説明

表示制御装置

【課題】光に対する反射状態及び透過状態を記憶可能な液晶素子のコントラストの低下を抑制するとともに、液晶素子を駆動するための消費電力を低減する表示制御装置を提供する。
【解決手段】光を透過する透過状態、及び光を反射する反射状態を記憶可能な液晶素子で構成される表示媒体に対し、前記液晶素子の前記透過状態及び反射状態を定めるためのデータ電圧を前記液晶素子に印加するデータ電圧印加手段と、前記液晶素子を初期化するための初期化電圧、前記データ電圧印加手段により印加されたデータ電圧を選択するための選択電圧、及び前記選択電圧により変化した前記液晶素子の状態を維持させるための維持電圧を前記液晶素子に対して印加すると共に、前記初期化電圧、及び前記維持電圧を直流電圧で印加し、前記選択電圧を交番電圧で印加する走査電圧印加手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コレステリック液晶を用いた表示素子が注目を集めている。コレステリック液晶を用いた表示素子の高速駆動方法では、液晶素子にかかるDC成分を0とするために交番電圧が使用される(例えば特許文献1)。
【0003】
このように、電圧が変動する交番電圧を用いると、容量性の液晶セルには電流が流れるため、電力を消費する。
【0004】
そこで特許文献2には、リセット電圧及び維持電圧の極性反転周期を選択電圧の極性反転周期より長くする駆動方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3に開示された駆動波形では、初期化電圧は変動しない一方で、維持電圧は変動しているため、維持期間では周期的に電力が消費されることとなる。
【0006】
更に特許文献4には、低消費電力とIC耐圧の低減を実現するために、初期化電圧(リセットパルス)、選択電圧(選択パルス)、及び維持電圧(維持パルス)を直流電圧として印加し、かつフレームごとに極性を反転する技術が開示されている。このように極性を反転する場合、電源サイズが2極性分必要となり、装置の小型化が困難となるため好ましくない。
【0007】
また、この特許文献4において、選択電圧が印加される期間である選択期間は、前選択期間、走査時間、及び後選択期間で構成されている。
【特許文献1】米国特許第5748277号明細書
【特許文献2】特開2002−55327号公報
【特許文献3】米国特許第6982691号明細書
【特許文献4】特開2003−241168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1〜3に開示された技術のように、光に対する反射状態及び透過状態を記憶可能な液晶素子を駆動する場合、交番電圧による電圧の変動は電流を生じるため、電力を消費するという問題点があった。また、この消費電力は、極性反転回数(電圧変動)に比例して増加するものである。
【0009】
また、上記特許文献4に開示された技術における前選択期間、及び後選択期間は、電圧ゼロの期間とされている。この場合、選択時間が短くなる可能性はあるものの、選択時間が短くなることでコントラストが低下する可能性があるという問題点があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み、光に対する反射状態及び透過状態を記憶可能な液晶素子のコントラストの低下を抑制するとともに、液晶素子を駆動するための消費電力を低減する表示制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、光を透過する透過状態、及び光を反射する反射状態を記憶可能な液晶素子で構成される表示媒体に対し、前記液晶素子の前記透過状態及び反射状態を定めるためのデータ電圧を前記液晶素子に印加するデータ電圧印加手段と、前記液晶素子を初期化するための初期化電圧、前記データ電圧印加手段により印加されたデータ電圧を選択するための選択電圧、及び前記選択電圧により変化した前記液晶素子の状態を維持させるための維持電圧を前記液晶素子に対して印加すると共に、前記初期化電圧、及び前記維持電圧を直流電圧で印加し、前記選択電圧を交番電圧で印加する走査電圧印加手段と、を有する。
【0012】
また、本発明は請求項2のように、前記データ電圧は、交番電圧として印加され、前記データ電圧印加手段が、前記データ電圧と前記選択電圧との位相差を生じさせることで、前記位相差によって、前記液晶素子の状態を、前記透過状態、又は前記反射状態とは異なる中間の反射状態に制御するようにしても良い。
【0013】
また、本発明は請求項3の発明のように、前記液晶素子は、コレステリック液晶素子であるようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光に対する反射状態及び透過状態を記憶可能な液晶素子のコントラストの低下を抑制するとともに、液晶素子を駆動するための消費電力を低減する表示制御装置を提供することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1には、本実施の形態に係る表示制御装置14が示されている。また、表示媒体15が示されている。
【0017】
表示制御装置14は、制御部24、記録部28、メモリ30、及び接続部32に設けられた着脱機構34、電極接続部35を含んで構成されている。また、表示媒体15は、接続部32に対して着脱可能となっている。
【0018】
記録部28は、制御部24からの指示により、画像データに基づいて、接続部32に接続された表示媒体15に対して画像を記録する。メモリ30は、制御ルーチンや画像データ等が記憶される。着脱機構34は、制御部24からの指示により、接続部32に接続された表示媒体15の解除(取り外し)を禁止したり、禁止を解除したりする。すなわち、表示媒体15をロック状態にしたり、ロック状態を解除したりする。電極接続部35は、後述する配線で構成される。
【0019】
次に、図2を用いて記録部28及び表示媒体15の構成について説明する。
【0020】
表示媒体15は、図3(B)に示されるような光を透過するフォーカルコニック状態、及び図3(A)に示されるような特定の波長の光を選択的に反射するプレーナー状態を含む光に対する反射状態を記憶可能な液晶素子であるコレステリック液晶素子(以下の説明ではセルと表現することがある)で構成され、パッシブマトリックス駆動方式により駆動されるものである。また、図3(C)は、コレステリック液晶素子が初期化された状態であるホメオトロピック状態を示すものである。
【0021】
なお、本実施の形態では、図2に示されるように、説明の簡略化のために4×4のマトリックス構成としているが、実際には、画像表示に必要な縦横画素数に対応した本数の電極が各基板に形成されることはいうまでもない。
【0022】
上述した図1に示したように、表示媒体15は、接続部32に設けられた記録部28と接続される。具体的には、データ電極40及び走査電極42は、それぞれ配線53、54を介してデータ電極駆動回路(データ電圧印加手段)55、走査電極駆動回路(走査電圧印加手段)56に接続されている。このデータ電極40と走査電極との各交差部分にコレステリック液晶素子が設けられ、それらコレステリック液晶素子に対して電圧が印加される。
【0023】
配線53、54は、接続部32に配線され、表示媒体15を接続部32に接続することにより、配線53がデータ電極40と接続し、配線54と走査電極42とが接続するようになっている。この接続部32に配線された配線53、54は図1に示す電極接続部35として機能する。
【0024】
データ電極駆動回路55及び走査電極駆動回路56はシーケンサ58と外部電源60に接続されている。シーケンサ58は制御部24に接続され、制御部24から入力された画像情報(画像データ)に応じて、データ電極駆動回路55、走査電極駆動回路56に画像情報信号を出力する。
【0025】
パッシブマトリックス駆動では、シーケンサ58から後述する走査電圧を印加するための信号が走査電極駆動回路56に送られ、走査電極駆動回路56から走査電圧が印加される。これと同期して、画像を表現するためのデータ電圧を印加するためのデータ信号がシーケンサ58からデータ電極駆動回路55へ送られ、データ電極駆動回路55からデータ電極40にデータ電圧が印加される。
【0026】
そして、走査電圧及びデータ電圧の印加が停止された後も表示媒体15に表示された画像は保持される。
【0027】
図4を用いて表示媒体15について説明する。図4は表示媒体15の断面図の一部である。透明電極5を備えた透明な基板3及び透明電極6を備えた透明な基板4が対向して配置されており、基板間にはコレステリック液晶7が封入されている。リブ8はコレステリック液晶7が偏在することを防止することと、基板3と基板4の距離を規定するために備えられている。光吸収層9は液晶層を透過してきた光を吸収する。表示媒体15が単層で存在する場合、基板4は透明でなく、黒色で良い。その場合には光吸収層9は不要である。
【0028】
多色表示の表示媒体とするには、図4に示す表示媒体15のうち光吸収層9を備えないものを積層するとよい。最も下の表示媒体の下側の基板(観察者から最も遠い位置にある基板)には光吸収層を備えるか、または基板を黒色とする。例えば、それぞれの中心選択波長が470nm(青色を呈する)、520nm(緑色を呈する)、600nm(赤色を呈する)の液晶を封入した表示媒体を積層する。積層する各表示媒体の間にカラーフィルターを挿入すると多色表示の表示媒体の色純度を高めることができる。図5に2つの表示媒体を積層した例を示す。
【0029】
次に、上述した走査電圧、データ電圧について、図6を用いて説明する。図6(A)は、走査電極駆動回路56により印加される走査電圧の波形を示し、図6(B)は、データ電極駆動回路55により印加されるデータ電圧の波形を示している。このうち、走査電圧は、コレステリック液晶素子をホメオトロピック状態に変化させ初期化するための初期化電圧、データ電圧を選択するための選択電圧、及び選択電圧により変化したコレステリック液晶素子の状態を維持させるための維持電圧の3つの電圧を含む電圧である。なお、実際の駆動時には、選択電圧の印加期間だけでは十分に状態が変化せず、維持電圧印加期間に渡って液晶が変化する場合が考えられる。この場合においても、維持電圧を印加している間に状態の変化が完了して、その後所望する液晶の状態を維持する。本願でいう「液晶状態を維持する維持電圧」は、上記態様も含むものとする。
【0030】
この走査電圧は、行毎に順に印加される。具体的には、同図に示されるように、第n−1行(走査電極)に初期化電圧が印加された1ms(選択電圧の印可時間に等しい)後、第n行に印加され、その1ms後に第n+1行に印加される。
【0031】
また、各走査電極には、初期化電圧印加後に、選択電圧が印加され、その後維持電圧が印加される。このうち、初期化電圧及び維持電圧は、本実施の形態において直流電圧となっている。また、維持電圧はコレステリック液晶のヒステリシス双安定性を利用できる大きさの電圧で、選択電圧で選択されたコレステリック液晶素子の状態を選択反射状態(プレーナー状態)、又は透過状態(フォーカルコニック状態)、又は後述する中間状態に確定させるための電圧である。そして維持電圧が印加された後は、走査電極に対して電圧が印加されることはない。
【0032】
なお、選択電圧は、同図(A)に示されるように、パルス状の交番電圧となっており、この選択電圧が印加される時間は例として1msとしている。同図(A)に示す選択電圧は正の電位(図中の基準線の上側)が先に印可され続いて負の電位(図中の基準線の下側)が印加されている。負の電位が先で、続いて正の電位が印加されるようにしても良い。同図(A)に示す選択電圧は選択電圧印可時間中に1周期のパルス状の交番電圧であるが、2周期またはn周期(nは正数)のパルス状の交番電圧であっても良い。
【0033】
また、データ電圧は、走査電圧に同期して、画像データに応じて列毎に印加される。具体的に例えば、n行m列に位置するコレステリック液晶素子の反射状態を定めるためには、走査電圧により、第n行の走査電極に選択電圧が印加されるのと同期して、n行m列に位置するコレステリック液晶素子の反射状態を定めるためのデータ電圧をm列のデータ電極に印加するように制御する。
【0034】
この制御により、データ電圧は選択電圧が最後の走査電極に対して印加されるまで各列に対して印加され続けることとなる。
【0035】
コレステリック液晶素子の各セルに印加される電圧は、液晶素子を挟んで交差する走査電極とデータ電極にそれぞれ印可される電圧の差分の電圧である。走査電極への電圧印加が終了(維持電圧の印加が終了)したセルには後続する走査電極上のセルの反射状態を決定するためのデータ電圧が印加され続ける(このような、セルにかかる所望以外の電圧をクロストークと呼ぶ)ため、セルに印加される電圧の実効値は、図7に示されるように、初期化電圧、選択電圧、及び維持電圧の実効値の他に、クロストークの実効値も含まれる。
【0036】
なお、図7においては、隣接する行上のセルにかかる初期化電圧と選択電圧と維持電圧及びクロストークの実効値がタイミングと共に示されているが、選択電圧の実効値は、セル毎に(各セルに印加されたデータ電圧により)異なる。クロストークの実効値の大きさは、液晶セルが応答する閾値電圧より小さくなくてはならない。クロストークが前記閾値電圧よりも大きいと、選択電圧及び維持電圧により決定されたセルの反射状態がクロストークにより変化してしまい、最終表示画像の劣化を招く。
【0037】
クロストーク電圧は初期化電圧の前(図では初期化電圧の左側)にも存在するが、図7では省略した。なお、この実効値は、Vrms(root mean square:二乗平均)で表されている。
【0038】
本実施の形態において、上述したデータ信号には、維持電圧の実効値を変動させないために、交番電圧が用いられている。ここで「維持電圧の実効値を変動させない」とは、維持電圧印可期間において走査電極とデータ電極との差分の実効値を一定にするということを意味する。これは、維持電圧の実効値を変動させないためには、上記データ信号がON信号印加時とOFF信号印加時、およびその中間状態を選択するための信号を印可する時とで、各電圧値を出力する時間の総和がそれぞれ等しいことが有効であることが理由となっているためである。
【0039】
このとき、選択信号をデータ信号の周波数と同一の周波数の交番電圧とすると、選択信号とデータ信号の差分の実効値のダイナミックレンジが最大になる。このことを具体的に図8のグラフを用いて説明する。同図に示されるグラフは、横軸が選択電圧実効値を示し、縦軸が液晶の反射率を示している。同図に示されるように、選択信号とデータ信号とが逆相となったときの選択電圧実効値と、選択信号とデータ信号とが同相となったときの選択電圧実効値との差がダイナミックレンジである。
【0040】
このように選択電圧を交番電圧とすることで、ダイナミックレンジを大きくでき、それによりコントラストを高めることができるが、選択電圧を直流電圧とすると、ダイナミックレンジが小さくなるため、表示状態のコントラストが低下する原因となる。
【0041】
このように、本実施の形態では、選択電圧を交番電圧、初期化電圧と維持電圧とを直流電圧とすることで、セルにかかる選択電圧の実効値の最大値と最小値の幅がこれまでと同等になることに着目したことにより、ダイナミックレンジを犠牲にすることなく、低消費電力とIC耐圧の低減を実現することができる。
【0042】
なお、上記液晶材料は、例えば中心選択波長が470nmのコレステリック液晶、走査電圧は初期化電圧90V、50ms、選択電圧±8V、1kHz、1ms、維持電圧50V、30ms、データ電圧は±8V、1kHzである。なお、選択電圧とデータ電圧は周波数は等しい(1周期の時間が等しい)が、振幅は等しくなくても良い。
【0043】
このように本実施の形態では、初期化電圧及び維持電圧を直流電圧としているが、従来では、直流電圧のような印加される電圧の平均値が0でない場合、イオンの偏在により表示媒体が劣化するという懸念があった。
【0044】
そこで、セルの大きさが10mm×10mm×10umで、容量が1−2nFの液晶層に1分の直流電圧を掛けた後、交番電圧で初期化電圧を印加する事を繰り返した。具体的には、90Vでホメオトロピック状態になる液晶に対して、90V及び50Vの直流電圧を1分間印加し、5秒後に±90V50Hzの信号を200ms印加し、セルの容量を測定した結果、容量は容量1.1nFで安定していた。
【0045】
交番電圧による初期化電圧を印加しない場合でも、90Vの直流電圧を印加した1分後は1nF、50Vの直流電圧を印加した1分後は1.8nFで容量は安定していた。
【0046】
また、選択時間を1msとした場合、2500ラインでは駆動時間が2.5sであり、そのうちセルに直流電圧が印加される時間が高々100msである。更に、電子ペーパーとして利用する場合は、連続でセルを書き換えることはほとんどないので、書き換え間隔が少なくとも数秒は有ることと、上記実験の結果から、直流電圧の印加が原因による素子劣化はほとんど起こらないと考えられる。
【0047】
また、直流電圧で連続して駆動した場合、プレーナー状態の反射率を示すY値が下がることが知られている。この場合、観察者による見た目では、フォーカルコニック状態からプレーナー状態へ駆動したときに、黒いまだら模様(履歴)が出るようになるが、これはY値で測定可能である。
【0048】
図9に示されるグラフは、横軸が時刻を示し、縦軸がY値を示している。同図では、10回連続してフォーカルコニック状態になるように駆動した後、2回連続してプレーナー状態に駆動した実験結果を示している。また、駆動間隔は1分である。なお、同図に示される黒点はフォーカルコニック状態になるように駆動したことを示し、白点はプレーナー状態に駆動したことを示している。このことは、後述する図10でも同様である。
【0049】
図9に示されるように、実験を開始した15時7分から、約90分後の16時33分にはY値がやや低下し始めているのが分かる。その後も時間の経過とともにY値は減少していくことが示されている。
【0050】
この実験結果によると、1分毎に駆動する場合は、1分ごとの頻度で1時間以上続けて駆動せず、10回続けてフォーカルコニック状態になるように駆動した後、プレーナー状態になるように駆動すると、直流電圧による駆動の影響を抑制することができると言える。
【0051】
駆動間隔を2分とした実験結果を示したのが、図10に示されるグラフである。同図に示されるグラフは、横軸が実験開始から経過した経過時間を示し、縦軸がY値を示している。同図では、連続してフォーカルコニック状態になるように駆動した後、2回連続してプレーナー状態に駆動した場合を含む実験結果を示している。
【0052】
同グラフに示されるように、実験開始から約160分が経過したときに、20回続けてフォーカルコニック状態になるように駆動した後、プレーナー状態になるように駆動したにもかかわらず、コレステリック液晶がプレーナー状態に配向しないという事が発生している。
【0053】
このテストピースを約18時間放置し、翌日同様の実験を行ったところ、フォーカルコニック状態、及びプレーナー状態のいずれにも良好に駆動することができた。
【0054】
この実験結果によると、2分毎に駆動する場合は、2分ごとの頻度で2時間以上続けて駆動せず、20回続けてフォーカルコニック状態になるように駆動した後、プレーナー状態になるように駆動すると、直流電圧による駆動の影響を抑制することができると言える。
【0055】
なお、上述した図9、図10における実験結果は、液晶材料や、使用環境(温度、湿度)、累積のダメージ(駆動回数、紫外線照射時間、温度サイクルなど)により誤差があると思われる。また、フォーカルコニック状態からプレーナー状態になるように駆動したときと、プレーナー状態から同じプレーナー状態になるように駆動したときのY値が、20前後となっており異なっているが、この差(図10では19.5と20.7)は許容できる程度である。
【0056】
このばらつきを最小にするためには、書き換え駆動の前に全ての画素に対して(同時にでなくてよい)プレーナー状態となるように信号を印加すれば良い。その信号は初期化電圧と同じ大きさで、10〜20msの時間だけ印加すれば十分である。
【0057】
また、今回の実験で直流電圧による駆動の影響により駆動電圧が上昇したテストピースは、いずれも18時間の放置後に実験前と同等と判断できる状態(駆動電圧が実験前と同レベルまで下降)に戻った。
【0058】
このような背景により本実施の形態に係る表示制御装置14は、初期化電圧及び維持電圧を直流電圧としているが、これにより、コレステリック液晶素子を駆動するための消費電力を低減することができる。具体的には、図11に示されるように、交番電圧では電圧の変動による電流が生じるため電力が消費される。その場合、極性反転回数(電圧変動)に比例して消費電力は増加する。
【0059】
同図に示されるように、直流電圧における電圧変動は交番電圧のそれと比較して少ないため、消費電力を低減することが可能となる。
【0060】
更に、直流電圧を用いることで、走査電極駆動回路56の耐圧幅を小さくすることも可能となる。具体的には、交番電圧を使用する場合、必要な実効値に対し2倍の耐圧幅が必要であるが、図12に示されるように直流電圧を用いた場合、交番電圧の耐圧幅と比較して直流電圧の耐圧幅を小さくすることが可能となる。
【0061】
次に、図13を用いて各セルの選択電圧印加期間において、データ電極駆動回路55、がデータ電圧と選択電圧との位相差を生じさせることで、コレステリック液晶素子の反射状態を、上述した透過状態、又は選択反射状態とは異なる中間の反射状態に変化させる場合の位相について説明する。
【0062】
図13には、コレステリック液晶素子のセルに印加される電圧を示すセル電圧が、最も小さい電圧が印加されることを示すOFFと、最も高い電圧が印加される場合のONと、それらとは異なる中間調とするために印加される場合の、選択電圧とデータ電圧の位相差が示されている。
【0063】
同図に示されるOFFの場合、コレステリック液晶素子は、光を透過するフォーカルコニック状態であり、ONの場合は特定の波長を選択的に反射するプレーナー状態である。中間調は、フォーカルコニック状態とプレーナー状態の中間となる光に対する反射状態を示している。
【0064】
選択電圧印加期間中のセル電圧は、選択電圧とデータ電圧の差分であるため、セル電圧をOFFにする場合には、選択電圧とデータ電圧を同相とするようにデータ電圧を印加する。また、セル電圧をONにする場合には、選択電圧とデータ電圧を逆相とするようにデータ電圧を印加する。そして、中間調にする場合には、その中間調の度合いに応じて、位相をずらすことで実現することができる。
【0065】
このように中間調を実現可能とすることにより、グレースケールに対応することが可能となる。なお、上述したセル電圧の実効値の大きさとON/OFFの関係は、維持電圧の条件により図13で説明した場合と逆となることがある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施の形態に係る表示制御装置を示す図である。
【図2】記録部及び表示媒体の構成を示す図である。
【図3】コレステリック液晶の配向状態と光の透過/反射を模式的に表す図である
【図4】表示媒体の断面図である
【図5】2つの表示媒体を積層した例を示す図である
【図6】走査電圧及びデータ電圧の波形を示す図である。
【図7】行に印加される電圧の実効値を示す図である。
【図8】ダイナミックレンジを示す図である。
【図9】駆動間隔を1分とした場合の実験結果を示す図である。
【図10】駆動間隔を2分とした場合の実験結果を示す図である。
【図11】直流電圧と交番電圧の消費電力の差を示す模式図である。
【図12】直流電圧と交番電圧の耐圧幅の差を示す模式図である。
【図13】セルに印加される電圧と走査電圧及びデータ電圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
14 表示制御装置
15 表示媒体
24 制御部
28 記録部
55 データ電極駆動回路
56 走査電極駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する透過状態、及び光を反射する反射状態を記憶可能な液晶素子で構成される表示媒体に対し、前記液晶素子の前記透過状態及び反射状態を定めるためのデータ電圧を前記液晶素子に印加するデータ電圧印加手段と、
前記液晶素子を初期化するための初期化電圧、前記データ電圧印加手段により印加されたデータ電圧を選択するための選択電圧、及び前記選択電圧により変化した前記液晶素子の状態を維持させるための維持電圧を前記液晶素子に対して印加すると共に、前記初期化電圧、及び前記維持電圧を直流電圧で印加し、前記選択電圧を交番電圧で印加する走査電圧印加手段と、
を有する表示制御装置。
【請求項2】
前記データ電圧は、交番電圧として印加され、
前記データ電圧印加手段が、前記データ電圧と前記選択電圧との位相差を生じさせることで、前記位相差によって、前記液晶素子の状態を、前記透過状態、又は前記反射状態とは異なる中間の反射状態に制御する請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記液晶素子は、コレステリック液晶素子である請求項1又は請求項2に記載の表示制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−286934(P2008−286934A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130634(P2007−130634)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】