説明

表示装置

【課題】環状の表示装置において、操作スイッチの操作性を大幅に向上させること。
【解決手段】環状の時計における操作スイッチの構造として、環状部材であるケース1とベゼル3とを相対回転させ、ボタンスイッチ13とスイッチ切換手段としての凹部33との相対位置が変わることによって、ボタンスイッチ13の切換操作を可能に構成した。これにより、装着された際の時計の姿勢に関わらず、また、装着中に時計が腕の周りを回転しても、常に、ケース1とベゼル3とを相対回転させる同じ取扱い方法でボタンスイッチ13の切換操作を行うことができる。すなわち、ボタンスイッチ13の位置には関係なく、スイッチの切換え操作を行うことができ、ボタンスイッチ13の位置を確認したり、ボタンスイッチ13が見える位置まで表示装置を回転させることなどを不要にできる。これにより、操作性を大幅に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状の表示装置における操作スイッチの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕にバンドなどで固定される携帯型表示装置における操作スイッチは、表示部の周りに押しボタンなどとして設けられている(特許文献1)。これと略同様に、腕時計における操作スイッチについても、表示部近傍の外装ケース側面などに接触式のタッチボタンとして設けられることが一般的である。
ここで、可撓性を有する電気泳動表示パネルなどを外周部に沿って設けた環状(リング状)の表示装置が開発されている(特許文献2)。このようなリング状の表示装置は、ブレスレットのようにリング内側に腕を通して装着する。
【0003】
【特許文献1】実開昭56−163484号公報
【特許文献2】特開2005−250442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなリング形状の表示装置では、例えば、リング状ケースの周方向に沿った側面等に操作ボタンを設けることが考えられるが、このようなリング形状の表示装置は、正面、背面などの区別がない場合もあり、装着される位置が一定でなく、また、腕に固定されていないので、腕の周りを回転しやすい。
このため、操作ボタン等の位置が定まらず、操作性に難点があった。例えば、操作ボタン等が設けられた部分が腕の裏側などに回ると、手探りでボタンの位置を確認することになり、面倒である。なお、操作ボタンは一つに限らず、時刻修正や画面表示切換え用などに複数のボタンが設けられる場合もあり、このような場合、手探りでの確認もままならない。
つまり、操作ボタンを確実に操作するためには、操作ボタンが見える位置に表示装置を回してから、改めてボタン操作する必要があった。
【0005】
本発明の目的は、環状の表示装置において、操作スイッチの操作性を大幅に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置は、外周部に表示部を有する環状の表示装置であって、互いに相対回転可能に連結される複数の環状部材を備え、前記表示部は、前記環状部材の少なくとも1つに設けられ、前記環状部材の少なくとも1つは、隣合う前記環状部材との間であって周方向の少なくとも一箇所に、当該表示装置の動作を操作可能なスイッチを有し、前記スイッチを有する環状部材に隣合う前記環状部材は、前記スイッチを有する環状部材に対して回転されることにより前記スイッチを切り替えるスイッチ切換手段を有することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、環状部材同士を相対回転させ、その環状部材と環状部材との間に設けられたスイッチおよびスイッチ切換手段の相対位置が変わることによって、スイッチの位置とは無関係に、スイッチの切換操作が可能となる。すなわち、環状の表示装置は、装着中に腕などの周りを回転しやすく、スイッチの位置が定まらないが、常に、環状部材同士を相対回転させる同じ取扱い方法でスイッチの切換操作を行うことができ、スイッチの位置を確認したり、スイッチが見える位置まで表示装置を回転させることなどを不要にできる。これにより、環状の表示装置における操作スイッチの操作性を大幅に向上させることができる。
【0008】
加えて、スイッチは環状部材同士の間に設けられ、外部に露出しない構成とできるので、スイッチが誤って押されるなどの誤操作を防止できる。
また、本発明では、複数の環状部材を互いに回転させることでスイッチを切り替えるという環状の表示装置に最適なスイッチ構造を実現でき、ケース外部に露出する操作用ボタン類を無くすことができるので、外観も向上させることができる。
【0009】
なお、複数の環状部材の少なくとも1つに表示部が設けられていればよく、他の環状部材には、表示部が設けられていなくてもよい。この場合、他の環状部材は、例えば、ベゼル(飾り縁)などであってもよい。このような場合、例えばこのベゼルに質感の高い材質を用いたり、研磨したり、模様を入れたりすることが可能となるので、表示装置の外観を向上させることができる。
また、表示部としては、後述する電気泳動表示ディスプレイのほか、有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ、液晶パネル(LCD;Liquid Crystal Display)等を適宜採用できる。
【0010】
本発明の表示装置では、前記各環状部材は、平面視円形状の嵌合部をそれぞれ有しこれら嵌合部の嵌め合いで互いに連結されることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、嵌め合いによって、各環状部材が相対回転可能な構成を容易に実現できる。なお、嵌合部と嵌合部との間には、パッキンなどを介装することも可能であり、環状部材を相対回転させる際のトルクは適宜調整できる。
また、嵌合部によって互いに回転可能とされるので、嵌合部以外の部分は平面視円形状に形成しなくてもよく、自由な形状を採用できる。
【0012】
本発明の表示装置では、前記スイッチ切換手段は、前記環状部材に形成された凹部を有して構成され、前記スイッチは、当該スイッチを有する前記環状部材に設けられ、かつ前記スイッチ切換手段を有する前記環状部材の側に付勢される軸部を有し、前記軸部の端部が前記凹部に挿入された際と、前記凹部以外の部分によって前記軸部が前記付勢された方向とは反対方向に加圧された際とに、入切されることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、環状部材に軸部を有するボタンスイッチを設け、スイッチ切換手段として軸部が挿入される凹部を形成する簡易な接触式スイッチ構造により、環状部材同士の相対回転による回転スイッチ構造を実現できる。
なお、軸部の付勢手段としては、ゴムやばねなどを適宜使用できる。
【0014】
本発明の表示装置では、前記スイッチおよび前記スイッチ切換手段の一方は、発光素子および受光素子の一方を有するとともに、前記スイッチおよび前記スイッチ切換手段の他方は、発光素子および受光素子の他方を有し、前記スイッチは、発光素子からの光束を受光素子で受光した際と受光しない際とに、入切されることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、発光素子および受光素子による光センサを用いることによって、非接触式スイッチ構造を容易に実現できる。このような非接触式では、環状部材の一方から他方へのスイッチ可動部が無いため、スイッチの防水構造を簡易にできる。
【0016】
本発明の表示装置では、前記スイッチを有する前記環状部材と前記スイッチ切換部を有する前記環状部材との一方には、その周方向に沿って円弧状の溝が刻設され、前記スイッチを有する前記環状部材と前記スイッチ切換部を有する前記環状部材との他方には、前記溝に挿入され、かつ前記環状部材が所定方向に回転されて前記スイッチが切替られる位置で前記溝の端部に係止される突起が形成されていることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、突起が溝の端部に係止されるので、スイッチが切り替わる位置に環状部材の回転角度が決まり、スイッチの切換を確実に行うことができる。溝の長さは、操作性を考慮して、例えば90°、180°など適宜決められ、この溝の範囲で、例えば環状部材同士が所定方向に回転した際にスイッチオン、これと反対方向に回転した際にスイッチオフ、のようにスイッチを入切することができる。
【0018】
本発明の表示装置では、隣合う前記環状部材の間に設けられた2つの前記スイッチは、1つの前記スイッチ切換手段によって切り替えられ、前記スイッチの一方は、前記環状部材が所定方向に回転されて前記溝の一端部に前記突起が係止される際に前記スイッチ切換手段によって切り替えられ、前記スイッチの他方は、前記環状部材が所定方向と反対方向に回転されて前記溝の他端部に前記突起が係止される際に前記スイッチ切換手段によって切り替えられることが好ましい。
【0019】
この発明によれば、2つのスイッチ間でスイッチ切換手段を兼用でき、スイッチ切換手段の構成を簡略にできる。具体的には、前述した接触式スイッチの場合、2つのボタンスイッチについて凹部を1つだけ形成すればよく、環状部材を回転させた際の凹部の移動によってこれらの各スイッチを切換え可能となる。ここで、これらのスイッチは、例えば一方のスイッチがオンのときに他方のスイッチがオフで、環状部材を回転させると、一方のスイッチがオフで他方のスイッチがオンとなるように、つまりオンオフ2つの状態をスイッチ間で交互に切り替えるように構成できる。
【0020】
本発明の表示装置では、前記環状部材の少なくともいずれかは、略筒状の本体と、前記本体の外周部に設けられるカバーガラスと、を有して前記表示部のケースとして構成され、前記本体は、前記スイッチが配設されるスイッチ配設部を有し、前記スイッチは、前記スイッチ配設部との間に防水手段を有し、前記ケース内は水密とされていることが好ましい。
【0021】
この発明によれば、環状部材同士が嵌め合いなどで回転可能に構成されていても、スイッチおよびスイッチ配設部から表示部やその駆動制御部などへの浸水が防止されるので、表示装置の信頼性を確保できる。
【0022】
本発明の表示装置では、前記環状部材の少なくともいずれかは、略筒状の本体と、前記本体の外周部に設けられるカバーガラスと、を有して前記表示部のケースとして構成され、前記本体は、前記表示部が外周側に配設される筒状の胴と、この胴の周方向に沿った両端部にそれぞれ一体または別体で設けられるフランジとを有し、前記フランジの少なくとも一方は、前記嵌合部および前記スイッチ配設部をそれぞれ有することが好ましい。
【0023】
この発明によれば、嵌合部およびスイッチ配設部がフランジに設けられるので、環状のケースの外周部略全体を表示部の表示領域として広い表示画面を実現できる。
なお、フランジは、胴と一体形成されていても、裏蓋のように胴と別体とされていてもよい。
【0024】
本発明の表示装置では、前記各環状部材には、前記表示部がそれぞれ設けられることが好ましい。
【0025】
この発明によれば、スイッチ切換操作と情報表示とに環状部材を兼用できる。そして、各環状部材の表示部を合わせてより広い画像表示領域を実現できる。また、各表示部における画像の表示および非表示を順次切り替えたり、各表示部における表示を組み合わせて1つの画像を表示するなど、2つ、3つ以上連結された環状部材の数に応じた様々な画像表現が可能となる。
【0026】
本発明の表示装置では、前記表示体は、電気泳動表示ディスプレイとされていることが好ましい。
【0027】
この発明によれば、電気泳動表示ディスプレイはフレキシブル基板の使用により可撓性を持たせることが容易であるため、ケースの曲面に沿って設ける表示体として好適であり、このような電気泳動表示ディスプレイの採用によって表示体の表示領域をケースの周方向に広くすることができる。
【0028】
本発明の表示装置では、計時部を備える時計とされ、前記表示部には、前記計時部による計時情報が表示されることが好ましい。
【0029】
この発明によれば、ケースの内側に腕を通すことで装着でき、ケース外周部の見やすい位置に計時情報が表示され、かつ操作性に優れるので腕時計としての機能性を十分に満たす。すなわち、表示装置の中でも特に時計として構成することにより、前述した効果をより大きくできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、環状の表示装置において、操作スイッチの操作性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の各実施形態では、表示装置としての時計を示す。なお、第2実施形態以降の説明に関し、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して、説明を省略もしくは簡略化する。
【0032】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の時計の外観斜視図であり、図2は、この時計の分解斜視図である。また、図3は、図1のIII−III線断面図である。
時計は、環状(リング状)のケース1と、ケース1内部に収容される表示部2と、ケース1に設けられる環状のベゼル3とを備え、ケース1のリング内側に腕を通すことによって装着されるブレスレットタイプとなっている。
なお、本実施形態の表示部2は、電気泳動表示ディスプレイとされている。
【0033】
ケース1は、略円筒状のケース本体10と、ケース本体10の周方向に沿った下端部に設けられる裏蓋15と、ケース本体10の外周部に設けられるカバーガラス16とを有する環状部材とされている。
ケース本体10は、図3に示すように、円筒状の胴11と、胴11の上端部に突設されたフランジ12とを有する。
胴11の下端部において、周方向の数箇所にはそれぞれ、雌ねじ孔111が形成されている。
【0034】
図4は、ケース本体10の上面図である。この図4と図3に示すように、フランジ12の上面部には、断面略L字状に形成された嵌合部121が平面視円形状に形成されている。この嵌合部121の内周側には、ケース本体10の周方向に沿って90°円弧状の溝122が刻設されている。
【0035】
また、溝122の一端部の内周側には、ボタンスイッチ13が設けられている。
フランジ12には、ボタンスイッチ13が設けられるスイッチ配設部123が形成されている。スイッチ配設部123は、ケース本体10の軸方向に沿って貫通する貫通孔123Aと、この貫通孔123Aに設けられるパイプ123Bとを有する。
【0036】
ボタンスイッチ13は、パイプ123Bに挿通される軸部131を有し、軸部131の周りに設けられたコイルばね132によってパイプ123Bの外側に付勢されている。このボタンスイッチ13は、例えば時刻修正や画面表示モードの切換えなどを行う操作スイッチとされている。また、軸部131の周りには、リング状のゴム製パッキン133が設けられ、このパッキン133は軸部131とパイプ123Bとの間の防水手段となっている。なお、本実施形態ではボタンスイッチ13の付勢手段としてコイルばね132を使用したが、付勢手段としてコイルばね132の代わりにリング状のゴム製パッキンを使用することも可能である。
ここで、本実施形態では、ボタンスイッチ13はフランジ12の周方向における1箇所のみに設けられているが、フランジ12の周方向における複数箇所にスイッチを設けることも可能である。
【0037】
図3に戻り、裏蓋15は、ケース本体10とは別体のリング状の部材であり、ケース本体10の各雌ねじ孔111にねじ121でそれぞれ固定されている。なお、裏蓋15とケース本体10との間や、ねじ121と雌ねじ孔111との間にはそれぞれ、パッキンP1,P2,P3が介装されている。
カバーガラス16は、円筒状に形成され、ケース本体10のフランジ12と裏蓋15との間に挟持されている。なお、カバーガラス16とフランジ12および裏蓋15との間にはパッキンP4がそれぞれ介装されている。
【0038】
図5は、ベゼル3の裏側を示す平面図である。この図5、図1、および図3に示すように、ベゼル3は、ケース本体10のフランジ12にケース本体10と略同軸に設けられる環状部材である。
ベゼル3の外周部裏側には、図3に示すように、ケース本体10に向かって突出する平面視円形状の嵌合部31が形成されている。この嵌合部31がケース本体10の嵌合部121の外周に嵌合することにより、いずれも環状部材とされたベゼル3とケース1とは互いに回転可能に連結される。なお、嵌合部31と嵌合部121との間には、パッキンP5(図3)が介装され、ベゼル3とケース1とを回転させる際の適切なトルクが得られている。
また、ベゼル3の裏面側で周方向の一部には、ブロック状の突起(ストッパ)32が突設されているとともに、裏面側から表面側に窪むスイッチ切換手段としての凹部33が形成されている。
【0039】
本実施形態の時計を組み立てる際は、ケース本体10に表示部2を組み付けたのち、カバーガラス16をケース本体10の外周部に設けてフランジ12に支持させ、裏蓋15をケース本体10にねじ止めする。そして、このように組み立てたケース1と、ベゼル3とを組み付けるが、この際、ケース本体10の溝122にベゼル3の突起32が挿入されるように組み付ける。
【0040】
図3に戻り、表示部2は、詳しい図示を省略するが、2枚のフレキシブル基板の間に電気泳動層を有し耐湿シートで密封された表示パネル21と、表示パネル21を駆動するドライバや計時部が実装された制御回路基板25とがモジュール化されたものである。
表示パネル21は帯状に形成されてケース本体10の外周部に略全周に亘って設けられ、略360°の表示領域を有する。この表示パネル21の表示領域には、時計のモードに応じて時刻、日付、曜日などの各種情報が表示される。
【0041】
図6は、表示パネル21における電気泳動層22を示す模式図である。
電気泳動層22は、多数のマイクロカプセル22Aが密集して配置されることによって形成され、各マイクロカプセル22Aには、多数の帯電粒子が分散した電気泳動粒子分散液220がそれぞれ封入されている。電気泳動粒子分散液220では、黒色の電気泳動粒子(以下、黒粒子という)221と、白色の電気泳動粒子(以下、白粒子という)222とが分散され、本実施形態では二色の粉体流体方式の電気泳動層が構成されている。これら黒粒子221および白粒子222は、互いに異なる極性に帯電しており、本実施形態では、黒粒子221がプラス(正)に帯電し、白粒子222がマイナス(負)に帯電している。
【0042】
すなわち、表示パネル21の表示基板に形成されたセグメント電極201がローレベル電位(L電位)であり、表示パネル21の透明基板に形成された共通電極202がハイレベル電位(H電位)の場合、その電位差によって共通電極202からセグメント電極201に向かう電界が発生し、正に帯電した黒粒子221がセグメント電極201側に移動するとともに、負に帯電した白粒子222が共通電極202側に移動する。
【0043】
この白色表示の場合とは逆に、セグメント電極201をハイレベル電位(H電位)とし、共通電極202をローレベル電位(L電位)に切り替えた場合、電界の向きが逆転し、表示パネル21における表示は黒色となる。図1の例では、「AM10:00」の各文字およびコロンを構成するセグメントがそれぞれ、黒色で表示されている。
【0044】
また、黒粒子221、白粒子222の移動量を電圧の印加時間や印加電圧などに応じて調整することにより、黒と白との間の色階調の中間色表示も可能となっている。
なお、電界印加が停止されると、黒粒子221、白粒子222の移動も止まり、そのままの表示色が保持される。
【0045】
制御回路基板25(図3)には、図示を省略するが、時計全体を制御する制御用コントローラと、表示パネル21のドライバICと、計時部を構成する水晶発振回路素子と、ボタンスイッチ13の入力検知回路部などが実装されている。
図7に、ボタンスイッチ13と入力検知回路部250との接続を簡略に示した。すなわち、ボタンスイッチ13が図7中の矢印左方向に加圧されることにより、制御回路基板25の側面に設けられた板ばね251の先端部が制御回路基板25側面の接点252に導通し、この板ばね251を介して入力検知回路部250に電流が流れる。これによってボタンスイッチ13のオン状態が検知され、これに基づいて画面モードの切換えや時刻修正が行われる。一方、ボタンスイッチ13が加圧されずに板ばね251が接点252から離れると、ボタンスイッチ13のオフ状態が検知され、これに基づいて時計が動作する。
なお、この制御回路基板25には、図示しない電源部が連設されており、この電源部に設けられた電池から制御回路基板25に電力が供給されている。
【0046】
図8および図9は、ベゼル3側から示した時計の模式図であり、本実施形態の時計におけるスイッチ操作を説明するための図である。
図8に示す状態では、ケース1のボタンスイッチ13の位置にベゼル3の凹部33が対向しており、凹部33内に軸部131の端部が挿入されることにより、ボタンスイッチ13はフリーの状態にある。すなわち、ボタンスイッチ13は加圧されておらず、オフの状態となっている。
ここで、この図8の状態にするには、ベゼル3とケース1とを相対回転させ、具体的にはベゼル3をケース1に対して反時計回り(図8中、矢印方向)に回転させる。すると、ベゼル3の突起32が溝122の一端部に係止され、それ以上の回転が規制されるので、図8のように溝122の一端部内周側にあるボタンスイッチ13と、突起32の内周側にある凹部33との位置が合い、ボタンスイッチ13は確実にオフされる。
【0047】
図9は、図8の状態から、ベゼル3をケース1に対して時計回り(図9中、矢印方向)に回転させた状態を示す。この図9の状態では、溝122の両端部の間の中間部に突起32が位置し、ボタンスイッチ13は、ベゼル3の裏面部によって加圧され、オンとなっている。
【0048】
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)環状の時計における操作スイッチの構造として、環状部材であるケース1とベゼル3とを相対回転させ、ボタンスイッチ13とスイッチ切換手段としての凹部33との相対位置が変わることによって、ボタンスイッチ13の切換操作を可能に構成した。これにより、装着された際の時計の姿勢に関わらず、また、装着中に時計が腕の周りを回転しても、常に、ケース1とベゼル3とを相対回転させる同じ取扱い方法でボタンスイッチ13の切換操作を行うことができる。すなわち、ボタンスイッチ13の位置には関係なくスイッチの切換え操作を行うことができ、ボタンスイッチ13の位置を確認したり、ボタンスイッチ13が見える位置まで表示装置を回転させることなどを不要にできる。
これにより、操作性を大幅に向上させることができる。
【0049】
(2)また、ボタンスイッチ13はケース1とベゼル3との間に設けられ、外部に露出しないので、ボタンスイッチ13が誤って押されるなどの誤操作がない点でも、操作性を向上させることができる。
【0050】
(3)さらに、このようにケース1とベゼル3とを回転させる回転スイッチ構造により、ケース1の外部に露出する操作ボタンを無くすことができるので、外観も向上させることができる。
【0051】
(4)ケース1とベゼル3とにそれぞれ嵌合部121と嵌合部31とを形成したので、ケース1とベゼル3とを相対回転させるための連結手段を簡易に実現できる。
【0052】
(5)ボタンスイッチ13と凹部33とによって接触式のスイッチおよびスイッチ切換手段を簡易に設けることができる。
【0053】
(6)また、ベゼル3の突起32とケース1の溝122とによるストッパ機能により、ベゼル3とケース1とが回転された際に、ベゼル3の突起32がケース1の溝122の端部に係止されるので、ボタンスイッチ13が切り替わる位置にベゼル3とケース1との回転角度が決まる。これにより、ボタンスイッチ13の切換を確実に行うことができる。
【0054】
(7)ケース1とベゼル3とが嵌め合いで回転可能に構成されていても、ボタンスイッチ13にはスイッチ配設部123のパイプ123Bとの間に防水手段(パッキン133)が設けられることにより、ケース1内が水密とされているので、表示パネル21や制御回路基板25への浸水を防止できる。これにより、表示装置の信頼性を確保できる。
【0055】
(8)フランジ12に嵌合部121およびスイッチ配設部123が設けられるので、ケース1の外周部略全体を表示パネル21の表示領域として広い表示画面を実現できる。
【0056】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図10〜図13を参照して説明する。
図10は、本実施形態の時計のケース本体10の上面図を示す。本実施形態では、画面表示モード切替、時刻修正、各種設定等を行う2つのボタンスイッチ13A,13Bがケース1の溝122の両端部にそれぞれ設けられている。これらのボタンスイッチ13A,13Bの構造は、第1実施形態のボタンスイッチ13(図3)と同様であり、フランジ12に形成されたスイッチ配設部123にそれぞれコイルばね132およびパッキン133を介在させて軸部131が貫通している。
このように2つのボタンスイッチ13A,13Bが設けられている点を除いて、本実施形態の時計は第1実施形態の時計と同様に構成され、ケース1、ベゼル3、および表示部2を備えている(図1)。
【0057】
図11および図13は、ベゼル3側から示した本実施形態の時計の模式図であり、ボタンスイッチ13A,13Bの操作を説明するための図である。
図11は、ベゼル3をケース1に対して反時計回りに回転させ、ベゼル3の突起32が溝122の一端部に係止された状態であり、ボタンスイッチ13Aの位置にベゼル3の凹部33が対向している。このとき、凹部33内にボタンスイッチ13Aの軸部131の端部が挿入され、ボタンスイッチ13Aはオフとなっている。一方、溝122の他端部側に配置されたボタンスイッチ13Bは、ベゼル3の裏面部によって加圧され、オンとなっている。
【0058】
この図11の状態から、ベゼル3をケース1に対して時計回りに回転させ、図12のようにベゼル3の突起32が溝122の中間部に位置するとき、ボタン13A,13Bはいずれもベゼル3の裏面部によって加圧され、オンとなる。
さらに、図12の状態からベゼル3をケース1に対して時計回りに回転させ、図13のようにベゼル3の突起32が溝122の他端部に係止されると、ボタンスイッチ13Bの位置にベゼル3の凹部33が対向する。このとき、図11の場合とは逆に、ボタンスイッチ13Aはオンとなり、ボタンスイッチ13Bはオフとなる。
つまり、本実施形態では、ベゼル3とケース1とを時計回りまたは反時計回りに相対回転させることで、ボタンスイッチ13A,13Bのオンオフを交互に切り替えることができる。
【0059】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次の効果を奏する。
(9)2つのボタンスイッチ13A,13B間で凹部33が兼用され、ベゼル3を回転させた際の凹部33の移動によってこれらの各ボタンスイッチ13A,13Bを切換え可能となるので、ボタンスイッチ13A,13Bそれぞれにスイッチ切換手段を設けることを不要にできる。
【0060】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について図14〜図16を参照して説明する。
図14は、本実施形態の時計の概観斜視図であり、図15は、この時計の分解斜視図である。また、図16は、図14のXVI−XVI線断面図である。
前記各実施形態の時計は、ケース1とベゼル3とを備えていたが、本実施形態の時計は、2つの環状部材であるリング状のケース1A,1Bを備え、ベゼル3を備えていない。ケース1A,1Bの外周部にはそれぞれ表示部2A,2Bが設けられている。
【0061】
ケース1A,1Bは、前述したケース1と略同様に構成され、ケース1Aのフランジ12とケース1Bのフランジ12B(図16)とが嵌合することで互いに連結されている。
ここで、図16の断面図に示すように、一方のケース1Aのフランジ12には第1実施形態と同様にボタンスイッチ13が設けられているが、他方のケース1Bのフランジ12Bには、ボタンスイッチ等は設けられておらず、ケース1Aの嵌合部121の外周に嵌合する平面視円形状の嵌合部121Bが突設されている。嵌合部121,121B間には、パッキンP5が介装され、ケース1A,1Bは適切なトルクをもって相対回転可能とされている。
また、ケース1Bのフランジ12Bの周方向の一部には、ブロック状の突起32Bがケース1A側に向かって突設されるとともに、ケース1A側からケース1B側に窪むスイッチ切換手段としての凹部33Bが形成されている。
【0062】
すなわち、本実施形態のケース1Aの上面図は、図4と同様であり、ケース1Bの上面図は、図5(ベゼル3)と同様である。よって、ボタンスイッチ13の操作方法も、図8および図9に示したものと略同様に、ケース1A,1Bを相対回転させることにより、ボタンスイッチ13を入切する。
【0063】
なお、本実施形態のケース1A,1Bに加えて、第3の環状部材であるケースやベゼルを具備する時計も実現できる。この場合、各環状部材を互いに相対回転可能に連結し、ケースとケースとの間や、ケースとベゼルとの間にスイッチおよびスイッチ切換手段等を設ければよい。
【0064】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次の効果を奏する。
(10)ベゼル3(図1)などを設けなくても、ケース1Bをスイッチ切換操作と情報表示を行う部材として兼用でき、ケース1A,1Bの表示部2を合わせてより広い画像表示領域を実現できる。また、各表示部2における画像の表示および非表示を順次切り替えたり、各表示部2の表示を組み合わせて1つの画像を表示するなど様々な画像表現が可能となる。
【0065】
〔本発明の変形例〕
以上の実施形態において、本発明を具体的に説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形、改良が可能である。
【0066】
前記各実施形態における時計の操作スイッチは、ボタンスイッチと凹部とによる接触式スイッチとなっていたが、これに限らず、本発明における表示装置の操作スイッチとして、光センサ、磁気センサ等による非接触式センサを採用することも可能である。
例えば、第1実施形態において接触式スイッチに替えて光センサ式スイッチを採用する場合、ケース1およびベゼル3の一方に発光素子および受光素子の一方を設け、ケース1およびベゼル3の他方に発光素子および受光素子の他方を設ける。この光センサ式スイッチは、ベゼル3とケース1との相対回転により、発光素子からの光束を受光素子で受光した際と受光しない際とに入切される。
このような非接触式のスイッチでは、ケース1、ベゼル3間におけるスイッチ可動部が無いため、ボタンスイッチ13にOリングなどを設ける場合と比べて、スイッチの防水構造を簡易にできる。
【0067】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態であるリング状時計の外観斜視図。
【図2】前記リング状時計の分解斜視図。
【図3】図1のIII−III線断面図。
【図4】ケース本体の上面図。
【図5】ベゼルの裏面図。
【図6】表示パネルの電気泳動層を示す模式図。
【図7】ボタンスイッチと制御回路基板との接続を示す図。
【図8】前記実施形態におけるスイッチ操作を説明するための模式図。
【図9】前記実施形態におけるスイッチ操作を説明するための模式図。
【図10】本発明の第2実施形態のケース本体の上面図。
【図11】前記実施形態におけるスイッチ操作を説明するための模式図。
【図12】前記実施形態におけるスイッチ操作を説明するための模式図。
【図13】前記実施形態におけるスイッチ操作を説明するための模式図。
【図14】本発明の第3実施形態であるリング状時計の外観斜視図。
【図15】前記リング状時計の分解斜視図。
【図16】図14のXVI−XVI線断面図。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B・・・ケース、2,2A,2B・・・表示部、3・・・ベゼル、10・・・ケース本体、11・・・胴、12,12B・・・フランジ、13,13A,13B・・・ボタンスイッチ、15・・・裏蓋、16・・・カバーガラス、21・・・電気泳動表示パネル、31・・・嵌合部、32,32B・・・突起、33,33B・・・凹部、121,121B・・・嵌合部、122・・・溝、123・・・スイッチ配設部、131・・・軸部、133・・・パッキン(防水手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に表示部を有する環状の表示装置であって、
互いに相対回転可能に連結される複数の環状部材を備え、
前記表示部は、前記環状部材の少なくとも1つに設けられ、
前記環状部材の少なくとも1つは、隣合う前記環状部材との間であって周方向の少なくとも一箇所に、当該表示装置の動作を操作可能なスイッチを有し、
前記スイッチを有する環状部材に隣合う前記環状部材は、前記スイッチを有する環状部材に対して回転されることにより前記スイッチを切り替えるスイッチ切換手段を有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記各環状部材は、平面視円形状の嵌合部をそれぞれ有しこれら嵌合部の嵌め合いで互いに連結される
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表示装置において、
前記スイッチ切換手段は、前記環状部材に形成された凹部を有して構成され、
前記スイッチは、当該スイッチを有する前記環状部材に設けられ、かつ前記スイッチ切換手段を有する前記環状部材の側に付勢される軸部を有し、前記軸部の端部が前記凹部に挿入された際と、前記凹部以外の部分によって前記軸部が前記付勢された方向とは反対方向に加圧された際とに、入切される
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表示装置において、
前記スイッチおよび前記スイッチ切換手段の一方は、発光素子および受光素子の一方を有するとともに、前記スイッチおよび前記スイッチ切換手段の他方は、発光素子および受光素子の他方を有し、
前記スイッチは、発光素子からの光束を受光素子で受光した際と受光しない際とに、入切される
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の表示装置において、
前記スイッチを有する前記環状部材と前記スイッチ切換部を有する前記環状部材との一方には、その周方向に沿って円弧状の溝が刻設され、
前記スイッチを有する前記環状部材と前記スイッチ切換部を有する前記環状部材との他方には、前記溝に挿入され、かつ前記環状部材が所定方向に回転されて前記スイッチが切替られる位置で前記溝の端部に係止される突起が形成されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置において、
隣合う前記環状部材の間に設けられた2つの前記スイッチは、1つの前記スイッチ切換手段によって切り替えられ、
前記スイッチの一方は、前記環状部材が所定方向に回転されて前記溝の一端部に前記突起が係止される際に前記スイッチ切換手段によって切り替えられ、
前記スイッチの他方は、前記環状部材が所定方向と反対方向に回転されて前記溝の他端部に前記突起が係止される際に前記スイッチ切換手段によって切り替えられる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の表示装置において、
前記環状部材の少なくともいずれかは、略筒状の本体と、前記本体の外周部に設けられるカバーガラスと、を有して前記表示部のケースとして構成され、
前記本体は、前記スイッチが配設されるスイッチ配設部を有し、
前記スイッチは、前記スイッチ配設部との間に防水手段を有し、前記ケース内は水密とされている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の表示装置において、
前記環状部材の少なくともいずれかは、略筒状の本体と、前記本体の外周部に設けられるカバーガラスと、を有して前記表示部のケースとして構成され、
前記本体は、前記表示部が外周側に配設される筒状の胴と、この胴の周方向に沿った両端部にそれぞれ一体または別体で設けられるフランジとを有し、
前記フランジの少なくとも一方は、前記嵌合部および前記スイッチ配設部をそれぞれ有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の表示装置において、
前記各環状部材には、前記表示部がそれぞれ設けられる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の表示装置において、
前記表示体は、電気泳動表示ディスプレイとされている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の表示装置において、
計時部を備える時計とされ、
前記表示部には、前記計時部による計時情報が表示される
ことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−83009(P2008−83009A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266642(P2006−266642)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】