とを説明したが、地表データベースSDにおいては複数のメッシュのそれぞれに対して近距離地表データSD1と中距離地表データSD2と遠距離地表データSD3とが同様に対応付けられている。
【0036】
(1−3)表示制御プログラムの構成:
表示制御プログラム21は、視点メッシュ特定部21aと周辺メッシュ特定部21bと描画部21cと表示制御部20dとを含む。
視点メッシュ特定部21aは、複数のメッシュのうち視点VPが設けられる視点メッシュを特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、視点メッシュ特定部21aの機能により制御部20は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43の出力信号等に基づいて車両Tの現在位置を特定する。そして、制御部20は、車両Tの現在位置が含まれる領域に対応するメッシュを特定し、当該メッシュを視点メッシュVMとして特定する。なお、視点メッシュVMの位置を座標(XVM,YVM)で表すとことする。
【0037】
周辺メッシュ特定部21bは、複数のメッシュのうち視点メッシュVMから第1距離以内の他のメッシュである近距離周辺メッシュNMと、複数のメッシュのうち視点メッシュVMから第1距離より遠く第2距離以内の他のメッシュである中距離周辺メッシュMMと、複数のメッシュのうち視点メッシュVMから第2距離よりも遠い他のメッシュである遠距離周辺メッシュFMとを特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。周辺メッシュ特定部21bの機能により制御部20は、視点メッシュVMからの最短の移動距離が1×Lとなるメッシュを近距離周辺メッシュNMとして特定する。制御部20は、視点メッシュVMからの最短の移動距離が2×Lとなるメッシュを中距離周辺メッシュMMとして特定する。さらに、制御部20は、視点メッシュVMからの最短の移動距離が3×Lとなるメッシュを遠距離周辺メッシュFMとして特定する。
【0038】
図5Aは、各メッシュVM,NM,MM,FMの位置関係を示す図である。図5に示すように、近距離周辺メッシュNMは視点メッシュVMと辺を介して隣接し、中距離周辺メッシュMMは近距離周辺メッシュNMと辺を介して隣接し、遠距離周辺メッシュFMは中距離周辺メッシュMMと辺を介して隣接する。なお、図5Aにおいて、視点メッシュVMよりも車両Tの走行方向後方側にあるメッシュVM,NM,MM,FMの図示は省略している。
【0039】
描画部21cは、近距離周辺メッシュNMについての近距離地表データSD1と、中距離周辺メッシュMMについての中距離地表データSD2と、遠距離周辺メッシュFMについての遠距離地表データSD3とがそれぞれ示す代表高さと代表輪郭とによって特定される画像領域内に、近距離地表データSD1と中距離地表データSD2と遠距離地表データSD3とが示す代表色彩と代表模様を付すことにより視点VPから見た地表を表す地表画像を描画する機能を制御部20に実行させるモジュールである。
【0040】
描画部21cの機能(取得機能)により制御部20は、近距離周辺メッシュNMに対応付けられた近距離地表データSD1(表2参照)のうち、視点メッシュVMの座標(XVM,YVM)と一致する座標が近距離視点メッシュAiの座標(X+XA,Y+YA)として対応付けられた近距離地表データSD1を取得する。同様に制御部20は、中距離周辺メッシュMMに対応付けられた中距離地表データSD2(表4参照)のうち、視点メッシュVMの座標(XVM,YVM)と一致する座標が中距離視点メッシュBeの座標(X+XB,Y+YB)として対応付けられた中距離地表データSD2を取得する。さらに、制御部20は、遠距離周辺メッシュFMに対応付けられた遠距離地表データSD3(表5参照)のうち、視点メッシュVMの座標(XVM,YVM)と一致する座標が遠距離視点メッシュCuの座標(X+XC,Y+YC)として対応付けられた遠距離地表データSD3を取得する。すなわち、周辺メッシュNM,MM,FMに対応付けられた地表データSD1〜SD3のうち、視点メッシュVMの重心の視点VPからの視線方向に直交する方向に分割された補助メッシュMAij,MBef,MCuvについての地表データSD1〜SD3を取得する。上述のように周辺メッシュNM,MM,FMに該当するメッシュMは、それぞれ補助メッシュMAij,MBef,MCuvに分割されているため、地表データSD1〜SD3は補助メッシュMAij,MBef,MCuvごとのデータとなる。この地表データSD1〜SD3は、視点メッシュVMから補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域を見た場合の地表の代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを示す。
【0041】
図5Bは、描画部21cの機能により取得される地表データSD1〜SD3が対応付けられた補助メッシュMAij,MBef,MCuvを示す。図5Bに示すように、視点メッシュVMから遠い(最短の移動距離が長い)ほど、周辺メッシュNM,MM,FMを粗く分割した補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応付けられた地表データSD1〜SD3が取得される。補助メッシュMAij,MBef,MCuvが分割される方向は、視点メッシュVMから放射状に広がる視線方向に直交する方向となっている。また、地表データSD1〜SD3において、図2B,図3B,図3C,図4B,図4Cに示すように視点メッシュAi,Be,Cuを中心として時計回りに大きくなるように補助メッシュMAij,MBef,MCuvの識別符号j,f,vが規定されている。従って、視点メッシュVMを中心として、識別符号j,f,vが時計回りに大きくなるように、地表データSD1〜SD3が取得される補助メッシュMAij,MBef,MCuvが配列する。
【0042】
描画部21cの機能により制御部20は、図5Bに示すように車両Tの走行方向前方Qの左右にα/2ずつの視野角α(本実施形態では90°)内についての地表画像を描画する。そのため、制御部20は、視野角α内に存在する補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応付けられた地表データSD1〜SD3を取得する。描画部21cの機能により制御部20は、近距離地表データSD1に基づいて近距離地表画像GI1を描画し、中距離地表データSD2に基づいて中距離地表画像GI2を描画し、遠距離地表データSD3に基づいて遠距離地表画像GI3を描画する。
【0043】
図6Aは、地表画像GI1〜GI3が描画される様子を示す図である。地表画像GI1〜GI3の左右の幅は視野角αに対応し、地表画像GI1〜GI3の上下の高さが視野における鉛直方向の高さに対応する。地表画像GI1〜GI3の下端は周辺メッシュNM,MM,FMにおける鉛直方向の描画範囲の下限高さ(海抜0m)に対応し、地表画像GI1〜GI3の上端は周辺メッシュNM,MM,FMにおける鉛直方向の描画範囲の上限高さ(海抜3500m)に対応する。ここで、地表画像GI1〜GI3とは、それぞれ視点メッシュVMの重心に対応する位置から視野角α内の近距離周辺メッシュNMと中距離周辺メッシュMMと遠距離周辺メッシュFMとに対応する領域を見た場合の画像である。地表画像GI1〜GI3においては、図5Bに示す補助メッシュMAij,MBef,MCuvの相対位置関係に準じて補助メッシュMAij,MBef,MCuvごとに画像領域が割り当てられている。すなわち、図5Bにおいて車両Tの走行方向前方Qに存在する補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する画像領域が地表画像GI1〜GI3の幅方向の中央に割り当てられる。また、図5Bにおいて車両Tの走行方向前方Qから時計回り方向に進んだ位置の補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する画像領域ほど地表画像GI1〜GI3の右端近くに割り当てられる。反対に、図5Bにおいて車両Tの走行方向前方Qから反時計回り方向に進んだ位置の補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する画像領域ほど地表画像GI1〜GI3の左端近くに割り当てられる。本実施形態では、水平方向の視野角αに各距離の補助メッシュMAij,MBef,MCuvがそれぞれ6個ずつ含まれ、補助メッシュMAij,MBef,MCuvのそれぞれに対応する画像領域は、地表画像GI1〜GI3においてそれぞれ視野角αを6等分した15°の視野角を構成する。なお、図6Bにおいて地表画像GI1〜GI3を太線で示すが、当該太線は図6Aに示す地表画像GI1〜GI3の水平位置を仮想的に表す。
【0044】
描画部21cの機能により制御部20は、地表データSD1〜SD3が示す代表高さと代表輪郭形状とに基づいて描画する地表画像の上端輪郭を描画する。すなわち、地表データSD1〜SD3が示す代表輪郭形状の輪郭線を、当該地表データSD1〜SD3に対応する補助メッシュMAij,MBef,MCuvに割り当てられた画像領域における代表高さに対応する高さの位置に配置(高さ方向に平行移動)することにより上端輪郭を描画する。例えば、代表高さが3であれば、地表画像GI1〜GI3の3/5(下から)の高さ(海抜2100m相当)の位置に上端輪郭を配置する。そして、制御部20は、上端輪郭よりも下側の画像領域を地表データSD1〜SD3が示す代表模様と代表色彩が付されたテクスチャ画像でマッピングするとともに、上端輪郭よりも上側の画像領域の透明とする。
【0045】
描画部21cの機能により制御部20は、遠距離地表画像GI3の上に中距離地表画像GI2を重畳し、さらに中距離地表画像GI2の上に近距離地表画像GI1を重畳することにより、地表画像を生成する。図6Bは、地表画像GI1〜GI3が重畳される様子を示す。図6Bにおいて、視点メッシュVM上に設けられた視点VPから車両Tの走行方向前方を見た俯瞰図を示す表示画像DIを示す。表示画像DIにおいて、車両Tの走行方向前方の近距離周辺メッシュNMと中距離周辺メッシュMMと遠距離周辺メッシュFMの車両T側の辺に対応する位置がそれぞれ下端位置AN1〜AN3とされ、地表画像GI1〜GI3の下端が下端位置AN1〜AN3に一致するように地表画像GI1〜GI3が表示画像DIに重畳される。遠距離地表画像GI3のうち、中距離地表画像GI2の上端輪郭よりも上側の領域が重畳される部分は透過し、中距離地表画像GI2の上端輪郭よりも下側の領域が重畳される部分は中距離地表画像GI2によって遮蔽される。同様に、中距離地表画像GI2のうち、近距離地表画像GI1の上端輪郭よりも上側の領域が重畳される部分は透過し、近距離地表画像GI1の上端輪郭よりも下側の領域が重畳される部分は近距離地表画像GI1によって遮蔽される。描画部21cの機能により制御部20は、視点メッシュVMに対応する領域に存在する各地物の画像を地物データODに規定された各地物の形状データに基づいて描画し、当該画像を表示画像DIにおける視点メッシュVMに対応する画像領域に割り付ける。
【0046】
表示制御部21dは、地表画像GI1〜GI3を含む表示画像DIをユーザI/F部44に表示させる機能を制御部20に実行させるモジュールである。表示制御部21dの機能により制御部20は、ユーザI/F部44のディスプレイにて表示画像DIを表示させる。これにより、地表データSD1〜SD3が示す代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様に基づいて描画された地表画像GI1〜GI3がディスプレイにて表示される。
【0047】
第1実施形態の構成において、複数のメッシュMのそれぞれを見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す地表データSD1〜SD3を記録しておくことにより、地表データSD1〜SD3が示す代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とに基づいて視点VPから見た地表を表す地表画像GI1〜GI3を描画できる。地表データSD1〜SD3は、メッシュMを見た場合の地表の代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを示すため、地表データSD1〜SD3とを1個の補助メッシュMAij,MBef,MCuvにつき最低4個の値で構成することができる。従って、地表データSD1〜SD3を読み込んで地表画像GI1〜GI3を描画すれば、補助メッシュMAij,MBef,MCuvに存在する個々の地物の3次元形状を示すデータ(地物データOD)を読み込むよりも、地表画像GI1〜GI3の描画のために読み込むデータ量を抑制できる。本実施形態では、視点メッシュVMについての地物データODを読み込む必要があるが、他の周辺メッシュNN,MM,FMについての地物データODは読み込む必要はない。
【0048】
さらに、地表データSD1,SD2は、複数のメッシュのそれぞれを移動距離が1×L以内の他のメッシュである近距離視点メッシュAi、および、移動距離が1×Lよりも長くなる他のメッシュである中距離視点メッシュBeから見た場合における地表の代表高さと代表色彩とをそれぞれ示すため、制御部20は、視点区画VMから移動距離が1×L以内の近距離周辺メッシュFMと、視点メッシュVMからの移動距離が1×Lよりも長くなる中距離周辺メッシュBeとを見た地表を表す地表画像GI1,G2を描画できる。同様に、地表データSD2,SD3に基づいて、制御部20は、視点メッシュVMから移動距離が2×L以内の中距離周辺メッシュMMと、視点メッシュVMからの移動距離が2×Lよりも長くなる遠距離周辺メッシュCuとを見た地表を表す地表画像GI2,G3を描画できる。すなわち、予め複数の距離から見られることを想定して地表データSD1〜SD3が記録されるため、視点メッシュVMからの距離に応じた代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とに基づいて地表画像が描画できる。上述のように地表画像GI1〜GI3は少ない種類の情報で構成できるため、視点VPからの距離別に地表画像GI1〜GI3を用意したとしても、描画のために読み込むデータ量を抑制できる。
【0049】
本実施形態において地表データSD1〜SD3は、メッシュMを分割した補助メッシュMAij,MBef,MCuvを見た場合における地表の代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを示す。具体的に、複数のメッシュMのそれぞれを分割した複数の近距離補助メッシュMAijのそれぞれに対して近距離地表データSD1が対応付けられるとともに、複数のメッシュMのそれぞれを複数の近距離補助メッシュMAijよりも粗く分割した複数の中距離補助メッシュMBefのそれぞれに対して中距離地表データSD2が対応付けられる。さらに、複数のメッシュMのそれぞれを複数の中距離補助メッシュMBefよりも粗く分割した複数の遠距離補助メッシュMCuvのそれぞれに対して遠距離地表データSD3が対応付けられる。これにより、視点メッシュVMからの移動距離が長くなるほど、空間的に粗く代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを示す地表データSD1〜SD3とすることができ、データ量や処理負荷を抑制できる。
【0050】
さらに、制御部20は、地表データSD1〜SD3が示す代表高さと代表輪郭形状とによって特定される画像領域内に、当該地表データSD1〜SD3が示す代表色彩と代表模様とを付すことにより地表画像GI1〜GI3を描画する。このようにすることにより、地表の稜線形状や表面形状に忠実であり、かつ、多様な地表の表面状態(色彩・模様)を表現できる地表画像GI1〜GI3が描画できる。
【0051】
(3)表示制御処理:
図7は表示制御処理のフローチャートである。表示制御処理は所定の実行周期ごとに繰り返して実行される処理である。ステップS110において、視点メッシュ特定部21aの機能により制御部20は、視点メッシュVMと車両Tの走行方向とを特定し、現在の視点メッシュVMと車両Tの走行方向との少なくとも一方が前回取得した視点メッシュVMと車両Tの走行方向から更新されているか否かを判定する。視点メッシュVMと車両Tの走行方向の双方ともが更新されていなければ、表示画像DIを更新する必要がないとして、次の実行周期を待つ。
【0052】
ステップS110において走行メッシュと走行方向との少なくとも一方が更新されていると判定された場合、制御部20は、ステップS120以降において表示画像DIを更新表示させる処理を実行する。まず、ステップS120において、周辺メッシュ特定部21bの機能により制御部20は、視点メッシュVMからの最短の移動距離がLとなるメッシュを近距離周辺メッシュNMとして特定し、視点メッシュVMからの最短の移動距離が2×Lとなるメッシュを中距離周辺メッシュMMとして特定し、視点メッシュVMからの最短の移動距離が3×Lとなるメッシュを遠距離周辺メッシュFMとして特定する(図5A参照)。
【0053】
ステップS130において、描画部21cの機能により制御部20は、地表データSD1〜SD3を記録媒体30から読み込む。すなわち、周辺メッシュNM,MM,FMに対応付けられた地表データSD1〜SD3のうち、視点メッシュVMを離視点メッシュAi,Be,Cuとして分割された補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応付けられた地表データSD1〜SD3を読み込む。この地表データSD1〜SD3は、視点メッシュVMから補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域を見た場合の地表の代表高さと代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを示す。なお、制御部20は、周辺メッシュNM,MM,FMのうち、車両Tの走行方向前方Qを中心とした視野角α内の周辺メッシュNM,MM,FMに対応付けられた地表データSD1〜SD3から優先して読み込み、地表データSD1〜SD3をRAM等にキャッシュしておく。また、制御部20は、所定のデータ読み込み期間内に、視野角α外の周辺メッシュNM,MM,FMに対応付けられた地表データSD1〜SD3の読み込みも試み、当該地表データSD1〜SD3も読み込めた場合には、当該地表データSD1〜SD3もRAMにキャッシュしておく。これにより、車両Tの走行方向のみが更新された場合に、新たに地表データSD1〜SD3を記録媒体30から読み込まずに済ませることができる。
【0054】
ステップS140において、描画部21cの機能により制御部20は、遠距離地表データSD3に基づいて遠距離地表画像GI3を描画する。制御部20は、遠距離地表画像GI3において遠距離補助メッシュMCuvに割り当てられた画像領域を特定する。そして、制御部20は、当該画像領域において、遠距離地表データSD3が示す代表高さと代表輪郭形状とに基づいて上端輪郭を描画する。さらに、制御部20は、上端輪郭よりも下側の画像領域を遠距離地表データSD3が示す代表模様と代表色彩が付されたテクスチャ画像でマッピングするとともに、上端輪郭よりも上側の画像領域の透明とする。以上の処理を、視野角α内の各遠距離補助メッシュMCuvについての遠距離地表データSD3について実行して遠距離地表画像GI3を描画する。そして、制御部20は、表示画像DIに対して下端位置AN3に下端を一致させるように遠距離地表画像GI3を重畳する。
【0055】
ステップS150において、描画部21cの機能により制御部20は、中距離地表データSD2に基づいて中距離地表画像GI2を描画する。制御部20は、中距離地表画像GI2において中距離補助メッシュMBefに割り当てられた画像領域を特定する。そして、制御部20は、当該画像領域において、中距離地表データSD2が示す代表高さと代表輪郭形状とに基づいて上端輪郭を描画する。さらに、制御部20は、上端輪郭よりも下側の画像領域を中距離地表データSD2が示す代表模様と代表色彩が付されたテクスチャ画像でマッピングするとともに、上端輪郭よりも上側の画像領域の透明とする。以上の処理を、視野角α内の各中距離補助メッシュMBefについての中距離地表データSD2について実行して中距離地表画像GI2を描画する。そして、制御部20は、すでに遠距離地表画像GI3が重畳された表示画像DIに対して、下端位置AN2に下端を一致させるように中距離地表画像GI2を重畳する。
【0056】
ステップS160において、描画部21cの機能により制御部20は、近距離地表データSD1に基づいて近距離地表画像GI1を描画する。制御部20は、近距離地表画像GI1において近距離補助メッシュMAijに割り当てられた画像領域を特定する。そして、制御部20は、当該画像領域において、近距離地表データSD1が示す代表高さと代表輪郭形状とに基づいて上端輪郭を描画する。さらに、制御部20は、上端輪郭よりも下側の画像領域を近距離地表データSD1が示す代表模様と代表色彩が付されたテクスチャ画像でマッピングするとともに、上端輪郭よりも上側の画像領域を透明とすることにより近距離地表画像GI1を描画する。以上の処理を、視野角α内の各近距離補助メッシュMAijについての近距離地表データSD1について実行して近距離地表画像GI1を描画する。そして、制御部20は、すでに遠距離地表画像GI3と中距離地表画像GI2とが順に重畳された表示画像DIに対して、下端位置AN1に下端を一致させるように中距離地表画像GI2を重畳する。これにより、地表画像GI1〜GI3を含む表示画像DIが生成できる。
【0057】
以上のようにして表示画像DIを生成すると、ステップS170において表示制御部21dの機能により制御部20は、ユーザI/F部44のディスプレイにて表示画像DIを表示させる。表示画像DIを表示させると、リターンし、次に視点メッシュVMと車両Tの走行方向の少なくとも一方が更新されるまで待機する。すなわち、視点メッシュVMが更新されれば周辺メッシュNM,MM,FMも更新されるため、新たに地表画像GI1〜GI3を描画する必要がある。車両Tの走行方向が更新されれば図6Aに示す地表画像GI1〜GI3において補助メッシュMAij,MBef,MCuvが割り当てられた画像領域の位置が変化するため、新たに地表画像GI1〜GI3を描画する必要がある。
【0058】
(4)他の実施形態:
前記実施形態のステップS140〜S160において地表画像GI1〜GI3を描画する際に、視点メッシュVMからの距離に応じて異なる画像処理を行ってもよい。すなわち、実空間において遠い景色ほど霞んで見えるため、遠距離地表画像GI3を描画する際に霞がけ処理を行ってもよい。例えば、遠距離地表データSD3が示す代表色彩から所定量だけ彩度を低下させたり、明度を増加させた色彩を付すことにより遠距離地表画像GI3を描画してもよいし、遠距離地表データSD3が示す代表模様に対して所定強度のアンシャープ処理を行った模様を付すことにより遠距離地表画像GI3を描画してもよい。さらに、遠距離地表データSD3が示す代表輪郭形状から所定量だけ鮮鋭度を低下させた輪郭形状に基づいて遠距離地表画像GI3を描画してもよい。また、中距離地表画像GI2を描画する場合に霞がけ処理を行ってもよい。この場合、遠距離地表画像GI3よりも弱い霞がけ処理を行えばよい。また、ナビゲーション装置10が通信やセンサによって天候を取得し、当該天候に応じて地表画像GI1〜GI3を描画する際の霞がけ処理の強さを調整してもよい。例えば、雨の場合における地表画像GI1〜GI3を描画する際の霞がけ処理の強さを、晴れの場合における地表画像GI1〜GI3を描画する際の霞がけ処理の強さよりも強くしてもよい。
【0059】
さらに、本発明では、視点メッシュVMからの距離ごとに個別に地表画像GI1〜GI3を用意することができるため、地表画像GI2〜GI3に対応付ける代表色彩や代表模様に対して予め霞みがけ処理を行っておくこともできる。これにより、ステップS140〜S150における霞みがけ処理の負荷を軽減できる。すなわち、地表データSD1〜SD3が示す代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを、視点メッシュVMからの距離別に異ならせてもよい。また、地表データSD1〜SD3が示す代表輪郭形状と代表色彩と代表模様とを、天候別に異ならせてもよい。
【0060】
代表地物種別は、補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域を見た場合に最も印象的に視認される地物の地物種別であればよく、前記実施形態のように補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域おいて最も多く存在する地物の地物種別であってもよいし、他の観点に基づいて決定されてもよい。例えば、補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域において最も水平方向の面積占有率が大きい地物の地物種別であってもよい。
【0061】
さらに、図6Bに示す表示画像DIのように視点メッシュVM上に設けられた視点VPから車両Tの走行方向前方を見た俯瞰図を示す場合、視点VPは視点メッシュVM上の所定の視点高さVHの位置に設けられることとなる。従って、この視点高さVHが0でない限り、視点VPから補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域を見た場合の角度が視点メッシュVMからの距離に応じて異なることとなる。従って、離補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域に互いに同じ地物が存在している場合でも、視点メッシュVMからの距離に応じて補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域を見た場合の像は異なり得る。
【0062】
図8A,8B,8Cは、視点メッシュVM上の視点高さVHの視点VPから補助メッシュMAij,MBef,MCuvのそれぞれを見た様子を示す模式図である。視点VPから補助メッシュMAij,MBef,MCuvまでの距離に拘わらず視点高さVH(z方向)が一定であるため、視点VPから遠いほど補助メッシュMAij,MBef,MCuvを見た場合の視線方向の視線角度βが小さくなる。なお、視線角度βは、視線方向が水平方向となる場合に0°となる角度である。視線角度βが小さいほど、補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域に存在する地物が、当該地物よりも視点VPに近い他の地物によって遮蔽される確率が高くなる。図8A,8B,8Cに示す距離dは、補助メッシュMAij,MBef,MCuv内における視点VPに最も近い位置から各地物までの距離を表し、距離dが長い地物ほど視点VPから遠い地物となる。視線角度βが小さい場合、視点VPからの距離dが長い地物ほど補助メッシュMAij,MBef,MCuvを見た場合の印象に対する寄与度が小さくなり、視点VPからの距離dが短い地物ほど補助メッシュMAij,MBef,MCuvを見た場合の印象に対する寄与度が大きくなる。補助メッシュMAij,MBef,MCuvにおける代表地物種別は、補助メッシュMAij,MBef,MCuv内における視点VPからの距離dに応じた重みw(d)を考慮して決定される。
【0063】
図8A,8B,8Cにおいては補助メッシュMAij,MBef,MCuvのそれぞれについて、距離d(横軸)と重みw(d)(縦軸)との関係を示す。図8Aに示すように、視線角度βが最も大きい近距離補助メッシュMAijについては距離dに拘わらず重みw(d)が一定とされる。図8B,8Cに示すように、視線角度βが近距離補助メッシュMAijよりも小さい補助メッシュMBef,MCuvについては距離dが短い地物ほど重みw(d)が大きくされる。また、w(d)の傾きは、中距離補助メッシュMBefよりも視線角度βが小さい遠距離補助メッシュMCuvの方が大きくされる。
【0064】
補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域に存在する地物ごとに距離dおよび重みw(d)を特定しておき、地物種別ごとに重みw(d)を累積することにより、重みw(d)を考慮した地物種別ごとの重み付き個数を取得する。以上のようにして得られた重み付き個数が最も大きくなる地物種別を代表地物種別として作成された地表データSD1〜SD3を記録してもよい。また、補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域に存在する地物ごとに重みw(d)と占有面積とを乗算した重み付き面積を特定しておき、地物種別ごとに重み付き面積を累積することにより、重みw(d)を考慮した地物種別ごとの面積評価値を取得する。以上のようにして得られた面積評価値が最も大きくなる地物種別を代表地物種別として作成された地表データSD1〜SD3を記録してもよい。このようにすることにより、視点VPから補助メッシュMAij,MBef,MCuvに対応する領域を見た場合における地物間の遮蔽を考慮した地表データSD1〜SD3に基づいて地表画像GI1〜GI3が描画できる。
【0065】
さらに、図2Bの近距離補助メッシュM A1jと、図3Bの中距離補助メッシュM B1fと、図4Bの遠距離補助メッシュM C1vとを対比すると、これらはすべて同一のメッシュMを同一の視線方向により見た場合を想定したメッシュであり、互いに重複する関係を有する。例えば、中距離補助メッシュM B11は近距離補助メッシュM A11,M A12を結合したメッシュであり、遠距離補助メッシュM C11は近距離補助メッシュM A11〜M A13を結合したメッシュであると言うことができる。従って、制御部20は、近距離補助メッシュM A11,M A12についての近距離地表データSD1が示す代表高さ等を平均あるいは択一することにより、中距離補助メッシュM B11についての中距離地表データSD2が決定されてもよい。同様に、遠距離地表データSD3も近距離地表データSD1に基づいて決定できる。
【0066】
また、図2Aに示す近距離視点メッシュA1上の視点VPを想定した近距離補助メッシュM A1jと、メッシュMを挟んで近距離視点メッシュA1の反対側に位置する近距離視点メッシュA3を想定した近距離補助メッシュM A3jとは、形状が一致するが識別符号jが反転する関係にある。すなわち、識別符号jは視点VPを中心として時計回りに昇順に付与されるため、近距離補助メッシュM A1jの識別符号jはメッシュMにおいて右側に昇順となるのに対して、近距離補助メッシュM A3jの識別符号jはメッシュMにおいて右側に降順となる。従って、制御部20は、近距離視点メッシュA3についての近距離補助メッシュM A3jの近距離地表データSD1を取得する場合に、近距離視点メッシュA1についての近距離補助メッシュM A1 (7−j)の近距離地表データSD1を取得してもよい。
【0067】
ここで、図8B,8Cのように補助メッシュMBef,MCuvについて視点VPからの距離dに依存した重みw(d)を設定した場合、同一領域に対応する補助メッシュMBef,MCuvについての地表データSD2,SD3であっても、補助メッシュMBef,MCuvと視点VPとの位置関係に応じて地表データSD2,SD3が示す代表高さ等が異なり得る。重みw(d)が依存する距離dの基準となる視点VPの位置が視点メッシュBe,Cuごとに異なるからである。従って、図8Aに示すように距離dに依存しない重みw(d)が設定された近距離補助メッシュMAijについてのみ、メッシュMを挟んで反対側となる近距離視点メッシュAiから見た場合の近距離地表データSD1を流用してもよい。
【0068】
図6Aにおいては、補助メッシュMAij,MBef,MCuvに割り当てられた画像領域ごとに独立して地表画像GI1〜GI3を描画する様子を示したが、隣接する画像領域間で地表データSD1〜SD3が滑らかに接続されるようにしてもよい。すなわち、補助メッシュMAij,MBef,MCuvに割り当てられた画像領域と画像領域との境界線から所定距離以内の範囲に緩衝領域を設け、当該緩衝領域に描画する上端輪郭の高さと形状とを、当該境界領域を挟む画像領域に描画される上端輪郭の高さと形状とをそれぞれ平均した高さと形状としてもよい。さらに、境界領域における上端輪郭の下側領域にマッピングするテクスチャ画像を、当該境界領域を挟む画像領域における上端輪郭の下側領域をマッピングするテクスチャ画像を平均した画像としてもよい。これにより、隣接する補助メッシュMBef,MCuvに対応付けられた地表データSD1〜SD3が示す代表高さ等に隔たりがある場合でも、地表画像GI1〜GI3の不自然さを感じさせないようにできる。従って、代表高さ等の階調数を少なくして地表データベースSDのデータ量を抑制した場合でも、自然な地表画像GI1〜GI3が描画できる。
【0069】
なお、前記実施形態においては、メッシュMを見る距離に応じた粗さで補助メッシュMAij,MBef,MCuvを分割したが、必ずしもメッシュMを補助メッシュMAij,MBef,MCuvに分割し、補助メッシュMAij,MBef,MCuvごとに地表データSD1〜SD3を対応付けられていなくてもよい。すなわち、メッシュMを見る距離に拘わらず補助メッシュMAij,MBef,MCuvが同じ粗さで分割されていてもよいし、メッシュMに対してメッシュM全体の地表を見た場合の地表データSD1〜SD3を対応付けてもよい。このような場合であっても、周辺メッシュNN,MM,FMについての地表画像GI1〜GI3を描画するために読み込むデータ量を抑制できる。さらに、代表輪郭形状を示さない地表データSD1〜SD3を記録してもよい。この場合、制御部20は、上端輪郭の形状と常に直線等として描画を行えばよい。また、代表模様を示さない地表データSD1〜SD3を記録してもよい。この場合、制御部20は、上端輪郭の下側領域において単一色彩のテクスチャ画像をマッピングすればよい。このように代表輪郭形状や代表模様を地表データSD1〜SD3から省略することにより、描画のために読み込む地表データSD1〜SD3のデータ量をさらに抑制できる。
【符号の説明】
【0070】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、20d…表示制御部、21…表示制御プログラム、21a…視点メッシュ特定部、21b…周辺メッシュ特定部、21c…描画部、21d…表示制御部、30…記録媒体、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…ユーザI/F部、Ai…近距離視点メッシュ、Be…中距離視点メッシュ、Cu…遠距離視点メッシュ、DI…表示画像、GI…地表画像、M…メッシュ、MAij…近距離補助メッシュ、MBef…中距離補助メッシュ、MCuv…遠距離補助メッシュ、MD…地図情報、NM,MM,FM…周辺メッシュ、OD…地物データ、SD…地表データベース、SD1…近距離地表データ、SD2…中距離地表データ、SD3…遠距離地表データ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上に設定された複数の区画のそれぞれに対して、前記複数の区画のそれぞれを所定距離以内の他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第1地表データと、前記複数の区画のそれぞれを前記所定距離よりも遠い他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第2地表データとを対応付けて記録する記録手段と、
前記複数の区画のうち視点が設けられる視点区画を特定する視点区画特定手段と、
前記複数の区画のうち前記視点区画から前記所定距離以内の他の区画である第1周辺区画と、前記複数の区画のうち前記視点区画から前記所定距離よりも遠い他の区画である第2周辺区画とを特定する周辺区画特定手段と、
前記第1周辺区画についての前記第1地表データと、前記第2周辺区画についての前記第2地表データとがそれぞれ示す代表高さによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩を付すことにより前記視点から見た地表を表す地表画像を描画する描画手段と、
前記地表画像を含む画像を表示部に表示させる表示制御手段と、
を備える表示制御装置。
【請求項2】
前記記録手段は、
前記複数の区画のそれぞれを分割した複数の第1補助区画のそれぞれに対して、当該複数の第1補助区画のそれぞれを前記所定距離以内の他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す前記第1地表データを対応付けて記録するとともに、
前記複数の区画のそれぞれを前記複数の第1補助区画よりも粗く分割した複数の第2補助区画のそれぞれに対して、当該複数の第2補助区画のそれぞれを前記所定距離よりも遠い他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す前記第2地表データを対応付けて記録し、
前記描画手段は、
前記第1周辺区画に属する前記複数の第1補助区画のそれぞれについての前記第1地表データと、前記第2周辺区画に属する前記複数の第2補助区画のそれぞれについての前記第2地表データとが示す代表高さによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩を付すことにより前記視点から見た地表を表す地表画像を描画する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記記録手段は、
前記複数の区画のそれぞれを見た場合における地表の代表高さと代表色彩と代表模様とを示す前記第1地表データを記録するとともに、
前記複数の区画のそれぞれを見た場合における地表の代表高さと代表色彩と代表模様とを示す前記第2地表データを記録し、
前記描画手段は、
前記第1地表データと前記第2地表データとが示す代表高さによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩と代表模様とを付すことにより前記視点から見た地表を表す地表画像を描画する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記記録手段は、
前記複数の区画のそれぞれを見た場合における地表の代表高さと代表色彩と代表輪郭形状とを示す前記第1地表データを記録するとともに、
前記複数の区画のそれぞれを見た場合における地表の代表高さと代表色彩と代表輪郭形状とを示す前記第2地表データを記録し、
前記描画手段は、
前記第1地表データと前記第2地表データとが示す代表高さと代表輪郭形状とによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩を付すことにより前記視点から見た地表を表す地表画像を描画する、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記記録手段は、
前記複数の区画のそれぞれを前記所定距離以内の他の区画上における所定高さ以上の視点高さの位置から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とが、当該複数の区画のそれぞれに存在する地物の高さと色彩とのうち当該他の区画に近い地物の高さと色彩ほど所定の第1重視度で重視して決定された前記第1地表データを記録するとともに、
前記複数の区画のそれぞれを前記所定距離よりも遠い他の区画上における前記視点高さの位置から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とが、当該複数の区画のそれぞれに存在する地物の色彩と高さとのうち当該他の区画に近い地物の高さと色彩ほど前記第1重視度より大きい第2重視度で重視して決定された第2地表データを記録し、
前記視点区画特定手段は、前記複数の区画のうち区画上における前記視点高さに前記視点が設けられる前記視点区画を特定する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【請求項6】
地図上に設定された複数の区画のそれぞれに対して、前記複数の区画のそれぞれを所定距離以内の他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第1地表データと、前記複数の区画のそれぞれを前記所定距離よりも遠い他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第2地表データとを対応付けて記録した地表データベースを取得する取得工程と、
前記複数の区画のうち視点が設けられる視点区画を特定する視点区画特定工程と、
前記複数の区画のうち前記視点区画から前記所定距離以内の他の区画である第1周辺区画と、前記複数の区画のうち前記視点区画から前記所定距離よりも遠い他の区画である第2周辺区画とを特定する周辺区画特定工程と、
前記第1周辺区画についての前記第1地表データと、前記第2周辺区画についての前記第2地表データとがそれぞれ示す代表高さによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩を付すことにより前記視点から見た地表を表す地表画像を描画する描画工程と、
前記地表画像を含む画像を表示部に表示させる表示制御工程と、
を含む表示制御方法。
【請求項7】
地図上に設定された複数の区画のそれぞれに対して、前記複数の区画のそれぞれを所定距離以内の他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第1地表データと、前記複数の区画のそれぞれを前記所定距離よりも遠い他の区画から見た場合における地表の代表高さと代表色彩とを示す第2地表データとを対応付けて記録した地表データベースを取得する取得機能と、
前記複数の区画のうち視点が設けられる視点区画を特定する視点区画特定機能と、
前記複数の区画のうち前記視点区画から前記所定距離以内の他の区画である第1周辺区画と、前記複数の区画のうち前記視点区画から前記所定距離よりも遠い他の区画である第2周辺区画とを特定する周辺区画特定機能と、
前記第1周辺区画についての前記第1地表データと、前記第2周辺区画についての前記第2地表データとがそれぞれ示す代表高さによって特定される画像領域内に、当該第1地表データと当該第2地表データとが示す代表色彩を付すことにより前記視点から見た地表を表す地表画像を描画する描画機能と、
前記地表画像を含む画像を表示部に表示させる表示制御機能と、
をコンピュータに実行させる表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−203837(P2012−203837A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70429(P2011−70429)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】