説明

表示制御装置および表示制御方法

【課題】タッチパネル式の表示装置において、オブジェクトを操作する際の利便性を向上させることのできる表示制御装置および表示制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態の表示制御装置は、領域判定手段と、方向判定手段と、表示制御手段とを備える。領域判定手段は、表示器の表示座標と対応する入力座標を有するタッチパネルにおいて、接触物が接触した接触領域の少なくとも一部が、前記表示器に表示されたオブジェクト自体を表示する表示領域内に設けられた所定の領域内にあるか否かを判定する。方向判定手段は、前記接触領域の移動方向を判定する。表示制御手段は、前記領域判定手段および前記方向判定手段の判定結果に基づいて、前記オブジェクトを拡大表示または縮小表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示制御装置および表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タブレット型PC(Personal Computer)や携帯型電子機器等の表示制御装置において、表面にタッチパネルが設けられた液晶ディスプレイ等の表示器が広く利用されるようになっている。
【0003】
従来、これらの表示制御装置では、表示されている画像やアイコン等のオブジェクトを指2本を用いて、指同士の間隔を拡張または伸縮したり、本体またはデスクトップ画像に設けられた拡大・縮小ボタンを操作したりして、オブジェクトのサイズを拡大・縮小することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−245199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、オブジェクトを拡大・縮小する際に拡大ボタンを押したり、2本指を用いて操作したりする必要があり、その操作性について更なる利便性の向上が求められていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、タッチパネル式の表示装置において、オブジェクトを操作する際の利便性を向上させることのできる表示制御装置および表示制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の表示制御装置は、領域判定手段と、方向判定手段と、表示制御手段とを備える。領域判定手段は、表示器の表示座標と対応する入力座標を有するタッチパネルにおいて、接触物が接触した接触領域の少なくとも一部が、前記表示器に表示されたオブジェクト自体を表示する表示領域内に設けられた所定の領域内にあるか否かを判定する。方向判定手段は、前記接触領域の移動方向を判定する。表示制御手段は、前記領域判定手段および前記方向判定手段の判定結果に基づいて、前記オブジェクトを拡大表示または縮小表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施形態にかかる表示制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、表示制御装置の機能的構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、ディスプレイに表示されるオブジェクトの一例を示す模式図である。
【図4】図4は、領域Aのその他の例を示す模式図である。
【図5−1】図5−1は、移動操作前のオブジェクトの一例を示す図である。
【図5−2】図5−1は、移動操作後のオブジェクトの一例を示す図である。
【図6−1】図6−1は、回転操作前のオブジェクトの一例を示す図である。
【図6−2】図6−2は、回転操作後のオブジェクトの一例を示す図である。
【図7−1】図7−1は、拡大操作前のオブジェクトの一例を示す図である。
【図7−2】図7−2は、拡大操作後のオブジェクトの一例を示す図である。
【図8−1】図8−1は、縮小操作前のオブジェクトの一例を示す図である。
【図8−2】図8−2は、縮小操作後のオブジェクトの一例を示す図である。
【図9−1】図9−1は、傾斜操作前のオブジェクトの一例を示す図である。
【図9−2】図9−2は、傾斜操作後のオブジェクトの一例を示す図である。
【図10−1】図10−1は、傾斜操作前のオブジェクトの一例を示す図である。
【図10−2】図10−2は、傾斜操作後のオブジェクトの一例を示す図である。
【図11】図11は、多数のオブジェクトを重ねて表示した場合を説明する図である。
【図12】図12は、対称形ではない場合のオブジェクトの中心および所定の領域の一例を示す模式図である。
【図13−1】図13−1は、中心座標の計算方法の一例を説明する図である。
【図13−2】図13−2は、中心座標の計算方法の一例を説明する図である。
【図13−3】図13−3は、中心座標の計算方法の一例を説明する図である。
【図14】図14は、表示制御装置が実行するオブジェクトの表示制御処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態にかかる表示制御装置1は、タブレット型のPC(Personal Computer)や、タッチパネル式の携帯型電子機器等として用いられる。図1は、実施形態にかかる表示制御装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0010】
図1に示すように、表示制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)10と、ROM(Read Only Memory)11と、RAM(Random Access Memory)12と、記憶装置としてのHDD(Hard Disk Drive)13と、ディスプレイ14と、タッチパネル15と、通信I/F16とがバス17で接続されて構成されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。尚、記憶装置はHDD13に限定されるものではなく、例えばSSD(Solid State Drive)等を用いるとしてもよい。
【0011】
ROM11は、本実施の形態にかかるプログラムやその他各種プログラムおよび各種設定データ等を記憶する。RAM12は、CPU10が各種プログラムを実行する際に一時的に当該プログラムやデータを記憶する。CPU10は、ROM11が記憶するプログラムをRAM12に展開して実行することにより、本実施の形態にかかるプログラムを実行する制御手段として機能する。通信I/F16は、LANやインターネット等を介して、他の情報処理装置等とのデータ通信を制御する。
【0012】
ディスプレイ14は、CPU10の制御により各種画面を表示する。そして、ディスプレイ14は、CPU10から表示信号を受け取って、静止画や動画等の映像をそれぞれ表示する。
【0013】
タッチパネル15は、静電容量式または感圧式など一般的に用いられているタッチパネルで構成される。タッチパネル15は、タッチパネル15に対する指などの接触物の接触を検出して、接触物の接触領域の位置情報をCPU10に送出する。また、タッチパネル15上の入力位置(入力座標)は、タッチパネル15が配されているディスプレイ14上の表示位置(表示座標)と同位置となるよう対応付けられている。
【0014】
次に、表示制御装置1の機能的構成について説明する。図2は、表示制御装置1の機能的構成を示す機能ブロック図である。表示制御装置1は、CPU10がROM11から本実施の形態にかかるプログラムを読み出して実行することにより、主記憶装置上に制御部20をロードして生成する。図2に示すように、制御部20は、表示制御部21と、領域判定部22と、方向判定部23と、を備えている。
【0015】
表示制御部21は、ROM11に格納されたプログラムやタッチパネル15からの入力操作に応じて、ディスプレイ14に各種画面を表示する。また、表示制御部21は、HDD13に格納されたデータおよびROM11に格納されたプログラムに基づいて、ディスプレイ14に画像やアイコン等のオブジェクトOを表示する。
【0016】
図3は、ディスプレイ14に表示されるオブジェクトOの一例を示す模式図である。図中Bは、オブジェクトO自体を表示する表示領域Bである。図3に示すように、オブジェクトOには、そのオブジェクトOの表示領域Bの中心Cを中心とし、表示領域Bの内部に収まるサイズの円によって所定の領域Aが予め設定されている。例えば図3のようにオブジェクトOが長方形の場合、長方形の短辺の所定割合の長さ(例えば、5割)を半径とする円の内部が領域Aとして設定される。
【0017】
尚、オブジェクトOの中心Cや、領域Aはディスプレイ14に表示されないものであるが、タッチパネル15がタッチされた場合にこれらを表示するとしてもよい。
【0018】
図4は、領域Aのその他の例を示す模式図である。図4に示すように、オブジェクトOの中心Cを中心とし、オブジェクトOの表示領域B内部に収まるサイズであり、オブジェクトOと相似形(図4では、長方形)の内部の領域を、領域Aとして設定してもよい。
【0019】
領域判定部22は、タッチパネル15において、指などの接触物が接触した接触領域Tの位置を判定する。より具体的には、領域判定部22は、接触領域Tの少なくとも一部がオブジェクトOの表示領域B内にあるか否かを判定する。また、領域判定部22は、接触領域Tの少なくとも一部が、上述した領域A内にあるか否かを判定する。さらに、領域判定部22は、接触領域Tの少なくとも一部が、後述する領域B1、B2内にあるか否かを判定する。
【0020】
方向判定部23は、接触領域Tが移動するドラッグ操作であるか、接触領域Tが移動しないタップ操作であるかを判定し、ドラッグ操作である場合にはさらに、接触領域Tの移動方向を判定する。
【0021】
表示制御部21は、接触物のタッチパネル15における入力操作に応じてオブジェクトOの表示を変更する。即ち、表示制御部21は、領域判定部22および方向判定部23の判定結果に基づいて、オブジェクトOを移動または回転させて表示したり、拡大表示または縮小表示したりする。これにより、ユーザがディスプレイ14の表示画面上においてオブジェクトOを操作することができる。
【0022】
次に、タッチパネル15上でドラッグ操作を行う場合の、オブジェクトOの表示変更処理(オブジェクトOの操作方法)について説明する。本実施の形態の表示制御装置1は、タッチパネル15上でオブジェクトOがドラッグされた場合に、オブジェクトOに対して移動、回転、拡大、縮小のいずれか1つの操作を行う。
【0023】
まず、図5−1、図5−2を参照して、オブジェクトOの移動操作について説明する。図5−1は移動操作前のオブジェクトOを示す図であり、図5−2は移動操作後のオブジェクトOを示す図である。
【0024】
表示制御部21は、図5−1に示すように、接触領域Tの少なくとも一部が領域A内にある状態でドラッグ操作された場合には、その操作方向に従ってオブジェクトOを移動させる。即ち、接触領域Tが図中の移動方向D1に沿って移動する場合に、表示制御部21は、オブジェクトOを移動方向D1に沿って移動させて、接触物がタッチパネル15から離れた時点(図5−2参照)でオブジェクトOの移動を終了させる。
【0025】
次に、図6−1、図6−2を参照して、オブジェクトOの回転操作について説明する。図6−1は、回転操作前のオブジェクトOを示す図であり、図6−2は、回転操作後のオブジェクトOを示す図である。
【0026】
表示制御部21は、図6−1に示すように、接触領域Tの少なくとも一部がオブジェクトOの表示領域B内にあるが、領域A外にある場合であって、且つ、接触領域Tの移動方向D2が第1角度範囲θ1内にある場合に、オブジェクトOの中心Cを回転の中心としてオブジェクトOを回転させて表示する。即ち、図6−1のようにオブジェクトOが長方形である場合には、その長方形に外接する円周Qに沿ってオブジェクトOの各頂点P1、P2、P3、P4を中心C周りに回転させる(図6−2参照)。尚、オブジェクトOの回転方向Rは、移動方向D2により近い円周方向とする。
【0027】
ここで、第1角度範囲θ1とは、オブジェクトOの中心Cと接触領域T内の1点E(点E)を結ぶ直線CEに直交する方向を中心として、左右両側にそれぞれ角度αの許容範囲が設けられた角度範囲である。
【0028】
尚、接触領域T内の点Eとしては、図6−1に示すように接触領域Tの中心点を用いてもよいし、感圧式のタッチパネル15を用いる場合には最も圧力が強い1点を点Eとして用いてもよいし、その他の接触領域T内の1点を用いてもよい。
【0029】
次に、図7−1、図7−2を参照して、オブジェクトOの拡大操作について説明する。図7−1は、拡大操作前のオブジェクトOを示す図であり、図7−2は、拡大操作後のオブジェクトOを示す図である。
【0030】
表示制御部21は、図7−1に示すように、接触領域Tの少なくとも一部がオブジェクトOの表示領域B内にあるが、領域A外にある場合であって、且つ、接触領域TがオブジェクトOの中心CからオブジェクトOの外側に向かって移動する場合に、オブジェクトOを拡大して表示する。
【0031】
より詳細には、表示制御部21は、接触領域Tの少なくとも一部がオブジェクトOの表示領域B内にあるが、領域A外にある場合であって、且つ、接触領域Tの移動方向D3が第2角度範囲θ2の範囲内においてドラッグ操作された場合には、そのドラッグ方向に従ってオブジェクトOを拡大して表示する。
【0032】
ここで、第2角度範囲θ2とは、オブジェクトOの表示領域Bの中心Cと、接触領域T内の1点E(点E)とを結ぶ直線CEの方向を中心として、左右両側にそれぞれ角度αの許容範囲が設けられた角度範囲である。
【0033】
また、表示制御部21は、図7−1に示すようにオブジェクトOが長方形の場合には、オブジェクトOの左上の頂点P1を基点としてオブジェクトOを拡大し、図7−2に示すように拡大後のオブジェクトO’を表示する。尚、拡大操作の基点は頂点P1に限定されるものではない。その他の例として、オブジェクトOの中心Cや、その他の頂点を用いてもよい。また、拡大操作時には、オブジェクトOのアスペクト比を固定してもよいし、或いはアスペクト比を変化させるとしてもよい。
【0034】
また、上述のように領域AはオブジェクトOの表示領域Bのサイズの所定の割合のサイズによって定められるため、拡大操作後の領域A’のサイズは、図7−2に示すように、オブジェクトOの拡大倍率と同じ倍率で拡大される。
【0035】
次に、図8−1、図8−2を参照して、オブジェクトOの縮小操作について説明する。図8−1は、縮小操作前のオブジェクトOの一例を示す図であり、図8−2は、縮小操作後のオブジェクトOの一例を示す図である。
【0036】
表示制御部21は、図8−1に示すように、接触領域Tの少なくとも一部がオブジェクトOの表示領域B内にあるが、領域A外にある場合であって、且つ、接触領域TがオブジェクトOの中心CからオブジェクトOの内側に向かって移動する場合に、オブジェクトOを縮小して表示する。
【0037】
より詳細には、表示制御部21は、接触領域Tの少なくとも一部がオブジェクトOの表示領域B内にあるが、領域A外にある場合であって、且つ、接触領域Tの移動方向D4が第3角度範囲θ3の範囲内においてドラッグ操作された場合には、そのドラッグ方向に従ってオブジェクトOを縮小して表示する。
【0038】
ここで、第3角度範囲θ3とは、接触領域T内の1点E(点E)と、オブジェクトOの表示領域Bの中心Cとを結ぶ直線ECを中心として、左右両側にそれぞれ角度αの許容範囲が設けられた角度範囲である。
【0039】
尚、表示制御部21は、拡大表示する際と同様に、オブジェクトOのいずれか1つの頂点を基点としてオブジェクトOを縮小してもよいし、オブジェクトOの中心Cを基点として縮小するとしてもよい。
【0040】
また、上述のように領域AはオブジェクトOの表示領域Bのサイズの所定の割合のサイズによって定められるため、縮小操作後の領域A”のサイズは、図8−2に示すように、オブジェクトOの縮小倍率と同じ倍率で縮小される。
【0041】
次に、タッチパネル上でタップ操作を行う場合の、オブジェクトOの表示変更処理(オブジェクトOの操作方法)について説明する。本実施の形態の表示制御装置1は、タッチパネル15上でオブジェクトOがタップされた場合に、オブジェクトOを選択・編集可能な状態とするか、あるいは画面奥行方向に傾斜させて表示する。
【0042】
まず、図9−1ないし図10−2を用いて、オブジェクトOをディスプレイ15の奥行方向に仮想的に傾斜させて表示する傾斜操作について説明する。図9−1、図10−1は、傾斜操作前のオブジェクトOの一例を示す図であり、図9−2、図10−2は、傾斜操作後のオブジェクトOの一例を示す図である。
【0043】
ここでは、図9−1ないし図10−2に示すように、オブジェクトOが長方形であり、その4つの頂点をP1、P2、P3、P4とする場合について説明する。尚、オブジェクトOが例えば円形などその他の形状である場合には、オブジェクトOに外接する長方形の頂点をP1、P2、P3、P4として処理する。
【0044】
図9−1に示すように、オブジェクトOにおいては、領域B内の領域A外において、中心Cに対し左右対称である領域B1が設けられている。即ち、領域B1には、オブジェクトOの中心Cと頂点P1、P3を夫々結ぶ線分CP1、CP3と、長方形の縦方向の辺P1P3とで囲まれる三角形CP1P3において領域Aを除いた部分と、オブジェクトOの中心Cと頂点P2、P4を夫々結ぶ線分CP2、CP4と、長方形の縦方向の辺P2P4とで囲まれる三角形CP2P4において領域Aを除いた部分とが含まれている。
【0045】
表示制御部21は、図9−1に示すように、接触領域Tの少なくとも一部が領域B1内にある状態でタップ操作された場合に、図9−2に示すように、オブジェクトOの縦(垂直)方向の中心線L1周りに、オブジェクトOを画面奥行方向に仮想的に傾斜させて表示する。またこの場合に、表示制御部21は、タップされた位置(接触領域Tの位置)が画面奥行方向に押されるような向きでオブジェクトOを傾斜させて表示する。
【0046】
また、図10−1に示すように、オブジェクトOにおいては、領域B内の領域A外において、中心Cに対し上下対称である領域B2が設けられている。即ち、領域B2には、オブジェクトOの中心Cと頂点P1、P2を夫々結ぶ線分CP1、CP2と、長方形の横方向の辺P1、P2とで囲まれる三角形CP1P2において領域Aを除いた部分と、オブジェクトOの中心Cと頂点P3、P4とを夫々結ぶ線分CP3、CP4と、長方形の横方向の辺P3P4とで囲まれる三角形CP3P4において領域Aを除いた部分とが含まれている。
【0047】
表示制御部21は、図10−1に示すように、接触領域Tの少なくとも一部が領域B2内にある状態でタップ操作された場合に、図10−2に示すように、オブジェクトOの横(水平)方向の中心線L2周りに、オブジェクトOを画面奥行方向に仮想的に傾斜させて表示する。またこの場合に、表示制御部21は、タップされた位置(接触領域Tの位置)が画面奥行方向に押されるような向きでオブジェクトOを傾斜させて表示する。
【0048】
このように、領域B1または領域B2をタップ操作すると、オブジェクトOを奥行方向に傾斜(回転)させて表示するため、オブジェクトOの表示領域B(図3参照)の面積を減少させることができる。従って、例えば図11に示すようにオブジェクトO(O1、O2、O3)を多数表示させる場合に、オブジェクトO(O1、O2、O3)を重ねて表示させることが可能となり、より多数のオブジェクトOを表示させることができる。
【0049】
一方、表示制御装置1は、図9−1、図10−1において領域Aがタップされた場合には、オブジェクトOを選択または編集するものと判定し、オブジェクトOを選択または編集可能な状態にする。尚、オブジェクトOの選択または編集については、選択後の操作メニューを表示したり、編集用のアプリケーションを起動したりするなど、従来一般的に行われている処理を行うものとする。
【0050】
次に、オブジェクトOが長方形や、円形、楕円形などの対称形ではない場合における、オブジェクトOの中心座標を計算する方法について説明する。
【0051】
図12は、対称形ではないオブジェクトOの中心Cおよび所定の領域Aの一例を示す図である。図12において、領域Aは、オブジェクトOの中心Cを中心とする円の内部であり、且つ、オブジェクトOの表示領域B内の領域である。また、図12に示すようにオブジェクトOの表示領域Bが長方形や、円形、楕円形などの対称形ではない場合には、従来一般的に用いられている方法により中心Cを求めることができるが、以下ではその一例について説明する。
【0052】
ここで、図13−1ないし図13−3は、対称形ではないオブジェクトOにおける中心座標の計算方法の一例を説明する図である。
【0053】
図13−1では説明の簡略化のため、ディスプレイ14の画素のうち、オブジェクトOの近傍の縦8ピクセル×横8ピクセルの画素のみを示している。図13−1においてオブジェクトOの部分の画素(斜線部分)に対する値val(x,y)を1、オブジェクトOではない部分の画素(白色部分)に対する値val(x,y)を0として2値化すると、図13−2に示すようになる。
【0054】
そして、下記式(1)ないし式(3)を用いることにより、中心座標(xcenter,ycenter)を求めることができる。
【数1】

【数2】

【数3】

尚、hは縦のピクセル数(図13−1では8)、wは横のピクセル数(図13−1では8)である。
【0055】
一例として、図13−1に示すオブジェクトOの中心座標は、xcenter=4.97、ycenter=4.10と求められる。そして小数点以下を四捨五入し、xcenter=5、ycenter=4とすると、オブジェクトOの中心Cは図13−3に示すように求めることができる。
【0056】
次に、表示制御装置1が実行するオブジェクトOの表示制御処理の手順について説明する。図14は、表示制御装置1が実行するオブジェクトOの表示制御処理の手順について説明するフローチャートである。尚、ここでは、上述した接触領域Tの移動方向D1、D2、D3、D4を特に区別せずに移動方向Dと称することとする。
【0057】
まず、表示制御装置1は、接触領域Tの少なくとも一部がオブジェクトOの表示領域B内にあるか否かを判定する(ステップS1)。表示領域B内にはない場合(ステップS1:No)には、表示領域B内であると判定されるまでステップS1を繰り返す。表示領域B内であると判定された場合(ステップS1:Yes)には、ドラッグ操作であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0058】
接触領域Tが移動するドラッグ操作である場合(ステップS2:Yes)には、接触領域Tの少なくとも一部が領域A内にあるか否かを判定する(ステップS3)。接触領域Tの少なくとも一部が領域A内にある場合(ステップS3:Yes)には、オブジェクトOを移動操作すると判定し、接触領域Tの移動方向Dに応じてオブジェクトOを移動させて表示する(ステップS4)。その後、ステップS1に戻って入力待ちをする。
【0059】
一方、接触領域Tが領域A内にはないと判定された場合(ステップS3:No)、即ち領域A外にあると判定された場合には、接触領域Tの移動方向Dが第1角度範囲θ1内にあるか否かを判定する(ステップS5)。第1角度範囲θ1内にある場合(ステップS5:Yes)には、オブジェクトOを回転すると判定し、接触領域Tの移動方向Dに応じてオブジェクトOを中心C周りに回転させて表示する(ステップS6)。その後、ステップS1に戻って入力待ちをする。
【0060】
一方、接触領域Tの移動方向Dが第1角度範囲θ1内にはない場合(ステップS5:No)には、移動方向DがオブジェクトOの中心Cから離れる方向であるか否かを判定する(ステップS7)。即ち、表示制御装置1は、接触領域Tの移動方向Dが第2角度範囲θ2の範囲内にあるか、或いは第3角度範囲θ3の範囲内にあるかを判定する(ステップS7)。
【0061】
移動方向DがオブジェクトOの中心Cから離れる方向である場合、即ち、移動方向Dが第2角度範囲θ2の範囲内にあると判定した場合(ステップS7:Yes)には、オブジェクトOを拡大すると判定し、オブジェクトOを拡大させて表示する(ステップS8)。その後、ステップS1に戻って入力待ちをする。
【0062】
一方、移動方向DがオブジェクトOの中心Cから離れる方向ではない場合、即ち、移動方向Dが第3角度範囲θ3の範囲内にあると判定した場合(ステップS7:No)には、オブジェクトOを縮小すると判定し、オブジェクトOを縮小して表示する(ステップS9)。その後、ステップS1に戻って入力待ちをする。
【0063】
ステップS2において、ドラッグ操作ではない、即ちタップ操作であると判定した場合(ステップS2:No)には、接触領域Tの少なくとも一部が領域A内にあるか否かを判定する(ステップS10)。接触領域Tの少なくとも一部が領域A内にある場合(ステップS10:Yes)には、オブジェクトOを選択または編集すると判定し、オブジェクトOを選択または編集可能な状態にする(ステップS11)。その後、ステップS1に戻って入力待ちをする。
【0064】
一方、接触領域Tが領域A内にはない、即ち領域A外にあると判定した場合(ステップS10:No)には、接触領域Tの少なくとも一部が領域B1内にあるか否かを判定する(ステップS12)。接触領域Tの少なくとも一部が領域B1内にある場合(ステップS12:Yes)には、オブジェクトOを縦(垂直)方向の中心線L1周りに傾斜させて表示する(ステップS13)。その後、ステップS1に戻って入力待ちをする。
【0065】
一方、接触領域Tが領域B1内にはないと判定した場合(ステップS12:No)には、接触領域Tの少なくとも一部が領域B2内にあるか否かを判定する(ステップS14)。そして、接触領域Tの少なくとも一部が領域B2内にある場合(ステップS14:Yes)には、オブジェクトOを横(水平)方向の中心線L2周りに傾斜させて表示する(ステップS15)。接触領域Tが領域B2内にはない場合(ステップS14:No)またはステップS15の処理終了後は、ステップS1に戻って入力待ちをする。
【0066】
このように、本実施形態によれば、拡大操作や縮小操作、回転操作、傾斜操作等を選択するための拡大ボタン、縮小ボタン、回転ボタン、傾斜ボタン等を用いずとも、オブジェクトOの表示領域B内においてドラッグ操作またはタップ操作するだけで、オブジェクトOの拡大、縮小、回転、傾斜の操作を行うことができる。これにより、1つのタッチポイントだけでオブジェクトOの移動、回転、拡大、縮小、傾斜を自動的に切替えることが可能となり、オブジェクトOを操作する際の利便性を向上させることができる。
【0067】
本実施形態の表示制御装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0068】
また、本実施形態の表示制御装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の表示制御装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0069】
尚、上述では、接触領域Tが1つである場合(シングルタッチ)における表示制御処理について説明したが、接触領域Tが複数である場合(マルチタッチ)であっても、それぞれの接触領域Tに対応させて、上述と同様の表示制御処理を行うとしてもよい。
【0070】
また、接触領域Tの移動速度や加速度に応じてオブジェクトOを移動または回転させて、接触物がタッチパネル15から離れても移動速度および加速度に応じた距離だけオブジェクトOを移動または回転させるとしてもよい。このようにオブジェクトOの移動や回転に慣性を持たせることで、実体を移動させる感覚でオブジェクトOを移動させることが可能となる。さらに、拡大・縮小操作にも上述と同様の慣性を持たせるとしてもよい。
【0071】
また、上述では、移動方向D2が所定の角度範囲内にある場合に、オブジェクトOを回転させるとしたが、回転操作を行うか拡大・縮小操作を行うかの判断基準はその他の基準であってもよい。その他の例としては、接触領域Tの移動前後において、オブジェクトOの中心Cと、接触領域T内の1点との間の距離の変化分が所定の距離範囲内である場合には、オブジェクトOを移動または回転させて、当該変化分が所定の距離より大きい場合には、オブジェクトOを拡大させて、当該変化分が所定の距離より小さい場合には、オブジェクトOを縮小させるとしてもよい。
【0072】
さらに、上述では、第1角度範囲θ1、第2角度範囲θ2、第3角度範囲θ3に対して共通の角度αを用いて同一の角度範囲としたが、第1角度範囲θ1、第2角度範囲θ2、第3角度範囲θ3の角度範囲はそれぞれ異なるものとしてもよい。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 表示制御装置
A 領域(所定の領域)
B 表示領域
O、O’、O” オブジェクト
T 接触領域
C、C’ 中心(オブジェクトの中心)
14 ディスプレイ
D1、D2、D3、D4 移動方向
θ1 第1角度範囲
θ2 第2角度範囲
θ3 第3角度範囲
L1、L2 中心線
P1、P2、P3、P4 頂点
B1、B2 領域(第2領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示器の表示座標と対応する入力座標を有するタッチパネルにおいて、接触物が接触した接触領域の少なくとも一部が、前記表示器に表示されたオブジェクト自体を表示する表示領域内に設けられた所定の領域内にあるか否かを判定する領域判定手段と、
前記接触領域の移動方向を判定する方向判定手段と、
前記領域判定手段および前記方向判定手段の判定結果に基づいて、前記オブジェクトを拡大表示または縮小表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記接触領域の一部が前記オブジェクトの表示領域内にあるが、前記所定の領域外にある場合であって、且つ、前記接触領域が前記オブジェクトの中心から前記オブジェクトの外側に向かって移動する場合に、前記オブジェクトを拡大表示させること、
を特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記接触領域の一部が前記オブジェクトの表示領域内にあるが、前記所定の領域外にある場合であって、且つ、前記接触領域が前記所定の領域から前記オブジェクトの中心に向かって移動する場合に、前記オブジェクトを縮小表示させること、
を特徴とする請求項1または2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記領域判定手段が判定に用いる前記所定の領域は、前記接触領域の中心をその中心とし、前記オブジェクトの表示領域のサイズに対して所定の割合の長さをその半径とする円の内部の領域であること、
を特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記領域判定手段が判定に用いる前記所定の領域は、前記接触領域の中心をその中心とし、前記オブジェクトの表示領域のサイズに対して所定の割合のサイズである、前記オブジェクトと相似形の内部の領域であること、
を特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記接触領域の少なくとも一部が前記オブジェクトの表示領域内にあるが、前記所定の領域外にある場合であって、且つ、前記接触領域が、前記オブジェクトの表示領域の中心と前記接触領域内の1点とを結ぶ直線と直交する方向を中心とする所定の角度範囲内の方向に移動する場合に、前記オブジェクトを前記オブジェクトの表示領域の中心周りに回転させること、
を特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記領域判定部は、前記接触領域の少なくとも一部が第2領域にあるか否かを判定し、
前記表示制御部は、前記接触物の前記接触領域の少なくとも一部が第2領域内にある状態でタップ操作された場合に、前記オブジェクトを前記表示器の画面奥行方向に傾斜させて表示させること、
を特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記領域判定部が判定に用いる前記第2領域は、前記所定の領域外にある前記表示領域内において、前記オブジェクトの中心に対して対称に設けられた領域であること、
を特徴とする請求項7に記載の表示制御装置。
【請求項9】
表示制御装置において、
表示器の表示座標と対応する入力座標を有するタッチパネルにおいて、接触物が接触した接触領域の少なくとも一部が、前記表示器に表示されたオブジェクト自体を表示する表示領域内に設けられた所定の領域内にあるか否かを判定する領域判定工程と、
前記接触領域の移動方向を判定する方向判定工程と、
前記領域判定手段および前記方向判定工程での判定結果に基づいて、前記オブジェクトを拡大表示または縮小表示させる表示制御工程と、
を含むことを特徴とする表示制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−141739(P2012−141739A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293456(P2010−293456)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【特許番号】特許第4908626号(P4908626)
【特許公報発行日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】