説明

表示制御装置、表示装置及び表示装置の制御方法

【課題】表示色切替時の違和感を軽減する。
【解決手段】電極間に色及び極性が異なる2種類の電気泳動粒子を有する電気泳動表示パネル5を制御するための表示制御装置において、電極間に駆動電圧を印可するためのパルス状の駆動信号を供給し、電気泳動表示パネルの表示色を電気泳動粒子の各色の間で変化させて中間色を表示させることが可能な表示駆動回路40と、目標となる表示色である目標表示色および2種類の電気泳動粒子の移動特性の違いに基づいて各電気泳動粒子の移動状態を表示駆動回路40を介して制御する制御部57と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示パネルを制御する表示制御装置、電気泳動表示パネルを備えた表示装置及び表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体中に分散した帯電粒子が電界印可により泳動する現象、つまり、電気泳動現象を利用した電気泳動表示パネルを備えた表示装置が提案されている。この種の電気泳動表示パネルは、電極間に、例えば白色と黒色の電気泳動粒子を封入した電気泳動層を設け、電極間にプラス電位又はマイナス電位の駆動電圧を印可することにより、白黒の電気泳動粒子のいずれかを表示面側へ移動させ、表示面の表示色を白や黒にすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭52−70791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電気泳動表示パネルは、白色表示を黒色表示に切り替える場合と、黒色表示を白色表示に切り替える場合とでは、同電圧を印加して切替えを行う場合において、切替えに実際に必要とされる時間が異なることが知られている。
これは白色表示を黒色表示に切り替える場合、あるいは、黒色表示を白色表示切り替える場合ばかりでなく、中間調表示を行う場合でも同様であり、例えば、白色表示(相対濃度100%)から相対濃度50%の中間色表示に切り替える場合と、黒色表示(相対濃度0%)から相対濃度50%の中間色表示に切り替える場合とでは、切替えに実際に必要とされる時間が異なっている。
従って、例えば、隣接する領域(あるいは隣接するセグメント)で、同時に表示色を同一にしようとする場合に、元の表示色によって切替完了までの時間が異なり、ユーザに違和感を与える原因となっていた。
そこで、本発明の目的は、表示色切替時の違和感を軽減することが可能な表示制御装置、表示装置及び表示装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述課題を解決するため、電極間に色及び極性が異なる2種類の電気泳動粒子を有する電気泳動表示パネルを制御するための表示制御装置において、前記電極間に駆動電圧を印可するためのパルス状の駆動信号を供給し、前記電気泳動表示パネルの表示色を前記電気泳動粒子の各色の間で変化させて中間色を表示させることが可能な駆動部と、目標となる前記表示色である目標表示色および前記2種類の電気泳動粒子の移動特性の違いに基づいて前記各電気泳動粒子の移動状態を前記駆動部を介して制御する移動状態制御部と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、駆動部は、移動状態制御部の制御下で、電極間に駆動電圧を印可するためのパルス状の駆動信号を供給し、電気泳動表示パネルの表示色を電気泳動粒子の各色の間で変化させて中間色を表示させる。
このとき、移動状態制御部は、目標となる前記表示色である目標表示色および2種類の電気泳動粒子の移動特性の違いに基づいて各電気泳動粒子の移動状態を前記駆動部を介して制御する。
【0005】
この場合において、前記移動状態制御部は、複数の異なる色の領域を同一色に移行させるに際し、移行終了タイミングが各領域で一致するように前記駆動部を介して移行開始タイミングを制御する移行タイミング制御部を備えるようにしてもよい。
【0006】
また、前記移動状態制御部は、複数の異なる色の領域を同一色に移行させるに際し、移行終了タイミングが各領域で一致するように前記駆動部を介してパルス印加タイミングを制御するパルス印加制御部を備えるようにしてもよい。
さらに、前記移動状態制御部は、複数の異なる色の領域を同一色に移行させるに際し、移行終了タイミングが各領域で一致するように各前記領域毎に前記駆動信号の電圧を変更する電圧制御部を備えるようにしてもよい。
さらにまた、前記移動状態制御部は、複数の異なる色の領域を同一色に移行させるに際し、移行終了タイミングが各領域で一致するように前記駆動部を介して駆動信号のパルス幅を制御するパルス幅制御部を備えるようにしてもよい。
【0007】
また、現在の表示色から前記目標表示色に移行させるために必要な前記パルス状の駆動信号のパルス数あるいは前記パルス状の駆動信号による電圧印加時間を記憶するパルス情報記憶テーブルを備え、前記移動状態制御部は、複数の異なる表示色の領域の表示色を同一色に切り替えるに際し、前記パルス情報記憶テーブルを参照して、前記各電気泳動粒子の移動状態を制御するようにしてもよい。
【0008】
また、表示装置は、電極間に色及び極性が異なる2種類の電気泳動粒子を有する電気泳動表示パネルと、前記電極間に駆動電圧を印可するためのパルス状の駆動信号を供給し、前記電気泳動表示パネルの表示色を前記電気泳動粒子の各色の間で変化させて中間色を表示させることが可能な駆動部と、目標となる前記表示色である目標表示色および前記2種類の電気泳動粒子の移動特性の違いに基づいて前記各電気泳動粒子の移動状態を前記駆動部を介して制御する移動状態制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、電極間に色及び極性が異なる2種類の電気泳動粒子を有する電気泳動表示パネルを備えた表示装置の表示制御方法において、前記電極間に駆動電圧を印可するためのパルス状の駆動信号を供給し、前記電気泳動表示パネルの表示色を前記電気泳動粒子の各色の間で変化させて中間色を表示させる駆動過程と、目標となる前記表示色である目標表示色および前記2種類の電気泳動粒子の移動特性の違いに基づいて前記各電気泳動粒子の移動状態を前記駆動部を介して制御する移動状態制御過程と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、電気泳動表示パネルの表示色を切り替える場合に、表示色切替時の違和感を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る腕時計1の外観構成を示す図である。
図1に示すように、腕時計1は、時計ケース2と、この時計ケース2に取り付けられ、ユーザの手首に巻き付けられる一対の時計バンド3とを備えている。時計ケース2は正面に時刻を表示するための時刻表示窓4が形成され、時刻を表示する表示パネル5を時刻表示窓4から視認可能に構成されている。また、時刻表示窓4には透明樹脂や透明ガラス等から形成されたカバー体6が嵌め込まれ、このカバー体6により表示パネル5が保護されている。さらに、時計ケース2には、時刻修正やモード変更等の各種指示を行うための操作ボタン8が設けられている。
【0012】
図2は、腕時計の表示パネルの説明に供する図である。
表示パネル5は、複数のセグメントにより各種情報を表示するセグメント表示パネルが適用され、この表示パネル5の表示領域5Rには、図2に示すように、0〜9の数字を表示するためのセグメント(いわゆる7セグメント)5Aが4列配列され、左2列のセグメント5Aにより時刻の「時」が表示され、右2列のセグメント5Aにより「分」が表示される。また、「時」のセグメント5Aと「分」のセグメント5Aの間には、「時」、「分」の区切りを示す文字(本例ではコロン)を表示するための正面視円形のセグメント5Bが配置されている。
【0013】
また、図1に示すように、各セグメント5A、5Bには、背景を表示する背景セグメント5Cが各々設けられており、これら背景セグメント5Cにより、各セグメント5A、5Bにより表示される1文字(数字、コロン)毎に、背景が表示される。本実施の形態では、この表示パネル5に電気泳動表示パネルが用いられているが、その詳細な構成については後述する。また、以下の説明において、セグメント5A〜5Cのそれぞれを特に区別する必要がないときは、セグメント5Xと表記する。
時計ケース2内には、表示パネル5と一体的に構成された時刻表示ユニット10が配置されている。
【0014】
図3は、腕時計の時刻表示ユニットを模式的に示す断面図である。
この時刻表示ユニット10は、図3に断面図を示すように、回路基板11Aと、表示枠11Bと、ディスプレイ基板11Cと、透明基板11Dと、これらを保持する回路押さえ13とを備えている。
ディスプレイ基板11Cは、その上面に、各セグメント5A〜5Cに対応するセグメント電極14と、共通電極用セグメント電極15とが設けられている。
【0015】
このディスプレイ基板11Cの下面には、表示枠11Bを介して回路基板11Aが配置され、この回路基板11Aには、表示駆動回路40や制御部50等を構成する素子16が実装されている。上記回路基板11Aの上面には、上記素子16(表示駆動回路40等)に配線接続された接点11A1が設けられると共に、上記ディスプレイ基板11Cの下面には、各電極14、15に配線接続された接点11C1が設けられ、これら接点11A1及び11C1は、表示枠11Bを貫通する接続コネクタ17を介して導通している。
さらに、回路基板11Aの側面には、スイッチ用電極18が設けられ、このスイッチ用電極18は、回路押さえ13に設けられた板ばね19を介して導通可能に構成され、この板ばね19が上記操作ボタン8の押下操作によって変形した場合に、この変形した板ばね19を介して導通する。この導通/非導通は、上記素子16(本実施形態では制御部50)によって検出される。また、上記回路基板11Aの下面には、上記素子16に駆動電力を供給する電池(電源)20が着脱自在に設けられる。更に、この回路基板11Aには、上記素子16を覆う回路枠21が固定され、この回路枠21によって素子16が保護されている。なお、上記電池20には、一次電池であるボタン電池が適用されるが、これに限らず、二次電池を適用してもよい。
【0016】
透明基板11Dには、ディスプレイ基板11C側の面に、ITO(Indium-Tin Oxide)蒸着等で形成された透明の共通電極25が設けられ、この透明の共通電極25とディスプレイ基板11Cのセグメント電極14との間には、電気泳動層30が設けられると共に、透明の共通電極25と共通電極用セグメント電極15との間には、共通電極用導通材26が介挿されている。この共通電極用導通材26は、例えば、導電性ゴムで形成され、この導電性ゴムが共通電極25と共通電極用セグメント電極15との間の間隙に合わせて変形することにより、これら電極25、15間の導通が確実に確保されている。
【0017】
図4は、表示パネルの構成を説明するための断面図である。
電気泳動層30は、図4に示すように、複数のマイクロカプセル31から構成され、これらマイクロカプセル31には、電気泳動分散液33が封入され、この電気泳動分散液33には、黒色の電気泳動粒子(以下、黒粒子という)34と、白色の電気泳動粒子(以下、白粒子という)35とが混合されて、二色の粉末流体方式の電気泳動層を構成している。これら黒粒子34及び白粒子35は互いに異なる極性に帯電しており、本実施形態では、黒粒子34がプラスに帯電し、白粒子35がマイナスに帯電している。
【0018】
上記構成により、表示駆動回路40により共通電極用セグメント電極15(図2)が0V電位(アース電位:以下、“L”レベルという)に保持されて共通電極25が0V電位とされると共に、所定のセグメント電極14がプラス電位(以下、“H”レベルという)とされた場合、セグメント電極14から共通電極25に向かう電界が発生し、マイクロカプセル31内のプラスに帯電した黒粒子34が共通電極25側に移動し、マイナスに帯電した白粒子35がセグメント電極14側に移動する。
これとは逆に、表示駆動回路40により共通電極用セグメント電極15がプラス電位(“H”レベル)に保持されて共通電極25が“H”レベルとされると共に、所定のセグメント電極14が“L”レベルとされた場合、マイクロカプセル31内のマイナスに帯電した白粒子35が共通電極25側に移動し、プラスに帯電した黒粒子34がセグメント電極14側に移動する。
【0019】
このように、表示駆動回路40が、共通電極25及び各セグメント電極14を“L”レベル又は“H”レベルに保持する駆動信号を供給することによって、外部から視認される透明基板11D側(共通電極25側)への黒粒子34と白粒子35との各移動量が調整され、外部から視認されるセグメント5Xの表示色が黒と白との間(黒、白、中間色)で変更される。
また、共通電極25とセグメント電極14との間に電位差が生じない場合には、電気泳動粒子(黒粒子34、白粒子35)の移動が生じないため、セグメント5Xの表示色は変化せずに以前の状態が維持される。
なお、本実施形態では、表示駆動回路40が昇圧回路を内蔵し、電池20から供給される電圧(例えば3V)を昇圧して+12Vの電圧を生成して、この+12Vの電圧、或いは、0Vの電圧を駆動電圧としてセグメント電極14及び共通電極25に印可している。
【0020】
図5は、時刻表示ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
制御部50は、ディスプレイ基板11Cに設けられた配線パターンを介して表示駆動回路40や電池20と電気的に接続され、この制御部50は、計時回路51と、入出力回路(I/O)52と、電圧制御回路53と、操作制御回路54と、制御回路(制御手段)57とを備えている。計時回路51は、図示しない発振回路の発振パルスをカウントすることにより時刻を計時するものであり、この計時回路51は、入出力回路52を介して表示駆動回路40と接続されている。
また、電圧制御回路53は、電池20からの供給電力を制御部50内の各部と表示駆動回路40とに供給するものであり、操作制御回路54は、上記スイッチ用電極18の導通/非導通を検出することにより、操作ボタン8の操作を検出し、この検出結果を制御回路57に通知する。
【0021】
また、制御回路57は、この時刻表示ユニット10全体を中枢的に制御するものであり、CPU、ROM、RAM等を有し、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、制御部50の各部の動作を制御すると共に、入出力部(I/O)52を介して表示駆動回路40に各種信号を出力する。
表示駆動回路40は、上記したように、表示パネル5を駆動する回路であり、制御回路57の指示の下、計時回路51により計時されている時刻情報を取得し、指示された書換間隔で上記電極間に駆動電圧を印加する駆動信号を供給して表示パネル5の各セグメント5Xの表示色を変化させ、現在時刻を表示パネル5に表示させる。
次に、表示パネル5の描画動作を説明する。本実施形態では、制御回路57が、セグメント5X毎に現在の描画レベル(以下、現在レベルという)を管理すると共に、セグメント5X毎に目標の描画レベル(以下、目標レベルという)を設定し、現在レベルと目標レベルとを比較し、現在レベルが目標レベルと一致するように描画処理を行っている。
【0022】
図6は、印加パルス数とレベルとの関係を示す図である。
描画レベルには、図6に示すように、白を相対反射率100%とし、黒を相対反射率0%とした場合に、中間調として、相対反射率75、50、25%の3つのレベルの、合わせて5レベルが存在する。
すなわち、本実施形態では、5階調のグレースケール表示が行えるようになっている。具体的には、マイクロカプセル31内の白粒子35並びに黒粒子34の移動量(移動距離)を相対反射率に応じて適宜制御することによって本実施形態では、グレースケール表示を実現している。
以下の説明においては、相対反射率100%(白)をレベルL1、相対反射率75%をレベルL2、相対反射率50%をレベルL3、相対反射率25%をレベルL4、相対反射率0%(黒)をレベルL5と表現するものとする。
【0023】
この場合において、相対反射率差が同一であっても、相対反射率の高いレベルから低いレベルに移行する場合の方(図6上部)が、相対反射率の低いレベルから高いレベルに移行する場合(図6下部)よりも時間がかかることがわかっている。
具体的には、図6に示すように、例えば、印加可能パルス数を0〜63パルスとし、初期状態をレベル1(=白)とし、移行後の状態をレベル2、レベル3、レベル4、レベル5として、それぞれのレベルに移行する場合には、印加パルス数がそれぞれ22、30、36、40パルス必要である。
これに対し、初期状態をレベル5(=黒)とし、移行後の状態をレベル4、3、2、1に移行する場合は、印加パルス数がそれぞれ12、14、18、24パルスですむこととなる。
すなわち、初期状態がレベル1とレベル5の隣接する領域(セグメント)を同時に同じ中間色しようとする場合に、同時にパルスを印加したとすると、初期状態がレベル5の領域(セグメント)が先に目標とするレベルに達ししてしまい、ユーザが違和感を感じることとなる。
【0024】
図7は、印加開始時刻とレベル移行との関係を説明する図である。
図7に示すように、初期状態がレベル1(=白)の領域および初期状態がレベル5(=黒)の領域をレベル3に移行させる場合、初期状態がレベル1(=白)の領域の方が時間がかかるので、時刻t0からパルス印加を開始する。
一方、初期状態がレベル5(=黒)の領域については、時刻t1からパルス印加を開始すると、時刻t2において同時にレベル3に移行が完了し、ユーザが違和感を感じることはなくなる。
【0025】
図8は、初期レベルおよび目標レベルに対応する印加パルス数テーブルの説明図である。
上述したように、初期状態が異なるレベルから同一のレベルに表示の切り替えを行う場合、パルス数、ひいては、切り替え時間が異なることとなる。
そこで、本実施形態では、図8に示すように、初期レベル毎に目標レベルに切り替えるのに必要なパルス数をテーブルとして予め記憶しておき、パルス数差に相当する時間だけずらしてパルス印加をそれぞれの領域毎に行うようにしている。
例えば、初期状態がレベル1(=白)の領域および初期状態がレベル5(=黒)の領域をレベル3に移行させる場合、初期状態がレベル1(=白)の領域については切り替えに必要なパルス数=P13となり、初期状態がレベル5(=黒)の領域については切り替えに必要なパルス数=P53(<P13)となり、パルス数差ΔP、
ΔP=|P53−P13|
に相当する時間だけ、切り替えに必要なパルス数が少ない方(本例では、初期状態がレベル5(=黒)の領域)についてパルス印加開始タイミングを遅らせることにより同時に切替が完了することとなる。
【0026】
図9は、表示パネルの駆動信号の波形の一例を示す図である。
図9において、共通電極25に供給される駆動信号(駆動電圧)をCOM、レベルL5(黒)側からレベル1(白)側に切り替えるセグメントに対応するセグメント電極14への駆動信号(駆動電圧)をSEG1、レベル1(白)側からレベル5(黒)側に切り替えるセグメントに対応するセグメント電極14への駆動信号(駆動電圧)をSEG2と表記している。以下、駆動信号SEG1、SEG2を特に区別する必要のないときは駆動信号SEGと表記する。
【0027】
図9に示すように、制御回路57から表示駆動回路40への表示切替信号(ドライバデータ)の出力が開始されたタイミング(タイミングM1A)から書換が終了するタイミング(M1B)までが書換期間Taに設定され、この書換期間Ta以外が休止期間Tbに設定される。この書換期間Taは、表示駆動回路40が共通電極25及び各セグメント電極14に対して駆動信号(駆動電圧)COM、SEGを供給して各セグメント5Xの表示色を切り替え、時刻表示等を変更する期間である。また、休止期間Tbは、表示駆動回路40が時刻表示等の切り替え後に、次の表示切替信号が入力されるまで待機する期間であり、この休止期間Tbにおいては、表示駆動回路40はその動作モードを省電力モードとする。また、休止期間Tbにおいては、表示駆動回路40の駆動信号COM、SEGを出力する出力端がハイインピーダンス状態(図中、「HI−Z」と表記)となる。したがって、休止期間Tbにおいては、共通電極25と各セグメント電極14との間に電位差が生じることがないため、各セグメントの表示色が書換期間Taにおいて変化した色に維持される。
【0028】
この書換期間Taにおいて、本実施の形態では、レベル1(白)側からレベル5(黒)側への表示色の移行と、レベル5(黒)側からレベル1(白)側への表示色の移行とを並行して行うこととしている。具体的には、表示駆動回路40は、各セグメントのセグメント電極14に対して、そのセグメントが表示すべき表示色(ここでは白或いは黒)に対応する電圧の駆動電圧を印加する駆動信号SEGを出力し、共通電極25に対して、電圧が時系列的に表示色のそれぞれに対応した電圧に変化する駆動信号COMを出力する。
このような駆動信号COMとして、本実施の形態では、表示切替信号(ドライバデータ)に応じて電圧値が“H”レベル(+12V)と“L”レベル(0V)との間でパルス状に変化するパルス信号が用いられている。このとき、駆動信号COMの1パルスのパルス幅Wは、図示せぬ発振回路から出力される信号を分周して生成可能な周期(本例では62.5ms=1/16s)に設定されており、この分周信号に基づいて駆動信号COMに相当するパル信号を生成可能としている。
【0029】
この場合において、実効的に各セグメント5Xに電圧が印加されたパルス数が適宜調整されることで、各セグメント5Xの表示色の階調が調整される。
この結果、書換期間Taにおいて、駆動信号COMの電圧が“L”レベルのときには、そのパルス幅Wの間、“H”レベルの駆動信号SEGが供給されているセグメントのセグメント電極14と共通電極25との間に電界が発生し、マイクロカプセル31の中の黒粒子34は共通電極25側に移動し、白粒子35はセグメント電極14側に移動する。
この結果、パルス幅Wに相当するだけセグメントの表示色がレベル5(黒)側に変化する。
続いて、駆動信号COMの電圧が“H”レベルになったときには、そのパルス幅Wの間、“L”レベルの駆動信号SEGが供給されているセグメントのセグメント電極14と共通電極25との間に電界が発生し、マイクロカプセル31の中の白粒子35が共通電極25側に移動し、黒粒子34がセグメント電極14側に移動する。
この結果、パルス幅Wに相当するだけセグメントの表示色がレベル1(白)側に変化する。
以降、同様にして、駆動信号COMの電圧の時系列的変化に応じて黒粒子34及び白粒子35が共通電極25及びセグメント電極14との間で少しずつ順次移動することで、各セグメントの表示色が段階的に変化し、この書換期間Taの経過時には、対応するセグメントが同一階調となることとなる。
【0030】
図9の場合、駆動信号SEG2が対応するセグメント5Xについては、表示切替信号(ドライバデータ)の出力が開始されたタイミングM1Aから表示切り替えが開始される。
これに対し、駆動信号SEG1が対応するセグメント5Xについては、表示切替信号の出力が開始されたタイミングM1Aから8/16s経過するまでは、駆動信号SEG1が駆動信号COMと同期しているため、表示切り替えは行われない。
そして、表示切替信号(ドライバデータ)の出力が開始されたタイミングM1Aから8/16sが経過した時刻に駆動信号SEG1が“L”レベルとなると、駆動信号SEG1が対応するセグメント5Xについても表示切り替えが開始され、切り替え終了のタイミングM1Bで切り替えが駆動信号SEG2が対応するセグメント5Xと同時に完了することとなる。
以上の説明のように、本実施形態によれば、表示色切り替えに必要とされる印加パルス数が異なる場合でも、パルスの印加開始タイミングをずらすことにより、切り替え完了タイミングを一致させることができるので、ユーザに違和感を持たせることがない。
【0031】
上述した実施形態は、あくまで本発明の一態様に過ぎず、本発明の範囲内で任意に変形が可能である。
例えば、以上の説明では、切替前の表示色および切替後の表示色に応じて実効的なパルス数を変更するとともに、パルス印加開始タイミングを変更する構成を採っていたが、さらに加えて切替対象の領域の面積(面積が大きいほど変化しにくい)あるいは切替前の表示色における保持時間(保持時間が長いほど変化しにくい)を考慮して実効的なパルス数およびパルス印加開始タイミングを変更する構成としてもよい。
また、パルス数を変更する構成に代えて、あるいは、加えて駆動信号SEGの電圧を切替前の表示色および切替後の表示色に応じて変更する構成とすることも可能である。
また、パルス数を変更する構成に代えて、あるいは、加えて切替前の表示色および切替後の表示色に応じて実効的に有効なパルスのパルス幅を変更する構成とすることも可能である。
【0032】
また、以上の説明では、パルス印加開始タイミングを変更する構成を採っていたが、実効的に必要とされるパルス数の比に応じて一方の駆動信号を間引くように構成することも可能である。具体的には、パルス数の比が2:3の場合には、パルス数の比が2の側の駆動信号SEGを3回に1回電圧が印加されないように駆動信号SEGの波形を駆動信号COMと同じ波形としてやればよい。
また、以上の説明では、切替前のレベルと、切替後のレベルと、に対応づけて切り替えに必要なパルス数をテーブルとして記憶していたが、パルス印加開始タイミングをテーブルとして記憶しておくように構成することも可能である。
また、以上の説明では、電気泳動表示パネル5がセグメント方式の場合を例示したが、これに限らず、ドットマトリックス方式にも適用が可能である。要は、表示単位(セグメント、ドット)毎の表示色のレベル、連続表示時間、表示切替面積に基づき、上述した手法により駆動パルス数等を変化させればよい。
以上の説明では、駆動信号SEG1、SEG2の電圧が同一の場合について説明したが、同一パルス数で電気泳動粒子が同一距離移動可能なように、駆動信号SEG1、SEG2の電圧を異ならせるように構成することも可能である。この場合において、切替前のレベルと、切替後のレベルと、に対応づけて駆動信号SEG1あるいは駆動信号SEG2の電圧をそれぞれ独立に切り替えられるように構成することも可能である。
この場合には、電圧種類に応じた数の固定基準電圧源を備えるようにしたり、二つの可変基準電圧源を備えるようにすればよい。
【0033】
また、以上の説明では、腕時計に本発明を適用する場合について述べたが、これに限らず、置時計、壁掛時計、柱時計、懐中時計等の各種時計等の、電気泳動表示パネルを備えてこれを駆動する駆動装置を備えた表示機能付き電子機器(表示装置)に広く適用することができる。例えば、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯電話機等の電気泳動表示パネルを適用可能な表示機能付き電子機器に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る腕時計の外観構成を示す図である。
【図2】腕時計の表示パネルの説明に供する図である。
【図3】腕時計の時刻表示ユニットを模式的に示す断面図である。
【図4】表示パネルの構成を説明するための断面図である。
【図5】時刻表示ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】印加パルス数とレベルとの関係を示す図である。
【図7】印加開始時刻とレベル移行との関係を説明する図である。
【図8】初期レベルおよび目標レベルに対応する印加パルス数テーブルの説明図である。
【図9】表示パネルの駆動信号の波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1…腕時計、5…表示パネル、5A、5B、5C、5X…セグメント、5R…表示領域、10…時刻表示ユニット、11A…回路基板、11B…表示枠、11C…ディスプレイ基板、11D…透明基板、12…透明基板、14…セグメント電極、17…接続コネクタ、20…電池、25…共通電極、26…共通電極用導通材、30…電気泳動層、31…マイクロカプセル、34…黒粒子、35…白粒子、40…表示駆動回路(駆動部)、50…制御部、51…計時回路、52…入出力回路、53…電圧制御回路、54…操作制御回路、57…制御回路(移動状態制御部、移行タイミング制御部)、SEG、SEG1、SEG2、COM…駆動信号。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間に色及び極性が異なる2種類の電気泳動粒子を有する電気泳動表示パネルを制御するための表示制御装置において、
前記電極間に駆動電圧を印可するためのパルス状の駆動信号を供給し、前記電気泳動表示パネルの表示色を前記電気泳動粒子の各色の間で変化させて中間色を表示させることが可能な駆動部と、
目標となる前記表示色である目標表示色および前記2種類の電気泳動粒子の移動特性の違いに基づいて前記各電気泳動粒子の移動状態を前記駆動部を介して制御する移動状態制御部と、
を備えたことを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示制御装置において、
前記移動状態制御部は、複数の異なる色の領域を同一色に移行させるに際し、移行終了タイミングが各領域で一致するように前記駆動部を介して移行開始タイミングを制御する移行タイミング制御部を備えたことを特徴とする表示制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示制御装置において、
前記移動状態制御部は、複数の異なる色の領域を同一色に移行させるに際し、移行終了タイミングが各領域で一致するように前記駆動部を介してパルス印加タイミングを制御するパルス印加制御部を備えたことを特徴とする表示制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示制御装置において、
前記移動状態制御部は、複数の異なる色の領域を同一色に移行させるに際し、移行終了タイミングが各領域で一致するように各前記領域毎に前記駆動信号の電圧を変更する電圧制御部を備えたことを特徴とする表示制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の表示制御装置において、
前記移動状態制御部は、複数の異なる色の領域を同一色に移行させるに際し、移行終了タイミングが各領域で一致するように前記駆動部を介して駆動信号のパルス幅を制御するパルス幅制御部を備えたことを特徴とする表示制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の表示制御装置において、
現在の表示色から前記目標表示色に移行させるために必要な前記パルス状の駆動信号のパルス数あるいは前記パルス状の駆動信号による電圧印加時間を記憶するパルス情報記憶テーブルを備え、
前記移動状態制御部は、複数の異なる表示色の領域の表示色を同一色に切り替えるに際し、前記パルス情報記憶テーブルを参照して、前記各電気泳動粒子の移動状態を制御することを特徴とする表示制御装置。
【請求項7】
電極間に色及び極性が異なる2種類の電気泳動粒子を有する電気泳動表示パネルと、
前記電極間に駆動電圧を印可するためのパルス状の駆動信号を供給し、前記電気泳動表示パネルの表示色を前記電気泳動粒子の各色の間で変化させて中間色を表示させることが可能な駆動部と、
目標となる前記表示色である目標表示色および前記2種類の電気泳動粒子の移動特性の違いに基づいて前記各電気泳動粒子の移動状態を前記駆動部を介して制御する移動状態制御部と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
電極間に色及び極性が異なる2種類の電気泳動粒子を有する電気泳動表示パネルを備えた表示装置の表示制御方法において、
前記電極間に駆動電圧を印可するためのパルス状の駆動信号を供給し、前記電気泳動表示パネルの表示色を前記電気泳動粒子の各色の間で変化させて中間色を表示させる駆動過程と、
目標となる前記表示色である目標表示色および前記2種類の電気泳動粒子の移動特性の違いに基づいて前記各電気泳動粒子の移動状態を前記駆動部を介して制御する移動状態制御過程と、
を備えたことを特徴とする表示装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−108355(P2007−108355A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298187(P2005−298187)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】