表示装置およびそれを用いた表示媒体
【課題】 応答が速く、消費電力が低い表示装置とこれを用いた表示媒体を提供する。
【解決手段】 表示装置を、少なくとも一方が透明基材である1組の基材22,23と、液体封入空間Sを形成するように1組の上記基材を対向させて保持する壁部29と、一方の基材22の液体封入空間S側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極24と第1B電極25と、これらの電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと、この絶縁層とを連結する細幅絶縁層28と、液体封入空間Sの他方の基板側に配設された第2電極26と、第1A電極、第1B電極が存在しない電極非形成領域24′、25′と、を備えた容器21を有する表示セルを少なくとも1個備えたものとし、壁部29の容器21内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係を成立させる。
【解決手段】 表示装置を、少なくとも一方が透明基材である1組の基材22,23と、液体封入空間Sを形成するように1組の上記基材を対向させて保持する壁部29と、一方の基材22の液体封入空間S側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極24と第1B電極25と、これらの電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと、この絶縁層とを連結する細幅絶縁層28と、液体封入空間Sの他方の基板側に配設された第2電極26と、第1A電極、第1B電極が存在しない電極非形成領域24′、25′と、を備えた容器21を有する表示セルを少なくとも1個備えたものとし、壁部29の容器21内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係を成立させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロウエッティングを利用した表示装置とその表示装置を用いた表示媒体に係り、特に印加電圧を停止した後も表示状態が維持可能な表示装置と表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気泳動粒子と分散媒体を収納したマイクロカプセルを電気泳動表示素子として2枚の電極間に挟み込み、この電気泳動表示素子に電圧を印加することにより、電気泳動粒子がマイクロカプセル内を異なる極性を有する電極に向かって電気泳動する現象を利用した表示装置が開発されている(特許文献1、2)。この表示装置では、分散媒体をイエロー、マゼンタ、シアンとした各色のマイクロカプセルを使用し、各色毎に各電極間に挟み込むことにより、カラー表示が可能となる。
また、表面が疎水性の電極と親水性の電極を対向して備えた複数のセル内に、水と着色油とを封入し、電圧が印加されていない状態では、着色油が疎水性電極面を覆うように存在し、電極間に電圧を印加すると、着色油が疎水性電極の所定の箇所に移動集積することを利用した表示装置が開発されている。この表示装置においても、イエロー、マゼンタ、シアンとした着色油を使用することにより、カラー表示が可能となる。さらに、光スイッチの全領域に対して部分的に電極を形成し、電極間に電圧を印加すると電極のない部分に常に油が移動することを方向規定手段として利用し、移動した場所に電極を設けておき、この電極に電圧を印加し続けることでメモリー性を保つようにした表示装置が開発されている(特許文献3、4、5)。
【特許文献1】特開2002−357853号公報
【特許文献2】特開2002−333643号公報
【特許文献3】国際公開WO 2004/104670公報
【特許文献4】国際公開WO 2004/068208公報
【特許文献5】国際公開WO 2004/104671公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2に開示された従来の表示装置では、欠陥を生じることなくマイクロカプセルを配列することが困難であり、画像品質の低下を来たすという問題があった。
また、特許文献3、4、5に開示された従来の表示装置では、電圧印加によって疎水性電極の所定の箇所に移動集積した油が、電圧の印加を停止したときに疎水性電極面に広がってしまい、いわゆるメモリー性がないという問題があった。このため、常時通電が必要であり、消費電力の低減に支障を来たしていた。さらに、特許文献5に開示された方向規定手段を用いた場合には、油が電極のない部分に移動して溜まり、駆動が不安定になるおそれがあるという問題もあった。
本発明は上述のような実情に鑑みてなされたものであり、応答が速く、消費電力が低い表示装置とこれを用いた表示媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的を達成するために、本発明は、表面が疎水性の絶縁層で被覆された電極をセル内に配し、水と油をセルに充填した状態で電圧を印加すると、疎水性絶縁層の全域に広がっていた油が一箇所に移動するというエレクトロウエッティング(electrowetting(以下、EWと記す))に着目したものである。具体的には、電極を疎水性の絶縁層よりも面積が小さいものとし、電圧を印加したときに、疎水性絶縁層の下部に電極が存在する部位から電極が存在しない部位へ油が移動することを方向規定手段として利用したものである。また、電極を被覆する疎水性の絶縁層の一部の厚みを大きくしておき、電圧を印加したときに、絶縁層の厚みの大きい部位に油が移動することを方向規定手段として利用するものである。
【0005】
すなわち、本発明は、少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備え、前記第1電極と第2電極のいずれかは前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1の液体は導電性または極性を有し、前記第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより前記第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が可能である表示セルを少なくとも1個備える表示装置において、前記容器は、少なくとも一方が透明基材である1組の基材と、液体封入空間を形成するように前記1組の基材を対向させて保持する壁部と、一方の基材の前記液体封入空間側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極と第1B電極と、該第1A電極と第1B電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層と第1B絶縁層と、該第1A絶縁層と第1B絶縁層とを連結する細幅絶縁層と、前記液体封入空間の他方の基板側に配設された第2電極と、を備え、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層のうち、前記細幅絶縁層で連結されている近傍領域にはそれぞれ前記第1A電極、第1B電極が存在しない電極非形成領域が設けられ、前記第1A電極と第1B電極は前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1A電極と前記第2電極間への印加電圧、あるいは、前記第1B電極と前記第2電極間への印加電圧によって第2の液体が前記細幅絶縁層を経由して前記第1A絶縁層上と第1B絶縁層上との間で移動可能であり、前記細幅絶縁層は、前記第1の液体と第2の液体が移動した位置で印加電圧を停止した後も、移動した前記第1の液体と第2の液体の位置が保持されてメモリー性が発現されるための液体保持手段であって、前記細幅絶縁層は印加電圧を停止しているときに前記第1A絶縁層上あるいは前記第1B絶縁層上に位置する前記第2の液体が移動できない幅と長さを有し、前記壁部の前記容器内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立するような構成とした。
【0006】
本発明の他の態様として、前記第1A電極と前記電極非形成領域との面積比、前記第1B電極と前記電極非形成領域との面積比は、100:1〜1:1の範囲であるような構成とした。
この態様では、EWによる方向規定をより有効に機能させることが可能である。
本発明の他の態様として、前記細幅絶縁層の幅は0.01〜10000μmの範囲、長さは0.01〜1000μmの範囲であるような構成とした。
この態様では、移動した第2の液体の細幅絶縁層による保持が更に確実なものとなる。
【0007】
また、本発明は、少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備え、前記第1電極と第2電極のいずれかは前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1の液体は導電性または極性を有し、前記第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより前記第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が可能である表示セルを少なくとも1個備える表示装置において、前記容器は、少なくとも一方が透明基材である1組の基材と、液体封入空間を形成するように前記1組の基材を対向させて保持する壁部と、一方の基材の前記液体封入空間側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極と第1B電極と、該第1A電極と第1B電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層と第1B絶縁層と、該第1A絶縁層と第1B絶縁層とを連結する中間絶縁層と、前記液体封入空間の他方の基板側に配設された第2電極と、を備え、前記中間絶縁層は第1A電極と第1B電極の一部を被覆するように前記第1A電極と第1B電極との境界部位に位置し、前記中間絶縁層の表面は前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出し、前記第1A電極と第1B電極は前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1A電極と前記第2電極間への印加電圧、あるいは、前記第1B電極と前記第2電極間への印加電圧によって第2の液体が前記中間絶縁層を乗り越えて前記第1A絶縁層上と第1B絶縁層上との間で移動可能であり、前記中間絶縁層は、前記第1の液体と第2の液体が移動した位置で印加電圧を停止した後も、移動した前記第1の液体と第2の液体の位置が保持されてメモリー性が発現されるための液体保持手段であって、前記中間絶縁層の表面が前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出する高さは、印加電圧を停止しているときに、前記第1A絶縁層上あるいは前記第1B絶縁層上に位置する前記第2の液体が乗り越えない高さであり、前記壁部の前記容器内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、中間絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立するような構成とした。
【0008】
本発明の他の態様として、前記中間絶縁層が存在しない前記第1A電極と前記第1A電極を被覆する前記中間絶縁層との面積比、前記中間絶縁層が存在しない前記第1B電極と前記第1B電極を被覆する前記中間絶縁層との面積比は、100:1〜1:1の範囲であるような構成とした。
この態様では、EWによる方向規定をより有効に機能させることが可能である。
本発明の他の態様として、前記中間絶縁層の表面が前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出する高さは0.01〜100μmの範囲であるような構成とした。
この態様では、移動した第2の液体の中間絶縁層による保持が更に確実なものとなる。
【0009】
本発明の他の態様として、前記中間絶縁層は、前記第1A電極と第1B電極との境界部位に位置する下部絶縁層と、その上に位置する上部絶縁層とからなり、該上部絶縁層は、前記第1A電極と第1B電極と同じ材質であるような構成とした。
この態様では、中間絶縁層の形成が容易であるとともに、下部絶縁層の親水性を表す水滴の接触角には制限がなく、中間絶縁層を構成する材料の選択の幅が拡大する。
本発明の他の態様として、前記下部絶縁層は、前記第1A電極および第1B電極よりも厚いような構成とした。
この態様では、中間絶縁層の形成がさらに容易である。
本発明の他の態様として、表示認識側の前記透明基材の外側に所望のパターン形状で遮光膜を備えるような構成とした。
この態様では、遮光膜が存在しない部位の電極面に第2の液体が位置するか否かによるON/OFF表示が可能となる。
【0010】
本発明の他の態様として、前記第2の液体が着色油であるような構成とした。
この態様では、情報等を所望の色で表示することが可能となる。
本発明の他の態様として、前記表示セルで反射された光を認識する反射方式の表示であり、表示セル毎に封入された前記第2の液体である着色油は、イエロー、マゼンタ、シアンのいずれかであるような構成とした。
この態様では、反射方式のフルカラー表示が可能となる。
本発明の他の態様として、前記表示セルを透過した光を認識する透過方式の表示であり、前記第1の液体が着色水であり、前記第2の液体である着色油が遮光性の黒色油であるような構成とした。
この態様では、着色水を透過した色と黒色との着色表示が可能となる。
【0011】
本発明の他の態様として、前記表示セル毎に封入された前記第1の液体である着色水は、赤、緑、青のいずれかであるような構成とした。
この態様では、透過方式のフルカラー表示が可能となる。
本発明の他の態様として、前記表示セル毎の前記第1A電極と前記第1B電極の形状・位置が同じであるような構成とした。
この態様では、表示装置全体で均一な表示特性が得られる。
【0012】
本発明の表示媒体は、上述の表示装置を1個以上有し、表示装置の各表示セルに外部装置から電力および信号を供給するための入力端子を有し、該入力端子において前記表示媒体と前記外部装置との接続、切り離しが可能であるような構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1A電極と第2電極への印加電圧、あるいは、第1B電極と第2電極への印加電圧により、EWを利用した第2の液体の位置変化が迅速かつ確実に行なわれ、応答の速い表示が可能であり、また、液体保持手段である細幅絶縁層、あるいは、中間絶縁層により、移動した第1の液体と第2の液体が印加電圧停止後も保持されてメモリー性が発現されるので、常時通電が不要となり、消費電力が低く応答の速い表示装置が可能となる。
また、本発明の表示媒体は、外部装置から表示媒体を取り外してもメモリー性を保持することができるため、常時通電が不要で情報を表示媒体だけで持ち運ぶことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[表示装置]
図1は、本発明の表示装置の一例を示す平面図である。図1に示されるように、本発明の表示装置1は、複数の表示セル11(図示例では7個の表示セル11A,11B,11C,11D,11E,11F)を有している。各表示セル11は、少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備えたものであり、第1電極と第2電極のいずれかは第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、第1の液体は導電性または極性を有し、第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が行われる。また、各表示セル11は、画素部12とスペース部13とを有し、画素部12は電圧の印加により第1の液体と第2の液体の位置が変化することによるON/OFF表示が可能であり、表示装置1として、「0」〜「9」の数字情報表示が行える。この本発明の表示装置1は、各表示セル11の画素部12におけるON/OFF表示を、印加電圧を停止した後も維持できるメモリー性を具備している。
尚、図1では、各表示セル11の境界線は鎖線で示しており、また、スペース部13には斜線を付している。
【0015】
<第1の実施形態>
図2は、本発明の表示装置の第1の実施形態を示す拡大縦断面図であり、図1のI−I線における縦断面により1個の表示セルの構造を示している。図2に示されるように、表示セル11Aは、容器21内に導電性または極性を有する第1の液体31と、疎水性である第2の液体32が封入されている。尚、図2では表示セル11Aの構造を示すが、他の各表示セルも同様の構造である。
容器21は、1組の基材22、23と、液体封入空間Sを形成するように1組の基材22、23を対向させて支持する壁部29とを備えている。一方の基材22は、液体封入空間S側に、互いに電気的に独立して配設された第1A電極24と第1B電極25と、これらをそれぞれ被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bを備えている。
【0016】
図3は表示セル11Aにおける第1A電極24と第1B電極25を示す平面図であり、図4は第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bを示す平面図である。図4に示されるように、間隙部27′を介して離間形成されている第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bは、細幅絶縁層28によって連結されている。また、図3に示されるように、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bのうち、細幅絶縁層28で連結されている近傍領域にはそれぞれ第1A電極24、第1B電極25が存在しない電極非形成領域24′、25′が設定されている。このような電極非形成領域24′、25′が存在することにより、EWを利用した第2の液体32の方向規制手段が構成される。また、他方の基材23は、液体封入空間S側に、第2電極26を備えている。
この容器21では、基材23側が表示認識側であり、少なくとも基材23は透明基材である。また、この基材23の外側には、遮光膜30が配設されており、遮光膜30の存在しない部位が画素部12であり、遮光膜30の配設部位がスペース部13となっている。
【0017】
また、上記の表示セル11Aでは、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bによって、第1A電極24と第1B電極25が第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁されている。そして、壁部29の容器21内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bの表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、細幅絶縁層28の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立する。このような親水性を表す水滴の接触角の関係が成立することにより、第2の液体32が壁部29に広がることなく、第1A絶縁層27A、あるいは、第1B絶縁層27Bを確実に覆うことができる。また、θ2<θ3の関係が成立する場合には、後述するEWを利用した方向規定手段が更に効果的に機能する。
尚、本発明において、親水性を表す水滴の接触角とは、測定対象物の表面に純水(液クロマトグラフィー用蒸留水(純正化学(株)製))を一滴(一定量)滴下し、所定時間経過した後にθ/2法に従って測定した接触角を意味する。以下の本発明においても同様である。
【0018】
このような表示セル11Aは、図2に示されるように第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)に第2の液体32が位置している状態で、第1A電極24と第2電極26間へ電圧を印加すると、図3に実線矢印で示すように、第1A電極24から電極非形成領域24′方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段が機能する。これによって、第1A絶縁層27A上の第2の液体32が、細幅絶縁層28を経由して、第1B絶縁層27B上(液体封入空間S2)に移動する(図5(A))。この状態で印加電圧を停止すると、細幅絶縁層28が液体保持手段として作用し、第1B絶縁層27B上(液体封入空間S2)に移動した第2の液体32がそのまま保持されてメモリー性が発現される(図5(B))。
【0019】
また、第1B電極25と第2電極26間へ電圧を印加すると、図3に鎖線矢印で示すように、第1B電極25から電極非形成領域25′方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段が機能する。これによって、第2の液体32が細幅絶縁層28を経由して第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)に移動する(図5(C))。この状態で印加電圧を停止すると、細幅絶縁層28が液体保持手段として作用し、第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)に移動した第2の液体32がそのまま保持されてメモリー性が発現される(図5(D))。このような表示セル11Aでは、遮光膜30が存在しない部位(画素部12)の絶縁層(図示例では第1A絶縁層27A)上に第2の液体32が位置するか否かによるON/OFF表示が可能である。
【0020】
表示セル11Aを構成する基材23は、上述のように表示認識側に位置するため、透明基材である。また、反対側の基材22は、表示セル11Aが反射方式の表示を行う場合には、透明基材である必要はないが、表示セル11Aが透過方式の表示を行う場合には、透明基材とする。基材22、23は、例えば、ガラス基材、透明樹脂基材等の透明基材を使用することができる。また、基材22が透明基材でなくてよい場合には、金属基材、セラミックス基材等の基材、電極形成面と反対側の面を粗面化あるいは金属膜を蒸着した不透明なガラス基材、染料または顔料を練り込んだ不透明樹脂基材等を使用することができる。基材22、23の厚みは、使用する材質等を考慮して設定することができ、例えば、10μm〜5mm、好ましくは100μm〜2mmの範囲で適宜設定することができる。
【0021】
表示セル11Aを構成する第1A電極24、第1B電極25、第2電極26は、それぞれ図示していない電圧印加装置に接続され、例えば、印加電圧1〜300Vの範囲で任意に電極の電荷を制御可能とされている。第2電極26は、表示認識側に位置しており、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等を用いて、スパッタリング、真空蒸着法、CVD法等の一般的な成膜方法により形成した透明電極とすることができる。また、第2電極26は、第1の液体31を第2電極26とほぼ等電位にできるものであればよく、上述の面電極の他に、例えば、液体封入空間S内に1本以上設けられた針状電極、メッシュ状電極等であってもよい。さらに、第1A電極24、第1B電極25は、表示セル11Aが透過方式の表示を行う場合には、第2電極26と同様に透明電極とする。一方、表示セル11Aが反射方式の表示を行う場合には、第1A電極24、第1B電極25は、透明電極でなく、Cu、Ag、Au、Al等の金属電極であってもよい。
【0022】
第1A電極24と電極非形成領域24′との面積比、第1B電極25と電極非形成領域25′との面積比は、EWによる方向規定を有効に機能させるために、100:1〜1:1、好ましくは20:1〜3:1、更に好ましくは20:1〜4:1の範囲で設定することができる。電極非形成領域24′、25′の面積が上記の範囲を超える場合、第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)と第1B絶縁層27B上(液体封入空間S2)との間での第2の液体32の移動に要する電圧が高くなり、また、電極非形成領域24′、25′の面積が上記の範囲を下回る場合、EWによる方向規定が有効に機能し難くなり好ましくない。
【0023】
表示セル11Aを構成する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと細幅絶縁層28は、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)が成立するものであればよく、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bを構成する絶縁材料と細幅絶縁層28を構成する絶縁材料は、同じもの、異なるもの、いずれであってもよい。例えば、ポリイミド系樹脂、SiO2、SiN4、アクリル系樹脂、ペリレン、フッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、石英、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁材料からなるものであってよく、微量な範囲の電流が流れるものであってもよい。また、これらの中で、ペリレン、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等の絶縁材料を使用することにより、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと細幅絶縁層28の表面の親水性を表す水滴の接触角が大きくなり、第2の液体32に対する濡れ性が良好となり、第2の液体32の厚み均一性が向上する。第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bの厚みは、第1A電極24と第1B電極25を第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁できるように、使用する絶縁材料に応じて適宜設定することができ、例えば、0.01〜10μmの範囲で設定することができる。
尚、表示セル11Aが透過方式の表示を行う場合には、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと細幅絶縁層28は上記の絶縁材料の中から透明性を有する絶縁材料を選択して形成する。
【0024】
また、細幅絶縁層28の幅W、長さL(図4参照)は、印加電圧を停止しているときに、第1A絶縁層27A上あるいは第1B絶縁層27B上に位置する第2の液体32が移動できないように、第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27B、細幅絶縁層28を構成する絶縁材料に対する第2の液体32の濡れ性等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、細幅絶縁層28の幅Wは0.01〜10000μm、好ましくは1〜5000μmの範囲、長さLは0.01〜1000μm、好ましくは0.1〜500μmの範囲で設定することができる。幅Wが0.01μm未満、長さLが0.01μm未満であると、通路としての細幅絶縁層28の面積が小さく、第2の液体32が移動するのに要する時間が長くなり応答速度が低下して好ましくない。また、幅Wが10000μmを超えたり、長さLが1000μmを超えると、第2の液体32の移動時に、通路としての細幅絶縁層28に第2の液体32が溜まりやすく、第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)と第1B絶縁層27B上(液体封入空間S2)との間での第2の液体32の移動が不十分となり、表示に支障を来たすおそれがある。
【0025】
表示セル11Aを構成する壁部29は、少なくとも容器21内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角が、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)を満足するものであればよい。このような壁部29を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化型のウレタンアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、エステルアクリレート系樹脂、アクリレート系樹脂、熱硬化型のフェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ユリア系樹脂等の樹脂材料からなるものであってよい。また、この壁部29により基材22、23が対向して形成される液体封入空間Sの高さは、例えば、1〜1000μmの範囲で設定することができる。尚、本発明では、例えば、複数の電極が存在し、表示領域全体の外周部分に配置されて基材を保持するような壁部は、親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)を満足しないものであってもよい。
【0026】
容器21に封入する第1の液体31は、例えば、水、アルコール、酸等の導電性または極性を有する液体である。一方、第2の液体32は疎水性の液体であり、例えば、ヘプタン、ヘキサン、ノナン、デカン、オクタン、ドデカン、テトラデカン、オクタデカン、ヘキサデカン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、安息香酸エチル等の油を使用することができる。また、第1の液体31の比重g1と、第2の液体32の比重g2との間には、g1≦g2の関係が成立することが好ましい。
本発明では、第2の液体32の量は、第1A絶縁層27Aあるいは第1B絶縁層27Bの全域に広がるための最小量以上で適宜設定することができる。
また、本発明では、第2の液体32を着色油とすることができ、これにより、情報等を所望の色で表示することが可能となる。
また、表示セル11Aが透過方式の表示である場合、第1の液体31を着色液体とし、第2の液体32を遮光性の黒色油とすることができる。これにより、着色液体31を透過した色と黒色との2色によりON/OFF表示が可能となる。
【0027】
表示セル11Aを構成する遮光膜30は、遮光性の樹脂膜、金属膜、これらの組み合わせ等であってよく、特に制限はない。また、遮光膜30が所望の色に着色されたものであってもよい。
尚、上述の図3、図4で説明した第1A電極24と第1B電極25、および、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bは、表示セル11Aを例としたものであり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1A電極24と第1B電極25、および、電極非形成領域24′、25′を、図6に示されるような矩形状とし、この第1A電極24と第1B電極25を被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27B、および、細幅絶縁層28を、図7に示すような形状としてもよい。また、図6に示す形状に代えて、第1A電極24と第1B電極25、および、電極非形成領域24′、25′を、図8に示されるような形状とし、この第1A電極24と第1B電極25を被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27B、および、細幅絶縁層28を、図7に示すような形状としてもよい。さらに、第1A電極24と第1B電極25、および、電極非形成領域24′、25′を、図9に示されるような円形状とし、この第1A電極24と第1B電極25を被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27B、および、細幅絶縁層28を、図10に示すような形状としてもよい。
【0028】
また、表示セル11Aは、上述の構造に限定されるものではない。例えば、図11に示されるように、基材22側を表示認識側とし、基材22の外側に遮光膜30を設けたような構造であってもよい。この場合、基材22は透明基材であり、第1A電極24、第1B電極25および第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bも透明とする。また、透過方式の表示では基材23、第2電極26も透明とする。また、遮光膜30を設けず、第1の液体31と第2の液体32の移動による位置変化による表示としてもよい。
【0029】
また、図12に示されるように、第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bを介することなく、壁部29を基材22に直接固着したような構造であってもよい。この場合も、第1A電極24、第1B電極25は、それぞれ第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bにより被覆され、第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁される。したがって、液体封入空間S内には、電極非形成領域24′、25′に存在する第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bに加えて、第1A電極24の残りの周囲に存在する第1A絶縁層27Aと、第1B電極25の残りの周囲に存在する第1B絶縁層27Bが露出することになる。しかし、上記のような電極非形成領域24′、25′に存在しない第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bは、上述のような、第1A電極24から電極非形成領域24′方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定の機能、および、第1B電極25から電極非形成領域25′方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定の機能を阻害するものであってはならない。このため、電極非形成領域24′を除く第1A電極24の残りの周囲に存在する第1A絶縁層27A、および、電極非形成領域25′を除く第1B電極25の残りの周囲に存在する第1B絶縁層27Bは、第1A電極24と第1B電極25を第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁できる範囲で可能な限り少ない方が好ましい。
【0030】
また、本発明の表示装置を構成する表示セルは、図1に示される「0」〜「9」の数字情報表示が行えるような構造に限定されるものではない。例えば、表示セルが反射方式の表示である場合に、第2の液体である着色油がイエロー、マゼンタ、シアンのいずれかである複数の表示セルをマトリックス状等に配列し、反射方式のフルカラー表示を行うものとしてもよい。また、表示セルが透過方式の表示である場合に、第1の液体31を着色液体とし、第2の液体32を遮光性の黒色油とし、上記の着色液体31が赤、緑、青のいずれかである複数の表示セルをマトリックス状等に配列し、透過方式のフルカラー表示を行うものとしてもよい。
また、第1A電極24と第1B電極25の配設位置、形状を同じものとした複数の単位セルをマトリックス状等に配列してもよい。これにより、例えば、遮光膜30が存在しなくても、表示装置全体で均一な表示特性が得られる。
【0031】
<第2の実施形態>
図13は、本発明の表示装置の第2の実施形態を示す図2相当の図であり、1個の表示セルの構造を示す。図13に示される形態では、表示セル11Aの容器41内には、導電性または極性を有する第1の液体31と、疎水性である第2の液体32が封入されている。
容器41は、1組の基材42、43と、液体封入空間Sを形成するように1組の基材42,43を対向させて支持する壁部49とを備えている。一方の基材42は、液体封入空間S側に、互いに電気的に独立して配設された第1A電極44と第1B電極45と、これらをそれぞれ被覆する第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと、この第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bを連結する中間絶縁層48とを備えている。
【0032】
図14は表示セル11Aにおける第1A電極44と第1B電極45を示す平面図であり、図15は第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと中間絶縁層48を示す平面図である。尚、図14には、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと中間絶縁層48を二点鎖線で表示している。図13〜図15に示されるように、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bは中間絶縁層48によって連結されており、この中間絶縁層48は、第1A電極44と第1B電極45の境界部位に位置し、かつ、第1A電極44と第1B電極45の一部を被覆し、この被覆部位は第1A絶縁層47Aや第1B絶縁層47Bよりも層厚が大きいものである
【0033】
中間絶縁層48が第1A電極44の一部を被覆する幅W1(図14参照)、第1B電極45の一部を被覆する幅W2(図14参照)は、EWによる方向規定がより有効に機能するように設定することができる。例えば、中間絶縁層48が存在しない第1A電極44と中間絶縁層48(第1A電極44を被覆する幅W1の領域)との面積比、中間絶縁層48が存在しない第1B電極45と中間絶縁層48(第1B電極45を被覆する幅W2の領域)との面積比が、100:1〜1:1、好ましくは20:1〜3:1、更に好ましくは20:1〜4:1の範囲で設定することができる。上記の中間絶縁層48が電極を被覆する面積が上記の範囲を超える場合、第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)と第1B絶縁層47B上(液体封入空間S2)との間での第2の液体32の移動に要する電圧が高くなり、また、中間絶縁層48が電極を被覆する面積が上記の範囲を下回る場合、EWによる方向規定が有効に機能し難くなり好ましくない。また、第1A電極44と第1B電極45との間隔W3は、例えば、0.01〜10000μm、好ましくは10〜1000μmの範囲で設定することができる。
【0034】
尚、中間絶縁層48が電極を被覆する形状は、図14に示されるものに限定されず、例えば、上述の図6、図8、図9において、電極非形成領域24′、25′として示した形状等とすることができる。
さらに、中間絶縁層48の表面は、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bの表面よりも液体封入空間S側に突出している。この中間絶縁層48の表面が第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bの表面よりも液体封入空間S側に突出する高さH(図13参照)は、印加電圧を停止しているときに、第1A絶縁層47A上あるいは第1B絶縁層47B上に位置する第2の液体32が乗り越えない高さである。
このように、第1A絶縁層47Aや第1B絶縁層47Bよりも厚い中間絶縁層48が存在することにより、EWを利用した第2の液体32の方向規制手段が構成され、また、中間絶縁層48が液体保持手段として機能する。
尚、他方の基材43は、液体封入空間S側に、第2電極46を備えている。
【0035】
この容器41では、基材43側が表示認識側であり、少なくとも基材43は透明基材である。また、この基材43の外側には、遮光膜50が配設されており、遮光膜50の存在しない部位が画素部12であり、遮光膜50の配設部位がスペース部13となっている。
上記の表示セル11Aでは、第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47B、および中間絶縁層48によって、第1A電極44と第1B電極45が第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁されている。そして、本発明では、壁部49の容器41内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bの表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、中間絶縁層48の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立する。このような親水性を表す水滴の接触角の関係が成立することにより、第2の液体32が壁部49に広がることなく、第1A絶縁層47A、あるいは、第1B絶縁層47Bを確実に覆うことができる。また、θ2<θ3の関係が成立する場合には、後述するEWを利用した方向規定手段が更に効果的に機能する。
【0036】
このような表示セル11Aは、図13に示されるように第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)に第2の液体32が位置している状態で、第1A電極44と第2電極46間へ電圧を印加すると、図14に実線矢印で示すように、第1A電極44上の第1A絶縁層47Aから層厚の大きい中間絶縁層48方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段が機能する。これによって、第1A絶縁層47A上の第2の液体32が、中間絶縁層48を乗り越えて、第1B絶縁層47B上(液体封入空間S2)に移動する(図16(A))。この状態で印加電圧を停止すると、中間絶縁層48が液体保持手段として作用し、第1B絶縁層47B上(液体封入空間S2)に移動した第2の液体32がそのまま保持されてメモリー性が発現される(図16(B))。
【0037】
また、第1B電極45と第2電極46間へ電圧を印加すると、図14に鎖線矢印で示すように、第1B電極45上の第1B絶縁層47Bから層厚の大きい中間絶縁層48方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段が機能する。これによって、第2の液体32が中間絶縁層48を乗り越えて、第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)に移動する(図16(C))。この状態で印加電圧を停止すると、中間絶縁層48が液体保持手段として作用し、第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)に移動した第2の液体32がそのまま保持されてメモリー性が発現される(図16(D))。このような表示セル11Aでは、遮光膜50が存在しない部位(画素部12)の絶縁層(図示例では第1A絶縁層47A)に第2の液体32が位置するか否かによるON/OFF表示が可能である。
【0038】
表示セル11Aを構成する中間絶縁層48は、上述のように、方向規制手段を構成するとともに、液体保持手段である。この中間絶縁層48の表面が第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bの表面よりも液体封入空間S側に突出する高さHは、EWによる方向規定が有効に機能し、かつ、中間絶縁層48が液体保持手段として機能するように、第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47B、中間絶縁層48を構成する絶縁材料に対する第2の液体32の濡れ性等を考慮して適宜設定することができる。例えば、高さHを、0.01〜1000μm、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。高さHが0.01μm未満であると、EWによる方向規定が十分に機能せず、中間絶縁層48の液体保持手段としての機能も不十分となることがある。また、高さHが1000μmを超えると、中間絶縁層48が障壁となり、第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)と第1B絶縁層47B上(液体封入空間S2)との間での第2の液体32の移動に要する駆動電圧が高くなり好ましくない。
【0039】
表示セル11Aを構成する基材42、43、第1A電極44、第1B電極45、第2電極46は、それぞれ上述の実施形態における基材22、23、第1A電極24、第1B電極25、第2電極26と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
表示セル11Aを構成する第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと中間絶縁層48を構成する絶縁材料は、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)が成立するものであればよく、それぞれ上述の実施形態における第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと細幅絶縁層28と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。また、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bを構成する絶縁材料と中間絶縁層48を構成する絶縁材料は、同じもの、異なるもの、いずれであってもよい。尚、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと中間絶縁層48の層厚は、第1A電極44と第1B電極45を第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁でき、かつ、上記の突出する高さHが確保できるように、使用する絶縁材料に応じて適宜設定することができ、例えば、0.01〜1000μmの範囲で設定することができる。
【0040】
また、表示セル11Aを構成する壁部49、遮光膜50も、それぞれ上述の実施形態における壁部29、遮光膜30と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
容器41に封入する第1の液体31は、上述の実施形態における容器21に封入する第1の液体31と同様とすることができる。
一方、容器41に封入する第2の液体32は、上述の実施形態における容器21に封入する第2の液体32と同様とすることができ、第2の液体32の量は、第1A絶縁層47Aあるいは第1B絶縁層47Bの全域に広がるための最小量以上で適宜設定することができる。
また、本発明では、第2の液体32を着色油とすることができ、これにより、情報等を所望の色で表示することが可能となる。
【0041】
表示セル11Aが透過方式の表示である場合、第1の液体31を着色液体とし、第2の液体32を遮光性の黒色油とすることができる。これにより、着色液体31を透過した色と黒色との2色によるON/OFF表示が可能となる。
表示セル11Aは、上述の構造に限定されるものではない。例えば、基材42側を表示認識側とし、この基材42の外側に遮光膜50を設けたような構造であってもよい。この場合、基材42は透明基材であり、第1A電極44、第1B電極45、第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47B、および中間絶縁層48も透明とする。また、透過方式の表示では基材43、第2電極46も透明とする。また、遮光膜50を設けず、第1の液体31と第2の液体32の移動による位置変化による表示としてもよい。
【0042】
また、図17に示されるように、第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47Bを介することなく、壁部49を基材42に直接固着したような構造であってもよい。この場合も、第1A電極44、第1B電極45は、それぞれ第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47B、中間絶縁層48により被覆され、第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁される。そして、中間絶縁層48を除く絶縁層(第1A電極44の残りの周囲に存在する第1A絶縁層47Aと、第1B電極45の残りの周囲に存在する第1B絶縁層47B)は、上述のような方向規定の機能(第1A電極44上の第1A絶縁層47Aから層厚の大きい中間絶縁層48方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定の機能、および、第1B電極45上の第1B絶縁層47Bから層厚の大きい中間絶縁層48方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段の機能)を阻害するものであってはならない。このため、第1A電極44の周囲に存在する第1A絶縁層47A、および、第1B電極45の周囲に存在する第1B絶縁層47Bの表面は、第1A電極44上の第1A絶縁層47A、第1B電極45上の第1B絶縁層47Bの表面と同一面、あるいは、低いものとする。
【0043】
さらに、本発明では、図18に示されるように、中間絶縁層48を上部絶縁層48′と下部絶縁層48″からなる2層構造としてもよい。例えば、下部絶縁層48″は、第1A電極44と第1B電極45との境界部位に位置し、かつ、第1A電極44と第1B電極45の一部を被覆し、また、上部絶縁層48′は下部絶縁層48″を被覆している。この場合も、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと上部絶縁層48′は、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)が成立するものであればよく、上部絶縁層48′は第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47Bと同じ材質であってもよく、異なるものであってもよい。また、下部絶縁層48″は、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)に制限されることなく、任意の絶縁材料を使用することができる。
【0044】
また、本発明の表示装置を構成する表示セルは、図1に示される「0」〜「9」の数字情報表示が行えるような構造に限定されるものではない。例えば、表示セルが反射方式の表示である場合に、第2の液体である着色油がイエロー、マゼンタ、シアンのいずれかである複数の表示セルをマトリックス状等に配列し、反射方式のフルカラー表示を行うものとしてもよい。また、表示セルが透過方式の表示である場合に、第1の液体31を着色液体とし、第2の液体32を遮光性の黒色油とし、上記の着色液体31が赤、緑、青のいずれかである複数の表示セルをマトリックス状等に配列し、透過方式のフルカラー表示を行うものとしてもよい。
また、第1A電極44と第1B電極45の配設位置、形状を同じものとした複数の単位セルをマトリックス状等に配列してもよい。これにより、例えば、遮光膜50が存在しなくても、表示装置全体で均一な表示特性が得られる。
【0045】
[表示媒体]
本発明の表示媒体は、上述の本発明の表示装置を1個以上有し、表示装置の各表示セルに外部装置から電力および信号を供給するための入力端子を有し、この入力端子において表示媒体と外部装置との接続、切り離しを可能としたものである。これにより、外部装置から表示媒体を取り外してもメモリー性を保持することができるため、情報を表示媒体だけで持ち運びが可能である。
【0046】
図19は、本発明の表示媒体の一例を説明するための図である。図19において、本発明の表示媒体60は、上述の本発明の表示装置が複数配設された表示部61と、入力端子62を備えている。表示媒体60の表示部61を構成する表示装置の数には制限はない。また、入力端子62の配設位置は、表示部61の周囲の部位(図19に斜線を付した部位)であればよく、特に限定されない。この入力端子62は、表示装置の各表示セルに外部装置70から電力および信号を供給するための端子であり、外部装置70にリンクされた伝送手段71のコネクタ72が接続できる。そして、表示媒体60は、この入力端子62において外部装置70との接続、切り離しが可能である。したがって、入力端子62を介して外部装置70から電力および信号の供給を受けて表示媒体60に所望の情報を表示させ、その後、入力端子62からコネクタ72を外し、表示媒体60を外部装置70から切り離して自在に持ち運びできる。
【0047】
外部装置70としては、例えば、パーソナルコンピュータ、メインフレームコンピュータ等のコンピュータ手段、テレファクシミリマシン、コピー機、無線通信等のデータ通信装置や処理装置、ネットワーク端末、インターネット端末等を挙げることができる。
また、伝送手段71は特に制限はなく、例えば、電気導体ケーブル、ハードワイヤリンク等の、電力や信号の供給が可能なものとすることができる。
上述の各実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
まず、厚さ700μmのガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、図20(A)に示される7個の表示セルからなる表示装置形成用の長方形領域(縦20mm×横10mm)を設定するとともに、7個の表示セルの領域を設定した。また、各表示セルの画素部を6mm×5mmの長方形(図20(A)で斜線を付した部位)に設定した。
【0049】
また、7個の各表示セルにおいて、第1A電極と電極非形成領域を形成するための領域(図20(B)で斜線を付した部位)を、上記の画素部を含むように設定した。さらに、第1B電極と電極非形成領域を形成するための領域(図20(C)で斜線を付した部位)を設定した。ここで、7個の各表示セルにおける電極非形成領域は、図20(B)、(C)に矢印で示した辺に沿って、図3に示すようにそれぞれ設定した。そして、図20(B)、(C)に示した各領域内の電極と電極非形成領域の区分を、第1A電極と電極非形成領域との面積比、および、第1B電極と電極非形成領域との面積比が、150:1、100:1、20:1、4:1、3:1、1:1、1:2の7種となるように設定した。
尚、1個の表示セル内における第1A電極と電極非形成領域を形成するための領域と、第1B電極と電極非形成領域を形成するための領域との間隔(図4のLに相当)は500μmとした。
【0050】
また、7個の各表示セルにおいて、第1A電極、第1B電極および電極非形成領域を被覆するように、第1A絶縁層と第1B絶縁層とを形成するための領域、この第1A絶縁層と第1B絶縁層を連結する細幅絶縁層を形成するための領域を設定した。図20(D)では、設定した第1A絶縁層、第1B絶縁層、細幅絶縁層の形成領域に斜線を付して示した。
次に、ガラス基板上に蒸着によりCr膜(厚み1500Å)を成膜し、このCr膜上に感光性レジスト(シプレイ(株)製 Micro Posit)をスピンコート法で0.8μmの厚さに塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンで露光(100mJ/cm2)し、その後、0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行い、次いで、200℃、30分間の条件でポストベークすることで、レジスト膜を形成した。次いで、このレジスト膜をマスクとしてCr膜をエッチング(エッチング液:硫酸と過酸化水素の混合溶液)して第1A電極と第1B電極を各表示セル毎に形成した。尚、各表示セルの第1A電極と第1B電極を外部の電圧印加装置に接続するための配線(図20には示していない)も同時に形成した。
【0051】
次に、このガラス基板の第1A電極と第1B電極を覆うように絶縁性樹脂(三井・デュポンフロロケミカル社製 非晶性フッ素樹脂テフロンAF1601S)をスクリーン印刷法により印刷し、オーブン中で100℃、10分間加熱して、厚み0.8μmの第1A絶縁層と第1B絶縁層とこれらを連結する細幅絶縁層を形成した。形成した細幅絶縁層は、長さLが0.5mm、幅Wが1mmであった(図4参照)。これらの第1A絶縁層、第1B絶縁層、細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は、約115°であった。尚、接触角の測定は、測定対象物の表面に純水(液クロマトグラフィー用蒸留水(純正化学(株)製))を一滴(一定量)滴下し、10秒間経過後、接触角測定装置(協和界面化学(株)製 CA−Z)を用いてθ/2法に従って行った。以下の実施例、比較例においても同様である。
次いで、各表示セルの境界線上、および表示装置形成用の長方形領域の外周縁上に、ビーズを含有した紫外線硬化型樹脂(E.H.C社製 LCB−610)を用いて幅1mm、高さ200μmの壁部を形成した。
【0052】
一方、厚さ700μmの別のガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、上記と同様の表示装置形成用の長方形領域と各表示セルの画素部を設定した。このガラス基板の一方の面に、表示装置形成用の長方形領域と一致するように酸化インジウムスズ(ITO)膜を蒸着法で成膜し、第2電極(共通電極)とした。尚、第2電極を外部の電圧印加装置に接続するための配線(図示せず)も同時に形成した。
次に、この厚さ700μmのガラス基板の他方の面に、下記組成の遮光性の樹脂材料を用いてスピンコート法で5μmの厚さに塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンで露光(100mJ/cm2)し、その後、0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行い、次いで、200℃、30分間の条件でポストベークすることで、遮光膜を形成した。この遮光膜は、ガラス基板を介して上記の第2電極と対向するとともに、7箇所の画素部が露出するものとした。
【0053】
(遮光性の樹脂組成)
・黒顔料 … 14重量部
(大日精化工業(株)製 TMブラック#9550)
・分散剤 … 1.2重量部
(ビックケミー(株)製 Disperbyk111)
・ポリマー(昭和高分子(株)製 VR60) … 2.8重量部
・モノマー(サートマー(株)製 SR399) … 3.5重量部
・開始剤 … 1.6重量部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)
−ブタノン−1)
・開始剤(4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン) … 0.3重量部
・開始剤(2,4−ジエチルチオキサントン) … 0.1重量部
・溶剤(エチレングリコールモノブチルエーテル) …75.8重量部
【0054】
次いで、この厚さ700μmのガラス基板の第2電極を形成した面を、上述の第1A絶縁層、第1B絶縁層、細幅絶縁層等を形成したガラス基板の壁部に当接するように圧着し、その後、壁部に紫外線を照射(60mW/cm2、5分間)して硬化させた。この圧着は、まず、第1A絶縁層、第1B絶縁層、細幅絶縁層等を形成したガラス基板の各表示セル内に、水と油(ドデカンを青色染料(有本化学(株)製 OilBlue 5502)で着色したもの)を体積比で50:1となるように充填し、2枚のガラス基板の各表示セル位置を整合させるようにして行った。このように硬化させた後の壁部の親水性を表す水滴の接触角は、約55°であった。
【0055】
これにより、図2に示されるような7種の表示装置を作製した。この表示装置では、上述のように、壁部の親水性を表す水滴の接触角は約55°、第1A絶縁層、第1B絶縁層および細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は約115°であった。
作製した7種の表示装置について、全ての表示セルの第1A電極と第2電極(共通電極)との間に40Vの直流電圧を印加したところ、第1A絶縁層下での第1A電極と電極非形成領域との面積比、および第1B絶縁層下での第1B電極と電極非形成領域との面積比が150:1の表示装置、1:2の表示装置を除く5種の表示装置では、油(着色したドデカン)が細幅絶縁層を経由して第1B絶縁層上に移動した。その結果、遮光膜を形成したガラス基板側から観察すると、7箇所の全ての画素部では、第1A電極を構成するCr膜で外光が反射され、数字の「8」が表示された。また、この状態で印加電圧を停止したところ、同じ表示状態が10日間以上保持され、優れたメモリー性を有することが確認された。
【0056】
また、上記の5種の表示装置において、全ての第1B電極と第2電極(共通電極)との間に40Vの直流電圧を印加したところ、油(着色したドデカン)が細幅絶縁層を経由して第1B絶縁層上に移動し、画素部において油(着色したドデカン)の青色が認識され、数字の「8」が表示された。この状態で印加電圧を停止したところ、同じ表示状態が10日間以上保持され、優れたメモリー性を有することが確認された。
さらに、上記の5種の表示装置は、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定することにより、反射光、あるいは、油(着色したドデカン)の青色による「0」〜「9」の任意の数字の表示が可能であった。この場合も優れたメモリー性を有することが確認された。
【0057】
しかし、第1A電極と電極非形成領域との面積比、および、第1B電極と電極非形成領域との面積比が150:1の表示装置では、全ての表示セルの第1A電極と第2電極(共通電極)との間に40Vの直流電圧を印加しても、EWを利用した方向規定手段が十分に機能せず、第1A絶縁層上に油(着色したドデカン)が残存し、印加電圧を40Vから100Vに高めても同様であった。
また、第1A電極と電極非形成領域との面積比、および、第1B電極と電極非形成領域との面積比が1:2の表示装置では、全ての表示セルの第1A電極と第2電極(共通電極)との間に印加する電圧が80Vに達して初めて油(着色したドデカン)が細幅絶縁層を経由して第1B絶縁層上に移動し、上記の5種の表示装置に比べて高い駆動電圧が必要なことが確認された。
【0058】
[実施例2]
実施例1と同様に、厚さ700μmのガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、図20(A)に示される7個の表示セルからなる表示装置形成用の長方形領域(縦20mm×横10mm)を設定するとともに、7個の表示セルの領域を設定した。また、各表示セルの画素部を6mm×5mmの長方形(図20(A)で斜線を付した部位)に設定した。
また、7個の各表示セルにおいて、第1A電極を形成するための領域(図20(B)で斜線を付した部位)を、上記の画素部を含むように設定した。さらに、第1B電極を形成するための領域(図20(C)で斜線を付した部位)を設定した。そして、7個の各表示セルにおいて、上記の第1A電極と第1B電極との間に、
尚、1個の表示セル内における第1A電極を形成するための領域と、第1B電極を形成するための領域との間隔(図14のW3に相当)は150μmとした。
【0059】
次いで、実施例1と同様にして、厚さ700μmのガラス基板上に第1A電極と第1B電極を各表示セル毎に形成した。
次に、このガラス基板の第1A電極と第1B電極を覆うように絶縁性樹脂(三井・デュポンフロロケミカル社製 非晶性フッ素樹脂テフロンAF1601S)をスクリーン印刷法により印刷し、オーブン中で100℃、10分間加熱して、全域に厚み0.8μmの絶縁層(第1A電極上の絶縁層は第1A絶縁層であり、第1B電極上の絶縁層は第1B絶縁層である)を形成した。この第1A絶縁層と第1B絶縁層絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は、約115°であった。
【0060】
さらに、各表示セルの第1A電極と第1B電極との間に位置する絶縁層上に、絶縁性樹脂(三井・デュポンフロロケミカル社製 非晶性フッ素樹脂テフロンAF1601S)をスクリーン印刷法により印刷し、オーブン中で100℃、10分間加熱して、中間絶縁層を形成した。この中間絶縁層の幅は200μmであり、第1A電極と第1B電極との間に位置する絶縁層上に位置するとともに、第1A電極上の第1A絶縁層と、第1B電極上の第1B絶縁層にそれぞれ25μm乗り上げており、中間絶縁層の表面は、第1A電極上の第1A絶縁層や第1B電極上の第1B絶縁層よりも5μm突出したものとなった。この中間絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は、約115°であった。
次いで、各表示セルの境界線上、および表示装置形成用の長方形領域の外周縁上に、ビーズを含有した紫外線硬化型樹脂(E.H.C社製 LCB−610)を用いて幅1mm、高さ200μmの壁部を形成した。
【0061】
一方、厚さ700μmの別のガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、実施例1と同様にして、第2電極(共通電極)と、第2電極を外部の電圧印加装置に接続するための配線(図示せず)を同時に形成した。次に、このガラス基板の他方の面に、実施例1と同様にして、遮光膜を形成した。
次いで、この厚さ700μmのガラス基板の第2電極を形成した面を、上述の第1A絶縁層、第1B絶縁層、中間絶縁層等を形成したガラス基板の壁部に当接するように圧着し、実施例1と同様にして、2枚のガラス基板を接合させた。接合後の壁部の親水性を表す水滴の接触角は、約55°であった。
これにより、図13に示されるような表示装置を作製した。この表示装置では、上述のように、壁部の親水性を表す水滴の接触角は約55°、第1A絶縁層、第1B絶縁層および中間絶縁層の親水性を表す水滴の接触角は約115°であった。
作製した表示装置について、実施例1と同様に、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定して表示性能を評価した。その結果、反射光、あるいは、油(着色したドデカン)の青色による「0」〜「9」の任意の数字の表示が可能であり、また、印加電圧を停止しても、同じ表示状態が10日間以上保持され、優れたメモリー性を有することが確認された。
【0062】
[実施例3]
実施例2と同様にして、厚さ700μmのガラス基板上に第1A電極と第1B電極を各表示セル毎に形成した。
次に、光硬化型樹脂組成物(JCR(株)製 オプトマーNNシリーズ)をスピンコート法で塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンで露光(100mJ/cm2)し、その後、0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行い、次いで、200℃、30分間の条件でポストベークすることで、第1A電極と第1B電極との間に幅200μmの下部絶縁層(厚さ4μm)を形成した。この下部絶縁層は、第1A電極と第1B電極にそれぞれ25μm乗り上げたものとなった。尚、この下部絶縁層の親水性を表す水滴の接触角は、約80°であった。
【0063】
次いで、このガラス基板の第1A電極と第1B電極を覆うように絶縁性樹脂(三井・デュポンフロロケミカル社製 非晶性フッ素樹脂テフロンAF1601S)をスクリーン印刷法により印刷し、オーブン中で100℃、10分間加熱して、全域に厚み0.8μmの絶縁層(第1A電極上の絶縁層は第1A絶縁層であり、第1B電極上の絶縁層は第1B絶縁層であり、下部絶縁層上の絶縁層は上部絶縁層である)を形成した。そして、下部絶縁層と上部絶縁層との積層部位は中間絶縁層を構成し、この中間絶縁層の表面は、第1A電極上の第1A絶縁層や第1B電極上の第1B絶縁層よりも4.8μm突出したものとなった。この第1A絶縁層と第1B絶縁層絶縁層と中間絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は、約115°であった。
次いで、各表示セルの境界線上、および表示装置形成用の長方形領域の外周縁上に、ビーズを含有した紫外線硬化型樹脂(E.H.C社製 LCB−610)を用いて幅1mm、高さ200μmの壁部を形成した。
【0064】
一方、厚さ700μmの別のガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、実施例1と同様にして、第2電極(共通電極)と、第2電極を外部の電圧印加装置に接続するための配線(図示せず)を同時に形成した。次に、このガラス基板の他方の面に、実施例1と同様にして、遮光膜を形成した。
次いで、この厚さ700μmのガラス基板の第2電極を形成した面を、上述の第1A絶縁層、第1B絶縁層、中間絶縁層等を形成したガラス基板の壁部に当接するように圧着し、実施例1と同様にして、2枚のガラス基板を接合させた。接合後の壁部の親水性を表す水滴の接触角が約55°であった。
これにより、図18に示されるような表示装置を作製した。この表示装置では、上述のように、壁部の親水性を表す水滴の接触角は約55°、第1A絶縁層、第1B絶縁層および中間絶縁層の親水性を表す水滴の接触角は約115°であった。
【0065】
作製した表示装置について、実施例1と同様に、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定して表示性能を評価した。その結果、反射光、あるいは、油(着色したドデカン)の青色による「0」〜「9」の任意の数字の表示が可能であり、また、印加電圧を停止しても、同じ表示状態が10日間以上保持され、優れたメモリー性を有することが確認された。
【0066】
[比較例1]
第1A電極と電極非形成領域との面積比、および、第1B電極と電極非形成領域との面積比を、4:1に設定し、ポリイミド樹脂(JSR(株)製 AL1254)を用いて第1A絶縁層、第1B絶縁層および細幅絶縁層(親水性を表す水滴の接触角は約65°)を形成し、ビーズを含有した紫外線硬化型樹脂(三井化学(株)製 XN−50)を用いて壁部(硬化後の親水性を表す水滴の接触角は約80°)を形成した他は、実施例1と同様にして、図2に示されるような表示装置を作製した。
作製した表示装置について、実施例1と同様に、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定して表示性能を評価した。その結果、油(着色したドデカン)が壁部を被覆し易くなって第1A絶縁層、第1B絶縁層上に十分広がらず、電圧印加時も安定な表示が行えなかった。
【0067】
[比較例2]
さらに、各表示セルの第1A電極と第1B電極との間に位置する絶縁層上に、幅150μmの中間絶縁層を設け、この中間絶縁層の表面は、第1A電極上の第1A絶縁層や第1B電極上の第1B絶縁層と同じ面をなすようにした他は、実施例2と同様にして、図13に示されるような表示装置を作製した。
作製した表示装置について、実施例1と同様に、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定して表示性能を評価した。その結果、全ての表示セルの第1A電極と第2電極(共通電極)との間に40Vの直流電圧を印加しても、EWを利用した方向規定手段が十分に機能せず、第1A絶縁層上に油(着色したドデカン)が残存し、印加電圧を40Vから100Vに高めても同様であった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
メモリー性が要求される表示装置の用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の表示装置の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示される表示装置のI−I線における拡大縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図3】図2に示される表示セルの第1A電極と第1B電極を示す平面図である。
【図4】図2に示される表示セルの第1A絶縁層と第1B絶縁層を示す平面図である。
【図5】本発明の表示装置の表示動作を説明するための図である。
【図6】本発明の表示装置の第1A電極と第1B電極の他の例を示す平面図である。
【図7】本発明の表示装置の第1A絶縁層と第1B絶縁層の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明の表示装置の第1A電極と第1B電極の他の例を示す平面図である。
【図9】本発明の表示装置の第1A電極と第1B電極の他の例を示す平面図である。
【図10】本発明の表示装置の第1A絶縁層と第1B絶縁層の他の例を示す平面図である。
【図11】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図12】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図13】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図14】図13に示される表示セルの第1A電極と第1B電極を示す平面図である。
【図15】図13に示される表示セルの第1A絶縁層と第1B絶縁層を示す平面図である。
【図16】本発明の表示装置の表示動作を説明するための図である。
【図17】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図18】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図19】本発明の表示媒体の一例を示す図である。
【図20】実施例のおける表示装置作製を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1…表示装置
11(11A,11B,11C,11D,11E,11F)…表示セル
12…画素部
13…スペース部
21,41…容器
22,23,42,43…基材
24,44…第1A電極(第1電極)
25,45…第1B電極(第1電極)
26,46,66…第2電極
27A,47A…第1A絶縁層
27B,47B…第1B絶縁層
28…細幅絶縁層
48…中間絶縁層
48′…上部絶縁層
48″…下部絶縁層
29,49…壁部
30,50…遮光膜
31…第1の液体
32…第2の液体
60…表示媒体
61…表示部
62…入力端子
70…外部装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロウエッティングを利用した表示装置とその表示装置を用いた表示媒体に係り、特に印加電圧を停止した後も表示状態が維持可能な表示装置と表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気泳動粒子と分散媒体を収納したマイクロカプセルを電気泳動表示素子として2枚の電極間に挟み込み、この電気泳動表示素子に電圧を印加することにより、電気泳動粒子がマイクロカプセル内を異なる極性を有する電極に向かって電気泳動する現象を利用した表示装置が開発されている(特許文献1、2)。この表示装置では、分散媒体をイエロー、マゼンタ、シアンとした各色のマイクロカプセルを使用し、各色毎に各電極間に挟み込むことにより、カラー表示が可能となる。
また、表面が疎水性の電極と親水性の電極を対向して備えた複数のセル内に、水と着色油とを封入し、電圧が印加されていない状態では、着色油が疎水性電極面を覆うように存在し、電極間に電圧を印加すると、着色油が疎水性電極の所定の箇所に移動集積することを利用した表示装置が開発されている。この表示装置においても、イエロー、マゼンタ、シアンとした着色油を使用することにより、カラー表示が可能となる。さらに、光スイッチの全領域に対して部分的に電極を形成し、電極間に電圧を印加すると電極のない部分に常に油が移動することを方向規定手段として利用し、移動した場所に電極を設けておき、この電極に電圧を印加し続けることでメモリー性を保つようにした表示装置が開発されている(特許文献3、4、5)。
【特許文献1】特開2002−357853号公報
【特許文献2】特開2002−333643号公報
【特許文献3】国際公開WO 2004/104670公報
【特許文献4】国際公開WO 2004/068208公報
【特許文献5】国際公開WO 2004/104671公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2に開示された従来の表示装置では、欠陥を生じることなくマイクロカプセルを配列することが困難であり、画像品質の低下を来たすという問題があった。
また、特許文献3、4、5に開示された従来の表示装置では、電圧印加によって疎水性電極の所定の箇所に移動集積した油が、電圧の印加を停止したときに疎水性電極面に広がってしまい、いわゆるメモリー性がないという問題があった。このため、常時通電が必要であり、消費電力の低減に支障を来たしていた。さらに、特許文献5に開示された方向規定手段を用いた場合には、油が電極のない部分に移動して溜まり、駆動が不安定になるおそれがあるという問題もあった。
本発明は上述のような実情に鑑みてなされたものであり、応答が速く、消費電力が低い表示装置とこれを用いた表示媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的を達成するために、本発明は、表面が疎水性の絶縁層で被覆された電極をセル内に配し、水と油をセルに充填した状態で電圧を印加すると、疎水性絶縁層の全域に広がっていた油が一箇所に移動するというエレクトロウエッティング(electrowetting(以下、EWと記す))に着目したものである。具体的には、電極を疎水性の絶縁層よりも面積が小さいものとし、電圧を印加したときに、疎水性絶縁層の下部に電極が存在する部位から電極が存在しない部位へ油が移動することを方向規定手段として利用したものである。また、電極を被覆する疎水性の絶縁層の一部の厚みを大きくしておき、電圧を印加したときに、絶縁層の厚みの大きい部位に油が移動することを方向規定手段として利用するものである。
【0005】
すなわち、本発明は、少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備え、前記第1電極と第2電極のいずれかは前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1の液体は導電性または極性を有し、前記第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより前記第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が可能である表示セルを少なくとも1個備える表示装置において、前記容器は、少なくとも一方が透明基材である1組の基材と、液体封入空間を形成するように前記1組の基材を対向させて保持する壁部と、一方の基材の前記液体封入空間側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極と第1B電極と、該第1A電極と第1B電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層と第1B絶縁層と、該第1A絶縁層と第1B絶縁層とを連結する細幅絶縁層と、前記液体封入空間の他方の基板側に配設された第2電極と、を備え、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層のうち、前記細幅絶縁層で連結されている近傍領域にはそれぞれ前記第1A電極、第1B電極が存在しない電極非形成領域が設けられ、前記第1A電極と第1B電極は前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1A電極と前記第2電極間への印加電圧、あるいは、前記第1B電極と前記第2電極間への印加電圧によって第2の液体が前記細幅絶縁層を経由して前記第1A絶縁層上と第1B絶縁層上との間で移動可能であり、前記細幅絶縁層は、前記第1の液体と第2の液体が移動した位置で印加電圧を停止した後も、移動した前記第1の液体と第2の液体の位置が保持されてメモリー性が発現されるための液体保持手段であって、前記細幅絶縁層は印加電圧を停止しているときに前記第1A絶縁層上あるいは前記第1B絶縁層上に位置する前記第2の液体が移動できない幅と長さを有し、前記壁部の前記容器内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立するような構成とした。
【0006】
本発明の他の態様として、前記第1A電極と前記電極非形成領域との面積比、前記第1B電極と前記電極非形成領域との面積比は、100:1〜1:1の範囲であるような構成とした。
この態様では、EWによる方向規定をより有効に機能させることが可能である。
本発明の他の態様として、前記細幅絶縁層の幅は0.01〜10000μmの範囲、長さは0.01〜1000μmの範囲であるような構成とした。
この態様では、移動した第2の液体の細幅絶縁層による保持が更に確実なものとなる。
【0007】
また、本発明は、少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備え、前記第1電極と第2電極のいずれかは前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1の液体は導電性または極性を有し、前記第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより前記第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が可能である表示セルを少なくとも1個備える表示装置において、前記容器は、少なくとも一方が透明基材である1組の基材と、液体封入空間を形成するように前記1組の基材を対向させて保持する壁部と、一方の基材の前記液体封入空間側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極と第1B電極と、該第1A電極と第1B電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層と第1B絶縁層と、該第1A絶縁層と第1B絶縁層とを連結する中間絶縁層と、前記液体封入空間の他方の基板側に配設された第2電極と、を備え、前記中間絶縁層は第1A電極と第1B電極の一部を被覆するように前記第1A電極と第1B電極との境界部位に位置し、前記中間絶縁層の表面は前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出し、前記第1A電極と第1B電極は前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1A電極と前記第2電極間への印加電圧、あるいは、前記第1B電極と前記第2電極間への印加電圧によって第2の液体が前記中間絶縁層を乗り越えて前記第1A絶縁層上と第1B絶縁層上との間で移動可能であり、前記中間絶縁層は、前記第1の液体と第2の液体が移動した位置で印加電圧を停止した後も、移動した前記第1の液体と第2の液体の位置が保持されてメモリー性が発現されるための液体保持手段であって、前記中間絶縁層の表面が前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出する高さは、印加電圧を停止しているときに、前記第1A絶縁層上あるいは前記第1B絶縁層上に位置する前記第2の液体が乗り越えない高さであり、前記壁部の前記容器内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、中間絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立するような構成とした。
【0008】
本発明の他の態様として、前記中間絶縁層が存在しない前記第1A電極と前記第1A電極を被覆する前記中間絶縁層との面積比、前記中間絶縁層が存在しない前記第1B電極と前記第1B電極を被覆する前記中間絶縁層との面積比は、100:1〜1:1の範囲であるような構成とした。
この態様では、EWによる方向規定をより有効に機能させることが可能である。
本発明の他の態様として、前記中間絶縁層の表面が前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出する高さは0.01〜100μmの範囲であるような構成とした。
この態様では、移動した第2の液体の中間絶縁層による保持が更に確実なものとなる。
【0009】
本発明の他の態様として、前記中間絶縁層は、前記第1A電極と第1B電極との境界部位に位置する下部絶縁層と、その上に位置する上部絶縁層とからなり、該上部絶縁層は、前記第1A電極と第1B電極と同じ材質であるような構成とした。
この態様では、中間絶縁層の形成が容易であるとともに、下部絶縁層の親水性を表す水滴の接触角には制限がなく、中間絶縁層を構成する材料の選択の幅が拡大する。
本発明の他の態様として、前記下部絶縁層は、前記第1A電極および第1B電極よりも厚いような構成とした。
この態様では、中間絶縁層の形成がさらに容易である。
本発明の他の態様として、表示認識側の前記透明基材の外側に所望のパターン形状で遮光膜を備えるような構成とした。
この態様では、遮光膜が存在しない部位の電極面に第2の液体が位置するか否かによるON/OFF表示が可能となる。
【0010】
本発明の他の態様として、前記第2の液体が着色油であるような構成とした。
この態様では、情報等を所望の色で表示することが可能となる。
本発明の他の態様として、前記表示セルで反射された光を認識する反射方式の表示であり、表示セル毎に封入された前記第2の液体である着色油は、イエロー、マゼンタ、シアンのいずれかであるような構成とした。
この態様では、反射方式のフルカラー表示が可能となる。
本発明の他の態様として、前記表示セルを透過した光を認識する透過方式の表示であり、前記第1の液体が着色水であり、前記第2の液体である着色油が遮光性の黒色油であるような構成とした。
この態様では、着色水を透過した色と黒色との着色表示が可能となる。
【0011】
本発明の他の態様として、前記表示セル毎に封入された前記第1の液体である着色水は、赤、緑、青のいずれかであるような構成とした。
この態様では、透過方式のフルカラー表示が可能となる。
本発明の他の態様として、前記表示セル毎の前記第1A電極と前記第1B電極の形状・位置が同じであるような構成とした。
この態様では、表示装置全体で均一な表示特性が得られる。
【0012】
本発明の表示媒体は、上述の表示装置を1個以上有し、表示装置の各表示セルに外部装置から電力および信号を供給するための入力端子を有し、該入力端子において前記表示媒体と前記外部装置との接続、切り離しが可能であるような構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1A電極と第2電極への印加電圧、あるいは、第1B電極と第2電極への印加電圧により、EWを利用した第2の液体の位置変化が迅速かつ確実に行なわれ、応答の速い表示が可能であり、また、液体保持手段である細幅絶縁層、あるいは、中間絶縁層により、移動した第1の液体と第2の液体が印加電圧停止後も保持されてメモリー性が発現されるので、常時通電が不要となり、消費電力が低く応答の速い表示装置が可能となる。
また、本発明の表示媒体は、外部装置から表示媒体を取り外してもメモリー性を保持することができるため、常時通電が不要で情報を表示媒体だけで持ち運ぶことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[表示装置]
図1は、本発明の表示装置の一例を示す平面図である。図1に示されるように、本発明の表示装置1は、複数の表示セル11(図示例では7個の表示セル11A,11B,11C,11D,11E,11F)を有している。各表示セル11は、少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備えたものであり、第1電極と第2電極のいずれかは第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、第1の液体は導電性または極性を有し、第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が行われる。また、各表示セル11は、画素部12とスペース部13とを有し、画素部12は電圧の印加により第1の液体と第2の液体の位置が変化することによるON/OFF表示が可能であり、表示装置1として、「0」〜「9」の数字情報表示が行える。この本発明の表示装置1は、各表示セル11の画素部12におけるON/OFF表示を、印加電圧を停止した後も維持できるメモリー性を具備している。
尚、図1では、各表示セル11の境界線は鎖線で示しており、また、スペース部13には斜線を付している。
【0015】
<第1の実施形態>
図2は、本発明の表示装置の第1の実施形態を示す拡大縦断面図であり、図1のI−I線における縦断面により1個の表示セルの構造を示している。図2に示されるように、表示セル11Aは、容器21内に導電性または極性を有する第1の液体31と、疎水性である第2の液体32が封入されている。尚、図2では表示セル11Aの構造を示すが、他の各表示セルも同様の構造である。
容器21は、1組の基材22、23と、液体封入空間Sを形成するように1組の基材22、23を対向させて支持する壁部29とを備えている。一方の基材22は、液体封入空間S側に、互いに電気的に独立して配設された第1A電極24と第1B電極25と、これらをそれぞれ被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bを備えている。
【0016】
図3は表示セル11Aにおける第1A電極24と第1B電極25を示す平面図であり、図4は第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bを示す平面図である。図4に示されるように、間隙部27′を介して離間形成されている第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bは、細幅絶縁層28によって連結されている。また、図3に示されるように、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bのうち、細幅絶縁層28で連結されている近傍領域にはそれぞれ第1A電極24、第1B電極25が存在しない電極非形成領域24′、25′が設定されている。このような電極非形成領域24′、25′が存在することにより、EWを利用した第2の液体32の方向規制手段が構成される。また、他方の基材23は、液体封入空間S側に、第2電極26を備えている。
この容器21では、基材23側が表示認識側であり、少なくとも基材23は透明基材である。また、この基材23の外側には、遮光膜30が配設されており、遮光膜30の存在しない部位が画素部12であり、遮光膜30の配設部位がスペース部13となっている。
【0017】
また、上記の表示セル11Aでは、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bによって、第1A電極24と第1B電極25が第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁されている。そして、壁部29の容器21内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bの表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、細幅絶縁層28の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立する。このような親水性を表す水滴の接触角の関係が成立することにより、第2の液体32が壁部29に広がることなく、第1A絶縁層27A、あるいは、第1B絶縁層27Bを確実に覆うことができる。また、θ2<θ3の関係が成立する場合には、後述するEWを利用した方向規定手段が更に効果的に機能する。
尚、本発明において、親水性を表す水滴の接触角とは、測定対象物の表面に純水(液クロマトグラフィー用蒸留水(純正化学(株)製))を一滴(一定量)滴下し、所定時間経過した後にθ/2法に従って測定した接触角を意味する。以下の本発明においても同様である。
【0018】
このような表示セル11Aは、図2に示されるように第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)に第2の液体32が位置している状態で、第1A電極24と第2電極26間へ電圧を印加すると、図3に実線矢印で示すように、第1A電極24から電極非形成領域24′方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段が機能する。これによって、第1A絶縁層27A上の第2の液体32が、細幅絶縁層28を経由して、第1B絶縁層27B上(液体封入空間S2)に移動する(図5(A))。この状態で印加電圧を停止すると、細幅絶縁層28が液体保持手段として作用し、第1B絶縁層27B上(液体封入空間S2)に移動した第2の液体32がそのまま保持されてメモリー性が発現される(図5(B))。
【0019】
また、第1B電極25と第2電極26間へ電圧を印加すると、図3に鎖線矢印で示すように、第1B電極25から電極非形成領域25′方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段が機能する。これによって、第2の液体32が細幅絶縁層28を経由して第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)に移動する(図5(C))。この状態で印加電圧を停止すると、細幅絶縁層28が液体保持手段として作用し、第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)に移動した第2の液体32がそのまま保持されてメモリー性が発現される(図5(D))。このような表示セル11Aでは、遮光膜30が存在しない部位(画素部12)の絶縁層(図示例では第1A絶縁層27A)上に第2の液体32が位置するか否かによるON/OFF表示が可能である。
【0020】
表示セル11Aを構成する基材23は、上述のように表示認識側に位置するため、透明基材である。また、反対側の基材22は、表示セル11Aが反射方式の表示を行う場合には、透明基材である必要はないが、表示セル11Aが透過方式の表示を行う場合には、透明基材とする。基材22、23は、例えば、ガラス基材、透明樹脂基材等の透明基材を使用することができる。また、基材22が透明基材でなくてよい場合には、金属基材、セラミックス基材等の基材、電極形成面と反対側の面を粗面化あるいは金属膜を蒸着した不透明なガラス基材、染料または顔料を練り込んだ不透明樹脂基材等を使用することができる。基材22、23の厚みは、使用する材質等を考慮して設定することができ、例えば、10μm〜5mm、好ましくは100μm〜2mmの範囲で適宜設定することができる。
【0021】
表示セル11Aを構成する第1A電極24、第1B電極25、第2電極26は、それぞれ図示していない電圧印加装置に接続され、例えば、印加電圧1〜300Vの範囲で任意に電極の電荷を制御可能とされている。第2電極26は、表示認識側に位置しており、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等を用いて、スパッタリング、真空蒸着法、CVD法等の一般的な成膜方法により形成した透明電極とすることができる。また、第2電極26は、第1の液体31を第2電極26とほぼ等電位にできるものであればよく、上述の面電極の他に、例えば、液体封入空間S内に1本以上設けられた針状電極、メッシュ状電極等であってもよい。さらに、第1A電極24、第1B電極25は、表示セル11Aが透過方式の表示を行う場合には、第2電極26と同様に透明電極とする。一方、表示セル11Aが反射方式の表示を行う場合には、第1A電極24、第1B電極25は、透明電極でなく、Cu、Ag、Au、Al等の金属電極であってもよい。
【0022】
第1A電極24と電極非形成領域24′との面積比、第1B電極25と電極非形成領域25′との面積比は、EWによる方向規定を有効に機能させるために、100:1〜1:1、好ましくは20:1〜3:1、更に好ましくは20:1〜4:1の範囲で設定することができる。電極非形成領域24′、25′の面積が上記の範囲を超える場合、第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)と第1B絶縁層27B上(液体封入空間S2)との間での第2の液体32の移動に要する電圧が高くなり、また、電極非形成領域24′、25′の面積が上記の範囲を下回る場合、EWによる方向規定が有効に機能し難くなり好ましくない。
【0023】
表示セル11Aを構成する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと細幅絶縁層28は、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)が成立するものであればよく、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bを構成する絶縁材料と細幅絶縁層28を構成する絶縁材料は、同じもの、異なるもの、いずれであってもよい。例えば、ポリイミド系樹脂、SiO2、SiN4、アクリル系樹脂、ペリレン、フッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、石英、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁材料からなるものであってよく、微量な範囲の電流が流れるものであってもよい。また、これらの中で、ペリレン、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等の絶縁材料を使用することにより、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと細幅絶縁層28の表面の親水性を表す水滴の接触角が大きくなり、第2の液体32に対する濡れ性が良好となり、第2の液体32の厚み均一性が向上する。第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bの厚みは、第1A電極24と第1B電極25を第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁できるように、使用する絶縁材料に応じて適宜設定することができ、例えば、0.01〜10μmの範囲で設定することができる。
尚、表示セル11Aが透過方式の表示を行う場合には、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと細幅絶縁層28は上記の絶縁材料の中から透明性を有する絶縁材料を選択して形成する。
【0024】
また、細幅絶縁層28の幅W、長さL(図4参照)は、印加電圧を停止しているときに、第1A絶縁層27A上あるいは第1B絶縁層27B上に位置する第2の液体32が移動できないように、第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27B、細幅絶縁層28を構成する絶縁材料に対する第2の液体32の濡れ性等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、細幅絶縁層28の幅Wは0.01〜10000μm、好ましくは1〜5000μmの範囲、長さLは0.01〜1000μm、好ましくは0.1〜500μmの範囲で設定することができる。幅Wが0.01μm未満、長さLが0.01μm未満であると、通路としての細幅絶縁層28の面積が小さく、第2の液体32が移動するのに要する時間が長くなり応答速度が低下して好ましくない。また、幅Wが10000μmを超えたり、長さLが1000μmを超えると、第2の液体32の移動時に、通路としての細幅絶縁層28に第2の液体32が溜まりやすく、第1A絶縁層27A上(液体封入空間S1)と第1B絶縁層27B上(液体封入空間S2)との間での第2の液体32の移動が不十分となり、表示に支障を来たすおそれがある。
【0025】
表示セル11Aを構成する壁部29は、少なくとも容器21内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角が、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)を満足するものであればよい。このような壁部29を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化型のウレタンアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、エステルアクリレート系樹脂、アクリレート系樹脂、熱硬化型のフェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ユリア系樹脂等の樹脂材料からなるものであってよい。また、この壁部29により基材22、23が対向して形成される液体封入空間Sの高さは、例えば、1〜1000μmの範囲で設定することができる。尚、本発明では、例えば、複数の電極が存在し、表示領域全体の外周部分に配置されて基材を保持するような壁部は、親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)を満足しないものであってもよい。
【0026】
容器21に封入する第1の液体31は、例えば、水、アルコール、酸等の導電性または極性を有する液体である。一方、第2の液体32は疎水性の液体であり、例えば、ヘプタン、ヘキサン、ノナン、デカン、オクタン、ドデカン、テトラデカン、オクタデカン、ヘキサデカン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、安息香酸エチル等の油を使用することができる。また、第1の液体31の比重g1と、第2の液体32の比重g2との間には、g1≦g2の関係が成立することが好ましい。
本発明では、第2の液体32の量は、第1A絶縁層27Aあるいは第1B絶縁層27Bの全域に広がるための最小量以上で適宜設定することができる。
また、本発明では、第2の液体32を着色油とすることができ、これにより、情報等を所望の色で表示することが可能となる。
また、表示セル11Aが透過方式の表示である場合、第1の液体31を着色液体とし、第2の液体32を遮光性の黒色油とすることができる。これにより、着色液体31を透過した色と黒色との2色によりON/OFF表示が可能となる。
【0027】
表示セル11Aを構成する遮光膜30は、遮光性の樹脂膜、金属膜、これらの組み合わせ等であってよく、特に制限はない。また、遮光膜30が所望の色に着色されたものであってもよい。
尚、上述の図3、図4で説明した第1A電極24と第1B電極25、および、第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bは、表示セル11Aを例としたものであり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1A電極24と第1B電極25、および、電極非形成領域24′、25′を、図6に示されるような矩形状とし、この第1A電極24と第1B電極25を被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27B、および、細幅絶縁層28を、図7に示すような形状としてもよい。また、図6に示す形状に代えて、第1A電極24と第1B電極25、および、電極非形成領域24′、25′を、図8に示されるような形状とし、この第1A電極24と第1B電極25を被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27B、および、細幅絶縁層28を、図7に示すような形状としてもよい。さらに、第1A電極24と第1B電極25、および、電極非形成領域24′、25′を、図9に示されるような円形状とし、この第1A電極24と第1B電極25を被覆する第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27B、および、細幅絶縁層28を、図10に示すような形状としてもよい。
【0028】
また、表示セル11Aは、上述の構造に限定されるものではない。例えば、図11に示されるように、基材22側を表示認識側とし、基材22の外側に遮光膜30を設けたような構造であってもよい。この場合、基材22は透明基材であり、第1A電極24、第1B電極25および第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bも透明とする。また、透過方式の表示では基材23、第2電極26も透明とする。また、遮光膜30を設けず、第1の液体31と第2の液体32の移動による位置変化による表示としてもよい。
【0029】
また、図12に示されるように、第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bを介することなく、壁部29を基材22に直接固着したような構造であってもよい。この場合も、第1A電極24、第1B電極25は、それぞれ第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bにより被覆され、第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁される。したがって、液体封入空間S内には、電極非形成領域24′、25′に存在する第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bに加えて、第1A電極24の残りの周囲に存在する第1A絶縁層27Aと、第1B電極25の残りの周囲に存在する第1B絶縁層27Bが露出することになる。しかし、上記のような電極非形成領域24′、25′に存在しない第1A絶縁層27A、第1B絶縁層27Bは、上述のような、第1A電極24から電極非形成領域24′方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定の機能、および、第1B電極25から電極非形成領域25′方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定の機能を阻害するものであってはならない。このため、電極非形成領域24′を除く第1A電極24の残りの周囲に存在する第1A絶縁層27A、および、電極非形成領域25′を除く第1B電極25の残りの周囲に存在する第1B絶縁層27Bは、第1A電極24と第1B電極25を第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁できる範囲で可能な限り少ない方が好ましい。
【0030】
また、本発明の表示装置を構成する表示セルは、図1に示される「0」〜「9」の数字情報表示が行えるような構造に限定されるものではない。例えば、表示セルが反射方式の表示である場合に、第2の液体である着色油がイエロー、マゼンタ、シアンのいずれかである複数の表示セルをマトリックス状等に配列し、反射方式のフルカラー表示を行うものとしてもよい。また、表示セルが透過方式の表示である場合に、第1の液体31を着色液体とし、第2の液体32を遮光性の黒色油とし、上記の着色液体31が赤、緑、青のいずれかである複数の表示セルをマトリックス状等に配列し、透過方式のフルカラー表示を行うものとしてもよい。
また、第1A電極24と第1B電極25の配設位置、形状を同じものとした複数の単位セルをマトリックス状等に配列してもよい。これにより、例えば、遮光膜30が存在しなくても、表示装置全体で均一な表示特性が得られる。
【0031】
<第2の実施形態>
図13は、本発明の表示装置の第2の実施形態を示す図2相当の図であり、1個の表示セルの構造を示す。図13に示される形態では、表示セル11Aの容器41内には、導電性または極性を有する第1の液体31と、疎水性である第2の液体32が封入されている。
容器41は、1組の基材42、43と、液体封入空間Sを形成するように1組の基材42,43を対向させて支持する壁部49とを備えている。一方の基材42は、液体封入空間S側に、互いに電気的に独立して配設された第1A電極44と第1B電極45と、これらをそれぞれ被覆する第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと、この第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bを連結する中間絶縁層48とを備えている。
【0032】
図14は表示セル11Aにおける第1A電極44と第1B電極45を示す平面図であり、図15は第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと中間絶縁層48を示す平面図である。尚、図14には、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと中間絶縁層48を二点鎖線で表示している。図13〜図15に示されるように、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bは中間絶縁層48によって連結されており、この中間絶縁層48は、第1A電極44と第1B電極45の境界部位に位置し、かつ、第1A電極44と第1B電極45の一部を被覆し、この被覆部位は第1A絶縁層47Aや第1B絶縁層47Bよりも層厚が大きいものである
【0033】
中間絶縁層48が第1A電極44の一部を被覆する幅W1(図14参照)、第1B電極45の一部を被覆する幅W2(図14参照)は、EWによる方向規定がより有効に機能するように設定することができる。例えば、中間絶縁層48が存在しない第1A電極44と中間絶縁層48(第1A電極44を被覆する幅W1の領域)との面積比、中間絶縁層48が存在しない第1B電極45と中間絶縁層48(第1B電極45を被覆する幅W2の領域)との面積比が、100:1〜1:1、好ましくは20:1〜3:1、更に好ましくは20:1〜4:1の範囲で設定することができる。上記の中間絶縁層48が電極を被覆する面積が上記の範囲を超える場合、第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)と第1B絶縁層47B上(液体封入空間S2)との間での第2の液体32の移動に要する電圧が高くなり、また、中間絶縁層48が電極を被覆する面積が上記の範囲を下回る場合、EWによる方向規定が有効に機能し難くなり好ましくない。また、第1A電極44と第1B電極45との間隔W3は、例えば、0.01〜10000μm、好ましくは10〜1000μmの範囲で設定することができる。
【0034】
尚、中間絶縁層48が電極を被覆する形状は、図14に示されるものに限定されず、例えば、上述の図6、図8、図9において、電極非形成領域24′、25′として示した形状等とすることができる。
さらに、中間絶縁層48の表面は、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bの表面よりも液体封入空間S側に突出している。この中間絶縁層48の表面が第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bの表面よりも液体封入空間S側に突出する高さH(図13参照)は、印加電圧を停止しているときに、第1A絶縁層47A上あるいは第1B絶縁層47B上に位置する第2の液体32が乗り越えない高さである。
このように、第1A絶縁層47Aや第1B絶縁層47Bよりも厚い中間絶縁層48が存在することにより、EWを利用した第2の液体32の方向規制手段が構成され、また、中間絶縁層48が液体保持手段として機能する。
尚、他方の基材43は、液体封入空間S側に、第2電極46を備えている。
【0035】
この容器41では、基材43側が表示認識側であり、少なくとも基材43は透明基材である。また、この基材43の外側には、遮光膜50が配設されており、遮光膜50の存在しない部位が画素部12であり、遮光膜50の配設部位がスペース部13となっている。
上記の表示セル11Aでは、第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47B、および中間絶縁層48によって、第1A電極44と第1B電極45が第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁されている。そして、本発明では、壁部49の容器41内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bの表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、中間絶縁層48の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立する。このような親水性を表す水滴の接触角の関係が成立することにより、第2の液体32が壁部49に広がることなく、第1A絶縁層47A、あるいは、第1B絶縁層47Bを確実に覆うことができる。また、θ2<θ3の関係が成立する場合には、後述するEWを利用した方向規定手段が更に効果的に機能する。
【0036】
このような表示セル11Aは、図13に示されるように第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)に第2の液体32が位置している状態で、第1A電極44と第2電極46間へ電圧を印加すると、図14に実線矢印で示すように、第1A電極44上の第1A絶縁層47Aから層厚の大きい中間絶縁層48方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段が機能する。これによって、第1A絶縁層47A上の第2の液体32が、中間絶縁層48を乗り越えて、第1B絶縁層47B上(液体封入空間S2)に移動する(図16(A))。この状態で印加電圧を停止すると、中間絶縁層48が液体保持手段として作用し、第1B絶縁層47B上(液体封入空間S2)に移動した第2の液体32がそのまま保持されてメモリー性が発現される(図16(B))。
【0037】
また、第1B電極45と第2電極46間へ電圧を印加すると、図14に鎖線矢印で示すように、第1B電極45上の第1B絶縁層47Bから層厚の大きい中間絶縁層48方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段が機能する。これによって、第2の液体32が中間絶縁層48を乗り越えて、第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)に移動する(図16(C))。この状態で印加電圧を停止すると、中間絶縁層48が液体保持手段として作用し、第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)に移動した第2の液体32がそのまま保持されてメモリー性が発現される(図16(D))。このような表示セル11Aでは、遮光膜50が存在しない部位(画素部12)の絶縁層(図示例では第1A絶縁層47A)に第2の液体32が位置するか否かによるON/OFF表示が可能である。
【0038】
表示セル11Aを構成する中間絶縁層48は、上述のように、方向規制手段を構成するとともに、液体保持手段である。この中間絶縁層48の表面が第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bの表面よりも液体封入空間S側に突出する高さHは、EWによる方向規定が有効に機能し、かつ、中間絶縁層48が液体保持手段として機能するように、第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47B、中間絶縁層48を構成する絶縁材料に対する第2の液体32の濡れ性等を考慮して適宜設定することができる。例えば、高さHを、0.01〜1000μm、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。高さHが0.01μm未満であると、EWによる方向規定が十分に機能せず、中間絶縁層48の液体保持手段としての機能も不十分となることがある。また、高さHが1000μmを超えると、中間絶縁層48が障壁となり、第1A絶縁層47A上(液体封入空間S1)と第1B絶縁層47B上(液体封入空間S2)との間での第2の液体32の移動に要する駆動電圧が高くなり好ましくない。
【0039】
表示セル11Aを構成する基材42、43、第1A電極44、第1B電極45、第2電極46は、それぞれ上述の実施形態における基材22、23、第1A電極24、第1B電極25、第2電極26と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
表示セル11Aを構成する第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと中間絶縁層48を構成する絶縁材料は、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)が成立するものであればよく、それぞれ上述の実施形態における第1A絶縁層27Aと第1B絶縁層27Bと細幅絶縁層28と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。また、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bを構成する絶縁材料と中間絶縁層48を構成する絶縁材料は、同じもの、異なるもの、いずれであってもよい。尚、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと中間絶縁層48の層厚は、第1A電極44と第1B電極45を第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁でき、かつ、上記の突出する高さHが確保できるように、使用する絶縁材料に応じて適宜設定することができ、例えば、0.01〜1000μmの範囲で設定することができる。
【0040】
また、表示セル11Aを構成する壁部49、遮光膜50も、それぞれ上述の実施形態における壁部29、遮光膜30と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
容器41に封入する第1の液体31は、上述の実施形態における容器21に封入する第1の液体31と同様とすることができる。
一方、容器41に封入する第2の液体32は、上述の実施形態における容器21に封入する第2の液体32と同様とすることができ、第2の液体32の量は、第1A絶縁層47Aあるいは第1B絶縁層47Bの全域に広がるための最小量以上で適宜設定することができる。
また、本発明では、第2の液体32を着色油とすることができ、これにより、情報等を所望の色で表示することが可能となる。
【0041】
表示セル11Aが透過方式の表示である場合、第1の液体31を着色液体とし、第2の液体32を遮光性の黒色油とすることができる。これにより、着色液体31を透過した色と黒色との2色によるON/OFF表示が可能となる。
表示セル11Aは、上述の構造に限定されるものではない。例えば、基材42側を表示認識側とし、この基材42の外側に遮光膜50を設けたような構造であってもよい。この場合、基材42は透明基材であり、第1A電極44、第1B電極45、第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47B、および中間絶縁層48も透明とする。また、透過方式の表示では基材43、第2電極46も透明とする。また、遮光膜50を設けず、第1の液体31と第2の液体32の移動による位置変化による表示としてもよい。
【0042】
また、図17に示されるように、第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47Bを介することなく、壁部49を基材42に直接固着したような構造であってもよい。この場合も、第1A電極44、第1B電極45は、それぞれ第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47B、中間絶縁層48により被覆され、第1の液体31および第2の液体32から電気的に絶縁される。そして、中間絶縁層48を除く絶縁層(第1A電極44の残りの周囲に存在する第1A絶縁層47Aと、第1B電極45の残りの周囲に存在する第1B絶縁層47B)は、上述のような方向規定の機能(第1A電極44上の第1A絶縁層47Aから層厚の大きい中間絶縁層48方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定の機能、および、第1B電極45上の第1B絶縁層47Bから層厚の大きい中間絶縁層48方向へ第2の液体32を移動させるEWを利用した方向規定手段の機能)を阻害するものであってはならない。このため、第1A電極44の周囲に存在する第1A絶縁層47A、および、第1B電極45の周囲に存在する第1B絶縁層47Bの表面は、第1A電極44上の第1A絶縁層47A、第1B電極45上の第1B絶縁層47Bの表面と同一面、あるいは、低いものとする。
【0043】
さらに、本発明では、図18に示されるように、中間絶縁層48を上部絶縁層48′と下部絶縁層48″からなる2層構造としてもよい。例えば、下部絶縁層48″は、第1A電極44と第1B電極45との境界部位に位置し、かつ、第1A電極44と第1B電極45の一部を被覆し、また、上部絶縁層48′は下部絶縁層48″を被覆している。この場合も、第1A絶縁層47Aと第1B絶縁層47Bと上部絶縁層48′は、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)が成立するものであればよく、上部絶縁層48′は第1A絶縁層47A、第1B絶縁層47Bと同じ材質であってもよく、異なるものであってもよい。また、下部絶縁層48″は、上記の親水性を表す水滴の接触角の大小関係(θ1<θ2≦θ3)に制限されることなく、任意の絶縁材料を使用することができる。
【0044】
また、本発明の表示装置を構成する表示セルは、図1に示される「0」〜「9」の数字情報表示が行えるような構造に限定されるものではない。例えば、表示セルが反射方式の表示である場合に、第2の液体である着色油がイエロー、マゼンタ、シアンのいずれかである複数の表示セルをマトリックス状等に配列し、反射方式のフルカラー表示を行うものとしてもよい。また、表示セルが透過方式の表示である場合に、第1の液体31を着色液体とし、第2の液体32を遮光性の黒色油とし、上記の着色液体31が赤、緑、青のいずれかである複数の表示セルをマトリックス状等に配列し、透過方式のフルカラー表示を行うものとしてもよい。
また、第1A電極44と第1B電極45の配設位置、形状を同じものとした複数の単位セルをマトリックス状等に配列してもよい。これにより、例えば、遮光膜50が存在しなくても、表示装置全体で均一な表示特性が得られる。
【0045】
[表示媒体]
本発明の表示媒体は、上述の本発明の表示装置を1個以上有し、表示装置の各表示セルに外部装置から電力および信号を供給するための入力端子を有し、この入力端子において表示媒体と外部装置との接続、切り離しを可能としたものである。これにより、外部装置から表示媒体を取り外してもメモリー性を保持することができるため、情報を表示媒体だけで持ち運びが可能である。
【0046】
図19は、本発明の表示媒体の一例を説明するための図である。図19において、本発明の表示媒体60は、上述の本発明の表示装置が複数配設された表示部61と、入力端子62を備えている。表示媒体60の表示部61を構成する表示装置の数には制限はない。また、入力端子62の配設位置は、表示部61の周囲の部位(図19に斜線を付した部位)であればよく、特に限定されない。この入力端子62は、表示装置の各表示セルに外部装置70から電力および信号を供給するための端子であり、外部装置70にリンクされた伝送手段71のコネクタ72が接続できる。そして、表示媒体60は、この入力端子62において外部装置70との接続、切り離しが可能である。したがって、入力端子62を介して外部装置70から電力および信号の供給を受けて表示媒体60に所望の情報を表示させ、その後、入力端子62からコネクタ72を外し、表示媒体60を外部装置70から切り離して自在に持ち運びできる。
【0047】
外部装置70としては、例えば、パーソナルコンピュータ、メインフレームコンピュータ等のコンピュータ手段、テレファクシミリマシン、コピー機、無線通信等のデータ通信装置や処理装置、ネットワーク端末、インターネット端末等を挙げることができる。
また、伝送手段71は特に制限はなく、例えば、電気導体ケーブル、ハードワイヤリンク等の、電力や信号の供給が可能なものとすることができる。
上述の各実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
まず、厚さ700μmのガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、図20(A)に示される7個の表示セルからなる表示装置形成用の長方形領域(縦20mm×横10mm)を設定するとともに、7個の表示セルの領域を設定した。また、各表示セルの画素部を6mm×5mmの長方形(図20(A)で斜線を付した部位)に設定した。
【0049】
また、7個の各表示セルにおいて、第1A電極と電極非形成領域を形成するための領域(図20(B)で斜線を付した部位)を、上記の画素部を含むように設定した。さらに、第1B電極と電極非形成領域を形成するための領域(図20(C)で斜線を付した部位)を設定した。ここで、7個の各表示セルにおける電極非形成領域は、図20(B)、(C)に矢印で示した辺に沿って、図3に示すようにそれぞれ設定した。そして、図20(B)、(C)に示した各領域内の電極と電極非形成領域の区分を、第1A電極と電極非形成領域との面積比、および、第1B電極と電極非形成領域との面積比が、150:1、100:1、20:1、4:1、3:1、1:1、1:2の7種となるように設定した。
尚、1個の表示セル内における第1A電極と電極非形成領域を形成するための領域と、第1B電極と電極非形成領域を形成するための領域との間隔(図4のLに相当)は500μmとした。
【0050】
また、7個の各表示セルにおいて、第1A電極、第1B電極および電極非形成領域を被覆するように、第1A絶縁層と第1B絶縁層とを形成するための領域、この第1A絶縁層と第1B絶縁層を連結する細幅絶縁層を形成するための領域を設定した。図20(D)では、設定した第1A絶縁層、第1B絶縁層、細幅絶縁層の形成領域に斜線を付して示した。
次に、ガラス基板上に蒸着によりCr膜(厚み1500Å)を成膜し、このCr膜上に感光性レジスト(シプレイ(株)製 Micro Posit)をスピンコート法で0.8μmの厚さに塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンで露光(100mJ/cm2)し、その後、0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行い、次いで、200℃、30分間の条件でポストベークすることで、レジスト膜を形成した。次いで、このレジスト膜をマスクとしてCr膜をエッチング(エッチング液:硫酸と過酸化水素の混合溶液)して第1A電極と第1B電極を各表示セル毎に形成した。尚、各表示セルの第1A電極と第1B電極を外部の電圧印加装置に接続するための配線(図20には示していない)も同時に形成した。
【0051】
次に、このガラス基板の第1A電極と第1B電極を覆うように絶縁性樹脂(三井・デュポンフロロケミカル社製 非晶性フッ素樹脂テフロンAF1601S)をスクリーン印刷法により印刷し、オーブン中で100℃、10分間加熱して、厚み0.8μmの第1A絶縁層と第1B絶縁層とこれらを連結する細幅絶縁層を形成した。形成した細幅絶縁層は、長さLが0.5mm、幅Wが1mmであった(図4参照)。これらの第1A絶縁層、第1B絶縁層、細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は、約115°であった。尚、接触角の測定は、測定対象物の表面に純水(液クロマトグラフィー用蒸留水(純正化学(株)製))を一滴(一定量)滴下し、10秒間経過後、接触角測定装置(協和界面化学(株)製 CA−Z)を用いてθ/2法に従って行った。以下の実施例、比較例においても同様である。
次いで、各表示セルの境界線上、および表示装置形成用の長方形領域の外周縁上に、ビーズを含有した紫外線硬化型樹脂(E.H.C社製 LCB−610)を用いて幅1mm、高さ200μmの壁部を形成した。
【0052】
一方、厚さ700μmの別のガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、上記と同様の表示装置形成用の長方形領域と各表示セルの画素部を設定した。このガラス基板の一方の面に、表示装置形成用の長方形領域と一致するように酸化インジウムスズ(ITO)膜を蒸着法で成膜し、第2電極(共通電極)とした。尚、第2電極を外部の電圧印加装置に接続するための配線(図示せず)も同時に形成した。
次に、この厚さ700μmのガラス基板の他方の面に、下記組成の遮光性の樹脂材料を用いてスピンコート法で5μmの厚さに塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンで露光(100mJ/cm2)し、その後、0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行い、次いで、200℃、30分間の条件でポストベークすることで、遮光膜を形成した。この遮光膜は、ガラス基板を介して上記の第2電極と対向するとともに、7箇所の画素部が露出するものとした。
【0053】
(遮光性の樹脂組成)
・黒顔料 … 14重量部
(大日精化工業(株)製 TMブラック#9550)
・分散剤 … 1.2重量部
(ビックケミー(株)製 Disperbyk111)
・ポリマー(昭和高分子(株)製 VR60) … 2.8重量部
・モノマー(サートマー(株)製 SR399) … 3.5重量部
・開始剤 … 1.6重量部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)
−ブタノン−1)
・開始剤(4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン) … 0.3重量部
・開始剤(2,4−ジエチルチオキサントン) … 0.1重量部
・溶剤(エチレングリコールモノブチルエーテル) …75.8重量部
【0054】
次いで、この厚さ700μmのガラス基板の第2電極を形成した面を、上述の第1A絶縁層、第1B絶縁層、細幅絶縁層等を形成したガラス基板の壁部に当接するように圧着し、その後、壁部に紫外線を照射(60mW/cm2、5分間)して硬化させた。この圧着は、まず、第1A絶縁層、第1B絶縁層、細幅絶縁層等を形成したガラス基板の各表示セル内に、水と油(ドデカンを青色染料(有本化学(株)製 OilBlue 5502)で着色したもの)を体積比で50:1となるように充填し、2枚のガラス基板の各表示セル位置を整合させるようにして行った。このように硬化させた後の壁部の親水性を表す水滴の接触角は、約55°であった。
【0055】
これにより、図2に示されるような7種の表示装置を作製した。この表示装置では、上述のように、壁部の親水性を表す水滴の接触角は約55°、第1A絶縁層、第1B絶縁層および細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は約115°であった。
作製した7種の表示装置について、全ての表示セルの第1A電極と第2電極(共通電極)との間に40Vの直流電圧を印加したところ、第1A絶縁層下での第1A電極と電極非形成領域との面積比、および第1B絶縁層下での第1B電極と電極非形成領域との面積比が150:1の表示装置、1:2の表示装置を除く5種の表示装置では、油(着色したドデカン)が細幅絶縁層を経由して第1B絶縁層上に移動した。その結果、遮光膜を形成したガラス基板側から観察すると、7箇所の全ての画素部では、第1A電極を構成するCr膜で外光が反射され、数字の「8」が表示された。また、この状態で印加電圧を停止したところ、同じ表示状態が10日間以上保持され、優れたメモリー性を有することが確認された。
【0056】
また、上記の5種の表示装置において、全ての第1B電極と第2電極(共通電極)との間に40Vの直流電圧を印加したところ、油(着色したドデカン)が細幅絶縁層を経由して第1B絶縁層上に移動し、画素部において油(着色したドデカン)の青色が認識され、数字の「8」が表示された。この状態で印加電圧を停止したところ、同じ表示状態が10日間以上保持され、優れたメモリー性を有することが確認された。
さらに、上記の5種の表示装置は、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定することにより、反射光、あるいは、油(着色したドデカン)の青色による「0」〜「9」の任意の数字の表示が可能であった。この場合も優れたメモリー性を有することが確認された。
【0057】
しかし、第1A電極と電極非形成領域との面積比、および、第1B電極と電極非形成領域との面積比が150:1の表示装置では、全ての表示セルの第1A電極と第2電極(共通電極)との間に40Vの直流電圧を印加しても、EWを利用した方向規定手段が十分に機能せず、第1A絶縁層上に油(着色したドデカン)が残存し、印加電圧を40Vから100Vに高めても同様であった。
また、第1A電極と電極非形成領域との面積比、および、第1B電極と電極非形成領域との面積比が1:2の表示装置では、全ての表示セルの第1A電極と第2電極(共通電極)との間に印加する電圧が80Vに達して初めて油(着色したドデカン)が細幅絶縁層を経由して第1B絶縁層上に移動し、上記の5種の表示装置に比べて高い駆動電圧が必要なことが確認された。
【0058】
[実施例2]
実施例1と同様に、厚さ700μmのガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、図20(A)に示される7個の表示セルからなる表示装置形成用の長方形領域(縦20mm×横10mm)を設定するとともに、7個の表示セルの領域を設定した。また、各表示セルの画素部を6mm×5mmの長方形(図20(A)で斜線を付した部位)に設定した。
また、7個の各表示セルにおいて、第1A電極を形成するための領域(図20(B)で斜線を付した部位)を、上記の画素部を含むように設定した。さらに、第1B電極を形成するための領域(図20(C)で斜線を付した部位)を設定した。そして、7個の各表示セルにおいて、上記の第1A電極と第1B電極との間に、
尚、1個の表示セル内における第1A電極を形成するための領域と、第1B電極を形成するための領域との間隔(図14のW3に相当)は150μmとした。
【0059】
次いで、実施例1と同様にして、厚さ700μmのガラス基板上に第1A電極と第1B電極を各表示セル毎に形成した。
次に、このガラス基板の第1A電極と第1B電極を覆うように絶縁性樹脂(三井・デュポンフロロケミカル社製 非晶性フッ素樹脂テフロンAF1601S)をスクリーン印刷法により印刷し、オーブン中で100℃、10分間加熱して、全域に厚み0.8μmの絶縁層(第1A電極上の絶縁層は第1A絶縁層であり、第1B電極上の絶縁層は第1B絶縁層である)を形成した。この第1A絶縁層と第1B絶縁層絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は、約115°であった。
【0060】
さらに、各表示セルの第1A電極と第1B電極との間に位置する絶縁層上に、絶縁性樹脂(三井・デュポンフロロケミカル社製 非晶性フッ素樹脂テフロンAF1601S)をスクリーン印刷法により印刷し、オーブン中で100℃、10分間加熱して、中間絶縁層を形成した。この中間絶縁層の幅は200μmであり、第1A電極と第1B電極との間に位置する絶縁層上に位置するとともに、第1A電極上の第1A絶縁層と、第1B電極上の第1B絶縁層にそれぞれ25μm乗り上げており、中間絶縁層の表面は、第1A電極上の第1A絶縁層や第1B電極上の第1B絶縁層よりも5μm突出したものとなった。この中間絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は、約115°であった。
次いで、各表示セルの境界線上、および表示装置形成用の長方形領域の外周縁上に、ビーズを含有した紫外線硬化型樹脂(E.H.C社製 LCB−610)を用いて幅1mm、高さ200μmの壁部を形成した。
【0061】
一方、厚さ700μmの別のガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、実施例1と同様にして、第2電極(共通電極)と、第2電極を外部の電圧印加装置に接続するための配線(図示せず)を同時に形成した。次に、このガラス基板の他方の面に、実施例1と同様にして、遮光膜を形成した。
次いで、この厚さ700μmのガラス基板の第2電極を形成した面を、上述の第1A絶縁層、第1B絶縁層、中間絶縁層等を形成したガラス基板の壁部に当接するように圧着し、実施例1と同様にして、2枚のガラス基板を接合させた。接合後の壁部の親水性を表す水滴の接触角は、約55°であった。
これにより、図13に示されるような表示装置を作製した。この表示装置では、上述のように、壁部の親水性を表す水滴の接触角は約55°、第1A絶縁層、第1B絶縁層および中間絶縁層の親水性を表す水滴の接触角は約115°であった。
作製した表示装置について、実施例1と同様に、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定して表示性能を評価した。その結果、反射光、あるいは、油(着色したドデカン)の青色による「0」〜「9」の任意の数字の表示が可能であり、また、印加電圧を停止しても、同じ表示状態が10日間以上保持され、優れたメモリー性を有することが確認された。
【0062】
[実施例3]
実施例2と同様にして、厚さ700μmのガラス基板上に第1A電極と第1B電極を各表示セル毎に形成した。
次に、光硬化型樹脂組成物(JCR(株)製 オプトマーNNシリーズ)をスピンコート法で塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、所定のパターンで露光(100mJ/cm2)し、その後、0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行い、次いで、200℃、30分間の条件でポストベークすることで、第1A電極と第1B電極との間に幅200μmの下部絶縁層(厚さ4μm)を形成した。この下部絶縁層は、第1A電極と第1B電極にそれぞれ25μm乗り上げたものとなった。尚、この下部絶縁層の親水性を表す水滴の接触角は、約80°であった。
【0063】
次いで、このガラス基板の第1A電極と第1B電極を覆うように絶縁性樹脂(三井・デュポンフロロケミカル社製 非晶性フッ素樹脂テフロンAF1601S)をスクリーン印刷法により印刷し、オーブン中で100℃、10分間加熱して、全域に厚み0.8μmの絶縁層(第1A電極上の絶縁層は第1A絶縁層であり、第1B電極上の絶縁層は第1B絶縁層であり、下部絶縁層上の絶縁層は上部絶縁層である)を形成した。そして、下部絶縁層と上部絶縁層との積層部位は中間絶縁層を構成し、この中間絶縁層の表面は、第1A電極上の第1A絶縁層や第1B電極上の第1B絶縁層よりも4.8μm突出したものとなった。この第1A絶縁層と第1B絶縁層絶縁層と中間絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角は、約115°であった。
次いで、各表示セルの境界線上、および表示装置形成用の長方形領域の外周縁上に、ビーズを含有した紫外線硬化型樹脂(E.H.C社製 LCB−610)を用いて幅1mm、高さ200μmの壁部を形成した。
【0064】
一方、厚さ700μmの別のガラス基板(コーニング社製 7059ガラス)上に、実施例1と同様にして、第2電極(共通電極)と、第2電極を外部の電圧印加装置に接続するための配線(図示せず)を同時に形成した。次に、このガラス基板の他方の面に、実施例1と同様にして、遮光膜を形成した。
次いで、この厚さ700μmのガラス基板の第2電極を形成した面を、上述の第1A絶縁層、第1B絶縁層、中間絶縁層等を形成したガラス基板の壁部に当接するように圧着し、実施例1と同様にして、2枚のガラス基板を接合させた。接合後の壁部の親水性を表す水滴の接触角が約55°であった。
これにより、図18に示されるような表示装置を作製した。この表示装置では、上述のように、壁部の親水性を表す水滴の接触角は約55°、第1A絶縁層、第1B絶縁層および中間絶縁層の親水性を表す水滴の接触角は約115°であった。
【0065】
作製した表示装置について、実施例1と同様に、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定して表示性能を評価した。その結果、反射光、あるいは、油(着色したドデカン)の青色による「0」〜「9」の任意の数字の表示が可能であり、また、印加電圧を停止しても、同じ表示状態が10日間以上保持され、優れたメモリー性を有することが確認された。
【0066】
[比較例1]
第1A電極と電極非形成領域との面積比、および、第1B電極と電極非形成領域との面積比を、4:1に設定し、ポリイミド樹脂(JSR(株)製 AL1254)を用いて第1A絶縁層、第1B絶縁層および細幅絶縁層(親水性を表す水滴の接触角は約65°)を形成し、ビーズを含有した紫外線硬化型樹脂(三井化学(株)製 XN−50)を用いて壁部(硬化後の親水性を表す水滴の接触角は約80°)を形成した他は、実施例1と同様にして、図2に示されるような表示装置を作製した。
作製した表示装置について、実施例1と同様に、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定して表示性能を評価した。その結果、油(着色したドデカン)が壁部を被覆し易くなって第1A絶縁層、第1B絶縁層上に十分広がらず、電圧印加時も安定な表示が行えなかった。
【0067】
[比較例2]
さらに、各表示セルの第1A電極と第1B電極との間に位置する絶縁層上に、幅150μmの中間絶縁層を設け、この中間絶縁層の表面は、第1A電極上の第1A絶縁層や第1B電極上の第1B絶縁層と同じ面をなすようにした他は、実施例2と同様にして、図13に示されるような表示装置を作製した。
作製した表示装置について、実施例1と同様に、第2電極(共通電極)との間で直流電圧を印加する第1A電極または第1B電極を適宜設定して表示性能を評価した。その結果、全ての表示セルの第1A電極と第2電極(共通電極)との間に40Vの直流電圧を印加しても、EWを利用した方向規定手段が十分に機能せず、第1A絶縁層上に油(着色したドデカン)が残存し、印加電圧を40Vから100Vに高めても同様であった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
メモリー性が要求される表示装置の用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の表示装置の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示される表示装置のI−I線における拡大縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図3】図2に示される表示セルの第1A電極と第1B電極を示す平面図である。
【図4】図2に示される表示セルの第1A絶縁層と第1B絶縁層を示す平面図である。
【図5】本発明の表示装置の表示動作を説明するための図である。
【図6】本発明の表示装置の第1A電極と第1B電極の他の例を示す平面図である。
【図7】本発明の表示装置の第1A絶縁層と第1B絶縁層の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明の表示装置の第1A電極と第1B電極の他の例を示す平面図である。
【図9】本発明の表示装置の第1A電極と第1B電極の他の例を示す平面図である。
【図10】本発明の表示装置の第1A絶縁層と第1B絶縁層の他の例を示す平面図である。
【図11】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図12】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図13】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図14】図13に示される表示セルの第1A電極と第1B電極を示す平面図である。
【図15】図13に示される表示セルの第1A絶縁層と第1B絶縁層を示す平面図である。
【図16】本発明の表示装置の表示動作を説明するための図である。
【図17】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図18】本発明の表示装置の他の例を示す図2相当の縦断面図であり、1個の表示セルの構造を示す。
【図19】本発明の表示媒体の一例を示す図である。
【図20】実施例のおける表示装置作製を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1…表示装置
11(11A,11B,11C,11D,11E,11F)…表示セル
12…画素部
13…スペース部
21,41…容器
22,23,42,43…基材
24,44…第1A電極(第1電極)
25,45…第1B電極(第1電極)
26,46,66…第2電極
27A,47A…第1A絶縁層
27B,47B…第1B絶縁層
28…細幅絶縁層
48…中間絶縁層
48′…上部絶縁層
48″…下部絶縁層
29,49…壁部
30,50…遮光膜
31…第1の液体
32…第2の液体
60…表示媒体
61…表示部
62…入力端子
70…外部装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備え、前記第1電極と第2電極のいずれかは前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1の液体は導電性または極性を有し、前記第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより前記第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が可能である表示セルを少なくとも1個備える表示装置において、
前記容器は、少なくとも一方が透明基材である1組の基材と、液体封入空間を形成するように前記1組の基材を対向させて保持する壁部と、一方の基材の前記液体封入空間側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極と第1B電極と、該第1A電極と第1B電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層と第1B絶縁層と、該第1A絶縁層と第1B絶縁層とを連結する細幅絶縁層と、前記液体封入空間の他方の基板側に配設された第2電極と、を備え、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層のうち、前記細幅絶縁層で連結されている近傍領域にはそれぞれ前記第1A電極、第1B電極が存在しない電極非形成領域が設けられ、前記第1A電極と第1B電極は前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1A電極と前記第2電極間への印加電圧、あるいは、前記第1B電極と前記第2電極間への印加電圧によって第2の液体が前記細幅絶縁層を経由して前記第1A絶縁層上と第1B絶縁層上との間で移動可能であり、前記細幅絶縁層は、前記第1の液体と第2の液体が移動した位置で印加電圧を停止した後も、移動した前記第1の液体と第2の液体の位置が保持されてメモリー性が発現されるための液体保持手段であって、前記細幅絶縁層は印加電圧を停止しているときに前記第1A絶縁層上あるいは前記第1B絶縁層上に位置する前記第2の液体が移動できない幅と長さを有し、前記壁部の前記容器内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1A電極と前記電極非形成領域との面積比、前記第1B電極と前記電極非形成領域との面積比は、100:1〜1:1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記細幅絶縁層の幅は0.01〜10000μmの範囲、長さは0.01〜1000μmの範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備え、前記第1電極と第2電極のいずれかは前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1の液体は導電性または極性を有し、前記第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより前記第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が可能である表示セルを少なくとも1個備える表示装置において、
前記容器は、少なくとも一方が透明基材である1組の基材と、液体封入空間を形成するように前記1組の基材を対向させて保持する壁部と、一方の基材の前記液体封入空間側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極と第1B電極と、該第1A電極と第1B電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層と第1B絶縁層と、該第1A絶縁層と第1B絶縁層とを連結する中間絶縁層と、前記液体封入空間の他方の基板側に配設された第2電極と、を備え、前記中間絶縁層は第1A電極と第1B電極の一部を被覆するように前記第1A電極と第1B電極との境界部位に位置し、前記中間絶縁層の表面は前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出し、前記第1A電極と第1B電極は前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1A電極と前記第2電極間への印加電圧、あるいは、前記第1B電極と前記第2電極間への印加電圧によって第2の液体が前記中間絶縁層を乗り越えて前記第1A絶縁層上と第1B絶縁層上との間で移動可能であり、前記中間絶縁層は、前記第1の液体と第2の液体が移動した位置で印加電圧を停止した後も、移動した前記第1の液体と第2の液体の位置が保持されてメモリー性が発現されるための液体保持手段であって、前記中間絶縁層の表面が前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出する高さは、印加電圧を停止しているときに、前記第1A絶縁層上あるいは前記第1B絶縁層上に位置する前記第2の液体が乗り越えない高さであり、前記壁部の前記容器内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、中間絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記中間絶縁層が存在しない前記第1A電極と前記第1A電極を被覆する前記中間絶縁層との面積比、前記中間絶縁層が存在しない前記第1B電極と前記第1B電極を被覆する前記中間絶縁層との面積比は、100:1〜1:1の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記中間絶縁層の表面が前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出する高さは0.01〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記中間絶縁層は、前記第1A電極と第1B電極との境界部位に位置する下部絶縁層と、その上に位置する上部絶縁層とからなり、該上部絶縁層は、前記第1A電極と第1B電極と同じ材質であることを特徴とする請求項4または請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記下部絶縁層は、前記第1A電極および第1B電極よりも厚いことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
表示認識側の前記透明基材の外側に所望のパターン形状で遮光膜を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の表示装置。
【請求項10】
前記第2の液体が着色油であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の表示装置。
【請求項11】
前記表示セル内で反射された光を認識する反射方式の表示であり、表示セル毎に封入された前記第2の液体である着色油は、イエロー、マゼンタ、シアンのいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示セルを透過した光を認識する透過方式の表示であり、前記第1の液体が着色水であり、前記第2の液体である着色油が遮光性の黒色油であることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。
【請求項13】
前記表示セル毎に封入された前記第1の液体である着色水は、赤、緑、青のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記表示セル毎の前記第1A電極と前記第1B電極の形状・位置が同じであることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の表示装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の表示装置を1個以上有し、該表示装置の各表示セルに外部装置から電力および信号を供給するための入力端子を有し、該入力端子において前記表示媒体と前記外部装置との接続、切り離しが可能であることを特徴とする表示媒体。
【請求項1】
少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備え、前記第1電極と第2電極のいずれかは前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1の液体は導電性または極性を有し、前記第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより前記第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が可能である表示セルを少なくとも1個備える表示装置において、
前記容器は、少なくとも一方が透明基材である1組の基材と、液体封入空間を形成するように前記1組の基材を対向させて保持する壁部と、一方の基材の前記液体封入空間側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極と第1B電極と、該第1A電極と第1B電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層と第1B絶縁層と、該第1A絶縁層と第1B絶縁層とを連結する細幅絶縁層と、前記液体封入空間の他方の基板側に配設された第2電極と、を備え、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層のうち、前記細幅絶縁層で連結されている近傍領域にはそれぞれ前記第1A電極、第1B電極が存在しない電極非形成領域が設けられ、前記第1A電極と第1B電極は前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1A電極と前記第2電極間への印加電圧、あるいは、前記第1B電極と前記第2電極間への印加電圧によって第2の液体が前記細幅絶縁層を経由して前記第1A絶縁層上と第1B絶縁層上との間で移動可能であり、前記細幅絶縁層は、前記第1の液体と第2の液体が移動した位置で印加電圧を停止した後も、移動した前記第1の液体と第2の液体の位置が保持されてメモリー性が発現されるための液体保持手段であって、前記細幅絶縁層は印加電圧を停止しているときに前記第1A絶縁層上あるいは前記第1B絶縁層上に位置する前記第2の液体が移動できない幅と長さを有し、前記壁部の前記容器内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、細幅絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1A電極と前記電極非形成領域との面積比、前記第1B電極と前記電極非形成領域との面積比は、100:1〜1:1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記細幅絶縁層の幅は0.01〜10000μmの範囲、長さは0.01〜1000μmの範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
少なくとも第1電極と第2電極を有し、互いに混じり合わない第1の液体と第2の液体とを内部に封入した容器を備え、前記第1電極と第2電極のいずれかは前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1の液体は導電性または極性を有し、前記第1電極と第2電極の一方あるいは両方に電圧を印加することにより前記第1の液体と第2の液体の位置が変化して表示が可能である表示セルを少なくとも1個備える表示装置において、
前記容器は、少なくとも一方が透明基材である1組の基材と、液体封入空間を形成するように前記1組の基材を対向させて保持する壁部と、一方の基材の前記液体封入空間側に互いに電気的に独立して配設された第1A電極と第1B電極と、該第1A電極と第1B電極をそれぞれ被覆する第1A絶縁層と第1B絶縁層と、該第1A絶縁層と第1B絶縁層とを連結する中間絶縁層と、前記液体封入空間の他方の基板側に配設された第2電極と、を備え、前記中間絶縁層は第1A電極と第1B電極の一部を被覆するように前記第1A電極と第1B電極との境界部位に位置し、前記中間絶縁層の表面は前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出し、前記第1A電極と第1B電極は前記第1の液体および第2の液体から電気的に絶縁されており、前記第1A電極と前記第2電極間への印加電圧、あるいは、前記第1B電極と前記第2電極間への印加電圧によって第2の液体が前記中間絶縁層を乗り越えて前記第1A絶縁層上と第1B絶縁層上との間で移動可能であり、前記中間絶縁層は、前記第1の液体と第2の液体が移動した位置で印加電圧を停止した後も、移動した前記第1の液体と第2の液体の位置が保持されてメモリー性が発現されるための液体保持手段であって、前記中間絶縁層の表面が前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出する高さは、印加電圧を停止しているときに、前記第1A絶縁層上あるいは前記第1B絶縁層上に位置する前記第2の液体が乗り越えない高さであり、前記壁部の前記容器内に露出する部位の親水性を表す水滴の接触角θ1と、前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ2と、中間絶縁層の表面の親水性を表す水滴の接触角θ3との間にθ1<θ2≦θ3の関係が成立することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記中間絶縁層が存在しない前記第1A電極と前記第1A電極を被覆する前記中間絶縁層との面積比、前記中間絶縁層が存在しない前記第1B電極と前記第1B電極を被覆する前記中間絶縁層との面積比は、100:1〜1:1の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記中間絶縁層の表面が前記第1A絶縁層と第1B絶縁層の表面よりも前記液体封入空間側に突出する高さは0.01〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記中間絶縁層は、前記第1A電極と第1B電極との境界部位に位置する下部絶縁層と、その上に位置する上部絶縁層とからなり、該上部絶縁層は、前記第1A電極と第1B電極と同じ材質であることを特徴とする請求項4または請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記下部絶縁層は、前記第1A電極および第1B電極よりも厚いことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
表示認識側の前記透明基材の外側に所望のパターン形状で遮光膜を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の表示装置。
【請求項10】
前記第2の液体が着色油であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の表示装置。
【請求項11】
前記表示セル内で反射された光を認識する反射方式の表示であり、表示セル毎に封入された前記第2の液体である着色油は、イエロー、マゼンタ、シアンのいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示セルを透過した光を認識する透過方式の表示であり、前記第1の液体が着色水であり、前記第2の液体である着色油が遮光性の黒色油であることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。
【請求項13】
前記表示セル毎に封入された前記第1の液体である着色水は、赤、緑、青のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記表示セル毎の前記第1A電極と前記第1B電極の形状・位置が同じであることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の表示装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の表示装置を1個以上有し、該表示装置の各表示セルに外部装置から電力および信号を供給するための入力端子を有し、該入力端子において前記表示媒体と前記外部装置との接続、切り離しが可能であることを特徴とする表示媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−268320(P2008−268320A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107793(P2007−107793)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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