説明

表示素子

【課題】簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、高いコントラストを示し、かつ繰返し駆動での反射率の変動が少ない表示素子を提供することにある。
【解決手段】対向電極間に、電解質を有し、かつ対向電極間の少なくとも一方が金属酸化物から成る多孔質層を有しており、かつ該多孔質層に金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物がともに固定化されており、かつ前記対向電極の駆動操作により、黒表示と白表示と黒以外の着色表示を行うことを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化等に伴い、従来、紙等の印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会がますます増大している。
【0003】
このような電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT(ブラウン管)、また近年では、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等の課題が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持のために電力を消費しない、いわゆるメモリー性を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
例えば、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。これらの方法で、カラー表示を行う方法として、カラーフィルターを用いる方法が知られている。原理的に、カラーフィルターの着色のため明るい白表示が得られない。
【0006】
また、低電圧で駆動可能なフルカラー表示が可能な方式としては、エレクトロクロミック方式(例えば、特許文献1参照)が知られている。エレクトロクロミック方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能であるが、フルカラーを表示しようとした場合、異なる色を3層積層する必要があり、複雑な素子構成によるコスト高が懸念され、また、平地混合によるフルカラーエレクトロクロミック素子(例えば、特許文献2参照)が知られているが、この方式では、平地混合のため黒表示のコントラストが十分でないため、単層でカラー表示と黒表示を行う方法が望まれている。
【0007】
本発明者は、これらの特許文献に開示されている技術を詳細に検討した結果、繰返し駆動させたときの反射率の安定性に課題があることが判明し、近年のユーザーの要求仕様の高まりを満たすには、さらなる改良が必要であることが判明した。
【特許文献1】特表2001−510590号公報
【特許文献2】特開2003−270670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、高いコントラストを示し、かつ繰返し駆動での反射率の変動が少ない表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.対向電極間に、電解質を有し、かつ対向電極の少なくとも一方が金属酸化物から成る多孔質層を有しており、かつ該多孔質層に金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物がともに固定化されており、かつ前記対向電極の駆動操作により、黒表示と白表示と黒以外の着色表示を行うことを特徴とする表示素子。
【0011】
2.前記多孔質層が金属酸化物粒子から構成されており、かつ該金属酸化物粒子が予め金属塩化合物とエレクトロクロミック化合物を固定化した金属酸化物粒子であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0012】
3.前記金属塩化合物が銀塩化合物であることを特徴とする前記1または2に記載の表示素子。
【0013】
4.前記エレクトロクロミック化合物が、下記一般式(A)で表される化合物であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−R4、酸素原子または硫黄原子を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。〕
5.前記金属塩化合物が、下記一般式(1)で表される化合物と金属との塩であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【0016】
一般式(1) R1−L−SM
〔式中、R1は、−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2または−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す。)を表し、Lは連結基を表し、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。〕
6.前記多孔質層に前記一般式(1)で表される化合物を固定化した後に、金属塩化合物を形成することを特徴とする前記5に記載の表示素子。
【0017】
7.前記一般式(A)で表される化合物が、−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2または−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す。)を分子内に有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の表示素子。
【0018】
8.前記電解質が、下記一般式(III)または(IV)で表される化合物を含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【0019】
【化2】

【0020】
〔式中、Lは酸素原子またはCH2を表し、R8〜R11は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
【0021】
【化3】

【0022】
〔式中、R12、R13は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
【発明の効果】
【0023】
本発明により、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、高いコントラストを示し、かつ繰返し駆動での反射率の変動が少ない表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、対向電極間に、電解質を有し、かつ対向電極の少なくとも一方が金属酸化物から成る多孔質層を有しており、かつ該多孔質層に金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物がともに固定化されていることを特徴とする表示素子を用い、金属塩化合物の酸化還元反応とエレクトロクロミック化合物の酸化還元反応が一定の部位で起こるようにすることで、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、高いコントラストを示し、かつ繰返し駆動での反射率の変動が少ない表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0026】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0027】
〔表示素子の基本構成〕
本発明の表示素子においては、表示部には、対応する1つの対向電極が設けられている。表示部に近い対向電極の1つである電極1には金属酸化物から成る多孔質層を有するITO電極等の透明電極、他方の電極2には導電性電極が設けられている。電極1には、本発明に係わる金属塩化合物とエレクトロクロミック化合物がともに固定化されており、電極1と電極2との間には、本発明に係る電解質が保持されており、さらに好ましくは、本発明に係る金属塩化合物が銀塩化合物であり、エレクトロクロミック化合物が前記一般式(A)で表される化合物であることである。対向電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、金属の溶解析出反応やエレクトロクロミック化合物のエレクトロクロミック反応が行われ、黒色、白色、黒以外の着色した状態を可逆的に切り替えることができる。
【0028】
〔金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物の固定化について〕
本発明の表示素子は、金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物がともに多孔質層に固定化されていることを特徴とする。
【0029】
本発明に係わる固定化の方法は、−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2または−Si(OR)3等の官能基を、金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物の分子内に持たせることによって、多孔質層を構成する金属酸化物表面に吸着させる方法や金属酸化物表面と化学結合させる方法、金属塩化合物やエレクトロクロミック化合物を高分子バインダーとともに適当な溶媒に溶かし、得られた液を塗布法、インクジェット法、ディップ法、スピンコート法等によって多孔質層上に配置し、必要に応じて高分子バインダー同士を熱や光架橋する方法、金属塩化合物やエレクトロクロミック化合物を適当な溶媒に溶かし、得られた液を塗布法、インクジェット法、ディップ法、スピンコート法等によって多孔質層上に配置し、金属塩化合物やエレクトロクロミック化合物が実施的に不溶な溶媒を電解質の溶媒に用いる方法等が挙げられる。
【0030】
本発明に係わる好まし固定化方法は、−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2または−Si(OR)3等の官能基を金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物の分子内に持たせることによって、多孔質層を構成する金属酸化物表面に吸着させる方法、または金属酸化物表面と化学結合させる方法である。
【0031】
本発明に係わる多孔質層の形成方法は、透明電極上に金属酸化物から成る多孔質層を形成し、得られた多孔質層に上述のいずれかの方法で金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物の両方を固定化する方法、透明電極上に金属酸化物から成る一層目の多孔質層(以下、第一多孔質層)を形成し、得られた第一多孔質層に上述のいずれかの方法で金属塩化合物もしくはエレクトロクロミック化合物のいずれか一方を固定化し、さらに第一多孔質層上に二層目の多孔質層(以下、第二多孔質層)を形成し、金属塩化合物もしくはエレクトロクロミック化合物のうち第一多孔質層に固定化されていない方の化合物を第二多孔質に固定化する方法、多孔質層を形成する前の金属酸化物微粒子に金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物を上述にいずれかの方法によって固定化し、得られた金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物が固定化された金属酸化物微粒子を用いて多孔質層を形成する方法等が挙げられる。
【0032】
〔金属酸化物から成る多孔質層〕
本発明の表示素子に用いられる、金属酸化物から成る多孔質層について以下に説明する。
【0033】
本発明でいう多孔質とは、多孔質層を配置し、対向電極間に電位差を与え、エレクトロクロミック化合物の酸化還元反応や金属の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が多孔質電極内を移動可能な貫通状態を言う。
【0034】
本発明に係る多孔質層を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛等、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
多孔質層は、上記金属酸化物の複数個の微粒子を結着または接触させることにより形成される。金属酸化物微粒子の平均粒子径は5nm〜10μmが好ましく、より好ましくは20nm〜1μmである。また、金属酸化物微粒子の比表面積は、簡易BET法で1×10-3〜1×1022/gであることが好ましく、より好ましくは1×10-2〜10m2/gである。また、金属酸化物微粒子の形状は、不定形、針状、球形等任意の形状のものが用いられる。
【0036】
金属酸化物微粒子の形成または結着法としては、公知のゾルゲル法や焼結法を採用することができ、例えば、1)Journal of the Ceramic Society of Japan,102,2,p200(1994)、2)窯業協会誌90,4,p157、3)J.of Non−Cryst.Solids,82,400(1986)等に記載の方法が挙げられる。また、気相法により作製した酸化チタンデンドリマー粒子を溶液上に分散して基体上に塗布し、溶媒を除去して多孔質電極を得る方法を用いることもできる。金属酸化物微粒子は結着させた状態が好ましい。
【0037】
〔エレクトロクロミック化合物〕
本発明の表示素子に用いられるエレクトロクロミック化合物は、電気化学的な酸化還元によって、物質の光学吸収の性質(色や光透過度)が可逆的に変化する現象(エレクトクロミズム)を示す化合物であればいかなる化合物を用いてもよい。具体的な化合物としては、「エレクトロクロミックディスプレイ」(平成3年6月28日刊、産業図書株式会社)pp27−124、「クロミック材料の開発」(2000年11月15日刊、株式会社シーエムシー)pp81−95等に記載の化合物を挙げることができる。
【0038】
〔一般式(A)で表される化合物〕
本発明の表示素子において、エレクトロクロミック化合物として好適に用いられる一般式(A)で表される化合物について説明する。
【0039】
前記一般式(A)において、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−R4、酸素原子または硫黄原子を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。
【0040】
一般式(A)において、R1、R2、R3で表される置換基の具体例としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基等)、アミド基(例えば、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルフォニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メチルスルホンアミド基、オクチルスルホンアミド基、フェニルスルホンアミド基、ナフチルスルホンアミド基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基(例えば、ホスホノエチル基、ホスホノプロピル基、ホスホノオキシエチル基)、オキザモイル基等を挙げることができる。また、これらの基はさらにこれらの基で置換されていてもよい。
【0041】
1は、置換もしくは無置換のアリール基であり、好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、さらに好ましくは置換もしくは無置換の2−ヒドロキシフェニル基または4−ヒドロキシフェニル基である。
【0042】
2及びR3として好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基であり、より好ましくは、R2及びR3のいずれか一方がフェニル基、他方がアルキル基、さらに好ましくはR2及びR3の両方がフェニル基である。
【0043】
Xとして好ましくは>N−R4である。R4として好ましくは、水素原子、アルキル基、芳香族基、複素環基、アシル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、アシル基である。
【0044】
以下に、一般式(A)で表されるエレクトロクロミック化合物の具体例を示すが、本発明ではこれらの化合物に限定されるものではない。
【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
本発明の表示素子においては、本発明に係る一般式(A)で表される化合物が、分子内に、−COOH、−P−O(OH)2、−OP=O(OH)2または−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましい。
【0060】
〔金属塩化合物〕
本発明に係る金属塩化合物は、金属酸化物から成る多孔質層に固定化されていることを特徴とし、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀、ビスマスである。
【0061】
〔銀塩化合物〕
本発明に係る表示素子は、金属塩化合物が銀塩化合物であることが好ましい。
【0062】
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0063】
〔一般式(1)で表される化合物〕
本発明に係わる金属塩化合物は、前記一般式(1)で表される化合物と金属との塩であることが好ましい。
【0064】
以下に本発明に係わる一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0065】
一般式(1)において、R1は−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2または−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す。)を表す。
【0066】
一般式(1)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Mで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH4、N(CH34、N(C494、N(CH331225、N(CH331633、N(CH33CH265等が挙げられる。
【0067】
一般式(1)において、Lは連結基を表し、連結基としては、アルキル基、フェニル基、複素環基等一般式(1)のS−MとR1を連結する基であれば如何なる基でもよいが、好ましい基は含窒素複素環であり、含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0068】
次に、一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0069】
【化18】

【0070】
【化19】

【0071】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物1−13〜1−16が好ましい。
【0072】
〔一般式(III)または一般式(IV)で表される化合物〕
本発明の表示素子においては、電解質が、前記一般式(III)または(IV)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0073】
はじめに、一般式(III)で表される化合物の詳細について説明する。
【0074】
前記一般式(III)において、Lは酸素原子またはCH2を表し、R8〜R11は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0075】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0076】
以下、一般式(III)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれらの化合物に限定されるものではない。
【0077】
【化20】

【0078】
次いで、一般式(IV)で表される化合物の詳細について説明する。
【0079】
前記一般式(IV)において、R12、R13は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0080】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0081】
以下、一般式(IV)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれらの化合物に限定されるものではない。
【0082】
【化21】

【0083】
上記例示した一般式(III)及び一般式(IV)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(III−1)、(IV−2)、(IV−3)が好ましい。
【0084】
本発明に係る一般式(III)、(IV)で表される化合物は電解質溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲でさらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0085】
さらに、本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0086】
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10〜90質量%が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
【0087】
〔基板〕
本発明の表示素子においては、基板を用いることができる。本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912号、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。さらに、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行ってもよい。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。さらに公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。さらにRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練り込んだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0088】
〔透明導電性層〕
本発明の表示素子においては、透明導電性層を有することができる。透明導電性層としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。また別の例として、導電性高分子を用いる方法が挙げられる。
【0089】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0090】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0091】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂等が単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0092】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0093】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0094】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0095】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。さらに、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0096】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、または、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0097】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0098】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kg当たりの溶解量が0〜10gである状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0099】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0100】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0101】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0102】
媒体上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0103】
本発明でいう多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
【0104】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水系化合物の硬化反応を行うことが望ましい。
【0105】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0106】
これらの硬膜剤は、水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0107】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電気絶縁層を設けることができる。
【0108】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物のような比誘電率が低い無機材料の多孔質体等が挙げられる。
【0109】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等に添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物または無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物または無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気する等して発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0110】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0111】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0112】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0113】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0114】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0115】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔電極〕
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも1種が金属電極であることが好ましい。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。金属電極は、電解質中の銀の酸化還元電位に近い仕事関数を有する金属が好ましく、中でも銀または銀含有率80%以上の銀電極が、銀の還元状態維持のために有利であり、また電極汚れ防止にも優れる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0116】
また、本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0117】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0118】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0119】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0120】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0121】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の透明状態及び着色状態の制御方法は、エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位や金属化合物の析出過電圧を基に決められることが好ましい。
【0122】
例えば、エレクトロクロミック化合物と金属化合物を対向電極間に有する表示素子の場合、酸化側で黒以外の着色状態を示し、還元側で黒色状態を示す。この場合の制御方法の一例としては、エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位より貴な電圧を印加することでエレクトロクロミック化合物を酸化し黒以外の着色状態を示し、エレクトロクロミック化合物の酸化還元電位と金属化合物の析出過電圧の間の電圧を印加することでエレクトロクロミック化合物を還元し白色状態に戻し、金属化合物の析出過電圧より卑な電圧を印加することで金属を電極上に析出させ黒色状態を示し、析出した金属の酸化電位とエレクトロクロミック化合物の酸化還元電位の間の電圧を印加することで析出した金属を溶解して消色する方法が挙げられる。
【0123】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能等のメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0124】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
実施例1
《電極の作製》
(電極1の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成し、透明電極(電極1)を得た。
【0127】
(電極2の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.1μm、ピッチ145μm、電極間隔130μmのニッケル電極を形成し、得られた電極をさらに置換金メッキ浴に浸漬し、電極表面から深さ0.05μmが金で置換された金−ニッケル電極(電極2)を得た。
【0128】
(電極3の作製)
電極1上に、厚み5μmの二酸化チタン(平均粒子径17nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)膜を形成し、電極3を得た。
【0129】
(電極4の作製)
下記インク液1を、ピエゾ方式のヘッドを有するインクジェット装置にて、120dpiで電極3上に付与し、電極4を作製した。二酸化チタン層を形成した後に金属塩化合物やエレクトロクロミック化合物を固定化する方法を製法1とする。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。
【0130】
(電極5の作製)
下記インク液2をピエゾ方式のヘッドを有するインクジェット装置にて、120dpiで電極3上に付与し、90℃で5分間加熱して溶媒を十分に蒸発させた後(電極5′)に、下記インク液3をピエゾ方式のヘッドを有するインクジェット装置にて、120dpiで電極5′上に付与し、水洗5分間とエタノール洗浄を5分間行い、電極5を得た。
【0131】
(電極6の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液4に変更した以外は同様にして、電極6を得た。
【0132】
(電極7の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液4に、インク液3をインク液5に変更した以外は同様にして、電極7を得た。
【0133】
(電極8の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液6に、インク液3をインク液5に変更した以外は同様にして、電極8を得た。
【0134】
(電極9の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液7に、インク液3をインク液5に変更した以外は同様にして、電極9を得た。
【0135】
(電極10の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液8に、インク液3をインク液5に変更した以外は同様にして、電極10を得た。
【0136】
(電極11の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液9に、インク液3をインク液5に変更した以外は同様にして、電極11を得た。
【0137】
(電極12の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液10に、インク液3をインク液5に変更した以外は同様にして、電極12を得た。
【0138】
(電極13の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液11に、インク液3をインク液5に変更した以外は同様にして、電極13を得た。
【0139】
(電極14の作製)
電極5の作製において、インク液2をインク液12に、インク液3をインク液5に変更した以外は同様にして、電極14を得た。
【0140】
(電極15の作製)
電極1上に、下記二酸化チタン液1をブレード法で塗布し、厚み5μmの膜を形成し、電極15を得た。予め金属塩化合物やエレクトロクロミック化合物を固定化した二酸化チタン粒子を用いて、二酸化チタン層を形成する方法を製法2とする。
【0141】
(電極16〜25の作製)
電極15の作製において、二酸化チタン液1を下記二酸化チタン液2〜11に変更した以外は同様にして、それぞれ電極16〜25を得た。
【0142】
《インク液の調製》
(インク液1の調製)
化合物EC−1〔ビス−(2−ホスホノエチル)−4,4′−ビピリジウムジブロミド〕を3mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液1を調製した。
【0143】
(インク液2の調製)
化合物EC−1〔ビス−(2−ホスホノエチル)−4,4′−ビピリジウムジブロミド〕を1.5mmol/L、化合物1−16を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液2を調製した。
【0144】
(インク液3の調製)
塩化ビスマスを3mmol/Lとなるように水に溶解して、インク液3を調製した。
【0145】
(インク液4の調製)
化合物A−42を1.5mmol/L、化合物1−16を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液4を調製した。
【0146】
(インク液5の調製)
硝酸銀を3mmol/Lとなるように水に溶解して、インク液5を調製した。
【0147】
(インク液6の調製)
化合物A−42を1.5mmol/L、化合物1−13を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液6を調製した。
【0148】
(インク液7の調製)
化合物A−42を1.5mmol/L、化合物1−11を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液7を調製した。
【0149】
(インク液8の調製)
化合物A−42を1.5mmol/L、化合物1−19を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液8を調製した。
【0150】
(インク液9の調製)
化合物A−113を1.5mmol/L、化合物1−16を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液9を調製した。
【0151】
(インク液10の調製)
化合物A−115を1.5mmol/L、化合物1−16を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液10を調製した。
【0152】
(インク液11の調製)
化合物A−42を1.5mmol/L、化合物1を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液11を調製した。
【0153】
(インク液12の調製)
化合物A−42を1.5mmol/L、化合物2を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して、インク液12を調製した。
【0154】
【化22】

【0155】
《二酸化チタン液の調製》
(二酸化チタン液1)
化合物EC−1〔ビス−(2−ホスホノエチル)−4,4′−ビピリジウムジブロミド〕を3mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して得られた液に二酸化チタン(平均粒子径17nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)を添加・攪拌後、遠心分離して化合物EC−1が固定化された二酸化チタン粒子1を得た。得られた二酸化チタン粒子1をN−メチルピロリドンに溶解し、二酸化チタン液1を調製した。
【0156】
(二酸化チタン液2)
化合物EC−1〔ビス−(2−ホスホノエチル)−4,4′−ビピリジウムジブロミド〕を1.5mmol/L、化合物1−16を1.5mmol/Lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して得られた液に二酸化チタン(平均粒子径17nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)を添加・攪拌後、遠心分離して化合物EC−1と化合物1−16が固定化された二酸化チタン粒子2aを得た。得られた二酸化チタン粒子2aを3mmol/l塩化ビスマス水溶液に添加・攪拌後、遠心分離して二酸化チタン粒子2bを得た。得られた二酸化チタン粒子2bをN−メチルピロリドンに溶解し、二酸化チタン液2を調製した。
【0157】
(二酸化チタン液3)
化合物A−42を1.5mmol/l、化合物1−16を1.5mmol/lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して得られた液に二酸化チタン(平均粒子径17nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)を添加・攪拌後、遠心分離して化合物A−42と化合物1−16が固定化された二酸化チタン粒子3aを得た。得られた二酸化チタン粒子3aを3mmol/l塩化ビスマス水溶液に添加・攪拌後、遠心分離して二酸化チタン粒子3bを得た。得られた二酸化チタン粒子3bをN−メチルピロリドンに溶解し、二酸化チタン液3を調製した。
【0158】
(二酸化チタン液4)
化合物A−42を1.5mmol/l、化合物1−16を1.5mmol/lとなるようにアセトニトリル/エタノールに溶解して得られた液に二酸化チタン(平均粒子径17nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)を添加・攪拌後、遠心分離して化合物A−42と化合物1−16が固定化された二酸化チタン粒子4aを得た。得られた二酸化チタン粒子4aを3mmol/l硝酸銀水溶液に添加・攪拌後、遠心分離して二酸化チタン粒子4bを得た。得られた二酸化チタン粒子4bをN−メチルピロリドンに溶解し、二酸化チタン液4を調製した。
【0159】
(二酸化チタン液5)
二酸化チタン4の作製において、化合物1−16を化合物1−13に変更した以外は同様にして、二酸化チタン液5を調製した。
【0160】
(二酸化チタン液6)
二酸化チタン4の作製において、化合物1−16を化合物1−11に変更した以外は同様にして、二酸化チタン液6を調製した。
【0161】
(二酸化チタン液7)
二酸化チタン4の作製において、化合物1−16を化合物1−19に変更した以外は同様にして、二酸化チタン液7を調製した。
【0162】
(二酸化チタン液8)
二酸化チタン4の作製において、化合物A−42を化合物A−113に変更した以外は同様にして、二酸化チタン液8を調製した。
【0163】
(二酸化チタン液9)
二酸化チタン4の作製において、化合物A−42を化合物A−115に変更した以外は同様にして、二酸化チタン液9を調製した。
【0164】
(二酸化チタン液10)
二酸化チタン4の作製において、化合物1−16を化合物1に変更した以外は同様にして、二酸化チタン液10を調製した。
【0165】
(二酸化チタン液11)
二酸化チタン4の作製において、化合物1−16を化合物2に変更した以外は同様にして、二酸化チタン液11を調製した。
【0166】
《電解質液の調製》
(電解質液1の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、テトラブチルアンモニウムパークロレート0.025gとを溶解して、電解質液1を得た。
【0167】
(電解質液2の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、塩化ビスマス0.1gと臭化リチウム0.1gとテトラブチルアンモニウムパークロレート0.025gとを溶解して、電解質液2を得た。
【0168】
(電解質液3の調製)
化合物III−4の2.5g中に、テトラブチルアンモニウムパークロレート0.025gとを溶解して、電解質液3を得た。
【0169】
《表示素子の作製》
(表示素子1の作製)
周辺部を、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした電極2の上に、ポリビニルアルコール(平均重合度3500、けん化度87%)2質量%を含むイソプロパノール溶液中に、石原産業社製二酸化チタンCR−90を20質量%添加し、超音波分散機で分散した混和液を乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、その後15℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発した後、45℃の雰囲気中で1時間乾燥した。得られた二酸化チタン層上に平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを散布した後に、電極2と電極4を貼り合わせ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解質液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0170】
(表示素子2〜26の作製)
表示素子1の作製において、電解質液と表示側電極の構成を表1に記載した構成に変更した以外は同様にして、表示素子2〜26を得た。
【0171】
《表示素子の評価》
作製した表示素子について、下記方法で繰返し駆動したときの反射率の安定性を評価した。
【0172】
(表示素子1、2の評価)
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、+1.5Vの電圧を1秒間印加して消色した後に、−0.5Vの電圧を1秒間印加して着色表示させたときの可視光領域の極大吸収波長での反射率と、さらに−1.5Vで1秒間印加してグレー表示させたときの波長550nmでの反射率を、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られた着色状態とグレーの反射率の平均値を別々に算出し、それぞれRave1、Rave2とした。さらに1万回繰返し駆動させた後に同様な方法でRave3、Rave4を求めた。RCOLOR1=|Rave1Rave3|、RBK1=|Rave2Rave4|とし、RCOLOR1とRBK1を繰返し駆動させたときの反射率の安定性の指標とした。ここでは、RCOLOR1とRBK1の値が小さいほど、繰返し駆動したときの反射率の安定性に優れることになる。
【0173】
(表示素子3〜26の評価)
〔繰返し駆動したときの反射率の安定性の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、+1.5Vの電圧を1秒間印加して着色表示させたときの可視光領域の極大吸収波長での反射率と、−1.5Vで1秒間印加してグレー表示させたときの波長550nmでの反射率を、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られた着色状態とグレーの反射率の平均値を別々に算出し、それぞれRave5、Rave6とした。さらに1万回繰返し駆動した後に同様な方法でRave7、Rave8を求めた。RCOLOR2=|Rave5Rave7|、RBK2=|Rave6Rave8|とし、RCOLOR2とRBK2を繰返し駆動したときの反射率の安定性の指標とした。ここでは、RCOLOR2とRBK2の値が小さいほど、繰返し駆動したときの反射率の安定性に優れることになる。
【0174】
評価の結果を表1に示す。
【0175】
【表1】

【0176】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の表示素子は、比較例に対し、繰返し駆動したときの反射率の安定性が改善されているのが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に、電解質を有し、かつ対向電極の少なくとも一方が金属酸化物から成る多孔質層を有しており、かつ該多孔質層に金属塩化合物及びエレクトロクロミック化合物がともに固定化されており、かつ前記対向電極の駆動操作により、黒表示と白表示と黒以外の着色表示を行うことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記多孔質層が金属酸化物粒子から構成されており、かつ該金属酸化物粒子が予め金属塩化合物とエレクトロクロミック化合物を固定化した金属酸化物粒子であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記金属塩化合物が銀塩化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記エレクトロクロミック化合物が、下記一般式(A)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【化1】

〔式中、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−R4、酸素原子または硫黄原子を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。〕
【請求項5】
前記金属塩化合物が、下記一般式(1)で表される化合物と金属との塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
一般式(1) R1−L−SM
〔式中、R1は、−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2または−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す。)を表し、Lは連結基を表し、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。〕
【請求項6】
前記多孔質層に前記一般式(1)で表される化合物を固定化した後に、金属塩化合物を形成することを特徴とする請求項5に記載の表示素子。
【請求項7】
前記一般式(A)で表される化合物が、−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2または−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す。)を分子内に有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項8】
前記電解質が、下記一般式(III)または(IV)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【化2】

〔式中、Lは酸素原子またはCH2を表し、R8〜R11は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
【化3】

〔式中、R12、R13は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕

【公開番号】特開2009−186731(P2009−186731A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26263(P2008−26263)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】