表示装置およびそれを用いた映像情報処理装置
【課題】 レンズアレイを備えた表示装置において、レンズでの屈折に起因して、円偏光部材では消光することのできない反射外光が正面方向に多く出射され、表示品位が悪くなる。
【解決手段】 レンズアレイと前記第一電極との間にレンズに対応する複数の開口を有する光吸収層を設け、前記複数の開口の端部を、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光を遮るように設ける
【解決手段】 レンズアレイと前記第一電極との間にレンズに対応する複数の開口を有する光吸収層を設け、前記複数の開口の端部を、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光を遮るように設ける
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、特に有機EL素子を用いた表示装置、およびそれを用いた映像情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を用いた表示装置(以下、有機EL表示装置)は、図13に示したように、駆動回路を設けた基板1の上に、有機EL素子を複数配置し、その表面を保護層6で覆う構成が一般的である。有機EL素子とは、第一電極2と第二電極5と、これらの電極に挟まれた発光層を含む有機化合物層4からなる構造を指しており、各有機EL素子の発光領域は隔壁層3で区画されている。又、有機EL素子は保護層6で覆われ、外部空間に含まれる水分や酸素等による劣化から保護されている。
【0003】
図13の表示装置には、有機EL素子から様々な角度に発せされる光(発光光)が、主に保護層6と外部空間との境界で全反射され、発光光の半分以上を有機EL表示装置の外部に取り出せないという課題がある。また、外部からの光(外光)を受ける環境では、表示装置内に入射した外光は、駆動回路の配線や反射性の第一電極を構成する金属層や積層膜の界面により反射され、外部へと出射される。そのため、観察者には、表示装置内で反射された外光と外部に出射される発光光との両方が観察され、視認性(コントラスト、視野角特性など)が低下して見えるという課題もある。
【0004】
これらの課題を解決する方法として、
特許文献1には、有機EL表示装置の表面に複数のレンズからなるレンズアレイを配置し、レンズの表面に反射防止層を設けると共に、レンズの光出射側に基板と平行に偏光板を配置する構成が開示されている。この構成によれば、レンズアレイにより表示装置と外部空間との境界で生じる全反射を低減して光取り出し効率を高めると共に、反射防止層および偏光板により外光の反射を低減することができる。
【0005】
特許文献2には、有機EL素子に対応してレンズを搭載した有機EL装置において、有機EL素子に対応して位置する複数の開口を有するブラックマスクを、パッシベーション層とレンズシートとの間に、配設する構成が開示されている。このようなブラックマスクを備える有機EL表示装置は、有機EL素子で発せられた光が、他の有機EL素子に対応する隣りのレンズに到達するのを防止し、基板の法線方向以外の方向における視認性を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−205849号公報
【特許文献2】特開2004−127661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
円偏光部材(偏光板)は、外部から表示装置内に入射する外光、あるいは、表示装置内部で反射されて再び外部に出射される外光のいずれについても、円偏光部材を法線方向に通過する光の成分を消光することができる。しかし、円偏光部材を斜めに通過する光、あるいは一旦円偏光部材を斜めに通過した光の成分は消光することはできない。
【0008】
表示装置は、正面、即ち基板の法線方向から観察される機会が多いため、法線方向の視認性が高いことが求められる。特許文献1の表示装置の場合、レンズでの屈折に起因して、基板に対して斜めに入射、即ち円偏光部材を斜めに通過し、表示装置内で反射されて基板の法線方向に出射される外光が生じる。このような外光は、表示装置への入射時に円偏光部材を斜めに通過した光の成分を含んでいるので、円偏光部材では十分に消光されずに表示装置の法線方向に出射され、視認性の低下を引き起こす。つまり、特許文献1のようなレンズを有する表示装置では、表示装置内で反射された外光を偏光板(円偏光部材)で抑制するだけでは十分とは言えない。
【0009】
特許文献2のブラックマスクの配置は、レンズを介して表示装置内に入射し、表示装置内で反射されてレンズを介して基板の法線方向に出射される外光を抑制することは考慮されていない。
【0010】
本発明は、レンズでの屈折に起因して、基板に対して斜めに入射し表示装置内で反射されて基板の法線方向に出射される外光を低減し、表示装置の正面からの観察に対して視認性の高い表示を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するため、本発明にかかる表示装置は、
第一電極と第二電極とそれらの間に配された発光層とを有する発光素子が基板上に複数配置された発光素子アレイと、
前記発光素子アレイの光出射側に前記複数の発光素子に対応して配置された複数のレンズを有するレンズアレイと、
を備える表示装置であって、
前記レンズアレイと前記第一電極との間には前記複数のレンズのそれぞれに対応する複数の開口を有する光吸収層が配置されており、
前記複数の開口のそれぞれの端部は、前記基板の法線方向から前記複数のレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光が前記光吸収層で遮られるように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マイクロレンズの最も斜面角の大きな領域を通って入射する光が、レンズと第一電極との間に設けられた光吸収層によって吸収される。その結果、レンズの屈折に起因して光偏光部材で消光することのできない外光反射を低減し、視認性に優れた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置を説明するための模式図。
【図2】図1の実施形態の遮光層の効果を説明するための模式的断面図。
【図3】マイクロレンズアレイを有する表示装置にさまざまな角度で入射する外光の経路を説明するための模式図。
【図4】光吸収層の開口端部の設計法を説明するための発光素子部の模式的断面図。
【図5】円形の開口を有する光吸収層を設けた表示装置の正面輝度比および反射率を示す図。
【図6】光吸収層を設ける領域を説明するための模式図。
【図7】本発明の表示装置の製造工程を示す図。
【図8】本発明の実施形態を説明するための模式的断面図。
【図9】本発明の実施形態を説明するための模式的断面図。
【図10】本発明の別の実施形態に係る表示装置を説明するための模式的断面図。
【図11】本発明の更に別の実施形態に係る表示装置を説明するための模式的断面図。
【図12】本発明の表示装置を用いた映像情報処理装置を示す図。
【図13】従来の表示装置の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら本発明に係る表示装置について説明する。以下、有機EL表示装置の例で説明するが、本発明にかかる表示装置の発光素子は、有機EL素子には限定されず、無機EL素子、LEDなどの発光素子であり得る。
【0015】
図1(a)および図1(b)は、本発明の実施形態に係る表示装置の表示領域の一部分を示している。図1(a)は断面図、図1(b)は上面図である。まず表示装置の構成を説明し、その後、光吸収層7について詳細に説明する。
【0016】
発光素子を駆動するための駆動回路や配線等(不図示)が設けられた基板1の上に、第一電極2、発光層を含む有機化合物層4、第二電極5が順次設けられている。本発明において、有機EL素子とは、第一電極2と、第二電極5と、第一電極2および第二電極5に挟まれた有機化合物層4と、を有する構造を意味する。図1(b)のSPIXは、表示装置の表示領域において、発光素子の1つに割り当てられる領域を示しており、サブピクセルと呼ばれる。
【0017】
第一電極2は、発光素子毎に設けられている個別電極である。有機化合物層4は少なくとも発光層を含んでおり、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などの機能層を必要に応じて含んでいても良い。有機化合物層を構成する各層には、公知の材料を用いることができる。有機化合物層4の上には、複数の発光素子(発光素子アレイ)にわたって連続する第二電極5が設けられ、共通電極となっている。
【0018】
一般に有機化合物層は10nm〜100nm程度の薄い層であるため、第一電極2の端部の膜厚段差を覆うことができず、第二電極5と第一電極2とがショートして、有機EL素子が発光しなくなる恐れがある。そこで、第一電極2の端部を傾斜面で覆う隔壁層3を設けるのが好ましい。隔壁層3は、発光素子の発光領域を区画する開口を有している。ここでいう発光領域とは、実線E(隔壁層の開口端部を示す)で囲まれた領域で、本実施形態では有機化合物層4と第一電極2とが接する領域である。
【0019】
第一電極2は発光素子毎に設けられ、第二電極5は発光素子アレイに共通する電極として設けられているが、発光素子を個々に駆動できればこの構成に限定されない。第一電極2および第二電極5には、有機化合物層へのキャリア注入性に優れた材料を選択する。さらに、第一電極2と第二電極5のうち光出射側に位置する電極は、ITO、インジウム亜鉛酸化物、1nm〜10nm程度の薄い金属など、透過性あるいは半透過性の膜で形成される。他方の電極は、有機化合物層内で発せられ基板1側に向かう光が出射側に出射されるように、反射性の電極とするのが好ましい。反射性の電極として、反射率の高いAgやAlなどの金属からなる単層や、金属層とITOやインジウム亜鉛酸化物などの透明導電層との積層体を適用することができる。ここでは、可視光に対して80%以上の透過率を有する特性を透過性といい、光の一部を透過して一部を反射し、可視光に対して20%より大きく80%未満の反射率を有する特性を半透過性という。また、可視光に対して80%以上の反射率を有する特性を反射性という。図1(a)の表示装置は、基板1とは反対側(矢印の方向)に光を出射するトップエミッション型であるため、第一電極2が反射性を有し第二電極5は透過性または半透過性を有している。
【0020】
第二電極5の上には、発光素子に水分や酸素等が浸入するのを防ぐ保護層6が設けられ、その上には発光素子の発光領域に応じて開口を有する光吸収層7が設けられている。ここでいう開口とは点線Fで囲まれた領域であり、光吸収層7が設けられていない領域を指す。図中の点線Fは、光吸収層7に設けられる開口の端部を表している。保護層6は、例えば、窒化珪素、酸窒化珪素などの無機絶縁材料で形成しても良いし、無機絶縁材料と有機絶縁材料との積層体で形成しても良いが、トップエミッション型の表示装置の場合は透過性材料を選択する。光吸収層7には、カーボン粒子等の着色剤を混ぜて黒色あるいは黒色に近い色に着色した樹脂材料などを用いられる。光吸収層7の可視光領域における光吸収率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
【0021】
保護層6および光吸収層7の上には、下引き層8が形成されている。レンズアレイを形成する面(レンズ形成面)が、保護層6や光吸収層7など複数の材質で形成されていると、レンズ形成面と樹脂材料との濡れ性が一様でないため、レンズの形状が不均一になる可能性がある。そこで、レンズ形成面の材質を一様にするため下引き層8で覆い、マイクロレンズの形状のばらつきを低減する。また、同時に下引き層8でレンズ形成面を平坦化しておけば、レンズの形状をより均一にすることが可能である。
【0022】
下引き層8の光出射側には、複数のレンズ9、即ちレンズアレイが配置されるが、各レンズ9の中心位置と対応する発光領域の中心位置とが法線方向で一致するように配置するのが好ましい。レンズの光出射側には、基板1と平行に円偏光部材10が設けられている。円偏光部材10には、公知のものを用いることができるが、レンズ側から順に位相差部材、直線偏光部材が配置され、積層された円偏光部材が好適である。
【0023】
次に、図2を用いて、レンズアレイを備える表示装置における光吸収層7の配置、およびその効果について詳細に説明する。
【0024】
図2(a)は、レンズ9を設け、かつ、光吸収層7を設けない表示装置に入射する外光の経路の概略を示している。レンズ9の表面で屈折して表示装置内に入射した外光は、表示装置内の反射電極や、反射電極と同層あるいはその下層にある金属層で形成される配線などの表面で反射され、再びレンズ9の表面で屈折して外部に出射する。光線Aは基板1の法線方向から入射する外光が、表示装置内で反射されて基板1の法線方向に出射する経路を示している。光線Bは基板の斜め方向から入射する外光が、表示装置内で反射されて基板1の法線方向に出射する経路を示している。この様に、基板1に法線方向から入射する光線Aだけでなく、斜めに入射する光線Bが基板1の法線方向に出射するのは、レンズの斜面角が一様でないことに起因している。ここで、レンズの斜面角とは、レンズ表面の所定の点に接する面と基板1の表面とが成す角を指す。
【0025】
光線Aは、基板1に法線方向から入射するため、円偏光部材10を法線方向に通過し、円偏光部材10で吸収されて光量がおおよそ半減すると共に、円偏光部材10を通過した光は円偏光部材10の特性に応じて右回りもしくは左回りの円偏光となる。その後、表示装置内で反射されて逆回りの円偏光となり、基板の法線方向に出射する。基板の法線方向に出射した光線Aは、再び円偏光部材10を法線方向に通過する際に円偏光部材10でほぼ吸収される。つまり、光線Aのように、基板1の法線方向から入射し、表示装置内で基板1の法線方向に反射する外光は、円偏光部材10を常に法線方向に通過するため、ほぼ消光することができる。
【0026】
一方、光線Bは、基板1に斜めに入射するため、円偏光部材10を斜め方向に通過する。このとき、入射角に応じて一部の光が円偏光部材10に吸収され、残りは円偏光部材10を通過する。円偏光部材10を通過した光には、円偏光だけでなく円偏光になりきれない光が含まれるが、入射角が大きいほど、円偏光部材10に吸収されずに円偏光部材10を通過する光の割合が増え、円偏光になりきれない光の割合も増える。円偏光部材10を通過した光は、レンズ9で屈折して表示装置に入射する。そして、表示装置内で反射され、レンズ9で屈折して基板の法線方向に出射し、再び円偏光部材10を法線方向に通過する。円偏光部材10を再通過する光のうち、円偏光は表示装置内で反射されて逆回りの円偏光となっているため、円偏光部材10を通過する際に吸収される。しかし、円偏光になりきれない光は円偏光部材10では吸収されず、そのまま外部に出射してしまう。従って、光線Bのように基板に斜めから入射する外光は、円偏光部材10だけでは十分に消光することができない。
【0027】
ここで、レンズを備えた表示装置内で反射され、正面に出射する外光、即ち、基板の法線方向に出射する外光について、基板への入射角と円偏光部材による消光度との関係を考える。図3に、基板にさまざまな角度で入射して表示装置内で反射され、レンズで屈折して法線方向に出射する外光を示す。X、Y、Zは、それぞれレンズの斜面角が0°、30°、45°の各領域の近傍から出射され、表示装置の法線方向に出射する光線の経路を簡略化して示したものである。
【0028】
レンズの斜面角が小さい領域から出射される光線Xは、基板1に対する入射角と出射角が共に小さい。レンズの斜面角が比較的大きい領域から出射される光線Yや光線Zは、基板1に対する入射角が大きく、さらにレンズで屈折される角度も大きいため、法線方向に出射する。
【0029】
光線Xのように基板1に対して略法線方向から入射する外光は、円偏光部材を法線方向に通過し、表示装置内で反射された後も法線方向に円偏光部材を通過するため、円偏光部材でほぼ消光することができる。しかし、光線Yや光線Zのように、基板1に対する入射角が大きい外光は、入射角が大きいほど円偏光になりきれない光の割合が増え、円偏光部材で消光できない光が増える。さらに、正面に出射する外光のうち、通過するレンズ表面の部位における斜面角が大きいほど、円偏光部材では消光できない光となり、正面方向において視認性を悪化させる要因となっている。
【0030】
そこで、基板に対して大きな入射角で表示装置に入射し、レンズの斜面角が最大の領域を通って出射する光を遮るように、光吸収層を設ければよい。大きな入射角で表示装置に入射しレンズの斜面角が最大の領域から基板の法線方向に出射する光の経路は、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置に入射する光の経路に等しい。従って、光吸収層は、少なくとも基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光を遮る位置に設けるとよい。図2(a)の構成に本発明にかかる光吸収層7を付加した表示装置における外光の入射経路を、図2(b)に示す。図2(b)には、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光を遮るように光吸収層7が設けられているため、円偏光部材で消光することのできない光線Bは光吸収層7によって吸収され、外部へは出射しない。この様に、レンズと第一電極と同層で形成される反射面との間に光吸収層7を設けることにより、視認性を悪化させる要因となっている反射光を低減することができる。
【0031】
光吸収層7には、発光素子で発せられた光(発光光)をなるべく遮らずに外部に出射するように、開口を設けることが好ましい。
【0032】
具体的には、発光素子の発光領域の端部で発せられ、レンズの端部を通って外部に出射する光が光吸収層で遮られないように、光吸収層7に開口を設ける。このように光吸収層7を設けることにより、発光素子で発せられた光がレンズを介して外部に出射するのを妨げず、かつ、表示装置に入射して発光装置内の第一電極等の反射面で反射され外部に出射する反射外光を低減することができる。
【0033】
光吸収層7の効果を、複数の表示装置のサンプルを作製して検証した。サンプルは光吸収率がほぼ100%の光吸収層に円形の開口を有する表示装置で、1サブピクセルのサイズを3000μm2とし、光吸収層の開口のサイズの直径がそれぞれ0μm、25μm、30μm、35μm、40μmであるサンプルを作製した。いずれのサンプルも、発光領域はφ8μmの円形、隔壁層の膜厚を1μm、保護層(屈折率1.96)の層厚を5μm、光吸収層の膜厚を1μm、下引き層(屈折率1.55)の層厚を3.5μmとした。また、レンズ(屈折率1.68)の直径を39.95μm、高さを19μm、曲率半径を20μmとした。なお、括弧内に示した屈折率は、いずれも波長550nmにおける値である。
【0034】
ここで、光吸収層7の開口端部の設計法を、発光素子部の概略断面図である図8を用いて説明する。図8では隔壁層の膜厚は保護層の膜厚に、光吸収層の膜厚は下引き層の膜厚にそれぞれ加えて示している。
【0035】
最初に、発光素子の発光領域端部で発せられレンズの端部を通って外部に出射する光の経路を考慮した開口端部Fの設計例を、図4(a)を用いて説明する。光の経路を厳密に計算すると、レンズの収差の影響などで式が非常に複雑になるため、ここでは発光領域の端部Jから出射され、最寄りのレンズ端部Kを通る光線で近似する。
【0036】
図4(a)の関係とスネルの法則から、以下の3つの式が導き出すことができる。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
式中、r1は発光部の半径、r2はレンズの半径、n1は保護層の屈折率、n2は下引き層の屈折率を表している。t1は保護層と隔壁層の合計膜厚、t2は下引き層と光吸収層の合計膜厚である。また、θ1は発光端部より出射されレンズの端部を通る光線が保護層中を通過する角度、θ2は下引き層中を通過する角度である。
【0041】
(1)〜(3)の式から算出されるrminは、発光素子の発光領域の端部で発せられレンズの端部Kを通って外部に出射する光が光吸収層形成面を通過する点L1と、光吸収層7の開口中心Oとの距離となる。すなわち、光吸収層7の開口中心と開口端部Fの各点との最短距離r(開口の形状が円の場合は開口半径)をrminよりも大きく設定すれば、発光素子で発せられた光が表示装置の外部へ出射するのを妨げないで光吸収層を設けることができる。
【0042】
次に、基板の法線方向から入射し、レンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置内に入射する光の経路を考慮した開口端部の算出例を、図4(b)を用いて説明する。図4(a)の時と同様に、レンズの斜面角が最大の領域Mを通って表示装置内に入射する光の光吸収層形成面を通過する点L2と光吸収層の開口中心Oとの距離rmaxは、図4(b)の関係とスネルの法則によって次の2式で表される。
【0043】
【数4】
【0044】
【数5】
【0045】
n3はレンズの屈折率、n4は外部(レンズの外側)の屈折率、θはレンズ端部におけるレンズの斜面角を表している。上記の2式にそれぞれの値を代入すればrmaxを算出することができる。光吸収層の開口中心Oと開口端部Fの各点との最短距離r(開口の形状が円の場合は開口半径)をrmaxよりも小さく設定すれば、基板の法線方向から入射し、レンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置内に入射する光を遮って吸収することができる。なお、レンズの形状によっては、レンズの収差によりrmax<rminとなる場合がある。この場合、光吸収層7の開口の半径は、rmin<rとなるように決めるとよい。
【0046】
以上のことから、本願発明における光吸収層の開口中心Oと開口端部Fの各点との最短距離rのは、rmin<r、またはrmin<r<rmaxとなるよう設計するのが好ましい。作製したサンプルにおけるそれぞれのパラメータの値を上記の(1)乃至(5)の式に代入して、rmin=10.2μm、rmax=14.8μmが導き出される。
【0047】
図5に、各サンプルの反射率の測定値を示す。図5には、作製したサンプルと同様の構成で、光吸収層の開口サイズを直径25〜40μmの範囲で変えた複数のモデルについて、正面輝度と光吸収層を設けない構成の表示装置モデルの正面輝度との比(正面輝度比)を、シミュレーションした値を一緒に示しておく。
【0048】
横軸は、1サブピクセルサイズに対する光吸収層の開口の面積割合で示してある。光吸収層の開口の直径0μm、25μm、30μm、35μm、40μmを1サブピクセルサイズに対する光吸収層の開口の面積割合に換算すると、それぞれ0%、16%、23.6%、32%、42%となる。左側の縦軸の目盛は正面輝度比を示すもので、光吸収層を設けた表示装置の正面輝度を、光吸収層を設けない表示装置の正面輝度で割った値で示している。また、右側の縦軸の目盛は反射率を示すもので、表示装置に入射する外光のうち、表示装置内で反射されて外部に出射される光の割合を示している。
【0049】
図5から分かるように、正面輝度比と反射率のいずれも、光吸収層の開口が小さくなるにつれて減少する傾向にある。正面輝度比が急激に減少する点Pの横軸の値は、先ほど算出したrmin=10.2μmのときの開口の面積割合10.4%とほぼ一致する。図6に、光素子の発光領域端部で発せられレンズの端部を通って外部に出射する光線をラインCで示す。このラインCが光吸収層の開口の内側を通るように、即ち、ラインCの外側に(例えば、範囲SPの外側)に光吸収層の開口の端部を設ければ、発光素子で発せられた光が外部に出射するのを妨げることなく反射率を低減することができる。
【0050】
また、図5の反射率の減少率が大きくなる点Qの横軸の値は、先ほど算出した、rmax=14.8umのときの開口の面積割合22.9%とほぼ一致する。図6に、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置内へ入射する光線をラインDで示す。このラインDが光吸収層の開口の外側を通るように、即ち、ラインDの内側(例えば範囲SQの内側)に光吸収層の開口端部Fを設ければ、効率良く反射率を低減することができる。
【0051】
以上のことから、光吸収層の開口の端部Fは、図6のラインCの外側、かつラインDの内側(発光素子側)に設けるのが好ましいことがわかる。つまり、光吸収層の開口の端部は、レンズと第一電極との間に配置され、発光素子で発せられレンズの端部を通って外部に出射される光を遮らず、かつ、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置内に入射する光を遮る位置に設けるのが最も好ましい。光吸収層の開口の大きさや配置は、式(1)乃至(5)から分かるように、発光装置を構成する各材料の屈折率や膜厚、レンズの径および曲率等の値を用いて設計することができる。また、光吸収層の開口の形状は円形である必要はなく、発光領域やレンズ形状に応じて適宜設計することができる。表示装置を構成する各材料の屈折率は、組成や膜密度など、成膜条件によって変化する場合がある。例えば、保護層に好適に用いられる窒化珪素の場合、波長550nmの光に対して1.75から2.00の範囲で変化することが知られている。光吸収層の開口設計に用いる膜の屈折率は、ガラス基板に単層膜として形成し、膜の反射率測定から算出した屈折率を採用することができる。また、あらかじめ膜の組成や密度などの物性と屈折率の関係を調べておき、膜の組成や密度などの測定値から外挿した屈折率を採用してもよい。あるいは、電子顕微鏡を用いた電子エネルギー損失分光法(TEM−ELLS)を用いて、表示装置を構成する膜を複数種類まとめて基板に積層し、各膜の断面のナノレベルの領域から算出した屈折率を採用してもよい。
【0052】
続いて、本発明にかかる表示装置の製造方法を、図7を参照しながら説明するが、公知の製造工程を適宜適用することができる。
【0053】
図7は、本実施形態の表示装置の各製造工程を示す概要断面図である。先ず、図7(a)に示すように、公知の方法にてアクティブマトリクス型の駆動回路が形成されたガラスや樹脂など絶縁性の表面を有する基板、又はシリコンなどの半導体基板1の上に、トップエミッション型の有機EL素子を複数形成する。この有機EL素子は、基板側から順に、第一電極としてアノード電極2、隔壁層3、有機化合物層4、第二電極としてカソード電極5を形成したものである。第一電極は、基板1に設けられた不図示の層間絶縁膜および平坦化膜のコンタクトホールを介して、不図示の駆動回路に電気的に接続されている。
【0054】
次に、保護層6を少なくとも有機EL素子が配置された表示領域の全域を覆うように形成する。保護層6は、水分が有機EL素子に浸入するのを防止するための層で、光の透過率が90%以上と高く、かつ、防湿性に優れた材料で形成するのが好ましい。図7(a)では保護層の表面がカソード電極に倣った形状をしているが、平坦な表面であっても構わない。
【0055】
次に、保護層6上に、光吸収層7を、表示領域の全域に形成する(図7(b))。光吸収層7には、光吸収率が90%以上、より好ましくは95%以上の材料が好ましく、具体的には、光の照射により硬化する感光性のバインダーと、黒色着色剤とを含有するブラックレジストが好適である。光吸収層の膜厚は、十分な光吸収率が得られるように10nm〜10μmの範囲の膜厚とするのが好ましい。
【0056】
続いて、ブラックレジストをスピンコート法にて表示領域の全面に形成した後、フォトマスク12を使いて光吸収層7を残す領域のブラックレジストに露光した後に現像を行い(図7(c))、光吸収層7に開口を設ける(図7(d))。他にディスペンス法や印刷法などを用いて形成することも可能である。その後、表示領域の全域に下引き層8を形成する(図7(e))。下引き層8は、レンズアレイ形成面とレンズ材料9´との濡れ性の均一化を図ると共に、レンズアレイと発光層との光学距離を調節するための機能も有する。光学距離の調整のためには、10nm〜100μmの膜厚で形成される。
【0057】
次にレンズ材料層9´を表示領域の全域に形成した後にリソグラフィ法によって、各有機EL素子の上にレンズ材料層9´を円柱形状にパターニングする(図7(f))。続いて、レンズ材料層9´を加熱により一旦溶かしてレンズ形状に変形させた後に硬化させ、光出射側に凸形状のレンズアレイを形成する。レンズアレイを形成する方法は、他に、均一の厚さに形成した樹脂層を型で押したり、面内方向に分布を持った光で露光したりして形成する方法など、公知の方法を採用することもできる。レンズの材料には、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の可視光の光透過率が90%以上、より好ましくは95%の材料を用いる。なお、隣接するレンズは、必ずしも互いに離間している必要はない。またレンズの高さは、吸収による光量の減衰を防止のために100μm以下とするのが好ましい。
【0058】
本発明のレンズ9には、図8に示すように中央部と端部で曲率の異なる形状のレンズも好適に用いることができる。図8のレンズの場合、レンズの斜面角が最大となる部位は、レンズ表面の変曲点近傍となる。図8にレンズの斜面角が最大となる部位を丸で囲んで示しておく。また、レンズの形状は球面状や図8のような形状以外にも、円錐台状、円柱状などでもよい。いずれのレンズを用いた場合も、図7のレンズの場合と同様にして光吸収層を設ければ、効果的に外光反射を抑制することができる。また、本発明は、図7のような光出射側に凸形状の集光機能を有するレンズに限られず、図9のような光出射側に凹形状の発散機能を有するレンズを設ける場合にも適用することができる。
【0059】
図7の製造工程で作製される表示装置は、保護膜6の表面に接する位置に光吸収層7が設けられているが、隔壁層3として、前述した光吸収層に用いる光透過率の低い材料と同じような光透過率を有する材料で形成する図10の構成も好ましい。このような構成によれば、光吸収層7を別層で作製する必要がなくなるため製造工程が簡略でき、材料コストも低く抑えることができる。また図11のように、隔壁層3と有機化合物層4との間に設けてもよい。
【0060】
なお、本発明の表示装置は、屋外などの外光の強い環境において、高輝度な表示による視認性の向上が重要なモバイル用途、例えばデジタルカメラの背面モニタ、携帯電話用ディスプレイに好適に用いることができる。本発明にかかる表示装置を映像情報処理装置に用いた例を示す。図12は、本発明が用いられる映像情報処理装置としてのデジタルスチルカメラシステムのブロック図である。図中、11はデジタルスチルカメラシステム、12は撮影部、13は映像信号処理回路、14が本発明にかかる表示装置、15はメモリ、16はCPU、17は操作部を示す。
【0061】
図12において、撮影部12で撮影した映像又はメモリ15に記録された映像情報を、映像信号処理回路13で信号処理して映像信号を生成し、表示装置14に表示することができる。コントローラーは、操作部17からの入力によって撮影部12、メモリ15、映像信号処理回路13等を制御するCPU16を有し、状況に適した撮影、記録、再生、表示を行う。また、表示装置14は、この他にも各種映像情報処理装置の表示部として用いることができ、屋外で利用される機会の多い携帯電子機器に好適である。
【0062】
本発明は、上述した趣旨を逸脱しない限り、説明した構成に限られることはなく、種々の応用や変形が可能である。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
本実施例では、図1に示す表示装置を作製した。ガラス基板1の上に、低温ポリシリコンTFTで画素回路(不図示)を形成し、その上に窒化珪素(SiN)からなる層間絶縁膜とアクリル樹脂からなる平坦化膜(いずれも不図示)をこの順番で形成して、図7(a)に示す回路基板を作製した。この回路基板上にスパッタリング法にて、ITO膜とAlNd膜をそれぞれ38nm、100nmの厚さでこの順に形成した。続いて、ITO膜およびAlNd膜を画素毎にパターニングし、複数のアノード電極2を形成した。
【0064】
この上に、アクリル樹脂をスピンコートしてプリベークした。プリベーク後のアクリル樹脂層の厚さを1μmとした。次に、リソグラフィ法により、アノード電極2が形成された部分に開口が形成されるようにアクリル樹脂層をパターニングし、ポストベークにより硬化させて隔壁層3を形成した。この開口が有機EL素子の発光領域に相当する。
【0065】
隔壁層3の開口のピッチを60μm、開口によるアノード電極2の露出部分の大きさをφ8μmとした。隔壁層3までが形成された基板をイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄した後、煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄してから有機化合物層4を真空蒸着により成膜した。
【0066】
有機化合物層4として、始めに、すべてのサブピクセルに共通するホール輸送層として、α−NPDを真空蒸着法にて87nmの厚さに成膜した。成膜時の真空度は1×10−4Pa、蒸着レートは0.2nm/secであった。次に、アノード電極2の露出部分、即ち、発光領域に対応する開口を有するシャドーマスクを用い、サブピクセルに応じて赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ厚さ30nm、40nm、25nmで成膜した。続いて、すべてのサブピクセルに共通の電子輸送層として、バソフェナントロリン(Bphen)を真空蒸着法にて10nmの厚さで成膜した。蒸着時の真空度は1×10−4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。その後、すべてのサブピクセルに共通の電子注入層として、BphenとCs2CO3を共蒸着(重量比90:10)して40nmの厚さで成膜した。成膜時の真空度は3×10−4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。
【0067】
有機化合物層4を成膜した基板を、真空環境を維持したままスパッタ装置に移動した。スパッタ装置でカソード電極5として極薄Agを10nm、酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物からなる透明電極層を50nmの厚さで順に成膜し、基板上に発光素子が複数配置された発光素子アレイを形成した。
【0068】
次に、窒化珪素からなる保護層6を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法にて、5μmの厚さで成膜した(図7(a))。保護層6の屈折率は1.96であった。
【0069】
保護層6までが形成された基板を大気中に取り出し、カーボンの粒子を光感光性樹脂に拡散させたブラックレジストをスピンコーターにて全体に塗布し、プリベークを施した(図11(b))。膜厚は1μmとした。その後、ピッチ60μmでφ25μmのドットが並んだフォトマスクをアライメントした後に露光し、現像後にポストベークして硬化し、開口を有する光吸収層7を形成した(図7(c))。
【0070】
続いて、粘度2000mPa・s、波長550nmにおける屈折率が1.55の紫外線硬化性樹脂をスピンコーターにて塗布した。その後、紫外線硬化樹脂を露光して硬化させ、膜厚は3.5μmの下引き層8を形成した(図7(e))。
【0071】
次に、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・s、波長550nmにおける屈折率が屈折率1.68の熱硬化性の樹脂材料(エポキシ樹脂)をスピンコーターにて塗布した。その後、プリベークして膜厚16μmのレンズ材料層9´を表示領域の全域に形成した(図7(f))。次いで、フォトリソグラフィによってパターニングし、各有機EL素子の上にレンズ材料層9´からなるφ40μmの円柱を形成した(図7(g))。続いて、レンズの材料となる層9´を加熱により一旦溶かしてレンズ形状に変形させた後硬化させることにより、光出射側に凸形状のレンズを形成した。レンズの形状は、直径39.95μm、高さ19μm、曲率半径20μmとなった。
【0072】
なお、本実施例における光吸収層の開口のサイズを決めるにあたって、前述の式(1)〜(3)に本実施例の各材料の数値を代入して開口の最小半径を算出し、前述の式(4)〜(5)に本実施例の各材料の数値を代入して最大半径を算出した。その結果、本実施例の構成の場合、光吸収層の開口の半径rの好ましい範囲は10.2μm<r<14.8μm、直径に言い換えると20.4μm<2r<29.6μmと算出された。本実施例では、この条件を満たすように開口を直径25μmとした。
【0073】
このようにして作製した有機EL表示装置の光出射側に、基板と平行に、レンズアレイ側から順に、位相差部材、直線偏光部材が積層された円偏光部材(不図示の)を設け、正面輝度および反射率を評価した。評価は、光吸収層の直径が本発明の好ましい範囲から外れる40μmであるという点を除いて本実施例と同様の有機EL表示装置を作成し、同じ画像を表示して比較することで行った。実施例1にかかる表示装置は、比較例と同等の正面輝度が観測され、比較例の表示装置の外光の反射率が1.6%であったのに対して、0.5%に低減した。
【0074】
(実施例2)
本実施例では、図11に示す構成の表示装置を形成した。製造方法は、隔壁層の形成後かつ有機EL層の成膜の前に光吸収層を形成することを除いて、実施例1と同様である。
【0075】
隔壁層までを実施例1と同様に形成した後、実施例1と同様の光吸収層を構成する材料と同じブラックレジストをスピンコーターにて塗布し、プリベークして膜厚を1μmとした。その後、ピッチ60μmでφ15μmのドットが並んだフォトマスクを用い、ブラックレジストを露光し、現像後に硬化した。その後の工程は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
本実施例における光吸収層の開口のサイズを決めるにあたっては、光吸収層の膜厚を保護層に加算した点を除いて実施例1と同様に算出した。式(1)〜(5)より、光吸収層の開口の半径rの好ましい範囲は4μm<r<11.5μm、直径に言い換えると8μm<2r<23μmと算出された。本実施例では、この条件を満たすように、光吸収層の開口の直径を15μmとした。
【0077】
このようにして作製した有機EL表示装置を、光吸収層の直径が本発明の好ましい範囲から外れる30μmであるという点を除いて本実施例と同様に作製した有機EL表示装置を用いて、実施例1と同様に比較した。結果は実施例1と同様で、本実施例に係る表示装置の正面輝度は比較例と同等で、反射率は比較例より低減していた。
【0078】
(実施例3)
遮光層の形成手法として、実施例1とは異なり、図10に示す構成を形成した。レンズを形成する工程までは、ブラックレジストを用いて隔壁層3を形成し、光吸収層7を設けなかった点を除いて実施例1と同様であるため、説明を省略する。本実施例は隔壁層が光吸収層なので、発光領域と光吸収層の開口とは同じサイズとなる。
【0079】
本実施例では、型押しによってレンズを形成した。まず、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・s、屈折率1.68の熱硬化性の樹脂材料(エポキシ樹脂)を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、製品名SHOT MINI SL)を用いて塗布した。そして、樹脂材料を熱硬化する前に、図7(g)のように、別途用意したレンズ17を成形するための型を、樹脂材料の表面に押し当てた。押し当てる際、型に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークをあわせる事により位置決めを行なった。その結果、画素に合わせてレンズ9が形成された。型には、画素ピッチと同じピッチで凹状に窪みが形成されており、その窪みの表面には離形剤としてテフロン(登録商標)系の樹脂をコートしておいた。窪みの形状、すなわちレンズ9の形状は、直径38μm、曲率半径20μmとした。
【0080】
型を押し当てた状態で、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱し、樹脂材料(エポキシ樹脂)を硬化させた。その後、樹脂から型を離して、半球面状に近いレンズ9を形成した。レンズアレイの高さは10μm程度になった。
【0081】
このようにして作製した有機EL表示装置を、光吸収層を従来と同じ透過性の材料で形成した点を除いて本実施例と同様に作製した有機EL表示装置を用いて実施例1と同様に比較した。結果は実施例1と同様で、本実施例に係る表示装置の正面輝度は比較例と同等で、反射率は比較例より低減していた。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 第一電極
3 隔壁層
4 有機化合物層
5 第二電極
6 保護層
7 光吸収層
8 下引き層
9 レンズ
10 円偏光部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、特に有機EL素子を用いた表示装置、およびそれを用いた映像情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を用いた表示装置(以下、有機EL表示装置)は、図13に示したように、駆動回路を設けた基板1の上に、有機EL素子を複数配置し、その表面を保護層6で覆う構成が一般的である。有機EL素子とは、第一電極2と第二電極5と、これらの電極に挟まれた発光層を含む有機化合物層4からなる構造を指しており、各有機EL素子の発光領域は隔壁層3で区画されている。又、有機EL素子は保護層6で覆われ、外部空間に含まれる水分や酸素等による劣化から保護されている。
【0003】
図13の表示装置には、有機EL素子から様々な角度に発せされる光(発光光)が、主に保護層6と外部空間との境界で全反射され、発光光の半分以上を有機EL表示装置の外部に取り出せないという課題がある。また、外部からの光(外光)を受ける環境では、表示装置内に入射した外光は、駆動回路の配線や反射性の第一電極を構成する金属層や積層膜の界面により反射され、外部へと出射される。そのため、観察者には、表示装置内で反射された外光と外部に出射される発光光との両方が観察され、視認性(コントラスト、視野角特性など)が低下して見えるという課題もある。
【0004】
これらの課題を解決する方法として、
特許文献1には、有機EL表示装置の表面に複数のレンズからなるレンズアレイを配置し、レンズの表面に反射防止層を設けると共に、レンズの光出射側に基板と平行に偏光板を配置する構成が開示されている。この構成によれば、レンズアレイにより表示装置と外部空間との境界で生じる全反射を低減して光取り出し効率を高めると共に、反射防止層および偏光板により外光の反射を低減することができる。
【0005】
特許文献2には、有機EL素子に対応してレンズを搭載した有機EL装置において、有機EL素子に対応して位置する複数の開口を有するブラックマスクを、パッシベーション層とレンズシートとの間に、配設する構成が開示されている。このようなブラックマスクを備える有機EL表示装置は、有機EL素子で発せられた光が、他の有機EL素子に対応する隣りのレンズに到達するのを防止し、基板の法線方向以外の方向における視認性を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−205849号公報
【特許文献2】特開2004−127661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
円偏光部材(偏光板)は、外部から表示装置内に入射する外光、あるいは、表示装置内部で反射されて再び外部に出射される外光のいずれについても、円偏光部材を法線方向に通過する光の成分を消光することができる。しかし、円偏光部材を斜めに通過する光、あるいは一旦円偏光部材を斜めに通過した光の成分は消光することはできない。
【0008】
表示装置は、正面、即ち基板の法線方向から観察される機会が多いため、法線方向の視認性が高いことが求められる。特許文献1の表示装置の場合、レンズでの屈折に起因して、基板に対して斜めに入射、即ち円偏光部材を斜めに通過し、表示装置内で反射されて基板の法線方向に出射される外光が生じる。このような外光は、表示装置への入射時に円偏光部材を斜めに通過した光の成分を含んでいるので、円偏光部材では十分に消光されずに表示装置の法線方向に出射され、視認性の低下を引き起こす。つまり、特許文献1のようなレンズを有する表示装置では、表示装置内で反射された外光を偏光板(円偏光部材)で抑制するだけでは十分とは言えない。
【0009】
特許文献2のブラックマスクの配置は、レンズを介して表示装置内に入射し、表示装置内で反射されてレンズを介して基板の法線方向に出射される外光を抑制することは考慮されていない。
【0010】
本発明は、レンズでの屈折に起因して、基板に対して斜めに入射し表示装置内で反射されて基板の法線方向に出射される外光を低減し、表示装置の正面からの観察に対して視認性の高い表示を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するため、本発明にかかる表示装置は、
第一電極と第二電極とそれらの間に配された発光層とを有する発光素子が基板上に複数配置された発光素子アレイと、
前記発光素子アレイの光出射側に前記複数の発光素子に対応して配置された複数のレンズを有するレンズアレイと、
を備える表示装置であって、
前記レンズアレイと前記第一電極との間には前記複数のレンズのそれぞれに対応する複数の開口を有する光吸収層が配置されており、
前記複数の開口のそれぞれの端部は、前記基板の法線方向から前記複数のレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光が前記光吸収層で遮られるように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マイクロレンズの最も斜面角の大きな領域を通って入射する光が、レンズと第一電極との間に設けられた光吸収層によって吸収される。その結果、レンズの屈折に起因して光偏光部材で消光することのできない外光反射を低減し、視認性に優れた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置を説明するための模式図。
【図2】図1の実施形態の遮光層の効果を説明するための模式的断面図。
【図3】マイクロレンズアレイを有する表示装置にさまざまな角度で入射する外光の経路を説明するための模式図。
【図4】光吸収層の開口端部の設計法を説明するための発光素子部の模式的断面図。
【図5】円形の開口を有する光吸収層を設けた表示装置の正面輝度比および反射率を示す図。
【図6】光吸収層を設ける領域を説明するための模式図。
【図7】本発明の表示装置の製造工程を示す図。
【図8】本発明の実施形態を説明するための模式的断面図。
【図9】本発明の実施形態を説明するための模式的断面図。
【図10】本発明の別の実施形態に係る表示装置を説明するための模式的断面図。
【図11】本発明の更に別の実施形態に係る表示装置を説明するための模式的断面図。
【図12】本発明の表示装置を用いた映像情報処理装置を示す図。
【図13】従来の表示装置の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら本発明に係る表示装置について説明する。以下、有機EL表示装置の例で説明するが、本発明にかかる表示装置の発光素子は、有機EL素子には限定されず、無機EL素子、LEDなどの発光素子であり得る。
【0015】
図1(a)および図1(b)は、本発明の実施形態に係る表示装置の表示領域の一部分を示している。図1(a)は断面図、図1(b)は上面図である。まず表示装置の構成を説明し、その後、光吸収層7について詳細に説明する。
【0016】
発光素子を駆動するための駆動回路や配線等(不図示)が設けられた基板1の上に、第一電極2、発光層を含む有機化合物層4、第二電極5が順次設けられている。本発明において、有機EL素子とは、第一電極2と、第二電極5と、第一電極2および第二電極5に挟まれた有機化合物層4と、を有する構造を意味する。図1(b)のSPIXは、表示装置の表示領域において、発光素子の1つに割り当てられる領域を示しており、サブピクセルと呼ばれる。
【0017】
第一電極2は、発光素子毎に設けられている個別電極である。有機化合物層4は少なくとも発光層を含んでおり、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などの機能層を必要に応じて含んでいても良い。有機化合物層を構成する各層には、公知の材料を用いることができる。有機化合物層4の上には、複数の発光素子(発光素子アレイ)にわたって連続する第二電極5が設けられ、共通電極となっている。
【0018】
一般に有機化合物層は10nm〜100nm程度の薄い層であるため、第一電極2の端部の膜厚段差を覆うことができず、第二電極5と第一電極2とがショートして、有機EL素子が発光しなくなる恐れがある。そこで、第一電極2の端部を傾斜面で覆う隔壁層3を設けるのが好ましい。隔壁層3は、発光素子の発光領域を区画する開口を有している。ここでいう発光領域とは、実線E(隔壁層の開口端部を示す)で囲まれた領域で、本実施形態では有機化合物層4と第一電極2とが接する領域である。
【0019】
第一電極2は発光素子毎に設けられ、第二電極5は発光素子アレイに共通する電極として設けられているが、発光素子を個々に駆動できればこの構成に限定されない。第一電極2および第二電極5には、有機化合物層へのキャリア注入性に優れた材料を選択する。さらに、第一電極2と第二電極5のうち光出射側に位置する電極は、ITO、インジウム亜鉛酸化物、1nm〜10nm程度の薄い金属など、透過性あるいは半透過性の膜で形成される。他方の電極は、有機化合物層内で発せられ基板1側に向かう光が出射側に出射されるように、反射性の電極とするのが好ましい。反射性の電極として、反射率の高いAgやAlなどの金属からなる単層や、金属層とITOやインジウム亜鉛酸化物などの透明導電層との積層体を適用することができる。ここでは、可視光に対して80%以上の透過率を有する特性を透過性といい、光の一部を透過して一部を反射し、可視光に対して20%より大きく80%未満の反射率を有する特性を半透過性という。また、可視光に対して80%以上の反射率を有する特性を反射性という。図1(a)の表示装置は、基板1とは反対側(矢印の方向)に光を出射するトップエミッション型であるため、第一電極2が反射性を有し第二電極5は透過性または半透過性を有している。
【0020】
第二電極5の上には、発光素子に水分や酸素等が浸入するのを防ぐ保護層6が設けられ、その上には発光素子の発光領域に応じて開口を有する光吸収層7が設けられている。ここでいう開口とは点線Fで囲まれた領域であり、光吸収層7が設けられていない領域を指す。図中の点線Fは、光吸収層7に設けられる開口の端部を表している。保護層6は、例えば、窒化珪素、酸窒化珪素などの無機絶縁材料で形成しても良いし、無機絶縁材料と有機絶縁材料との積層体で形成しても良いが、トップエミッション型の表示装置の場合は透過性材料を選択する。光吸収層7には、カーボン粒子等の着色剤を混ぜて黒色あるいは黒色に近い色に着色した樹脂材料などを用いられる。光吸収層7の可視光領域における光吸収率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
【0021】
保護層6および光吸収層7の上には、下引き層8が形成されている。レンズアレイを形成する面(レンズ形成面)が、保護層6や光吸収層7など複数の材質で形成されていると、レンズ形成面と樹脂材料との濡れ性が一様でないため、レンズの形状が不均一になる可能性がある。そこで、レンズ形成面の材質を一様にするため下引き層8で覆い、マイクロレンズの形状のばらつきを低減する。また、同時に下引き層8でレンズ形成面を平坦化しておけば、レンズの形状をより均一にすることが可能である。
【0022】
下引き層8の光出射側には、複数のレンズ9、即ちレンズアレイが配置されるが、各レンズ9の中心位置と対応する発光領域の中心位置とが法線方向で一致するように配置するのが好ましい。レンズの光出射側には、基板1と平行に円偏光部材10が設けられている。円偏光部材10には、公知のものを用いることができるが、レンズ側から順に位相差部材、直線偏光部材が配置され、積層された円偏光部材が好適である。
【0023】
次に、図2を用いて、レンズアレイを備える表示装置における光吸収層7の配置、およびその効果について詳細に説明する。
【0024】
図2(a)は、レンズ9を設け、かつ、光吸収層7を設けない表示装置に入射する外光の経路の概略を示している。レンズ9の表面で屈折して表示装置内に入射した外光は、表示装置内の反射電極や、反射電極と同層あるいはその下層にある金属層で形成される配線などの表面で反射され、再びレンズ9の表面で屈折して外部に出射する。光線Aは基板1の法線方向から入射する外光が、表示装置内で反射されて基板1の法線方向に出射する経路を示している。光線Bは基板の斜め方向から入射する外光が、表示装置内で反射されて基板1の法線方向に出射する経路を示している。この様に、基板1に法線方向から入射する光線Aだけでなく、斜めに入射する光線Bが基板1の法線方向に出射するのは、レンズの斜面角が一様でないことに起因している。ここで、レンズの斜面角とは、レンズ表面の所定の点に接する面と基板1の表面とが成す角を指す。
【0025】
光線Aは、基板1に法線方向から入射するため、円偏光部材10を法線方向に通過し、円偏光部材10で吸収されて光量がおおよそ半減すると共に、円偏光部材10を通過した光は円偏光部材10の特性に応じて右回りもしくは左回りの円偏光となる。その後、表示装置内で反射されて逆回りの円偏光となり、基板の法線方向に出射する。基板の法線方向に出射した光線Aは、再び円偏光部材10を法線方向に通過する際に円偏光部材10でほぼ吸収される。つまり、光線Aのように、基板1の法線方向から入射し、表示装置内で基板1の法線方向に反射する外光は、円偏光部材10を常に法線方向に通過するため、ほぼ消光することができる。
【0026】
一方、光線Bは、基板1に斜めに入射するため、円偏光部材10を斜め方向に通過する。このとき、入射角に応じて一部の光が円偏光部材10に吸収され、残りは円偏光部材10を通過する。円偏光部材10を通過した光には、円偏光だけでなく円偏光になりきれない光が含まれるが、入射角が大きいほど、円偏光部材10に吸収されずに円偏光部材10を通過する光の割合が増え、円偏光になりきれない光の割合も増える。円偏光部材10を通過した光は、レンズ9で屈折して表示装置に入射する。そして、表示装置内で反射され、レンズ9で屈折して基板の法線方向に出射し、再び円偏光部材10を法線方向に通過する。円偏光部材10を再通過する光のうち、円偏光は表示装置内で反射されて逆回りの円偏光となっているため、円偏光部材10を通過する際に吸収される。しかし、円偏光になりきれない光は円偏光部材10では吸収されず、そのまま外部に出射してしまう。従って、光線Bのように基板に斜めから入射する外光は、円偏光部材10だけでは十分に消光することができない。
【0027】
ここで、レンズを備えた表示装置内で反射され、正面に出射する外光、即ち、基板の法線方向に出射する外光について、基板への入射角と円偏光部材による消光度との関係を考える。図3に、基板にさまざまな角度で入射して表示装置内で反射され、レンズで屈折して法線方向に出射する外光を示す。X、Y、Zは、それぞれレンズの斜面角が0°、30°、45°の各領域の近傍から出射され、表示装置の法線方向に出射する光線の経路を簡略化して示したものである。
【0028】
レンズの斜面角が小さい領域から出射される光線Xは、基板1に対する入射角と出射角が共に小さい。レンズの斜面角が比較的大きい領域から出射される光線Yや光線Zは、基板1に対する入射角が大きく、さらにレンズで屈折される角度も大きいため、法線方向に出射する。
【0029】
光線Xのように基板1に対して略法線方向から入射する外光は、円偏光部材を法線方向に通過し、表示装置内で反射された後も法線方向に円偏光部材を通過するため、円偏光部材でほぼ消光することができる。しかし、光線Yや光線Zのように、基板1に対する入射角が大きい外光は、入射角が大きいほど円偏光になりきれない光の割合が増え、円偏光部材で消光できない光が増える。さらに、正面に出射する外光のうち、通過するレンズ表面の部位における斜面角が大きいほど、円偏光部材では消光できない光となり、正面方向において視認性を悪化させる要因となっている。
【0030】
そこで、基板に対して大きな入射角で表示装置に入射し、レンズの斜面角が最大の領域を通って出射する光を遮るように、光吸収層を設ければよい。大きな入射角で表示装置に入射しレンズの斜面角が最大の領域から基板の法線方向に出射する光の経路は、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置に入射する光の経路に等しい。従って、光吸収層は、少なくとも基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光を遮る位置に設けるとよい。図2(a)の構成に本発明にかかる光吸収層7を付加した表示装置における外光の入射経路を、図2(b)に示す。図2(b)には、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光を遮るように光吸収層7が設けられているため、円偏光部材で消光することのできない光線Bは光吸収層7によって吸収され、外部へは出射しない。この様に、レンズと第一電極と同層で形成される反射面との間に光吸収層7を設けることにより、視認性を悪化させる要因となっている反射光を低減することができる。
【0031】
光吸収層7には、発光素子で発せられた光(発光光)をなるべく遮らずに外部に出射するように、開口を設けることが好ましい。
【0032】
具体的には、発光素子の発光領域の端部で発せられ、レンズの端部を通って外部に出射する光が光吸収層で遮られないように、光吸収層7に開口を設ける。このように光吸収層7を設けることにより、発光素子で発せられた光がレンズを介して外部に出射するのを妨げず、かつ、表示装置に入射して発光装置内の第一電極等の反射面で反射され外部に出射する反射外光を低減することができる。
【0033】
光吸収層7の効果を、複数の表示装置のサンプルを作製して検証した。サンプルは光吸収率がほぼ100%の光吸収層に円形の開口を有する表示装置で、1サブピクセルのサイズを3000μm2とし、光吸収層の開口のサイズの直径がそれぞれ0μm、25μm、30μm、35μm、40μmであるサンプルを作製した。いずれのサンプルも、発光領域はφ8μmの円形、隔壁層の膜厚を1μm、保護層(屈折率1.96)の層厚を5μm、光吸収層の膜厚を1μm、下引き層(屈折率1.55)の層厚を3.5μmとした。また、レンズ(屈折率1.68)の直径を39.95μm、高さを19μm、曲率半径を20μmとした。なお、括弧内に示した屈折率は、いずれも波長550nmにおける値である。
【0034】
ここで、光吸収層7の開口端部の設計法を、発光素子部の概略断面図である図8を用いて説明する。図8では隔壁層の膜厚は保護層の膜厚に、光吸収層の膜厚は下引き層の膜厚にそれぞれ加えて示している。
【0035】
最初に、発光素子の発光領域端部で発せられレンズの端部を通って外部に出射する光の経路を考慮した開口端部Fの設計例を、図4(a)を用いて説明する。光の経路を厳密に計算すると、レンズの収差の影響などで式が非常に複雑になるため、ここでは発光領域の端部Jから出射され、最寄りのレンズ端部Kを通る光線で近似する。
【0036】
図4(a)の関係とスネルの法則から、以下の3つの式が導き出すことができる。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
式中、r1は発光部の半径、r2はレンズの半径、n1は保護層の屈折率、n2は下引き層の屈折率を表している。t1は保護層と隔壁層の合計膜厚、t2は下引き層と光吸収層の合計膜厚である。また、θ1は発光端部より出射されレンズの端部を通る光線が保護層中を通過する角度、θ2は下引き層中を通過する角度である。
【0041】
(1)〜(3)の式から算出されるrminは、発光素子の発光領域の端部で発せられレンズの端部Kを通って外部に出射する光が光吸収層形成面を通過する点L1と、光吸収層7の開口中心Oとの距離となる。すなわち、光吸収層7の開口中心と開口端部Fの各点との最短距離r(開口の形状が円の場合は開口半径)をrminよりも大きく設定すれば、発光素子で発せられた光が表示装置の外部へ出射するのを妨げないで光吸収層を設けることができる。
【0042】
次に、基板の法線方向から入射し、レンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置内に入射する光の経路を考慮した開口端部の算出例を、図4(b)を用いて説明する。図4(a)の時と同様に、レンズの斜面角が最大の領域Mを通って表示装置内に入射する光の光吸収層形成面を通過する点L2と光吸収層の開口中心Oとの距離rmaxは、図4(b)の関係とスネルの法則によって次の2式で表される。
【0043】
【数4】
【0044】
【数5】
【0045】
n3はレンズの屈折率、n4は外部(レンズの外側)の屈折率、θはレンズ端部におけるレンズの斜面角を表している。上記の2式にそれぞれの値を代入すればrmaxを算出することができる。光吸収層の開口中心Oと開口端部Fの各点との最短距離r(開口の形状が円の場合は開口半径)をrmaxよりも小さく設定すれば、基板の法線方向から入射し、レンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置内に入射する光を遮って吸収することができる。なお、レンズの形状によっては、レンズの収差によりrmax<rminとなる場合がある。この場合、光吸収層7の開口の半径は、rmin<rとなるように決めるとよい。
【0046】
以上のことから、本願発明における光吸収層の開口中心Oと開口端部Fの各点との最短距離rのは、rmin<r、またはrmin<r<rmaxとなるよう設計するのが好ましい。作製したサンプルにおけるそれぞれのパラメータの値を上記の(1)乃至(5)の式に代入して、rmin=10.2μm、rmax=14.8μmが導き出される。
【0047】
図5に、各サンプルの反射率の測定値を示す。図5には、作製したサンプルと同様の構成で、光吸収層の開口サイズを直径25〜40μmの範囲で変えた複数のモデルについて、正面輝度と光吸収層を設けない構成の表示装置モデルの正面輝度との比(正面輝度比)を、シミュレーションした値を一緒に示しておく。
【0048】
横軸は、1サブピクセルサイズに対する光吸収層の開口の面積割合で示してある。光吸収層の開口の直径0μm、25μm、30μm、35μm、40μmを1サブピクセルサイズに対する光吸収層の開口の面積割合に換算すると、それぞれ0%、16%、23.6%、32%、42%となる。左側の縦軸の目盛は正面輝度比を示すもので、光吸収層を設けた表示装置の正面輝度を、光吸収層を設けない表示装置の正面輝度で割った値で示している。また、右側の縦軸の目盛は反射率を示すもので、表示装置に入射する外光のうち、表示装置内で反射されて外部に出射される光の割合を示している。
【0049】
図5から分かるように、正面輝度比と反射率のいずれも、光吸収層の開口が小さくなるにつれて減少する傾向にある。正面輝度比が急激に減少する点Pの横軸の値は、先ほど算出したrmin=10.2μmのときの開口の面積割合10.4%とほぼ一致する。図6に、光素子の発光領域端部で発せられレンズの端部を通って外部に出射する光線をラインCで示す。このラインCが光吸収層の開口の内側を通るように、即ち、ラインCの外側に(例えば、範囲SPの外側)に光吸収層の開口の端部を設ければ、発光素子で発せられた光が外部に出射するのを妨げることなく反射率を低減することができる。
【0050】
また、図5の反射率の減少率が大きくなる点Qの横軸の値は、先ほど算出した、rmax=14.8umのときの開口の面積割合22.9%とほぼ一致する。図6に、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置内へ入射する光線をラインDで示す。このラインDが光吸収層の開口の外側を通るように、即ち、ラインDの内側(例えば範囲SQの内側)に光吸収層の開口端部Fを設ければ、効率良く反射率を低減することができる。
【0051】
以上のことから、光吸収層の開口の端部Fは、図6のラインCの外側、かつラインDの内側(発光素子側)に設けるのが好ましいことがわかる。つまり、光吸収層の開口の端部は、レンズと第一電極との間に配置され、発光素子で発せられレンズの端部を通って外部に出射される光を遮らず、かつ、基板の法線方向からレンズの斜面角が最大の領域を通って表示装置内に入射する光を遮る位置に設けるのが最も好ましい。光吸収層の開口の大きさや配置は、式(1)乃至(5)から分かるように、発光装置を構成する各材料の屈折率や膜厚、レンズの径および曲率等の値を用いて設計することができる。また、光吸収層の開口の形状は円形である必要はなく、発光領域やレンズ形状に応じて適宜設計することができる。表示装置を構成する各材料の屈折率は、組成や膜密度など、成膜条件によって変化する場合がある。例えば、保護層に好適に用いられる窒化珪素の場合、波長550nmの光に対して1.75から2.00の範囲で変化することが知られている。光吸収層の開口設計に用いる膜の屈折率は、ガラス基板に単層膜として形成し、膜の反射率測定から算出した屈折率を採用することができる。また、あらかじめ膜の組成や密度などの物性と屈折率の関係を調べておき、膜の組成や密度などの測定値から外挿した屈折率を採用してもよい。あるいは、電子顕微鏡を用いた電子エネルギー損失分光法(TEM−ELLS)を用いて、表示装置を構成する膜を複数種類まとめて基板に積層し、各膜の断面のナノレベルの領域から算出した屈折率を採用してもよい。
【0052】
続いて、本発明にかかる表示装置の製造方法を、図7を参照しながら説明するが、公知の製造工程を適宜適用することができる。
【0053】
図7は、本実施形態の表示装置の各製造工程を示す概要断面図である。先ず、図7(a)に示すように、公知の方法にてアクティブマトリクス型の駆動回路が形成されたガラスや樹脂など絶縁性の表面を有する基板、又はシリコンなどの半導体基板1の上に、トップエミッション型の有機EL素子を複数形成する。この有機EL素子は、基板側から順に、第一電極としてアノード電極2、隔壁層3、有機化合物層4、第二電極としてカソード電極5を形成したものである。第一電極は、基板1に設けられた不図示の層間絶縁膜および平坦化膜のコンタクトホールを介して、不図示の駆動回路に電気的に接続されている。
【0054】
次に、保護層6を少なくとも有機EL素子が配置された表示領域の全域を覆うように形成する。保護層6は、水分が有機EL素子に浸入するのを防止するための層で、光の透過率が90%以上と高く、かつ、防湿性に優れた材料で形成するのが好ましい。図7(a)では保護層の表面がカソード電極に倣った形状をしているが、平坦な表面であっても構わない。
【0055】
次に、保護層6上に、光吸収層7を、表示領域の全域に形成する(図7(b))。光吸収層7には、光吸収率が90%以上、より好ましくは95%以上の材料が好ましく、具体的には、光の照射により硬化する感光性のバインダーと、黒色着色剤とを含有するブラックレジストが好適である。光吸収層の膜厚は、十分な光吸収率が得られるように10nm〜10μmの範囲の膜厚とするのが好ましい。
【0056】
続いて、ブラックレジストをスピンコート法にて表示領域の全面に形成した後、フォトマスク12を使いて光吸収層7を残す領域のブラックレジストに露光した後に現像を行い(図7(c))、光吸収層7に開口を設ける(図7(d))。他にディスペンス法や印刷法などを用いて形成することも可能である。その後、表示領域の全域に下引き層8を形成する(図7(e))。下引き層8は、レンズアレイ形成面とレンズ材料9´との濡れ性の均一化を図ると共に、レンズアレイと発光層との光学距離を調節するための機能も有する。光学距離の調整のためには、10nm〜100μmの膜厚で形成される。
【0057】
次にレンズ材料層9´を表示領域の全域に形成した後にリソグラフィ法によって、各有機EL素子の上にレンズ材料層9´を円柱形状にパターニングする(図7(f))。続いて、レンズ材料層9´を加熱により一旦溶かしてレンズ形状に変形させた後に硬化させ、光出射側に凸形状のレンズアレイを形成する。レンズアレイを形成する方法は、他に、均一の厚さに形成した樹脂層を型で押したり、面内方向に分布を持った光で露光したりして形成する方法など、公知の方法を採用することもできる。レンズの材料には、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の可視光の光透過率が90%以上、より好ましくは95%の材料を用いる。なお、隣接するレンズは、必ずしも互いに離間している必要はない。またレンズの高さは、吸収による光量の減衰を防止のために100μm以下とするのが好ましい。
【0058】
本発明のレンズ9には、図8に示すように中央部と端部で曲率の異なる形状のレンズも好適に用いることができる。図8のレンズの場合、レンズの斜面角が最大となる部位は、レンズ表面の変曲点近傍となる。図8にレンズの斜面角が最大となる部位を丸で囲んで示しておく。また、レンズの形状は球面状や図8のような形状以外にも、円錐台状、円柱状などでもよい。いずれのレンズを用いた場合も、図7のレンズの場合と同様にして光吸収層を設ければ、効果的に外光反射を抑制することができる。また、本発明は、図7のような光出射側に凸形状の集光機能を有するレンズに限られず、図9のような光出射側に凹形状の発散機能を有するレンズを設ける場合にも適用することができる。
【0059】
図7の製造工程で作製される表示装置は、保護膜6の表面に接する位置に光吸収層7が設けられているが、隔壁層3として、前述した光吸収層に用いる光透過率の低い材料と同じような光透過率を有する材料で形成する図10の構成も好ましい。このような構成によれば、光吸収層7を別層で作製する必要がなくなるため製造工程が簡略でき、材料コストも低く抑えることができる。また図11のように、隔壁層3と有機化合物層4との間に設けてもよい。
【0060】
なお、本発明の表示装置は、屋外などの外光の強い環境において、高輝度な表示による視認性の向上が重要なモバイル用途、例えばデジタルカメラの背面モニタ、携帯電話用ディスプレイに好適に用いることができる。本発明にかかる表示装置を映像情報処理装置に用いた例を示す。図12は、本発明が用いられる映像情報処理装置としてのデジタルスチルカメラシステムのブロック図である。図中、11はデジタルスチルカメラシステム、12は撮影部、13は映像信号処理回路、14が本発明にかかる表示装置、15はメモリ、16はCPU、17は操作部を示す。
【0061】
図12において、撮影部12で撮影した映像又はメモリ15に記録された映像情報を、映像信号処理回路13で信号処理して映像信号を生成し、表示装置14に表示することができる。コントローラーは、操作部17からの入力によって撮影部12、メモリ15、映像信号処理回路13等を制御するCPU16を有し、状況に適した撮影、記録、再生、表示を行う。また、表示装置14は、この他にも各種映像情報処理装置の表示部として用いることができ、屋外で利用される機会の多い携帯電子機器に好適である。
【0062】
本発明は、上述した趣旨を逸脱しない限り、説明した構成に限られることはなく、種々の応用や変形が可能である。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
本実施例では、図1に示す表示装置を作製した。ガラス基板1の上に、低温ポリシリコンTFTで画素回路(不図示)を形成し、その上に窒化珪素(SiN)からなる層間絶縁膜とアクリル樹脂からなる平坦化膜(いずれも不図示)をこの順番で形成して、図7(a)に示す回路基板を作製した。この回路基板上にスパッタリング法にて、ITO膜とAlNd膜をそれぞれ38nm、100nmの厚さでこの順に形成した。続いて、ITO膜およびAlNd膜を画素毎にパターニングし、複数のアノード電極2を形成した。
【0064】
この上に、アクリル樹脂をスピンコートしてプリベークした。プリベーク後のアクリル樹脂層の厚さを1μmとした。次に、リソグラフィ法により、アノード電極2が形成された部分に開口が形成されるようにアクリル樹脂層をパターニングし、ポストベークにより硬化させて隔壁層3を形成した。この開口が有機EL素子の発光領域に相当する。
【0065】
隔壁層3の開口のピッチを60μm、開口によるアノード電極2の露出部分の大きさをφ8μmとした。隔壁層3までが形成された基板をイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄した後、煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄してから有機化合物層4を真空蒸着により成膜した。
【0066】
有機化合物層4として、始めに、すべてのサブピクセルに共通するホール輸送層として、α−NPDを真空蒸着法にて87nmの厚さに成膜した。成膜時の真空度は1×10−4Pa、蒸着レートは0.2nm/secであった。次に、アノード電極2の露出部分、即ち、発光領域に対応する開口を有するシャドーマスクを用い、サブピクセルに応じて赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ厚さ30nm、40nm、25nmで成膜した。続いて、すべてのサブピクセルに共通の電子輸送層として、バソフェナントロリン(Bphen)を真空蒸着法にて10nmの厚さで成膜した。蒸着時の真空度は1×10−4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。その後、すべてのサブピクセルに共通の電子注入層として、BphenとCs2CO3を共蒸着(重量比90:10)して40nmの厚さで成膜した。成膜時の真空度は3×10−4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。
【0067】
有機化合物層4を成膜した基板を、真空環境を維持したままスパッタ装置に移動した。スパッタ装置でカソード電極5として極薄Agを10nm、酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物からなる透明電極層を50nmの厚さで順に成膜し、基板上に発光素子が複数配置された発光素子アレイを形成した。
【0068】
次に、窒化珪素からなる保護層6を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法にて、5μmの厚さで成膜した(図7(a))。保護層6の屈折率は1.96であった。
【0069】
保護層6までが形成された基板を大気中に取り出し、カーボンの粒子を光感光性樹脂に拡散させたブラックレジストをスピンコーターにて全体に塗布し、プリベークを施した(図11(b))。膜厚は1μmとした。その後、ピッチ60μmでφ25μmのドットが並んだフォトマスクをアライメントした後に露光し、現像後にポストベークして硬化し、開口を有する光吸収層7を形成した(図7(c))。
【0070】
続いて、粘度2000mPa・s、波長550nmにおける屈折率が1.55の紫外線硬化性樹脂をスピンコーターにて塗布した。その後、紫外線硬化樹脂を露光して硬化させ、膜厚は3.5μmの下引き層8を形成した(図7(e))。
【0071】
次に、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・s、波長550nmにおける屈折率が屈折率1.68の熱硬化性の樹脂材料(エポキシ樹脂)をスピンコーターにて塗布した。その後、プリベークして膜厚16μmのレンズ材料層9´を表示領域の全域に形成した(図7(f))。次いで、フォトリソグラフィによってパターニングし、各有機EL素子の上にレンズ材料層9´からなるφ40μmの円柱を形成した(図7(g))。続いて、レンズの材料となる層9´を加熱により一旦溶かしてレンズ形状に変形させた後硬化させることにより、光出射側に凸形状のレンズを形成した。レンズの形状は、直径39.95μm、高さ19μm、曲率半径20μmとなった。
【0072】
なお、本実施例における光吸収層の開口のサイズを決めるにあたって、前述の式(1)〜(3)に本実施例の各材料の数値を代入して開口の最小半径を算出し、前述の式(4)〜(5)に本実施例の各材料の数値を代入して最大半径を算出した。その結果、本実施例の構成の場合、光吸収層の開口の半径rの好ましい範囲は10.2μm<r<14.8μm、直径に言い換えると20.4μm<2r<29.6μmと算出された。本実施例では、この条件を満たすように開口を直径25μmとした。
【0073】
このようにして作製した有機EL表示装置の光出射側に、基板と平行に、レンズアレイ側から順に、位相差部材、直線偏光部材が積層された円偏光部材(不図示の)を設け、正面輝度および反射率を評価した。評価は、光吸収層の直径が本発明の好ましい範囲から外れる40μmであるという点を除いて本実施例と同様の有機EL表示装置を作成し、同じ画像を表示して比較することで行った。実施例1にかかる表示装置は、比較例と同等の正面輝度が観測され、比較例の表示装置の外光の反射率が1.6%であったのに対して、0.5%に低減した。
【0074】
(実施例2)
本実施例では、図11に示す構成の表示装置を形成した。製造方法は、隔壁層の形成後かつ有機EL層の成膜の前に光吸収層を形成することを除いて、実施例1と同様である。
【0075】
隔壁層までを実施例1と同様に形成した後、実施例1と同様の光吸収層を構成する材料と同じブラックレジストをスピンコーターにて塗布し、プリベークして膜厚を1μmとした。その後、ピッチ60μmでφ15μmのドットが並んだフォトマスクを用い、ブラックレジストを露光し、現像後に硬化した。その後の工程は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
本実施例における光吸収層の開口のサイズを決めるにあたっては、光吸収層の膜厚を保護層に加算した点を除いて実施例1と同様に算出した。式(1)〜(5)より、光吸収層の開口の半径rの好ましい範囲は4μm<r<11.5μm、直径に言い換えると8μm<2r<23μmと算出された。本実施例では、この条件を満たすように、光吸収層の開口の直径を15μmとした。
【0077】
このようにして作製した有機EL表示装置を、光吸収層の直径が本発明の好ましい範囲から外れる30μmであるという点を除いて本実施例と同様に作製した有機EL表示装置を用いて、実施例1と同様に比較した。結果は実施例1と同様で、本実施例に係る表示装置の正面輝度は比較例と同等で、反射率は比較例より低減していた。
【0078】
(実施例3)
遮光層の形成手法として、実施例1とは異なり、図10に示す構成を形成した。レンズを形成する工程までは、ブラックレジストを用いて隔壁層3を形成し、光吸収層7を設けなかった点を除いて実施例1と同様であるため、説明を省略する。本実施例は隔壁層が光吸収層なので、発光領域と光吸収層の開口とは同じサイズとなる。
【0079】
本実施例では、型押しによってレンズを形成した。まず、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・s、屈折率1.68の熱硬化性の樹脂材料(エポキシ樹脂)を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、製品名SHOT MINI SL)を用いて塗布した。そして、樹脂材料を熱硬化する前に、図7(g)のように、別途用意したレンズ17を成形するための型を、樹脂材料の表面に押し当てた。押し当てる際、型に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークをあわせる事により位置決めを行なった。その結果、画素に合わせてレンズ9が形成された。型には、画素ピッチと同じピッチで凹状に窪みが形成されており、その窪みの表面には離形剤としてテフロン(登録商標)系の樹脂をコートしておいた。窪みの形状、すなわちレンズ9の形状は、直径38μm、曲率半径20μmとした。
【0080】
型を押し当てた状態で、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱し、樹脂材料(エポキシ樹脂)を硬化させた。その後、樹脂から型を離して、半球面状に近いレンズ9を形成した。レンズアレイの高さは10μm程度になった。
【0081】
このようにして作製した有機EL表示装置を、光吸収層を従来と同じ透過性の材料で形成した点を除いて本実施例と同様に作製した有機EL表示装置を用いて実施例1と同様に比較した。結果は実施例1と同様で、本実施例に係る表示装置の正面輝度は比較例と同等で、反射率は比較例より低減していた。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 第一電極
3 隔壁層
4 有機化合物層
5 第二電極
6 保護層
7 光吸収層
8 下引き層
9 レンズ
10 円偏光部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と第二電極とそれらの間に配された発光層とを有する発光素子が基板上に複数配置された発光素子アレイと、
前記発光素子アレイの光出射側に、前記複数の発光素子に対応して配置された複数のレンズを含むレンズアレイと、
を備える表示装置であって、
前記レンズアレイと前記第一電極との間には前記複数のレンズのそれぞれに対応する複数の開口を有する光吸収層が配置されており、
前記複数の開口のそれぞれの端部は、前記基板の法線方向から前記複数のレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光が前記光吸収層で遮られるように設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第二電極と前記レンズとの間に保護層を有しており、
前記光吸収層は前記保護層と前記レンズアレイとの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記光吸収層は、前記発光素子の発光領域を区画していることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記レンズアレイの上に、円偏光部材を備え、該円偏光部材は、前記レンズアレイ側から順に、位相差部材、直線偏光部材を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記発光素子が有機EL素子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
映像情報を記録するメモリと、前記映像情報を信号処理して映像信号を生成する映像信号処理回路と、前記映像信号を受けて映像を表示する表示装置と、前記映像信号処理回路および前記表示装置を制御するCPUと、を備える映像情報処理装置であって、前記表示装置が請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示装置であることを特徴とする映像情報処理装置。
【請求項1】
第一電極と第二電極とそれらの間に配された発光層とを有する発光素子が基板上に複数配置された発光素子アレイと、
前記発光素子アレイの光出射側に、前記複数の発光素子に対応して配置された複数のレンズを含むレンズアレイと、
を備える表示装置であって、
前記レンズアレイと前記第一電極との間には前記複数のレンズのそれぞれに対応する複数の開口を有する光吸収層が配置されており、
前記複数の開口のそれぞれの端部は、前記基板の法線方向から前記複数のレンズの斜面角が最大の領域を通って入射する光が前記光吸収層で遮られるように設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第二電極と前記レンズとの間に保護層を有しており、
前記光吸収層は前記保護層と前記レンズアレイとの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記光吸収層は、前記発光素子の発光領域を区画していることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記レンズアレイの上に、円偏光部材を備え、該円偏光部材は、前記レンズアレイ側から順に、位相差部材、直線偏光部材を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記発光素子が有機EL素子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
映像情報を記録するメモリと、前記映像情報を信号処理して映像信号を生成する映像信号処理回路と、前記映像信号を受けて映像を表示する表示装置と、前記映像信号処理回路および前記表示装置を制御するCPUと、を備える映像情報処理装置であって、前記表示装置が請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示装置であることを特徴とする映像情報処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−16273(P2013−16273A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146516(P2011−146516)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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