説明

表示機構監視装置

【課題】表示機構による表示が正常か異常かを正しく判断することができる表示機構監視装置を提供する。
【解決手段】表示機構監視装置1は、速度センサ3と、加速度センサ4と、システムECU5とを備えている。システムECU5は、速度センサ3の検出値(速度値)を取得し、その速度値を液晶ディスプレイ2に表示させるための画像データを作成する速度表示タスク9と、加速度センサ4の検出値(加速度値)を取得する加速度管理タスク12と、画像データの変化量を算出する変化量計算タスク13と、加速度管理タスク12により取得された加速度値と変化量計算タスク13により算出された画像データの変化量とを比較し、加速度値に応じた画像データの変化があるかどうかを判定することで、速度表示プロセスに異常が発生しているかどうかを判断する速度表示監視タスク14とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された表示機構監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の表示機構監視装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の表示機構監視装置は、表示器の輝度情報を検出して記録し、今回記録された輝度情報と前回記録された輝度情報とを比較し、その比較結果が不一致であるときは、カウント値をクリアし、比較結果が一致したときは、カウント値をインクリメントし、カウント値が閾値を超えた場合は、同一の輝度が一定時間以上連続して検出される異常な表示映像になっていると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−17534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、表示器の輝度情報の変化のみを監視しているので、本当に表示内容に係るデータの検出値に変化が無い場合でも、同一の輝度が一定時間以上連続して検出されれば、異常と誤判断されてしまう。
【0005】
本発明の目的は、表示機構による表示が正常か異常かを正しく判断することができる表示機構監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示機構監視装置は、車両の状態を検出する検出手段と、検出手段の検出値に応じた車両状態情報を表示機構に表示させる表示手段と、検出手段の検出値の変化量を監視する検出値変化監視手段と、表示機構に表示される車両状態情報の画像の変化量を監視する画像変化監視手段と、検出値の変化量と画像の変化量とを比較し、検出値の変化に応じた画像の変化が無いときに異常と判断する判断手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の表示機構監視装置においては、検出手段の検出値の変化量を監視すると共に、表示機構に表示される車両状態情報の画像の変化量を監視し、検出値の変化量と画像の変化量とを比較し、検出値の変化に応じた画像の変化が無いときに異常と判断する。具体的には、検出値の変化が無い場合は、画像の変化があるときに異常と判断し、検出値の変化がある場合は、画像の変化が無いときに異常と判断する。これにより、検出手段の検出値の変化の有無にかかわらず、表示機構による表示が正常か異常かを正しく判断することができる。
【0008】
好ましくは、検出手段は、車両の状態として車両の速度を検出し、検出値変化監視手段は、検出手段の検出値の変化量として車両の加速度を監視する。このように車両の速度を検出し、速度情報を表示機構に表示させる場合には、車両の加速度を監視することで、検出手段の検出値(速度値)の変化量を簡単に得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表示機構による表示が正常か異常かを正しく判断できるので、表示機構の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係わる表示機構監視装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示した速度表示タスクにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示したディスプレイドライバにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示した加速度管理タスクにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図1に示した変化量計算タスクにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した速度表示監視タスクにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係わる表示機構監視装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係わる表示機構監視装置の一実施形態を示す概略構成図である。同図において、本実施形態の表示機構監視装置1は、車両に搭載され、車両の速度を表示する速度メータ用の液晶ディスプレイ2を制御・監視する装置である。なお、液晶ディスプレイ2による速度表示としては、アナログ表示でも良いしデジタル表示でも良い。
【0013】
表示機構監視装置1は、車両の速度を検出する速度センサ3と、車両の加速度を検出する加速度センサ4と、システムECU(Electronic Control Unit)5と、ディスプレイ制御器6と、異常監視機器7とを備えている。速度センサ3、加速度センサ4、システムECU5及び異常監視機器7は、CANバス8を介してそれぞれ接続されている。
【0014】
システムECU5は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入出力回路等により構成されている。システムECU5は、速度表示タスク9と、フレームバッファ10と、ディスプレイドライバ11と、加速度管理タスク12と、変化量計算タスク13と、速度表示監視タスク14と、定期通信タスク15とを有している。
【0015】
速度表示タスク9は、速度センサ3の検出値(速度値)を定期的に入手し、その速度値を液晶ディスプレイ2に表示させるための画像データを作成し、その画像データをフレームバッファ10に書き込む。この速度表示タスク9の処理手順については、後で詳述する。
【0016】
ディスプレイドライバ11は、定期的にフレームバッファ10に書き込まれた画像データをディスプレイ制御器6のVRAM6aに書き込む。このディスプレイドライバ11の処理手順については、後で詳述する。
【0017】
加速度管理タスク12は、加速度センサ4の検出値(加速度値)を定期的に入手する。加速度管理タスク12は、加速度値を格納するローカルバッファ(図示せず)を有している。この加速度表示タスク12の処理手順については、後で詳述する。
【0018】
変化量計算タスク13は、画像データが格納されているフレームバッファ10を定期的に監視して画像変化量を算出する。変化量計算タスク13は、フレームバッファ10に書き込まれた画像データを格納するローカルバッファ(図示せず)を有している。この変化量計算タスク13の処理手順については、後で詳述する。
【0019】
速度表示監視タスク14は、加速度管理タスク12により入手された加速度値と変化量計算タスク13により算出された画像変化量とを比較し、液晶ディスプレイ2による速度表示が適切に行われているかどうかを監視する。この速度表示監視タスク14の処理手順については、後で詳述する。
【0020】
ディスプレイ制御器6は、VRAM6aに書き込まれた画像データを液晶ディスプレイ2に表示させる。
【0021】
異常監視機器7は、定期通信タスク15や速度表示監視タスク14からシステムの正常/異常通知情報を受け取り、その情報に従ってシステム全体をリセットする等といった異常時対応を実施する。
【0022】
図2は、速度表示タスク9により実行される処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理は、画像データの作成周期毎に実行される。
【0023】
図2において、速度表示タスク9は、まず速度センサ3から現在の速度値を取得する(手順S101)。続いて、現在の速度値に応じたメータ表示用画像データを作成する(手順S102)。メータ表示用画像データは、現在の速度値を液晶ディスプレイ2に表示させるための画像データである。そして、メータ表示用画像データをフレームバッファ10に格納する(手順S103)。
【0024】
図3は、ディスプレイドライバ11により実行される処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理は、液晶ディスプレイ2の表示更新周期毎に実行される。
【0025】
図3において、ディスプレイドライバ11は、まずフレームバッファ10からメータ表示用画像データを読み込む(手順S111)。そして、そのメータ表示用画像データをディスプレイ制御器6のVRAM6aに格納する(手順S112)。
【0026】
図4は、加速度管理タスク12により実行される処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理は、監視周期毎に実行される。
【0027】
図4において、加速度管理タスク12は、まず加速度センサ4から現在の加速度値(速度値の変化量)を取得する(手順S121)。このとき、重力加速度については無視するのがより好適である。そして、現在の加速度値をローカルバッファに格納する(手順S122)。
【0028】
図5は、変化量計算タスク13により実行される処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理は、監視周期毎に実行される。
【0029】
図5において、変化量計算タスク13は、まず現在フレームバッファ10に格納されているメータ表示用画像データを読み込む(手順S131)。続いて、前回の周期でローカルバッファに書き込んだメータ表示用画像データと現周期で読み込んだメータ表示用画像データとの変化bit量を算出する(手順S132)。そして、現周期で読み込んだメータ表示用画像データをローカルバッファに格納する(手順S133)。
【0030】
図6は、速度表示監視タスク14により実行される処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理は、監視周期毎に実行される。
【0031】
図6において、速度表示監視タスク14は、まず加速度管理タスク12から加速度値(速度値の変化量)を取得する(手順S141)。また、変化量計算タスク13からメータ表示用画像データの変化bit量を取得する(手順S142)。
【0032】
続いて、速度表示監視タスク14は、加速度値とメータ表示用画像データの変化bit量とを比較し、加速度値に応じたメータ表示用画像データの変化があるかどうかを判定する(手順S143)。加速度値に応じたメータ表示用画像データの変化があると判定されたときは、車両の速度をメータ表示する速度表示プロセスが正常動作していると判断する(手順S144)。一方、加速度値に応じたメータ表示用画像データの変化が無いと判定されたときは、速度表示プロセスに異常が発生していると判断し(手順S145)、異常監視機器7に異常を通知する(手順S146)。
【0033】
具体的には、加速度値が0である場合、メータ表示用画像データに変化が無いときは、正常であると判断され、メータ表示用画像データに変化があるときは、異常であると判断される。加速度値が0以外である場合、メータ表示用画像データに変化が無いときは、異常であると判断され、メータ表示用画像データに変化があるときは、正常であると判断される。
【0034】
以上において、速度センサ3は、車両の状態を検出する検出手段を構成する。システムECU5の速度表示タスク9、フレームバッファ10、ディスプレイドライバ11及びディスプレイ制御器6は、検出手段の検出値に応じた車両状態情報を表示機構(液晶ディスプレイ2)に表示させる表示手段を構成する。加速度センサ4及びシステムECU5の加速度管理タスク12は、検出手段の検出値の変化量を監視する検出値変化監視手段を構成する。システムECU5の変化量計算タスク13は、表示機構に表示される車両状態情報の画像の変化量を監視する画像変化監視手段を構成する。システムECU5の速度表示監視タスク14は、検出値の変化量と画像の変化量とを比較し、検出値の変化に応じた画像の変化が無いときに異常と判断する判断手段を構成する。
【0035】
以上のように本実施形態にあっては、速度センサ3から取得した速度値に応じたメータ表示用画像データを作成し、加速度センサ4から取得した加速度値(速度値の変化量)とメータ表示用画像データの変化bit量とを比較し、加速度値に応じたメータ表示用画像データの変化があるかどうかを判定することで、速度表示プロセスに異常が発生しているかどうかを判断するので、実際の速度値の変化の有無にかかわらず、速度表示プロセスの正常/異常を正確に判断することができる。
【0036】
また、速度表示の一連のプロセスでは使用されない加速度を監視するので、速度表示プロセスの異常だけでなく、速度センサ3の異常を検知することもできる。さらに、車両に必ず搭載されている速度センサ3及び加速度センサ4と単純な判定ロジックとを使用しているため、速度表示プロセスの異常状態の監視を低コストで実現することができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、加速度値とメータ表示用画像データの変化量とを比較したが、これ以外にも、例えばメータ表示用画像データの変化量とエンジンの回転量と変速機のギア段との関係を利用して、速度表示プロセスの異常状態を監視しても良い。
【0038】
また、正常動作時に各速度(10km/h、30km/h、60km/h等)時の速度表示画像を保存しておき、走行時に速度センサ3の検出値に対応した速度表示画像と保存しておいた速度表示画像との変化bit量を算出することによって、速度が正常表示されているかどうかを監視することができる。この場合、変化bit量が0または十分小さければ正常状態となる。
【0039】
さらに、上記実施形態の表示機構監視装置1は、車両の速度を表示する速度メータ用の液晶ディスプレイ2を監視するものであるが、本発明は、速度メータ以外の表示機構、例えば車両のエンジン回転数等を表示するものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…表示機構監視装置、2…液晶ディスプレイ(表示機構)、3…速度センサ(検出手段)、4…加速度センサ(検出値変化監視手段)、5…システムECU、6…ディスプレイ制御器(表示手段)、9…速度表示タスク(表示手段)、10…フレームバッファ(表示手段)、11…ディスプレイドライバ(表示手段)、12…加速度管理タスク(検出値変化監視手段)、13…変化量計算タスク(画像変化監視手段)、14…速度表示監視タスク(判断手段)。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出値に応じた車両状態情報を表示機構に表示させる表示手段と、
前記検出手段の検出値の変化量を監視する検出値変化監視手段と、
前記表示機構に表示される前記車両状態情報の画像の変化量を監視する画像変化監視手段と、
前記検出値の変化量と前記画像の変化量とを比較し、前記検出値の変化に応じた前記画像の変化が無いときに異常と判断する判断手段とを備えることを特徴とする表示機構監視装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記車両の状態として前記車両の速度を検出し、
前記検出値変化監視手段は、前記検出手段の検出値の変化量として前記車両の加速度を監視することを特徴とする請求項1記載の表示機構監視装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−83608(P2012−83608A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230687(P2010−230687)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】