説明

表示装置及び表示制御方法

【課題】ビデオ画面にOSD画面を重畳した映像の表示中に焼き付き現象の発生を好適に防止する。
【解決手段】ビデオ画面にOSD画面を重畳して表示する際に、OSD画面を表示する位置を適宜移動させることにより、OSD画面のメニュー背景領域や、ニューの背景領域とメニューの文言との境界部分における焼き付き現象の発生を防止するようにしている。例えば、OSD画面を表示する毎に、1画素ずつ移動させてOSD画面を表示する。OSD画面の表示位置の移動は、OSD表示位置制御部215が指示することにより実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、映像の表示中に焼き付き現象の発生を防止する表示装置及び表示制御方法に係り、特に、ビデオ画面にOSD画面を重畳した映像の表示中に焼き付き現象の発生を防止する表示装置及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部に装着して映像を視聴する表示装置、すなわちヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)が広く知られている。ヘッド・マウント・ディスプレイは、左右の眼毎に光学ユニットを持ち、また、ヘッドフォンと併用し、視覚及び聴覚を制御できるように構成されている。頭部に装着した際に外界を完全に遮るように構成すれば、視聴時の仮想現実感が増す。また、ヘッド・マウント・ディスプレイは、左右の眼に違う映像を映し出すことも可能であり、左右の眼に視差のある画像を表示すれば3D画像を提示することができる。
【0003】
ヘッド・マウント・ディスプレイの左右の眼の表示部には、例えば液晶や有機EL(Electro− Luminescence)素子などからなる高解像度の表示パネルを用いることができる。また、光学系で適当な画角を設定するとともに、ヘッドフォンで多チャンネルを再現すれば、映画館で視聴するような臨場感を再現することができるであろう。
【0004】
ここで、液晶や有機EL素子などで構成される表示パネルは、輝度差の大きな領域で焼き付き現象が発生し易くなることが、当業界で知られている。OSD(On Screen Display)画面のような静止画をビデオ画面に重畳して描画すると、輝度差の大きな領域が存在するため、焼き付き現象の原因となる。
【0005】
ヘッド・マウント・ディスプレイの場合、本体に装備できる操作ボタンなどの数に限界があり、OSD画面を介したユーザー操作が必須となる。したがって、ヘッド・マウント・ディスプレイの表示デバイスにこの種の表示パネルを用いる場合も、OSD画面を表示した際の焼き付き現象の防止を十分検討しなければならない。
【0006】
メニューの表示に用いるOSD画面は、一般に、メニュー背景領域と、この背景領域に描画されたメニュー文言からなる。OSD画面は、基本的に静止画であり、また、輝度差が大きくなりがちであることから、長時間表示すると焼き付き現象を発生する。
【0007】
ビデオ画面自体は動画などのさまざまな映像ソースであることから、画素間の輝度差が変化するので、焼き付き現象はある程度軽減される。これに対し、OSD画面は静止画であるから、焼き付き現象が発生し易い。メニューの背景領域と、メニューの文言を表示した領域との境界では、静止画素同士の大きな輝度差が長時間続くので、焼き付き現象が顕著である。メニューを表示する度に同じ文言を繰り返し表示することが多いため、とりわけメニューの背景領域とメニューの文言との境界部分では焼き付きが目立ち易い。
【0008】
例えば、表示画面を構成する画素のうち均等に分散した画素のみを順次移動して黒表示として、画面全体の表示内容を常時判断することができる状態で残像現象を防止する液晶表示装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0009】
また、所定時間間隔でパネル全体の表示位置を所定距離だけ移動させることにより、同一画像を長時間表示した場合にも、焼き付きの視認を抑制する有機発光ディスプレイ装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0010】
また、OSD表示の輝度を低下させる処理により焼き付きを防止する映像表示装置について提案がなされている(例えば、特許文献3を参照のこと)。
【0011】
しかしながら、これらの従来技術はいずれも、メニューの背景領域とメニューの文言との境界部分に特化して焼き付き現象を防止するものではない。OSD画面を重畳する前のビデオ画面自体は、動画などのさまざまな映像ソースであるため、本来焼き付き現象を発生し難い。それにも拘らず、ビデオ画面に黒表示する画素を挿入すると、ビデオ画面の画面が暗くなったり、画質が劣化したりする。また、所定時間間隔でパネル全体の表示位置を所定距離だけ移動させると、ビデオ画面の画質を劣化させ、製造元への苦情の原因にもなる。また、OSD表示の輝度を低下させると、OSD画面が見えづらくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−134188号公報
【特許文献2】特開2007−304318号公報
【特許文献3】特開2011−81178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本明細書で開示する技術の目的は、ビデオ画面にOSD画面を重畳した映像の表示中に焼き付き現象の発生を好適に防止することができる、優れた表示装置及び表示制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の技術は、
表示パネルと、
入力映像に基づいて前記表示パネルに表示する映像信号を生成する映像信号生成部と、
前記表示パネルへのOSD画面の表示を制御するOSD画面表示制御部と、
前記映像信号生成部が生成した画面に前記OSD画面を合成する画像合成部と、
前記画像合成部からの出力画像を前記表示パネルに表示させる表示制御部と、
を具備し、
前記OSD画面表示制御部は、所定時間毎に前記OSD画面の表示位置を所定の間隔で移動させる、
表示装置である。
【0015】
本願の請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の表示装置のOSD画面表示制御部は、前記表示パネルで表示する画面をリフレッシュする度に、前記OSD画面の表示位置を特定の軌跡に基づいて1画素ずつ移動させるように構成されている。
【0016】
本願の請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の表示装置は、ユーザー操作部をさらに備え、前記OSD画面表示制御部は、前記ユーザー操作部が操作されたことに応答して、前記OSD画面の表示を制御するように構成されている。
【0017】
本願の請求項4に記載の技術によれば、請求項1に記載の表示装置は、左眼用及び右眼用の前記表示パネルを備えている。そして、前記映像信号生成部は、入力映像に基づいて左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示する映像信号を生成し、前記画像合成部は、前記映像信号生成部が生成した左眼用及び右眼用の画面に前記OSD画面をそれぞれ合成し、前記表示制御部は、前記画像合成部からの合成画像を左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示させるように構成されている。
【0018】
また、本願の請求項5に記載の技術は、
入力映像に基づいて表示パネルに表示する映像信号を生成する映像信号生成ステップと、
前記表示パネルへのOSD画面の表示を制御するOSD画面表示制御ステップと、
前記映像信号生成ステップにおいて生成した画面に前記OSD画面を合成する画像合成ステップと、
前記画像合成ステップで出力される画像を前記表示パネルに表示させる表示制御ステップと、
を有し、
前記OSD画面表示制御ステップでは、所定時間毎に前記OSD画面の表示位置を所定の間隔で移動させる、
表示制御方法である。
【0019】
本願の請求項6に記載の技術によれば、請求項5に記載の表示制御方法は、OSD画面表示制御ステップにおいて、前記表示パネルで表示する画面をリフレッシュする度に、前記OSD画面の表示位置を特定の軌跡に基づいて1画素ずつ移動させるように構成されている。
【0020】
本願の請求項7に記載の技術によれば、請求項5に記載の表示制御方法は、ユーザーから所定の操作が行なわれたことに応答して、前記OSD画面表示制御ステップによる処理が開始されるように構成されている。
【0021】
本願の請求項8に記載の技術によれば、請求項5に記載の表示制御方法において、表示パネルは、左眼用表示パネル及び右眼用表示パネルを含んでおり、前記映像信号生成ステップでは、入力映像に基づいて左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示する映像信号を生成し、前記画像合成ステップは、前記映像信号生成ステップにより生成した左眼用及び右眼用の画面に前記OSD画面をそれぞれ合成し、前記表示制御ステップでは、前記画像合成ステップによる合成画像を左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示させるように構成されている。
【発明の効果】
【0022】
本明細書で開示する技術によれば、ビデオ画面にOSD画面を重畳した映像の表示中に焼き付き現象の発生を好適に防止することができる、優れた表示装置及び表示制御方法を提供することができる。
【0023】
本明細書で開示する技術によれば、ビデオ画面にOSD画面を重畳して表示する際に、OSD画面を表示する位置を適宜移動させることにより、OSD画面のメニュー背景領域や、ニューの背景領域とメニューの文言との境界部分における焼き付き現象の発生を防止することができる。
【0024】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、ヘッド・マウント・ディスプレイを含む画像表示システムの構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の内部構成を模式的に示した図である。
【図3】図3は、表示パネル224、225にそれぞれ表示された左眼用映像と右眼用映像を両目で見たときに、ユーザーの脳内で融像される様子を模式的に示した図である。
【図4】図4は、ニュー背景領域にメニュー文言を描いたメニュー画面を重畳したビデオ画面を表示した表示パネルにおいて焼き付き現象が発生する様子を示した図である。
【図5】図5は、OSD画面を表示する毎に、1画素ずつ移動させてOSD画面を表示する様子を模式的に示した図である。
【図6】図6は、OSD画面の表示位置を移動させる軌跡の一例を示した図である。
【図7A】図7Aは、OSD画面の表示位置を図6に示した軌跡に従って移動させた一例を示した図である。
【図7B】図7Bは、OSD画面の表示位置を図6に示した軌跡に従って移動させた一例を示した図である。
【図8A】図8Aは、OSD画面の表示位置を図6に示した軌跡に従って移動させた他の例を示した図である。
【図8B】図8Bは、OSD画面の表示位置を図6に示した軌跡に従って移動させた他の例を示した図である。
【図9】図9は、輝度変化量のシミュレーション結果を、表示する度に1画素ずつOSD画面を移動させる場合とOSD画面を移動させない場合とで比較して示した図である。
【図10】図10は、各画素位置Nにおける隣接画素間の輝度差を、表示する度に1画素ずつOSD画面を移動させる場合とOSD画面を移動させない場合とで比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
図1には、ヘッド・マウント・ディスプレイを含む画像表示システムの構成を模式的に示している。図示のシステムは、ヘッド・マウント・ディスプレイ10本体と、視聴コンテンツのソースとなるブルーレイ・ディスク再生装置20と、ブルーレイ・ディスク再生装置20の再生コンテンツの他の出力先となるハイビジョン・ディスプレイ(例えば、HDMI対応テレビ)30と、ブルーレイ・ディスク再生装置20から出力されるAV信号の処理を行なうフロント・エンド・ボックス40で構成される。
【0028】
フロント・エンド・ボックス40は、ブルーレイ・ディスク再生装置20から出力されるAV信号をHDMI入力すると、例えば信号処理して、HDMI出力するHDMIリピーターに相当する。また、フロント・エンド・ボックス40は、ブルーレイ・ディスク再生装置20の出力先をヘッド・マウント・ディスプレイ10又はハイビジョン・ディスプレイ30のいずれかに切り替える2出力スイッチャーでもある。図示の例では、フロント・エンド・ボックス40は2出力であるが、3以上の出力を有していてもよい。但し、フロント・エンド・ボックス40は、AV信号の出力先を排他的とし、且つ、ヘッド・マウント・ディスプレイ10への出力を最優先とする。
【0029】
なお、HDMI(High−Definition Mutlimedia Interface)は、DVI(Digital Visual Interface)を基にし、物理層にTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)を用いた、主に音声と映像の伝送を用途としたディジタル家電向けのインターフェース規格である。本システムは、例えばHDMI1.4に準拠する。
【0030】
ブルーレイ・ディスク再生装置20とフロント・エンド・ボックス40間、並びに、フロント・エンド・ボックス40とハイビジョン・ディスプレイ30間は、それぞれHDMIケーブルで接続されている。フロント・エンド・ボックス40とヘッド・マウント・ディスプレイ10間も、HDMIケーブルで接続するように構成することも可能であるが、その他の仕様のケーブルを用いてAV信号をシリアル転送するようにしてもよい。但し、フロント・エンド・ボックス40とヘッド・マウント・ディスプレイ10間を接続するケーブル1本で、AV信号と電力を供給するものとし、ヘッド・マウント・ディスプレイ10はこのケーブルを介して駆動電力も得ることができる。
【0031】
ヘッド・マウント・ディスプレイ10は、左眼用及び右眼用の独立した表示部を備えている。各表示部は、例えば有機EL素子を用いている。また、左右の各表示部は、低歪みで且つ高解像度の広視野角光学系を装備している。
【0032】
図2には、ヘッド・マウント・ディスプレイ10の内部構成を模式的に示している。図示のヘッド・マウント・ディスプレイは、UI(User Interface)操作部201と、映像信号入力部202と、中央制御部210と、表示制御部220を備えている。
【0033】
映像信号入力部202は、ブルーレイ・ディスク再生装置20から再生出力される映像信号を、フロント・エンド・ボックス40経由で入力する。
【0034】
中央制御部210内では、左右映像信号生成部211が、入力映像信号から、左眼用映像信号及び右眼用映像信号を混合した左右映像信号を生成して、ビデオ・バッファー212に書き込む。
【0035】
また、UI操作部201は、ボタンなどを介したユーザーの操作を受け容れる。中央制御部210内では、OSD制御部213が、UI操作に応じて、該当するメニュー用の画像データをビットマップ・バッファー214から読み出して、OSD画面を生成する。また、OSD表示位置制御部215は、OSD画面の表示位置を制御し、OSD描画部216はOSDバッファー217の該当する位置にOSD画面の画像データを書き込む。OSD画面は、例えば、メニュー背景領域とメニュー文言からなるメニュー画面である。
【0036】
そして、画像合成部218は、ビデオ・バッファー212に書き込まれた画像データ上に、OSDバッファー217に書き込まれたOSD画面を、ODS表示位置制御部215が指定する位置に従って重畳して、表示制御部220に出力する。
【0037】
表示制御部220内では、まず、左右映像信号分離部221が入力した左右映像信号を左眼用映像信号と右眼用映像信号に分離する。そして、左眼用表示駆動制御部222は、左眼用映像信号の左眼用表示パネル224への描画を制御する。また、右眼用表示駆動制御部223は、右眼用映像信号の右眼用表示パネル225への描画を制御する。表示パネル224、225は、例えば有機EL素子や液晶などの表示デバイスからなる。また、左眼用表示パネル224並びに右眼用表示パネル225には、それぞれ映像を拡大するレンズ・ブロックが装備されている。左右のレンズ・ブロックは、それぞれ複数の光学レンズの組み合わせからなり、表示パネル224、225が表示する映像を光学処理する。表示パネル224、225の発光面に表示された映像は、レンズ・ブロックを通過する際に拡大され、ユーザーの網膜に大きな虚像を結像する。そして、観察するユーザーの脳内では左眼用映像と右眼用映像が融像される。
【0038】
図3には、表示パネル224、225にそれぞれ表示された左眼用映像と右眼用映像を両目で見たときに、ユーザーの脳内で融像される様子を模式的に示している。図示の例では、左眼用映像と右眼用映像はともに、ビデオ画面の中央付近にOSD画面が重畳されている。OSD画面は、メニュー背景領域にメニュー文言(TEXT)を描いたメニュー画面である。両眼で見た状態では、ビデオ画面とともに、メニュー画面も融像される。
【0039】
表示パネル224、225は、例えば有機EL素子や液晶などの表示デバイスからなるが、この種の表示デバイスは輝度差の大きな領域で焼き付き現象が発生し易いという問題がある。例えば、OSD画面のような静止画をビデオ画面に重畳して描画すると、輝度差の大きな領域が存在するため、焼き付き現象の原因となる。とりわけ、OSD画面がメニュー背景領域にメニュー文言を描いたメニュー画面の場合、メニューの背景領域と、メニューの文言を表示した領域との境界では、静止画素同士の大きな輝度差が長時間続くことになり、焼き付き現象が顕著に発生することが懸念される。他方、OSD画面が重畳される前のビデオ画面自体は動画などのさまざまな映像ソースであることから、画素間の輝度差が変化するので、焼き付き現象はある程度軽減される。
【0040】
図4には、メニュー背景領域にメニュー文言を描いたメニュー画面を重畳したビデオ画面を表示した表示パネルにおいて焼き付き現象が発生する様子を示している。同図右に示すように、メニュー背景領域とメニュー文言の境界において、焼き付き現象が顕著に観察される。
【0041】
そこで、本明細書で開示する技術では、ビデオ画面にOSD画面を重畳して表示する際に、OSD画面を表示する位置を適宜移動させることにより、OSD画面のメニュー背景領域や、ニューの背景領域とメニューの文言との境界部分における焼き付き現象の発生を防止するようにしている。例えば、OSD画面を表示する毎に、1画素ずつ移動させてOSD画面を表示する。図5には、OSD画面を表示する毎に、1画素ずつ移動させてOSD画面を表示する様子を模式的に示している。OSD画面の表示位置の移動は、OSD表示位置制御部215が指示することにより実現できる。
【0042】
焼き付きの輪郭がぼやけ、目立たなくするために、表示パネルに表示される画像全体を周期的に偏位させるオービット処理は知られている(例えば、特許文献2を参照のこと)。しかしながら、以下の理由により、画面全体を移動させるのは不適切である、と本出願人は考えている。
【0043】
OSD画面は静止画で輝度差の大きな領域が存在するため、焼き付き現象の原因となる一方、OSD画面を重畳する前のビデオ画面自体は、動画などのさまざまな映像ソースであるため、本来焼き付き現象を発生し難い。それにも拘らず、画面全体を移動させると、ビデオ画面の画質を劣化させ、製造元への苦情の原因にもなる。また、OSD画面はUI操作部201への操作に応じて表示パネル224、225に出現するが、常時表示される訳ではない。OSD画面の非表示状態で画面全体を移動させると、いたずらにビデオ画面の画質を劣化させてしまう結果となる。
【0044】
OSD画面は、UI操作部201への操作に応じて表示パネル224、225に出現する。その後、OSD画面が出現している間は、画面をリフレッシュする度に、OSD画面の表示位置を特定の軌跡に基づいて1画素ずつ移動させる。図6には、OSD画面の表示位置を移動させる軌跡の一例を示している。同図では、OSD画面の初期位置を座標(0,0)とし、この初期位置からのオフセット量として軌跡を示している。1からスタートし、2→3→4→5→6→1→4→5→6→7→8→1→6→7→8→9→2→1→8→9→2→3→4という軌跡をたどり終えると、最初の1に戻る。但し、本明細書で開示する技術の要旨は、特定の軌跡に限定されるものではない。
【0045】
図7A及び図7Bには、OSD画面の表示位置を図6に示した軌跡に従って移動させた一例を示している。また、図8A及び図8Bには、OSD画面の表示位置を図6に示した軌跡に従って移動させた他の例を示している。
【0046】
図9には、輝度変化量のシミュレーション結果を、表示する度に1画素ずつOSD画面を移動させる場合(焼き付き防止あり)とOSD画面を移動させない場合(焼き付き防止なし)とで比較して示している。同図において、横軸を画素位置nとし、縦軸を各画素位置nにおける輝度fl(n)としている。但し、flは、厳密には輝度そのものではなく、輝度に比例する関数とする。このシミュレーション結果から、上記のOSD画面の移動を行なうことにより、隣接した画素間の輝度劣化を96.7%改善できることが分かった。
【0047】
また、図10には、各画素位置Nにおける隣接画素間の輝度差のシミュレーション結果を、表示する度に1画素ずつOSD画面を移動させる場合(焼き付き防止あり)とOSD画面を移動させない場合(焼き付き防止なし)とで比較して示している。同図において、横軸を画素位置Nとし、縦軸を隣接画素間の輝度差Mとしている。輝度差Mは、M=fl(N+1)−fl(N)と定義される。このシミュレーション結果から、上記のOSD画面の移動を行なうことにより、隣接画素間の輝度差が著しく低減され、焼き付き現象の発生を防止できることが分かる。
【0048】
なお、上記のシミュレーションは、温度一定、電流一定(電流制御型ディスプレイ)、OSD表示時間間隔dTは一定とする。また、fl(n)は、表示パネル224、225はdT時間だけ表示すると1だけ劣化すると仮定した、輝度に比例する値を出力する関数である。
【0049】
なお、本明細書の開示の技術は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)表示パネルと、入力映像に基づいて前記表示パネルに表示する映像信号を生成する映像信号生成部と、前記表示パネルへのOSD画面の表示を制御するOSD画面表示制御部と、前記映像信号生成部が生成した画面に前記OSD画面を合成する画像合成部と、前記画像合成部からの出力画像を前記表示パネルに表示させる表示制御部を具備し、前記OSD画面表示制御部は、所定時間毎に前記OSD画面の表示位置を所定の間隔で移動させる、表示装置。
(2)前記OSD画面表示制御部は、前記表示パネルで表示する画面をリフレッシュする度に、前記OSD画面の表示位置を特定の軌跡に基づいて1画素ずつ移動させる、上記(1)に記載の表示装置。
(3)ユーザー操作部をさらに備え、前記OSD画面表示制御部は、前記ユーザー操作部が操作されたことに応答して、前記OSD画面の表示を制御する、上記(1)に記載の表示装置。
(4)左眼用及び右眼用の前記表示パネルを備え、前記映像信号生成部は、入力映像に基づいて左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示する映像信号を生成し、前記画像合成部は、前記映像信号生成部が生成した左眼用及び右眼用の画面に前記OSD画面をそれぞれ合成し、前記表示制御部は、前記画像合成部からの合成画像を左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示させる、上記(1)に記載の表示装置。
(5)入力映像に基づいて表示パネルに表示する映像信号を生成する映像信号生成ステップと、前記表示パネルへのOSD画面の表示を制御するOSD画面表示制御ステップと、前記映像信号生成ステップにおいて生成した画面に前記OSD画面を合成する画像合成ステップと、前記画像合成ステップで出力される画像を前記表示パネルに表示させる表示制御ステップを有し、前記OSD画面表示制御ステップでは、所定時間毎に前記OSD画面の表示位置を所定の間隔で移動させる、表示制御方法。
(6)前記OSD画面表示制御ステップでは、前記表示パネルで表示する画面をリフレッシュする度に、前記OSD画面の表示位置を特定の軌跡に基づいて1画素ずつ移動させる、上記(5)に記載の表示制御方法。
(7)ユーザーから所定の操作が行なわれたことに応答して、前記OSD画面表示制御ステップによる処理が開始される、上記(5)に記載の表示制御方法。
(8)前記表示パネルは、左眼用表示パネル及び右眼用表示パネルを含み、前記映像信号生成ステップでは、入力映像に基づいて左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示する映像信号を生成し、前記画像合成ステップは、前記映像信号生成ステップにより生成した左眼用及び右眼用の画面に前記OSD画面をそれぞれ合成し、前記表示制御ステップでは、前記画像合成ステップによる合成画像を左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示させる、上記(5)に記載の表示制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本明細書で開示する技術について詳細に説明してきた。しかしながら、本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0051】
本明細書では、本明細書で開示する技術を主にヘッド・マウント・ディスプレイに適用した実施形態について説明してきたが、本明細書で開示する技術の要旨はこれに限定されるものではない。液晶や有機EF素子などの焼き付き現象を発生し易い表示デバイスを用いて構成されるさまざまなタイプの表示装置に、同様に本明細書で開示する技術を適用することができる。
【0052】
要するに、例示という形態により本明細書で開示する技術について説明してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本明細書で開示する技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0053】
10…ヘッド・マウント・ディスプレイ
20…ブルーレイ・ディスク再生装置
30…ハイビジョン・ディスプレイ
40…フロント・エンド・ボックス
201…UI操作部、202…映像信号入力部
210…中央制御部、211…左右映像信号生成部
212…ビデオ・バッファー、213…OSD制御部
214…ビットマップ・バッファー、215…OSD表示位置制御部
216…OSD描画部、217…OSDバッファー
218…画像合成部
220…表示制御部、221…左右映像信号分離部
222…左眼用表示駆動制御部、223…右眼用表示駆動制御部
224…左眼用表示パネル、225…右眼用表示パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
入力映像に基づいて前記表示パネルに表示する映像信号を生成する映像信号生成部と、
前記表示パネルへのOSD画面の表示を制御するOSD画面表示制御部と、
前記映像信号生成部が生成した画面に前記OSD画面を合成する画像合成部と、
前記画像合成部からの出力画像を前記表示パネルに表示させる表示制御部と、
を具備し、
前記OSD画面表示制御部は、所定時間毎に前記OSD画面の表示位置を所定の間隔で移動させる、
表示装置。
【請求項2】
前記OSD画面表示制御部は、前記表示パネルで表示する画面をリフレッシュする度に、前記OSD画面の表示位置を特定の軌跡に基づいて1画素ずつ移動させる、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
ユーザー操作部をさらに備え、
前記OSD画面表示制御部は、前記ユーザー操作部が操作されたことに応答して、前記OSD画面の表示を制御する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
左眼用及び右眼用の前記表示パネルを備え、
前記映像信号生成部は、入力映像に基づいて左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示する映像信号を生成し、
前記画像合成部は、前記映像信号生成部が生成した左眼用及び右眼用の画面に前記OSD画面をそれぞれ合成し、
前記表示制御部は、前記画像合成部からの合成画像を左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示させる、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
入力映像に基づいて表示パネルに表示する映像信号を生成する映像信号生成ステップと、
前記表示パネルへのOSD画面の表示を制御するOSD画面表示制御ステップと、
前記映像信号生成ステップにおいて生成した画面に前記OSD画面を合成する画像合成ステップと、
前記画像合成ステップで出力される画像を前記表示パネルに表示させる表示制御ステップと、
を有し、
前記OSD画面表示制御ステップでは、所定時間毎に前記OSD画面の表示位置を所定の間隔で移動させる、
表示制御方法。
【請求項6】
前記OSD画面表示制御ステップでは、前記表示パネルで表示する画面をリフレッシュする度に、前記OSD画面の表示位置を特定の軌跡に基づいて1画素ずつ移動させる、
請求項5に記載の表示制御方法。
【請求項7】
ユーザーから所定の操作が行なわれたことに応答して、前記OSD画面表示制御ステップによる処理が開始される、
請求項5に記載の表示制御方法。
【請求項8】
前記表示パネルは、左眼用表示パネル及び右眼用表示パネルを含み、
前記映像信号生成ステップでは、入力映像に基づいて左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示する映像信号を生成し、
前記画像合成ステップは、前記映像信号生成ステップにより生成した左眼用及び右眼用の画面に前記OSD画面をそれぞれ合成し、
前記表示制御ステップでは、前記画像合成ステップによる合成画像を左眼用及び右眼用の前記表示パネルに表示させる、
請求項5に記載の表示制御方法。


【図2】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2013−44913(P2013−44913A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182322(P2011−182322)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】