説明

表示制御装置、表示制御方法及びプログラム

【課題】目標表示位置の指定に対するコンテンツ中の表示位置の追従特性を制御する表示制御装置、表示制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、前記現在表示位置から前記目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出する移動量算出部を備え、前記移動量算出部により算出される前記表示位置移動量の前記差分に対する割合は、前記差分の大きさに応じて異なる表示制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、表示制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末やPC(Personal Computer)など、コンテンツをアプリケーションウィンドウに表示する情報処理装置が広く普及している。コンテンツの一例としてはWebページや音楽データの再生リスト画面などが挙げられるが、このようなコンテンツ全体の表示サイズがアプリケーションウィンドウのサイズを上回る場合もある。この場合、ユーザは例えばアプリケーションウィンドウに含まれるスクロールバーを操作することによりコンテンツをアプリケーションウィンドウ内でスクロールすることができる。
【0003】
上記のスクロールバーは、コンテンツ全体のうちアプリケーションウィンドウに表示される表示位置の前記コンテンツ全体に対する相対位置と、スクロールバー全体に対するノブの相対位置が等しくなるようにコンテンツの表示位置がスクロールされる。
【0004】
このため、スクロールバーの高さ(または幅)が十分に取れない場合やコンテンツの量が多い場合は、スクロールバーの高さ(または幅)のノブの移動距離に対するコンテンツの表示位置の変化の比率が大きくなり、ノブの操作によるコンテンツ表示位置の細かな制御が困難となる。
【0005】
このようなスクロール表示における表示位置の細かな制御に関する技術としては、例えば下記特許文献1および2において、スクロールの停止操作後に所定の項目数逆スクロールさせる技術が開示されている。これにより、スクロールの行き過ぎが生じても面倒な操作が不要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−146591号公報
【特許文献2】特開2005−251008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、コンテンツのスクロール表示における表示位置の細かな制御が困難であるため、ユーザはコンテンツの内容を確認しながらスムーズにスクロールさせることが難しかった。
【0008】
また、ユーザのスクロール操作に遅延してコンテンツをスクロールさせる技術が知られているが、現在表示しているコンテンツの位置と表示させたいコンテンツの位置の差に関係なく一定時間遅延してスクロールされるため、表示させたいコンテンツにジャンプさせる制御や、内容を確認しながらゆっくりスクロールさせる制御等は出来なかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、目標表示位置の指定に対するコンテンツ中の表示位置の追従特性を制御することが可能な、新規かつ改良された表示制御装置、表示制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、前記現在表示位置から前記目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出する移動量算出部を備え、前記移動量算出部により算出される前記表示位置移動量の前記差分に対する割合は、前記差分の大きさに応じて異なる、表示制御装置が提供される。
【0011】
また、前記移動量算出部は、前記差分が第1の閾値を上回る場合は前記割合を第1の値に決定し、前記差分が前記第1の閾値を下回る場合には前記割合を前記第1の値より小さい値に決定し、決定した割合に従って前記表示位置移動量を算出してもよい。
【0012】
また、前記移動量算出部は、前記差分が前記第1の閾値より小さい第2の閾値を下回る場合には前記割合を前記第1の値より小さい第2の値に決定し、前記差分が前記第2の閾値と前記第1の閾値の間である場合には、前記第2の閾値と前記第1の閾値の間で前記第2の値から前記第1の値に変化する関数に従った値に前記割合を決定してもよい。
【0013】
また、前記ユーザによる前記目標表示位置の指定操作を検出する操作検出部を備えてもよい。
【0014】
また、前記操作検出部は、前記ユーザにより操作されるノブのスクロールバーに対する相対位置を検出し、前記コンテンツ中のうち前記相対位置と同等の相対位置に相当する位置を前記ユーザにより指定された目標表示位置として検出してもよい。
【0015】
また、前記移動量算出部は、前記目標表示位置への移動中における以前の表示位置移動量に依存するように前記表示位置移動量を算出してもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、前記現在表示位置から前記目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出するステップを含み、前記算出するステップにより算出される前記表示位置移動量の前記差分に対する割合は、前記差分の大きさに応じて異なる表示制御方法が提供される。
【0017】
また、前記算出するステップは、前記差分が第1の閾値を上回る場合は前記割合を第1の値に決定し、前記差分が前記第1の閾値を下回る場合には前記割合を前記第1の値より小さい値に決定し、決定した割合に従って前記表示位置移動量を算出してもよい。
【0018】
また、前記算出するステップは、前記差分が前記第1の閾値より小さい第2の閾値を下回る場合には前記割合を前記第1の値より小さい第2の値に決定し、前記差分が前記第2の閾値と前記第1の閾値の間である場合には、前記第2の閾値と前記第1の閾値の間で前記第2の値から前記第1の値に変化する関数に従った値に前記割合を決定してもよい。
【0019】
また、前記ユーザによる前記目標表示位置の指定操作を検出するステップをさらに含んでもよい。
【0020】
また、前記検出するステップは、前記ユーザにより操作されるノブのスクロールバーに対する相対位置を検出し、前記コンテンツ中のうち前記相対位置と同等の相対位置に相当する位置を前記ユーザにより指定された目標表示位置として検出してもよい。
【0021】
また、前記算出するステップは、前記目標表示位置への移動中における以前の表示位置移動量に依存するように前記表示位置移動量を算出してもよい。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、前記現在表示位置から前記目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出する処理をコンピュータに実行させ、前記算出する処理により算出される前記表示位置移動量の前記差分に対する割合は、前記差分の大きさに応じて異なるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、目標表示位置の指定に対するコンテンツ中の表示位置の追従特性を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の各実施形態に共通する表示制御装置の外観図である。
【図2】本発明の各実施形態に共通する表示制御装置のブロック構成図である。
【図3】本発明の各実施形態に共通する表示画面例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による表示制御処理を示すフローチャートである。
【図5】同実施形態による表示制御処理を示すフローチャートである。
【図6】同実施形態による表示制御を説明するための図である。
【図7】同実施形態によるパラメータαをグラフに示した図である。
【図8】同実施形態によるスクロール速度をグラフに示した図である。
【図9】従来のスクロール表示制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.表示制御装置の基本構成
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態
4.まとめ
【0027】
<1.本発明の各実施形態に共通する表示制御装置の基本構成>
本発明は、一例として「2.第1の実施形態」〜「3.第2の実施形態」において詳細に説明するように、多様な形態で実施され得る。また、各実施形態において説明する表示制御装置は、
A:コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、前記現在表示位置から前記目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出する移動量算出部(コンテンツ表示位置算出部104)を備え、
B:前記移動量算出部により算出される前記表示位置移動量の前記差分に対する割合は、前記差分の大きさに応じて異なる。
【0028】
以下では、まず、このような各実施形態において共通する基本構成について図1〜図3を参照して説明する。
【0029】
[表示制御装置の概要]
図1は、本実施形態による表示制御装置10の外観図である。表示制御装置10は、図1に示すように表示部106を備えたタブレット端末である。表示部106は、表示画面上にある指などの操作体の位置情報を取得し、ユーザの操作入力を受け付けるタッチパネルの構成を有する。さらに、表示制御装置10は、ユーザの操作入力を受け付ける操作ボタン110を備えてもよい。
【0030】
かかる表示制御装置10のような小型のタッチパネルディスプレイを搭載したデバイスにおいて、一つのアプリケーションウィンドウにコンテンツが表示しきれない場合は、コンテンツ中の表示位置を移動させるスクロールバーをアプリケーションウィンドウ内に表示し、コンテンツ全体をスクロール表示することができる。
【0031】
ここで、上述したように、スクロールバーの高さ(または幅)が十分に取れない場合やコンテンツの量が多い場合は、スクロールバーの高さ(または幅)のノブの移動距離に対するコンテンツの表示位置の変化の比率が大きくなり、ノブの操作によるコンテンツ表示位置の細かな制御が困難となる。特に、本実施形態による表示制御装置10のような小型のタッチパネルディスプレイを搭載したデバイスでは、スクロールバーの高さ(または幅)が十分に取れない場合が多くなる。また、特に指やスタイラスなどによって直接ノブを操作する場合は正確な操作が困難であった。
【0032】
また、スクロール表示における表示位置の細かな制御に関して、上記特許文献1および2では、スクロールの停止操作があった場合に、所定の項目数(若しくは所定の行数分)だけ逆方向にスクロールさせてからスクロールを停止させる技術が開示されている(図9参照)。これにより、スクロール表示動作の行き過ぎが生じても面倒な操作が不要になる。
【0033】
また、スクロール表示における表示位置の細かな制御に関して、ユーザのスクロール操作に一定時間遅延してコンテンツをスクロールさせる技術が知られているが、現在表示しているコンテンツの位置と表示させたいコンテンツの位置の差に関係なく一定時間遅延してスクロールされるため、表示させたいコンテンツにジャンプさせたり、内容を確認しながらゆっくりスクロールさせたり等の制御は出来なかった。
【0034】
そこで、上記問題を解決するため、目標表示位置の指定に対するコンテンツ中の表示位置の追従特性を制御することが可能な表示制御装置に至った。以下、このような表示制御装置について説明する。
【0035】
[表示制御装置の構成]
図2は、本実施形態による表示制御装置10のブロック構成図である。図2に示すように、表示制御装置10は、接触検出部101、位置算出部102、操作イベント生成部103、コンテンツ表示位置算出部104、表示制御部105、表示部106および記憶部107を備える。
【0036】
接触検出部101は、ユーザの指などの操作体の表示部106への接触を検出し、検出結果を位置算出部102に出力する。例えば表示部106が抵抗膜方式のタッチパネルの場合は、操作体の接触位置における電圧の変化が検出される。
【0037】
位置算出部102は、接触検出部101から出力された検出結果から、表示画面上のどの位置が接触されたのかを算出し、位置情報を操作イベント生成部103に出力する。
【0038】
操作イベント生成部103は、位置情報算出部102から出力された位置情報から、ユーザの操作を判断し、操作イベントを生成する。具体的には、操作イベント生成部103は、現在の位置情報と前回の位置情報から、操作体が画面にタッチしたのか、操作体が画面にタッチしたまま移動したのか(ドラッグ操作)、若しくは操作体が画面から離れたのかといったユーザの操作を判断し、かかる操作が表示画面上のどの位置で行われたかにより、操作イベントを生成する。操作イベント生成部103は、生成した操作イベントをコンテンツ表示位置算出部104に出力する。
【0039】
コンテンツ表示位置算出部104は、操作イベント生成部103から出力された操作イベントが、ノブの操作によりコンテンツ中の目標表示位置を指定する操作イベントである場合に、コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、現在表示位置から目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出する。さらに、かかる表示位置移動量からコンテンツの表示位置を算出する。なお、移動量算出部により算出される表示位置移動量の上記差分に対する割合は、上記差分の大きさに応じて異なる。コンテンツ表示位置算出部104は、算出した表示位置を表示制御部105に出力する。
【0040】
上記コンテンツ中の目標表示位置の指定は、スクロールバーのノブの操作により指定される。より具体的には、スクロールバーに対するノブの相対位置と等しいコンテンツ全体に対する相対位置が目標表示位置とされる。ここで、スクロールバーのノブの操作について図3を参照して説明する。
【0041】
図3は、本実施形態による表示制御装置10の表示部106に表示される画面例を示す図である。図3に示す画面例では、表示部106の表示画面に、コンテンツの一例としてリストが表示され、表示画面の端にスクロールバー202が表示され、スクロールバー202上にはドラッグ操作で上下に移動可能なノブ203が表示される。ノブ203の位置とコンテンツ中の表示位置の関係について以下説明する。
【0042】
まず、ノブ203が操作されていない場合、ノブ203のスクロールバー202の高さに対する相対位置yは、コンテンツ全体の高さに対する表示領域の相対位置yと等しくなるように表示制御される。つまり、コンテンツ全体の高さに対して、現在表示されている位置が上から30%であれば、ノブ203の位置はスクロールバー202の上から30%となる。以下、コンテンツまたはスクロールバーの最上位の相対位置を0、最下位の相対位置を1として、0≦y≦1、0≦y≦1が成り立つものとする。
【0043】
一方、ユーザがノブ203を操作している間は、ノブ203の操作に追従して若しくは操作直後に、y(ノブ203の指定する相対位置)=y(コンテンツの相対位置y)となるように表示制御される。
【0044】
上記説明したコンテンツ表示位置算出部104の処理については、「2.第1の実施形態」〜「3.第2の実施形態」においてさらに詳細に説明する。
【0045】
表示制御部105は、コンテンツ表示位置算出部104から出力された表示位置の情報に基づいて、記憶部107に格納されているコンテンツから表示画面を生成し、表示部106に出力する。次に、表示部106は、表示制御部105から出力された表示画面を表示する。
【0046】
以上、表示制御装置10の各構成について説明したが、表示制御装置10は、典型的には、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせにより実現され得る。接触検出部101は、例えば透明電極を構成する金属薄膜(抵抗膜)により実現され得る。位置算出部102、操作イベント生成部103、コンテンツ表示位置算出部104および表示制御部105は、CPU、RAMおよびROMによって実現され得る。例えば、CPUは、表示制御装置10の動作全般を制御する。また、ROMには、表示制御装置10の動作を制御するためのプログラムおよびデータが格納され、RAMにはCPUによる処理の実行時にプログラムおよびデータが一時的に記憶される。また、表示部106は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED等の任意のディスプレイにより実現され得る。
【0047】
<2.第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態による表示制御について図4から図8を参照して説明する。
【0048】
(動作処理)
図4のフローチャートに示すように、まず、ステップS50において、操作イベント生成部103はスクロールバーが操作されているか否かを判断する。ここで、操作体が画面に接触してノブ203のドラッグ操作を行なっている場合の他、操作体がノブ203上で停止している場合も、「操作されている」と判断され、ステップS55に進む。
【0049】
次いで、ステップS55において、y=yか否か判断する。すなわち、スクロールバー202中におけるノブ203の相対位置yと、コンテンツ中における表示位置の相対位置yが同じか否か判断する。同じでない場合は、ステップS60に進む。
【0050】
次いで、ステップS60において、コンテンツ表示位置算出部104はコンテンツの表示位置を算出する。コンテンツ表示位置算出部104の処理については図6から図8を参照して後述する。
【0051】
次いで、ステップS65において、表示制御部105は、コンテンツ表示位置算出部104から出力された表示位置に応じて、現在表示部106に表示されているコンテンツの表示位置を更新し、スクロール動作を行う。
【0052】
次いで、ステップS70において、時間tがt+dtにインクリメントされ、ステップS50に戻る。
【0053】
一方、ステップS50において、スクロールバーが操作されていない場合(操作体が画面から離れている場合)は、ステップS75に進む。次いで、ステップS75において、y=y(コンテンツ中の現在表示位置=目標表示位置)となるよう、コンテンツの表示位置y(t)またはスクロールバーのノブ203の位置y(t)が更新される。
【0054】
次に、ステップS75について図5を用いて詳細に説明する。図5に示すように、ステップS76において、コンテンツ表示位置算出部104により現在表示位置と目標表示位置の差分が閾値thより大きいと判断された場合は、ステップS77に進む。次いで、ステップS77において、表示制御部105は、y=yとなるよう、コンテンツの表示位置y(t)を更新する。一方、ステップS76において、コンテンツ表示位置算出部104により現在表示位置と目標表示位置の差分が閾値thより小さい場合は、ステップS78に進む。次いで、ステップS78において、表示制御部105は、y=yとなるよう、スクロールバーのノブ203の位置y(t)を更新する。
【0055】
(コンテンツ表示位置算出部104の処理について)
次に、コンテンツ表示位置算出部104の処理について図6から図8を参照して説明する。
【0056】
まず、図6の上側には、スクロールバー202のノブ203の操作の遷移図を示し、図6の下側には、ノブ203の操作に応じた、コンテンツ中の表示位置の移動(スクロール動作)の遷移図を示す。図6の下側に示すコンテンツ中の表示位置の移動の遷移図において、表示位置302が現在表示位置であり、表示位置303が目標表示位置である。
【0057】
本実施形態では、図6の上側に示すように、分解可能な最小時間dtの間にノブ203がy(t−dt)からy(t)までユーザにより操作され、その後、時間がt+nになるまで、ノブ203が同じ位置に留まっていたとする。この時、図6の下側に示すように、時間t+dtにおけるコンテンツ中の現在表示位置(現在表示領域)302の相対位置y(t+dt)は、時間tにおける現在表示位置302の相対位置y(t)とノブ203の相対位置y(t)、そして任意のパラメータαを使って、以下数式で表される。
【0058】
【数1】

【0059】
上記式1からyのスクロール速度v(t)は、下記式2で表すことが可能である。
【0060】
【数2】

【0061】
これにより、y(コンテンツ中の表示位置)のスクロール速度v(t)は、特定の時間におけるyとyの差分(現在表示位置と目標表示位置の差分)とパラメータα(単位時間当たりの表示位置移動量の上記差分に対する割合)によって決まる事が分かる。パラメータαは、0<α≦1を満たす値であればどのような値でもyを収束させることが可能であるが、スクロールバーの操作性を高めるために、特に本実施形態では、現在表示位置と目標表示位置の差分に応じてαの値を決定する。以下、図7を参照して現在表示位置と目標表示位置の差分に応じたαの値について説明する。なお、図8は、図7に示すαを用いて算出したy(コンテンツ中の表示位置)のスクロール速度v(t)を示すグラフである。
【0062】
[(1)yとyの差が小さい場合]
まず、現在表示位置と目標表示位置の差分が閾値d1(第2の閾値)より下回る場合について説明する。この場合、単位時間dtにおけるノブ203の移動量が少なく、ユーザはノブ203をゆっくり操作したと言える。したがってユーザはコンテンツの内容を確認しながら操作している可能性が高い。このような可能性を考慮し、αはyの速度vがブラウズに最適な値になるような1未満の定数として決定する。例えば、図7に示すように、閾値d1より下回る場合のαの値を0.2とする。なお、このようなαの値を、スクロールバーの高さ(h)とコンテンツの高さ(h)の比から求めてもよい。例えば下記式3に示すようにαの値を求める。
【0063】
【数3】

【0064】
[(2)yとyの差が十分に大きい場合]
次に、現在表示位置と目標表示位置の差分が閾値d1より大きい閾値d2(第1の閾値)より上回る場合について説明する。この場合、単位時間dtにおけるノブ203の移動量が大きく、ユーザがノブ203を素早く操作したと言える。したがってユーザはコンテンツの表示位置を任意の位置にジャンプさせる事を目的として操作している可能性が高い。このような可能性を考慮し、y(t+dt)=y(t)が成立するようにα=1とする(図7参照)。
【0065】
[(3)yとyの差が上記(1)と(2)の間の場合]
次に、現在表示位置と目標表示位置の差分が閾値d1と閾値d2の間の場合について説明する。このとき、αの値を、(1)のαの値と(2)のαの値を連続的に接続させるよう、vを加速度的に変化させる値に決定する。すなわち、αの値を、(2)のαの値から(1)のαの値に変化する関数に従った値に決定する。例えば、現在表示位置yと目標表示位置yから下記式4に示すようにαの値を求める。
【0066】
【数4】

【0067】
以上(1)〜(3)で説明したαの値の変化の一例を図7に示し、かかるαの値を用いて算出されたスクロール速度v(t)の変化を図8に示す。なお、閾値d1、d2は、0<d1<d2≦1となるような任意の閾値とする。
【0068】
<3.第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、yとy(現在表示位置と目標表示位置)の位置関係によるyの速度変化(コンテンツ中の表示位置のスクロール速度変化)について説明したが、図8に示したとおり、yとy(現在表示位置と目標表示位置)の差が小さくなってくるとvは小さくなるため、ノブを素早く動かしたとしても、yの収束値付近での速度が遅くなってしまう。そこで、vに慣性を持たせる。つまり、ある時間tにおけるyの速度v(t)は分解可能な最小時間dtだけ以前の速度v(t−dt)に依存するものとする。過去の速度の影響の強さをχとすると、上記式2から、最終的な速度は下記式5によって表すことができる。
【0069】
【数5】

【0070】
これにより、ノブが素早く動かされた場合は、yも素早く収束させることができる。また、ノイズなどによる値の突発的な値の変化の影響を受けにくくなるというメリットもある。なお、表示位置移動量が現在表示位置と目標表示位置の差分より大きい場合は、差分を上限とする表示位置移動量にすることで、オーバーシュートを回避することが出来る。
【0071】
<4.まとめ>
上記各実施形態によれば、目標表示位置の指定に対するコンテンツ中の表示位置の追従特性を制御することができる。これにより、コンテンツの内容を確認しながらのスクロールと、コンテンツ表示領域を任意の位置にジャンプさせるスクロールをスクロールバーのノブの操作のみで直感的に実現できるため、操作効率が向上する。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
例えば、表示部106は非接触式のタッチパネルでもよい。この場合、ステップS50においては、ノブ上に操作体が検知できない場合にスクロールバー(のノブ)が操作されていないと判断する。
【0074】
また、表示制御装置10は、図1に示すタブレット端末に限られない。例えば、表示制御装置10は、例えば携帯電話、携帯ゲーム機器、音楽プレーヤ、リモートコントールのような表示部を備えるユーザ機器であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 表示制御装置
101 接触検出部
102 位置算出部
103 操作イベント生成部
104 コンテンツ表示位置算出部
105 表示制御部
106 表示部
107 記憶部
201 コンテンツ
202 スクロールバー
203 ノブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、前記現在表示位置から前記目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出する移動量算出部を備え、
前記移動量算出部により算出される前記表示位置移動量の前記差分に対する割合は、前記差分の大きさに応じて異なる、表示制御装置。
【請求項2】
前記移動量算出部は、
前記差分が第1の閾値を上回る場合は前記割合を第1の値に決定し、前記差分が前記第1の閾値を下回る場合には前記割合を前記第1の値より小さい値に決定し、
決定した割合に従って前記表示位置移動量を算出する、請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記移動量算出部は、
前記差分が前記第1の閾値より小さい第2の閾値を下回る場合には前記割合を前記第1の値より小さい第2の値に決定し、
前記差分が前記第2の閾値と前記第1の閾値の間である場合には、前記第2の閾値と前記第1の閾値の間で前記第2の値から前記第1の値に変化する関数に従った値に前記割合を決定する、請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記ユーザによる前記目標表示位置の指定操作を検出する操作検出部を備える、請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記操作検出部は、前記ユーザにより操作されるノブのスクロールバーに対する相対位置を検出し、前記コンテンツ中のうち前記相対位置と同等の相対位置に相当する位置を前記ユーザにより指定された目標表示位置として検出する、請求項4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記移動量算出部は、前記目標表示位置への移動中における以前の表示位置移動量に依存するように前記表示位置移動量を算出する、請求項1から5のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項7】
コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、前記現在表示位置から前記目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出するステップを含み、
前記算出するステップにより算出される前記表示位置移動量の前記差分に対する割合は、前記差分の大きさに応じて異なる、表示制御方法。
【請求項8】
前記算出するステップは、
前記差分が第1の閾値を上回る場合は前記割合を第1の値に決定し、前記差分が前記第1の閾値を下回る場合には前記割合を前記第1の値より小さい値に決定し、
決定した割合に従って前記表示位置移動量を算出する、請求項7に記載の表示制御方法。
【請求項9】
前記算出するステップは、
前記差分が前記第1の閾値より小さい第2の閾値を下回る場合には前記割合を前記第1の値より小さい第2の値に決定し、
前記差分が前記第2の閾値と前記第1の閾値の間である場合には、前記第2の閾値と前記第1の閾値の間で前記第2の値から前記第1の値に変化する関数に従った値に前記割合を決定する、請求項8に記載の表示制御方法。
【請求項10】
前記ユーザによる前記目標表示位置の指定操作を検出するステップをさらに含む、請求項9に記載の表示制御方法。
【請求項11】
前記検出するステップは、前記ユーザにより操作されるノブのスクロールバーに対する相対位置を検出し、前記コンテンツ中のうち前記相対位置と同等の相対位置に相当する位置を前記ユーザにより指定された目標表示位置として検出する、請求項10に記載の表示制御方法。
【請求項12】
前記算出するステップは、前記目標表示位置への移動中における以前の表示位置移動量に依存するように前記表示位置移動量を算出する、請求項1から11のいずれか1項に記載の表示制御方法。
【請求項13】
コンテンツ中で画面に現在表示されている現在表示位置と、ユーザにより指定された目標表示位置との差分に応じて、前記現在表示位置から前記目標表示位置への単位時間当たりの表示位置移動量を算出する処理をコンピュータに実行させ、
前記算出する処理により算出される前記表示位置移動量の前記差分に対する割合は、前記差分の大きさに応じて異なる、プログラム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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