説明

表示素子

【課題】簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、表示コントラスト、白表示反射率が高い表示素子であって、表示速度が速い表示素子を提供する。
【解決手段】対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層及び多孔質白色散乱層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該多孔質白色散乱層と隣接する対向電極がナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極であって、かつ多孔質白色散乱層が高分子バインダー及び白色散乱物を含有し、該白色散乱物(F)に対する該高分子バインダー(B)の質量比(B/F)が0.005〜0.05であることを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀の溶解析出を利用した電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。また、エレクトロクロミック表示素子は、3V以下の低電圧で駆動が可能であるが、黒色またはカラー色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、グリーン、レッド等)の色品質が十分でなく、メモリー性を確保するため表示セルに蒸着膜等の複雑な膜構成が必要などの懸念点がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0007】
本発明者は、上記各特許文献に開示されている技術を詳細に検討した結果、従来技術では、近年のユーザーニーズを満足するには白表示時の反射率と表示速度が不十分であることが判明し、例えば、白表示時の反射率の制御技術として、電解質液への二酸化チタンの添加が挙げられるが、二酸化チタンの添加量を増やすと二酸化チタンの凝集による望ましくない表示ムラが発生することが判明した。また、白表示時の反射率の他の向上技術として、電極上に白色散乱層を設ける技術が挙げられるが、繰返し駆動によって白色散乱層が剥離することによる好ましくない表示ムラが発生することも判明した。上記白色散乱層の剥離を改良する技術として、白色散乱層中のバインダー量を増量する技術が挙げられるが、白色散乱層中のバインダー量を増量すると、表示速度が著しく低下することが明らかとなり、早急な改良が望まれている。
【特許文献1】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献2】特許第3428603号公報
【特許文献3】特開2003−241227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、表示コントラスト、白表示反射率が高い表示素子であって、表示速度が速い表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層及び多孔質白色散乱層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該多孔質白色散乱層と隣接する対向電極がナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極であって、かつ多孔質白色散乱層が高分子バインダー及び白色散乱物を含有し、該白色散乱物(F)に対する該高分子バインダー(B)の質量比(B/F)が0.005〜0.05であることを特徴とする表示素子。
【0011】
2.前記多孔質白色散乱層と隣接するナノ多孔質電極の主成分が、貴金属であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0012】
3.前記ナノ多孔質電極の表面が、金、銀、金を含有する化合物及び銀を含有する化合物から選ばれる少なくとも1種で構成されていることを特徴とする前記1または2に記載の表示素子。
【0013】
4.前記多孔質白色散乱層と隣接するナノ多孔質電極が、酸化銀または銀有機化合物の分散物から形成されていることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0014】
5.前記高分子バインダーが、電解質層を構成する電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子化合物であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【0015】
6.前記高分子バインダーが、ポリビニルアルコール系高分子化合物であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の表示素子。
【0016】
7.前記ナノ多孔質電極の膜厚が、100〜1500nmであることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の表示素子。
【0017】
8.前記多孔質白色散乱層の膜厚が、20〜50μmであることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【0018】
9.前記多孔質白色散乱層が含有する白色散乱物が、二酸化チタンであることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の表示素子。
【0019】
10.前記二酸化チタンが、SiO2またはAl23で表面処理されていることを特徴とする前記9に記載の表示素子。
【0020】
11.前記電解質層が、メルカプト系化合物またはチオエーテル系化合物を含有していることを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の表示素子。
【0021】
12.前記メルカプト系化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記11に記載の表示素子。
【0022】
【化1】

【0023】
〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表し、Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR1は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
13.前記チオエーテル系化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記11に記載の表示素子。
【0024】
一般式(2)
2−S−R3
〔式中、R2、R3は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。〕
14.前記電解質層が、環状カルボン酸エステル化合物を含有していることを特徴とする前記1〜13のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、表示コントラスト、白表示反射率が高い表示素子であって、表示速度が速い表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0027】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層及び多孔質白色散乱層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該多孔質白色散乱層と隣接する対向電極がナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極であって、かつ多孔質白色散乱層が高分子バインダー及び白色散乱物を含有し、かつ該白色散乱物(F)に対する該高分子バインダー(B)の質量比(B/F)が0.005〜0.05であることを特徴とする表示素子により、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、表示コントラスト、白表示反射率が高い表示素子であって、表示速度が速い表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0028】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0029】
本発明の表示素子は、対向電極間に、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質を含有し、銀の溶解析出を生じさせるように対向電極の駆動操作を行うED方式の表示素子である。
【0030】
〔銀または銀を化学構造中に含む化合物〕
本発明に係る銀または銀を化学構造中に含む化合物とは、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0031】
〔表示素子の基本構成〕
本発明の表示素子において、ED表示部には、対応する1つの対向電極が設けられている。ED表示部に近い対向電極の1つである電極1にはITO電極等の透明電極、他方の電極2には銀電極等の金属電極が設けられている。電極1と電極2との間には銀または銀を化学構造中に含む化合物を有する電解質が担持されており、対向電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、電極1と電極2上で銀の酸化還元反応が行なわれ、還元状態の黒い銀画像と、酸化状態の透明な銀の状態を可逆的に切り替えることができる。
【0032】
〔多孔質白色散乱層〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から多孔質白色散乱層を有している。
【0033】
本発明に係る多孔質白色散乱層は、白色散乱物、分散溶媒、蛍光増白剤、高分子化合物等を含有した分散物を塗布方式、インクジェット方式、印刷方式等で形成することができるが、多孔質白色散乱層の好ましい形成方式は、スクリーン印刷方式である。
【0034】
多孔質白色散乱層の膜厚は、通常5〜50μmの範囲であるが、本発明においては、20〜50μmの範囲とすることが特に好ましい。
【0035】
本発明で適用可能な白色散乱物としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0036】
本発明では、上記白色散乱物の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に、SiO2、Al2O3で表面処理した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0037】
多孔質白色散乱層を形成する分散物の溶媒は、水及びアルコール系溶剤が好ましい。
【0038】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0039】
本発明に係る多孔質白色散乱層に含有させることのできる高分子バインダーとして、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子化合物を用いることが好ましい。
【0040】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子化合物としては、水溶性高分子化合物、水系溶媒に分散した高分子化合物を挙げることができる。
【0041】
水溶性高分子化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0042】
本発明においては、ポリビニルアルコール系化合物を用いることが特に好ましい。
【0043】
本発明に係る高分子バインダーは、共に多孔質白色散乱層を形成する分散物の溶媒に実質的に溶解し、かつ該電解質を形成する電解液の溶媒に実質的に溶解しないことが好ましい。本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0044】
本発明において、高分子バインダーと白色散乱物の水混和物は、公知の分散方法に従って白色散乱物が水中分散された形態が好ましい。
【0045】
本発明において、多孔質白色散乱層における白色散乱物(F)に対する高分子バインダー(B)の質量比(B/F)が0.005〜0.05であること、すなわち白色散乱物(F)を100質量%としたとき、0.5質量%〜5.0質量%相当用いることを特徴とし、好ましくはB/Fが0.010〜0.03の範囲である。
【0046】
本発明において、高分子バインダーと白色散乱物との水混和物を塗布する媒体は、本発明に係るナノ多孔質化された電極上である。
【0047】
媒体上に付与した高分子バインダーと白色散乱物との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0048】
本発明でいう多孔質とは、前記高分子バインダーと白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
【0049】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により高分子バインダーの硬化反応を行うことが望ましい。
【0050】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。高分子バインダーとしてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0051】
これらの硬膜剤は、高分子バインダー1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0052】
〔対向電極〕
本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/cm2以下が好ましく、10Ω/cm2以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0053】
本発明の表示素子においては、対向電極のうち、多孔質白色散乱層と隣接する対向電極がナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極であることを特徴の1つとする。
【0054】
本発明の表示素子で、該対向電極のうち、画像観察側でない面の電極面を、金属酸化物を含むナノ多孔質電極により保護することで、画像観察側でない面での銀または銀を化学構造中に含む化合物の酸化還元反応が、該金属酸化物を含む多孔質電極上または多孔質電極中で行なわれこととなり、画像観察側でない電極の種類選択肢の拡大及び耐久性を向上させることができる。
【0055】
本発明に係るナノ多孔質電極の形成方法としては、電極を構成する材料を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで電極を構成する材料と溶媒を含んだ層を形成した後に、120度から300度の温度で加熱することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化することによってナノ多孔質化する方法が挙げられる。
【0056】
本発明に係るナノ多孔質電極を構成する材料の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO2、TiO2、ZnO等の金属酸化物から選択することができ、好ましくは、Pt、Au、Ag、Pd等の貴金属から選択されることである。
【0057】
本発明に係るナノ多孔質電極は、ナノ多孔質電極を構成した後に、さらに電解メッキ、無電解メッキ、置換型メッキ等の手法で、ナノ多孔質電極の表面に、金、銀、金を含有する化合物及び銀を含有する化合物から選ばれる少なくとも1種を用いて皮膜を形成させることが好ましい。
【0058】
本発明に係るナノ多孔質電極の形成方法で好ましい形態は、酸化銀または銀有機化合物の分散物からなるペーストをスクリーン印刷法で印刷した後に、120度〜180度の温度で加熱し、ペースト中の溶剤を揮発させ、さらに200度〜300度の温度で加熱することで、ナノ多孔質化することである。
【0059】
本発明に適用可能な銀有機化合物は、ピバリン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸等の有機酸と塩を形成させて用いることができる。
【0060】
本発明に係る酸化銀または有機銀化合物の分散物からなるペーストに用いられる有機溶媒は、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、キシレン、トルエン、アセチルアセトン、アセトニトリル等の沸点が100℃を超える溶媒から選択されることが好ましい。
【0061】
ナノ多孔質電極を形成する基板は、ガラス、プラスチック樹脂のどちらでも用いることができ、またガラスまたはプラスチック樹脂上に金属または酸化物半導体の導電性層を形成した後に、本発明に係るナノ多孔質層が形成されていても良い。
【0062】
本発明でいう多孔質とは、ナノ多孔質電極上に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後にもう一方の電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、ナノ多孔質電極内で銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種がナノ多孔質電極内を移動可能な状態のことを言う。
【0063】
本発明に係るナノ多孔質電極の膜厚は、100〜1500nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは250〜1000nmの範囲である。
【0064】
〔電解質層〕
本発明においては、対向電極間に銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有する。
【0065】
以下、本発明に係る電解質層の構成要素について説明する。
【0066】
(電解質−銀塩)
本発明の表示素子においては、電解質層にヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0067】
本発明に係る電解質に含まれる銀イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Ag]≦2.0モル/kgが好ましい。銀イオン濃度が0.2モル/kgより少ないと希薄な銀溶液となり駆動速度が遅延し、2モル/kgよりも大きいと溶解性が劣化し、低温保存時に析出が起きやすくなる傾向にあり不利である。
【0068】
(ハロゲンイオン、銀イオン濃度比)
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Ag](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0069】
式(1)
0≦[X]/[Ag]≦0.01
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Ag]が0.01よりも大きい場合は、銀の酸化還元反応時に、X-→X2が生じ、X2は黒化銀と容易にクロス酸化して黒化銀を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Ag]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0070】
(有機溶媒)
本発明の表示素子においては、電解質層が、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及び水から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。
【0071】
上記有機溶媒の中でも、環状カルボン酸エステル化合物を用いることが好ましく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトンが挙げられる。また、上記溶媒の中でも誘電率が30〜80の範囲の有機溶媒を用いることが好ましい。
【0072】
本発明で用いることのできるその他の溶媒として、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0073】
(メルカプト系化合物、チオエーテル系化合物)
本発明に係る電解質層では、上記説明した着色材料、ブチラール樹脂、有機溶媒と共に、メルカプト系化合物またはチオエーテル系化合物を含有していることが好ましく、更には、メルカプト系化合物が、前記一般式(1)で表される化合物であること、あるいはチオエーテル系化合物が、前記記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0074】
本発明に係る前記一般式(1)で表されるメルカプト系化合物について説明する。
【0075】
前記一般式(1)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR1は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0076】
一般式(1)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH4、N(CH34、N(C494、N(CH331225、N(CH331633、N(CH33CH265等が挙げられる。
【0077】
一般式(1)のZで表される含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0078】
一般式(1)のR1で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の各基が挙げられ、アルキルカルボンアミド基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等の各基が挙げられ、アリールカルボンアミド基としては、例えば、ベンゾイルアミノ等が挙げられ、アルキルスルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールスルホンアミド基としては、例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等の各基が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等が挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等の各基が挙げられ、アリールカルバモイル基としては、例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルファモイル基としては、例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等の各基が挙げられ、アリールスルファモイル基としては、例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等の各基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の各基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等の各基が挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等の各基が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0079】
次に、一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されているわけではない。
【0080】
【化2】

【0081】
【化3】

【0082】
次いで、前記一般式(2)で表されるチオエーテル系化合物について説明する。
【0083】
前記一般式(2)において、R2、R3は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。
【0084】
前記一般式(2)のR2、R3で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズイミダゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0085】
次に、一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されているわけではない。
【0086】
【化4】

【0087】
本発明に係るメルカプト系化合物またはチオエーテル系化合物は、1種のみで用いても複数種を併用して用いてもよく、電解質層のAgイオンのモル数に対するメルカプト系化合物及びチオエーテル系化合物の合計のモル数が0.2〜2の範囲にあることが好ましい。
【0088】
(電解質材料)
本発明の表示素子において、電解質層中に下記の各化合物を、必要に応じて含むことができる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I-/I3-、Br-/Br3-、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0089】
(電解質添加の増粘剤)
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ブチラール樹脂等が挙げられる。
【0090】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0091】
(電解質層の形成)
本発明に係る電解質層は、スクリーン印刷法で形成すること、ディスペンサで滴下して形成すること及びインクジェット方式で形成する方法から選ばれる少なくとも1つの方法で形成することが好ましい。
【0092】
スクリーン印刷法とは、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に電解質液を付与して形成する方法であり、ディスペンサで滴下して形成する方法は、ノズル孔径が0.1mm〜1mmのノズルを有するディスペンサを用い、ディスペンサに電解質液を充填し、所定の位置をリブ(隔壁)からなるセルを形成し、そのセルに電解質液を充填する方法であり、インクジェット方式は、圧電方式等のインクジェット記録ヘッドより、電解質液をインク液滴として付与する方法である。
【0093】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電気絶縁層を設けることができる。
【0094】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0095】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0096】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0097】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0098】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0099】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔層構成〕
本発明の表示素子の対向電極間の構成層について、更に説明する。
【0100】
本発明の表示素子に係る構成層として、正孔輸送材料を含む構成層を設けることができる。正孔輸送材料として、例えば、芳香族アミン類、トリフェニレン誘導体類、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール類、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリトルイジン誘導体、CuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi23、MoO2、Cr23等を挙げることができる。
【0101】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0102】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0103】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0104】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0105】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0106】
〔スクリーン印刷〕
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、ポリビニールケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニールピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
【0107】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0108】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子においては、析出過電圧以上の電圧印加で黒化銀を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続させる駆動操作を行なうことが好ましい。この駆動操作を行なうことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の表示素子も電極と電解質中の銀との電極反応と見なすことができるので、銀溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。過電圧の大きさは交換電流密度が支配するので、本発明のように黒化銀が生成した後に析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続できるということは、黒化銀表面の方が余分な電気エネルギーが少なく容易に電子注入が行なえると推定される。
【0109】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0110】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0112】
《電解質液の調製》
(電解質液1の調製)
γブチロラクトン2.5g中に、トシル酸銀を75mgと化合物1−12を150mg加えて80℃で混合加熱した後、石原産業社製の二酸化チタンCR−93を250mg添加し、超音波分散機で二酸化チタンを分散して、電解質液1を得た。
【0113】
(電解質液2の調製)
γブチロラクトン2.5g中に、トシル酸銀を75mgと化合物1−12を150mg加えて80℃で混合加熱して、電解質液2を得た。
【0114】
(電解質液3の調製)
上記電解質液2の調製において、化合物1−12を化合物2−1に変更した以外は同様にして、電解質液3を得た。
【0115】
(電解質液4の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化銀を75mgと、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBIと略す)を150mgを加えて80℃で混合加熱して、電解質液4を得た。
【0116】
《電極の作製》
(電極1の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、スパッタ法を用いて、電極厚み100nmの銀電極を形成して、電極1を得た。
【0117】
(電極2の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ピバリン酸銀とテルピネオールを混合して得られた分散物を、スクリーン印刷法で1μmの厚みでピバリン酸銀/テルピネオール層を形成した後、150℃で15分間加熱してテルピネオールを蒸発させ、更に250℃で60分間加熱して、膜厚100nmのナノ多孔質層を形成して、電極2を得た。
【0118】
(電極3の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、スパッタ法を用いて、Al電極を形成した後に、陽極酸化法で膜厚100nmのナノ多孔質化された酸化アルミの電極3を得た。
【0119】
(電極4の作製)
上記電極2に電解脱脂処理と酸処理を施した後、金メッキ浴中に浸し、電解反応を起こすことでナノ多孔質銀の表面に金の皮膜を形成して、電極4を得た。
【0120】
(電極5〜7の作製)
上記電極2の作製において、ナノ多孔質層の膜厚をそれぞれ50、500、2000nmに変更した以外は同様にして、電極5〜7を得た。
【0121】
《白色散乱物分散液の調製》
(二酸化チタン分散物1の調製)
イソプロパノール溶液中に、石原産業社製の二酸化チタンCR−93を20質量%と、ポリビニルアルコール(平均重合度3500、けん化度87%)を二酸化チタンに対して質量比で3%を添加した混合液を超音波分散機で分散させて、二酸化チタン分散物1を得た。
【0122】
(二酸化チタン分散物2の調製)
上記二酸化チタン分散物1の調製において、ポリビニルアルコールの二酸化チタンに対する質量比を3%から10%に変更した以外は同様にして、二酸化チタン分散物2を得た。
【0123】
(二酸化チタン分散物3)
上記二酸化チタン分散物1の調製において、ポリビニルアルコールの二酸化チタンに対する質量比を3%から0.3%に変更した以外は同様にして、二酸化チタン分散物2を得た。
【0124】
(二酸化チタン分散物4)
上記二酸化チタン分散物1の調製において、ポリビニルアルコールをポリエチレングリコール(平均分子量50万)に変更した以外は同様にして、二酸化チタン分散物4を得た。
【0125】
《表示素子の作製》
〔表示素子1の作製〕
周辺部を、平均粒子径が40μmのガラス製球形ビーズを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした電極1とITOガラス電極を貼り合せ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解質液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0126】
〔表示素子2の作製〕
周辺部を、平均粒子径が40μmのガラス製球形ビーズを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした電極1の上に、二酸化チタン分散物1を塗布し、その後90℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発させて、電極1上に膜厚20μmの多孔質白色散乱層を形成し、その上にITOガラス電極を貼り合せ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解質液2を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子2を作製した。
【0127】
〔表示素子3の作製〕
上記表示素子2の作製において、二酸化チタン分散物1を二酸化チタン分散物2に変更した以外は同様にして、表示素子3を作製した。
【0128】
〔表示素子4〜6の作製〕
上記表示素子2の作製において、電極1を電極2〜4にそれぞれ変更した以外は同様にして、表示素子4〜6を作製した。
【0129】
〔表示素子7の作製〕
上記表示素子4の作製において、二酸化チタン分散物1を二酸化チタン分散物3に変更した以外は同様にして、表示素子7を作製した。
【0130】
〔表示素子8の作製〕
上記表示素子4の作製において、二酸化チタン分散物1を二酸化チタン分散物2に変更した以外は同様にして、表示素子8を作製した。
【0131】
〔表示素子9の作製〕
上記表示素子4の作製において、二酸化チタン分散物1を二酸化チタン分散物4に変更した以外は同様にして、表示素子9を作製した。
【0132】
〔表示素子10〜12の作製〕
上記表示素子4の作製において、電極2を電極5〜7にそれぞれ変更した以外は同様にして、表示素子10〜12を作製した。
【0133】
〔表示素子13の作製〕
上記表示素子4の作製において、多孔質白色散乱層の膜厚を20μmから10μmに変更した以外は同様にして、表示素子13を作製した。
【0134】
〔表示素子14の作製〕
上記表示素子4の作製において、多孔質白色散乱層の膜厚を20μmから100μmに変更した以外は同様にして、表示素子14を作製した。
【0135】
〔表示素子15、16の作製〕
上記表示素子4の作製において、電解質液2を電解質液3、4にそれぞれ変更した以外は同様にして、表示素子15、16を作製した。
【0136】
【表1】

【0137】
《表示素子の評価》
〔白表示時の反射率の評価〕
上記で作製した各表示素子に1.5Vの電圧を3秒間印加して白色を表示させ、550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。測定した反射率をRW(%)とし、このRW(%)を白表示時の反射率の指標とした。
【0138】
〔表示速度の評価〕
上記で作製した各表示素子に1.5Vの電圧を1.5秒間印加して白色を表示させた後に、−1.5Vの電圧を0.5秒間印加させてグレーを表示させ、550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。測定した反射率(%)をRGlayとし、RGlay(%)を表示速度の指標とした。ここでは、RGlay(%)が低いほど表示速度が高いとする。
【0139】
〔表示ムラ耐性の評価〕
上記で作製した各表示素子を1.5Vの電圧を1.5秒間印加して白色を表示させた後に、−1.5Vの電圧を0.5秒間印加させてグレーを表示させる作業を1000回繰返した後、表示素子の任意の5箇所の550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定し、反射率の最大値と最小値の差(%)を算出した。算出した反射率の差をΔRGlay(%)とし、このΔRGlay(%)を表示ムラ耐性の指標とした。ここでは、ΔRGlay(%)が小さいほど表示ムラが少ないとする。
【0140】
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0141】
【表2】

【0142】
表2に記載の結果より明らかなように、ナノ多孔質層有していない電極上に多孔質白色散乱層を設けた表示素子1〜3では、高分子バインダーの量が少ない条件では繰返し駆動後の表示ムラが大きくなり、高分子バインダーの量が多い条件では表示速度が遅くなることが分かる。
【0143】
一方、本発明で規定する構成からなる表示素子は、高分子バインダー(B)と白色散乱物(F)の質量比(B/F)を本発明の範囲である0.005〜0.05にすることで、表示速度を遅くすることなく、繰返し駆動での表示ムラを大幅に抑制できることがわかる。
【0144】
特に、上述の効果は、ナノ多孔質電極の材料が銀、金等の貴金属である場合、高分子バインダーがポリビニルアルコール系化合物である場合、ナノ多孔質電極の膜厚が100nm〜1500nmである場合、多孔質白色散乱層の膜厚が20μm〜50μmである場合に、一段と高まることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層及び多孔質白色散乱層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子において、該多孔質白色散乱層と隣接する対向電極がナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極であって、かつ多孔質白色散乱層が高分子バインダー及び白色散乱物を含有し、該白色散乱物(F)に対する該高分子バインダー(B)の質量比(B/F)が0.005〜0.05であることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記多孔質白色散乱層と隣接するナノ多孔質電極の主成分が、貴金属であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記ナノ多孔質電極の表面が、金、銀、金を含有する化合物及び銀を含有する化合物から選ばれる少なくとも1種で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記多孔質白色散乱層と隣接するナノ多孔質電極が、酸化銀または銀有機化合物の分散物から形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記高分子バインダーが、電解質層を構成する電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項6】
前記高分子バインダーが、ポリビニルアルコール系高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項7】
前記ナノ多孔質電極の膜厚が、100〜1500nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項8】
前記多孔質白色散乱層の膜厚が、20〜50μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項9】
前記多孔質白色散乱層が含有する白色散乱物が、二酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項10】
前記二酸化チタンが、SiO2またはAl23で表面処理されていることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項11】
前記電解質層が、メルカプト系化合物またはチオエーテル系化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項12】
前記メルカプト系化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の表示素子。
【化1】

〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表し、Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR1は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
【請求項13】
前記チオエーテル系化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の表示素子。
一般式(2)
2−S−R3
〔式中、R2、R3は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。〕
【請求項14】
前記電解質層が、環状カルボン酸エステル化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の表示素子。

【公開番号】特開2008−65028(P2008−65028A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242523(P2006−242523)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】