説明

表示装置及び表示方法

【課題】プラズモン共鳴波長のシフト量を拡大し、実用的な表示装置及び表示方法を提供するを提供する。
【解決手段】第1電極10と、第2電極20と、第1電極10と第2電極20とに対向して設けられ、可動イオン31を含むイオン伝導層30と、第1電極と電気的に接続され、前記第1電極とイオン伝導層30との間に設けられ、可視光帯域のプラズモン共鳴波長を有し、金属元素を含むナノ構造体40と、を有する光学セル60を備える表示装置を提供する。第1及び第2電極への異なる電圧の印加によって、ナノ構造体の表面の少なくとも一部において形成され、ナノ構造体に含まれる前記金属元素を含み、イオン伝導層とは屈折率が異なる金属化合物層の量が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非発光型の表示装置として、特定の波長の光を吸収するカラーフィルタと液晶などの光スイッチ層とを組み合わせた表示装置がある。このようなカラーフィルタを用いた表示装置においては、特定の波長の光が常に吸収されるため、光利用効率が低く、明るい表示を得るには限界がある。特に、バックライト等の特定の光源を用いない反射型の表示装置の場合には、この低い光利用効率は深刻な問題となる。
【0003】
カラーフィルタを使用せずに表示を実現する方法として、光の吸収波長が例えば電気信号によって制御可能な表示装置が期待される。例えば、可視光で励起可能な局在型表面プラズモンを用いることで、外部からの電気信号により共鳴波長をシフトさせ、光の吸収波長を制御して、可視全域の色が表示可能となる。
【0004】
例えば、印加する電界によって金属イオンの粒子を析出させ、これにより、プラズモン吸収を発生させる表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、異なる極性に耐電するプラズモン発色能を有する粒子を印加する電界によって移動させる画像形成手段が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これら方法では、粒子の析出や移動に大きなエネルギーが必要であり、また応答速度にも課題がある。
【0005】
また、プリズムや回折格子等の色分離光学素子と屈折率可変層とプラズモン発生光出射手段とを組み合わせた表示装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)しかし、この方法は、色分離光学素子を必要としており、構成が複雑である。
【0006】
一方、陰イオンを含む溶液に金属ナノ粒子を浸漬し、印加電圧による電気泳動によって陰イオンを金属ナノ粒子に吸着させると、金属ナノ粒子の局在型表面プラズモンの共鳴波長がシフトすることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法では、共鳴波長のシフト量は最大でも10nm(ナノメートル)程度であり、表示装置として用いるにはシフト量が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−240688号公報
【特許文献2】特開2006−349768号公報
【特許文献3】特開2003−107441号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Electrochem. Soc. 146, p628, (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、プラズモン共鳴波長のシフト量を拡大し、実用的な表示装置及び表示方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とに対向して設けられ、可動イオンを含むイオン伝導層と、前記第1電極と電気的に接続され、前記第1電極と前記イオン伝導層との間に設けられ、可視光帯域のプラズモン共鳴波長を有し、金属元素を含むナノ構造体と、を有する光学セルを備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより、前記ナノ構造体に含まれる前記金属元素を含み前記イオン伝導層とは屈折率が異なる金属化合物層が前記ナノ構造体の表面の少なくとも一部に形成され、前記第1電極と前記第2電極との間に第1電圧が印加された第1状態と、前記第1電極と前記第2電極との間に前記第1電圧とは異なる第2電圧が印加された第2状態と、で前記金属化合物層の量が異なることを特徴とする表示装置が提供される。
【0011】
本発明の別の一態様によれば、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とに対向して設けられ、可動イオンを含むイオン伝導層と、前記第1電極と電気的に接続され、前記第1電極と前記イオン伝導層との間に設けられ、可視光帯域のプラズモン共鳴波長を有し、金属元素を含むナノ構造体と、を有する光学セルの前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより前記ナノ構造体の表面の少なくとも一部に形成される金属化合物であって、前記ナノ構造体に含まれる前記金属元素を含み前記イオン伝導層とは屈折率が異なる金属化合物層の量を、前記第1電極と前記第2電極との間に印加する電圧を変化させることにより変化させることを特徴とする表示方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プラズモン共鳴波長のシフト量を拡大し、実用的な表示装置及び表示方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の特性を例示するグラフ図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の特性を例示するグラフ図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る表示装置に関する解析結果を例示する電子顕微鏡写真図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る表示装置に関する解析結果を例示するグラフ図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る表示装置及び比較例の表示装置の特性を例示するグラフ図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る表示装置に関する実験結果を例示するグラフ図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る表示装置に関する実験結果を例示する顕微鏡写真図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の特性を例示するグラフ図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の要部の構成を例示する模式的斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の要部の構成を例示する模式的断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の要部の構成を例示する別の模式的断面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の特性を例示するグラフ図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図16】本発明の第1の実施例に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図17】本発明の第2の実施例に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図19】本発明の第3の実施例に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図21】本発明の第2の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図22】本発明の第2の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図23】本発明の第2の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図24】本発明の第3の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図25】本発明の第4の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式的回路図である。
【図26】本発明の第4の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図27】本発明の第5の実施形態に係る表示方法を例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
なお、同図は、本表示装置における第1状態S1と第2状態S2とを例示している。
図1に表したように、本発明の第1の実施形態に係る表示装置110は、光学セル60を備える。
【0016】
光学セルは、第1電極10と、第2電極20と、イオン伝導層30と、ナノ構造体40と、を有する。
【0017】
第1電極10と第2電極20とは、互いに交換可能である。
第1電極10及び第2電極20の配置は任意である。
本具体例では、第2電極20は、イオン伝導層30の第1電極10に対向する側とは反対の側に設けられている。すなわち、イオン伝導層30の一方の主面に第1電極10が設けられ、他方の主面に第2電極20が設けられている。そして、さらに、第1電極10と第2電極20とは互いに対向して設けられている。
本発明は、これに限らず、第1電極10と第2電極20とは互いに対向していなくても良い。第1電極10及び第2電極20の配置の変形例については後述する。
【0018】
イオン伝導層30は、第1電極10と第2電極20とに対向して設けられる。
すなわち、本具体例では、第1電極10の第1主面10mと、第2電極20の第2主面20mと、が互いに対向して設けられており、イオン伝導層30は、第1電極10と第2電極20との間に挟まれるように設けられている。なお、この時、第1主面10mと第2主面20mとに垂直な方向が電流経路32となり、イオン伝導層30は、電流経路32となる。
【0019】
イオン伝導層30は、可動イオン31を含む。可動イオン31は、第1電極10と第2電極20との間に電流を通電するために設けられるものであり、任意の材料を用いることができる。可動イオン31については後述する。
【0020】
ナノ構造体40は、第1電極10と接続される。ただし、ナノ構造体40は、第1電極10及び第2電極20の少なくともいずれかと電気的に接続されても良い。本具体例では、ナノ構造体40は、第1電極10の上に設けられ、第1電極10と電気的に接続されている。
【0021】
ナノ構造体40は、第1電極10とイオン伝導層30との間に設けられる。ただし、ナノ構造体40は、ナノ構造体40が電気的に接続された第1電極10及び第2電極20の少なくともいずれかと、イオン伝導層30と、の間に設けられても良い。すなわち、第1状態S1と第2状態S2とのいずれかにおいて、ナノ構造体40の表面の少なくとも一部は、イオン伝導層30に接触している。
【0022】
ナノ構造体40は、金属元素を含み、可視光帯域のプラズモン共鳴波長を有する。例えば、ナノ構造体40は、例えば、金からなり、例えば、粒径が20〜100nm程度の範囲の粒子である。これにより、ナノ構造体40のプラズモン共鳴波長を有する。
【0023】
ナノ構造体40に用いられる金属元素、並びに、ナノ構造体40の形状及び大きさについては後述する。
【0024】
このような構成の光学セル60において、第1電極10と第2電極20との間に印加される電圧(印加電圧VA)は可変である。
【0025】
例えば、光学セル60は、第1電極10と第2電極20との間に第1電圧V1が印加される第1状態S1を有する。そして、光学セル60は、第1電極10と第2電極20との間に第2電圧V2が印加される第2状態S2とを有する。第2電圧V2は、第1電圧V1とは異なる電圧である。すなわち、第2電圧V2の電圧の絶対値及び電圧の極性の少なくともいずれかは、第1電圧V1とは異なる。
【0026】
なお、以下では、第2電極20の電位を基準にしたときの第1電極10の電位を、第1電極10と第2電極20との間の印加電圧VAとする。
【0027】
光学セル60においては、印加電圧VAの印加によって、ナノ構造体40の表面の少なくとも一部に金属化合物層50が形成される。本具体例では、第2電圧V2を印加した第2状態S2において、金属化合物層50が形成されている。
【0028】
金属化合物層50は、ナノ構造体40に含まれる金属元素を含む金属化合物を含む。例えば、ナノ構造体40が金の粒子である場合には、金属化合物層50は、金の化合物である。例えば、金属化合物層50は、金の酸化物である。
【0029】
そして、金属化合物層50の屈折率n1は、イオン伝導層30の屈折率n0とは異なる。
【0030】
この金属化合物層50は、第1電極10と第2電極20との間に印加される印加電圧VAによって通電される電流によって発生する、例えば電気化学反応によって形成される。従って、金属化合物層50の量は、印加電圧VAの極性及び大きさの少なくともいずれかによって、変化する。
【0031】
すなわち、金属化合物層50の量は、第1状態S1と第2状態S2とで異なる。
これにより、ナノ構造体40の周囲の屈折率(例えば平均的な屈折率)が第1状態S1と第2状態S2とで変化し、これにより、ナノ構造体40のプラズモン共鳴波長が変化し、光学セル60の吸収波長が変化する。
【0032】
例えば、第1電圧V1を0Vとし、第2電圧V2を5Vとする。
この時、図1に例示したように、印加電圧VAが0Vの第1状態S1では、金属化合物層50は形成されていない。そして、印加電圧VAが5Vの第2状態S2では、金属化合物層50が、ナノ構造体40の表面に形成される。
【0033】
この時、第1状態S1においては、ナノ構造体40の表面は、イオン伝導層30で覆われるため、ナノ構造体40の周囲の屈折率は、n0である。そして、第2状態S2において、ナノ構造体40の表面の全てが金属化合物層50によって覆われている場合には、ナノ構造体40の周囲の屈折率は、n1となる。
【0034】
ナノ構造体40のプラズモン共鳴波長は、その周囲の屈折率によって変化するため、周囲の屈折率の変化によってプラズモン共鳴周波数が変化し、結果として光学セル60における吸収波長が変化する。
【0035】
例えば、金属化合物層50の量は、印加電圧VAによって制御可能であるため、結果として、プラズモン共鳴周波数が制御でき、光学セル60における吸収波長が制御できる。
【0036】
なお、金属化合物層50は、ナノ構造体40の少なくとも一部に設けられ、その形状や厚さは任意であり、各種の形状や厚さの変形が可能である。
【0037】
本実施形態に係る表示装置110においては、ナノ構造体40の表面に直接金属化合物層50が形成されるため、プラズモン共鳴周波数の変化は大きい。例えば、非特許文献1に記載されているように、ナノ構造体の表面に陰イオンが吸着する比較例の場合には、微視的にはナノ構造体の金属原子と陰イオンとの間には空間が生じる。このため、比較例においては、プラズモン共鳴周波数の変化は小さい。これに対し、本実施形態に係る表示装置110においては、ナノ構造体40の表面に直接金属化合物層50が形成され、ナノ構造体40の金属原子に隣接して金属化合物層50が配置され、屈折率の変化の効果が効率的に発揮されるので、プラズモン共鳴周波数の変化を拡大できる。
【0038】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、表示装置110において、印加電圧VAを変えて吸収スペクトルを測定した結果を例示している。横軸は波長λであり、縦軸は吸光度Abを任意目盛で表示している。
【0039】
測定に用いた試料は、第1電極10及び第2電極20として、ITO(Indium Tin Oxide)を用い、ナノ構造体40には、直径が約40nmの金からなる粒子が用いられた。ナノ構造体40は、第1電極10の上に設けられている。そして、イオン伝導層30として、クエン酸を、0.02μg/mlで溶解した水溶液を用いた。すなわち、可動イオン31は、クエン酸である。そして、第1電極10と第2電極20との間の印加電圧VAを0V〜5Vまで変化させて、表示装置110の分光特性を測定した。
【0040】
図2に表したように、印加電圧VAが0Vの時は、吸光度Abの吸収ピークの波長λpは、約545nmである。そして、印加電圧VAを2V以上に上昇させると、吸収ピークの波長λpは上昇し、例えば印加電圧VAが5Vの場合には、吸収ピークの波長λpは約600nmである。
【0041】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、吸収ピークのシフト量Δλpの印加電圧VA依存性を表しており、同図の横軸は印加電圧VAであり、縦軸はシフト量Δλpである。ここで、シフト量Δλpは、印加電圧VAが0Vの時の吸収ピークの波長λpを基準にしたときのシフト量である。
【0042】
図3に表したように、印加電圧VAの増大につれて、吸収ピークのシフト量Δλpは増大している。そして、印加電圧VAが5Vの時のシフト量Δλpは55nmであった。
【0043】
このように、表示装置110においては、吸収ピークの波長を55nmの幅でシフトさせることができ、例えば、非特許文献1に記載された方法の10nmよりも大きな波長シフトを実現できる。表示装置110により、プラズモン共鳴波長のシフト量を拡大し、実用的な表示装置を提供することができる。
【0044】
以下に説明する各種の解析結果に基づき、この波長シフトは、ナノ構造体40の周囲の屈折率が変化することに起因すると発明者は推定した。以下、表示装置110に関する解析結果を説明する。
【0045】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置に関する解析結果を例示する電子顕微鏡写真図である。
すなわち、同図(a)及び(b)は、第1電極10上のナノ構造体40の走査電子顕微鏡写真の像を例示しており、同図(a)は、印加電圧VAが0Vの時に対応し、同図(b)は、印加電圧VAが5Vの特に対応する。図中の明るい粒子状の像がナノ構造体40に対応する。
【0046】
図4(a)及び(b)に表したように、印加電圧VAが0Vの時と5Vの時とで、ナノ構造体40のサイズ、形及び密度はいずれも変化していない。従って、図2及び図3に例示した印加電圧VAによるピーク波長λpのシフトは、ナノ構造体40自体のサイズ、形及び密度のいずれかに起因するものではなく、ナノ構造体40の周囲の屈折率の変化に起因すると推定された。
【0047】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置に関する解析結果を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、表示装置110におけるナノ構造体40の表面のX線光電子分光(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscope)解析結果を例示している。横軸は、結合エネルギーEであり、縦軸は光電子強度Ipを任意目盛で表している。
【0048】
図5に表したように、印加電圧VAが0Vの時のXPSスペクトルと、印加電圧VAが5Vの時のXPSスペクトルと、には明らかな差異が認められた。
【0049】
すなわち、印加電圧VAが0Vのときは、ナノ構造体40に含まれるAuの特性が見られ、印加電圧VAが5Vのときは、Auの特性が見られた。
【0050】
このことから、金からなるナノ構造体40の表面に、金の酸化物が形成されていると結論付けられる。
【0051】
別の比較例として、第1電極10及び第2電極20のいずれにもナノ構造体40を設けない表示装置119(図示しない)を作製した。これ以外は、本実施形態に係る表示装置110と同様である。すなわち、比較例の表示装置110においては、ITOからなる第1電極10及び第2電極20の間に、クエン酸の水溶液からなるイオン伝導層30が設けられている。
【0052】
本実施形態に係る表示装置110及び比較例の表示装置119において、第1電極10及び第2電極20との間に印加する印加電圧VAとその時に流れる電流IAとを測定した。
【0053】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置及び比較例の表示装置の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図(a)は表示装置110における電流IAの測定結果を例示し、同図(b)は比較例の表示装置119における電流IAの測定結果を例示している。
【0054】
なお、これらの測定においては、印加電圧VAを−1.5Vから+3Vの範囲で変化させた。
【0055】
図6(b)に表したように、比較例の表示装置119においては、電流IAに何ら特徴のあるピークは観察されない。
【0056】
これに対し、図6(a)に表したように、本実施形態に係る表示装置110においては、約+2Vの印加電圧VAにおいて酸化のピークPoが観察され、約−0.6Vの印加電圧において還元のピークPrが観察された。
【0057】
従って、本実施形態にかかる表示装置110においては、第1電極10及び第2電極20との間に印加された印加電圧VAにより、電気化学反応が発生し、その結果、ナノ構造体40の表面に、ナノ構造体40に含まれる金属元素の酸化物が形成されたと推定された。この酸化物が、表示装置110における金属化合物層50に相当する。
【0058】
そして、金属化合物層50である金の酸化物の屈折率は、約1.7〜3.3であり、一方、クエン酸の水溶液であるイオン伝導層30の屈折率は、1.33である。すなわち、この金属化合物層50の屈折率は、イオン伝導層30の屈折率とは異なる。
【0059】
本発明の第1の実施形態は、以上の解析結果によって得られた新たな知見を基になされたものである。
【0060】
すなわち、本実施形態に係る表示装置110においては、ナノ構造体40の表面の少なくとも一部に金属化合物層50が形成される。
【0061】
そして、金属化合物層50の量によって、ナノ構造体40の周囲の屈折率が変化することで、ナノ構造体40のプラズモン共鳴周波数が変化する。
【0062】
以下、ナノ構造体40の共鳴周波数と周囲の屈折率との関係について説明する。
以下、局在型プラズモンの共鳴波長の理論式について説明する。ここでは、均一媒質中の孤立した金属粒子の局在型表面プラズモンについて取り上げる。このときの振動電磁場はMaxwellの方程式を解くことで完全に記述できるが、粒子サイズが光の波長より十分小さいときは場所による遅延が無視できるため、準静電モデルが成立する。この場合、局在型表面プラズモンは入射光の振動電場によって金属微粒子表面に誘起される分極として表され、静電場における誘電体の理論から分極Pが求められる。
【0063】
まず、周囲媒質が真空の場合、粒子を光電場Eの中に置くと誘電分極が発生する。この分極が粒子内で一様であるとすると、粒子内の内部電場Eは次の数式1で表される。
【数1】

【0064】
ここでEは光電場Eによって誘起される表面電荷σがつくる反電場(Eと逆方向)を表す。粒子の形状が回転楕円体(球、ロッド、ディスクは回転楕円体に含まれる)の場合、分極が一様であれば反電場も一様であり、EとPの関係は次の数式2で表される。
【数2】

【0065】
ここで、Nは反電場係数と呼ばれ、粒子形状に依存した値をとる(例:球ではN=4π/3となる)。また、誘電感受率をχとするとPと内部電場Eとの関係は次の数式3で表される。
【数3】

【0066】
数式1、数式2、及び数式3式から、PとEとの関係は次の数式4となる。
【数4】

【0067】
そして、数式4を粒子の誘電関数ε(ε=1+4πχ)で表すと、以下の数式5となる。
【数5】

【0068】
次に周囲が、誘電率ε1の媒質である場合を考える。
この場合、光照射によって誘起される表面電荷は、周囲媒質の分極に伴い、その一部が打ち消される。その影響を補うため、粒子の誘電率の絶対値がより大きな値を持つ波長で共鳴が起こる。数式5のεをε/ε1で置き換えることで与えられる。さらに粒子の減衰定数γ→0と近似した自由電子のドルーデモデルによると、誘電関数εはプラズマ周波数ωpを用いて次の数式6で表される。
【数6】

【0069】
したがって、分極Pは次の数式7で表される。
【数7】

【0070】
この数式7の分母が零のときに分極Pは無限大となり、このとき入射光のエネルギーは最も吸収される。この状態が局在型表面プラズモンの共鳴である。
【0071】
したがって、共鳴周波数ωは次の数式8で表される。
【数8】

【0072】
ここで、ωと波長λとの間には以下の数式9の関係が成立し、ε1と周囲媒質の屈折率nとの間には以下の数式10の関係が成立する。
【数9】


【数10】

【0073】
数式8、数式9及び数式10から、局在型表面プラズモンの共鳴波長は次の数式11で表される。
【数11】

【0074】
数式11から、n、N、またはωpの変動により、局在型表面プラズモンの共鳴波長はシフトすることが分かる。
【0075】
このうちNによる波長シフトでは、凝集時に大きな波長シフトが期待できるものの、一度凝集したナノ粒子を再分散させることが難しく、波長シフトの可逆性に問題がある。
【0076】
また、ωpによる波長シフトにおいては、電極から注入された電荷は、ナノ構造体40とイオン伝導層30との界面の電気2重層をトンネルして溶液中へと放電されていくため、原理的に大きな波長シフトは期待できない。
【0077】
本実施形態に係る表示装置110においては、ナノ構造体40の表面に、金属化合物層50を電気化学的に形成することにより、ピーク波長を大きくシフトさせることを実現している。
【0078】
以下、ナノ構造体40の周囲の屈折率が変化することによってナノ構造体40のプラズモン共鳴波長がシフトすることに関する実験結果について説明する。
第1電極10の上に、粒径が約40nmの金粒子からなるナノ構造体40の周囲を、空気、水、エチレングリコール、液晶とし、その時のナノ構造体40の光散乱特性の波長依存性を測定した。また、この時のナノ構造体40の顕微鏡写真を撮影した。
【0079】
すなわち、この実験では、ナノ構造体40の周囲を、空気の屈折率nが1の場合、水の屈折率nが1.33の場合、エチレングリコールの屈折率nが1.43の場合、及び、液晶の屈折率nが1.6の場合と、変化させている。
【0080】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置に関する実験結果を例示するグラフ図である。
すなわち、同図(a)は、光散乱強度スペクトルを表し、横軸は波長λであり、縦軸は散乱強度Isを任意目盛で表している。
【0081】
同図(b)は、同図(a)から導出されたものであり、散乱強度Isのピーク波長λp1の屈折率n0依存性を表している。ここで、屈折率n0は、空気、水、エチレングリコール、及び液晶の屈折率である。同図(b)の横軸は屈折率n0であり、縦軸はピーク波長λp1を表している。
【0082】
図7(a)に表したように、ナノ構造体40の周囲が空気である場合には、ピーク波長λp1は約540nmである。そしてナノ構造体40の周囲が、水(n=1.33)、エチレングリコール(n=1.43)、及び、液晶(n=1.6)の場合には、ピーク波長λp1は、それぞれ、約545nm、約550nm、約562nmである。
【0083】
図7(b)に表したように、ナノ構造体40の周囲が空気の場合に対して、水、エチレングリコール及び液晶と変え、屈折率n0が大きくなるにつれ、ピーク波長λp1は大きくなっている。
【0084】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置に関する実験結果を例示する顕微鏡写真図である。
すなわち、同図(a)、(b)、(c)及び(d)は、ナノ構造体40の周囲が、それぞれ、空気、水、エチレングリコール及び液晶の場合の、ナノ構造体40の暗視野像を例示している。
【0085】
図8(a)〜(d)に表したように、ナノ構造体40の周囲の材料を変えることにより、ナノ構造体40における色が変化する。
【0086】
このように、ナノ構造体40の周囲の材料を変えて、屈折率を変えることにより、ナノ構造体40のプラズモン共鳴波長が変化し、呈示される色が変化することが確認された。
【0087】
以上説明した機構によって、本実施形態に係る表示装置110は動作する。
図9は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図(a)は、表示装置110において印加電圧VAが+5Vのときの特性を例示しており、同図(b)は、印加電圧VAが−5Vのときの特性を例示している。これらの図には、印加電圧VAが0Vの特性も図示されている。なお、同図(a)は、図2において印加電圧VAが5Vのときの特性に対応する。
【0088】
図9(a)に表したように、表示装置110において、正の印加電圧VAを印加した場合には、印加電圧VAが0Vの時に対して、吸光度Abのスペクトルが変化する。これは既に説明したように、正の印加電圧VAによって、ナノ構造体40の表面に金属化合物層50が形成され、ナノ構造体40のプラズモン共鳴周波数がシフトしたことによる。
【0089】
一方、図9(b)に表したように、負の印加電圧VAを印加した場合には、印加電圧VAが0Vの時の吸光度Abのスペクトルから変化しない。このことは、負の印加電圧VAによっては、金属化合物層50が形成されないことを示唆しており、電気化学的に金属化合物層50が形成されていることを示唆している。
【0090】
逆に、印加電圧VAを負の電圧にすることで、生成された金属化合物層50を、例えば還元して、ナノ構造体40の表面を金属にすることを促進することができる。
【0091】
このように、本実施形態に係る表示装置110においては、第1電極10と第2電極20との間に印加する印加電圧の大きさと極性の少なくともいずれかを制御することで、ナノ構造体40を含む光学セル60の光吸収特性を変化させ、表示色を制御することができる。
【0092】
以下、本実施形態に係る表示装置110の光学セル60の構成要素について説明する。
【0093】
ナノ構造体40は、局在型表面プラズモンによる発色機能を有しており、可視域の所望の波長でプラズモンを共鳴させることで、前記波長成分を吸光させて発色する。
【0094】
既に説明したように、この共鳴波長は、ナノ構造体40の表面の周囲の屈折率に依存し、外部からの印加電圧により周囲の屈折率を変調することにより色変化が起こる。
【0095】
屈折率変化を実現する方法として、表示装置110においては、金属ナノ構造体の表面で電気化学反応を起こさせ、反応生成物である金属化合物層50を析出させ、また、溶解させる。
【0096】
このプラズモン吸収による発色は電子のプラズマ振動に起因し、ナノ構造中の自由電子が光電場により揺さぶられることで表面に電荷が現れ、非線形分極が生じるためとされている。プラズモンによる発色は寸法が数nm〜数十nm程度のナノ構造において見られるものであり、彩度や光線透過率が高く、耐久性に優れている。
【0097】
ナノ構造体40は、複数のナノ構造要素からなる。すなわち、ナノメートルオーダーの形状を有するナノ構造要素が集合して、ナノ構造体40となる。
【0098】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の要部の構成を例示する模式的斜視図である。
すなわち、同図(a)〜(h)は、ナノ構造体40のナノ構造要素の各種の形状を例示している。なお、これらの図は、ナノ構造体40が、第1電極10の上に設けられる場合として例示しているが、ナノ構造体40が第2電極20の上に設けられる場合も同様である。
【0099】
図10(a)に表したように、ナノ構造体40のナノ構造要素41は、任意の形状の粒状の形状を有することができる。
また、図10(b)に表したように、ナノ構造要素41は、任意の形状の多面体の形状を有することができる。
また、図10(c)に表したように、ナノ構造要素41は、球状の形状を有することができる。
また、図10(d)に表したように、ナノ構造要素41は、回転楕円体の形状を有することができる。本具体例では、回転楕円体の回転軸方向の長さが回転楕円体の径よりも長い例であるが、回転楕円体の形状は任意である。また、本具体例は、回転楕円体の軸が、第1電極10の主面に対して垂直である例である。
また、図10(e)に表したように、ナノ構造要素41は、回転楕円体の形状を有することができ、この時、回転楕円体の軸が、第1電極10の主面に対して平行とすることができる。また、回転楕円体の軸が、第1電極10の主面に対して斜めでも良い。
【0100】
また、図10(f)に表したように、ナノ構造要素41は、柱状(ロッド状)の形状を有することができる。ここで、柱状とは、柱の高さが柱の径よりも大きい(長い)場合とする。本具体例は、柱の高さ方向の軸が、第1電極10の主面に対して垂直である例である。ただし、柱の高さ方向の軸が、第1電極10の主面に対して平行でも良く、また、斜めでも良い。また、柱の高さ方向に垂直な平面で切断したときの断面は、円形でも良く多角形でも良く、任意である。
【0101】
また、図10(g)及び(h)に表したように、ナノ構造要素41は、板状(ディスク状またはフレーク状)の形状を有することができる。ここで、板状とは、板の厚さが板の主面の径以下の場合とする。本具体例は、板の厚さ方向の軸が、第1電極10の主面に対して垂直である例である。ただし、板の厚さ方向の軸が、第1電極10の主面に対して平行でも良く、また、斜めでも良い。
また、図10(g)に表したように、板の厚さ方向に垂直な平面で切断したときの断面の形状は、円形でも良く、また、図10(h)に表したように、多角形でも良く、任意である。
【0102】
この他、ナノ構造要素41の形状は、各種の凹凸形状(ナノパターン)や各種の膜状等の形状を有することができる。
【0103】
図11は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の要部の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図(a)〜(e)は、ナノ構造体40のナノ構造要素の各種の形状を例示している。なお、これらの図は、ナノ構造体40が、第1電極10の上に設けられる場合として例示しているが、ナノ構造体40が第2電極20の上に設けられる場合も同様である。
【0104】
図11(a)に表したように、ナノ構造体40のナノ構造要素41は、粒状の核材41nが金属の薄膜で覆われたシェル状の形状(シェル構造)を有することもできる。
【0105】
図11(b)に表したように、ナノ構造体40のナノ構造要素41は、第1電極10の主面上に設けることができる。
図11(c)に表したように、ナノ構造体40のナノ構造要素41の一部は、第1電極10に埋め込まれることができる。
図11(d)に表したように、ナノ構造体40のナノ構造要素41は、第1電極10に埋め込まれ、第1電極10の主面と、ナノ構造要素41の上の面は、実質的に同一の面に配置されることができる。
図11(e)に表したように、ナノ構造体40のナノ構造要素41は、第1電極10に埋め込まれ、ナノ構造要素41の上の面は、第1電極10の主面よりも後退して配置されることができる。
【0106】
このように、表示装置110におけるナノ構造体40は種々の形状と構成を有することができる。
【0107】
なお、ナノ構造体40において、プラズモン共鳴及びその共鳴波長のシフトの現象は、ナノ構造体40の表面の近傍におけるナノ構造体40の特性に依存するので、本願明細書におけるナノ構造体40に用いる材料等についての記載は、ナノ構造体40の少なくとも表面にその材料が用いられれば良い、解釈され得る。
【0108】
色表示への応用を考慮すると、ナノ構造体40におけるナノ構造要素41の寸法のばらつきが小さいことが望ましい。
【0109】
ナノ構造体40のナノ構造要素の体積平均径は、10nmから100nmであることが好ましい。すなわち、体積平均径が10nmよりも小さい、または、100nmよりも大きいと、呈示される色の彩度が低下する。なお、粒径として体積平均径を用いるのは、ナノ構造体40が種々の粒径を有する場合には、その粒径のそれぞれの体積に応じた複数の周波数においてプラズモン共鳴が発生し、ナノ構造体40の全体としては、その複数の周波数の共鳴が合成された共鳴が起きることが考慮されている。
【0110】
ナノ構造体40における周囲の屈折率の変化に対する共鳴周波数の変化の依存性は、ナノ構造体40を構成する材料や形状、体積平均径に依存する。そのため、これらを制御することにより、所望の波長で発色させることができ、所望のカラー表示を行うことができる。
【0111】
ナノ構造体40において、隣接するナノ構造要素どうしの間の距離がおよそ200nmより小さくなるとプラズモン間の結合が生じ、新たな吸光波長のピークが発生する。このため、ナノ構造体40におけるナノ構造要素の配置は、このプラズモン間の結合を考慮して適切に設定される。すなわち、例えば、ナノ構造要素どうしの間の距離は、200nm以上に設定される。
【0112】
また、ナノ構造体40において、ナノ構造要素が、形状異方性を有する場合(例えばロッド形状等の場合)には、吸光波長が偏光方向により異なってくるため、ナノ構造要素の配置は、その配列方向も考慮して調整される。
【0113】
十分な彩度の色を表示させるには基板上に固定されたナノ構造要素の数を増加させれば良いが、前記プラズモン間の結合を防ぐため、隣接するナノ構造要素どうしの間の距離は体積平均径の2倍以上とされることが望ましい。
【0114】
ナノ構造体40には、貴金属(金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等)や銅等が挙げられる。また、ナノ構造体40には、カドミウムセレンなどの半導体材料を用いることもできる。
【0115】
すなわち、ナノ構造体40に含まれる金属元素は、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅及びカドミウムセレンよりなる群から選択された少なくともいずれかとすることができる。
【0116】
また、ナノ構造体40には、上記の前記金属の中でも、金、銀、白金、または、これらのうち少なくとも1種を含む合金を用いることが好ましい。さらに、ナノ構造体40には、金及び銀の少なくともいずれかを含むことがさらに好ましい。
【0117】
ナノ構造体40は、例えば以下のようにして作製される。例えば、ナノ細孔を有するアルミナメンブレンをマスクにして、金属を蒸着またはスパッタすることでナノ構造体40を作製することができる。この場合、ナノ構造要素41の形状と配置とは、ナノ細孔の断面に依存し、高さは金属の成膜時間で制御することができる。
【0118】
また、自己組織化的に配列した微小球をマスクにして金属を蒸着またはスパッタした後で微小球を取り除くことで、ナノ構造体40を作製することができる。この場合、ナノ構造要素41の平面形状は例えば三角形であり、三角形の寸法と配置は使用する微小球の直径に依存する。高さは金属の成膜時間で制御することができる。
【0119】
また、以下に説明するEBリソグラフィーによって作製しても良い。すなわち、まず、基板上(第1及び第2電極10及び20のいずれかの上)に金属薄膜を堆積した後、この上にEBレジストを塗布して電子線を照射してレジストパターンを作製し、作製したレジストパターンをマスクにして下地の金属薄膜をエッチングする。このようにして得られるナノ構造要素41は、例えばディスク形状であり、形状と配置はレジスト描画パターンで定義することができ、高さは金属の成膜時間で制御することができる。
【0120】
また、ナノ構造体40のナノ構造要素41として、金属または半導体のナノ粒子を用いる場合には、ナノ粒子の分散液を基板上(第1及び第2電極10及び20のいずれかの上)に塗布し、乾燥させることによって基板上(第1及び第2電極10及び20のいずれかの上)へのナノ粒子を物理吸着させる方法を採用できる。
【0121】
また、ナノ粒子の周囲で弱く帯電した分散材と、その分散材の帯電とは逆の極性に帯電した官能基を有する、または、ナノ粒子自体と強く化学結合する部位を有する自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembling Monolayer)と、を基板上(第1及び第2電極10及び20のいずれかの上)に作製し、このSAMを介してナノ粒子を基板(第1及び第2電極10及び20のいずれか)の上に固定する方法を採用することができる。
【0122】
なお、上記の場合、ナノ構造要素41の形状は、使用するナノ粒子の形状に依存し、隣接するナノ構造要素41どうしの間の距離は、ナノ粒子間に作用する斥力と、基板表面とナノ粒子との吸着力の強さにより決定される。
【0123】
ナノ構造要素41がシェル構造を有する場合は、基板(第1及び第2電極10及び20のいずれか)上へ自己組織化的に配列させた誘電体の微小球上に金属を蒸着またはスパッタすることにより、ナノ構造体40を作製することができる。また、金属を外郭に持つシェル構造を有するナノ粒子を作製し、それを基板(第1及び第2電極10及び20のいずれか)上に塗布することにより、ナノ構造体40を作製することができる。
【0124】
なお、ナノ構造体40におけるプラズモン共鳴のピーク波長、ピーク波長のシフト量、シフト量の電圧依存性(周囲の屈折率の変化依存性)、共鳴特性の急峻性(共鳴特性の反値幅)、及び、駆動電圧などが、ナノ構造要素41の形状、及び、隣接するナノ構造要素41どうしの間の距離に依存することを考慮すると、所望の表示特性が出せるよう、形状と配置とを適切に制御できるEBリソグラフィー法を採用すると、ナノ構造体40の精度が向上でき、高い表示性能を提供することが容易となる。
【0125】
なお、ナノ構造体40の作製方法は上記に限らず、任意の方法を用いることができる。
【0126】
なお、ナノ構造体40には、ナノ構造体40が設けられる第1電極10及び第2電極20の少なくともいずれかと同じ材料を用いることができる。このとき、ナノ構造体40は、それが設けられる第1電極10及び第2電極20に形成された凹凸とすることができる。この場合には、その凹凸の突出部(凸部)がナノ構造体40と見なされ、突出部よりも後退した部分(凹部)が第1電極10及び第2電極20のいずれかと見なされる。
【0127】
図12は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の要部の構成を例示する別の模式的断面図である。
すなわち、同図は、金属化合物層50の各種の構成を例示している。なお、これらの図は、ナノ構造体40が、第1電極10の上に設けられる場合として例示しているが、ナノ構造体40が第2電極20の上に設けられる場合も同様である。
図12(a)に表したように、金属化合物層50は、ナノ構造体40の第1電極10と接する面を除いて、ナノ構造体40を覆うように設けることができる。
【0128】
図12(b)に表したように、金属化合物層50は、ナノ構造体40の表面の一部に独立した複数の島状に設けることができる。
【0129】
図12(c)に表したように、金属化合物層50は、ナノ構造体40の表面のうち、ナノ構造体40が設けられる第1電極10とは反対の側に設けることができる。
【0130】
図12(d)に表したように、金属化合物層50は、ナノ構造体40の表面のうち、ナノ構造体40が設けられる第1電極10の側に設けることができる。
【0131】
このように、金属化合物層50は、ナノ構造体40の表面の少なくとも一部に設けられれば良く、その形状は任意である。また、金属化合物層50の厚さも任意である。
【0132】
図13は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の特性を例示するグラフ図である。 すなわち、同図は、ナノ構造体40の粒径(ナノ構造要素41の体積平均径)と吸収ピークのシフト量Δλpとの関係について調べた実験結果を例示している。同図の横軸は、ナノ構造体40の粒径dであり、縦軸は、吸収ピークのシフト量Δλpである。
【0133】
なお、実験に用いた試料は、第1電極10及び第2電極20としてITOを用い、ナノ構造体40として、種々の粒径の金からなる粒子を用い、イオン伝導層30としてクエン酸の水溶液(0.02μg/ml)を用いた。そして、吸収ピークのシフト量Δλpは、印加電圧VAが0Vの吸収ピークの波長λpと、印加電圧VAが5Vの時の吸収ピークの波長λpと、の差とした。
【0134】
図13に表したように、ナノ構造体40の粒径dが大きくなるにつれて、吸収ピークのシフト量Δλpが小さくなっている。
【0135】
ナノ構造体40の粒径は、一定の範囲に制御されることで、吸収ピークのシフト量Δλpの変動が小さくでき、また、ナノ構造体40の粒径を小さくすることで吸収ピークのシフト量Δλpを拡大できる。
【0136】
このように、吸収ピークのシフト量Δλpはナノ構造体40の粒径dの依存性を有し、吸収ピークのシフト量Δλpが小さくなっていることから、本具体例においては、金属化合物層50は、ナノ構造体40の第1電極10から遠い側よりも近い側において、比較的高い密度で形成されたと推測できる。すなわち、本具体例においては、ナノ構造体40が設けられる第1電極10に金属酸化物であるITOを用い、そして、金属化合物層50として金属酸化物が形成される系である。このとき、金属酸化物である第1電極10の近傍において、金属酸化物である金属化合物層50が形成されやすいものと推測される。
【0137】
従って、ナノ構造体40の形状は、例えば、図10(f)に例示した高さが径よりも大きい(長い)柱状よりも、図10(g)及び(h)に例示した厚さが径以下の板状の場合の方が、ナノ構造体40の全体が、第1電極10から一定の範囲の距離内に収まり、金属化合物層50の生成がより促進され、結果として吸収ピークのシフト量Δλpがより拡大できる。
すなわち、ナノ構造体40の複数のナノ構造要素41の高さ(ナノ構造体40が設けられる第1電極10及び第2電極20の主面に対して垂直な方向のサイズ、すなわち、平均のサイズ)は、幅(ナノ構造体40が設けられる第1電極10及び第2電極20の主面に対して平行な方向のサイズ、すなわち、平均のサイズ)以下であることが望ましい。
【0138】
金属化合物層50は、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属硫化物などであり、ナノ構造体40に含まれる金属元素を含む金属化合物である。金属化合物層50の組成は、例えば、ナノ構造体40に含まれる金属元素、可動イオン31の材料、イオン伝導層30の材料、第1電極10及び第2電極20の材料、印加される電圧の極性などによって変えられる。金属化合物層50の屈折率n1が、イオン伝導層30の屈折率n0とは異なればよく、金属化合物層50の組成は任意である。
【0139】
第1電極10及び第2電極20には、導電性の任意の材料を用いることができる。
図1に例示したように、第1電極10と第2電極20とが対向して設けられている構成であり、使用者が第2電極20の側から表示装置110を観視する場合には、第2電極20は、可視光に対して透光性を有する導電膜を用いることが望ましい。これにより、使用者は、第2電極20の第1電極10の側に配置されるナノ構造体40の光吸収の変化を観視することができる。
【0140】
可視光に対して透光性を有する導電膜としては、材料自身が可視光に対して透光性を有する、ITOやSnOなどのような金属酸化物を用いることができる。また、材料自体は可視光を遮光する材料(たとえ金属)であっても、厚さを十分薄くした金属膜を、可視光に対して透光性を有する導電膜として用いることができる。さらには、適宜開口部を設けた可視光に対して遮光性の材料の膜を、可視光に対して透光性を有する導電膜として用いることができる。
【0141】
このような可視光に対して透光性を有する導電膜は、第1電極10及び第2電極20の少なくともいずれかに用いることができる。
【0142】
表示装置110が反射型の表示装置として用いられる場合において、以下では、第2電極20の側から使用者が表示装置110を観視する場合として説明する。
この場合、観視側でない方の電極、すなわち、第1電極10に、可視光に対して反射性を持たせることで、外部から表示装置110に入射した光を、ナノ構造体40によって波長特性を変化させた上で、使用者に向けて反射させることができる。
【0143】
この場合において、第1電極10に可視光に対して透光性を有する導電膜を用い、その背面の側(第1電極10の第2電極20とは反対の側)に、可視光に対して反射性を有する反射層を設けることができ、この場合も、表示装置110に入射した光を、ナノ構造体40によって波長特性を変化させた上で、使用者に向けて反射させることができる。
【0144】
また、表示装置110を透過型または投射型として用いる場合は、バックライトまたは投影光源からの光を透過させるように、第1電極10及び第2電極20の両方に、可視光に対して透光性を有する導電膜を用い、透過型または投射型の表示を有効にできる。
【0145】
また、例えば、第1電極10の上にナノ構造体40が設けられ、第2電極20にはナノ構造体40を設けない構成の時は、第1電極10が表示用の電極(画素電極)となり、第2電極20は駆動のための電流の経路となる。この場合には、第2電極20の形状と配置は任意であり、例えば、第2電極20は、第1電極10の一部と対向して、または、第1電極10と対向しない任意の場所に任意の形状で設けることができる。この場合には、第2電極20の光学特性は任意であり、例えば、第2電極20として、可視光に対して遮光性を有する材料を用いても良い。
【0146】
なお、表示装置110においては、ナノ構造体40の表面における電気化学的な作用を利用するので、ナノ構造体40が設けられる第1電極10及び第2電極20には、ITOやSnOなどのような金属酸化物の導電膜を用いることが好ましい。これにより、ナノ構造体40の表面の少なくとも一部に形成される化学的に不安定な金属化合物層50を安定化させることが容易となる。
【0147】
なお、後述するように、光学セル60が層面に対して垂直方向に積層される場合には、積層される1つ目の光学セル60の第1及び第2電極10及び20のいずれかと、2つ目の光学セル60の第1及び第2電極10及び20のいずれかとの間には、絶縁層を設けることができる。
【0148】
イオン伝導層30には、可動イオン31を含み、可視光に対して透光性を有する任意の材料を用いることができ、例えば液体でも良く、例えば、固体電界質のような固体でも良い。特に、イオン伝導層30が液体である場合には、例えば、第1電極10と第2電極20とが設けられる空間に安定してイオン伝導層30が維持されるように、イオン伝導層30の周囲には、第1電極10、第2電極20及び任意の基板やシール材等が設けられる。
【0149】
イオン伝導層30は、例えば、無色透明な水や有機溶剤などを用いることができ、金属化合物層50を生成するための電気化学的な反応を実現するために、可動イオンを含有する。電気化学反応を発生させるために、可動イオン31の濃度は、例えば0.05μg/ml以上に設定されることが望ましい。
【0150】
なお、イオン伝導層30の電気抵抗が低すぎる場合には、第1電極10と第2電極20とが電気的にショートしてしまい、第1電極10と第2電極20との間に必要な電圧を印加することができないので、イオン伝導層30の電気抵抗は、第1電極10と第2電極20との間に必要な電圧を印加する抵抗値以上に設定される。
【0151】
可動イオン31は、電気化学反応の際に、ナノ構造体40と電荷授受を行う。可動イオン31には、陰イオンを用いることができ、例えば、無機の陰イオンでも良く、有機酸イオンでも良い。無機イオンの例としては、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)及び硫酸イオン(SO2−)などを用いることができる。有機酸イオンとしては、カルボキシル基や水酸基を含む、クエン酸やアスコルビン酸などを用いることができる。
【0152】
この時、ナノ構造体40の表面の少なくとも一部に形成される金属化合物層50が、可逆的に生成され、また、消滅することが必要とされる。このためには、電気化学反応において、印加電圧VAに応じて金属化合物層50の析出と溶解が制御可能であることが望ましい。
【0153】
この条件を満たす可動イオン31とイオン伝導層30の組み合わせとしては、たとえば、可動イオン31としてクエン酸が溶解した水溶液をイオン伝導層30として用いることができる。
【0154】
なお、可動イオン31としては、表示装置110を観視したときに見えないように、目視で確認できない大きさであることが望ましい。
【0155】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図(a)及び(b)は、本実施形態に係る別の表示装置111及び112の構成をそれぞれ例示しており、これらの図においては、第2電圧V2が印加され、金属化合物層50が形成される第2状態S2を例示しており、第1状態S1は省略されている。
【0156】
図14(a)に表したように、表示装置111においては、第1電極10の上にナノ構造体40aが設けられ、その表面に金属化合物層50aが設けられている。そして、第2電極20の上にナノ構造体40bが設けられ、その表面に金属化合物層50bが設けられている。
【0157】
ナノ構造体40aとナノ構造体40bとで、含まれる金属元素、形状、粒径、密度及び配置のいずれかを異ならせることができる。これにより、ナノ構造体40aとナノ構造体40bとで、プラズモン共鳴のピーク波長、ピーク波長のシフト量、シフト量の電圧依存性、共鳴特性の急峻性、駆動電圧の少なくともいずれかを異ならせることで、ナノ構造体40aにおける色変化とナノ構造体40bにおける色変化の複数の色変化を表示することができる。
【0158】
なお、第1電極10及び第2電極20の両方に、同じ材料、同じ形状、同じ密度、同じ配置のナノ構造体40を設けても良い。
【0159】
図14(b)に表したように、表示装置112においては、第1電極10の上にナノ構造体40a及びナノ構造体40bが設けられており、それぞれの表面に金属化合物層50a及び金属化合物層50bが設けられている。
【0160】
ナノ構造体40aとナノ構造体40bとは、含まれる金属元素、形状、粒径、密度及び配置の少なくともいずれかを異ならせることができる。
このように、同じ基板上に異なる仕様のナノ構造体40a及び40bを設けても良い。
【0161】
これにより、ナノ構造体40aにおける色変化とナノ構造体40bにおける色変化の複数の色変化を表示することができる。
【0162】
また、図14(a)に例示した構成と、図14(b)に例示した構成と、を組み合わせても良い。すなわち、第1電極10側に複数の仕様のナノ構造体を設け、第2電極20の側に第1電極10に設けたナノ構造体とは異なる仕様の複数の仕様のナノ構造体を設けても良い。
【0163】
このように、本実施形態に係る表示装置110〜112は、各種の変形が可能である。そして、ナノ構造体40におけるプラズモン共鳴周波数を印加電圧VAによって制御し、任意の色の変化を表示できる。
【0164】
例えば、第1状態S1の時に緑色光を吸収し、第2状態S2の時に赤色光を吸収するように構成することができる。また、第1状態S1の時に赤色光を吸収し、第2状態S2の時に赤外光を吸収するように構成することができる。また、第1状態S1の時に紫外光を吸収し、第2状態S2の時に青色光を吸収するように構成することができる。この吸収する光の波長は、ナノ構造体40に用いる材料、金属元素、形状、粒径、密度及び配置の少なくともいずれか、並びに、イオン伝導層30の屈折率、可動イオン31の種類、金属化合物層50の屈折率などを制御することができ、これにより、任意の色相の色を表示できる。
【0165】
また、白色または黒色も表示することができる。例えば、ナノ構造体40において、例えば、第1状態S1では可視光領域に共鳴波長を有するようにし、第2状態S2では、可視光の長波長領域の共鳴波長を赤外域にシフトさせつつ短波長領域の共鳴波長を紫外領域にシフトさせることで、第2状態S2において可視光を実質的に透過させることで、例えば、光学セル60の背面に配置される反射層で反射した光を視認でき、これが白色状態に相当する。また、上記の逆が、黒色状態に相当する。さらに、後述するように、異なる波長特性を有する光学セル60を並置まはた積層することで、任意の表示色を得ることができる。
【0166】
なお、本実施形態に係る上記の表示装置110〜112において、さらに任意の光スイッチ層を備えても良い。光スイッチ層には、例えば、液晶やMEMS(Micro-electro-mechanical System)などを用いることができ、例えば、光学セル60の背面または前面に光スイッチ層を配置し、光の強度を制御することもできる。すなわち、光学セル60における色変化の制御と、光スイッチ層における光強度の制御と、を組みあわせることで、表示特性の制御範囲がより拡大する。
【0167】
図15は、本発明の第1の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図15に表したように、本実施形態に係る別の表示装置120においては、第1電極10と第2電極20とが、第1基板51の主面51m上に設けられ、第1基板51の主面51mに対向して第2基板52が設けられている。
【0168】
すなわち、第2電極20は、イオン伝導層30の第1電極10に対向する側に設けられている。これ以外は、表示装置110と同様なので説明を省略する。
【0169】
この構成においては、第1基板51と第2基板52との間にイオン伝導層30が設けられている。この場合も、第1電極10と第2電極20とに対向してイオン伝導層30が設けられている。なお、この構成の場合は、第1電極10と第2電極20との間に形成される電流経路32の方向は、第1基板51の主面51mに配向な平面に含まれる方向を含む。すなわち、この構成においても、イオン伝導層30は、第1電極10と第2電極20との間の電流経路32となる。
【0170】
このような構成を有する表示装置120も、表示装置110と同様な機構により、プラズモン共鳴波長のシフト量を拡大し、実用的な表示装置を提供することができる。
【0171】
表示装置110、111及び112に関して説明した各種の変形例を表示装置120に適用することもできる。
【0172】
以下は、本発明の第1の実施形態に係る実施例について説明する。
(第1の実施例)
図16は、本発明の第1の実施例に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図16に表したように、本発明の第1の実施例に係る表示装置110aは、図1に例示した表示装置110と同様の構成を有している。すなわち、表示装置110aにおいては、第1電極10と第2電極20とが対向して設けられ、その間にイオン伝導層30が設けられる。そして、表示装置110aの場合には、第1電極10は、第1基板51の上に設けられ、第2電極20は、第2基板52の上に設けられている。これ以外は、表示装置110と同様の構成とすることができるので、説明を省略する。
【0173】
本実施例においては、第1基板51及び第2基板52には、透光性のガラス基板が用いられている。また第1電極10及び第2電極20には、ITOが用いられている。ナノ構造体40には、体積平均径が約40nmの金粒子が用いられている。ナノ構造体40は、第1電極10の上に設けられている。
【0174】
第1基板51の下側(第2基板52とは反対の側)には、反射層71が設けられている。反射層71としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの白色の顔料を含有する層などが用いられる。
【0175】
本実施例では、イオン伝導層30には、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)及び硫酸イオン(SO2−)などの無機イオンを可動イオンとして含有する水溶液が用いられる。
【0176】
この場合には、ナノ構造体40には、この無機イオンに対して化学的に安定で、真空中において紫外域にプラズモン共鳴波長を持つものが好ましく、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金等を用いることができる。
【0177】
(第2の実施例)
図17は、本発明の第2の実施例に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図17に表したように、本発明の第1の実施例に係る表示装置110bにおいては、第1電極10と第2電極20とが対向して設けられ、その間にイオン伝導層30が設けられる。そして第1電極10は、第1基板51の上に設けられ、第2電極20は、第2基板52の上に設けられている。
【0178】
ナノ構造体40は、第2電極20の上に設けられている。第2電極20には、例えばITOが用いられ、第1電極10には、反射性の銀が用いられている。イオン伝導層30及びナノ構造体40には、例えば表示装置110b同様の構成を適用できる。
【0179】
表示装置110bにおいては、第1電極10に反射性の電極が用いられているので、表示装置110aに関して説明した反射層71が省略できる。
【0180】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態に係る表示装置は、第1の実施形態に関して説明した光学セルを複数備える。
図18は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図18に表したように、本実施形態に係る表示装置210は、要素光学層61を備える。
【0181】
要素光学層61は、複数の光学セル60層を有する。複数の光学セル60は、例えば、互いに積層された光学セル60a及び60bである。
【0182】
光学セル60a及び60bは、第1の実施形態に関して説明した光学セル60と同様の構成を有する。すなわち、光学セル60aは、第1電極10aと、第2電極20aと、可動イオン31aを含むイオン伝導層30aと、ナノ構造体40aと、を有し、電圧の印加によって形成される金属化合物層50aの量が可変である。第1電極10a及び第2電極20aとは互いに対向している。同様に、光学セル60bは、第1電極10bと、第2電極20bと、可動イオン31bを含むイオン伝導層30bと、ナノ構造体40bと、を有し、電圧の印加によって形成される金属化合物層50bの量が可変である。第1電極10b及び第2電極20bとは互いに対向している。
【0183】
なお、第2電極20aと第1電極10bとの間には絶縁層55が設けられている。
【0184】
このように、要素光学セル61は複数の光学セル60a及び60bを有し、複数の光学セル60a及び60bのそれぞれの第1電極10a及び10bの第1主面10ma及び10mbが互いに平行であり、複数の光学セル60a及び60bは、第1主面10ma及び10mbに対して垂直な方向に積層されている。
【0185】
このとき、要素光学層61に含まれる複数の光学セル60(光学セル60a及び60b)のそれぞれのナノ構造体40a及び40bのプラズモン共鳴波長は、互いに異ならせることができる。例えば、光学セル60a及60bとで、ナノ構造体40に用いる材料、金属元素、形状、粒径、密度及び配置の少なくともいずれか、並びに、イオン伝導層30の屈折率、可動イオン31の種類、金属化合物層50の屈折率の少なくともいずれかを異ならせる。
【0186】
これにより、複数の光学セル60aと60bとの表示色を混色させることができ、表示できる色が多様化する。
【0187】
なお、本具体例では、要素光学層61が2つの光学セル60を有するが、要素光学層61に設けられる光学セル60の数は任意であり、例えば、3つの光学セル60を有するように構成しても良い。例えば、この3つの光学セル60は、それぞれ赤、緑、青の3つの色と他の色との間で色が変化するように構成しても良いし、それぞれシアン、マゼンタ、イエローの3つの色と他の色との間で色が変化するように構成しても良い。
これにより、任意の色が表示できる。
【0188】
(第3の実施例)
図19は、本発明の第3の実施例に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図19に表したように、本発明の第2の実施形態に係る第3の実施例の表示装置210aは、図18に例示した表示装置210と同様の構成を有している。そして、本実施例の場合には、1層目の第1電極10aは第1基板51の上に設けられている。一方、2層目の第2電極20bは、第2基板52の上に設けられている。
【0189】
第1電極10a及び10b、並びに、第2電極20a及び20bには、ITOが用いられている。
【0190】
1層目のナノ構造体40aは、金属化合物層50の生成によって、紫外域から可視域の短波長領域でプラズモン共鳴のピーク波長をシフトさせるように設計されている。ナノ構造体40aには、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金などを用いることができる。1層目のイオン伝導層30aには、可動イオン31aとして、単価または多価の無機の陰イオンや有機酸イオンを含む水溶液を用いることができる。
【0191】
一方、2層目のナノ構造体40bは、金属化合物層50の生成によって、緑から赤外の長波長領域でプラズモン共鳴のピーク波長をシフトさせるように設計されている。ナノ構造体40bには、例えば金を用いることができる。2層目のイオン伝導層30bに含まれる可動イオン31bとしては、金との親和性が弱い、例えば多価の有機酸イオンが望ましく、例えば、カルボキシル基や水酸基を含む、クエン酸やアスコルビン酸を用いることができる。すなわち、2層目のイオン伝導層30bには、クエン酸やアスコルビン酸の水溶液が用いられる。
【0192】
なお、第1基板51、第2基板52、絶縁層55には、可視光に対して透光性のある材料を用いることができる。
【0193】
なお、上記の1層目の光学セル60aと2層目の光学セル60bとは互いに入れ替えが可能である。
【0194】
図20は、本発明の第2の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図20に表したように、本実施形態に係る別の表示装置211は、要素光学層61を備える。
【0195】
この場合も、要素光学層61は、複数の光学セル60a及び60bを有する。そして、光学セル60a及び60bにおいては、第1電極10a及び第2電極20aとは並置され、第1電極10b及び第2電極20bとは並置されている。すなわち、表示装置211は、表示装置120を複数積層した構造を有する。
【0196】
なお、表示装置211においては、1層目の第1電極10a及び第2電極20aは1層目の第1基板51aの上に設けられ、2層目の第1電極10b及び第2電極20bは2層目の第1基板51bの上に設けられ、2層目の第1基板51bに対向するように、第2基板52が設けられている。そして、1層目の第1基板51aと2層目の第1基板51bとの間に、1層目のイオン伝導層30aが設けられ、2層目の第1基板51bと第2基板52との間に、2層目のイオン伝導層30bが設けられている。
【0197】
この場合も、要素光学層61に含まれる複数の光学セル60(光学セル60a及び60b)のそれぞれのナノ構造体40a及び40bのプラズモン共鳴波長を、互いに異ならせることで、複数の光学セル60aと60bとの表示色を混色させることができ、表示できる色が多様化する。
【0198】
なお、本具体例では、要素光学層61が2つの光学セル60を有するが、要素光学層61に設けられる光学セル60の数は任意であり、例えば、3つの光学セル60を有するように構成しても良い。例えば、この3つの光学セル60は、それぞれ赤、緑、青の3つの色と他の色との間で色が変化するように構成しても良いし、それぞれシアン、マゼンタ、イエローの3つの色と他の色との間で色が変化するように構成しても良い。
これにより、任意の色が表示できる。
【0199】
図21は、本発明の第2の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図21に表したように、本実施形態に係る別の表示装置212では、表示装置211における第2基板52が省略され、1層目の第1基板51aの主面51maと、2層目の第1基板51bの主面51mbとが互いに対向して配置されている。
【0200】
そして、イオン伝導層30は、1層目の光学セル60aと、2層目の光学セル60bと、で共有されている。
【0201】
本具体例では、ナノ構造体40aが設けられた1層目の第1電極10aと、ナノ構造体40bが設けられた2層目の第1電極10bとは、互いに対向している。このとき、1層目の第1電極10aと、2層目の第1電極10bと、の電位を実質的に同じに設定しつつ、1層目の第1電極10aと第2電極20aとの間の電圧を変化させ、また、2層目の第2電極10bと第2電極20bとの間の電圧を変化させすことで、1層目の光学セル60aと2層目の光学セル60bとで、独立して色を制御することができる。
【0202】
図22は、本発明の第2の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図22に表したように、本実施形態に係る別の表示装置220も、要素光学層61を備える。そして、要素光学層61に含まれる複数の光学セル60(光学セル60a及び60b)が、層面に平行な平面内で並置される。そして、本具体例では、それぞれの光学セル60a及び60bにおける第1電極と第2電極とが互いに対向して配置され、その間にイオン伝導層30が設けられている。
【0203】
すなわち、要素光学層61は複数の光学セル60a及び60bを有し、複数の光学セル60a及び60bのそれぞれの第1電極10a及び10bの第1主面10ma及び10mbが互いに平行であり、複数の光学セル60a及び60bは、第1主面10ma及び10mbに対して平行な方向に並置されている。
【0204】
このときも、要素光学層61に含まれる複数の光学セル60(光学セル60a及び60b)のそれぞれのナノ構造体40a及び40bのプラズモン共鳴波長は、互いに異ならせることで、複数の光学セル60aと60bとの表示色を混色させることができ、表示できる色が多様化する。
【0205】
なお、本具体例では、要素光学層61が2つの光学セル60を有するが、要素光学層61に設けられる光学セル60の数は任意であり、例えば、3つの光学セル60を有するように構成しても良い。例えば、この3つの光学セル60は、それぞれ赤、緑、青の3つの色と他の色との間で色が変化するように構成しても良いし、それぞれシアン、マゼンタ、イエローの3つの色と他の色との間で色が変化するように構成しても良い。
これにより、任意の色が表示できる。
【0206】
図23は、本発明の第2の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図23(a)に表したように、本実施形態に係る別の表示装置221においても、要素光学層61に含まれる複数の光学セル60(光学セル60a及び60b)が、層面に平行な平面内で並置される。そして、表示装置221においては、光学セル60aの第1電極10aと第2電極20aとが互いに並置され、光学セル60aの第1電極10bと第2電極20bとが互いに並置されている。
【0207】
図23(b)に表したように、本実施形態に係る別の表示装置222においては、光学セル60aと光学セル60bとで、第2電極が共有され、光学セル60aに含まれる第2電極20aと、光学セル60bに含まれる第2電極20bと、は同一である。
【0208】
このように、本実施形態に係る表示装置における構成要素は、種々変形することができる。
【0209】
(第3の実施の形態)
図24は、本発明の第3の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図24(a)に表したように、本発明の第3の実施形態に係る表示装置310は、複数の要素光学層61を備える。すなわち、例えば、要素光学層61a及び61bである。
【0210】
複数の要素光学層61のそれぞれは、第2の実施形態に係る表示装置210、211、212、220、221及び212に関して説明したいずれかの要素光学層である。
【0211】
そして、本具体例では、要素光学層61のそれぞれが3つの光学セル60a、60b及び60cを有する場合であり、その光学セル60a、60b及び60cが積層される場合である。
【0212】
ここで、第1電極10aの第1主面10maに平行な面をXY平面とし、XY平面内の1つの方向をX軸方向とし、XY平面内においてX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。そして、X軸方向とY軸方向とに垂直な方向をZ軸方向とする。
【0213】
すなわち、光学セル60a、60b及び60cはZ軸方向に積層される。
【0214】
そして、このような構成の複数の要素光学層61が、それぞれ1つの画素となり、要素光学層61の層面に平行な平面内に配置されている。例えば、複数の要素光学層61が、X軸方向とY軸方向とにマトリクス状に配置される。
【0215】
このように、表示装置310は、複数の要素光学層61を備え、前記複数の要素光学層61は、要素光学層61に含まれる光学セル60の第1電極10の第1主面10maに対して平行な平面内に並置されている。
【0216】
これにより、任意の図形や文字を任意の色で表示できる表示装置を実現することができる。
【0217】
図24(b)に表したように、本実施形態に係る別の表示装置311では、要素光学層61a及び61bのそれぞれにおいて、光学セル60a、60b及び60cが第1主面10maに平行な平面内(XY平面内)で並置されている。
【0218】
この場合も、任意の図形や文字を任意の色で表示できる表示装置を実現することができる。
【0219】
このように、マトリクス状に並置された複数の要素光学層61は、例えば、単純マトリクス駆動やアクティブマトリクス駆動などの方法によって駆動させることができる。単純マトリクス駆動の場合には、例えば電圧平均化法を用いることができる。要素光学層61における光学特性の印加電圧VA依存性に対して急峻性を必要としないアクティブマトリクス駆動が、表示性能の点では望ましい。アクティブマトリクス駆動の場合には、2端子のスイッチング素子や3端子のスイッチング素子などを用いることができるが、制御性の点で3端子のスイッチング素子を用いることがより望ましい。3端子のスイッチング素子としては、例えば、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を用いることができる。
【0220】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態に係る表示装置は、アクティブマトリクス駆動の表示装置である。
【0221】
図25は、本発明の第4の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式的回路図である。
図25に表したように、本発明の第4の実施形態に係る表示装置410は、アクティブマトリクス光学層505を備える。
【0222】
アクティブマトリクス光学層505は、複数の走査線510と複数の信号線520とを有する。
【0223】
複数の走査線510は、第1方向(例えばX軸方向)に延在し、複数の信号線520は、第1方向に対し非平行な第2方向(例えばY軸方向)に延在する。第1方向と第2方向とは例えば直交する。
【0224】
そして、アクティブマトリクス光学層505は、複数の走査線510のそれぞれと、複数の信号線520のそれぞれと、の交差部分に対応して設けられた複数のスイッチング素子530及び複数の表示要素540と、をさらに有する。
【0225】
スイッチング素子530としては、例えばTFTが用いられる。そして、それぞれのスイッチング素子530のゲート電極531が、それぞれの走査線510に接続されている。そして、スイッチング素子530の例えばソース電極532のそれぞれが、それぞれの信号線520に接続されている。そして、スイッチング素子530の例えばドレイン電極533のそれぞれが、それぞれの表示要素540に接続されている。なお、上記のソース電極532とドレイン電極533とは互いに入れ替えることができる。
【0226】
それぞれの表示要素540は、本発明の実施形態に係る光学セル60を有する。そして、光学セル60の第1電極10及び第2電極20のいずれか一方が上記のドレイン電極533に接続され、いずれか他方は、別の電位に設定される。本具体例では、第1電極10がドレイン電極533に接続され、第2電極20は、対向電位に設定されている。
【0227】
これにより、各表示要素540の光学セル60には、スイッチング素子530を介して任意の電圧が付与され、各表示要素540の光学セル60は任意の光学特性の変化を示すことができる。
【0228】
このようなアクティブマトリクス型の表示装置において、各表示要素540は任意の構成を有することができる。
すなわち、マトリクス状に配列した表示要素540は、異なる表示色を呈示可能な複数の要素光学層61の組みが、繰り返し配列した構成とすることができる。
【0229】
例えば、図24(b)に例示した表示装置311のように、異なる光学特性を有する光学セル60a、60b及び60cがXY平面内で並置され、このような光学セル60a、60b及び60cを含む要素光学層61がXY平面内にさらに並置することができる。
【0230】
この場合は、XY平面内に並置された光学セル60a、60b及び60cを有する要素光学層61がサブ表示要素となる。
【0231】
そして、この場合の表示装置は、複数のサブ表示要素を備え、前記複数のサブ表示要素のそれぞれは、前記複数の表示要素540を有し、前記複数のサブ表示要素のそれぞれにおける前記表示要素540の光学セル60のそれぞれのナノ構造体40のプラズモン共鳴波長は、互いに異なる。
【0232】
また、図25に例示したアクティブマトリクス光学層505を積層することもできる。 この場合には、例えば、図24(a)に例示した表示装置310のように、異なる光学特性を有する光学セル60a、60b及び60cがZ軸方向に積層され、このような光学セル60a、60b及び60cを含む要素光学層61がXY平面内に並置される。
【0233】
この場合の表示装置は、複数のアクティブマトリクス光学層505を備え、複数のアクティブマトリクス光学層505は、Z軸方向(前記第1の方向と前記第2の方向を含む平面に対して垂直な方向)に積層されている。そして、複数のアクティブマトリクス光学層505の複数の表示要素540の光学セル60のそれぞれのナノ構造体40のプラズモン共鳴波長は、互いに異なる。
【0234】
このように、アクティブマトリクス光学層505の構成は任意であり、また、任意の構成でアクティブマトリクス光学層505を組み合わせることができる。
【0235】
図26は、本発明の第4の実施形態に係る別の表示装置の構成を例示する模式的断面図である。
図26に表したように、本実施形態に係る別の表示装置420においては、アクティブマトリクス光学層505が積層され、光学セル60aと光学セル60bとが積層されている。
【0236】
すなわち、1層目のアクティブマトリクス光学層505のスイッチング素子530aが1層目の第1基板51aの上に設けられている。すなわち、第1基板51aの上に、スイッチング素子530aと第1電極10aと走査線510(図示しない)と信号線520(図示しない)とが設けられている。第1電極10aの上にはナノ構造体40aが設けられ、その表面には印加電圧によって金属化合物層50aが形成可能である。
【0237】
一方、2層目のアクティブマトリクス光学層505のスイッチング素子530bが2層目の第1基板51bの上に設けられている。すなわち、第1基板51bの上に、スイッチング素子530bと第1電極10bと走査線510(図示しない)と信号線(520図示しない)とが設けられている。第2電極10bの上にはナノ構造体40bが設けられ、その表面には印加電圧によって金属化合物層50bが形成可能である。
なお、ナノ構造体40aとナノ構造体40bとは互いに光学特性が異なる。
【0238】
第1基板51aと第1基板51bとは互いに対向して設置され、それらの間に絶縁層55が設けられ、絶縁層55の第1基板51aの側には、1層目の第2電極20aが設けられ、絶縁層55の第1基板51bの側には、2層目の第2電極20bが設けられている。
【0239】
そして、第1電極10aと第2電極20aとの間に、1層目のイオン伝導層30aが設けられ、第1電極10bと第2電極20bとの間に、2層目のイオン伝導層30bが設けられている。なお、イオン伝導層30a及び30bの周囲には、それぞれシール層59a及び59bが設けられている。
【0240】
このように、表示装置420においては、異なる光学特性を有する光学セル60aと光学セル60bとを有する複数のアクティブマトリクス光学層505を積層することで、表示色の色相及び明るさの表現範囲を拡大できる。
【0241】
なお、上記の絶縁層55は省略可能であり、1層目の第2電極20aと2層目の第2電極20bとは同じ電位に設定しても良い。
【0242】
また、本具体例では、第2電極20aが第1電極10aに対向するように設けられているが、第2電極20aは第1電極10aの一部に対向して設けても良く、また、第1電極10aに対向しなくても良い。
【0243】
例えば第2電極20aは、第1基板51aの上に設けても良い。その場合、第1電極10aと第2電極20aとは、交叉指形電極(inter digital electrodeまたはmulti-finger electrode)の構造を有しても良い。
【0244】
また、上記の1層目の第2電極20aと同様に、2層目の第2電極20bも各種の変形が可能である。
【0245】
また、本具体例では、アクティブマトリクス光学層505が2層積層される場合であるが、アクティブマトリクス光学層505は、任意の数積層することができ、例えば、アクティブマトリクス光学層505を3層積層することができる。
【0246】
なお、本具体例では、アクティブマトリクス光学層505が積層される例であるが、積層されなくても良く、この場合において、例えば図24(b)に例示したように、XY平面内に並置された複数の光学セル60を有する要素光学層61を1つの画素として、さらにXY平面内に並置しても良い。
【0247】
(第5の実施の形態)
図27は、本発明の第5の実施形態に係る表示方法を例示するフローチャート図である。
図27に表したように、本発明の第5の実施形態に係る表示方法は、光学セル60の第1電極10と第2電極20との間に第1電圧V1を印加して第1状態S1を形成する(ステップS110)。光学セル60は、第1電極10と、第2電極10と、第1電極10と第2電極20とに対向して設けられ、可動イオン31を含むイオン伝導層30と、第1電極10と電気的に接続され、第1電極10とイオン伝導層30との間に設けられ、可視光帯域のプラズモン共鳴波長を有し、金属元素を含むナノ構造体40と、を有する。
【0248】
そして、光学セル60の第1電極10と第2電極20との間に第1電圧V1とは異なる第2電圧V2を印加して第2状態S1を形成し、第1電圧V1及び第2電圧V2の少なくともいずれかの印加によって、ナノ構造体40の表面の少なくとも一部に形成され、ナノ構造体40に含まれる前記金属元素を含む金属化合物を含み、イオン伝導層30とは屈折率が異なる金属化合物層50の量を、第1状態S1と第2状態S2とで変化させる(ステップS120)。
【0249】
すなわち、光学セル60の第1電極10と第2電極20との間に電圧を印加することによりナノ構造体40の表面の少なくとも一部に形成される金属化合物であって、ナノ構造体40に含まれる金属元素を含みイオン伝導層30とは屈折率が異なる金属化合物層50の量を、第1電極10と第2電極20との間に印加する電圧を変化させることにより変化させる。
【0250】
これにより、プラズモン共鳴波長のシフト量を拡大し、実用的な表示方法が提供できる。
【0251】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、表示装置を構成する電極、ナノ構造体、金属化合物、金属化合物層、可動イオン、イオン伝導層、基板、スイッチング素子など各要素の形状、サイズ、材質、配置関係などに関して、また製造方法に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0252】
その他、本発明の実施の形態として上述した表示装置及び表示方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置及び表示方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0253】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0254】
10、10a、10b 第1電極
10ma、10mb 第1主面
20、20a、20n 第2電極
20ma 第2主面
30、30a、30b イオン伝導層
31、31a、31b 可動イオン
32 電流経路
40、40a、40b ナノ構造体
41 ナノ構造要素
41n 核材
50、50a、50b 金属化合物層
51、51a、51b 第1基板
51m、51ma、51mb 主面
52 第2基板
55 絶縁層
59a、59b シール層
60、60a、60b、60c 光学セル
61、61a、61b 要素光学層
71 反射層
110、110a、110b、111、112、119、120、210、210a、211、212、220、221、222、310、311、410、420 表示装置
505 アクティブマトリクス光学層
510 走査線
520 信号線
530、530a、530b スイッチング素子
531 ゲート電極
532 ソース電極
533 ドレイン電極
540 表示要素
S1 第1状態
S2 第2状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とに対向して設けられ、可動イオンを含むイオン伝導層と、
前記第1電極と電気的に接続され、前記第1電極と前記イオン伝導層との間に設けられ、可視光帯域のプラズモン共鳴波長を有し、金属元素を含むナノ構造体と、
を有する光学セルを備え、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより、前記ナノ構造体に含まれる前記金属元素を含み前記イオン伝導層とは屈折率が異なる金属化合物層が前記ナノ構造体の表面の少なくとも一部に形成され、
前記第1電極と前記第2電極との間に第1電圧が印加された第1状態と、前記第1電極と前記第2電極との間に前記第1電圧とは異なる第2電圧が印加された第2状態と、で前記金属化合物層の量が異なることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記金属元素は、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅及びカドミウムセレンよりなる群から選択された少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記ナノ構造体の複数のナノ構造要素の体積平均径は、20ナノメートル〜100ナノメートルであることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ナノ構造体の複数のナノ構造要素どうしの最近接距離の平均は、前記ナノ構造体の複数のナノ構造要素の体積平均径の2倍以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項5】
前記ナノ構造体の複数のナノ構造要素の前記第1電極の主面に対して垂直な方向のサイズが、前記主面に対して平行な方向のサイズ以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項6】
前記可動イオンは、陰イオンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項7】
前記金属化合物層は、前記ナノ構造体に含まれる前記金属元素を含む金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物及び金属硫化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項8】
前記第2電極は、前記イオン伝導層の前記第1電極に対向する側とは反対の側に設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1電極の第1主面と、前記第2電極の第2主面と、は、互いに対向して設けられ、前記イオン伝導層は、前記第1電極と第2電極との間に設けられることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項10】
前記第2電極は、前記イオン伝導層の前記第1電極に対向する側に設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項11】
複数の前記光学セルを備え、
前記複数の光学セルのそれぞれの前記第1電極の第1主面が互いに平行であり、
前記複数の光学セルは、前記第1主面に対して垂直な方向に積層されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項12】
複数の前記光学セルを備え、
前記複数の光学セルのそれぞれの前記第1電極の第1主面が互いに平行であり、
前記複数の光学セルは、前記第1主面に対して平行な平面内に並置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項13】
前記複数の光学セルのそれぞれの前記ナノ構造体の前記プラズモン共鳴波長は、互いに異なることを特徴とする請求項11または12に記載の表示装置。
【請求項14】
第1方向に延在する複数の走査線と、
前記第1方向に対して非平行な第2方向に延在する複数の信号線と、
前記複数の走査線のそれぞれと、前記複数の信号線のそれぞれと、の交差部分に対応して設けられた複数のスイッチング素子及び複数の表示要素と、
を有するアクティブマトリクス光学層を備え、
前記複数の表示要素のそれぞれは、前記光学セルを有し、複数の前記光学セルの前記第1電極及び前記第2電極のいずれかは、前記スイッチング素子のそれぞれに接続されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項15】
複数のサブ表示要素を備え、
前記複数のサブ表示要素のそれぞれは、前記複数の表示要素を有し、
前記複数のサブ表示要素のそれぞれにおける前記表示要素の前記光学セルのそれぞれの前記ナノ構造体の前記プラズモン共鳴波長は、互いに異なることを特徴とする請求項14記載の表示装置。
【請求項16】
複数の前記アクティブマトリクス光学層を備え、
前記複数のアクティブマトリクス光学層は、前記第1の方向と前記第2の方向を含む平面に対して垂直な方向に積層され、
前記複数のアクティブマトリクス光学層の前記複数の表示要素の前記光学セルのそれぞれの前記ナノ構造体の前記プラズモン共鳴波長は、互いに異なることを特徴とする請求項14記載の表示装置。
【請求項17】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とに対向して設けられ、可動イオンを含むイオン伝導層と、前記第1電極と電気的に接続され、前記第1電極と前記イオン伝導層との間に設けられ、可視光帯域のプラズモン共鳴波長を有し、金属元素を含むナノ構造体と、を有する光学セルの前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより前記ナノ構造体の表面の少なくとも一部に形成される金属化合物であって、前記ナノ構造体に含まれる前記金属元素を含み前記イオン伝導層とは屈折率が異なる金属化合物層の量を、前記第1電極と前記第2電極との間に印加する電圧を変化させることにより変化させることを特徴とする表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−185970(P2010−185970A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28919(P2009−28919)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】