説明

表示装置、表示方法、プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】年齢層の異なる複数の観察者が存在する場合でも、観察者の年齢および視聴条件に応じて、総合的に最も適切と考えられる表示輝度の制御を行うことができる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置100は、画面照度検出部5と平均輝度レベル演算部9と輝度制御部6とを備え、輝度制御部6は、水平観視画角と画面照度と平均輝度レベルと観察者毎の年齢層とから観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定する好適最大表示輝度決定部21と、各好適最大表示輝度を、観察者の年齢層毎の人数の割合に対応付けられた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出する加重平均輝度演算部22とを備え、加重平均輝度になるように表示画面の最大表示輝度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画面における表示輝度を制御する輝度制御部を備えた表示装置、並びに、表示装置の表示画面における表示輝度を制御する表示方法、プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ等の表示装置において、適切な表示輝度の制御は、低消費電力化および視覚疲労の防止の両面において重要である。
【0003】
表示装置における表示輝度は、従来、例えば周囲の明るさ、映像内容等によって、様々な制御が行われている。
【0004】
しかしながら、上記制御は、観察者の年齢に対する視機能の変化等、観察者の年齢による視覚特性を十分に考慮して制御されているとは言えない。適切な表示輝度は、観察者の年齢によっても大きく変化する。
【0005】
一般的に、液晶テレビの表示輝度は高めに設定されていることが多い。過剰な表示輝度は視覚への負担をもたらすと同時に、エネルギーの浪費にも繋がる。
【0006】
このため、超高齢化社会の進行に伴って、観察者の年齢に応じた表示輝度制御、特に高齢者に適切な表示輝度制御を行うことは、今後ますます重要になる。
【0007】
なお、これまでにも、観察者の年齢に応じた輝度制御を行う表示装置に関する先行特許や製品は存在している。
【0008】
例えば特許文献1には、表示画面近傍の照度と、観察者の情報として観察者の年齢あるいは視力と、表示画面と観察者との間の視距離とから算出した、観察者が眩しいと感じ始める表示画面の輝度に基づいて表示画面の最大輝度を決定することで、環境の明るさおよび観察者の年齢層に応じた明るさで画像を表示することが開示されている。
【0009】
特許文献1によれば、観察者が眩しいと感じ始める表示画面の輝度Lwは、次式
Lw=k×Laα
で示される。
【0010】
ここで、kは、表示画面と観視者との間の視距離から求められる視角に関係する輝度調整定数であり、Laは、画面照度から演算される平均的な背景輝度であり、αは、年齢と視角とに関係する定数である。
【0011】
特許文献1では、この視覚定数αの値を、若年者と高齢者とに分けてそれぞれ好適な範囲を設定し、一般的には、それぞれの中間値を用いることを開示しているとともに、この視覚定数αを固定値にすることで、視覚定数演算部を簡略化あるいは削除することができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−279405号公報(2007年10月25日公開)
【特許文献2】特開平6−168317号公報(1994年6月14日公開)
【特許文献3】特開2000−152109号公報(2000年5月30日公開)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】映像情報メディア学会誌 vol.64,No.6,pp881−890(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に示すように、これまでに知られている、観察者の年齢に対する従来の表示輝度の制御は、「若年者」および「高齢者」、あるいは、「若年者」および「高齢者」に加えて「標準」という分け方での制御であった。
【0015】
また、これまでに知られている、観察者の年齢に応じた輝度制御を行う表示装置に関する先行特許や製品は、何れも1名の観察者を想定した輝度制御であり、年齢の大きく異なる複数名の観察者に対する適切な輝度制御については、考慮されていなかった。
【0016】
高齢者は若年者よりも高い輝度を必要とする。このため、例えば、若年者と高齢者とが同時にテレビを視聴(観察)しているとき、高齢者向けの輝度制御を行っている場合に若年者が表示を視ると、眩しいと感じ易く、その分の消費電力を無駄にしている。逆に、若年者向けの輝度制御を行っている場合、高齢者は、画面が暗いと感じ易い。
【0017】
しかも、特許文献1に記載の技術は、観察者が眩しいと感じ始める輝度の測定データを基に輝度制御を行っているため、最適な表示輝度よりも高めの表示輝度となり、その分消費電力も多くなる。
【0018】
そこで、例えば、年齢層の異なる複数の観察者がテレビを視聴する際には「標準」の設定とし、どの様な視聴者(観察者)の年齢・視聴条件に対しても一律で中間的な輝度での制御を行うという方法が考えられる。
【0019】
しかしながら、加齢に伴い変化する視覚特性は、視聴環境・条件によって変化の度合いが異なる。すなわち、ある視聴環境下(周囲の明るさ等)では、若年者と高齢者とで適切な輝度に大きな差はないが、別の視聴環境下では、大きな差が生じる等ということが起こり得る。
【0020】
したがって、これらの条件を加味し、きめ細かな輝度制御を行うことが、低消費電力化にも繋がる。
【0021】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、年齢層の異なる複数の観察者が存在する場合でも、観察者の年齢および視聴条件に応じて、総合的に最も適切と考えられる表示輝度の制御を行うことができる表示装置、輝度制御方法、プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明にかかる表示装置は、上記の課題を解決するために、
表示部と、
上記表示部の表示画面の画面照度を検出する画面照度検出部と、
上記表示画面に表示される映像の映像ソースである映像信号から平均輝度レベルを算出する平均輝度レベル演算部と、
上記表示画面の表示輝度を制御する輝度制御部とを備え、
上記輝度制御部は、
水平観視画角と、上記画面照度と、上記平均輝度レベルと、上記表示画面の観察者毎の年齢層とをパラメータとして、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定する好適最大表示輝度決定部と、
上記好適最大表示輝度決定部で決定された、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数の割合に対応付けられた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出する加重平均輝度演算部とを備え、
上記加重平均輝度になるように上記表示画面の最大表示輝度を制御することを特徴としている。
【0023】
また、本発明にかかる表示方法は、上記の課題を解決するために、
表示装置の表示画面に表示される映像の映像ソースである映像信号から平均輝度レベルを算出する平均輝度レベル演算ステップと、
水平観視画角と、上記表示画面の画面照度と、上記平均輝度レベルと、上記表示画面の観察者毎の年齢層とをパラメータとして、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定する好適最大表示輝度決定ステップと、
上記好適最大表示輝度決定ステップで決定された、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数の割合に対応付けられた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出する加重平均輝度演算ステップと、
上記加重平均輝度演算ステップで算出した加重平均輝度になるように上記表示画面の最大表示輝度を制御する輝度制御ステップとを含むことを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、このように、年齢の異なる複数名で表示装置の表示画面を観察する場合に、観察者の年齢層を的確に把握し、各年齢層の観察者の人数を考慮して輝度を平均化することで、観察者全体として輝度に対する不満が最も少なくなるような輝度に制御することができる。
【0025】
また、本発明によれば、上記したように各年齢層の観察者の人数を考慮して輝度を平均化しているので、現状多くの液晶テレビで行われているように、何れかの年齢層にのみ対応するように輝度を調整していた場合と比べて、低い輝度で表示できる場合が多い。
【0026】
また、本発明では、上記したように、表示輝度に影響を及ぼす、主要な3つのパラメータ(画面照度、平均輝度レベル、水平観視画角)を用いて年齢層毎の好適最大表示輝度を決定している。本発明によれば、このように、好適表示輝度に大きな影響を及ぼす平均輝度レベルも考慮した輝度制御を行うため、より正確な輝度制御が可能となる。
【0027】
本発明によれば、上記したように、複数名が同時に表示画面を観察する場合でも、総合的に最も適切と考えられる輝度制御を行うため、表示の眩しさや暗さに関する不満を低減することができる。
【0028】
また、上記表示装置は、水平観視画角に応じて、上記表示画面の観察者の年齢層毎に設けられた、上記画面照度と平均輝度レベルとの関係を示すルックアップテーブルを記憶したルックアップテーブル記憶部をさらに備え、上記好適最大表示輝度決定部は、水平観視画角と、上記画面照度と、上記平均輝度レベルとから、上記ルックアップテーブル記憶部に記憶されたルックアップテーブルを参照して、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定することが好ましい。
【0029】
上記したようにルックアップテーブルを用いて上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定することで、安価な構成とすることができ、かつ短時間での処理が可能となる。
【0030】
また、上記水平観視画角は、固定パラメータであり、予め設定された値に固定されていることが好ましい。
【0031】
好適表示輝度に影響を与えるパラメータは、画面照度、平均輝度レベル、水平観視画角の3つである。しかしながら、このうち、水平観視画角を求めるためには、表示装置に対する観察者の相対的な位置を知る必要がある。また、複数名が同時に表示画面を観察する場合、水平観視画角は、観察者毎に異なる場合が多い。
【0032】
したがって、水平観視画角は、例えば主観評価実験等で得られた結果等に基づいて、代表的な値を用いた固定値とすることで、水平観視画角の測定に必要なデバイスや水平観視画角の演算等を省略することができ、安価かつ比較的単純な構成で効果的な輝度制御を実施することができる。
【0033】
また、上記表示装置は、上記表示画面の観察者を撮像する撮像部と、上記撮像部で撮像された撮像画像から上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として抽出する観察者情報抽出部と、上記観察者情報抽出部で抽出された観察者情報から上記重み付け係数を決定する重み付け係数決定部とをさらに備えていることが好ましい。
【0034】
また、上記表示方法は、上記表示画面の観察者を撮像する撮像ステップと、上記撮像ステップで撮像された撮像画像から上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として抽出する観察者情報抽出ステップと、上記観察者情報抽出ステップで抽出された観察者情報から上記重み付け係数を決定する重み付け係数決定ステップと、をさらに含むことが好ましい。
【0035】
このように、上記撮像部あるいは撮像ステップで上記表示画面の観察者を撮像して上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として抽出することで、年齢の異なる複数名で表示画面を観察する場合に、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として的確に把握することができ、この観察者情報から、観察者の人数を考慮して輝度を平均化し、好適最大表示輝度を決定することができる。
【0036】
また、上記表示装置において、上記水平観視画角は、可変パラメータであり、上記表示装置は、上記表示画面に対する上記表示画面の観察者毎の水平観視画角を算出する水平観視画角演算部をさらに備え、上記好適最大表示輝度決定部は、上記水平観視画角演算部で算出された水平観視画角を用いて、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定することが好ましい。
【0037】
表示画面を観察する位置によって水平観視画角が変わるため、好適表示輝度は、表示画面を観察する位置にも依存する。
【0038】
したがって、水平観視画角を可変パラメータとし、観察者毎の水平観視画角を用いて好適最大表示輝度を決定することで、より精度の高い好適表示輝度制御が可能となる。
【0039】
このため、年齢の異なる複数名で表示画面を観察する場合に、上記したように観察者毎に算出した水平観視画角を用いて、観察者の年齢層を的確に把握し、各年齢層の観察者の人数を考慮して輝度を平均化することで、観察者全体として輝度に対する不満がさらに少なくなるような輝度に制御することができる。
【0040】
また、上記表示装置は、上記表示画面の観察者を撮像する撮像部と、
上記撮像部で撮像された撮像画像から、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数と、上記表示画面に対する上記観察者毎の相対的な位置情報とを抽出する観察者情報抽出部と、
上記観察者情報抽出部で抽出された観察者の年齢層毎の人数から上記重み付け係数を決定する重み付け係数決定部とをさらに備えるとともに、
上記水平観視画角演算部は、上記観察者情報抽出部で抽出した、上記表示画面に対する観察者の相対的な位置情報から、上記表示画面に対する上記表示画面の観察者の水平観視画角を算出することが好ましい。
【0041】
上記の構成によれば、上記撮像部で上記表示画面の観察者を撮像して上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として抽出することで、年齢の異なる複数名で表示画面を観察する場合に、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として的確に把握することができる。
【0042】
そして、上記水平観視画角演算部が、上記観察者情報抽出部で抽出した、上記表示画面に対する観察者の相対的な位置情報から、上記表示画面に対する上記表示画面の観察者の水平観視画角を算出することで、観察者毎の水平観視画角を用いて好適最大表示輝度を決定することができる。したがって、より精度の高い好適表示輝度制御が可能となる。
【0043】
また、上記好適最大表示輝度は、水平観視画角と画面照度と平均輝度レベルとから表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を求める主観評価実験から導出される値に基づいていることが好ましい。
【0044】
このように、主観評価実験で得られた、観察者が好適な輝度と考える値(平均値)を基に輝度制御を行うことで、輝度に対する不満をもたらさずに余分な輝度を落とすことができる。したがって、上記の構成によれば、輝度に対する不満をもたらさずに消費電力の削減効果を得ることができる。
【0045】
また、上記の構成によれば、上記したように主観評価実験の結果を基に輝度を制御するため、例えば特許文献1のように「眩しさを感じ始める」輝度に基づいて輝度制御を行う場合と比較して、低視覚負担および低消費電力化を図ることができ、より適切な輝度制御を行うことができる。
【0046】
また、上記表示装置は、上記表示画面の観察者の年齢層および人数を観察者情報として入力する観察者情報入力部をさらに備え、上記加重平均輝度演算部は、上記観察者情報入力部による入力を受け付けると、上記好適最大表示輝度決定部で決定された上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を、受け付けた観察者情報に含まれる観察者の年齢層毎の人数の割合に対応付けられた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出することが好ましい。
【0047】
この場合、表示画面の観察者を撮像する撮像部や、撮像部で撮像された撮像画像から表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として抽出する観察者情報抽出部を備えていなくても、年齢の異なる複数名で表示画面を観察する場合に、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として的確に把握することができ、この観察者情報から、観察者の人数を考慮して輝度を平均化し、好適最大表示輝度を決定することができる。
【0048】
また、上記表示装置において、上記加重平均輝度演算部は、当該表示装置の電源オン後、一定時間内に上記観察者情報入力部による入力がない場合、上記観察者情報入力部による入力を受け付けるまでの間、上記好適最大表示輝度決定部で決定された上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を、一定地域における年齢層毎の人口比率を上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数の割合として用いた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出することが好ましい。
【0049】
この場合、上記したように人口比率を重み付け係数とする加重平均輝度制御を行うことで、表示画面の観察者の年齢、人数に関する情報が全くない場合でも、最も妥当な(輝度に対する不満が総合的に最も少なくなるような)輝度制御を行うことができる。
【0050】
また、この場合、最も単純な構成で輝度制御を行うことができるため、低コスト化が可能となる。
【0051】
なお、上記表示方法の各ステップは、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータに、プログラムに従って、上記表示方法の各ステップを実行させることができるので、上記表示方法をコンピュータにおいて実現するプログラムも本発明の範疇に入る。また、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、年齢の異なる複数名で表示装置の表示画面を観察する場合に、観察者の年齢層を的確に把握し、各年齢層の観察者の人数を考慮して輝度を平均化することで、観察者全体として輝度に対する不満が最も少なくなるような輝度に制御することができる。
【0053】
また、本発明によれば、上記したように各年齢層の観察者の人数を考慮して輝度を平均化しているので、現状多くの液晶テレビで行われているように、何れかの年齢層にのみ対応するように輝度を調整していた場合と比べて、低い輝度で表示できる場合が多い。
【0054】
また、本発明では、上記したように、表示輝度に影響を及ぼす、主要な3つのパラメータ(画面照度、平均輝度レベル、水平観視画角)を用いて年齢層毎の好適最大表示輝度を決定している。本発明によれば、このように、好適表示輝度に大きな影響を及ぼす平均輝度レベルも考慮した輝度制御を行うため、より正確な輝度制御が可能となる。
【0055】
このため、本発明によれば、年齢層の異なる複数の観察者が存在する場合でも、観察者の年齢および視聴条件に応じて、総合的に最も適切と考えられる表示輝度の制御を行うことができる表示装置、輝度制御方法、プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施の形態1にかかる表示装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図2】主観評価実験によって求めた年代毎のα、β、γ、Cの一例を示す表である。
【図3】水平観視画角として固定値を使用し、年代毎に、画面照度(E)と平均輝度レベル(AL)とから好適表示輝度(PL)を与える2次元のLUTの一例を示す図である。
【図4】水平観視画角を説明する図である。
【図5】年齢に対する好適輝度の変化の例を示すグラフである。
【図6】実施の形態2にかかる表示装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図7】年代毎に、水平観視画角(SA)、画面照度(E)、および平均輝度レベル(AL)から好適表示輝度(PL)を与える3次元のLUTの一例を示す図である。
【図8】実施の形態3にかかる表示装置の要部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施の一形態について、詳細に説明する。
【0058】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0059】
なお、以下の説明では、本実施の形態にかかる表示装置における表示画面側を上面側とし、その反対面側である背面側を下面側として説明する。
【0060】
また、本実施の形態では、上記表示装置が、図示しない入力データ供給源から、映像ソースとして、地上デジタル放送または地上アナログ放送等の放送信号、あるいは、DVD(Digital Versatile Disc)等の入力信号を受信し、受信した映像ソースに応じた映像を表示部の表示画面に表示するテレビジョン受像機であることを前提として説明する。
【0061】
しかしながら、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、表示部の表示画面に表示された映像を観察者が視覚的に捉えることができるものであれば、他のどのような種類の表示装置でもよい。
【0062】
<表示装置の構成>
まず、本実施の形態にかかる表示装置の構成について説明する。
【0063】
図1は、本実施の形態にかかる表示装置の要部の構成を示すブロック図である。
【0064】
なお、本実施の形態では、本実施の形態にかかる表示装置として、上記したようにテレビジョン受像機(以下、テレビと称する)を想定し、表示装置の観察者を視聴者として説明する。
【0065】
図1に示すように、本実施の形態にかかる表示装置100は、表示部1、表示制御回路2、光源3、光源駆動回路4、画面照度検出部5、輝度制御部6、観察者情報抽出部7、撮像部8、平均輝度レベル演算部9、LUT記憶部10を備えている。
【0066】
表示部1は、液晶パネル等の表示パネルからなり、表示画面1a(図4参照)を備えている。表示部1は、上記したように、地上デジタル放送または地上アナログ放送等の放送信号、あるいは、DVD等の入力信号等、図示しない入力データ供給源から受信した映像ソースに応じた映像を、上記表示画面に表示する。
【0067】
表示部1に用いられる液晶パネル等の表示パネルとしては、公知の各種表示パネルを使用することができる。したがって、ここでは、上記表示パネルの各基板構成に関する詳細な説明並びに図示を省略する。
【0068】
また、上記表示パネルの駆動方式は特に限定されるものではない。上記駆動方式としては、例えば、VA(Vertical Alignment)モード等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0069】
上記表示パネルの一例としては、例えば、複数の画素がマトリスク状に配されたアクティブマトリクス型の液晶パネルが挙げられる。上記液晶パネルは、図示しないアクティブマトリクス基板と対向基板との間に液晶層が挟持された構成を有している。
【0070】
上記液晶パネルには、複数のゲートラインと複数のソースラインとが互いに交差して配されている。これらゲートラインとソースラインとで囲まれた領域が1画素であり、各画素には、画素電極およびTFT等のスイッチング素子がそれぞれ設けられている。
【0071】
上記ゲートライン、ソースラインは、それぞれ、ゲートドライバ、ソースドライバに接続されている。また、上記スイッチング素子のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極には、ゲートライン、ソースライン、画素電極がそれぞれ接続されている。
【0072】
これにより、上記スイッチング素子をON・OFF(オン・オフ)制御することで、画素電極に選択的にソース信号が供給される。具体的には、ゲートドライバからゲートラインを介してスイッチング素子にゲート信号が供給されると、スイッチング素子がON状態となり、スイッチング素子のソース電極からドレイン電極にソース信号が流れて画素電極に供給される。上記ソース信号は、ソースラインを介してソースドライバから供給される。
【0073】
表示制御回路2は、図示しない入力データ供給源から受信した映像ソースに応じた映像を、上記表示部1の表示画面1aに表示させる。
【0074】
入力データ供給源から表示制御回路2に入力される入力データには、上記映像ソース(例えばR(赤)G(緑)B(青)データ等の画素データ)の他に、水平同期信号、垂直同期信号等の制御信号が含まれている。
【0075】
表示制御回路2は、入力データ供給源から水平同期信号、垂直同期信号等の制御信号を受け取り、この受け取った制御信号に基づいてゲート制御信号、ソース制御信号を生成して、ゲートドライバ、ソースドライバにそれぞれ供給する。
【0076】
ゲート制御信号およびソース制御信号は、それぞれ、ゲートドライバおよびソースドライバの駆動のタイミングを制御するためのタイミング信号である。ソースドライバは、表示制御回路2から供給されるタイミング信号に基づいて各ソースラインに走査順にソース信号を供給する。
【0077】
光源3は、表示部1の表示画面1aに光を照射する照明装置である。本実施の形態では、光源3に、表示部1の表示画面1aに、その背面側から光を照射するバックライトを用いるものとする。
【0078】
光源3には、従来公知の各種照明装置を用いることができる。具体的には、例えば、発光素子にLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を用いたLEDバックライト等のLED照明装置や、複数の冷陰極線管を平行に配列した冷陰極線管照明装置等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0079】
また、上記照明装置としては、表示部1の背面に設けられた導光板の側面に発光素子が設けられたエッジライト型であってもよく、表示部1の背面に設けられた発光素子によって表示画面1aを直接照射する直下型であってもよい。また、その駆動方法は、特に限定されるものではない。
【0080】
光源駆動回路4は、輝度制御部6の出力値に基づいて光源3を駆動する駆動回路である。
【0081】
画面照度検出部5は、表示部1の表示画面1aの画面照度を検出するセンサ部である。画面照度検出部5は、明るさセンサ11と、明るさセンサ11による検出結果から画面照度を算出する画面照度算出部12とを備えている。
【0082】
既に、殆どの液晶テレビには、明るさセンサが装備されている。明るさセンサは、表示画面1aの近傍(表示画面1aと同一面上)に、観察者の方向を向いて配置されており、表示画面1aに当たる光の照度を計測する。
【0083】
明るさセンサ11としては、これら既存の明るさセンサ(照度センサ)を用いることができる。なお、明るさセンサ11の一例としては、例えば、視感度補正を施したシリコンフォトダイオードおよび増幅器を備えた受光素子が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0084】
既存の明るさセンサは、多くの場合、表示画面の下部の額縁部分に設置されている。しかしながら、明るさセンサ11の設置位置は、表示画面1aと同一面上に観察者の方向を向いて設置されていれば、特に限定されるものではない。明るさセンサ11の出力値と画面照度との関係を予め計測しておくことで、明るさセンサの11の計測値から、明るさセンサの11の設置位置に拘らず画面照度を求めることができる。
【0085】
輝度制御部6は、画面照度検出部5によって検出された画面照度と、平均輝度レベル演算部9によって算出された平均輝度レベルとから表示部1の表示画面1aの輝度(表示輝度)を制御する。
【0086】
具体的には、輝度制御部6は、表示部1に光を照射する光源3の出力を変化させて光源3の輝度を制御する。このように、輝度制御部6は、光源3の輝度を制御することで、表示部1の表示画面1aの輝度を制御する。なお、輝度制御部6における輝度制御処理についての詳細は後述する。
【0087】
上記観察者情報抽出部7は、表示部1の表示画面を観察している観察者の年齢層(年代)や人数を求めて、その情報を、観察者情報として、上記輝度制御部6に出力するようになっている。なお、観察者情報抽出部7の構成並びに観察者情報抽出処理についての詳細は後述する。
【0088】
撮像部8は、表示部1の表示画面に表示されている画像を観察している観察者を撮像する。
【0089】
本実施の形態では、上記撮像部8として、一眼カメラが使用される。
【0090】
なお、撮像部8は、表示画面の観察者を撮像できる位置に設けられていればよい。撮像部8は、例えば、表示部1の表示画面周囲の額縁部に配置される。
【0091】
なお、撮像部8によって撮像される画像には、少なくとも表示画面を観察している全ての観察者が含まれ、かつ、各観察者の顔が含まれている。
【0092】
撮像部8による撮像タイミングとしては、例えば、表示装置100の電源を入れた直後、あるいは、リモコン操作信号を受けた直後等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0093】
撮像部8による撮像は、表示装置100の電源がONされた後、継続的に撮像を行ってもよく、一定の間隔で断続的に撮像を繰り返してもよい。
【0094】
撮像部8によって撮像された画像は、画像データとして、観察者情報抽出部7に送られる。
【0095】
平均輝度レベル演算部9は、表示部1の表示画面に表示される映像の映像ソースである映像信号として受信した放送信号あるいはDVD等の入力信号(入力映像信号)から、例えばフレーム毎に平均輝度レベルを演算し、その演算値を輝度制御部6に出力する。
【0096】
例えば、入力映像信号が毎秒30フレームの映像信号である場合、上記平均輝度レベル演算部9では、毎秒30回、平均輝度レベルを演算することになる。
【0097】
また、LUT記憶部10には、観察者の年齢層(年代)毎に予め設定された輝度制御用のLUT(Look Up Table:ルックアップテーブル)が記憶されており、これらLUTは、輝度制御部6によって、必要に応じて読み出される。
【0098】
<観察者情報抽出部7>
観察者情報抽出部7(画像認識部)は、対象物分離部31と、観察者情報解析部32とを備え、撮像部8から送られた画像データから抽出した観察者情報を、後段の重み付け係数決定部13に出力するようになっている。
【0099】
対象物分離部31は、撮像部8から送られた画像データの画像内容を分析して、対象物(観察者)となる輪郭を抽出して背景から分離し、分離した輪郭のデータを観察者情報解析部32に出力する。
【0100】
観察者情報解析部32は、分離したデータから、分離したデータが何であるかを分析するようになっている。具体的には、観察者情報解析部32では、画素の集合である画像データから、ある種のパターンを取り出してパターン認識(解析)を行い、背景から分離した対象物が観察者(視聴者)であると認識する。
【0101】
この結果、観察者情報解析部32は、解析(認識)したデータから観察者の人数および観察者毎の年代を観察者情報として抽出する。
【0102】
なお、観察者情報の抽出には、例えば、顔認識技術を用いることができる。画像から視聴者情報を認識する技術は、公知であり、デジタルカメラ、監視カメラ等で既に実用化されている。また、顔の輪郭、骨格、しわ、たるみ等の情報を基に年齢を推定する技術についても、既に、一部実用化されている。例えば、特許文献2には、顔認識についての詳細な説明がなされている。したがって、本実施の形態では、その説明については省略する。
【0103】
以下では、例えば、20歳代が2名、60歳代が1名と解析してこの解析結果を観察者情報として抽出した場合を例に挙げて説明する。
【0104】
観察者情報解析部32で抽出した観察者情報は、後段の重み付け係数決定部13に出力される。
【0105】
重み付け係数決定部13は、観察者情報解析部32から送られた観察者情報から、各年代に対応したLUTに割り当てる重み付け係数を決定する。
【0106】
重み付け係数は、年代毎の観察者の人数/観察者の総人数によって決定される。
【0107】
重み付け係数決定部13は、年代毎の観察者の人数/観察者の総人数を重み付け係数として、観察者情報解析部32から観察者情報が入力される都度、計算してもよく、図1に一点鎖線で示すように、表示装置100に、上記したように観察者情報(観察者の人数および観察者毎の年代)に予め対応づけられた重み付け係数を示すテーブル(LUT)が格納された記憶部14を設け、観察者情報解析部32から観察者情報が入力される都度、記憶部14から、対応する重み付け係数を読み取ってもよい。
【0108】
重み付け係数決定部13は、例えば、上述のように観察者情報が、20歳代が2名、60歳代が1名を示している場合、20歳代に対応する20歳代以下用のLUTに重み付け係数として0.67(=2/3)、60歳代用のLUTに重み付け係数として0.33(=1/3)、その他の年代用のLUTに重み付け係数として0(ゼロ)を割り当てる。
【0109】
ここで、上記重み付け係数決定部13によって決定された重み付け係数を割り当てる対象となる各年代用のLUTは、入力される映像信号に応じて、後段の輝度制御部6によって各年代において好適な輝度値が求められたLUTとする。
【0110】
<輝度制御部6>
輝度制御部6は、図1に示すように、好適最大表示輝度決定部21、加重平均輝度演算部22、光源出力演算部23を備えており、重み付け係数決定部13で決定した重み付け係数と、画面照度検出部5で検出した画面照度と、平均輝度レベル演算部9で演算した平均輝度レベルとから、光源駆動回路4に出力する光源出力値を求めるようになっている。
【0111】
<好適最大表示輝度決定部21>
好適最大表示輝度決定部21は、画面照度検出部5で検出した画面照度と、平均輝度レベル演算部9で演算した平均輝度レベルとから、予め各年代用のLUTを記憶するLUT記憶部10から各年代用のLUTを読み出して、それぞれの年代における好適表示輝度を求めるようになっている。
【0112】
本願発明者等は、これまでに延べ200名近くの被験者に対して実施した主観評価実験によって、好適表示輝度(PL)(単位:cd/m)は、次式(1)の形で予測できることを見出した(例えば、非特許文献1参照)。
【0113】
log PL=α log E+β log SA+γ log AL+C …(1)
式(1)において、Eは画面照度(ルクス:lx)、SAは水平観視画角(度:deg)、ALはALL(平均輝度レベル)(%)であり、α、β、γ、Cは、それぞれ年齢によって異なる係数である。
【0114】
α、β、γ、Cは、それぞれ年代毎に設定することが好ましい。
【0115】
図2は、主観評価実験によって求めた年代毎のα、β、γ、Cの一例を示す表である。
【0116】
但し、図2に示す各年代の係数は、上記したように一例であって、年代毎のα、β、γ、Cは、図2に示す表中の値に限定されるものではない。
【0117】
ここで、各パラメータの好適な範囲を挙げるとすれば、αは、図2に示すように、年齢が増加するにつれて値が低下する傾向があることから、例えば、図2に示す表中の値±0.05の範囲とし、βおよびγは、年齢に対する明確な傾向が見られないため、βは−0.2〜−0.35、γは−0.2〜−0.4とし、Cはαとは逆に年齢の増加に伴い大きくなる傾向があるため、表中の値±0.2の範囲となる。なお、βおよびγは、必ず負の値をとる。
【0118】
以上のように、上記式(1)を用いて各年代に応じた係数を用いることで、各年代における好適な表示輝度(以下、「好適表示輝度」と称す)を求めることができる。
【0119】
なお、ここで、好適表示輝度とは、白ピーク(階調レベル255)の輝度を示し、主に光源3(バックライト)の輝度で決まる値を示す。
【0120】
本実施の形態では、上記水平観視画角を計測する手段を有していないため、この水平観視画角は、代表的な値を用いた固定値(例えば20deg、33deg等)とし、年代毎に、画面照度(E)と平均輝度レベル(ALL;図3に示すLUT中、ALで示す)とから好適表示輝度を与える2次元のLUTを使用する。
【0121】
図3は、上記の2次元のLUTの一例を示す図である。
【0122】
ここで、好適最大表示輝度決定部21によって好適表示輝度(PL)を求めるために使用した3つのパラメータ(画面照度、平均輝度レベル、水平観視画角)について説明する。
【0123】
<画面照度>
画面照度とは、表示画面の中央部における鉛直面の照度を示す。画面照度は、実用上は、上記したように、既に殆どの液晶TVには装備されている明るさセンサの計測値から求めることができる。
【0124】
<平均輝度レベル>
平均輝度レベルは、次式
【0125】
【数1】

【0126】
から得られる値であり、受信した放送信号あるいはDVDの入力信号等の映像信号から算出することができる。
【0127】
なお、式中、HおよびWは表示部1に表示される映像の縦および横の画素数を示し、Y(i,j)は座標(i,j)における画素の輝度信号レベル(0〜255)を示す。
【0128】
<水平観視画角>
図4は、水平観視画角を説明する図である。
【0129】
水平観視画角は、図4に示すように、表示部1の表示画面1aの上端を真上から見下ろしたときに、表示画面1aを視る観察者の眼40と表示画面1aの右端とを結ぶ線と、目40と表示画面1aの左端とを結ぶ線との間に形成される角度SAを示す。
【0130】
<加重平均輝度演算部>
加重平均輝度演算部22は、観察者の年代別に決定された重み付け係数と、観察者の年代別に求められた好適表示輝度とから、加重平均輝度を演算する。
【0131】
ここで、20歳代以下、30歳代、40歳代、50歳代、60歳代、70歳代以上の、重み付け係数をそれぞれα20、α330、α40、α50、α60、α70とし、好適表示輝度(PL)をPL20、PL30、PL40、PL50、PL60、PL70とし、加重平均輝度をPLとしたとき、加重平均輝度PLは、次式(2)により求められる。
【0132】
PL=(α20・PL20+α30・PL30+α40・PL40+α50・PL50+α60・PL60+α70・PL70)/6 …(2)
例えば、20歳代の観察者が2名、60歳代の観察者が1名、他の年代の観察者が0名のとき、上述のように、20歳代以下の重み付け係数α20は0.67(=2/3)、60歳代の重み付け係数α30は0.33(=1/3)、他の年代の重み付け係数α30・α40・α50・α70は全て0となり、加重平均輝度(PL)は、上記式(2)から、次式(3)のようになる。
【0133】
PL=(0.67×PL20+0×PL30+0×PL40+0×PL50+0.33×PL60+0×α70・PL70)/6 …(3)
上記のようにして求めた加重平均輝度(PL)は、後段の光源出力演算部23に送られる。
【0134】
<光源出力演算部23>
上記光源出力演算部23では、表示部1のピーク白輝度が入力された加重平均輝度(PL)になるように光源3に与える出力値を決定し、光源駆動回路4に送る。
【0135】
光源駆動回路4は、光源出力演算部23によって決定された出力値に基づいて光源3を駆動することで、表示画面1aの輝度制御を行う。
【0136】
<効果>
次に、上記構成の表示装置100による効果について説明する。
【0137】
図5は、年齢に対する好適表示輝度(図5中、好適輝度と記す)の変化の例を示すグラフである。このグラフは、年代毎に20名ずつの被験者に対して映像を表示し、好みの輝度に調整してもらう主観評価実験を行った結果を示している。
【0138】
図5に示すように、各年代の平均年齢に対して、好適表示輝度の幾何平均値を対数でプロットすると、好適表示輝度が直線的に増加した。
【0139】
なお、図5は、画面照度(E)が100ルクス(lx)、水平観視画角(SA)が33deg、平均輝度レベル(ALL)が39%の映像を見た場合の結果を示している。
【0140】
ここで、図5に示すグラフから、20歳代と70歳代での好適表示輝度の差は70cd/m程度になっていることが読み取れる。但し、試聴する映像のジャンルや試聴する環境等の試聴条件によって、上記好適表示輝度の差が100cd/m程度と拡がったり、40cd/m程度と狭まったりする。
【0141】
上記好適表示輝度の差が100cd/mを超えた場合の条件は、E=30ルクス(lx)、SA=17deg、ALL=6.6%であり、暗い部屋で比較的遠くから暗い映像を見た場合に相当している。
【0142】
上記好適表示輝度の差が40cd/m未満となった場合の条件は、E=30ルクス(lx)、SA=62deg、ALL=82%であり、暗い部屋で比較的遠くから非常に明るい映像を見た場合に相当している。
【0143】
このように、年齢によって好適表示輝度は大きく変化し、また、その変化の度合いは、視聴条件によっても異なってくる。
【0144】
しかしながら、これまでの輝度制御方法では、年齢毎に好適な輝度に調整するだけであり、年齢の異なる複数名でテレビを視聴する場合に、全ての観察者を満足させることができなかった。
【0145】
これに対し、本実施の形態にかかる輝度制御方法を用いた表示方法によれば、年齢の異なる複数名でテレビを視聴する場合に、観察者の年齢層を的確に把握し、各年齢層の観察者の人数を考慮して輝度を平均化することで、観察者全体として輝度に対する不満が最も少なくなるような輝度に制御することができる。
【0146】
また、本実施の形態にかかる輝度制御方法を用いた表示方法では、上述のように、各年齢層の観察者の人数を考慮して輝度を平均化しているので、現状多くの液晶テレビで行われているように、何れかの年齢層にのみ対応するように輝度を調整していた場合と比べて、低い輝度で表示できる場合が多い。
【0147】
しかも、本実施の形態にかかる輝度制御方法を用いた表示方法では、好適輝度評価実験(主観評価実験)で得られた、被験者(観察者)が好適な輝度と考える値(平均値)を基に制御しているため、輝度に対する不満をもたらさずに余分な輝度を落とすことができる。したがって、消費電力の削減効果も有している。
【0148】
また、本実施の形態によれば、上記したように好適輝度評価実験(主観評価実験)の結果を基に輝度を制御するため、例えば特許文献1のように「眩しさを感じ始める」輝度に基づいて輝度制御を行う場合と比較して、低視覚負担および低消費電力化を図ることができ、より適切な輝度制御を行うことができる。
【0149】
本実施の形態によれば、上記したように、複数名が同時にテレビを視る場合でも、総合的に最も適切と考えられる輝度制御を行うため、表示の眩しさや暗さに関する不満を低減することができる。
【0150】
しかも、本実施の形態では、表示輝度に影響を及ぼす、主要な3つのパラメータ(画面照度、平均輝度レベル、水平観視画角)を用いて各年代層の好適最大表示輝度を決定する。
【0151】
このように、本実施の形態によれば、好適表示輝度に大きな影響を及ぼす平均輝度レベルも考慮した輝度制御を行うため、より正確な表示輝度制御が可能となる。
【0152】
また、本実施の形態では、水平観視画角は、観視画角を予め設定された値に固定することで、画面照度と平均輝度レベルとを可変パラメータとしている。
【0153】
上記したように、好適表示輝度に影響を与えるパラメータは、画面照度、平均輝度レベル、水平観視画角の3つである。しかしながら、このうち、水平観視画角を求めるためには、テレビに対する観察者の相対的な位置を知る必要がある。また、複数名が同時にテレビを視る場合、水平観視画角は、観察者毎に異なる場合が多い。
【0154】
本願発明者らは、TVの平均的な観視距離を、実際に83世帯の一般家庭で観視距離を測定した結果(非特許文献1参照)から2.5mと固定し、TVの画面サイズから、好適な観視画角(SA)を求める主観評価実験を行った。
【0155】
この結果、家庭に普及している30〜40型クラスのTVで、観視画角(SA)は22deg程度であった。また、併せて、液晶TVユーザ32世帯を対象として、一般家庭における実地調査を行ったところ、平均の観視画角(SA)は15.7degであった。
【0156】
また、33degは、相対視距離(テレビ画面の高さに対する比)3H(H:テレビ画面高さ)に相当し、一般的に、ハイビジョン放送を見る際に最適な距離と言われる距離である。
【0157】
したがって、本実施の形態によれば、前記したように、水平観視画角は、例えば、20deg、33deg等、代表的な値を用いた固定値とし、年代毎に、画面照度と平均輝度レベルとから好適表示輝度を与える2次元のLUTを使用することで、水平観視画角の測定に必要なデバイスや水平観視画角の演算等を省略することができ、安価かつ比較的単純な構成で効果的な輝度制御を実施することができる。
【0158】
〔実施の形態2〕
本発明の実施の他の形態について、図6および図7に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本実施の形態では、主に、実施の形態1との相違点について説明するものとし、実施の形態1と同一の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0159】
<表示装置100の構成>
図6は、本実施の形態にかかる表示装置100の要部の構成を示すブロック図である。
【0160】
図6に示すように、本実施の形態にかかる表示装置100は、実施の形態1と同様に、表示部1、表示制御回路2、光源3、光源駆動回路4、画面照度検出部5、輝度制御部6、観察者情報抽出部7、撮像部8、平均輝度レベル演算部9、LUT記憶部10を備えている。
【0161】
実施の形態1では、観察者の水平観視画角に、予め設定した値を用いていた。これに対し、本実施の形態では、表示装置100において、さらに、上記好適最大表示輝度決定部21による好適表示輝度を求めるためのパラメータの一つとして用いる各観察者の水平観視画角を取得するために、水平観視画角演算部41をさらに備えている。
【0162】
つまり、本実施の形態では、実際に試聴している観察者の水平観視画角を算出するようになっている。
【0163】
上記水平観視画角を算出するために、本実施の形態では、撮像部8に、2眼カメラを用いている。なお、水平観視画角の算出についての詳細は後述する。
【0164】
上記撮像部8によって撮像された画像は、画像データとして観察者情報抽出部7に送られる。
【0165】
本実施の形態では、上記観察者情報抽出部7では、撮像部8から送られた画像データから、実施の形態1で実行した処理(観察者の人数、年齢の算出)に加えて、水平観視画角を求めるのに必要な観察者の位置情報を求めるようになっている。
【0166】
<観察者情報解析部32>
本実施の形態にかかる観察者情報抽出部7(画像認識部)は、対象物分離部31と、観察者情報解析部32と、距離計測部33とを備え、撮像部8(2眼カメラ)から送られた画像データから抽出した観察者情報を、後段の重み付け係数決定部13に出力する。
【0167】
対象物分離部31は、撮像部8から送られた画像データの画像内容を分析して、対象物(観察者)となる輪郭のデータを抽出して背景から分離し、分離した対象物のデータを観察者情報解析部32に出力する。
【0168】
観察者情報解析部32は、対象物分離部31で分離した対象物のデータから、この分離したデータが何であるかを分析するようになっている。具体的には、観察者情報解析部32では、画素の集合である画像データから、ある種のパターンを取り出してパターン認識(解析)を行い、背景から分離した対象物が観察者であると認識する。
【0169】
この結果、観察者情報解析部32は、解析(認識)したデータから観察者の人数および観察者毎の年代を観察者情報として抽出する。
【0170】
上記したように、上記観察者情報解析部32は、解析(認識)したデータから観察者の人数および観察者毎の年代を観察者情報として抽出する。例えば、実施の形態1で示したように、20歳代が2名、60歳代が1名と解析してこの解析結果を観察者情報として抽出する。
【0171】
この観察者情報解析部32で抽出した観察者情報は、後段の重み付け係数決定部13に出力される。
【0172】
さらに、本実施の形態では、上記したように撮像部8に2眼カメラを用いているので、同一対象物(観察者)を撮影することで視差情報を得ることができる。つまり、撮像部8から観察者情報抽出部7に送られる画像データには、上記視差情報も含まれている。
【0173】
距離計測部33では、撮像部8(2眼カメラ)で得られた2枚の画像から、撮像空間中の各点までの距離を計測する。
【0174】
距離計測部33は、撮像部8(2眼カメラ)で撮像した同一対象物(観察者)の視差情報から、三角測量の原理を用いて計測対象点までの距離を測定することで、テレビ側から見た観察者の位置情報(テレビから観察者までのおおよその距離を示す情報)を取得する。なお、上記手法は、ステレオビジョン等の名称で知られている。
【0175】
三角測量の原理を用いた位置情報の取得については、例えば、特許文献3の図2等に詳細に説明されている。このため、本実施の形態では、その説明については省略する。
【0176】
距離計測部33は、上記視差情報から得られた位置情報を、後段の観察者情報解析部32に出力する。
【0177】
上記観察者情報解析部32では、距離計測部33から送られた位置情報と、対象物分離部31から送られたデータから抽出した観察者情報とから、テレビと各観察者との相対的位置関係を示す観察者位置情報を抽出する。この抽出した観察者位置情報は、水平観視画角演算部41に出力される。
【0178】
水平観視画角演算部41は、得られた観察者位置情報(テレビと観察者との相対的な位置関係)から、その位置からテレビを見ている観察者の水平観視画角(SA)を算出する。
【0179】
つまり、実施の形態1の図4を参照して説明すると、上記水平観視画角演算部41は、表示部1の表示画面1aの上端を真上から見下ろしたときに、表示画面1aを視る観察者の眼40と表示画面1aの右端とを結ぶ線と、眼40と表示画面1aの左端とを結ぶ線との間に形成される角度SA(水平観視画角)を、観察者毎に求める。
【0180】
そして、水平観視画角演算部41によって、観察者毎に求められた水平観視画角(SA)は、後段の輝度制御部6の好適最大表示輝度決定部21および重み付け係数決定部13に送られる。
【0181】
上記重み付け係数決定部13は、観察者情報解析部32からの観察者情報および水平観視画角演算部41で観察者毎に求められた水平観視画角(SA)から、各年代に対応したLUTに割り当てる重み付け係数を決定する。
【0182】
例えば、上述のように、観察者情報が、20歳代が2名、60歳代が1名を示している場合、水平観視画角(SA)を考慮しない場合には20歳代に対応する20歳代以下用のLUTに重み付け係数として0.67(=2/3)、60歳代用のLUTに重み付け係数として0.33(=1/3)、その他の年代用のLUTに重み付け係数として0(ゼロ)を割り当てる。
【0183】
しかしながら、水平観視画角(SA)を考慮した場合には、2名の20歳代の水平観視画角(SA)が同じでなく、また、60歳代の水平観視画角(SA)も、同じ20歳代の水平観視画角(SA)と同じではないので、それぞれの好適表示輝度を求めるために、一人目の20歳代のSA=SA1、二人目の20歳代のSA=SA2、60歳代のSA=SA3としたとき、重み付け係数は、20歳代(SA1)が0.33(1/3)、20歳代(SA21が0.33(1/3)、62歳代(SA3)が0.33(1/3)となる。
【0184】
本実施の形態では、このように同年代が複数名存在する場合、各観察者がとる水平観視画角(SA)の値を基に重み付け係数を決定することになる。
【0185】
ここで、上記重み付け係数決定部13によって決定された重み付け係数を割り当てる対象となる各年代用のLUTは、入力される映像信号に応じて、後段の輝度制御部6によって各年代において好適な輝度値が求められたLUTとする。
【0186】
<好適最大表示輝度決定部21>
本実施の形態において、好適最大表示輝度決定部21は、実施の形態1とほぼ同じ制御を行う。
【0187】
本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、実施の形態1では、水平観視画角を計測(演算)する手段を有していないため、予め設定された水平観視画角を用いているのに対して、本実施の形態では、上述のように、本実施の形態にかかる表示装置100が水平観視画角演算部41を備えていることで、観察者毎の水平観視画角をリアルタイムに測定した水平観視画角を用いている点である。
【0188】
すなわち、本実施の形態では、好適最大表示輝度決定部21が、画面照度検出部5で検出した画面照度(E)と、平均輝度レベル演算部9で演算した平均輝度レベル(ALL)と、水平観視画角演算部41で求めた各観察者の水平観視画角(SA)とから、予め各年代用のLUTを記憶しているLUT記憶部10から各年代用のLUTを読み出して、それぞれの年代における好適表示輝度を求める。
【0189】
ここで、好適表示輝度(PL)(cd/m)の演算には、実施の形態1で示した式(1)を用いる。
【0190】
本実施の形態では、上記水平観視画角を計測する手段として水平観視画角演算部41を有しているため、実際にテレビを試聴している各観察者の水平観視画角を用いる。したがって、年代毎に、水平観視画角(SA)、画面照度(E)、および平均輝度レベル(ALL;図7に示すLUT中、ALで示す)から好適表示輝度(PL)を与える3次元のLUTを使用する。
【0191】
図7は、上記3次元のLUTの一例を示す図である。
【0192】
<加重平均輝度演算部22>
加重平均輝度演算部22は、観察者の年代別に決定された重み付け係数と、観察者の年代別に求められた好適表示輝度とから、加重平均輝度を求める。ここでの加重平均輝度は、前記実施の形態1と同じ方法により求める。求めた加重平均輝度は、後段の光源出力演算部23に送られる。
【0193】
<光源出力演算部23>
光源出力演算部23では、表示部1の輝度が入力された加重平均輝度PLとなるように、光源3に与える出力値を決定し、光源駆動回路4に送る。
【0194】
光源駆動回路4は、光源出力演算部23によって決定された出力値に基づいて光源3を駆動する。
【0195】
<効果>
テレビを視る位置によって水平観視画角が変わるため、好適表示輝度は、テレビを視る位置にも依存する。
【0196】
前記実施の形態1では、水平観視画角の影響は考慮せず、ある代表的な水平観視画角で見ているとの前提のもとに好適表示輝度を算出していたため、本実施の形態にかかる表示装置100と比べれば、輝度制御としては、比較的粗めの制御となる。
【0197】
これに対し、本実施の形態では、観察者の位置(テレビと観察者との相対的な位置関係)の影響も考慮に入れるため、より精度の高い好適表示輝度制御が可能となる。
【0198】
このため、本実施の形態にかかる表示装置100によれば、実施の形態1にかかる表示装置100によって得られる効果に比べて、年齢の異なる複数名でテレビを試聴する場合に、観察者毎に算出した水平観視画角を用いて、観察者の年齢層を的確に把握し、各年齢層の観察者の人数を考慮して輝度を平均化することで、観察者全体として輝度に対する不満がさらに少なくなるような輝度に制御することができる。
【0199】
<変形例>
なお、本実施の形態では、上記視差情報の取得に、撮像部8に2眼カメラを用いた場合を例に挙げて説明したが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、2眼カメラに代えて、既知の間隔で平行に設置された複数の撮像装置(例えば2台のカメラ)を用いてもよく、観察者が、テレビ(より具体的には、表示部1の表示画面1a)に対してどのような距離および位置にいるかを知るためのセンサを用いて上記視差情報を取得してもよい。
【0200】
〔実施の形態3〕
本発明の実施のさらに他の形態について、図8に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本実施の形態では、主に、実施の形態1、2との相違点について説明するものとし、実施の形態1、2と同一の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0201】
<表示装置100の構成>
図8は、本実施の形態にかかる表示装置100の要部の構成を示すブロック図である。
【0202】
図8に示すように、本実施の形態にかかる表示装置100は、実施の形態1と同様に、表示部1、表示制御回路2、光源3、光源駆動回路4、画面照度検出部5、輝度制御部6、観察者情報抽出部7、撮像部8、平均輝度レベル演算部9、LUT記憶部10を備えている。
【0203】
本実施の形態では、実施の形態1、2とは異なり、撮像部8および観察者情報抽出部7(対象物分離部31および観察者情報解析部32)を有していない代わりに、入力部51を有している。
【0204】
つまり、本実施の形態では、観察者情報を得るために画像データを用いるのではなく、観察者の人数および年代を上記入力部51から直接入力して重み付け係数決定部13によって重み付け係数を求める第1の経路による輝度制御、あるいは、観察者の人数および年代が入力されないときに、一定地域(すなわち、表示装置100の使用国あるいは使用地域)における各年代(年齢層毎)の人口比率データを重み付け係数の代わりに用いる第2の経路による輝度制御の何れかの輝度制御を実行する。
【0205】
<第1の経路:メニュー画面を使用>
まず、上記第1の経路による輝度制御について説明する。
【0206】
第1の経路では、まず、入力部51から、観察者情報として、観察者の人数、年齢が入力される。観察者情報は、例えばメニュー画面等から入力することができるようにしておく。入力された観察者情報は、重み付け係数決定部13に出力される。
【0207】
次に、重み付け係数決定部13は、入力された観察者情報から、各年代に対応したLUTに割り当てる重み付け係数を決定する。この決定の仕方は、前記実施の形態1の重み付け係数決定部13による決定の仕方と同じである。決定した重み付け係数は、加重平均輝度演算部22に出力される。
【0208】
<第2の経路:人口比率データを使用>
次ぎに、上記第2の経路による輝度制御について説明する。
【0209】
第2の経路では、テレビ起動後(すなわち、電源ON後)、所定時間内に、入力部51から観察者情報が入力されない場合、人口比率データ記憶部52に予め記憶されている年齢層毎の人口比率データが、重み付け係数として加重平均輝度演算部22に出力される。
【0210】
なお、本実施の形態では、前記実施の形態1と同様に、観察者の水平観視画角を計測するための手段を有していないので、好適最大表示輝度決定部21によって好適表示輝度を求めるために使用されるLUTは、画面照度と平均輝度レベルとから好適表示輝度を出力する2次元のLUTを使用する。
【0211】
したがって、輝度制御部6による表示輝度制御については、第1の経路および第2の経路ともに、前記実施の形態1と同じになるので、ここでは、その説明を省略する。
【0212】
この場合、上記したように人口比率を重み付け係数とする加重平均輝度制御を行うことで、テレビ視聴者の年齢、人数に関する情報が全くない場合でも、最も妥当な(輝度に対する不満が総合的に最も少なくなるような)輝度制御を行うことができる。
【0213】
本実施の形態によれば、最も単純な構成で輝度制御を行うことができるため、低コスト化が可能となる。
【0214】
<実施の形態1〜3に共通の変形例>
次に、実施の形態1〜3に共通の変形例について以下に説明する。
【0215】
まず、平均輝度レベル演算部9による好適表示輝度を求める演算例について説明する。
【0216】
<好適表示輝度を求める演算例1:フレーム毎に平均輝度レベルを求める場合>
一般に、例えば日本の多くの放送映像では、毎秒30フレームである。このため、フレーム毎に平均輝度レベルを求める場合、毎秒30回、平均輝度レベルを求めることになる。このため、好適表示輝度を求める演算も、毎秒30回行われることになる。実施の形態1〜3における好適最大表示輝度決定部21による好適表示輝度を求める演算も、フレーム毎に行われる。
【0217】
なお、上記説明では放送映像が毎秒30フレームである場合を例に挙げて説明したが、上記好適表示輝度を求める演算回数は、例えば放送国や放送地域等に応じて適宜設定すればよく、フレーム数が異なれば、それに応じて、好適表示輝度を求める演算の毎秒毎の回数も変わることは、言うまでもない。
【0218】
<好適表示輝度を求める演算例2:一定時間毎の平均値を求める場合>
ここで、放送映像が静止画像のように輝度の変化が殆どない場合や動画像であっても輝度の変化が殆どない場合、平均輝度レベルは、殆ど変化しない。
【0219】
一方、画面照度や水平観視画角は、平均輝度レベルと異なり、放送映像の種類によって変化しない。画面照度は、表示装置100が設置された環境に左右され、水平観視画角は、観察者の人数やテレビに対する観察者の相対的な位置に関係する。
【0220】
このように、好適表示輝度を求める3つのパラメータ(画面照度、水平観視画角、平均輝度レベル)が殆ど変化しない期間がある場合であっても、実施の形態1〜3では、フレーム毎に好適表示輝度の演算を行っていることになるので、無駄な演算を行っていることになる。
【0221】
そこで、好適表示輝度を求めるために演算の無駄を省くために、以下のような変形例1、2が考えられる。
【0222】
<好適表示輝度を求める演算の変形例1>
好適最大表示輝度決定部21は、入力される3つのパラメータ(画面照度、水平観視画角、平均輝度レベル)が変化しない期間には、好適表示輝度を求める演算を行わず、3つのパラメータの何れかが変化したときに、好適表示輝度を求める演算を行うようにする。
【0223】
すなわち、3つのパラメータのうち画面照度が変化した場合、水平観視画角が変化した場合、平均輝度レベルが変化した場合の少なくとも1つの場合に、好適表示輝度の演算を行う。
【0224】
通常、画面照度および水平観視画角の変化は少ないので、平均輝度レベルの変化により好適表示輝度の演算を行うことになる。
【0225】
しかしながら、上記のように3つのパラメータの変化のタイミングで好適表示輝度を演算するには、常に3つのパラメータを監視する必要があるが、以下のように一定期間毎に好適表示輝度の演算を行うようにすれば、3つのパラメータを監視する必要はない。
【0226】
<好適表示輝度を求める演算の変形例2>
次に、好適表示輝度を求める演算の変形例2として、一定期間毎に好適表示輝度の演算を行う場合について説明する。
【0227】
ここでは、平均輝度レベル演算部9によって、一定時間毎の平均輝度レベルの平均値を求め、その都度(つまり、一定時間毎の平均輝度レベルの平均値を求める都度)、好適最大表示輝度決定部21に、この平均輝度レベルの平均値を出力することで、一定期間毎に好適表示輝度の演算を行う。
【0228】
例えば、入力映像が毎秒30フレームの映像のとき、1秒間に好適表示輝度を演算する場合、直前30フレーム分の平均輝度レベルの平均値を求める。この1秒間毎の平均輝度レベルの平均値から、1秒間毎の好適表示輝度を演算する(第1の方法)。
【0229】
また、平均輝度レベルが移動平均値の場合、1秒分の移動平均を求めるには、直前30フレーム分の平均輝度レベルを1/30秒毎に求める(第2の方法)。
【0230】
上記第1の方法と第2の方法とを具体的に説明すれば、以下の通りである。
【0231】
まず、各フレームの平均輝度レベル(ALL)をALL1,ALL2,ALL3,・・・とした場合、第1の方法では、ALL1〜ALL30の平均、ALL311〜ALL60の平均、・・・を1秒毎に求める。これに対し、第2の方法では、ALL1〜ALL30の平均の次は、1/30秒後にALL2〜ALL31の平均を求め、さらに1/30秒後に、ALL3〜ALL32の平均を求めるというように、1/30秒毎に、1フレームずれた平均輝度レベル(ALL)の平均値を求める。
【0232】
<好適表示輝度の求め方の変形例3>
実施の形態1〜3では、好適最大表示輝度決定部21において、全ての年代のLUTを読み出して、全ての年代の好適表示輝度を求めて、加重平均輝度演算部22に出力するようになっている。このため、加重平均輝度演算部22では、全ての年代の好適表示輝度を考慮して加重平均輝度を求めることから、演算量が多くなる。
【0233】
そこで、好適最大表示輝度決定部21においては、実際にテレビを試聴している観察者の年代のみのLUTを読み出してそれぞれの年代の好適表示輝度を求めるようにして、加重平均輝度演算部22での演算も、実際にテレビを試聴している観察者の年代の好適表示輝度のみを演算して加重平均輝度を求めるようにすれば、演算量を少なくできる。
【0234】
例えば、実施の形態1の図1に示す表示装置100において、観察者情報抽出部7の観察者情報解析部32からの観察者情報を輝度制御部6の好適最大表示輝度決定部21に出力し、好適最大表示輝度決定部21が観察者情報から得られる観察者の年代に対応するLUTのみをLUT記憶部10から読み込むようにすればよい。
【0235】
好適最大表示輝度決定部21では、入力された年代のLUTから、各年代の好適表示輝度を求めて、加重平均輝度演算部22に出力する。
【0236】
加重平均輝度演算部22では、各年代の好適表示輝度と重み付け係数とから加重平均輝度を求める。
【0237】
このように、実際にテレビを試聴している観察者の年代に対応したLUTのみを選択するようにして、好適最大表示輝度決定部21によって好適表示輝度を求めれば、加重平均輝度演算部22における演算量が少なくなり、より迅速に好適な輝度で表示することが可能となる。
【0238】
<好適表示輝度の求め方の変形例4>
実施の形態1〜3では、上記したようにLUT記憶部10に格納されたLUTを用いて好適表示輝度を決定した。このように好適表示輝度の決定にLUTを使用することで、安価な構成とすることができ、かつ短時間での処理が可能となる。
【0239】
しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限定されるものではなく、前記した式(1)(つまり、計算式)から、演算により、年代毎の好適表示輝度を決定することもできる。この場合、LUT記憶部10を構成から除去することができるか、もしくは容量を小さくすることができる。
【0240】
なお、上記したようにLUTを用いる場合、LUTに示す画面照度(E)間の画面照度(E)およびLUTに示す平均輝度レベル(ALL;図3および図7中、ALで示す)間の平均輝度レベル(ALL)に対応する好適表示輝度(PL)は、前後の画面照度(E)および平均輝度レベル(ALL)の値からLUTで得られる好適表示輝度(PL)から補間演算されて決定される。
【0241】
つまり、LUTに含まれない年代毎の好適表示輝度(PL)の値は、LUTから得られる値から補間演算されて決定される。これにより、LUTのサイズを縮小することができる。
【0242】
<プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体>
なお、上記各実施の形態における輝度制御部6の各手段(ブロック)は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のように、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。すなわち、上記輝度制御部6の各手段は、プログラムを用いて、コンピュータを上記の各手段として機能させることで、ソフトウェアによって実行してもよい。
【0243】
また、上記各実施の形態における輝度制御部6による輝度制御(すなわち、本発明にかかる輝度制御方法)の各ステップは、プログラムを用いて、コンピュータに、上記の各ステップを実行させることで、ソフトウェアによって実行してもよい。
【0244】
すなわち、輝度制御部6は、各機能(ステップ)を実現するプログラムの命令を実行するCPUもしくはMPU、このプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを実行可能な形式に展開するRAM(Random Access Memory)、および、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)等を備えている。
【0245】
本発明の目的は、上述した機能(ステップ)を実現するソフトウェアである、輝度制御部6の各部(各手段)の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、輝度制御部6の各部に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0246】
なお、プログラムコードを輝度制御部6に供給する記録媒体は、特定の構造または種類のものに限定されない。すなわち上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系等を用いることができる。
【0247】
また、上記輝度制御部6を通信ネットワークと接続可能に構成しても、本発明の目的を達成できる。この場合、上記のプログラムコードを、通信ネットワークを介して輝度制御部6に供給する。この通信ネットワークは輝度制御部6にプログラムコードを供給できるものであればよく、特定の種類または形態に限定されない。例えばインターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等であればよい。
【0248】
この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な任意の媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。例えばIEEE1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0249】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明は、液晶TV等の表示装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0251】
1 表示部
1a 表示画面
2 表示制御回路
3 光源
4 光源駆動回路
5 画面照度検出部
6 輝度制御部
7 観察者情報抽出部
8 撮像部
9 平均輝度レベル演算部
10 LUT記憶部
11 明るさセンサ
12 画面照度算出部
13 重み付け係数決定部
14 記憶部
21 好適最大表示輝度決定部
22 加重平均輝度演算部
23 光源出力演算部
31 対象物分離部
32 観察者情報解析部
33 距離計測部
41 水平観視画角演算部
51 入力部
52 人口比率データ記憶部
100 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
上記表示部の表示画面の画面照度を検出する画面照度検出部と、
上記表示画面に表示される映像の映像ソースである映像信号から平均輝度レベルを算出する平均輝度レベル演算部と、
上記表示画面の表示輝度を制御する輝度制御部とを備え、
上記輝度制御部は、
水平観視画角と、上記画面照度と、上記平均輝度レベルと、上記表示画面の観察者毎の年齢層とをパラメータとして、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定する好適最大表示輝度決定部と、
上記好適最大表示輝度決定部で決定された、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数の割合に対応付けられた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出する加重平均輝度演算部とを備え、
上記加重平均輝度になるように上記表示画面の最大表示輝度を制御することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
水平観視画角に応じて、上記表示画面の観察者の年齢層毎に設けられた、上記画面照度と平均輝度レベルとの関係を示すルックアップテーブルを記憶したルックアップテーブル記憶部をさらに備え、
上記好適最大表示輝度決定部は、水平観視画角と、上記画面照度と、上記平均輝度レベルとから、上記ルックアップテーブル記憶部に記憶されたルックアップテーブルを参照して、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記水平観視画角は、固定パラメータであり、予め設定された値に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
上記表示画面の観察者を撮像する撮像部と、
上記撮像部で撮像された撮像画像から上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として抽出する観察者情報抽出部と、
上記観察者情報抽出部で抽出された観察者情報から上記重み付け係数を決定する重み付け係数決定部とをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
上記水平観視画角は、可変パラメータであり、
上記表示画面に対する上記表示画面の観察者毎の水平観視画角を算出する水平観視画角演算部をさらに備え、
上記好適最大表示輝度決定部は、上記水平観視画角演算部で算出された水平観視画角を用いて、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項6】
上記表示画面の観察者を撮像する撮像部と、
上記撮像部で撮像された撮像画像から、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数と、上記表示画面に対する上記観察者毎の相対的な位置情報とを抽出する観察者情報抽出部と、
上記観察者情報抽出部で抽出された観察者の年齢層毎の人数から上記重み付け係数を決定する重み付け係数決定部とをさらに備えるとともに、
上記水平観視画角演算部は、上記観察者情報抽出部で抽出した、上記表示画面に対する観察者の相対的な位置情報から、上記表示画面に対する上記表示画面の観察者の水平観視画角を算出することを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
上記好適最大表示輝度は、水平観視画角と画面照度と平均輝度レベルとから表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を求める主観評価実験から導出される値に基づいていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
上記表示画面の観察者の年齢層および人数を観察者情報として入力する観察者情報入力部をさらに備え、
上記加重平均輝度演算部は、上記観察者情報入力部による入力を受け付けると、上記好適最大表示輝度決定部で決定された上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を、受け付けた観察者情報に含まれる観察者の年齢層毎の人数の割合に対応付けられた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
上記加重平均輝度演算部は、当該表示装置の電源オン後、一定時間内に上記観察者情報入力部による入力がない場合、上記観察者情報入力部による入力を受け付けるまでの間、上記好適最大表示輝度決定部で決定された上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を、一定地域における年齢層毎の人口比率を上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数の割合として用いた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出することを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
表示装置の表示画面に表示される映像の映像ソースである映像信号から平均輝度レベルを算出する平均輝度レベル演算ステップと、
水平観視画角と、上記表示画面の画面照度と、上記平均輝度レベルと、上記表示画面の観察者毎の年齢層とをパラメータとして、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を決定する好適最大表示輝度決定ステップと、
上記好適最大表示輝度決定ステップで決定された、上記表示画面の観察者の年齢層毎の好適最大表示輝度を、上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数の割合に対応付けられた重み付け係数を用いて加重平均した加重平均輝度を算出する加重平均輝度演算ステップと、
上記加重平均輝度演算ステップで算出した加重平均輝度になるように上記表示画面の最大表示輝度を制御する輝度制御ステップとを含むことを特徴とする表示方法。
【請求項11】
上記表示画面の観察者を撮像する撮像ステップと、
上記撮像ステップで撮像された撮像画像から上記表示画面の観察者の年齢層毎の人数を観察者情報として抽出する観察者情報抽出ステップと、
上記観察者情報抽出ステップで抽出された観察者情報から上記重み付け係数を決定する重み付け係数決定ステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の表示方法。
【請求項12】
コンピュータに、請求項10または11に記載の表示方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−80172(P2013−80172A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221140(P2011−221140)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】