説明

表示方法および表示装置

【課題】 金属粒子の粒径を制御することにより、コントラストを低下させずにカラー表示することのできる表示方法および表示装置を提供する。
【解決手段】 表示装置100は、対向配置された透明の表面基板111および背面基板112と、表面基板111および背面基板112の内側に形成された透明の作用電極113および対向電極114と、対向電極114の表面に設けられた銀スパッタ層115と、対向電極114を取り囲むように設けられた環状の参照電極116と、仕切り部材117と、表面基板111と背面基板112の間に密閉された、銀を電解質とする電解質溶液118と、電圧印加部としてのポテンシオスタット130と、制御部としてのポテンシャルプログラマー131とを有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の析出、溶解により表示を行う表示方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、紙媒体や電子ディスプレイデバイスの他に、電子ディスプレイと紙の両者の長所を併せ持った電子ペーパーまたはデジタルペーパーと呼ばれる画像表示記録媒体が注目されている。
【0003】
電子ペーパーにも様々な種類があり、それぞれが異なる表示原理に基づき動作するものであるが、そのうちの1つに、金属の析出、溶解により表示を行う電解析出型の電子ペーパーがある。
【0004】
電解析出型の電子ペーパーが多種のものよりも優れている点は、表示画像のコントラストの高さにある。また、カラーフィルターを用いることにより、表示画像をカラー化する技術も報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、印加電圧を制御することにより、電解析出型の電子ペーパーにも用いられることの多い銀の粒径をナノオーダーで制御する技術が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、金や銀のナノ粒子は、その粒径の違いによって異なる色を発することが知られている。
【特許文献1】特開平11−101994号公報
【非特許文献1】G. Sandmann et al.: “Preparation of silver nanoparticles on ITO surfaces by a double-pulse method”, J. Electroanal. Chem. 491 (2000) pp. 78-86.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術によると、カラーフィルターを用いることにより、白色の反射率が下がり、コントラストが低下してしまうという問題点がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、電解析出型の構成において、コントラストの高いカラー表示をすることのできる表示方法および表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、上記目的を達成するため、第1の電極上に金属の核結晶を形成する第1の工程と、前記核結晶の表面に溶液から金属を析出させ、表示色に対応した粒径を有する粒子を形成する第2の工程と、を有することを特徴とする表示方法を提供する。
【0009】
上記本発明の第1の態様によれば、電解析出型の表示装置において、金属粒子の粒径を制御することにより、コントラストの高いカラー表示を行うことが可能となる。
【0010】
前記第1の工程は、前記第1の電極と、前記第1の電極に対向して配置された第2の電極との間に第1の印加電圧を印加して、前記溶液から前記核結晶を形成するものであってもよい。
【0011】
前記第1の工程は、前記第1の電極上に、前記金属の核結晶を予め設置するものであってもよい。
【0012】
前記第2の工程は、前記第1の電極と、前記第1の電極に対向して配置された第2の電極との間に第2の印加電圧を印加して、前記溶液から金属を析出させるものであってもよい。
【0013】
前記第2の印加電圧は、前記第1の印加電圧よりも小さい電圧であることが好ましい。
【0014】
前記第1の印加電圧の印加時間を制御することにより、形成する前記核結晶の数を制御することができる。前記金属の核結晶の数を制御することにより、表示画像の表示濃度を変化させることができる。
【0015】
前記粒径の制御は、前記第2の印加電圧の印加時間を制御することにより行ってもよい。前記析出量を制御することにより、表示色を変化させることができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様は、上記目的を達成するため、透明な第1の電極を有する透明材料からなる表面基板と、前記表面基板に対向して設けられた、第2の電極を有する背面基板と、前記第1の電極と前記第2の電極の間に密閉された電解質溶液と、前記第1の電極と前記第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加部と、前記電圧印加部を制御して、前記電解質溶液から金属を析出させ、前記第1の電極上に表示色に対応した粒径を有する金属の粒子を形成させる制御部と、を備えたことを特徴とする表示装置を提供する。
【0017】
上記本発明の第2の態様によれば、金属粒子の粒径を制御することにより、コントラストの高いカラー表示を行うことが可能な電解析出型の表示装置を提供することが可能となる。
【0018】
前記表示装置は、参照電極を有してもよい。これにより、参照電極を前記第1の電極または第2の電極の電位の基準として、電位を正確に制御することができる。
【0019】
前記電解質溶液は、光を反射する白色のコロイド粒子を分散させたものであってもよい。また、前記第1の電極と前記第2の電極の間に、光を反射する白色の反射板を設けてもよい。これらにより、白色の反射率を高めることができる。
【0020】
前記金属は、金または銀を用いることができる。
【0021】
前記電解質溶液は、溶液の伝導性を向上させるために支持電解質を含んでもよい。前記支持電解質には、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、テトラアルキル四級アンモニウム塩、過塩素酸テトラエチルアンモニウム塩、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム塩、過塩素酸テトラブチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウムハライド塩を用いることができる。
【0022】
また、還元剤として、アスコルビン酸化合物、トリアルキルアルコールアミンを含んでもよい。
【0023】
前記電解質溶液の溶媒として、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、イソプロピルアルコール、エチルアルコールを用いることができる。
【0024】
前記表面基板および背面基板は、石英ガラス板、白板ガラス板、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体などの高分子のフィルムや板状基板を用いることができる。
【0025】
前記第1の電極および第2の電極は、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化錫、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛を用いることができる。
【0026】
前記参照電極には、白金、パラジウム、金などの貴金属を用いることができる。
【0027】
前記反射板は、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムを用いることができる。なお、前記反射板は、前記電解質溶液が自由に通過できるように、微小な孔を有する必要がある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、金属粒子の粒径を制御することにより、コントラストを低下させずにカラー表示することのできる表示方法および表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【0030】
〔第1の実施の形態〕
(表示素子の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図である。
【0031】
図1に示すように、表示装置100は、対向配置されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなる透明の表面基板111および背面基板112と、表面基板111および背面基板112の内側に形成されたITOからなる透明の作用電極113および対向電極114と、対向電極114の表面に設けられた銀スパッタ層115と、対向電極114を取り囲むように設けられた環状の参照電極116と、例えば熱硬化性樹脂等の絶縁性材料からなる仕切り部材117と、表面基板111と背面基板112の間に密閉された、銀を電解質とする電解質溶液118と、電圧印加部としてのポテンシオスタット130と、制御部としてのポテンシャルプログラマー131とを有して構成されている。
【0032】
なお、表示装置100の構成要素のうち、表面基板111、背面基板112、作用電極113、対向電極114、銀スパッタ層115、参照電極116、仕切り部材117、および電解質溶液118をまとめて表示素子110と称する。
【0033】
この第1の実施の形態においては、作用電極113は、請求項1または請求項9において定義されるところの第1の電極であり、対向電極114は、請求項1または請求項9において定義されるところの第2の電極であるとして説明するが、作用電極113が第2の電極、対向電極114が第1の電極であってもよい。
【0034】
参照電極116は、表面基板111上に設けられていてもよく、また、その形状も環状に限られない。
【0035】
電解質溶液118中には、白色の反射率を高めるために、TiOがコロイドとして分散している。
【0036】
ポテンシオスタット130には、作用電極113、対向電極114、および参照電極116が接続されており、ポテンシオスタット130は、参照電極116を基準として作用電極113の電位を調べながら、作用電極113、対向電極114間に正確な大きさの電圧を印加する。
【0037】
ポテンシャルプログラマー131は、電圧の大きさ、および印加時間をポテンシオスタット130に対して指定する。また、ポテンシャルプログラマー131は、表示素子100が表示する色に対応した印加電位プログラムを有する。
【0038】
(表示素子の動作)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。また、図3(a)、(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る表示素子の動作を示す断面図である。
【0039】
表示素子100は、初期状態においては、白色を表示する。これは、ユーザには、表面基板111を通して電解質溶液118中に分散する白色の酸化チタンコロイドが見えるためである。
【0040】
そこで、ユーザが、表示素子100に表示させたい色をポテンシャルプログラマー131に指定すると、ポテンシャルプログラマー131は、図2に示すような、その色に対応した印加電位プログラムに基づいてポテンシオスタット130を制御する。
【0041】
初めに、ポテンシャルプログラマー131は、平衡状態を保っているポテンシオスタット130に対して、高さE(E<ECRIT<0)、印加時間tの核形成パルス電位を作用電極113に印加するように命令する。ここで、ECRITは閾値電位を表し、閾値電位よりも負の電位を印加することで、銀を析出させることができる。
【0042】
すると、図2(a)に示すように、作用電極113と対向電極114の間にパルス電圧が発生し、対向電極114上の銀スパッタ層115から銀がイオン化して電解質溶液118に溶け出し、銀の結晶核111として作用電極113上に析出する。
【0043】
このとき、核形成パルス電位の印加時間tを調節することにより、結晶核111の数を制御することができる。結晶核111の数が増えるほど、表示素子100の表示濃度があがる。
【0044】
次に、ポテンシャルプログラマー131は、ポテンシオスタット130に対して、高さE(E<ECRIT<E<0)、印加時間tの粒成長パルス電位を作用電極113に印加するように命令する。
【0045】
すると、図2(b)に示すように、作用電極113と対向電極114の間にパルス電圧が発生し、対向電極114上の銀スパッタ層115から銀がイオン化して電解質溶液118に溶け出し、銀の結晶核111表面に析出して、銀の結晶粒112となる。
【0046】
このとき、粒成長パルス電位の印加時間tを調節することにより、銀の結晶核111表面への銀の析出量を制御し、結晶粒112の粒径を制御することができる。結晶粒112の粒径が変わると、局在プラズモン共鳴の効果により、結晶粒112の粒径に対応した色が表示部100に表示される。
【0047】
表示素子100の表示を初期状態(白色)に戻すときは、十分な高さおよび印加時間の正の電位を作用電極113に印加する。それにより、銀の結晶粒112はイオン化して電解質溶液118に溶け出し、銀スパッタ層115に析出するため、表面基板111を通して電解質溶液118中に分散する白色の酸化チタンコロイドが見えるようになる。
【0048】
(第1の実施の形態の効果)
この第1の実施の形態によれば、電圧を2段階に分けて印加することにより(ダブル−パルス方式)、粒成長パルス電位を調節して結晶粒の粒径を制御することができ、局在プラズモン共鳴の効果により、コントラストを低下させずにカラー表示することが可能となる。
【0049】
また、核形成パルス電位を調節して、結晶核、ひいては結晶粒の数を制御することにより、表示素子100の表示濃度を自由に変更することができる。濃度を上げると、コントラストの高い表示が得られ、一方、濃度を下げると、表示に必要なエネルギーが少なくて済むため、消費電力を下げることができる。
【0050】
〔第2の実施の形態〕
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図である。
【0051】
同図に示すように、第1の実施の形態に係る表示装置100との違いは、白色の反射率を高めるために、表面基板111と背面基板112の間に白色の反射板121が設けられている点である。なお、反射板121は、電解質溶液118が自由に通過できるように、微小な孔を有する。表示装置100のその他の構成および動作については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0052】
(第2の実施の形態の効果)
この第1の実施の形態によれば、反射板121を設けることにより、白色の反射率が高まり、よりコントラストの高い表示を得ることができる。
【0053】
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態においては、第1の実施の形態に係る表示素子を画素数に応じて2次元アレイ状に複数配列した画像表示装置について説明する。なお、各表示素子の構成および動作については、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0054】
(表示装置の構成)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を示す上面図である。
【0055】
この画像表示装置200は、表示素子110をアレイ状に配列し、1つの表示素子110を1つの画素とした画像表示媒体201と、電圧を印加する表示素子110を選択する列電極駆動回路202Aおよび行電極駆動回路202Bと、列電極駆動回路202A及び行電極駆動回路202Bを介して画像表示媒体201の各表示素子110に電圧を印加する電圧印加部203と、画像記憶部205に記憶されている画像データに基づいて列電極駆動回路202A行電極駆動回路202B、電圧印加部203を制御する信号制御部204と、を有して概略構成されている。
【0056】
図5は、表示素子110を4×4のマトリックス状に配列して示したが、配列の形や数は、これに限られない。例えば、表示素子100が正六角形等の多角形である場合は、ハニカム構造であってもよい。
【0057】
信号制御部204は、CPU、ROM、RAM、タイミング信号発生回路等を備えて構成されている。CPUは、ROMに格納された制御プログラムに従って行電極駆動回路202A、列電極駆動回路202B、および電源印加部203を制御して、画像記憶部205に記憶された画像データに基づいて画素に対応する表示素子110の作用電極113と対向電極114との間に電圧を印加させる。
【0058】
具体的には、各表示素子100への印加電圧は、画像データに含まれる各画素の色に対応する印加時間の粒成長パルス電圧を含んだダブル−パルス電圧である。信号制御部204は、第1の実施の形態に係るポテンシャルプログラマー131の機能を有するものである。
【0059】
電圧印加部203には、各表示素子100の参照電極116が接続されており、印加電圧の大きさを正確に制御することにより、各表示素子100に目的の色を表示させることができる。電圧印加部203は、第1の実施の形態に係るポテンシオスタット130の機能を有するものである。
【0060】
なお、画像記憶部205は、CD−ROMや書き替え可能なフラッシュメモリ等の記録媒体、あるいはLAN(Local Area Network)等のネットワークを介して画像データを入力してもよい。
【0061】
列電極駆動回路202A、行電極駆動回路202B、電圧印加部203、信号制御部204、および画像記憶部204の一部又は全部は、外部装置として画像表示装置200に接続できる形態であってもよい。
【0062】
列電極駆動回路202Aは、信号制御部204からのタイミング信号及び画像信号に基づいて、対応する作用電極113に電圧印加部203から供給される電位を印加するものである。一方、行電極駆動回路202Bは、信号制御部204からのタイミング信号及び画像信号に基づいて、対応する対向電極114に電圧印加部203から供給される電位を印加するものである。
【0063】
作用電極113および対向電極114は、互いに直交する複数の行電極と複数の列電極を用い、それぞれ列電極駆動回路202A、行電極駆動回路202Bに接続され、パッシブ・マトリックス駆動(単純マトリックス駆動)により各画素を駆動する。また、作用電極113および対向電極114は、全面電極と複数の画素電極を用い、互いに直交する複数のデータ線と複数の走査線との各交点にTFT等のアクティブ素子をそれぞれ接続し、アクティブ・マトリックス駆動により各画素を駆動してもよい。
【0064】
(第3の実施の形態の効果)
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態に係る表示素子100を複数配列することにより、コントラストを低下させずにカラー表示することが可能な画像表示装置200を作製することが可能となる。
【0065】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0066】
また、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
この実施例1において、第1の実施の形態に対応する表示装置を作製し、動作実験を行った。
【0069】
(表示装置の作製)
まず、厚さ1mmの硼珪酸ガラスからなる表面基板111上に、厚さ200nm、面積1.5cmのITOからなる作用電極113を形成し、厚さ1mmの硼珪酸ガラスからなる背面基板112上に、白金からなる対抗電極114、および金からなる参照電極116形成し、対抗電極114上に銀スパッタ層115を設けた。
【0070】
次に、濃度0.5mol/lの硝酸カリウムと、濃度0.5mol/lの硝酸銀をエタノールに溶解させた。さらに、この溶液の1.2倍の質量の酸化チタンを添加して撹拌し、電解質溶液118とした。
【0071】
次に、電解質溶液118を表面基板111と背面基板112間に高さ100μmの仕切り部材117を介して挟持した。
【0072】
制御部および電圧印加部としては、これら両者の機能を有するガルバノスタット・ポテンショスタット(セイコー・イージーアンドジー株式会社製 Model263A)を用いた。
【0073】
(表示装置の動作)
表示素子110は、電圧を印加しない状態においては、電解質溶液118中に分散する酸化チタンコロイドの色である白色を表示する。
【0074】
図6Aは、本発明の実施例1に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【0075】
図6Aに示すように、高さE=−1550mV(vs参照電極)、印加時間t=60msの核形成パルス電位、および高さE=−700mV(vs参照電極)、印加時間t=90sの粒成長パルス電位を作用電極113に印加したところ、表示素子110は黄色を表示した(吸収ピーク波長は約533nm)。ここで、作用電極113の表面を原子間力顕微鏡にて観察したところ、平均粒径10nmの銀の結晶粒112が確認された。
【0076】
続けて、高さ−650mV(vs参照電極)の電位を作用電極113に印加したところ、作用電極113上の銀の結晶粒112が酸化溶解され、黄色が消去されて、再び酸化チタンの白色が表示された。
【実施例2】
【0077】
この実施例2においては、実施例1と同様に、第1の実施の形態に対応する表示装置を作製し、動作実験を行った。表示装置の作製工程については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0078】
(表示装置の動作)
表示素子110は、電圧を印加しない状態においては、電解質溶液118中に分散する酸化チタンコロイドの色である白色を表示する。
【0079】
図6Bは、本発明の実施例1に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【0080】
次に、図6Bに示すように、高さE=−1550mV(vs参照電極)、印加時間t=60msの核形成パルス電位、および高さE=−700mV(vs参照電極)、印加時間t=180sの粒成長パルス電位を作用電極113に印加したところ、表示素子100は青色を表示した(吸収ピーク波長は約651nm)。ここで、作用電極113の表面を原子間力顕微鏡にて観察したところ、平均粒径40nmの銀の結晶粒112が確認された。
【0081】
続けて、高さ−650mV(vs参照電極)の電位を作用電極113に印加したところ、作用電極113上の銀の結晶粒112が酸化溶解され、青色が消去されて、再び酸化チタンの白色が表示された。
【0082】
以下に、比較例として、実施例1に係る表示素子に、ダブル−パルス電圧ではなく、通常のシングル−パルス電圧を印加した場合の動作の検証結果を示す。表示装置の作製工程については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0083】
〔比較例1〕
図7Aは、本発明の比較例1に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【0084】
図7Aに示すように、高さE=−1550mV(vs参照電極)、印加時間t=60msの電位(実施例1の各形成パルス電位に相当)を作用電極113に印加したところ、表示素子110は黒色を表示した。
【0085】
〔比較例2〕
図7Bは、本発明の比較例2に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【0086】
図7Bに示すように、高さE=−700mV(vs参照電極)、印加時間t=90sの電位(実施例1の粒成長パルス電位に相当)を作用電極113に印加したところ、表示素子100には何ら変化が見られなかった。
【0087】
以上の比較例1および比較例2の結果より、表示素子100にシングル−パルス電圧を印加した場合には、いずれの場合にも、カラー表示されないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【図3】(a)、(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る表示素子の動作を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を示す上面図である。
【図6A】本発明の実施例1に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【図6B】本発明の実施例1に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【図7A】本発明の比較例1に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【図7B】本発明の比較例2に係るポテンシャルプログラマーの有する電圧印加プログラムを示すグラフである。
【符号の説明】
【0089】
100 表示装置
110 表示素子
111 表面基板
112 背面基板
113 作用電極
114 対向電極
115 銀スパッタ層
116 参照電極
117 仕切り部材
118 電解質溶液
119 結晶核
120 結晶粒
130 ポテンシオスタット
131 ポテンシャルプログラマー
200 画像表示装置
201 画像表示媒体
202A 列電極駆動回路
202B 行電極駆動回路
203 電圧印加部
204 信号制御部
205 画像記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極上に金属の核結晶を形成する第1の工程と、
前記核結晶の表面に溶液から金属を析出させ、表示色に対応した粒径を有する粒子を形成する第2の工程と、
を有することを特徴とする表示方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記電極を第1の電極とし、前記第1の電極と、前記第1の電極に対向して配置された第2の電極との間に第1の印加電圧を印加して、前記溶液から前記核結晶を形成することを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項3】
前記第2の工程は、前記電極を第1の電極とし、前記第1の電極と、前記第1の電極に対向して配置された第2の電極との間に第2の印加電圧を印加して、前記溶液から金属を析出させることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項4】
前記第1の印加電圧の印加時間を制御することにより、形成する前記核結晶の数を制御することを特徴とする請求項2に記載の表示方法。
【請求項5】
前記核結晶の数を制御することにより、表示濃度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項6】
前記粒径の制御は、前記第2の印加電圧の印加時間を制御することにより行うことを特徴とする請求項3に記載の表示方法。
【請求項7】
前記金属は、金または銀であることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項8】
前記第1の工程は、前記電極を第1の電極とし、前記第1の電極と、前記第1の電極に対向して配置された第2の電極との間に第1の印加電圧を印加して、前記金属の溶液から前記金属の核結晶を形成し、
前記第2の工程は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に第2の印加電圧を印加して、前記金属の溶液から前記金属を析出させ、
前記第2の印加電圧は、前記第1の印加電圧よりも小さい電圧であることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項9】
透明な第1の電極を有する透明材料からなる表面基板と、
前記表面基板に対向して設けられた、第2の電極を有する背面基板と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に密閉された電解質溶液と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部を制御して、前記電解質溶液から金属を析出させ、前記第1の電極上に表示色に対応した粒径を有する金属の粒子を形成させる制御部と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記電圧印加部が印加する前記電圧の大きさ及び印加時間を制御することを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1の電極または第2の電極の電位の基準とする参照電極を有することを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項12】
前記電解質溶液は、光を反射する白色のコロイド粒子を分散させたものであることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第1の電極と前記第2の電極の間に、光を反射する白色の反射板を設けたことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項14】
前記金属は、金または銀であることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項15】
前記第1および第2の電極、および前記電解質溶液によって構成される発光素子をアレイ状に配列したことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2007−86188(P2007−86188A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272505(P2005−272505)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】