説明

表示制御装置、表示装置、および電子機器

【課題】メイン画像を撹乱するためのサイド画像の画像データを送信するリソースの負担増大を防止でき、かつ、サイド画像を多種多様に変化させる。
【解決手段】表示用画像を表示画面に表示するようにLCDモジュール22を制御するLCDコントローラ21では、メイン画像用メモリ30は、外部からのメイン画像Mの画像データを記憶し、サイド画像用メモリ31は、外部からの複数のサイド画像Fの画像データを記憶する。画像切替部33は、複数のサイド画像Fの画像データを順に切り替えて画像合成部39に送信する。画像合成部39は、LCD素子から、表示画面の法線に平行な軸方向に対する輝度と軸外の方向に対する輝度との非線形な対応関係と、サイド画像Fの画像データとに基づいて、メイン画像Mの画像データを変調し、表示用画像の画像データとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間的輝度変調によって表示用画像を表示するように液晶表示素子を制御する表示制御装置、表示装置、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯型情報機器のディスプレイとして液晶ディスプレイ(LCD)が広く利用されている。LCDは、CRT(Cathode Ray Tube)、プラズマディスプレイなどに比べて、視野角が狭いことが欠点とされてきたが、近時のLCD技術の進歩により、視野角の広角化が進められている。
【0003】
しかしながら、上記携帯型情報機器は、電車やバスの車内などにおいて混雑した状況で利用すると、上記携帯型情報機器の表示画面に表示された内容が周囲の人に覗き見される虞がある。特に、電子メールの作成および閲覧を行う場合には、その内容が周囲の人に覗き見されることはプライバシー上好ましくない。
【0004】
この問題に対応して、視野角を制御できるLCDが提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。このようなLCDでは、通常の広視野角モード(パブリックモード)と、視野角の狭い狭視野角モード(プライベートモード)との何れか一方から他方に切り替え可能となっている。なお、狭視野角モードとは、ユーザのいる表示画面真正面からは通常どおりの表示画像が視認でき、斜め方向からは無地画像または別の画像が見えるモードである。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の視野角可変素子は、対向する一対の透光性基板の各々の対向面側に配向膜が形成され、該一対の基板の間に、基板に対して少なくとも垂直方向に液晶分子が配向して狭視野角表示モードとなる液晶層が設けられている。また、特許文献2に記載の携帯端末装置は、2枚のガラス板の間の液晶の配向を変更することにより、情報表示手段の視野角を変更している。
【0006】
さらに、表示装置をいくつかの区画に分け、それぞれの区画で液晶配向方向等を異ならせることで、狭視野角モードにおいて、正面以外の方向から表示画面を見た場合に、表示画面に表示されたものとは異なる別の画像が視認できるようにする構成のものもある。例えば、特許文献3には、液晶層を挟む配向膜が複数の領域に区画され、隣接する前記領域の配向方向が異なる液晶表示装置が記載されている。また、特許文献4には、視角方向が異なる第1の液晶セルと第2の液晶セルとを交互に配する液晶表示装置が記載されている。
【0007】
さらに、特許文献5に記載の表示装置では、液晶表示パネルが、視野角の狭い範囲では線形のデータ値/輝度応答性を有し、視野角の狭い範囲の外では非線形のデータ値/輝度応答性を有することを利用している。
【0008】
具体的には、原画像における隣接するデータ値を、一方は分割値を加算し、他方は分割値を減算することにより修正する。修正された画像は、表示画面の法線に平行な軸上で上記表示画面を見た場合、人間の目が空間的平均化を行うため、上記原画像と同等の画像として視認されるが、軸外で上記表示画面を見た場合、上記分割値の要素が追加されることになる。上記分割値が上記修正された画像内でマスキング画像と比例した割合で変化する場合、軸外、すなわち上記表示画面に対して斜め方向では原画像とマスキング画像とがともに視認可能となる。マスキング画像が、格子縞模様や企業のロゴなどの攪乱パターンを有する場合、軸外の観察者に対しては、原画像は実質的に隠される。これにより、プライベートモードが実現され、軸上の観察者は覗き見されることなく原画像を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−105958号公報(1997年04月22日公開)
【特許文献2】特開2004−062094号公報(2004年02月26日公開)
【特許文献3】特開2001−264768号公報(2001年09月26日公開)
【特許文献4】特開2004−038035号公報(2004年02月05日公開)
【特許文献5】特開2007−017988号公報(2007年01月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献5では、原画像とマスキング画像とを取得し、取得された原画像とマスキング画像とに基づいて上記修正された画像を作成して出力する画像処理部が設けられることになる。また、特許文献5には、許可されていない観察者をさらに攪乱するために動画像を上記マスキング画像として使用することが開示されている。
【0011】
上記マスキング画像を動画像とするには、上記画像処理部が種々のマスキング画像のデータを周期的に受信することが考えられる。この場合、軸外で視認されるマスキング画像を多種多様に変化させるができる。しかしながら、上記画像処理部に上記マスキング画像のデータを周期的に送信するリソースの負担が増大することになる。
【0012】
或いは、上記マスキング画像を動画像とするには、上記画像処理部が、1つの画像を取得し、取得した画像を拡大・縮小したり、色を変更したりするなど、種々の加工処理を周期的に行い、加工処理された画像を上記マスキング画像とすることが考えられる。この場合、上記画像処理部に上記画像のデータを送信するリソースの負担が増大することを防止できる。しかしながら、利用される画像が1つであり、かつ、上記加工処理は予め決められているため、マスキング画像の変化に制限を受けることになる。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、メイン画像を撹乱するためのサイド画像(マスキング画像)の画像データを送信するリソースの負担が増大することを防止でき、かつ、サイド画像を多種多様に変化させることができる表示制御装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る表示制御装置は、空間的輝度変調によって表示用画像を表示画面に表示するように液晶表示素子を制御する表示制御装置であって、上記課題を解決するために、外部からメイン画像の画像データを取得するメイン画像取得部と、外部からサイド画像の画像データを取得するサイド画像取得部と、前記液晶表示素子からの輝度に関して、前記表示画面の法線に平行な軸方向に対する輝度と軸外の方向に対する輝度との非線形な対応関係と、前記サイド画像の画像データとに基づいて、前記メイン画像の画像データを変調し、変調した画像データを前記表示用画像の画像データとする画像合成部とを備えており、前記サイド画像取得部は、複数のサイド画像の画像データを記憶するサイド画像記憶部と、該サイド画像記憶部からサイド画像の画像データを選択して前記画像合成部に送出するサイド画像選択部であって、時間の経過と共に、選択するサイド画像の画像データを変更するサイド画像選択部とを備えることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によると、画像合成部は、液晶表示素子からの輝度に関して、表示画面の法線に平行な軸方向に対する輝度と軸外の方向に対する輝度との非線形な対応関係と、サイド画像の画像データとに基づいて、メイン画像の画像データを変調し、変調した画像データを表示用画像の画像データとする。この表示用画像が上記液晶表示素子に表示されると、該液晶表示素子から軸上の領域に位置する観察者(以下「軸上観察者」と称する。)は、メイン画像を視認し、上記液晶表示素子から軸外の領域に位置する観察者(以下「軸外観察者」と称する。)は、メイン画像とサイド画像とを合成した画像を視認することになる。その結果、軸外観察者は、メイン画像がサイド画像によって撹乱されて視認し難くなるので、メイン画像は、事実上軸上観察者のみが視認されることになる。
【0016】
さらに、サイド画像取得部は、外部から複数のサイド画像の画像データを取得してサイド画像記憶部に記憶し、サイド画像選択部は、上記サイド画像記憶部から選択したサイド画像の画像データを上記画像合成部に送出している。そして、サイド画像選択部は、時間の経過と共に、選択するサイド画像の画像データを変更している。
【0017】
これにより、軸外観察者が視認できるサイド画像を時間の経過と共に変更することができ、サイド画像の動画化を実現することができる。また、この動画化において、複数のサイド画像が利用されるので、1つのサイド画像を利用して動画化を実現する場合に比べて、サイド画像を多種多様に変化させることができる。
【0018】
また、上記複数のサイド画像の画像データは上記サイド画像記憶部に記憶されているので、上記サイド画像の画像データを表示制御装置に送信するリソースは、上記サイド画像の画像データを送信し続ける必要が無い。その結果、上記リソースの負担が増大することを防止できる。
【0019】
なお、上記サイド画像選択部が選択するサイド画像の画像データを変更する順序は、固定であってもよいし、外部から変更可能であってもよい。
【0020】
本発明に係る表示制御装置では、前記サイド画像選択部が選択したサイド画像の画像データを加工して前記画像合成部に送出する画像加工部であって、時間の経過と共に、前記加工の内容を変更する画像加工部をさらに備えてもよい。この場合、軸外観察者が視認できる1つのサイド画像を、時間の経過と共に変更して動画化することができるので、サイド画像をさらに多種多様に変化させることができる。なお、上記加工の例としては、配色パターンの切り替え、画像サイズの拡大・縮小、画像の回転、画像の反転などが挙げられる。
【0021】
ところで、上記表示用画像が変化する場合、上記液晶表示素子における液晶の応答速度に起因して、輝度の変化速度がばらつく。このため、上記サイド画像が変化すると、上記変調した画像データに対応する輝度へ変化する速度がばらつき、その結果、軸上観察者は、サイド画像に基づくチラツキを表示画面上に視認する現象(以下「チラツキ現象」と称する。)が発生する虞がある。すなわち、サイド画像を動画化すると、チラツキ現象が発生し、軸上観察者が視認する画像の品質低下を招く虞がある。
【0022】
そこで、本発明に係る表示制御装置では、前記画像合成部は、前記サイド画像選択部が前記サイド画像を変更する場合、変更前に前記メイン画像の画像データを変調する度合を段階的に減らし、変更後に前記変調される度合を段階的に戻すフェード部を備えてもよい。この場合、上記変調した画像データの値が段階的に変化するので、上記チラツキ現象を低減するか或いは無くすことができる。
【0023】
なお、上記の場合、軸外観察者は、メイン画像に変更前のサイド画像が重畳された画像から、上記変更前のサイド画像がフェードアウトし、それから上記変更後のサイド画像がフェードインするように視認することになる。また、上記変調する度合は、ゼロにまで段階的に減らすことが望ましいが、上記チラツキ現象が軸上観察者にとって気にならない程度にまで段階的に減らせば、本発明の効果を奏することができる。また、上記サイド画像選択部が上記サイド画像を変更するタイミングは、上記サイド画像選択部からの状態情報により直接的に取得してもよいし、上記サイド画像選択部への指示情報から間接的に取得してもよい。
【0024】
或いは、本発明に係る表示制御装置では、前記画像合成部は、前記サイド画像選択部が前記サイド画像を変更する場合、前記メイン画像の画像データを変調する度合を、変更前のサイド画像の画像データによる前記度合から、変更後のサイド画像の画像データによる前記度合に段階的に変更するフェード部を備えてもよい。この場合、上記変調した画像データの値が段階的に変化するので、上記チラツキ現象を低減するか或いは無くすことができる。
【0025】
さらに、上記変更前の度合から上記変更後の度合に直接変更しているので、変更前に上記度合を一旦減らし、変更後に上記度合を戻す上述の場合に比べて、上記サイド画像の変更を完了するまでの時間を短縮することができ、サイド画像を迅速に切り替えることができる。また、変更前および変更後のサイド画像の画像データをサイド画像記憶部が記憶しているので、上記フェード部による変更を容易に行うことができる。
【0026】
なお、上記の場合、軸外観察者は、メイン画像に変更前のサイド画像が重畳された画像から、メイン画像に変更後のサイド画像が重畳された画像にクロスフェードするように視認することになる。また、上記サイド画像選択部が上記サイド画像を変更するタイミングと、変更後の上記サイド画像とは、上記サイド画像選択部からの状態情報により直接的に取得してもよいし、上記サイド画像選択部への指示情報から間接的に取得してもよい。
【0027】
なお、前記フェード部は、サイド画像の画像データの値を段階的に変更することにより、前記度合を段階的に変更することができる。
【0028】
また、前記画像合成部は、前記非線形な対応関係に基づく、前記メイン画像の画像データの値と分割パラメータとの対応関係を記憶する分割パラメータ記憶部と、前記メイン画像の画像データの値に対応する分割パラメータと、前記サイド画像の画像データの値とに基づいて、前記メイン画像の画像データの値を変調する変調部とをさらに備えており、前記フェード部は、前記変調部が利用する分割パラメータを段階的に変更することにより、前記度合を段階的に変更することができる。
【0029】
本発明に係る表示制御装置では、前記画像合成部は、前記変調した画像データを前記表示用画像の画像データとするプライベートモードと、前記メイン画像の画像データを前記表示用画像の画像データとするパブリックモードとが切り替え可能であることが好ましい。
【0030】
パブリックモードでは、軸外観察者もメイン画像を視認することができるので、メイン画像を複数人で鑑賞する場合に好適である。従って、状況に応じてプライベートモードとパブリックモードとが切り替えられることにより利便性が向上する。
【0031】
なお、上記構成の表示制御装置と、該表示制御装置が制御する液晶表示素子とを備える表示装置であれば、上述の効果と同様の効果を奏することができる。
【0032】
また、上記構成の表示装置と、主制御装置とを備えており、該主制御装置は、前記メイン画像および前記サイド画像の画像データを前記表示制御装置に送信することを特徴とする電子機器であれば、上述の効果と同様の効果を奏することができ、主制御装置(リソース)の負担が増大することを防止できる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明は、複数のサイド画像の画像データを記憶し、時間の経過と共に選択されるサイド画像が変更されるので、軸外観察者が視認できるサイド画像を多種多様に変化させることができると共に、上記サイド画像の画像データを表示制御装置に送信するリソースは、上記サイド画像の画像データを送信し続ける必要が無いので、上記リソースの処理負担が増大することを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態である電子機器におけるLCDコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記電子機器の概略構成を示すブロック図である。
【図3】隣接する画素の輝度を示す図である。
【図4】階調値に対する輝度の応答性を示すグラフである。
【図5】上記電子機器におけるメイン画像の階調値と、表示用画像の階調値との対応関係を示すグラフである。
【図6】上記電子機器における正面視の画像と側面視の画像とを示す図である。
【図7】チラツキ現象の発生時における正面視の画像の一例を示す図である。
【図8】上記チラツキ現象が発生する場合における、軸上方向に通過する光の輝度の時間変化を示すグラフである。
【図9】上記チラツキ現象を抑制する本発明の対策が施された場合における、上記輝度の時間変化を示すグラフである。
【図10】本発明の別の実施形態である電子機器におけるLCDコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図11】上記LCDコントローラにおけるパラメータ調整部が調整する調整例を示すグラフである。
【図12】上記実施形態において、軸外観察者が視認するサイド画像の時間変化をフレーム期間単位で示す図である。
【図13】本発明のさらに別の実施形態である電子機器におけるLCDコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図14】上記LCDコントローラにおける階調制御部が調整する調整例を示すグラフである。
【図15】本発明のさらに別の実施形態である電子機器におけるLCDコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図16】上記LCDコントローラにおけるクロスフェード制御部が作成する遷移情報の一例を表形式で示す図である。
【図17】上記実施形態において、軸外観察者が視認するサイド画像の時間変化をフレーム期間単位で示す図である。
【図18】本発明の他の実施形態である電子機器におけるLCDコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図19】上記LCDコントローラにおけるクロスフェード制御部が作成する遷移情報の一例を表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。図2は、本実施形態の電子機器の概略構成を示している。この電子機器10の例としては、携帯電話機、電子辞書、携帯型通信端末などの携帯型電子機器が挙げられるが、本発明は、LCD(Liquid Crystal Display)ユニット(液晶表示装置)を備えた任意の電子機器に適用することができる。
【0036】
図2に示すように、電子機器10は、CPU(主制御装置)11、バス12、メモリ(主制御装置)13、およびLCDユニット(表示装置)14を備える構成である。
【0037】
CPU11は、例えばRAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリなどの記憶素子に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の演算を行うと共に、電子機器10内の各種ユニットの統括的な制御を、バス12を介して行うものである。本実施形態では、CPU11は、バス12を介してLCDユニット14に、メイン画像およびサイド画像の画像データ、各種指示などを送信している。
【0038】
ここで、サイド画像は、覗き見防止などの目的で、メイン画像を撹乱するためにメイン画像に重畳される画像をいう。なお、サイド画像としては、或る階調値が偏在している画像よりも、複数の階調値が混在している画像の方が、メイン画像を撹乱する度合が高いので望ましい。
【0039】
バス12は、電子機器10内の各種構成間でデータの送受信を行うための共通の信号線である。メモリ13は、各種データおよびプログラムを記憶するものである。メモリ13の例としては、CPU11が動作するときに必要なプログラム等の固定データを記憶する読出し専用の半導体メモリであるROM(Read Only Memory)と、演算に使用するデータ及び演算結果等を一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリとしてのRAMとが挙げられる。
【0040】
LCDユニット14は、CPU11またはメモリ13からバス12を介して画像データを受信し、受信した画像データに基づいて画像を表示するものである。LCDユニット14は、LCDモジュール22およびLCDコントローラ(表示制御装置)21を備える構成である。
【0041】
LCDモジュール22は、表示用画像の画像データに基づいて表示素子に文字、記号、図形などの画像を表示させる機能単位であり、表示画素がマトリクス状に配列されたマトリクス型のLCD素子(液晶表示素子)と、該LCD素子を駆動する駆動回路とを備えるものである。上記LCD素子は、光源からの入射光の輝度を空間的に変調する空間的輝度変調によって画像を表示するものである。なお、画像には、静止画像および動画像が含まれる。
【0042】
LCDコントローラ21は、LCDモジュール22を制御するものである。具体的には、LCDコントローラ21は、上記表示用画像の画像データをLCDモジュール22に送信すると共に、LCDモジュール22を表示制御するための複数の制御信号を送信している。この制御信号の例としては、垂直同期信号、水平同期信号、表示用画像の画像データをLCD素子の各表示画素に転送するための転送クロック信号などが挙げられる。
【0043】
本実施形態では、LCDモジュール22のLCD素子の表示画面から該表示画面の法線方向に存在する領域(以下、この領域を「軸上の領域」と称する。)Aonに位置する軸上観察者Vonは、メイン画像を視認するようになっている。一方、上記表示画面を視認可能な領域であって、上記軸上の領域以外の領域(以下、この領域を「軸外の領域」と称する。)Aoffに位置する軸外観察者Voffは、メイン画像とサイド画像とが合成された画像を視認するようになっている。この原理について以下に説明する。
【0044】
一般に、観察者は、表示素子から離れるに従って、該表示素子における隣接する画素同士が判別し難くなり、ついには判別できなくなる。このとき、観察者は、上記隣接する画素における輝度の平均値(平均輝度)を知覚することになる。
【0045】
このことから、図3に示すことが言える。図3は、隣接する画素の輝度を示している。まず、同図の(a)に示すように、隣接する画素p・p同士の輝度は等しく、Iとする。次に、同図の(b)に示すように、一方の画素pは、元の輝度Iから或る輝度Iを減算した輝度に変更し、他方の画素pは、元の輝度Iに或る輝度Iを加算した輝度に変更する。この場合、観察者は、上記隣接する画素p・p同士が判別できなくなると、同図の(c)に示すように、上記隣接する画素p・pの領域p12は、画素pの輝度(I−I)と画素pの輝度(I+I)との平均輝度、すなわち元の輝度Iを知覚することになる。
【0046】
すなわち、隣接する画素の輝度を同図の(b)のように変更しても、隣接する画素同士が判別できない程度に観察者が表示素子から離れると、該観察者にとっては、同図の(a)のような元の輝度が知覚されることになる。
【0047】
ところで、通常の表示素子は、出力される輝度が、入力される階調値(例えば、画像データが8ビットデータの場合、0〜255)に比例応答せず、該階調値の定数乗(γ乗)に比例応答している。このため、通常の表示ユニットは、ガンマ補正が行われて、出力される輝度が、入力される階調値に比例応答するようになっている。
【0048】
図4は、上記階調値に対する上記輝度の応答性を示すグラフである。ガンマ補正後の上記階調値と上記輝度とは、同図の(a)に示すように、比例しており、線形性を有している。この場合、階調値(原値)Dに対応する輝度をIとすると、原値Dから分割値Dだけ加算および減算をそれぞれ行った階調値(D+D)および階調値(D−D)に対応する輝度は、それぞれ輝度(I+I)および輝度(I−I)となる。従って、平均輝度はIとなり、原値Dに対応する輝度Iと同じとなる。
【0049】
しかしながら、LCD素子の場合、軸上の方向に通過する光と、軸外の方向に通過する光とは、液晶を通過する光路長が異なっているのみならず、光の進行方向に対する液晶分子の傾きの違いに起因した複屈折性が異なっている。このため、軸上の方向に通過する光に関しては、図4の(a)のように、上記階調値に対する上記輝度の応答性が線形となるようにガンマ補正を行ったとしても、軸外の方向に通過する光に関しては、上記応答性が非線形となる。
【0050】
図4の(b)は、上記応答性が非線形である場合を示している。同図の(b)を参照すると、この場合、階調値(原値)Dに対応する輝度Iは、原値Dから分割値Dだけ加算した階調値(D+D)に対応する輝度と、原値Dから分割値Dだけ減算した階調値(D−D)に対応する輝度との平均輝度Iと異なることが理解できる。
【0051】
そこで、メイン画像に対し、隣接する画素の一方は原値Dから分割値Dだけ加算し、他方は原値Dから分割値Dだけ減算するように階調値が変調され、変調された画像がLCD素子に表示される場合を考える。この場合、軸上観察者は、メイン画像と同等の画像(平均輝度I)を視認することになるが、軸外観察者は、メイン画像に対し、分割値Dに対応して変調された画像(輝度I)を視認することになる。従って、本実施形態では、メイン画像の上記隣接する画素の分割値Dを、サイド画像の対応する画素の階調値に対応付けている。これにより、軸外観察者は、メイン画像にサイド画像が合成された画像を視認することになる。
【0052】
ところで、図4の(b)を参照すると、分割値Dが大きくなるほど、輝度Iと平均輝度Iとの差が大きくなることが理解できる。本実施形態の場合、輝度Iと平均輝度Iとの差が大きいと、軸外観察者はサイド画像をより明確に視認することになるので、メイン画像の覗き見防止の観点から望ましい。従って、分割値Dは大きい方が望ましい。
【0053】
一方、階調値は0以上である必要があるので、原値Dから分割値Dだけ減算した階調値(D−D)も0以上である必要がある。このため、階調値(D−D)は、0または0に近い正数となるような分割値Dを設定することが望ましい。また、原値Dから分割値Dだけ加算した階調値(D+D)は、階調値の最大値以下である必要がある。このため、メイン画像は、利用可能な階調値の範囲を圧縮する必要がある。
【0054】
図5は、本実施形態におけるメイン画像の階調値と、表示用画像の階調値との対応関係を示すグラフであり、分割値Dに関する上記条件を満たすものである。なお、図5は、サイド画像が2階調(0または255)の例を示している。また、図5の例では、実線および破線が直線で表現されているが、実際には曲線であることが多い。
【0055】
図5の実線は、サイド画像の階調値が255の場合を示している。この場合、表示用画像の階調値は、メイン画像の圧縮された原値D’となる。また、図5の破線は、サイド画像の階調値が0の場合を示している。この場合、表示用画像における隣接する画素の階調値は、一方が、メイン画像の圧縮された原値D’から分割値Dだけ加算された階調値(D’+D)となり、他方が、メイン画像の圧縮された原値D’から分割値Dだけ減算した階調値(D’−D)となる。なお、サイド画像が多階調である場合は、サイド画像の階調値に応じて図5の2つの破線と同様のグラフが、図5の実線と2つの破線との間に記載されることになる。
【0056】
従って、本実施形態のLCDコントローラ21は、図5に示すような、メイン画像の階調値と分割値Dとの対応関係を分割パラメータとして記憶しておき、メイン画像の階調値を、サイド画像の階調値と上記分割パラメータとに基づいて変調し、これを表示用画像の階調値としてLCDモジュール22に送信している。これにより、軸上観察者は、メイン画像と同じ画像を視認する一方、軸外観察者は、メイン画像にサイド画像が合成された画像を視認することになる。その結果、軸外観察者は、メイン画像がサイド画像によって撹乱されて視認し難くなるので、メイン画像は、軸上観察者のみが視認できることになる。
【0057】
次に、LCDコントローラ21の詳細について説明する。図1は、LCDコントローラ21において、メイン画像およびサイド画像を用いて表示用画像を作成することに関する概略構成を示している。図1に示すように、LCDコントローラ21は、メイン画像用メモリ(メイン画像取得部)30、サイド画像用メモリ(サイド画像取得部、サイド画像記憶部)31、順序記憶部32、画像切替部(サイド画像取得部、サイド画像選択部)33、配色パターン記憶部34、色切替部(画像加工部)35、拡縮率記憶部36、画像拡縮部(画像加工部)37、分割パラメータ記憶部(画像合成部)38、画像合成部(変調部)39、回転・反転情報記憶部40、および回転・反転部41を備える構成である。
【0058】
メイン画像用メモリ30は、CPU11またはメモリ13からのメイン画像Mの画像データを取得して記憶するフレームバッファである。メイン画像用メモリ30に記憶されたメイン画像Mの画像データは、所定のタイミングで画像合成部39に送信される。
【0059】
サイド画像用メモリ31は、CPU11またはメモリ13からのサイド画像の画像データを取得して記憶するものである。本実施形態では、サイド画像用メモリ31は、複数のサイド画像の画像データを記憶できるようになっている。なお、図1の例では、4フレームのサイド画像Fr1〜Fr4の画像データをサイド画像用メモリ31に記憶しているが、これに限定されるものではない。
【0060】
順序記憶部32は、サイド画像用メモリ31における複数のサイド画像の画像データを読み出す順序のデータを記憶するものである。また、画像切替部33は、順序記憶部32に記憶された順序に従って、サイド画像用メモリ31から読み出すサイド画像の画像データを所定のタイミングで切り替えるものである。サイド画像を切り替えることにより、サイド画像の動画化を実現することができる。
【0061】
配色パターン記憶部34は、複数の配色パターンのデータを記憶するものである。また、色切替部35は、配色パターン記憶部34における上記複数の配色パターンを利用して、サイド画像の配色パターンを所定のタイミングで切り替えるものである。サイド画像の配色パターンを変化させることにより、サイド画像の動画化を実現することができる。
【0062】
具体的には、色切替部35は、まず、配色パターン記憶部34における複数の配色パターンの中から或る配色パターンを選択する。次に、色切替部35は、選択された配色パターンのデータに基づいて、サイド画像用メモリ31からのサイド画像の画像データの色情報を変更し、変更後のサイド画像の画像データを回転・反転部41に送信する。そして、所定のタイミングで、色切替部35は、上記或る配色パターンとは別の配色パターンを配色パターン記憶部34における複数の配色パターンの中から選択し、上記動作を繰り返す。
【0063】
回転・反転情報記憶部40は、回転角の情報と、左右反転、上下反転などの反転方向の情報とを記憶するものである。また、回転・反転部41は、回転・反転情報記憶部40における回転角の情報に基づいてサイド画像を所定のタイミングで回転したり、回転・反転情報記憶部40における反転方向の情報に基づいてサイド画像を所定のタイミングで反転したりするものである。サイド画像を回転または反転することによりサイド画像の動画化を実現することができる。
【0064】
具体的には、回転・反転部41は、色切替部35からのサイド画像の画像データに対し、回転・反転情報記憶部40における回転角の情報に基づいて回転し、回転したサイド画像の画像データを画像拡縮部37に送信し、上記動作を繰り返す。或いは、回転・反転部41は、色切替部35からのサイド画像の画像データに対し、回転・反転情報記憶部40における反転方向の情報に基づいて反転し、反転したサイド画像の画像データを画像拡縮部37に送信し、上記動作を繰り返す。
【0065】
拡縮率記憶部36は、画像サイズの拡大率または縮小率である拡縮率を複数個記憶するものである。また、画像拡縮部37は、拡縮率記憶部36における複数の上記拡縮率を利用して、サイド画像の画像サイズを所定のタイミングで拡大または縮小するものである。サイド画像の画像サイズを拡大または縮小することにより、サイド画像の動画化を実現することができる。
【0066】
具体的には、画像拡縮部37は、まず、拡縮率記憶部36における複数の拡縮率の中から或る拡縮率を選択する。次に、画像拡縮部37は、回転・反転部41からのサイド画像の画像データを、上記或る拡縮率で拡大または縮小されたサイド画像の画像データとなるように変更し、変更後のサイド画像の画像データを画像合成部39に送信する。そして、所定のタイミングで、画像拡縮部37は、上記或る拡縮率とは別の拡縮率を拡縮率記憶部36における複数の拡縮率の中から選択し、上記動作を繰り返す。
【0067】
分割パラメータ記憶部38は、上述の分割パラメータを記憶するものである。また、画像合成部39は、画像拡縮部37からのサイド画像の画像データと、分割パラメータ記憶部38における分割パラメータとに基づいて、メイン画像用メモリ30からのメイン画像の画像データを変調するものである。画像合成部39は、変調した画像データを上記表示用画像の画像データとしてLCDモジュール22に送信している。
【0068】
図6は、上記構成の電子機器10において、LCD素子の表示画面50にて軸上観察者が視認する正面視の画像と、軸外観察者が視認する側面視の画像とを示している。図示のように、正面視および側面視の画像は、時間の経過と共に、(a)、(b)、(c)、(d)の順番に変化し、これを繰り返す。具体的には、正面視の画像は、時間が経過しても、メイン画像Mのみである。一方、側面視の画像は、時間の経過と共に、メイン画像Mと第1フレームのサイド画像Fr1との合成画像、メイン画像Mと第2フレームのサイド画像Fr2との合成画像、メイン画像Mと第3フレームのサイド画像Fr3との合成画像、およびメイン画像Mと第4フレームのサイド画像Fr4との合成画像へと変化している。
【0069】
従って、本実施形態では、複数のサイド画像が利用して動画化を実現しているので、1つのサイド画像を利用して動画化を実現する場合に比べて、サイド画像を多種多様に変化させることができる。
【0070】
また、上記複数のサイド画像の画像データはサイド画像用メモリ31に記憶されているので、上記サイド画像の画像データをLCDコントローラ21に送信するCPU11またはメモリ13は、上記サイド画像の画像データを送信し続ける必要が無い。その結果、CPU11またはメモリ13の処理負担が増大することを防止でき、バス12の占有時間が増大することを防止できる。
【0071】
なお、色切替部35および画像拡縮部37は省略可能であるが、色切替部35および画像拡縮部37を設けることにより、サイド画像をさらに多種多様に変化させることができる。
【0072】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の別の実施形態について説明する前に、上述のチラツキ現象と該チラツキ現象を抑制する本発明の対策について図7〜図9を参照して説明する。
【0073】
図7は、チラツキ現象の発生時における正面視の画像の一例を示している。図示のように、サイド画像が切り替わるときに、軸上観察者は、表示画面50においてメイン画像Mにサイド画像Fを一瞬視認することになる。従って、サイド画像が切り替わる度に、チラツキ現象が発生し、軸上観察者が視認するメイン画像Mの品質低下を招く結果となる。
【0074】
図8は、チラツキ現象が発生する場合における、軸上方向に通過する光の輝度の時間変化を示すグラフである。同図において、実線は、サイド画像が切り替わって、隣接する画素p1・p2におけるサイド画像の階調値が0から255に変化する場合の上記輝度の時間変化を、一点鎖線は、平均輝度の時間変化をそれぞれ示している。なお、サイド画像の階調値が0の場合、画素p1・p2における上記輝度は、それぞれL1およびL2となる。一方、サイド画像の階調値が255の場合、画素p1・p2における上記輝度は、両方とも(L1+L2)/2となり、これはメイン画像による輝度である。
【0075】
図8に示すように、画素p1の上記輝度はL1から(L1+L2)/2に遷移し、画素p2の上記輝度はL2から(L1+L2)/2に遷移する。これらの遷移する速度が異なるため、画素p1における上記輝度の時間変化と、画素p2における上記輝度の時間変化とは、上記輝度が(L1+L2)/2である破線に対して非対称となる。このため、隣接する画素p1・p2の平均輝度の時間変化は、(L1+L2)/2から一旦外れることになり、これが、軸上観察者の視認するチラツキとなる。
【0076】
図9は、チラツキ現象を抑制する本発明の対策が施された場合における、上記輝度の時間変化を示すグラフである。なお、図9の実線および一点鎖線の意味は、図8の実線および一点鎖線の意味と同様であるので、その説明を省略する。
【0077】
図9のグラフは、図8のグラフに比べて、1フレーム(例えば1/30秒)ごとに上記輝度を段階的に遷移させ、かつ、遷移後の平均輝度が(L1+L2)/2を維持するように遷移させている点が異なり、その他は同様である。この場合、フレーム間の上記輝度の変化量が少ないため、上記輝度が変化する期間も短い。従って、画素p1・p2の平均輝度は、例え(L1+L2)/2から外れたとしても、その期間は短く、その量は少なくて済む。その結果、軸上観察者はチラツキを視認できなくなる。
【0078】
なお、サイド画像の階調値が255から0に変化する場合は、図9において時間の向きを反対向きにしたものと同様であるので、その説明を省略する。
【0079】
次に、本実施形態について図10〜図12を参照して説明する。本実施形態の電子機器10は、図2に示す電子機器10に比べて、LCDコントローラ21の構成が異なるのみであり、その他の構成は同様である。なお、上記実施形態で説明した構成および処理と同様の構成および処理には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0080】
図10は、本実施形態のLCDコントローラ21の概略構成を示している。本実施形態のLCDコントローラ21は、図1に示すLCDコントローラ21に比べて、配色パターン記憶部34、色切替部35、拡縮率記憶部36、および画像拡縮部37を省略している点と、タイミング指示部60およびパラメータ調整部(フェード部)61を追加している点が異なり、その他の構成は同様である。
【0081】
タイミング指示部60は、サイド画像を切り替えるタイミングを画像切替部33およびパラメータ調整部61に指示するものである。画像切替部33は、タイミング指示部60からの指示を受信したフレーム期間から数フレーム(例えば2フレーム)期間経過後に、サイド画像を切り替える。
【0082】
図1に示すLCDコントローラ21では、画像合成部39は、メイン画像の階調値に対応する分割値を分割パラメータ記憶部38から読み出している。これに対し、本実施形態では、パラメータ調整部61は、分割パラメータ記憶部38から読み出された分割値を調整して画像合成部39に送信している。
【0083】
具体的には、パラメータ調整部61は、タイミング指示部60からの上記指示を受信していない場合、分割パラメータ記憶部38から読み出された分割値Dをそのまま画像合成部39に送信している。一方、上記指示を受信した場合、パラメータ調整部61は、分割パラメータ記憶部38から読み出す分割値を段階的に調整し、調整した分割値を画像合成部39に送信している。
【0084】
図11は、本実施形態においてパラメータ調整部61が調整する調整例を示している。同図において、各フレーム期間における分割値が示されており、上段がサイド画像の階調値が0の場合であり、下段がサイド画像の階調値が255の場合である。なお、本実施形態では、サイド画像は、R(赤)・G(緑)・B(青)のそれぞれが2階調であり、8色を表現可能である。この場合、メイン画像Mの画像データに対する変調は、各画素におけるR成分、G成分、およびB成分別に行われることになる。
【0085】
図11において、最初のフレーム期間でタイミング指示部60から上記指示を受信したとする。このとき、サイド画像の階調値が0の場合、分割値は、2番目および3番目のフレーム期間でそれぞれ(D×2/3)および(D×1/3)となり、4番目のフレーム期間で0となる。なお、サイド画像の階調値が255の場合、分割値は0のままである。
【0086】
そして、4番目のフレーム期間でサイド画像が切り替えられる。切り替えられたサイド画像の階調値が0の場合、分割値は、5番目および6番目のフレーム期間でそれぞれ(D×1/3)および(D×2/3)となり、7番目のフレーム期間でDとなる。なお、切り替えられたサイド画像の階調値が255の場合、分割値は0のままである。
【0087】
なお、図11の例では、パラメータ調整部61は、4番目のフレーム期間で分割値が0となるように段階的に調整しているが、4番目のフレーム期間で分割値がDとなるように段階的に調整することもできる。このとき、サイド画像の階調値が0の場合、分割値はDのままである。一方、サイド画像の階調値が255の場合、分割値は、2番目および3番目のフレーム期間でそれぞれ(D×1/3)および(D×2/3)となり、4番目のフレーム期間でDとなり、5番目および6番目のフレーム期間でそれぞれ(D×2/3)および(D×1/3)となり、7番目のフレーム期間で0となる。
【0088】
図12は、本実施形態において、軸外観察者が視認するサイド画像の時間変化をフレーム期間単位で示している。同図の(a)は、4番目のフレーム期間で分割値がDとなるように段階的に調整する場合を示している。一方、同図の(b)は、図11に対応するものであり、4番目のフレーム期間で分割値が0となるように段階的に調整する場合を示している。同図を参照すると、本実施形態では、サイド画像がフェードアウトし、切り替えられたサイド画像がフェードインすることが理解できる。
【0089】
なお、本実施形態では、サイド画像用メモリ31における複数のサイド画像を切り替える場合に適用しているが、色切替部35また画像拡縮部37がサイド画像を変更する場合にも適用可能である。また、サイド画像の画像データとしてストリーミングデータをCPU11またはメモリ13から受信する場合にも適用可能である。
【0090】
〔実施の形態3〕
次に、本発明のさらに別の実施形態について、図13・図14を参照して説明する。本実施形態の電子機器10は、図2に示す電子機器10に比べて、LCDコントローラ21の構成が異なるのみであり、その他の構成は同様である。なお、上記実施形態で説明した構成および処理と同様の構成および処理には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0091】
図13は、本実施形態のLCDコントローラ21の概略構成を示している。本実施形態のLCDコントローラ21は、図10に示すLCDコントローラ21に比べて、パラメータ調整部61の代わりに階調制御部(フェード部)62が設けられている点が異なり、その他の構成は同様である。
【0092】
階調制御部62は、画像切替部33からのサイド画像の画像データの階調値を制御して画像合成部39に送信している。具体的には、階調制御部62は、タイミング指示部60からの上記指示を受信していない場合、上記サイド画像の画像データをそのまま画像合成部39に送信している。一方、上記指示を受信した場合、階調制御部62は、上記サイド画像の画像データの階調値を段階的に調整して画像合成部39に送信している。
【0093】
図14は、本実施形態において階調制御部62が調整する調整例を示している。同図において、各フレーム期間における階調値が示されている。なお、本実施形態では、サイド画像は、R(赤)・G(緑)・B(青)のそれぞれが4階調であり、64色を表現可能である。この場合、メイン画像Mの画像データに対する変調は、各画素におけるR成分、G成分、およびB成分別に行われることになる。
【0094】
図14において、最初のフレーム期間でタイミング指示部60から上記指示を受信したとする。このとき、階調値は、フレーム期間ごとに1つずつ減少していき、4番目のフレーム期間で全て0となる。そして、4番目のフレーム期間でサイド画像が切り替えられ、その後、1番目〜3番目のフレーム期間とは逆の順序で階調値が増加していき、7番目のフレーム期間で、切り替えられたサイド画像の階調値となる。
【0095】
なお、本実施形態において、軸外観察者が視認するサイド画像の時間変化は、図12と同様であるので、その説明を省略する。また、切替前後のサイド画像の階調値が2である場合、階調制御部62は、階調値を2・2・1・0・1・2・2と変化させてよい。また、切替前後のサイド画像の階調値が1である場合、階調制御部62は、階調値を1・1・1・0・1・1・1と変化させてよい。このように、サイド画像の階調値が中間の階調値である場合、階調値を減らすタイミングまたは増やすタイミングは、当該階調値よりも元の階調値が上である階調値よりも大きくならない限り、任意に調整可能である。
【0096】
また、本実施形態では、サイド画像用メモリ31における複数のサイド画像を切り替える場合に適用しているが、色切替部35また画像拡縮部37がサイド画像を変更する場合にも適用可能である。また、サイド画像の画像データとしてストリーミングデータをCPU11またはメモリ13から受信する場合にも適用可能である。
【0097】
〔実施の形態4〕
次に、本発明のさらに別の実施形態について、図15〜図17を参照して説明する。本実施形態の電子機器10は、図2に示す電子機器10に比べて、LCDコントローラ21の構成が異なるのみであり、その他の構成は同様である。なお、上記実施形態で説明した構成および処理と同様の構成および処理には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0098】
図10に示すLCDコントローラ21では、軸外観察者は、切替前のサイド画像がフェードアウトし、切替後のサイド画像がフェードインするように視認している。これに対し、本実施形態のLCDコントローラ21では、軸外観察者は、切替前後のサイド画像がクロスフェードするように視認することになる。
【0099】
図15は、本実施形態のLCDコントローラ21の概略構成を示している。本実施形態のLCDコントローラ21は、図10に示すLCDコントローラ21に比べて、クロスフェード制御部(フェード部)63を追加している点が異なり、その他の構成は同様である。
【0100】
クロスフェード制御部63は、上記クロスフェードを行うように画像切替部33およびパラメータ調整部61を制御するものである。具体的には、クロスフェード制御部63は、タイミング指示部60から上記指示を受信していない場合、順序記憶部32に記憶された順序でサイド画像を切り替えるように画像切替部33に指示し、分割パラメータ記憶部38から読み出された分割値Dをそのまま画像合成部39に送信するようにパラメータ調整部61に指示している。
【0101】
一方、タイミング指示部60から上記指示を受信した場合、クロスフェード制御部63は、以下の処理を実行する。すなわち、クロスフェード制御部63は、順序記憶部32に記憶された順序データから、切替前のサイド画像の画像データと切替後のサイド画像の画像データとを受信して、遷移情報を作成する。
【0102】
図16は、上記遷移情報の一例を示している。図示のように、上記遷移情報は、現在の(切替前の)サイド画像の階調値に基づく現在の分割値と、次の(切替後の)サイド画像の階調値に基づく次の分割値とに対応付けられている。なお、上述のように、サイド画像の階調値が0の場合、分割値はDであり、サイド画像の階調値が255の場合、分割値は0である。
【0103】
図16の例では、現在の分割値がDであり、次の分割値が0である場合、分割値は、段階的に変化し、2番目および3番目のフレーム期間でそれぞれ(D×2/3)および(D×1/3)となり、4番目のフレーム期間で0、すなわち次の分割値となる。また、現在の分割値が0であり、次の分割値がDである場合、分割値は、段階的に変化し、2番目および3番目のフレーム期間でそれぞれ(D×1/3)および(D×2/3)となり、4番目のフレーム期間でD、すなわち次の分割値となる。なお、現在の分割値と次の分割値とが同じである場合、分割値は変化しない。
【0104】
次に、クロスフェード制御部63は、上記遷移情報に基づいて、サイド画像の画素ごとに分割値を調整するようにパラメータ調整部61を制御する。そして、クロスフェード制御部63は、上記遷移情報の最後のフレーム期間(図16の例では4番目のフレーム期間)に、サイド画像を切り替えるように画像切替部33に指示する。
【0105】
図17は、本実施形態において、軸外観察者が視認するサイド画像の時間変化をフレーム期間単位で示している。同図を参照すると、本実施形態では、サイド画像がクロスフェードし、4番目のフレーム期間で次のサイド画像の表示が完成することが理解できる。一方、図12の例では、7番目のフレーム期間で次のサイド画像の表示が完成している。従って、本実施形態のように、サイド画像をクロスフェードする場合の方が、図12のように現在のサイド画像をフェードアウトし、次のサイド画像をフェードインする場合よりも迅速にサイド画像を切り替えることができる。
【0106】
〔実施の形態5〕
次に、本発明のさらに別の実施形態について、図18・図19を参照して説明する。本実施形態の電子機器10は、図2に示す電子機器10に比べて、LCDコントローラ21の構成が異なるのみであり、その他の構成は同様である。なお、上記実施形態で説明した構成および処理と同様の構成および処理には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0107】
図18は、本実施形態のLCDコントローラ21の概略構成を示している。本実施形態のLCDコントローラ21は、図13に示すLCDコントローラ21に比べて、クロスフェード制御部63を追加している点が異なり、その他の構成は同様である。
【0108】
本実施形態のクロスフェード制御部63は、図15に示すクロスフェード制御部63に比べて、パラメータ調整部61を制御する代わりに、階調制御部62を制御する点と、作成する遷移情報とが異なり、その他の機能は同様である。
【0109】
図19は、本実施形態における上記遷移情報の一例を示している。図示のように、上記遷移情報は、現在の(切替前の)サイド画像の階調値と、次の(切替後の)サイド画像の階調値とに対応付けられている。例えば、現在の階調値が3であり、次の階調値が0である場合、階調値は、段階的に変化し、2番目および3番目のフレーム期間でそれぞれ2および1となり、4番目のフレーム期間で0、すなわち次の階調値となる。また、現在の階調値が0であり、次の階調値が3である場合、階調値は、段階的に変化し、2番目および3番目のフレーム期間でそれぞれ1および2となり、4番目のフレーム期間で3、すなわち次の階調値となる。
【0110】
クロスフェード制御部63は、上記遷移情報に基づいて、サイド画像の画素ごとに階調値を調整するように階調制御部62を制御する。そして、クロスフェード制御部63は、上記遷移情報の最後のフレーム期間(図19の例では4番目のフレーム期間)に、サイド画像を切り替えるように画像切替部33に指示する。
【0111】
なお、本実施形態において、軸外観察者が視認するサイド画像の時間変化は、図17と同様であるので、その説明を省略する。また、上述のように、現在の階調値、または次の階調値が中間の階調値である場合、階調値を減らすタイミングまたは増やすタイミングは、任意に調整可能である。
【0112】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0113】
例えば、上記実施形態では、LCDコントローラ21は、プライベートモードで動作する機能のみを説明しているが、パブリックモードで動作する機能を追加し、CPU11からの指示により、プライベートモードとパブリックモードとが切り換え可能であることが望ましい。パブリックモードの場合、画像合成部39は、メイン画像用メモリ30からのメイン画像Mの画像データを表示用画像の画像データとしてそのままLCDモジュール22に送信すればよい。
【0114】
また、上記実施形態では、メイン画像Mにおいて隣接する2つの画素の階調値を変調する場合について説明したが、隣接する3つ以上の画素についても同様に適用できる。また、複数の画素からなる画素群を設定する場合、隣接する画素群についても同様に適用することができる。また、上記階調値の代わりに、画素値など、他のデータ値を利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、複数のサイド画像の画像データを記憶し、時間の経過と共に選択されるサイド画像が変更されるので、軸外観察者が視認できるサイド画像を多種多様に変化させることができると共に、上記サイド画像の画像データを表示制御装置に送信するリソースは、上記サイド画像の画像データを送信し続ける必要が無いので、上記リソースの処理負担が増大することを防止できるので、メイン画像とサイド画像とを利用して表示制御を行う任意の電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0116】
10 電子機器
11 CPU(主制御装置)
12 バス
13 メモリ(主制御装置)
14 LCDユニット(表示装置)
21 LCDコントローラ(表示制御装置)
22 LCDモジュール
30 メイン画像用メモリ(メイン画像取得部)
31 サイド画像用メモリ(サイド画像取得部、サイド画像記憶部)
32 順序記憶部
33 画像切替部(サイド画像取得部、サイド画像選択部)
34 配色パターン記憶部
35 色切替部(画像加工部)
36 拡縮率記憶部
37 画像拡縮部(画像加工部)
38 分割パラメータ記憶部(画像合成部)
39 画像合成部(変調部)
50 表示画面
60 タイミング指示部
61 パラメータ調整部(フェード部)
62 階調制御部(フェード部)
63 クロスフェード制御部(フェード部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的輝度変調によって表示用画像を表示画面に表示するように液晶表示素子を制御する表示制御装置であって、
外部からメイン画像の画像データを取得するメイン画像取得部と、
外部からサイド画像の画像データを取得するサイド画像取得部と、
前記液晶表示素子からの輝度に関して、前記表示画面の法線に平行な軸方向に対する輝度と軸外の方向に対する輝度との非線形な対応関係と、前記サイド画像の画像データとに基づいて、前記メイン画像の画像データを変調し、変調した画像データを前記表示用画像の画像データとする画像合成部とを備えており、
前記サイド画像取得部は、
複数のサイド画像の画像データを記憶するサイド画像記憶部と、
該サイド画像記憶部からサイド画像の画像データを選択して前記画像合成部に送出するサイド画像選択部であって、時間の経過と共に、選択するサイド画像の画像データを変更するサイド画像選択部とを備えることを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記サイド画像選択部が選択したサイド画像の画像データを加工して前記画像合成部に送出する画像加工部であって、時間の経過と共に、前記加工の内容を変更する画像加工部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記画像合成部は、前記サイド画像選択部が前記サイド画像を変更する場合、変更前に前記メイン画像の画像データを変調する度合を段階的に減らし、変更後に前記変調される度合を段階的に戻すフェード部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記画像合成部は、前記サイド画像選択部が前記サイド画像を変更する場合、前記メイン画像の画像データを変調する度合を、変更前のサイド画像の画像データによる前記度合から、変更後のサイド画像の画像データによる前記度合に段階的に変更するフェード部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記フェード部は、サイド画像の画像データの値を段階的に変更することにより、前記度合を段階的に変更することを特徴とする請求項3または4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記画像合成部は、
前記非線形な対応関係に基づく、前記メイン画像の画像データの値と分割パラメータとの対応関係を記憶する分割パラメータ記憶部と、
前記メイン画像の画像データの値に対応する分割パラメータと、前記サイド画像の画像データの値とに基づいて、前記メイン画像の画像データの値を変調する変調部とをさらに備えており、
前記フェード部は、前記変調部が利用する分割パラメータを段階的に変更することにより、前記度合を段階的に変更することを特徴とする請求項3または4に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記画像合成部は、前記変調した画像データを前記表示用画像の画像データとするプライベートモードと、前記メイン画像の画像データを前記表示用画像の画像データとするパブリックモードとが切り替え可能であることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の表示制御装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか1項に記載の表示制御装置と、該表示制御装置が制御する液晶表示素子とを備える表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表示装置と、主制御装置とを備えており、
該主制御装置は、前記メイン画像および前記サイド画像の画像データを前記表示制御装置に送信することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−17868(P2011−17868A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162125(P2009−162125)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】