説明

表示装置、及び入力システム

【課題】表示品位を低下させることなく手書き入力を行うことができる表示装置、及び入力システムを提供する。
【解決手段】入力装置を用いて入力された手書きの筆跡を表示可能な表示装置であって、筆跡を表示する表示部と、表示部の一方面側に設けられ、入力装置における先端部の位置情報を規定する位置情報パターンを含む位置情報パターン層と、表示部と位置情報パターン層との間に設けられ、位置情報パターン層を介して入力装置における検出波長光を入力装置に向けて照明する照明層と、を備える表示装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、及び入力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパーと呼ばれる薄型軽量の装置形態を有する表示装置の実用化が進められている。外光を拡散的に反射する反射型表示方式により、バックライトを有する透過型液晶表示装置やELディスプレイなどの自発光型表示装置に比べ消費電力が少ないので電池の小型軽量化を図ることができ、表示装置の小型軽量化が可能である。
【0003】
電子ペーパー方式の表示装置の代表として、電気泳動方式の表示装置がある。加えて、電子ペーパーにおいては、入力装置を用いて手書き文字入力ができたり、表示装置を直感的に操作できるたりすることが望ましい。電子ペーパーに適した薄型軽量の入力装置としては、電子ペーパーの表示面上に、光学的に読み取り可能な位置情報パターン層を設け、ポインタに設置した撮像部によって位置情報パターンを撮像することにより、電子ペーパーの表示面における指示位置を特定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この入力方式は、表示装置に位置情報パターン層を付加するだけで入力機能を付加できるので、薄型軽量の電子ペーパーに適した入力装置である。この表示装置においては、位置情報パターン層および位置情報パターン画像に表示画像が混ざって撮像されることを防止するために位置情報パターン層と表示装置との間に赤外光反射層を設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−21168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、誘電体多層膜から構成された赤外光反射層によって可視光の透過率が低下してしまい、表示装置への入射光と表示装置からの反射光が共に弱まることで特に反射型の表示装置においては表示品位が大きく低下するといった問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、表示品位を低下させることなく手書き入力を行うことができる表示装置、及び入力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の表示装置は、入力装置を用いて入力された手書きの筆跡を表示可能な表示装置であって、前記筆跡を表示する表示部と、前記表示部の一方面側に設けられ、前記入力装置における先端部の位置情報を規定する位置情報パターンを含む位置情報パターン層と、前記表示部と前記位置情報パターン層との間に設けられ、前記位置情報パターン層を介して前記入力装置における検出波長光を該入力装置に向けて照明する照明層と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の表示装置によれば、位置情報パターン層を介して検出光を入力装置に向けて照明する照明層を備えるので、入力装置側に検出波長光を照明する照明を設ける必要が無い。よって、例えば検出波長光として赤外光を用いた場合、位置情報パターン層の下層に赤外線反射層を設ける必要が無いので、表示部における可視光の透過率の低下が防止されることで良好な表示品位を備えたものとなる。したがって、表示品位を低下させること無く入力装置で入力された筆跡情報を表示可能な表示装置を提供できる。
【0010】
また、上記表示装置においては、前記照明層は、赤外光を照射するのが好ましい。
この構成によれば、入力装置側に向けて検出波長光として赤外光を照明することができる。また、赤外光はユーザーに視認されることが無いので、表示部の視認性が低下するといった不具合の発生を防止できる。
【0011】
また、上記表示装置においては、前記照明層は、前記赤外光とともに可視光を照射するのが好ましい。
この構成によれば、照明層が照射した可視光によって表示部を照らすことができる。よって、照明層はフロントライトとして機能し、表示部における視認性を向上させることができる。
【0012】
また、上記表示装置においては、前記照明層は、導光板と光源とから構成されるのが好ましい。
この構成によれば、導光板が光源の光を導光することで検出波長光を入力装置に向けて良好に照射することができる。
【0013】
また、上記表示装置においては、前記光源は、前記導光板の端面に設けられているのが好ましい。
この構成によれば、表示部と平面的に重ならない位置に光源を設けることができるので、表示部の視認性を低下させるといった不具合の発生を防止できる。
【0014】
また、上記表示装置においては、前記照明層は、間欠的に光を照明するのが好ましい。
この構成によれば、照明層が間欠的に光を照明するので、消費電力を抑えることができる。また、例えば照明層の照明するタイミングを入力装置が検出光を検出するタイミングに同期させることで照明層の照明時間が最小限に抑えられて消費電力をより抑えることができる。
【0015】
本発明の入力システムは、上記表示装置と、手書きによる筆跡に関する情報を入力する入力装置と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の入力システムによれば、上記表示装置を備えるので、入力装置として検出波長光を照明するための照明を不要にした構成を実現できる。よって、入力装置は照明を備えないことから小型且つ軽量なものとなるため、手書き入力時の操作性に優れたものとなる。
【0017】
また、上記入力システムにおいては、前記入力装置は、前記照明層が照明する前記位置情報パターン層を介した光を撮像する撮像部を有し、前記入力装置及び前記表示装置は、前記照明層による照明のタイミングと前記撮像部による撮像のタイミングとを同期させるのが好ましい。
このように照明層の照明するタイミングを入力装置が検出光を検出するタイミングに同期させることで照明層の照明時間が最小限に抑えられることとなり、結果的にシステム全体での消費電力を抑えることができる。
【0018】
また、上記入力システムにおいては、前記撮像部におけるパターン識別閾値が前記表示部の白表示の際に前記位置情報パターン層における前記位置情報パターンが形成されたパターン形成領域を透過する前記検出波長光の光量よりも大きく、且つ前記表示部の黒表示時の際に前記位置情報パターン層におけるパターン非形成領域を透過する前記検出波長光の光量よりも小さくなるように前記照明層の照明光の強度を調整する照明制御部を備えるのが好ましい。
この構成によれば、照明制御部によって照明層の照明光の強度が良好に調整されるので、撮像部が撮像した検出波長光から位置情報パターンによる画像を良好に抽出することができる。よって、入力装置の先端部における位置情報を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電子ペーパーシステムの概略構成を示す図。
【図2】電子ペーパーシステムの電気的な構成を具体的に示すブロック図。
【図3】表示部を構成する電気泳動装置の概略構成を示す図。
【図4】撮像部のパターン判別時の閾値と撮像部の撮像光量との関係を示す図。
【図5】第1の光源の照明タイミングと撮像部の撮像タイミングとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の入力装置、入力システム、及び電子機器に係る一実施例について説明する。図1は本発明の入力装置を含む入力システムに係る構成を示す図である。図1は、入力システムの一例としての電子ペーパーシステムの概略構成を示すものである。
【0021】
電子ペーパーシステム1は、図1に示すように筐体部2と、該筐体部2に設けられた開口部2aに配置される表示装置3と、表示装置3に所定情報を入力する入力装置4と、を備えている。電子ペーパーシステム1は、後述のように入力装置4を用いてユーザーが表示装置3に対して手書きによる筆跡を入力すると、該筆跡に対応した画像が表示装置3に表示されるものである。
【0022】
図2は電子ペーパーシステム1の電気的な構成を具体的に示すブロック図である。図2に示すように表示装置3は、表示体モジュール30と、表示体駆動制御部31と、表示装置制御部32と、表示装置無線通信部33と、を備えている。表示体モジュール30は、位置情報パターン層34と、電気泳動表示装置から構成される表示部35と、該位置情報パターン層34及び表示部35間に設けられる照明層40と、を含んでいる。
【0023】
表示体モジュール30は図2に示すように、表示部35の上面に照明層40及び位置情報パターン層34がこの順に積層して形成される。位置情報パターン層34は、表示部35の表示光を透過するように可視光を略透過する性質を有するべく、シートもしくは板状の透明樹脂を基材として構成されており、かつ、所定の情報図形を描画するとともに少なくとも近赤外光を概ね吸収可能であって可視光の透過性が高い位置情報パターン34a(図3参照)が略全面に形成されたものである。ここで、赤外光を概ね吸収可能とは、赤外光の透過率が低いことを意味しており、位置情報パターン層34内における位置情報パターン34aの形成領域に対して位置情報パターン34aの非形成領域が赤外光の透過率が相対的に大きいことを意味している。
【0024】
位置情報パターン34aは近赤外線吸収染料を含む可視光透過性の高いインキを印刷して形成される。また、位置情報パターン34aは、ドットコード等による位置情報パターン(位置情報を符号化したパターン)となっており、位置情報パターン34aを検出することで、位置情報パターン34aが設けられた表示部35の表面上における位置を一意に規定できるようになっている。このような手法としては、例えば、特開2006−277492号公報や特開2006−127081号公報を例示することができる。
【0025】
照明層40は、位置情報パターン層34及び表示部35間に挟持された導光板45と、該導光板45の端面に設けられた光源48とを有している。このように光源48を導光板45の端面に設けることで表示部35と光源48とが平面的に重ならないので、表示部35の視認性を低下させるといった不具合の発生を防止することができる。
【0026】
光源48は第1の光源46及び第2の光源47を含んでいる。第1の光源46は入力装置4における上記位置情報パターン層34の検出波長、つまり撮像部51の撮像波長の光を発光する光源である。具体的に、第1の光源46は、例えば近赤外線を発光するLEDにより構成される。このように検出波長としての近赤外光はユーザーに視認されることがないので、表示部35の視認性を低下させるといった問題を生じることが防止されている。
【0027】
また、第2の光源47はLEDもしくは電球から構成され、可視光線を照射するものである。第1の光源46及び第2の光源47から出射された光は、それぞれ導光板45内を伝播し、導光板45の上面に出射され、位置情報パターン層34を下面側から照明するようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では、これら第1の光源46及び第2の光源47が導光板45の端面における同一面に設けられているが、異なる端面にそれぞれ設けられていても構わない。なお、赤外線及び可視光線のいずれを含んだ光を照射可能な光源を1個のみ用いる構成を採用しても構わない。
【0029】
導光板45としては、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等の透明性に優れた樹脂を所定の形状に加工したものを用いることができる。なかでもアクリル樹脂を用いるのが軽量性、透明性の点で好ましい。
【0030】
表示装置制御部32は、表示装置3における全体の駆動を制御するためのものであって、上記光源48の点灯動作の駆動を制御する照明制御部36を含んでいる。そして、表示装置制御部32は表示体駆動制御部31を介して表示部35の表示状態を制御可能となっている。照明制御部36は、第1の光源46及び第2の光源47の駆動タイミングを後述のように制御している。
【0031】
このような構成に基づいて、照明層40は導光板45の端面に設けられた第1の光源46及び第2の光源47をそれぞれ発光させることで該導光板45の上面側に設けられた位置情報パターン層34側に光を出射できるようになっている。
【0032】
第1の光源46から照明されて位置情報パターン34aを介した光は、後述のように入力装置4によって撮像されるようになっている。また、第2の光源47から照明された可視光は、表示部35の全面を均一に照らすことで表示部35の視認性を向上させることができる。すなわち、第2の光源47は表示部35におけるフロントライトとしての機能を有する。
【0033】
入力装置4は、位置検出部41と、入力装置無線通信部42とを備え、ユーザーによる表示装置3に対して手書き入力等の入力操作を検出するためのものである。入力装置4は、タッチペンやスタイラスと同様、ユーザーが手で把持することで使用される態様とされている。すなわち、入力装置4は表示装置3と物理的に分離した形態とされている。
【0034】
入力装置4の位置検出部41は、撮像部51と、画像処理部52と、位置情報検出部53と、を備えている。本実施形態に係る入力装置4は、従来の一般的な位置情報パターンを検出する方式の入力装置と異なり、位置検出部が照明部を含まない構成となっている。そのため、入力装置4は小型、且つ軽量なものとなっており、ユーザーが手で把持した際に良好な操作性を得ることができるようになっている。
【0035】
入力装置4が表示体モジュール30の表示部35に触れている位置の検出には、表示部35上に形成された位置情報パターン層34を介した赤外光を光学的に読み取る位置検出方式を採用している。具体的に入力装置4は、ユーザーに把持された状態で先端部が表示体モジュール30の表示部35の表面を指示した状態で、撮像部51が表示装置3の照明層40の第1の光源46が照明する光を撮像するようになっている。
【0036】
撮像部51は、入力装置4の略先端に配置される撮像素子(CCD)により構成される。撮像部51は、位置情報パターン層34の所定の領域を撮像して電気信号に変換し、変換した電気信号を画像処理部52へと送信する。なお、撮像部51に光が入射する入射口付近には、撮像素子の撮像面に表示面の像を形成するための撮像光学系(不図示)が設けられ、赤外光の波長帯域の光のみを透過するフィルタ部材が設けられている。これにより、撮像部51は位置情報パターン34aによる画像を高いS/N比で撮像することができるようになっている。
【0037】
このように位置情報パターン層34を光学的に読み取る位置検出方式は、入力装置4と表示装置3とを分離することで、表示装置3の構成要素部品を減らし、軽量、薄型化することができるため、電子ペーパーシステム1に適した表示装置3の形態を実現することができる。
【0038】
具体的に本実施形態では、入力装置4が位置情報パターン層34(描画パターン)を介した赤外光を撮像部51が撮像することで光学的に読み取る検出方式を採用している。入力装置4は撮像部51で撮像した画像情報を処理することで後述のように該入力装置4の先端部における表示部35の上面での位置を検出可能となっている。
【0039】
画像処理部52は、撮像部51から送られる電気信号が示す画像をデジタル処理することで位置情報パターン層34における位置情報パターン34aの成分を抽出して、位置情報検出部53に送るためのものである。位置情報検出部53は、位置情報パターン34aの配置の特徴から上述の手法を用いることで位置情報を取得できるようになっている。
【0040】
また、位置検出部41は位置情報検出部53が取得した位置情報を入力装置無線通信部42に送信するようになっている。入力装置無線通信部42は受信した位置情報を表示装置3側へと無線方式により送信可能となっている。
【0041】
図3は表示部35を構成する電気泳動装置の概略構成を示す図である。図3に示すように、表示部35は、画素電極23、及び透明電極24からなる1対の電極間に設けられたマイクロカプセル65と、このマイクロカプセル65を前記電極23,24間に固定するバインダ層61と、を備えている。マイクロカプセル65は、液相分散媒26と電気泳動粒子25とを含む電気泳動分散液60を収容している。
【0042】
本実施形態においては、電気泳動装置が電気泳動分散液60をマイクロカプセル65化することにより、その取り扱いが容易になり、製造工程を簡略化することが出来るほか、電気泳動粒子25の偏在による表示の不均一性を防止するようになっている。
【0043】
液相分散媒26としては、比較的高い絶縁性を有する有機溶媒を用いることができる。この有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、シリコン系オイル、フッ素系オイル、オリーブ油等の種々の鉱物油および植物油類、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。
【0044】
前記電気泳動粒子25としては、有機または無機の顔料粒子、または、これらを含む複合体を用いることができる。本実施形態では、電気泳動粒子25として白色及び黒色の表示を可能とする二種類の粒子を用いた。
【0045】
上記画素電極23は第1基板11上に形成され、透明電極24は第2基板12上に形成されている。すなわち、第1基板11と第2基板12とは、互いに対向していて、マイクロカプセル65、バインダ層61、画素電極23、及び透明電極24を挟持している。
【0046】
第1基板11としては、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する第1基板11を用いることにより、可撓性を備えた表示部35となる。これにより、可撓性を有する電子ペーパーシステム1を構築する上で有用な電気泳動装置を得ることができる。また、第1基板11は、絶縁材料で構成されたものあり、このような絶縁材料としては、例えばポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
第1基板11の一方の内面(図2中、上側の面)には、複数の画素電極23が設けられている。各画素電極23は、マイクロカプセル65中の電気泳動分散液60に電圧を印加する一方の電極として機能するものである。画素電極23の構成材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、銅、モリブデン、チタン、タンタル等の金属、または、これらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
一方、第1基板11に対向して設けられる第2基板12の下面(図2中、下側の面)には、上記透明電極24が配置されている。第2基板12は、前記第1基板11と同様にして、可撓性を有するのが好ましく、その構成材料としては、例えば、各種セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
第2基板12、及び透明電極24は、いずれも光透過性を有するもの、好ましくは実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)なものとされる。これにより、後述のように電気泳動分散液60中における電気泳動粒子25の状態を、すなわち、表示部35が表示する情報を、目視により容易に認識することが可能となる。
【0050】
透明電極24の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープした酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(IO)、酸化スズ(SnO)のような導電性金属酸化物の他、ポリアセチレンのような導電性樹脂、導電性金属微粒子を含有する導電性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前述した画素電極23も、このような材料を用いて構成することができる。
【0051】
前記バインダ層61を構成するバインダ材料としては、例えばポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレン、ABS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリレート、グラフト化ポリフィニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の高分子、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化エチレンプロピレン、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム等の珪素樹脂、その他として、メタクリル酸−スチレン共重合体、ポリブチレン、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
このような構成に基づき、表示部35はマイクロカプセル65中の電気泳動分散液60に、前記電極23,24により電圧を印加することで、電気泳動粒子25の分布状態を変化させることにより表示手段として機能するようになっている。具体的に本実施形態では、黒色及び白色の電気泳動粒子25を第1基板11及び第2基板12側にそれぞれ移動させることでマイクロカプセル65内における電気泳動粒子25の分布状態を変化させることで画素毎に黒色又は白色表示ができるようになっている。
【0053】
ところで、照明層40の第1の光源46が照射した赤外光は表示部35によっても反射されるため、撮像部51が撮像する画像には位置情報パターン層34に加え、表示部35による赤外光の反射光が含まれるおそれがある。
【0054】
具体的に、本実施形態に係る表示部35を構成する電気泳動表示装置は、上述のように電気泳動粒子25として白粒子及び黒粒子を含み、白黒表示が可能に構成されている。一般に白粒子はチタニア等の光反射波長範囲の広い材料で構成されているため、可視光のみならず、位置情報パターン34aの検出波長域である近赤外線光も反射してしまう。また、表示部35の反射光は導光板45及び位置情報パターン層34を透過して撮像部51に入射する。このように撮像部51の撮像素子が検出する撮像光量は表示部35の表示状態によって変動し、位置情報パターン34aの成分を抽出する際にノイズとなるといった問題がある。
【0055】
これに対し、本実施形態に係る表示装置3においては、上述のように位置情報パターン層34及び表示部35間に照明層40を設けることで、位置情報パターン層34における位置情報パターン34aが形成されたパターン形成領域と位置情報パターン層34における位置情報パターン34aが形成されないパターン非形成領域との光量差を大きくするようにしている。これにより、撮像部51における撮像光量の判定、つまり撮像画像の輝度について判定することで位置情報パターン34aの成分を良好に抽出できるようになっている。
【0056】
図4は、撮像部51が撮像光量の判定を行うことでパターン判別を行う際の閾値と、撮像部51における撮像光量との関係を示す図である。なお、図4において、Sは照明層40(第1の光源46)の光量を示し、S1wは表示部35が白表示の場合に照明層40から照射されて該表示部35で反射される赤外光の光量を示し、S1bは表示部35が黒表示の場合に照明層40から照射されて該表示部35で反射される赤外光の光量を示すものである。
【0057】
図4に示すように、表示部35の表示画像が白の部分では、位置情報パターン層34におけるパターン非形成領域の光量が表示部35からの反射光量S1wと導光板45による第1の光源46の照明光量Sとの合計値(S+S1w)で規定され、位置情報パターン43aの近赤外光の透過率をkとした場合にパターン形成領域の光量がk(S+S1w)で規定される。
【0058】
また、表示部35の表示画像が黒の部分では、位置情報パターン層34におけるパターン非形成領域の光量が表示部35からの反射光量S1bと導光板45による第1の光源46の照明光量Sとの合計値(S+S1b)で規定され、位置情報パターン43aの近赤外光の透過率をkとした場合にパターン形成領域の光量がk(S+S1b)で規定される。
【0059】
本実施形態では、表示装置3における照明制御部36が、撮像部51のパターン判別閾値Sthと照明光量Sとが下式(1)の条件を満たすように第1の光源46の照明光の強度を調整するようにしている。
k(S+S1w)<パターン判別閾値Sth<S+S1b 式(1)
【0060】
この式(1)における下限は、照明制御部36がパターン判別時にノイズとして撮像するおそれのあるパターン形成領域を透過する最大光量よりも閾値を高く設定することでパターン形成領域を透過する光量を検出しないことを意味する。また、式(1)における上限は、照明制御部36がパターン判別時に撮像するパターン非形成領域を透過する最低光量よりも閾値を低く設定することでパターン非形成領域を透過する光量を確実に検出できることを意味する。
【0061】
本実施形態では、位置情報パターン層34及び表示部35間に赤外光を照射する第1の光源46を含む照明層40を設けることで位置情報パターン層34におけるパターン形成部及びパターン非形成部との間での光量差を大きくし、且つ上記条件を満たすように照明光量Sが調整されるので、表示部35の表示状態(黒表示或いは白表示)によらず、撮像部51が撮像した画像から位置情報パターン43aの成分を良好に抽出可能となっている。
【0062】
また、本実施形態では、照明制御部36が第1の光源46を間欠的に駆動させるようにしている。これにより、照明層40における消費電力を抑えるようにしている。具体的に照明制御部36は、第1の光源46による照明のタイミングと撮像部51による撮像のタイミングとを同期させるようにしている。
【0063】
図5は第1の光源46の照明タイミングと撮像部51の撮像タイミングとの関係を示す図である。なお、図5において符号Tは撮像部51における撮像フレーム周期を示し、符号T1は撮像部51の撮像タイミングを示し、符号T2は第1の光源46の照明タイミングを示すものである。ここで、撮像部51の撮像時間T1はできるだけ短く設定するのが望ましい。これは、撮像時間T1が長くなると入力装置4の動きに起因して撮像画像にボケが生じ、撮像画像の精度が低下するためである。
【0064】
そこで、本実施形態は、図5に示す撮像時間T1を例えば100マイクロ秒以下の短い時間に設定している。なお、第1の光源46の照明時間T2は撮像部51の撮像時間T1よりも短くするのが望ましく、これによれば照明層40の消費電力を抑えることができる。本実施形態では、例えば、撮像部51の撮像フレーム周期Tを10ミリ秒、第1の光源46の照明時間を50マイクロ秒とすることで、第1の光源46を照明するDUTYが二百分の一となり、第1の光源46を常時点灯させる場合に比べて大幅に消費電力を削減することを実現するようにしている。
【0065】
一方、照明制御部36は第2の光源47については表示部35の駆動時において常時点灯させるようにしている。第2の光源47は表示部35におけるフロントライトとして機能するからである。表示装置3は第2の光源47から照明された可視光によって表示部35の全面が均一に照らされるので、良好な視認性を備えたものとなっている。
【0066】
入力装置4は、表示体モジュール30の表示面(表示部35)に接触した位置に関する情報(例えば座標)を位置情報パターン層34に基づいて検出し、検出した位置座標情報を入力装置無線通信部42から表示装置無線通信部33を介して表示装置制御部32に出力することができる。一方、表示装置3は、表示装置制御部32が位置検出部41で検出された位置座標情報に基づき表示体駆動制御部31を介し表示部35の表示状態を制御することができる。
【0067】
以上のように本実施形態に係る電子ペーパーシステム1においては、入力装置4が表示体モジュール30に接触しながら移動した際の軌跡を表示部35に表示することができ、手書き入力の様子等を表示部35に随時表示できるようになっている。
【0068】
続いて、本実施形態の電子ペーパーシステム1の動作について説明する。なお、本説明では、本発明の特徴である入力装置4を用いて表示部35に手書き入力を行う動作を中心に説明する。
【0069】
入力装置4は、例えば電源がON状態とされることで撮像部51が撮像可能な状態とされると入力装置無線通信部42から表示装置無線通信部33を介して、表示装置制御部32へと信号が送信される。表示装置制御部32は信号を受信すると照明制御部36を介して照明層40(第1の光源46)における駆動を制御可能状態へと移行する。
【0070】
ユーザーが把持した入力装置4を表示部35上で移動すると表示部35の上面に設けられた照明層40の第1の光源46から近赤外光が位置情報パターン層34に対して照射される。このとき、第1の光源46から照射される赤外光は、上述のように位置情報パターン層34におけるパターン形成領域とパターン非形成領域との光量差を大きくすることができるので、表示部35の表示状態(黒表示或いは白表示)によらず、撮像部51が撮像した画像から位置情報パターン34aの成分を良好に撮像できる。
【0071】
撮像部51は撮像した画像を画像処理部52へと送信する。このとき、撮像部51は撮像が終了した旨の信号を入力装置無線通信部42を介して表示装置3側へと送信する。表示装置3側では、表示装置無線通信部33を介して、上記信号が表示装置制御部32の照明制御部36へと送信される。このとき、照明制御部36は第1の光源46を消灯する。このように本実施形態では、照明制御部36が第1の光源46による照明のタイミングと撮像部51による撮像のタイミングとを同期させることで照明層40における省消費電力化を実現できる。
【0072】
画像処理部52は、撮像部51から送られる電気信号が示す画像をデジタル処理することで位置情報パターン34aが示す描画パターンを抽出し、抽出した結果を位置情報検出部53へと送信する。位置情報検出部53は、描画パターンの配置の特徴から符号列を抽出し、この符号列を復号して位置情報を取得する。
【0073】
すなわち、入力装置4は、表示部35において該入力装置4の先端部が接触した位置に関する情報(例えば座標)を検出することができる。そして、入力装置4は検出した位置座標情報を入力装置無線通信部42から表示装置無線通信部33を介して、表示装置制御部32へと出力することができる。
【0074】
位置検出部41は、位置情報検出部53が取得した位置情報を入力装置無線通信部42に送信する。入力装置無線通信部42は受信した位置情報を表示装置3の表示装置無線通信部33へと無線方式によって送信する。このように本実施形態では、無線方式により表示装置3側に入力装置4による位置座標情報を出力できるので、入力装置4と表示装置3とを配線で接続する必要が無い。よって、表示装置3に手書き入力を行う際に配線が絡まるといった不具合の発生が防止され、高い操作性を得ることができる。
【0075】
表示装置3は表示装置無線通信部33を介して、入力装置4から取得した位置情報を表示装置制御部32に出力する。表示装置制御部32は位置検出部41で検出された位置座標情報に基づき表示体駆動制御部31を介して表示部35の表示状態を制御する。
【0076】
具体的に、表示体駆動制御部31は、表示部35のうち、取得した位置座標情報に対応する画素電極23及び透明電極24間に印加する電圧を制御し、マイクロカプセル65内の電気泳動粒子25を移動させることで、ユーザーが入力装置4を用いて入力した手書きによる筆跡を表示部35上に表示することができる。
【0077】
以上述べたように、本実施形態に係る電子ペーパーシステム1によれば、表示装置3が照明層40を備えるので、入力装置4側に検出波長光を照明する光源を設ける必要を無くすことができる。よって、検出波長光として赤外光を用いる場合に、表示部35と位置情報パターン層34との間に赤外線反射層を設ける必要が無いので、表示部35における可視光の透過率の低下が防止されることで良好な表示品位を備えたものとなる。したがって、表示品位を低下させること無く入力装置4で入力された筆跡情報を表示可能な電子ペーパーシステム1を提供できる。
【0078】
また、上記実施形態では、第1の光源46の照明タイミングを撮像部51の撮像タイミングと同期させることで照明層40の消費電力が抑えられるので、例えば表示装置3を駆動するためのバッテリーを小型化できる。これにより、表示装置3が小型化するので該表示装置3を備えた電子ペーパーシステム1自体も小型且つ軽量なものとなる。
また、上記実施形態では、第2の光源47がフロントライトとして常時点灯するため、表示部35の全面が可視光によって均一に照らされて良好な視認性を得ることができる。
【0079】
なお、上記実施形態では、表示装置3の表示部35として電気泳動表示装置を備える場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、表示部35としては有機エレクトロルミネッセンス装置又は液晶表示装置を用いても構わない。
【符号の説明】
【0080】
1…電子ペーパーシステム、3…表示装置、4…入力装置、34…位置情報パターン層、34a…位置情報パターン、35…表示部、36…照明制御部、40…照明層、45…導光板、48…光源、51…撮像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力装置を用いて入力された手書きの筆跡を表示可能な表示装置であって、
前記筆跡を表示する表示部と、
前記表示部の一方面側に設けられ、前記入力装置における先端部の位置情報を規定する位置情報パターンを含む位置情報パターン層と、
前記表示部と前記位置情報パターン層との間に設けられ、前記位置情報パターン層を介して前記入力装置における検出波長光を該入力装置に向けて照明する照明層と、を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記照明層は、赤外光を照射することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記照明層は、前記赤外光とともに可視光を照射することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記照明層は、導光板と光源とから構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記光源は、前記導光板の端面に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記照明層は、間欠的に光を照明することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の表示装置と、
手書きによる筆跡に関する情報を入力する入力装置と、を備えることを特徴とする入力システム。
【請求項8】
前記入力装置は、前記照明層が照明する前記位置情報パターン層を介した光を撮像する撮像部を有し、
前記入力装置及び前記表示装置は、前記照明層による照明のタイミングと前記撮像部による撮像のタイミングとを同期させることを特徴とする請求項7に記載の入力システム。
【請求項9】
前記撮像部におけるパターン識別閾値が前記表示部の白表示の際に前記位置情報パターン層における前記位置情報パターンが形成されたパターン形成領域を透過する前記検出波長光の光量よりも大きく、且つ前記表示部の黒表示時の際に前記位置情報パターン層におけるパターン非形成領域を透過する前記検出波長光の光量よりも小さくなるように前記照明層の照明光の強度を調整する照明制御部を備えることを特徴とする請求項8に記載の入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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