表示装置
【課題】消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、周囲が明るい環境であっても画面が明るく見えるようにする。
【解決手段】アドバンスト輝度レベル設定部2では、APLなどの映像特徴量から、バックライト光源の発光輝度レベルを設定するための参照用の発光輝度レベルを設定し、その発光輝度レベルに連動させて視覚上の輝度を保つためのゲインを設定してトーンカーブを生成する。ジオメトリック補正部4では、映像のヒストグラムに基づいて生成した映像について、ジオメトリック平均値を求め、そのジオメトリック平均値に基づいて補正用のトーンカーブを生成する。また、バックライトエンハンス部9では、ジオメトリック平均値に基づいて、明るい画面にてバックライトの発光輝度を増大させ、同時に映像信号の黒レベルを補正して低階調のコントラス感を維持する。
【解決手段】アドバンスト輝度レベル設定部2では、APLなどの映像特徴量から、バックライト光源の発光輝度レベルを設定するための参照用の発光輝度レベルを設定し、その発光輝度レベルに連動させて視覚上の輝度を保つためのゲインを設定してトーンカーブを生成する。ジオメトリック補正部4では、映像のヒストグラムに基づいて生成した映像について、ジオメトリック平均値を求め、そのジオメトリック平均値に基づいて補正用のトーンカーブを生成する。また、バックライトエンハンス部9では、ジオメトリック平均値に基づいて、明るい画面にてバックライトの発光輝度を増大させ、同時に映像信号の黒レベルを補正して低階調のコントラス感を維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、より詳細には、映像信号の特徴量に連動させて表示パネルを照明する光源の発光輝度と、映像信号のトーンカーブとを調整する機能を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビなどの液晶パネルを用いた表示装置においては、映像品位を保ちつつ消費電力を低減させるための対策として、液晶パネルを照射するバックライトの発光輝度と、映像信号のゲインとを連動して設定する機能をもつものが知られている。
例えば、映像信号の特徴量を検出して、低いダイナミックレンジの映像(暗い映像)の場合にはバックライトの発光輝度を低下させるとともに、バックライトの発光輝度の低下を補償するために映像のゲインを上げることによって、バックライトの消費電力を低下させつつ、表示画面の明るさを一定に保つようにしている。
【0003】
このような映像信号の特徴量に応じたバックライトと映像ゲインの調整技術に関し、例えば、特許文献1には、映像信号のピークレベルを検出し、明るいシーンでは白ピーク輝度を向上させるようにバックライトを制御する一方、暗いシーンでは、映像振幅ゲインを調整することでピーク輝度を向上させるようにした表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 03/075257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなこのようなバックライトの発光輝度と映像信号とを連動して制御する機能を備えた表示装置では、周囲が非常に明るい環境にあり、明るい映像が表示されてバックライトの発光輝度レベルを低下させたとき、人間の目に暗くみえることがあった。例えば、表示装置を販売する店頭などでは、一般の家庭などの視聴環境よりは各段に明るい環境であり、このような環境では、省電力のためのバックライトを低下させたとき、画面輝度を維持するために映像信号にゲインをかけて増幅したとしても、明るい画面が暗くみえて品位が低下したように感じることがあった。
【0006】
また、上記のようなバックライトの発光輝度と映像信号とを連動して制御する表示装置では、発光輝度と映像信号を制御するための映像特徴量としてAPL(Average Picture Level)を用いることが一般的である。しかしながら、APLは信号輝度の平均レベルであるため、液晶パネルの表示輝度の平均レベルとは異なるものである。APLを用いて映像信号の輝度のゲインを決定すると、中間輝度で暗く感じる場合があることが知られている。
【0007】
このような場合に、従来の制御機能では、バックライトの発光輝度の低下に応じて映像のダイナミックレンジが限界まで引き伸ばされるため、他の映像処理機能を使用することができない。その結果、入力映像信号の明るさを維持することが限界となって十分な映像処理を行うことができず、視聴者に対して上記の連動機能を備えた表示装置は画面が暗い、という印象を与えていた。ここで単純に映像信号のゲインを大きくするのみでは、例えば高階調の白がつぶれて表現できなくなり、映像が破綻するなどの問題が生じる。
【0008】
このため、バックライトの発光輝度と映像信号とを連動して制御する場合、明るい環境下であっても、消費電力を増やすことなくかつ映像を破綻させることなく、視聴者に対してさらに画面を明るく見せたい、という課題があった。特に人間の視覚特性に合致した映像特徴量を用いて制御を行うことで、人間が暗く感じないような輝度及び信号制御を行うことが好ましい。
【0009】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、液晶パネルを照射する光源とを有し、光源の発光輝度と、映像信号のゲインとを連動して設定する表示装置において、消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、周囲が明るい環境であっても画面が明るく見えるようにした表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、該液晶パネルを照射する光源とを備えた表示装置において、入力映像信号の画素値の対数の平均を累乗してジオメトリック平均値を算出するジオメトリック平均計算部を有し、該ジオメトリック平均計算部が計算したジオメトリック平均値に基づいて前記光源の発光輝度を動的に制御する光源輝度制御部とを有することを特徴としたものである。
【0011】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記入力映像信号の特徴量に基づいて前記光源の発光輝度の制御に使用する発光輝度レベルを選択する輝度レベル選択部を有し、前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを前記ジオメトリック平均計算部が計算したジオメトリック平均値に基づいて補正することで、前記光源の発光輝度を動的に制御することを特徴としたものである。
【0012】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記光源輝度制御部は、予め定められた前記ジオメトリック平均値と前記光源の発光輝度を補正するための補正値との関係に基づいて前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを補正するものであり、前記ジオメトリック平均値と前記補正値との関係は、前記ジオメトリック平均値が所定値より大きいときに前記発光輝度を増大させ、前記ジオメトリック平均値が前記所定値以下のときには前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを維持する関係であることを特徴としたものである。
【0013】
第4の技術手段は、第2または第3の技術手段において、前記光源の発光輝度に連動させて映像信号に適用するトーンカーブを生成するためのトーンカーブ生成部と、前記ジオメトリック平均値に基づく前記光源発光輝度の補正値に基づいて決定された範囲の低階調領域の映像信号を、階調ゼロの黒の階調値に変換するための黒レベル補正部とを有し、該黒レベル補正部で生成された黒補正用データによって、前記トーンカーブ生成部で生成したトーンカーブを補正することを特徴としたものである。
【0014】
第5の技術手段は、第4の技術手段において、前記ジオメトリック平均値に基づいて前記トーンカーブ生成部で生成されたトーンカーブを補正するための補正用トーンカーブを生成する補正用トーンカーブ生成部とを有し、該補正用トーンカーブ生成部は、予め定められたジオメトリック平均値とゲインとの関係に基づいて、該ジオメトリック平均値計算部で計算されたジオメトリック平均値に対応するゲインを計算し、計算したゲインを用いてトーンカーブを生成するものであり、前記補正用トーンカーブ生成部が生成するトーンカーブは、入力階調を横軸、出力階調を縦軸にとったときに上に凸の形状を有し、中間階調域に凸の頂部を有する凸形状のトーカーブであって、該凸形状のトーンカーブは、低階調の特定領域では前記ゲイン計算部が計算したゲインを適用し、高階調になるに従って前記適用したゲインを低減させて生成した凸形状のトーンカーブに対し、低階調部分の特定領域のゲインを1とするように修正したトーンカーブであることを特徴としたものである。
【0015】
第6の技術手段は、第5の技術手段において、前記予め定められたジオメトリック平均値とゲインとの関係は、ジオメトリック平均値が特定の値以下の場合には、1より大きいゲインを設定し、ジオメトリック平均値が前記特定の値より大きい場合には、ゲインを1とする関係であることを特徴としたものである。
【0016】
第7の技術手段は、第4〜第6のいずれか1の技術手段において、入力映像信号の特徴量に対する前記光源の発光輝度を規定した輝度制御特性に基づいて、参照用の発光輝度レベルを設定する輝度レベル設定部を有し、前記輝度レベル選択部は、前記入力映像信号のヒストグラムを用い、前記液晶パネルに設定した目標コントラストのときに表示可能な映像輝度範囲のうち、前記光源の発光輝度レベルに応じて変化するヒストグラム上の表現不可能な映像の頻度を評価し、該評価した値に基づいて、前記光源の発光輝度の制御に使用する発光輝度レベルを選択し、前記トーンカーブ生成部は、該輝度レベル選択部で選択された発光輝度レベルと、前記輝度レベル設定部から出力された参照用の発光輝度レベルとを用いて前記トーンカーブに適用するゲインを決定し、該決定したゲインを低階調部分に適用するとともに、前記決定したゲインより小さいゲインを高階調部分に適用したトーンカーブを生成することを特徴としたものである。
【0017】
第8の技術手段は、第7の技術手段において、前記輝度レベル選択部は、前記ヒストグラムにおいて、前記目標コントラストのときに表示可能な映像輝度範囲のうち、前記光源の特定の発光輝度レベルにおいて表現できない映像輝度範囲の画像の頻度に所定の重み係数を乗算して評価し、選択可能な前記光源の発光輝度レベルの全てについて前記評価を実行し、前記評価によって得られた評価値が最も低い発光輝度レベルを、前記輝度レベル設定部で設定された前記参照用の発光輝度レベルを超えない範囲で選択することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、該液晶パネルを照射する光源とを有し、前記光源の発光輝度と、映像信号のゲインとを連動して設定する表示装置において、消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、周囲が明るい環境であっても画面が明るく見えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】CRが3000と6000の液晶パネルについて、入力階調レベル(映像信号レベル)と液晶パネル上での輝度値との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施形態に係る表示装置のシステム構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の表示装置におけるディストーションモジュールで実行される発光輝度レベル選択処理の一例を説明するための図である。
【図4】図2の表示装置におけるアドバンスト輝度変調処理の具体例を説明するための図である。
【図5】選択対象の一つである発光輝度レベル100%のときの映像輝度範囲Cを示す図である。
【図6】選択対象の一つである発光輝度レベル70%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図である。
【図7】選択対象の一つである発光輝度レベル50%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図である。
【図8】ゲイン設定に基づき生成されるトーンカーブの例を示す図である。
【図9】人間の視細胞の輝度に対する応答曲線を示す図である。
【図10】ゲイン計算部で計算するゲインについて説明するための図で、GAveとゲインとの関係を示すものである。
【図11】ジオメトリック補正部のトーンカーブデザイン部で生成するトーンカーブの一例を示す図である。
【図12】低階調リニア化処理部で修正するトーンカーブを示す図である。
【図13】バックライトエンハンス部のさらに具体的な構成例を示す図である。
【図14】BLゲイン計算部でバックライトゲインの計算に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図15】バックライトエンハンス部の黒レベル補正部で生成されたLUTの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の表示装置に係る好適な実施の形態について説明する。以下に説明する本発明に係る実施形態は、光源としてのバックライトを備えた表示装置において、入力映像信号の映像特徴量に応じて入力映像信号の増幅の度合い(ゲイン)を調整し、そのゲイン従ってトーンカーブを生成するもので、このときに、目標コントラスト(ターゲットCR)を設定し、バックライト光源の発光輝度の制御と、ゲインの制御によりそのターゲットCRに近づけるように映像表現を行う。このような映像信号とバックライトの輝度変調処理を本明細書ではアドバンスト輝度変調処理とする。
【0021】
アドバンスト輝度変調処理では、映像特徴量からバックライト輝度を低減させるための発光輝度レベルを求める。また、APLなどの映像特徴量から、バックライト光源の発光輝度レベルを設定するための参照用の発光輝度レベルを設定する。参照用の発光輝度レベルと、バックライト輝度を低減させるための発光輝度レベルと用いて、視覚上の輝度を保つためのゲインを設定し、そのゲインに基づいてトーンカーブを生成する。
【0022】
一方、映像特徴量(ここではヒストグラム)に基づいて生成した映像について、ジオメトリック平均値を求め、そのジオメトリック平均値に基づいてゲインを計算し、計算したゲインに基づいて補正用のトーンカーブを生成する。
さらに映像特徴量から求めたジオメトリック平均値を用いてバックライトのゲインを計算し、アドバンスト輝度変調処理により得られた発光輝度レベルをさらに補正して、最終的にバックライト光源を制御するための発光輝度レベルを出力する。また、同時に上記のジオメトリック平均に基づいて計算したバックライトゲインの値を使用して、映像信号の黒レベルを補正するためのトーンカーブ(黒補正用トーンカーブ)を生成する。
そして、アドバンスト輝度変調処理により得られるトーンカーブに対して、ジオメトリック平均値に基づくゲインにより生成された補正用トーンカーブと、バックライトゲインに基づいて生成された黒補正用トーンカーブとを適用して補正することで、入力映像信号に適用するトーンカーブを得る。
【0023】
ジオメトリック平均値は、人間の感覚的な量に近い映像特徴量であり、これを利用して映像信号に適用するトーンカーブを補正することで、周囲環境が明るい場合にも消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、画面がさらに明るく見るようにすることができる。
【0024】
<本発明に係る輝度変調処理の概要>
表示装置から発せられる光量は、表示する映像信号のレベルを忠実に再現するのが理想である。つまり、黒画面を表示する場合、画面から発せられる光量は理想的には0でなければならない。しかし、現実の液晶表示装置では、若干の光漏れがあり、黒画面を表示する場合にも黒ではなくグレー表示となる。
【0025】
表示装置の重要な性能の一つとしてコントラスト比(以下CRともいう)がある。表示装置において、CRは表示パネル上の最大輝度と最小輝度の比である。液晶表示装置の場合、最大輝度は光源の最大発光輝度で決まり、最小輝度は黒表示時の光漏れ量によって決まる。よって、光源の発光輝度が一定の場合、同一の液晶パネルにおいてコントラスト比は一定となる。
【0026】
図1は、CRが3000と6000の液晶パネルについて、入力階調(映像信号レベル)と液晶パネル上での輝度値との関係を示すグラフである。最大輝度は共に同じ450cd/m2であるが、入力階調(画素値)0での液晶パネル上の表示輝度(最小輝度)はCR3000の場合に0.15cd/m2、CR6000の場合に0.075cd/m2となり、2倍の差がある。
【0027】
ここで、CR3000の液晶パネル使用時に光源の発光輝度を50%まで下げるとともにゲイン設定で入力映像信号を所定量増幅させると、入力映像信号の画素値と液晶パネルの表示輝度値との関係は、図1において点線で示すような関係となり、画素値0〜187(γ=2.2)においてはCR6000の液晶パネルに近い輝度表現をさせることが可能になる。しかしながら、画素値187より大きい映像は階調表現できず、いわゆる白つぶれを起こすことになる。従って、入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度の調節と、ゲイン設定を行う必要がある。
【0028】
例えば、入力映像信号の輝度のヒストグラムが画素値187以下の輝度分布を示す場合に、上述の図1で示すようにバックライトの輝度を50%まで下げるとともにゲイン設定で所定入力映像信号を所定量増幅させるような制御を行うようにすればよい。このように入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度の制御及びゲイン設定を行うことにより、コントラスト感を高めることができると同時にバックライトの発光輝度を下げることによる省電力化を図ることが可能になる。
【0029】
上記では入力映像信号の輝度のヒストグラムが画素値187以下の輝度分布を示す場合を例に挙げて説明したが、上記の例以外でも、例えば、映像中の白部分が極めて少ない場合には、白部分の重視度を下げ、黒表現の向上を同様にして図ることができる。このとき、重視しない部分の白つぶれは無視してもよいし、ターゲットCRを実現させるゲイン設定によっても白つぶれが緩和できるように、白側領域でのゲインを決めるようにしてもよい。
【0030】
本発明に係る実施形態では、入力映像信号の映像特徴量に応じて入力映像信号の増幅の度合い(ゲイン)を調整する。このときに、目標コントラスト(ターゲットCR)を設定し、バックライト光源の発光輝度の制御と、ゲインの制御によりそのターゲットCRに近づけるように映像表現を行う。ここでは、APLなどの映像特徴量から、バックライト光源の発光輝度レベルを設定するための参照用の発光輝度レベルを設定する。そして参照用の発光輝度レベルと映像ヒストグラムとを用いてバックライトの発光輝度レベルを決定するともに、その発光輝度レベルに連動させて視覚上の輝度を保つためのゲインを設定し、そのゲインに基づいてトーンカーブを生成する。
【0031】
さらに映像特徴量(ここではヒストグラム)に基づいて生成した映像について、ジオメトリック平均値を求め、そのジオメトリック平均値に基づいて映像信号を増幅するためのゲインを計算し、そのゲインに基づいて中間階調を引き上げるような補正用トーンカーブを生成する。またこれとは別に、上記のジオメトリック平均値に基づいてバックライトゲインを計算し、そのバックライトゲインに基づいてバックライトの発光輝度レベルを補正する。特にここでは、明るい環境で明るい画面が暗くみえないように、明るい画面のときに発光輝度レベルを増大させる。そして、このときに低階調の映像のコントラスト感を維持するために、バックライトゲインに基づいて黒補正用のトーンカーブを生成する。
そしてこれら補正用トーンカーブと、黒補正用トーカーブとにより、上記のバックライトの発光輝度レベルに連動するトーンカーブを補正して、映像信号に適用する。
【0032】
ジオメトリック平均値は、人間の感覚的な量に近い映像特徴量であり、これを利用して映像信号に適用するトーンカーブを補正することで、消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、画面がさらに明るく見えるようにすることができる。
以下に本発明に係る実施形態の構成及び動作をさらに具体的に説明する。
【0033】
<本発明に係る輝度変調処理を行う表示装置のシステム構成例>
図2は、本発明に係る表示装置のシステム構成例を示すブロック図である。図2で例示する表示装置は、ヒストグラム・APL検出部1、BL(バックライト)輝度レベル設定部2、アドバンスト輝度変調部3、ジオメトリック補正部4、画質補正部5、RGB調整部6、FRC(Frame Rate Control)部7、乗算器8、及びバックライトエンハンス部9を備える。
【0034】
アドバンスト輝度変調部3は、ディストーションモジュール31、テンポラリフィルタ32、トーンカーブデザイン部33を有する。また、ジオメトリック補正部4は、ジオメトリックAve計算部41、ゲイン計算部42、テンポラリフィルタ43、トーンカーブデザイン部44、及び低階調リニア化処理部45を備えている。
【0035】
アドバンスト輝度変調部3による処理は、APL等の特徴量に応じた動的な光源の発光輝度制御を行うだけでなく、その映像特徴量の所定の条件により決定される光源の参照用の発光輝度レベルBLrefに対しさらにコントラスト感を出すような発光輝度レベルBLreducedを選択する処理である。ここでは、発光輝度レベルBLreducedと、参照用の発光輝度レベルBLrefとに基づいて映像信号に適用するゲインが選択され、そのゲインに基づいたトーンカーブが生成される。
【0036】
また、ジオメトリック補正部4は、映像信号のヒストグラムを用いてその映像信号のジオメトリック平均値(以下、GAve、もしくはジオメトリックAveとする)を算出し、GAveに基づいてゲインを計算し、さらにそのゲインに基づいて映像信号を補正するための補正用トーンカーブを生成する。この補正用トーンカーブによって、アドバンスト輝度変調部3で生成されたトーンカーブを補正することで、さらに人間の視覚に適合した映像設定を行うことができる。
【0037】
さらに、バックライトエンハンス部9では、ジオメトリック計算部41で求めたジオメトリック平均値を用いてバックライトのゲインを計算し、アドバンスト輝度変調処理により得られた発光輝度レベルに適用して、最終的にバックライト光源を制御するための発光輝度レベルを出力する。また、同時にバックライトエンハンス部9では、ジオメトリック平均に基づいて計算したバックライトゲインの値を使用して、映像信号の黒レベルを補正するためのトーンカーブ(黒補正用トーンカーブ)を生成し、アドバンスト輝度変調部3で生成されたトーンカーブを補正する。
【0038】
まず、図2の表示装置における各ブロックの概要について説明する。
入力映像信号としては、例えば放送波として受信した映像信号を復調した信号、通信ネットワーク経由で受信した映像信号、内部記憶装置に記憶された映像信号を読み出した信号、各種レコーダや各種プレーヤやチューナ機器といった外部機器から受信した映像信号などが該当し、あるいはそれら映像信号に対して各種映像処理を施した後の映像信号が該当する。図2の表示装置は、このような映像信号のいずれかを取得可能なように構成しておけばよい。入力映像信号は、液晶パネルの解像度等に応じて、入力された映像信号(入力映像信号)が示す映像フレームの画素数、あるいはその映像フレームのアスペクト比を演算によりスケーリングしたものとすることができる。
【0039】
ヒストグラム・APL検出部1は、入力映像信号からYヒストグラムと、APLとを検出するブロックである。ヒストグラム検出においては、映像フレームを画素単位等に分割し、各画素の輝度値の発生頻度を表したヒストグラムを生成する。生成されたヒストグラムは、例えば輝度値(Y)0〜255のそれぞれに対して頻度の値を持つ。また、APL検出においては、映像信号の平均輝度レベルを映像フレーム毎に算出する。算出される値としては、全画面で黒の場合には0%を示す値となり、全画面で白の場合には100%を示す値となる。
【0040】
また、ヒストグラム・APL検出部1では、生成されたYヒストグラムから、アドバンスト輝度変調部3で使用する範囲を設定するヒストグラムストレッチを行うことができる。例えば、ディストーションモジュール31が最小値0〜最大値255で演算を実行するモジュールであり、且つ入力映像信号が元々最小値10〜最大値235の値をとるような信号であった場合を想定する。このような場合には、ディストーションモジュール31での演算に合わせるために、最小値10〜最大値235のそれぞれに対する頻度値を、最小値0〜最大値255のそれぞれに対する頻度値に当てはめるように引き伸ばしてストレッチする。
【0041】
画質補正部5は、ヒストグラム・APL検出部1から出力された映像信号に対し必要に応じてIP変換を行ったり、ノイズリダクションを施す。また、ユーザ設定等により、映像のコントラストや色味等を変更する。
RGB調整部6は、画質補正部5から出力された映像信号に対し、アドバンスト輝度変調部3とジオメトリック補正部4とバックライトエンハンス部9との処理に基づいて生成された補正用トーンカーブを適用して映像信号を変換する。トーンカーブは、映像信号の画像値を変換するために入力値に対する出力値を定めたもので、LUT(ルックアップテーブル)として生成されたデータである。RGB調整部6に入力されるトーンカーブは、アドバンスト輝度変調部3で生成されたトーンカーブを、ジオメトリック補正部4で生成したトーンカーブと、バックライトエンハンス部9で生成した黒補正用トーンカーブとで補正(乗算器8で乗算)して得たものである。
【0042】
RGB調整部6は、画質補正部5から出力された映像信号に対し、上述のトーンカーブで変換を行う処理の他、映像の絵作りのためのγ調整処理、WB調整処理、さらにはCT(色温度)等の調整も行うことができる。このようなRGB調整部6で実行される各処理は、映像信号のR,G,Bのそれぞれに対して独立して実行される。その際、トーンカーブによる変換処理、γ調整処理は、R,G,Bで同一のカーブによる演算がなされ、WB調整処理/CT調整処理についてはR,G,Bそれぞれ別個の特性のカーブによる演算がなされる。
RGB調整部6でトーンカーブを適用することで、アドバンスト輝度変調部3におけるバックライトの発光輝度レベルを低下させる制御に対して、ジオメトリック補正部4の補正と、バックライトエンハンス部9で生成した黒補正用トーンカーブとを加味した上で映像表現を行う。
【0043】
FRC部7は、フレームレートコンバータであり、RGB調整部6から出力された調整後の映像信号に対し、映像の動きベクトルを検出して補完映像を生成することによって、通常60Hzの表示周波数から120Hz、もしくはそれ以上の表示周波数に変換するものである。FRC部17から出力された映像信号は、液晶パネル駆動のための信号に変換され、液晶パネルに出力されて表示される。
【0044】
アドバンスト輝度変調部3のディストーションモジュール31は、ヒストグラム・APL検出部1から出力されたヒストグラムと、後述するBL輝度レベル設定部2で設定された参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値ともいう)BLrefとから、ゲインを決定するともに、バックライトエンハンス部9に出力するための発光輝度レベル(バックライト値ともいう)BLreducedを選択する。選択は、予め定められた複数の発光輝度レベルの中からBL輝度レベル設定部2で設定された参照用発光輝度レベルBLrefを超えない範囲で行う。また、ここでは、ターゲットCRをもつ液晶パネルにより近い表示映像を実現できるバックライト値BLreducedを選択する。ターゲットCR等のディストーションパラメータは、図示しないメインCPUから設定すればよい。ディストーションモジュール31は、本発明の輝度レベル選択部に相当するブロックである。
【0045】
テンポラリフィルタ32は、ディストーションモジュール31で選択された発光輝度レベルBLreducedが急激に変化した場合に生じる視覚上の違和感を防止するために設けられたものであり、発光輝度レベルBLreducedの変化量を時間的に緩慢なものにした後、実際に設定する発光輝度レベルBLreducedとして後段に出力する。ここではローパスフィルタが用いられる。また、緩慢な発光輝度レベルBLreducedの変化を施すと返って違和感を持つことがあるため、図示しないシーンチェンジ検出部を設け、シーンチェンジ検出信号により、テンポラリフィルタ32の値を変えて、比較的早い変化ができるようにしてもよい。
【0046】
BL輝度レベル設定部2は、本発明の輝度レベル設定部に相当するブロックで、ヒストグラム・APL検出部1から出力されたAPL及びヒストグラムなどの映像特徴量を参照して、バックライトの発光輝度レベルの最大値を決定する。このとき、図示しないメインCPUから出力されたOPC(Optical Picture Control;明るさセンサともいう)の値やユーザ設定値などをさらに参照して、上記発光輝度レベルの最大値を決めるようにしてもよい。例えば、APLが高い場合には、バックライトの発光輝度レベルの最大値を低い値とすることで、眩しさを感じない映像とすることができる。このバックライトの発光輝度レベルの最大値が、アドバンスト輝度変調部3で実行されるアドバンスト輝度変調の参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefとなる。
【0047】
参照用の発光輝度レベルBLrefを決定するための映像特徴量としては、上述のようにAPLやヒストグラムを用いることができ、実施形態に応じて使用する特徴量が選択される。ヒストグラムには、映像のピーク値(最大輝度値)や、最大輝度より小さい所定輝度の間に含まれる映像信号の割合などが使用される。本実施形態では、BLrefを決定するための映像特徴量としてAPLを使用するものとする。
【0048】
なお、ディストーションモジュール31での選択が、BL輝度レベル設定部2で設定された参照用発光輝度レベルBLrefを超えない範囲で行われることから、BL輝度レベル設定部2では、参照用発光輝度レベルBLrefとしてバックライトの発光輝度レベルの最大値が設定される。また、BL輝度レベル設定部2とディストーションモジュール31との間に図示しない他のテンポラリフィルタを設けてもよい。
【0049】
ディストーションモジュール31の後段のテンポラリフィルタ32から出力された発光輝度レベルBLreducedは、バックライトエンハンス部9に入力され、ジオメトリック補正部4から出力されたジオメトリック平均値に基づき生成されたバックライトゲインが乗算され、実際にバックライトを制御するための発光輝度レベルとして出力される。
バックライトエンハンス部9から出力された発光輝度レベルは、図示しない光源ユニットに送られて、バックライト発光輝度が制御される。光源ユニットは、LEDや蛍光管等で構成されるランプと、そのランプを駆動するランプ駆動回路とを有し、液晶パネルを背面や側面から照射する光源(バックライト光源)を構成する。本実施形態に係る輝度変調処理においては、このランプが発光輝度制御の対象となる。
【0050】
BL輝度レベル設定部で設定される発光輝度レベルBLref、ディストーションモジュール31で生成される発光輝度レベルBLreduced、及びバックライトエンハンス部9から出力される発光輝度レベルは、例えばデューティ信号である。光源ユニットでは、バックライトエンハンス部9から出力された発光輝度レベルに従って、ランプ駆動回路(例えばインバータ回路)で実際に調光するための信号(例えばパルス幅変調等の駆動に適した信号)に変換し、バックライトの発光輝度を制御する。ランプとしては、例えばLED(Light Emitting Diode)を適用することができ、あるいは従来の蛍光管やLEDと蛍光管の組み合わせで構成されるものを採用してもよく、同時にそれに対応したランプ駆動回路を設けておけばよい。
【0051】
トーンカーブデザイン部33は、本発明のトーンカーブ生成部に相当するブロックで、BL輝度レベル設定部2で決定された参照用発光輝度レベルBLrefとディストーションモジュール5によって選択された発光輝度レベルBLreducedとに基づき、映像信号のゲインを決定し、さらにそのゲインに基づいて映像信号に適用するためのトーンカーブを生成する。なお、図2の例ではBLreducedはテンポラリフィルタ32を通過したレベルを用いている。
参照用発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefと選択された発光輝度レベル(バックライト値)BLreducedが同じであれば、映像信号の輝度レベルを変更する必要はなく、ゲインは1である。また、参照用発光輝度レベルよりも選択された発光輝度レベルが低い場合は、その値に応じて、映像信号の輝度レベルを上げる方向にゲイン設定を行う。ゲイン設定に基づくトーンカーブの具体的な生成処理については後述する。
【0052】
ジオメトリックAve計算部(ジオメトリック平均値計算部)41は、ヒストグラム・APL検出部1で検出された映像信号の特徴量であるヒストグラムに基づいて、所定の演算式に基づいてジオメトリック平均値(GAve)を計算する。ジオメトリックAve計算部41から出力されたGAveの値は、ジオメトリック補正部4のゲイン計算部42と、バックライトエンハンス部9とに出力される。
ジオメトリック補正部4のゲイン計算部42では、GAveの値に基づいてゲインが計算される。計算されたゲインは、テンポラリフィルタ43によって急激な変動が緩和され、トーンカーブデザイン部44にて補正用のトーンカーブの基礎とするものが生成される。トーンカーブデザイン部44は、本発明の補正用トーンカーブ生成部に相当する。
【0053】
低階調リニア化処理部45では、トーンカーブデザイン部44で生成したトーンカーブの低階調をリニアすることで、低輝度領域についてゲインを付与した場合に生じるノイズの増大や黒浮き量の増大を抑えるようにする。このリニア領域の大きさは、GAveの値に応じて変化させる。低階調リニア化処理部45の処理によって、アドバンスト輝度変調部3から出力されたトーンカーブを補正するための補正用トーンカーブが得られる。
【0054】
バックライトエンハンス部9は、本発明の光源輝度制御部に相当するブロックで、ジオメトリック計算部41で求めたジオメトリック平均値を用いてバックライトのゲインを計算し、アドバンスト輝度変調処理により得られた発光輝度レベルに適用して、最終的にバックライト光源を制御するための発光輝度レベルを出力する。バックライトゲインは、ジオメトリック平均値が所定値より大きいときにバックライトの発光輝度を増大させ、ジオメトリック平均値が所定値以下のときにはアドバンスト輝度変調処理により選択した発光輝度レベルを維持するように設定される。これにより、明るい画面においては、バックライトの発光輝度レベルが増大して明るい環境下であっても明るい映像を見ることができる。
【0055】
また、同時にバックライトエンハンス部9では、ジオメトリック平均値に基づいて計算したバックライトゲインの値を使用して、映像信号の黒レベルを補正するためのトーンカーブ(黒補正用トーンカーブ)を生成し、アドバンスト輝度変調部3で生成されたトーンカーブを補正する。黒補正用トーンカーブは、アドバンスト輝度変調処理によって低下させた発光輝度レベルを、再度ジオメトリック平均値に応じてゲインをかけてバックライトを明るくするときに、黒浮きを防いでコントラスト感を保つために生成するもので、主に入力信号の特定の範囲低階調部分の出力をゼロ(黒)とするトーンカーブとして生成される。
【0056】
乗算器8は、アドバンスト輝度変調部3から出力されたトーンカーブに対して、ジオメトリック補正部4から出力された補正用トーンカーブと、バックライトエンハンス部9から出力された黒補正用トーンカーブとを乗算することで、補正されたトーンカーブを得る。つまり、アドバンスト輝度変調部3から出力されたトーンカーブの各画像ごとの出力値に対して、ジオメトリック補正部4から出力された補正用トーンカーブにおけるゲイン1からの変位分の値を乗算器8で乗算し、さらにバックライトエンハンス部9から出力された黒補正用トーンカーブにおけるゲイン1からの変位分の値を乗算器8で乗算し、最終的にRGB調整部6で映像信号に適用するトーンカーブを生成する。RGB調整部6では、画質補正部5から出力された映像信号に対して、乗算器8から出力されたトーンカーブを適用して変換を行う。
【0057】
<本発明に係る輝度変調処理を実行する主要ブロックの説明>
図2の表示装置における主要ブロックとして、BL輝度レベル設定部2、トーンカーブデザイン部33、ジオメトリック補正部4、バックライトエンハンス部9をさらに詳細に説明する。
【0058】
<<BL輝度レベル設定部2>>
BL輝度レベル設定部2には、ヒストグラム・APL検出部1で検出された映像信号のAPLが入力される。このときに、周囲の明るさ(周囲の照度)を測定する図示しない明るさセンサの検出情報に基づく制御信号、及び液晶パネルの明るさを設定するユーザ設定に基づく制御信号を入力させて、これらを用いてさらにバックライト発光輝度を変化させることができる。
映像特徴量として、映像信号を仮に伸張したときに表現できない頻度、あるいは映像信号の最小輝度及び最大輝度などの情報を使用する場合には、ヒストグラム・APL検出部1から、映像信号の画面単位(フレーム単位)で必要とするこれら情報(ヒストグラム情報とする)が入力される。また、APLとヒストグラム情報の両方を使用する場合には、それぞれの情報がBL輝度レベル設定部2に入力される。
【0059】
BL輝度レベル設定部2では、これらの制御信号とAPLとに基づいて、参照用発光輝度レベルBLrefを出力する。より具体的には、画面単位(フレーム単位)で変化する入力映像信号のAPLに応じて、バックライト輝度を動的に調整する方式を適用し、これにより得られた発光輝度レベルを参照用発光輝度レベルBLrefとして出力する。
【0060】
参照用発光輝度レベルBLrefの生成には、BL輝度レベル設定部2に保持されている輝度制御テーブル(ルックアップテーブル)が用いられる。輝度制御テーブルは、入力映像信号の映像特徴量(ここではAPL)に応じたバックライトの発光輝度レベルの関係、すなわち輝度制御特性を定めるものである。そして予め選択可能な複数の輝度制御テーブルを用意し、BL輝度レベル設定部2が備えるROM(Read Only Memory)等のテーブル格納メモリに保持させておく。
【0061】
液晶表示装置周囲の明るさを用いる場合、その明るさを検出するための明るさセンサには、例えばフォトダイオードが適用される。明るさセンサは、検出した周囲光に応じた直流電圧信号を生成し、図示しないメインCPUに出力する。メインCPUは、周囲光に応じた直流電圧信号に応じて輝度制御テーブルを選択する制御信号をBL輝度レベル設定部2に出力する。
【0062】
さらに、メインCPUは、液晶パネルの明るさを設定するユーザ設定に基づく制御信号として、輝度制御テーブルの輝度制御値を調整するための輝度調整係数を出力する。輝度調整係数は、ユーザ操作に応じて画面全体の明るさ設定を行うために使用される。例えば、表示装置が保持するメニュー画面には、画面の明るさ調整項目が設定されている。ユーザは、その設定項目を操作することによって、任意の画面明るさを設定することができる。メインCPUは、その明るさ設定を認識し、設定された明るさに従ってBL輝度レベル設定部2に輝度調整係数を出力する。
【0063】
BL輝度レベル設定部2では、明るさセンサの検出情報に従ってメインCPUから出力された制御信号により、テーブルNoを指定して輝度制御テーブルを選択する。若しくは選択する輝度制御テーブルを演算によって生成するようにしてもよい。そして、選択した輝度制御テーブルの輝度変換値に対して、ユーザ設定に基づく制御信号として得た輝度調整係数を乗算し、輝度制御テーブルの輝度制御特性の傾きを変化させ、最終的に、参照用発光輝度レベルBLrefの生成に使用する輝度制御テーブルを決定する。そして、BL輝度レベル設定部2は、決定した輝度制御テーブルの輝度制御特性を使用し、ヒストグラム・APL検出部1から出力されたAPLに応じて参照用発光輝度レベルBLrefを生成して出力する。
【0064】
輝度制御テーブルは、上述したように、入力映像信号の特徴量であるAPLとバックライトの発光輝度レベルとの関係を定めるものであって、例えば、APLが大きいときにはバックライトの発光輝度レベルが小さくなるように設定することで、高輝度の映像のときに眩しさを感じないようにバックライトの発光輝度を抑えるようにしている。輝度制御テーブルの輝度制御特性に従って、映像信号のAPLの変化に応じて発光輝度レベルBLrefが動的に変化する。本発明においては、輝度制御テーブルにおける輝度制御特性については特に限定されるものではなく、入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度レベルを動的に変化させる特性を規定するものを適宜適用することができる。
【0065】
このようにしてBL輝度レベル設定部2から出力された参照用発光輝度レベルBLrefは、トーンカーブデザイン部33に入力し、映像ゲインの演算に使用されるとともに、ディストーションモジュール31に入力して、ヒストグラムに応じた発光輝度レベルBLreducedの決定に使用される。
【0066】
図3は、図2の表示装置におけるディストーションモジュール31で実行される評価値の演算処理例を説明するための図である。図3において、h1は映像信号のYヒストグラムを示している。ここで横軸は映像信号の入力階調(映像信号としてとりうる画素値、又は映像信号レベルともいう)を示し、縦軸は各映像信号レベルの頻度を示している。
【0067】
このような映像のヒストグラムh1に対して、使用する液晶パネルにおいてバックライトの発光輝度レベルが100%の時に表示可能な映像輝度範囲をAとする。また、ターゲットCRの液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲をBとする。また、ディストーションモジュール31で選択可能な発光輝度レベルのうち、ある特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲をCとする。そして、ヒストグラムh1において、映像輝度範囲Cの両側で映像輝度範囲Bと重なる部分が、ディストーションとして数値化を行う部分であり、評価値算出部分である。この評価値算出部分のうち、低輝度部分をD1、高輝度部分をD2とする。
【0068】
評価値(ディストーション;Distortion)は、選択可能な発光輝度レベルに対して、頻度と重み付けによって下式(1)によって算出する。
Distortion=Σ{(映像輝度範囲D1+D2の頻度)×(距離重み)}・・・(1)
【0069】
重みとしては、評価値算出対象となる発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲Cから遠ざかる程大きくする距離重みを用いる。ここでは、低輝度部分D1の距離重みをE1、高輝度部分D2の距離重みをE2とする。従って、同じ頻度値であっても、表現できる範囲から遠いほうが、評価値は大きくなる。これは表現できる範囲から遠いほうが、映像として表現できない影響が大きいためである。頻度と重み付けによって算出した値はF1(低輝度部分)、F2(高輝度部分)である。評価値はF1とF2の面積(累計)を合計した値となる。
【0070】
ディストーションモジュール31では、各発光輝度レベルに対して評価値を算出し、後述する手法によって評価値とゲインとの関係を算出し、評価値とゲインとの関係から、バックライトに設定すべき発光輝度レベルBLreducedを選択する。発光輝度レベルBLreducedは、この後、テンポラリフィルタ32を介してトーンカーブデザイン部33に出力され、映像信号に適用するゲインが決定され、そのゲインに基づいてトーンカーブが生成される。上記の発光輝度レベルBLreducedを選択する際、ディストーションモジュール31では、BL輝度レベル設定部2で設定された発光輝度レベルBLrefを越えない範囲で、発光輝度レベルBLreducedを選択する。
【0071】
このような評価値の算出は、ディストーションモジュール31で、選択可能な発光輝度レベルの全てについて行うことが理想である。しかし、処理時間等の制限があるため、選択可能な発光輝度レベルの輝度制御範囲を均等に分け、例えば10%程度毎の発光輝度レベルについて算出すればよい。
【0072】
つまり、上式(1)の特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲をCとして、選択可能な発光輝度レベルを順次適用し、発光輝度レベルごとに評価値を算出する。そして算出した評価値とゲインとの関係を算出する。そして算出した評価値の中から、最も低い評価値をもつ発光輝度レベルを、選択した発光輝度レベルBLreducedとし、この値をテンポラリフィルタ32に出力してバックライトの調光制御に用いるとともに、トーンカーブデザイン部33に出力して、トーンカーブを生成するためのゲイン設定に用いる。
【0073】
ディストーションモジュール31での選択処理を、図4〜図7を参照して具体的な数値で説明する。図4は、本発明に係る表示装置における輝度変調処理の具体例を説明するための図で、映像ヒストグラムにおけるパネルCRとターゲットCRとの関係の一例を示す図である。ここでは、使用する液晶パネルのCR(パネルCR)が2000、ターゲットCRが3500、バックライトの輝度制御範囲が20〜100%で、バックライト輝度100%のときの液晶パネルの最大輝度は450cd/m2とする。また、図4における各アルファベット記号は図3に準拠する。
【0074】
この例において、使用する液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲Aは、450cd/m2〜0.225cd/m2である。また、目標とする液晶パネルの表示可能な映像輝度範囲Bは、450cd/m2〜0.128cd/m2である。そして、各映像信号レベル0〜255に対する頻度を映像輝度範囲Bに合わせるように割り付ける。この場合、映像輝度範囲Aと映像輝度範囲Bとの差は5デジット程度である。
【0075】
ヒストグラムh1において、映像輝度範囲Bと映像輝度範囲Aとの差の部分に映像があれば、バックライトの発光輝度レベルを下げることで、よりターゲットCRに近い輝度表現が可能になる。しかし、高輝度側にも映像が分布していると、バックライトの発光輝度レベルを下げることで表現できない部分が発生する。そこで、上述したように、評価値を算出して最適な発光輝度レベルBLreducedを求める。
【0076】
図5は、選択対象の一つである発光輝度レベル100%のときの映像輝度範囲Cを示す図、図6は、選択対象の一つである発光輝度レベル70%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図、図7は、選択対象の一つである発光輝度レベル50%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図である。図5〜図7における各アルファベット記号は図3に準拠する。
【0077】
図5で示したように、発光輝度レベルが100%を示すものである場合、低輝度部分の評価値F1には或る程度の値があり、高輝度部分の評価値F2には値がない。また、図6で示したように、発光輝度レベルを70%程度に下げた場合、低輝度部分の評価値F1及び高輝度部分の評価値F2ともに、低い値を持つ。また、図7で示したように、発光輝度レベルを50%程度に下げた場合、低輝度部分の評価値F1には値がなく、高輝度部分の評価値F2には大きな値を持つ。図5〜図7で例示した各発光輝度レベルでの評価値算出結果の面積(累積)を比較してみると、発光輝度レベルが70%のときが最も低い。従って、ディストーションモジュール5では発光輝度レベル70%を選択し、出力することになる。
【0078】
<<トーンカーブデザイン部33>>
トーンカーブデザイン部33では、トーンカーブを生成するために用いるゲインをまず計算する。
液晶パネルへ入力される画素値と液晶パネルでの表示輝度との関係を示す基本的なモデルは、下式(2)により示される。ここで、Yは液晶パネルでの表示輝度、BLはバックライトの発光輝度レベル(バックライトDUTY)、CV(Code Value)は液晶パネルへ入力される画素値である。また、この例では映像信号の階調は0〜255で量子化されているものとする。
Y=BL(CV/255)γ ・・・(2)
【0079】
トーンカーブデザイン部33は、ディストーションモジュール31で選択された発光輝度レベルBLreducedによってバックライトの発光輝度が低下したときに、画面上の輝度を上げるように映像ゲインを調整する。ゲインをかけた画素値をCVreduced とするとき、発光輝度レベルを低下させたときの画面の明るさ(液晶パネルでの表示輝度)は、BLreduced(CVreduced/255)γである。
一方で、参照用発光輝度レベルBLrefでバックライトを制御したときの画面の明るさは、BLref(CVref/255)γとなる。これらの値を等しくさせ、発光輝度レベルBLreducedによって生じるバックライトの発光輝度の低下分を補償するように、画素値を決定すればよい。つまり、トーンカーブデザイン部33は、下式(3)を満たすようなゲイン設定を行えばよい。
Y=BLreduced(CVreduced/255)γ=BLref(CVref/255)γ・・・(3)
【0080】
従って、ゲイン(Gとする)は、下式(4)のようになる。例えば、参照用発光輝度レベルBLrefが100%のときには、下式(5)のようになる。なお、BLrefとBLreducedとの関係をルックアップテーブルとしてトーンカーブデザイン部33のROMなどに格納しておき、下式(4)の演算処理を高速に実行させることが好ましい。
【0081】
G=CVreduced/CVref=(BLref/BLreduced)1/γ ・・・(4)
G=(1/BLreduced)1/γ ・・・(5)
【0082】
トーンカーブデザイン部33では、上記の処理によって計算したゲインに従って、映像信号に適用するためのトーンカーブを生成する。
図8は、ゲイン設定に基づき生成されるトーンカーブの例を示す図である。図8(A)に示すように、トーンカーブデザインブ33で計算された映像信号のゲイン設定が1.0の場合には、全輝度について線形のトーンカーブとすることで問題ない。
しかし、ゲインが1.0以上の場合、図8(B)に示すように、ゲインを一律に適用したトーンカーブとすると、高階調(高輝度)部分が100%(出力画素値255)の値でクリップされて、いわゆる白つぶれが発生する。
【0083】
アドバンスト輝度変調処理では、例えば、少数の白輝度部分の白つぶれを犠牲にして、黒部分をより引き締めるようにゲイン設定してもよいが、白つぶれを起こす階調範囲が広い場合においては、表示品位を大きく低下させることになってしまう。
そこで、低中輝度については、ゲイン設定に応じた信号伸張を行い、高輝度については、トーンカーブを非線形にすることによって、高輝度部分の階調性の低下を軽減することが好ましい(白つぶれを防ぐこと)。この手法は明るさと白つぶれのトレードオフの関係になる。非線形とする領域を狭めれば、正規の明るさを表現できる領域が増えるが、高輝度の階調性が低下する。逆に、非線形とする領域を広めれば正規の明るさを表現できる領域が減るが、高輝度の階調性が或る程度保たれることになる。実際には非線形とする輝度は、ゲイン設定による出力の例えば90%以上の部分や95%以上の部分とするなどして、白つぶれの影響のある部分のみ非線形とすればよい。
【0084】
図8(C)には、ゲイン設定が1.2の場合に90%以上の部分を非線形にするように補正したトーンカーブを示している。また、図8(D)には、ゲイン設定が1.6の場合に90%以上の部分を非線形にするように補正したトーンカーブを示している。
【0085】
また、上述のように、ゲイン設定が1.0を超えた場合に生じる高輝度部分の白つぶれを避けるためには、トーンカーブの高階調領域を一部非線形にする必要がある。
このときに、トーンカーブデザイン部33では、ゲイン設定に基づき単純に比例計算を行うと上記のような非線形のトーンカーブを算出することができない。従って、非線形のトーンカーブを得るために、ゲイン設定ごとにトーンカーブをメモリに格納するようにしてもよいし、もしくは、トーンカーブの線形部分はゲイン設定値から単純に比例計算し、図8(C),(D)に例示したように90%以上の部分については、補間等によって非線形部分を算出するようにしてもよい。
【0086】
<<ジオメトリック補正部>>
映像信号の平均輝度の種類として、上述のようなGAve(ジオメトリック平均値(Geometric Average))がある。GAveは、信号輝度の平均ではなく、液晶パネルの輝度の平均を視覚特性に合致した値として算出した輝度平均値である。具体的には、GAve.は、以下の式(6)で表される。
【0087】
【数1】
【0088】
上記式(6)において、δは計算を発散させえない微小な値であり、例えば、δ=0.00001である。また、Ylumは、パネル輝度を示すもので、0−1.0の値となる。Ylumは、(信号輝度/MAX輝度)^γで表すことができる。また、nは画素数、pixelsは全画素数を示している。このように、式(6)は、画像の画素の輝度値の対数の平均を累乗したものであり、言い換えれば輝度の相乗平均の値を示すものであり、その値は黒に大きく左右される。
【0089】
図9は、人間の視細胞の輝度に対する応答曲線を示す図である。図9に示すように、人間の視細胞の応答曲線は、対数を取った輝度の値(luminance(log cd/m2)に依存している。これは一般的には、ミカエリスメンテンの式(Mickaelis−Menten Equation)と呼ばれている。
GAveは、上記のように画素の輝度値の対数の平均を累乗したものであり、従って、GAveは、画像に対する目の反応(つまりどのくらい明るく見えるのか)を数値化したものであるといえる。つまり、GAveは、人間の感覚的な量に近いといえ、この値を映像特徴量として使用して補正用トーンカーブを生成し、アドバンス輝度変調部3で生成されたバックライト発光輝度に連動するトーンカーブを補正する。
【0090】
図2の構成において、ヒストグラム・APL検出部1で検出された映像信号のヒストグラムは、ジオメトリック補正部3に入力し、まずジオメトリックAve計算部41にて、GAveが計算される。
ここでは、上記式(6)に従って、以下の処理を行ってGAveが計算される。
(S1)ヒストグラムの各画素毎に正規化を行ってγ乗して、パネル輝度値を算出し、最小輝度値とパネル輝度値とを加算してその値のlog10の値をとる。
(S2)log10の結果を全ての画素について加算する。
(S3)加算した結果の平均のexpをとる。
【0091】
本発明に係る実施形態では、GAveの計算量が膨大にならないように、GAveをテーブル変換によって算出する。
ここでは、上記のS1(ヒストグラムの各画素毎に正規化を行ってγ乗し、パネル輝度値を算出し、最小輝度値とパネル輝度値とを加算してその値のlog10の値をとる処理)と、上記のS3(全ての画素について加算した結果の平均のexpをとる処理)とをテーブル変換によって実行する。つまり、式(6)の演算をその都度行うのではなく、S1とS3については、予め変換テーブルをメモリに記憶させておき、その変換テーブルを用いることによって所望の演算を行う。
【0092】
また、上記のS2に関しては、S1で得られた結果を全ての画素について加算する演算を行うが、ここではヒストグラムを使用して演算を行っているため、フレームごとの加算回数を256回で抑えることができ(256階調で量子化されている場合)、演算量を膨大とすることなくGAveを計算することができる。
なお、本発明に係る実施形態では、上記式(6)の演算をその都度行ってGAveを得るようにする手法の採用を排除するものではない。また、GAveは、ウィンドウサイズによってその値が変わるので、ウィンドウサイズに応じて演算領域を変化させるなどの調整を行うとよい。
【0093】
ジオメトリックAve計算部41から出力されたGAveの値は、ゲイン計算部42に入力され、GAveの値に基づいてゲインが計算される。
図10は、ゲイン計算部42で計算するゲインについて説明するための図で、GAveとゲインとの関係を示すものである。ゲイン計算部42は、図10に示すような関係に従って、ジオメトリックAve計算部41から出力されたGAveに基づいてゲインを計算する。この場合、GAveが低輝度から中輝度の範囲では、所定値(ここでは1<ゲイン≦2)のゲインが得られるものとし、高輝度領域では、ゲインは1、つまりゲインによる映像信号の補正は行われないものとする。
【0094】
1より大きいゲインを設定するGAveの低中輝度領域と、ゲインを1として設定する高輝度領域との境界をMAXポイントとする。MAXポイントは、ゲインによって映像信号の輝度を増加させる領域の上限であり、GAveの中間輝度領域に設定される。
このMAXポイントの位置は、表示装置の設計上の感応テスト等によって決定される。あるいはMAXポイントを設定するメニューを用意し、ユーザ操作によってMAXポイントを設定するようにしてもよい。また、MAXポイントから低輝度側の最大ゲインまでの特性は、視覚特性により決定される曲線に基づいて決められる。図10において、rは、ゲイン特性の設定可能範囲を示している。
【0095】
ゲイン計算部42で計算されたゲインの値は、次にテンポラリフィルタ43に入力される。テンポラリフィルタ43は、アドバンスト輝度変調部3に備えられたテンポラリフィルタ32と同様の目的で設けられるもので、入力映像信号の急激な変化による過度のゲイン変化を抑制するためのものである。ここでは、テンポラリフィルタ43として、アドバンスト輝度変調部3のテンポラリフィルタ32と同じ特性のローパスフィルタを使用することができる。
【0096】
トーンカーブデザイン部44は、テンポラリフィルタ43から出力されたゲインに従って、補正用トーンカーブのLUTを生成する。アドバンスト輝度変調部3のトーンカーブデザイン部33では、図8(C)もしくは図8(D)に示したように、折れ線状のトーンカーブを生成するようにしているが、ジオメトリック補正部4のトーンカーブデザイン部44では、図11に示すような上に凸の曲線状のトーンカーブを生成する。これは主に、中間輝度領域における画面の明るさを確保するためである。
【0097】
例えば、トーンカーブをリニアなものとして映像信号を補正してしまうと、映像信号の飽和が生じて映像が不自然になることがある。本実施形態では、ゲイン計算部42で計算されたゲインに基づいて補正用トーンカーブを生成し、映像信号の飽和を防ぎつつ、表示画像を明るく見せるようにしている。
ここでは、図11に示すように、入力階調の0階調から10%の階調までは、ゲイン計算部42で計算したゲインをそのまま反映させてリニアなトーンカーブとする。そして10%より大きい入力階調については、高階調になるに従って徐々にゲインを弱くしていくことで、図11に示すような上に凸のトーンカーブを生成する。
つまり、トーンカーブデザイン部44は、ゲイン計算部42で計算したゲインを用い、低階調の特定領域では計算したゲインを適用し、高階調になるに従って適用したゲインを低減させて凸形状のトーンカーブを生成する。
【0098】
ここで例えばAPLを特徴量として、上記のようなトーンカーブを生成することも考えられるが、APLはGAveに比較して人間の感覚と一致しないため、ユーザが本来より暗く感じる映像に限定して補正を行うことができない。このため、十分な輝度をもつ映像に対しても補正を行ってしまい、その場合には、過度に輝度を上げてしまって映像品位を悪化させることにもなりかねない。本実施形態のように、GAveに基づいてトーンカーブを生成すれば、人間が本来よりも暗く感じる映像について輝度を上げる補正を行うことができるようになり、より最適な補正が可能となる。
【0099】
<低階調リニア化処理部>
上記のジオメトリック補正は、主に暗いシーンでゲインが大きく持ち上がることが特徴となるが、ジオメトリック補正部4のトーンカーブデザイン部44で生成した上に凸状のトーンカーブをそのまま使用してしまうと、所謂黒浮きや中間調以下でのノイズが目立つという不具合が生じる。これらを解消するため、低階調リニア化処理部45では、トーンカーブデザイン部44で生成したトーンカーブに対して、低階調側の特定領域がリニアにとなるように生成し直す処理を行う。つまり、トーンカーブの低階調側の特定領域のゲインを1として、補正を行わないようにする。ここではゲインを1とするリニア領域は、一例として、入力階調の低階調側12%までの領域に設定することができる。
【0100】
図12は、低階調リニア化処理部で修正するトーンカーブを示す図で、図12(A)は、トーンカーブデザイン部44で生成したトーンカーブの一例を示す図、図12(B)は図12(A)のトーンカーブに対して低階調リニア化処理部45で低階調部分がリニアとなるように修正した状態を示す図である。
上に凸の形状を持つトーンカーブによる補正は、階調が0〜255の全領域でスムーズな特性となっている方が、視覚特性上自然である。しかしながら、低階調領域については、若干の輝度上昇であっても、ノイズの見え方や黒浮き量が大幅に変わる場合も多い。そのために、極めて階調(ここでは輝度)が低い領域については、補正を一切行わない方がよい場合もある。
【0101】
そこで、低階調リニア化処理部45では、GAveの値に応じて、補正を行わない領域(リニア領域)Lを設定する。リニア領域Lの入力階調の上限をニーポイントkとする。そして、このリニア領域Lの入力階調幅を映像の状態に応じて変化させるようにする。例えば、GAveが大きいときには、リニア領域Lを大きくとり(つまりニーポイントkを高階調側に設定することにより)、中間階調の映像を持ち上げつつノイズの上昇を抑えるようにする。また、GAveが小さい場合には、リニア領域Lを小さくとり(つまりニーポイントkを低階調側に設定することにより)、比較的階調が低めの中間階調領域も持ち上げるようにする。
【0102】
<<バックライトエンハンス部9>>
図13は、バックライトエンハンス部9のさらに具体的な構成例を示す図である。バックライトエンハンス部9には、ディストーションモジュール31で生成され、テンポラリフィルタ32を介して出力された発光輝度レベルBLreducedと、ジオメトリックAve計算部41で計算されたGAveとが入力される。
バックライトエンハンス部9は、BL(バックライト)ゲイン計算部91、テンポラリフィルタ92、乗算器93、及び黒レベル補正部94を有している。BLゲイン計算部91は、入力したGAveの値を用いてバックライトの発光輝度レベルを補正するためのバックライトゲインを生成する。
【0103】
図14は、BLゲイン計算部91でバックライトゲインの計算に用いるテーブルの一例を示す図である。表示装置では、図14に示すようなGAveとバックライトゲイン(BL Gain)との関係を規定するテーブルを所定の記憶手段に記憶しておき、BLゲイン計算部91は、ジオメトリックAve計算部41から出力されたGAveに基づいて、上記テーブルを参照し、GAveに応じたバックライトゲインの値を得る。
図14に示すように、バックライトゲインの値は、GAveが低い(画面が暗い)領域では1.0、つまりゲインをかけない値とし、GAveが高い(画面が明るい)領域では、バックライトゲインを例えば2.0として、バックライトの光源輝度を増大させる値とする。これにより、より明るい環境下で明るい画面が暗く感じる場合であっても、ジオメトリックAveに基づく明るい画面のときに、バックライトの輝度を増大させて明るい画面とすることができる。
【0104】
テンポラリフィルタ92は、アドバンスト輝度変調部3に備えられたテンポラリフィルタ32、及びジオメトリック補正部4に備えられたテンポラリフィルタ43と同様の目的で設けられるもので、入力映像信号の急激な変化によるバックライトゲインの過度の変化を抑制し、バックライトゲインをスムーズに変化させるためのものである。
【0105】
テンポラリフィルタ92から出力されたバックライトゲインは、乗算器93にて、発光輝度レベルBLreducedが示すデューティに乗算される。
ここでは、光源ユニットに対して出力するデューティを Duty´とし、BLreducedが示すデューティをDutyとするとき、
Duty´=Duty × BL Gain ・・・(7)
によってBLreducedのDutyを増幅する。
【0106】
このように、バックライトエンハンス部9では、ディストーションモジュール31でターゲットCRに近くなるように選択された発光輝度レベルBLreduced(ここではDuty)に対して、明るい画像ではDutyを増幅する方向に調整する。つまり、多くの場合、BLreducedとしては、映像のディストーションに基づいて、バックライトの発光輝度レベルを下げて省電力化を図る方向の値が選択されるが、バックライトエンハンス部9では、この値(BLreduced)に対して、明るい画像においては再度発光輝度レベルを増幅して明るくする処理を行う。
このとき、明るい画像においてバックライトの発光輝度レベルを増幅することによる黒レベルの浮きを抑えるために、黒レベル補正部94によって映像信号の黒レベルを補正する。
【0107】
黒レベル補正部94は、テンポラリフィルタ92から出力されたバックライトゲインを入力し、バックライトゲインに基づいて映像信号の黒レベルを補正するためのLUTを計算する。例えば、バックライトの発光輝度が2倍になれば、画面上の黒の輝度も2倍になる。このときに黒浮きによるコントラスト感が低下しないようにするために、黒輝度の上昇分だけ低階調側の信号を潰すようなLUTを作成する。
【0108】
例えば、入力映像信号の階調と画面輝度との関係は以下の式(8)のようにモデル化されている。
【0109】
【数2】
【0110】
ここで、Yは液晶パネルでの表示輝度、BLはバックライトの発光輝度レベル(バックライトデューティ)、CVは液晶パネルに入力される画素値、CRは液晶パネルのコントラストである。
【0111】
ここで、参照用の発光輝度レベルBLrefでバックライトを発光させたときに階調0を表示したときの表示輝度に対して、バックライトの発光輝度レベルがBL´になったときの表示輝度を一定に保つたの画素値をCvとするとき、以下の式(9)が成り立つ。
【0112】
【数3】
【0113】
となる。BLGainは、バックライトエンハンス部9のテンポラリフィルタ92から出力されたバックライトゲインである。(14)式のCV以下の階調では、出力階調を全て0階調とするLUTを計算する。
【0114】
図15は、バックライトエンハンス部の黒レベル補正部で生成されたLUTの例を示す図である。バックライトエンハンス部9の黒レベル補正部94では、上記式(14)に従って、テンポラリフィルタ92から出力されたバックライトゲインと、パネルコントラストの値とを使用してCVを計算する。そして図15に示すように、入力画素(階調)値がCV以下の領域では、出力階調を0とする(つまり黒とする)LUTを作成する。CVより高階調の領域では、入力階調が最高階調(255)のときの出力階調を255とし、この点と、入力階調CVの点とを直線で結んだ特性をもつLUTとする。
これによりバックライトゲインによる黒輝度の上昇分だけ低階調側の信号を潰すことができ、明るい画面でバックライトを明るくしたときの低階調部分のコントラスト感の悪化を防ぐことができる。
【0115】
上記のように、入力映像信号の特徴量に応じて、バックライトの発光輝度を低下させながら、映像信号のゲインを上げて発光輝度低下分を補償するようにしたアドバンスト輝度変調処理において、特徴量を用いて設定した発光輝度レベルに連動させて生成したトーンカーブを人間の感覚的な量に近い映像特徴量であるジオメトリック平均値(GAve)に基づいて生成したトーンカーブで補正するとともに、ジオメトリック平均値(GAve)が高い(画面が明るい)ときにバックライトの発光輝度を増大させ、このときに黒側が明るくなることによるコントラストの低下を防ぐために、映像信号の黒領域を補正することで、消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、明るい環境においてもコントラスト感を悪化させることなく画面が明るく見るようにすることができる。
【符号の説明】
【0116】
1…ヒストグラム・APL検出部、2…BL(バックライト)輝度レベル設定部、3…アドバンスト輝度変調部、4…ジオメトリック補正部、5…画質補正部、6…RGB調整部、7…FRC部、8…乗算器、31…ディストーションモジュール、32…テンポラリフィルタ、33…トーンカーブデザイン部、41…ジオメトリックAve計算部、42…ゲイン計算部、43…テンポラリフィルタ、44…トーンカーブデザイン部、45…低階調リニア化処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、より詳細には、映像信号の特徴量に連動させて表示パネルを照明する光源の発光輝度と、映像信号のトーンカーブとを調整する機能を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビなどの液晶パネルを用いた表示装置においては、映像品位を保ちつつ消費電力を低減させるための対策として、液晶パネルを照射するバックライトの発光輝度と、映像信号のゲインとを連動して設定する機能をもつものが知られている。
例えば、映像信号の特徴量を検出して、低いダイナミックレンジの映像(暗い映像)の場合にはバックライトの発光輝度を低下させるとともに、バックライトの発光輝度の低下を補償するために映像のゲインを上げることによって、バックライトの消費電力を低下させつつ、表示画面の明るさを一定に保つようにしている。
【0003】
このような映像信号の特徴量に応じたバックライトと映像ゲインの調整技術に関し、例えば、特許文献1には、映像信号のピークレベルを検出し、明るいシーンでは白ピーク輝度を向上させるようにバックライトを制御する一方、暗いシーンでは、映像振幅ゲインを調整することでピーク輝度を向上させるようにした表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 03/075257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなこのようなバックライトの発光輝度と映像信号とを連動して制御する機能を備えた表示装置では、周囲が非常に明るい環境にあり、明るい映像が表示されてバックライトの発光輝度レベルを低下させたとき、人間の目に暗くみえることがあった。例えば、表示装置を販売する店頭などでは、一般の家庭などの視聴環境よりは各段に明るい環境であり、このような環境では、省電力のためのバックライトを低下させたとき、画面輝度を維持するために映像信号にゲインをかけて増幅したとしても、明るい画面が暗くみえて品位が低下したように感じることがあった。
【0006】
また、上記のようなバックライトの発光輝度と映像信号とを連動して制御する表示装置では、発光輝度と映像信号を制御するための映像特徴量としてAPL(Average Picture Level)を用いることが一般的である。しかしながら、APLは信号輝度の平均レベルであるため、液晶パネルの表示輝度の平均レベルとは異なるものである。APLを用いて映像信号の輝度のゲインを決定すると、中間輝度で暗く感じる場合があることが知られている。
【0007】
このような場合に、従来の制御機能では、バックライトの発光輝度の低下に応じて映像のダイナミックレンジが限界まで引き伸ばされるため、他の映像処理機能を使用することができない。その結果、入力映像信号の明るさを維持することが限界となって十分な映像処理を行うことができず、視聴者に対して上記の連動機能を備えた表示装置は画面が暗い、という印象を与えていた。ここで単純に映像信号のゲインを大きくするのみでは、例えば高階調の白がつぶれて表現できなくなり、映像が破綻するなどの問題が生じる。
【0008】
このため、バックライトの発光輝度と映像信号とを連動して制御する場合、明るい環境下であっても、消費電力を増やすことなくかつ映像を破綻させることなく、視聴者に対してさらに画面を明るく見せたい、という課題があった。特に人間の視覚特性に合致した映像特徴量を用いて制御を行うことで、人間が暗く感じないような輝度及び信号制御を行うことが好ましい。
【0009】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、液晶パネルを照射する光源とを有し、光源の発光輝度と、映像信号のゲインとを連動して設定する表示装置において、消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、周囲が明るい環境であっても画面が明るく見えるようにした表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、該液晶パネルを照射する光源とを備えた表示装置において、入力映像信号の画素値の対数の平均を累乗してジオメトリック平均値を算出するジオメトリック平均計算部を有し、該ジオメトリック平均計算部が計算したジオメトリック平均値に基づいて前記光源の発光輝度を動的に制御する光源輝度制御部とを有することを特徴としたものである。
【0011】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記入力映像信号の特徴量に基づいて前記光源の発光輝度の制御に使用する発光輝度レベルを選択する輝度レベル選択部を有し、前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを前記ジオメトリック平均計算部が計算したジオメトリック平均値に基づいて補正することで、前記光源の発光輝度を動的に制御することを特徴としたものである。
【0012】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記光源輝度制御部は、予め定められた前記ジオメトリック平均値と前記光源の発光輝度を補正するための補正値との関係に基づいて前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを補正するものであり、前記ジオメトリック平均値と前記補正値との関係は、前記ジオメトリック平均値が所定値より大きいときに前記発光輝度を増大させ、前記ジオメトリック平均値が前記所定値以下のときには前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを維持する関係であることを特徴としたものである。
【0013】
第4の技術手段は、第2または第3の技術手段において、前記光源の発光輝度に連動させて映像信号に適用するトーンカーブを生成するためのトーンカーブ生成部と、前記ジオメトリック平均値に基づく前記光源発光輝度の補正値に基づいて決定された範囲の低階調領域の映像信号を、階調ゼロの黒の階調値に変換するための黒レベル補正部とを有し、該黒レベル補正部で生成された黒補正用データによって、前記トーンカーブ生成部で生成したトーンカーブを補正することを特徴としたものである。
【0014】
第5の技術手段は、第4の技術手段において、前記ジオメトリック平均値に基づいて前記トーンカーブ生成部で生成されたトーンカーブを補正するための補正用トーンカーブを生成する補正用トーンカーブ生成部とを有し、該補正用トーンカーブ生成部は、予め定められたジオメトリック平均値とゲインとの関係に基づいて、該ジオメトリック平均値計算部で計算されたジオメトリック平均値に対応するゲインを計算し、計算したゲインを用いてトーンカーブを生成するものであり、前記補正用トーンカーブ生成部が生成するトーンカーブは、入力階調を横軸、出力階調を縦軸にとったときに上に凸の形状を有し、中間階調域に凸の頂部を有する凸形状のトーカーブであって、該凸形状のトーンカーブは、低階調の特定領域では前記ゲイン計算部が計算したゲインを適用し、高階調になるに従って前記適用したゲインを低減させて生成した凸形状のトーンカーブに対し、低階調部分の特定領域のゲインを1とするように修正したトーンカーブであることを特徴としたものである。
【0015】
第6の技術手段は、第5の技術手段において、前記予め定められたジオメトリック平均値とゲインとの関係は、ジオメトリック平均値が特定の値以下の場合には、1より大きいゲインを設定し、ジオメトリック平均値が前記特定の値より大きい場合には、ゲインを1とする関係であることを特徴としたものである。
【0016】
第7の技術手段は、第4〜第6のいずれか1の技術手段において、入力映像信号の特徴量に対する前記光源の発光輝度を規定した輝度制御特性に基づいて、参照用の発光輝度レベルを設定する輝度レベル設定部を有し、前記輝度レベル選択部は、前記入力映像信号のヒストグラムを用い、前記液晶パネルに設定した目標コントラストのときに表示可能な映像輝度範囲のうち、前記光源の発光輝度レベルに応じて変化するヒストグラム上の表現不可能な映像の頻度を評価し、該評価した値に基づいて、前記光源の発光輝度の制御に使用する発光輝度レベルを選択し、前記トーンカーブ生成部は、該輝度レベル選択部で選択された発光輝度レベルと、前記輝度レベル設定部から出力された参照用の発光輝度レベルとを用いて前記トーンカーブに適用するゲインを決定し、該決定したゲインを低階調部分に適用するとともに、前記決定したゲインより小さいゲインを高階調部分に適用したトーンカーブを生成することを特徴としたものである。
【0017】
第8の技術手段は、第7の技術手段において、前記輝度レベル選択部は、前記ヒストグラムにおいて、前記目標コントラストのときに表示可能な映像輝度範囲のうち、前記光源の特定の発光輝度レベルにおいて表現できない映像輝度範囲の画像の頻度に所定の重み係数を乗算して評価し、選択可能な前記光源の発光輝度レベルの全てについて前記評価を実行し、前記評価によって得られた評価値が最も低い発光輝度レベルを、前記輝度レベル設定部で設定された前記参照用の発光輝度レベルを超えない範囲で選択することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、該液晶パネルを照射する光源とを有し、前記光源の発光輝度と、映像信号のゲインとを連動して設定する表示装置において、消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、周囲が明るい環境であっても画面が明るく見えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】CRが3000と6000の液晶パネルについて、入力階調レベル(映像信号レベル)と液晶パネル上での輝度値との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施形態に係る表示装置のシステム構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の表示装置におけるディストーションモジュールで実行される発光輝度レベル選択処理の一例を説明するための図である。
【図4】図2の表示装置におけるアドバンスト輝度変調処理の具体例を説明するための図である。
【図5】選択対象の一つである発光輝度レベル100%のときの映像輝度範囲Cを示す図である。
【図6】選択対象の一つである発光輝度レベル70%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図である。
【図7】選択対象の一つである発光輝度レベル50%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図である。
【図8】ゲイン設定に基づき生成されるトーンカーブの例を示す図である。
【図9】人間の視細胞の輝度に対する応答曲線を示す図である。
【図10】ゲイン計算部で計算するゲインについて説明するための図で、GAveとゲインとの関係を示すものである。
【図11】ジオメトリック補正部のトーンカーブデザイン部で生成するトーンカーブの一例を示す図である。
【図12】低階調リニア化処理部で修正するトーンカーブを示す図である。
【図13】バックライトエンハンス部のさらに具体的な構成例を示す図である。
【図14】BLゲイン計算部でバックライトゲインの計算に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図15】バックライトエンハンス部の黒レベル補正部で生成されたLUTの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の表示装置に係る好適な実施の形態について説明する。以下に説明する本発明に係る実施形態は、光源としてのバックライトを備えた表示装置において、入力映像信号の映像特徴量に応じて入力映像信号の増幅の度合い(ゲイン)を調整し、そのゲイン従ってトーンカーブを生成するもので、このときに、目標コントラスト(ターゲットCR)を設定し、バックライト光源の発光輝度の制御と、ゲインの制御によりそのターゲットCRに近づけるように映像表現を行う。このような映像信号とバックライトの輝度変調処理を本明細書ではアドバンスト輝度変調処理とする。
【0021】
アドバンスト輝度変調処理では、映像特徴量からバックライト輝度を低減させるための発光輝度レベルを求める。また、APLなどの映像特徴量から、バックライト光源の発光輝度レベルを設定するための参照用の発光輝度レベルを設定する。参照用の発光輝度レベルと、バックライト輝度を低減させるための発光輝度レベルと用いて、視覚上の輝度を保つためのゲインを設定し、そのゲインに基づいてトーンカーブを生成する。
【0022】
一方、映像特徴量(ここではヒストグラム)に基づいて生成した映像について、ジオメトリック平均値を求め、そのジオメトリック平均値に基づいてゲインを計算し、計算したゲインに基づいて補正用のトーンカーブを生成する。
さらに映像特徴量から求めたジオメトリック平均値を用いてバックライトのゲインを計算し、アドバンスト輝度変調処理により得られた発光輝度レベルをさらに補正して、最終的にバックライト光源を制御するための発光輝度レベルを出力する。また、同時に上記のジオメトリック平均に基づいて計算したバックライトゲインの値を使用して、映像信号の黒レベルを補正するためのトーンカーブ(黒補正用トーンカーブ)を生成する。
そして、アドバンスト輝度変調処理により得られるトーンカーブに対して、ジオメトリック平均値に基づくゲインにより生成された補正用トーンカーブと、バックライトゲインに基づいて生成された黒補正用トーンカーブとを適用して補正することで、入力映像信号に適用するトーンカーブを得る。
【0023】
ジオメトリック平均値は、人間の感覚的な量に近い映像特徴量であり、これを利用して映像信号に適用するトーンカーブを補正することで、周囲環境が明るい場合にも消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、画面がさらに明るく見るようにすることができる。
【0024】
<本発明に係る輝度変調処理の概要>
表示装置から発せられる光量は、表示する映像信号のレベルを忠実に再現するのが理想である。つまり、黒画面を表示する場合、画面から発せられる光量は理想的には0でなければならない。しかし、現実の液晶表示装置では、若干の光漏れがあり、黒画面を表示する場合にも黒ではなくグレー表示となる。
【0025】
表示装置の重要な性能の一つとしてコントラスト比(以下CRともいう)がある。表示装置において、CRは表示パネル上の最大輝度と最小輝度の比である。液晶表示装置の場合、最大輝度は光源の最大発光輝度で決まり、最小輝度は黒表示時の光漏れ量によって決まる。よって、光源の発光輝度が一定の場合、同一の液晶パネルにおいてコントラスト比は一定となる。
【0026】
図1は、CRが3000と6000の液晶パネルについて、入力階調(映像信号レベル)と液晶パネル上での輝度値との関係を示すグラフである。最大輝度は共に同じ450cd/m2であるが、入力階調(画素値)0での液晶パネル上の表示輝度(最小輝度)はCR3000の場合に0.15cd/m2、CR6000の場合に0.075cd/m2となり、2倍の差がある。
【0027】
ここで、CR3000の液晶パネル使用時に光源の発光輝度を50%まで下げるとともにゲイン設定で入力映像信号を所定量増幅させると、入力映像信号の画素値と液晶パネルの表示輝度値との関係は、図1において点線で示すような関係となり、画素値0〜187(γ=2.2)においてはCR6000の液晶パネルに近い輝度表現をさせることが可能になる。しかしながら、画素値187より大きい映像は階調表現できず、いわゆる白つぶれを起こすことになる。従って、入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度の調節と、ゲイン設定を行う必要がある。
【0028】
例えば、入力映像信号の輝度のヒストグラムが画素値187以下の輝度分布を示す場合に、上述の図1で示すようにバックライトの輝度を50%まで下げるとともにゲイン設定で所定入力映像信号を所定量増幅させるような制御を行うようにすればよい。このように入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度の制御及びゲイン設定を行うことにより、コントラスト感を高めることができると同時にバックライトの発光輝度を下げることによる省電力化を図ることが可能になる。
【0029】
上記では入力映像信号の輝度のヒストグラムが画素値187以下の輝度分布を示す場合を例に挙げて説明したが、上記の例以外でも、例えば、映像中の白部分が極めて少ない場合には、白部分の重視度を下げ、黒表現の向上を同様にして図ることができる。このとき、重視しない部分の白つぶれは無視してもよいし、ターゲットCRを実現させるゲイン設定によっても白つぶれが緩和できるように、白側領域でのゲインを決めるようにしてもよい。
【0030】
本発明に係る実施形態では、入力映像信号の映像特徴量に応じて入力映像信号の増幅の度合い(ゲイン)を調整する。このときに、目標コントラスト(ターゲットCR)を設定し、バックライト光源の発光輝度の制御と、ゲインの制御によりそのターゲットCRに近づけるように映像表現を行う。ここでは、APLなどの映像特徴量から、バックライト光源の発光輝度レベルを設定するための参照用の発光輝度レベルを設定する。そして参照用の発光輝度レベルと映像ヒストグラムとを用いてバックライトの発光輝度レベルを決定するともに、その発光輝度レベルに連動させて視覚上の輝度を保つためのゲインを設定し、そのゲインに基づいてトーンカーブを生成する。
【0031】
さらに映像特徴量(ここではヒストグラム)に基づいて生成した映像について、ジオメトリック平均値を求め、そのジオメトリック平均値に基づいて映像信号を増幅するためのゲインを計算し、そのゲインに基づいて中間階調を引き上げるような補正用トーンカーブを生成する。またこれとは別に、上記のジオメトリック平均値に基づいてバックライトゲインを計算し、そのバックライトゲインに基づいてバックライトの発光輝度レベルを補正する。特にここでは、明るい環境で明るい画面が暗くみえないように、明るい画面のときに発光輝度レベルを増大させる。そして、このときに低階調の映像のコントラスト感を維持するために、バックライトゲインに基づいて黒補正用のトーンカーブを生成する。
そしてこれら補正用トーンカーブと、黒補正用トーカーブとにより、上記のバックライトの発光輝度レベルに連動するトーンカーブを補正して、映像信号に適用する。
【0032】
ジオメトリック平均値は、人間の感覚的な量に近い映像特徴量であり、これを利用して映像信号に適用するトーンカーブを補正することで、消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、画面がさらに明るく見えるようにすることができる。
以下に本発明に係る実施形態の構成及び動作をさらに具体的に説明する。
【0033】
<本発明に係る輝度変調処理を行う表示装置のシステム構成例>
図2は、本発明に係る表示装置のシステム構成例を示すブロック図である。図2で例示する表示装置は、ヒストグラム・APL検出部1、BL(バックライト)輝度レベル設定部2、アドバンスト輝度変調部3、ジオメトリック補正部4、画質補正部5、RGB調整部6、FRC(Frame Rate Control)部7、乗算器8、及びバックライトエンハンス部9を備える。
【0034】
アドバンスト輝度変調部3は、ディストーションモジュール31、テンポラリフィルタ32、トーンカーブデザイン部33を有する。また、ジオメトリック補正部4は、ジオメトリックAve計算部41、ゲイン計算部42、テンポラリフィルタ43、トーンカーブデザイン部44、及び低階調リニア化処理部45を備えている。
【0035】
アドバンスト輝度変調部3による処理は、APL等の特徴量に応じた動的な光源の発光輝度制御を行うだけでなく、その映像特徴量の所定の条件により決定される光源の参照用の発光輝度レベルBLrefに対しさらにコントラスト感を出すような発光輝度レベルBLreducedを選択する処理である。ここでは、発光輝度レベルBLreducedと、参照用の発光輝度レベルBLrefとに基づいて映像信号に適用するゲインが選択され、そのゲインに基づいたトーンカーブが生成される。
【0036】
また、ジオメトリック補正部4は、映像信号のヒストグラムを用いてその映像信号のジオメトリック平均値(以下、GAve、もしくはジオメトリックAveとする)を算出し、GAveに基づいてゲインを計算し、さらにそのゲインに基づいて映像信号を補正するための補正用トーンカーブを生成する。この補正用トーンカーブによって、アドバンスト輝度変調部3で生成されたトーンカーブを補正することで、さらに人間の視覚に適合した映像設定を行うことができる。
【0037】
さらに、バックライトエンハンス部9では、ジオメトリック計算部41で求めたジオメトリック平均値を用いてバックライトのゲインを計算し、アドバンスト輝度変調処理により得られた発光輝度レベルに適用して、最終的にバックライト光源を制御するための発光輝度レベルを出力する。また、同時にバックライトエンハンス部9では、ジオメトリック平均に基づいて計算したバックライトゲインの値を使用して、映像信号の黒レベルを補正するためのトーンカーブ(黒補正用トーンカーブ)を生成し、アドバンスト輝度変調部3で生成されたトーンカーブを補正する。
【0038】
まず、図2の表示装置における各ブロックの概要について説明する。
入力映像信号としては、例えば放送波として受信した映像信号を復調した信号、通信ネットワーク経由で受信した映像信号、内部記憶装置に記憶された映像信号を読み出した信号、各種レコーダや各種プレーヤやチューナ機器といった外部機器から受信した映像信号などが該当し、あるいはそれら映像信号に対して各種映像処理を施した後の映像信号が該当する。図2の表示装置は、このような映像信号のいずれかを取得可能なように構成しておけばよい。入力映像信号は、液晶パネルの解像度等に応じて、入力された映像信号(入力映像信号)が示す映像フレームの画素数、あるいはその映像フレームのアスペクト比を演算によりスケーリングしたものとすることができる。
【0039】
ヒストグラム・APL検出部1は、入力映像信号からYヒストグラムと、APLとを検出するブロックである。ヒストグラム検出においては、映像フレームを画素単位等に分割し、各画素の輝度値の発生頻度を表したヒストグラムを生成する。生成されたヒストグラムは、例えば輝度値(Y)0〜255のそれぞれに対して頻度の値を持つ。また、APL検出においては、映像信号の平均輝度レベルを映像フレーム毎に算出する。算出される値としては、全画面で黒の場合には0%を示す値となり、全画面で白の場合には100%を示す値となる。
【0040】
また、ヒストグラム・APL検出部1では、生成されたYヒストグラムから、アドバンスト輝度変調部3で使用する範囲を設定するヒストグラムストレッチを行うことができる。例えば、ディストーションモジュール31が最小値0〜最大値255で演算を実行するモジュールであり、且つ入力映像信号が元々最小値10〜最大値235の値をとるような信号であった場合を想定する。このような場合には、ディストーションモジュール31での演算に合わせるために、最小値10〜最大値235のそれぞれに対する頻度値を、最小値0〜最大値255のそれぞれに対する頻度値に当てはめるように引き伸ばしてストレッチする。
【0041】
画質補正部5は、ヒストグラム・APL検出部1から出力された映像信号に対し必要に応じてIP変換を行ったり、ノイズリダクションを施す。また、ユーザ設定等により、映像のコントラストや色味等を変更する。
RGB調整部6は、画質補正部5から出力された映像信号に対し、アドバンスト輝度変調部3とジオメトリック補正部4とバックライトエンハンス部9との処理に基づいて生成された補正用トーンカーブを適用して映像信号を変換する。トーンカーブは、映像信号の画像値を変換するために入力値に対する出力値を定めたもので、LUT(ルックアップテーブル)として生成されたデータである。RGB調整部6に入力されるトーンカーブは、アドバンスト輝度変調部3で生成されたトーンカーブを、ジオメトリック補正部4で生成したトーンカーブと、バックライトエンハンス部9で生成した黒補正用トーンカーブとで補正(乗算器8で乗算)して得たものである。
【0042】
RGB調整部6は、画質補正部5から出力された映像信号に対し、上述のトーンカーブで変換を行う処理の他、映像の絵作りのためのγ調整処理、WB調整処理、さらにはCT(色温度)等の調整も行うことができる。このようなRGB調整部6で実行される各処理は、映像信号のR,G,Bのそれぞれに対して独立して実行される。その際、トーンカーブによる変換処理、γ調整処理は、R,G,Bで同一のカーブによる演算がなされ、WB調整処理/CT調整処理についてはR,G,Bそれぞれ別個の特性のカーブによる演算がなされる。
RGB調整部6でトーンカーブを適用することで、アドバンスト輝度変調部3におけるバックライトの発光輝度レベルを低下させる制御に対して、ジオメトリック補正部4の補正と、バックライトエンハンス部9で生成した黒補正用トーンカーブとを加味した上で映像表現を行う。
【0043】
FRC部7は、フレームレートコンバータであり、RGB調整部6から出力された調整後の映像信号に対し、映像の動きベクトルを検出して補完映像を生成することによって、通常60Hzの表示周波数から120Hz、もしくはそれ以上の表示周波数に変換するものである。FRC部17から出力された映像信号は、液晶パネル駆動のための信号に変換され、液晶パネルに出力されて表示される。
【0044】
アドバンスト輝度変調部3のディストーションモジュール31は、ヒストグラム・APL検出部1から出力されたヒストグラムと、後述するBL輝度レベル設定部2で設定された参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値ともいう)BLrefとから、ゲインを決定するともに、バックライトエンハンス部9に出力するための発光輝度レベル(バックライト値ともいう)BLreducedを選択する。選択は、予め定められた複数の発光輝度レベルの中からBL輝度レベル設定部2で設定された参照用発光輝度レベルBLrefを超えない範囲で行う。また、ここでは、ターゲットCRをもつ液晶パネルにより近い表示映像を実現できるバックライト値BLreducedを選択する。ターゲットCR等のディストーションパラメータは、図示しないメインCPUから設定すればよい。ディストーションモジュール31は、本発明の輝度レベル選択部に相当するブロックである。
【0045】
テンポラリフィルタ32は、ディストーションモジュール31で選択された発光輝度レベルBLreducedが急激に変化した場合に生じる視覚上の違和感を防止するために設けられたものであり、発光輝度レベルBLreducedの変化量を時間的に緩慢なものにした後、実際に設定する発光輝度レベルBLreducedとして後段に出力する。ここではローパスフィルタが用いられる。また、緩慢な発光輝度レベルBLreducedの変化を施すと返って違和感を持つことがあるため、図示しないシーンチェンジ検出部を設け、シーンチェンジ検出信号により、テンポラリフィルタ32の値を変えて、比較的早い変化ができるようにしてもよい。
【0046】
BL輝度レベル設定部2は、本発明の輝度レベル設定部に相当するブロックで、ヒストグラム・APL検出部1から出力されたAPL及びヒストグラムなどの映像特徴量を参照して、バックライトの発光輝度レベルの最大値を決定する。このとき、図示しないメインCPUから出力されたOPC(Optical Picture Control;明るさセンサともいう)の値やユーザ設定値などをさらに参照して、上記発光輝度レベルの最大値を決めるようにしてもよい。例えば、APLが高い場合には、バックライトの発光輝度レベルの最大値を低い値とすることで、眩しさを感じない映像とすることができる。このバックライトの発光輝度レベルの最大値が、アドバンスト輝度変調部3で実行されるアドバンスト輝度変調の参照用の発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefとなる。
【0047】
参照用の発光輝度レベルBLrefを決定するための映像特徴量としては、上述のようにAPLやヒストグラムを用いることができ、実施形態に応じて使用する特徴量が選択される。ヒストグラムには、映像のピーク値(最大輝度値)や、最大輝度より小さい所定輝度の間に含まれる映像信号の割合などが使用される。本実施形態では、BLrefを決定するための映像特徴量としてAPLを使用するものとする。
【0048】
なお、ディストーションモジュール31での選択が、BL輝度レベル設定部2で設定された参照用発光輝度レベルBLrefを超えない範囲で行われることから、BL輝度レベル設定部2では、参照用発光輝度レベルBLrefとしてバックライトの発光輝度レベルの最大値が設定される。また、BL輝度レベル設定部2とディストーションモジュール31との間に図示しない他のテンポラリフィルタを設けてもよい。
【0049】
ディストーションモジュール31の後段のテンポラリフィルタ32から出力された発光輝度レベルBLreducedは、バックライトエンハンス部9に入力され、ジオメトリック補正部4から出力されたジオメトリック平均値に基づき生成されたバックライトゲインが乗算され、実際にバックライトを制御するための発光輝度レベルとして出力される。
バックライトエンハンス部9から出力された発光輝度レベルは、図示しない光源ユニットに送られて、バックライト発光輝度が制御される。光源ユニットは、LEDや蛍光管等で構成されるランプと、そのランプを駆動するランプ駆動回路とを有し、液晶パネルを背面や側面から照射する光源(バックライト光源)を構成する。本実施形態に係る輝度変調処理においては、このランプが発光輝度制御の対象となる。
【0050】
BL輝度レベル設定部で設定される発光輝度レベルBLref、ディストーションモジュール31で生成される発光輝度レベルBLreduced、及びバックライトエンハンス部9から出力される発光輝度レベルは、例えばデューティ信号である。光源ユニットでは、バックライトエンハンス部9から出力された発光輝度レベルに従って、ランプ駆動回路(例えばインバータ回路)で実際に調光するための信号(例えばパルス幅変調等の駆動に適した信号)に変換し、バックライトの発光輝度を制御する。ランプとしては、例えばLED(Light Emitting Diode)を適用することができ、あるいは従来の蛍光管やLEDと蛍光管の組み合わせで構成されるものを採用してもよく、同時にそれに対応したランプ駆動回路を設けておけばよい。
【0051】
トーンカーブデザイン部33は、本発明のトーンカーブ生成部に相当するブロックで、BL輝度レベル設定部2で決定された参照用発光輝度レベルBLrefとディストーションモジュール5によって選択された発光輝度レベルBLreducedとに基づき、映像信号のゲインを決定し、さらにそのゲインに基づいて映像信号に適用するためのトーンカーブを生成する。なお、図2の例ではBLreducedはテンポラリフィルタ32を通過したレベルを用いている。
参照用発光輝度レベル(バックライト目標値)BLrefと選択された発光輝度レベル(バックライト値)BLreducedが同じであれば、映像信号の輝度レベルを変更する必要はなく、ゲインは1である。また、参照用発光輝度レベルよりも選択された発光輝度レベルが低い場合は、その値に応じて、映像信号の輝度レベルを上げる方向にゲイン設定を行う。ゲイン設定に基づくトーンカーブの具体的な生成処理については後述する。
【0052】
ジオメトリックAve計算部(ジオメトリック平均値計算部)41は、ヒストグラム・APL検出部1で検出された映像信号の特徴量であるヒストグラムに基づいて、所定の演算式に基づいてジオメトリック平均値(GAve)を計算する。ジオメトリックAve計算部41から出力されたGAveの値は、ジオメトリック補正部4のゲイン計算部42と、バックライトエンハンス部9とに出力される。
ジオメトリック補正部4のゲイン計算部42では、GAveの値に基づいてゲインが計算される。計算されたゲインは、テンポラリフィルタ43によって急激な変動が緩和され、トーンカーブデザイン部44にて補正用のトーンカーブの基礎とするものが生成される。トーンカーブデザイン部44は、本発明の補正用トーンカーブ生成部に相当する。
【0053】
低階調リニア化処理部45では、トーンカーブデザイン部44で生成したトーンカーブの低階調をリニアすることで、低輝度領域についてゲインを付与した場合に生じるノイズの増大や黒浮き量の増大を抑えるようにする。このリニア領域の大きさは、GAveの値に応じて変化させる。低階調リニア化処理部45の処理によって、アドバンスト輝度変調部3から出力されたトーンカーブを補正するための補正用トーンカーブが得られる。
【0054】
バックライトエンハンス部9は、本発明の光源輝度制御部に相当するブロックで、ジオメトリック計算部41で求めたジオメトリック平均値を用いてバックライトのゲインを計算し、アドバンスト輝度変調処理により得られた発光輝度レベルに適用して、最終的にバックライト光源を制御するための発光輝度レベルを出力する。バックライトゲインは、ジオメトリック平均値が所定値より大きいときにバックライトの発光輝度を増大させ、ジオメトリック平均値が所定値以下のときにはアドバンスト輝度変調処理により選択した発光輝度レベルを維持するように設定される。これにより、明るい画面においては、バックライトの発光輝度レベルが増大して明るい環境下であっても明るい映像を見ることができる。
【0055】
また、同時にバックライトエンハンス部9では、ジオメトリック平均値に基づいて計算したバックライトゲインの値を使用して、映像信号の黒レベルを補正するためのトーンカーブ(黒補正用トーンカーブ)を生成し、アドバンスト輝度変調部3で生成されたトーンカーブを補正する。黒補正用トーンカーブは、アドバンスト輝度変調処理によって低下させた発光輝度レベルを、再度ジオメトリック平均値に応じてゲインをかけてバックライトを明るくするときに、黒浮きを防いでコントラスト感を保つために生成するもので、主に入力信号の特定の範囲低階調部分の出力をゼロ(黒)とするトーンカーブとして生成される。
【0056】
乗算器8は、アドバンスト輝度変調部3から出力されたトーンカーブに対して、ジオメトリック補正部4から出力された補正用トーンカーブと、バックライトエンハンス部9から出力された黒補正用トーンカーブとを乗算することで、補正されたトーンカーブを得る。つまり、アドバンスト輝度変調部3から出力されたトーンカーブの各画像ごとの出力値に対して、ジオメトリック補正部4から出力された補正用トーンカーブにおけるゲイン1からの変位分の値を乗算器8で乗算し、さらにバックライトエンハンス部9から出力された黒補正用トーンカーブにおけるゲイン1からの変位分の値を乗算器8で乗算し、最終的にRGB調整部6で映像信号に適用するトーンカーブを生成する。RGB調整部6では、画質補正部5から出力された映像信号に対して、乗算器8から出力されたトーンカーブを適用して変換を行う。
【0057】
<本発明に係る輝度変調処理を実行する主要ブロックの説明>
図2の表示装置における主要ブロックとして、BL輝度レベル設定部2、トーンカーブデザイン部33、ジオメトリック補正部4、バックライトエンハンス部9をさらに詳細に説明する。
【0058】
<<BL輝度レベル設定部2>>
BL輝度レベル設定部2には、ヒストグラム・APL検出部1で検出された映像信号のAPLが入力される。このときに、周囲の明るさ(周囲の照度)を測定する図示しない明るさセンサの検出情報に基づく制御信号、及び液晶パネルの明るさを設定するユーザ設定に基づく制御信号を入力させて、これらを用いてさらにバックライト発光輝度を変化させることができる。
映像特徴量として、映像信号を仮に伸張したときに表現できない頻度、あるいは映像信号の最小輝度及び最大輝度などの情報を使用する場合には、ヒストグラム・APL検出部1から、映像信号の画面単位(フレーム単位)で必要とするこれら情報(ヒストグラム情報とする)が入力される。また、APLとヒストグラム情報の両方を使用する場合には、それぞれの情報がBL輝度レベル設定部2に入力される。
【0059】
BL輝度レベル設定部2では、これらの制御信号とAPLとに基づいて、参照用発光輝度レベルBLrefを出力する。より具体的には、画面単位(フレーム単位)で変化する入力映像信号のAPLに応じて、バックライト輝度を動的に調整する方式を適用し、これにより得られた発光輝度レベルを参照用発光輝度レベルBLrefとして出力する。
【0060】
参照用発光輝度レベルBLrefの生成には、BL輝度レベル設定部2に保持されている輝度制御テーブル(ルックアップテーブル)が用いられる。輝度制御テーブルは、入力映像信号の映像特徴量(ここではAPL)に応じたバックライトの発光輝度レベルの関係、すなわち輝度制御特性を定めるものである。そして予め選択可能な複数の輝度制御テーブルを用意し、BL輝度レベル設定部2が備えるROM(Read Only Memory)等のテーブル格納メモリに保持させておく。
【0061】
液晶表示装置周囲の明るさを用いる場合、その明るさを検出するための明るさセンサには、例えばフォトダイオードが適用される。明るさセンサは、検出した周囲光に応じた直流電圧信号を生成し、図示しないメインCPUに出力する。メインCPUは、周囲光に応じた直流電圧信号に応じて輝度制御テーブルを選択する制御信号をBL輝度レベル設定部2に出力する。
【0062】
さらに、メインCPUは、液晶パネルの明るさを設定するユーザ設定に基づく制御信号として、輝度制御テーブルの輝度制御値を調整するための輝度調整係数を出力する。輝度調整係数は、ユーザ操作に応じて画面全体の明るさ設定を行うために使用される。例えば、表示装置が保持するメニュー画面には、画面の明るさ調整項目が設定されている。ユーザは、その設定項目を操作することによって、任意の画面明るさを設定することができる。メインCPUは、その明るさ設定を認識し、設定された明るさに従ってBL輝度レベル設定部2に輝度調整係数を出力する。
【0063】
BL輝度レベル設定部2では、明るさセンサの検出情報に従ってメインCPUから出力された制御信号により、テーブルNoを指定して輝度制御テーブルを選択する。若しくは選択する輝度制御テーブルを演算によって生成するようにしてもよい。そして、選択した輝度制御テーブルの輝度変換値に対して、ユーザ設定に基づく制御信号として得た輝度調整係数を乗算し、輝度制御テーブルの輝度制御特性の傾きを変化させ、最終的に、参照用発光輝度レベルBLrefの生成に使用する輝度制御テーブルを決定する。そして、BL輝度レベル設定部2は、決定した輝度制御テーブルの輝度制御特性を使用し、ヒストグラム・APL検出部1から出力されたAPLに応じて参照用発光輝度レベルBLrefを生成して出力する。
【0064】
輝度制御テーブルは、上述したように、入力映像信号の特徴量であるAPLとバックライトの発光輝度レベルとの関係を定めるものであって、例えば、APLが大きいときにはバックライトの発光輝度レベルが小さくなるように設定することで、高輝度の映像のときに眩しさを感じないようにバックライトの発光輝度を抑えるようにしている。輝度制御テーブルの輝度制御特性に従って、映像信号のAPLの変化に応じて発光輝度レベルBLrefが動的に変化する。本発明においては、輝度制御テーブルにおける輝度制御特性については特に限定されるものではなく、入力映像信号の特徴量に応じてバックライトの発光輝度レベルを動的に変化させる特性を規定するものを適宜適用することができる。
【0065】
このようにしてBL輝度レベル設定部2から出力された参照用発光輝度レベルBLrefは、トーンカーブデザイン部33に入力し、映像ゲインの演算に使用されるとともに、ディストーションモジュール31に入力して、ヒストグラムに応じた発光輝度レベルBLreducedの決定に使用される。
【0066】
図3は、図2の表示装置におけるディストーションモジュール31で実行される評価値の演算処理例を説明するための図である。図3において、h1は映像信号のYヒストグラムを示している。ここで横軸は映像信号の入力階調(映像信号としてとりうる画素値、又は映像信号レベルともいう)を示し、縦軸は各映像信号レベルの頻度を示している。
【0067】
このような映像のヒストグラムh1に対して、使用する液晶パネルにおいてバックライトの発光輝度レベルが100%の時に表示可能な映像輝度範囲をAとする。また、ターゲットCRの液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲をBとする。また、ディストーションモジュール31で選択可能な発光輝度レベルのうち、ある特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲をCとする。そして、ヒストグラムh1において、映像輝度範囲Cの両側で映像輝度範囲Bと重なる部分が、ディストーションとして数値化を行う部分であり、評価値算出部分である。この評価値算出部分のうち、低輝度部分をD1、高輝度部分をD2とする。
【0068】
評価値(ディストーション;Distortion)は、選択可能な発光輝度レベルに対して、頻度と重み付けによって下式(1)によって算出する。
Distortion=Σ{(映像輝度範囲D1+D2の頻度)×(距離重み)}・・・(1)
【0069】
重みとしては、評価値算出対象となる発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲Cから遠ざかる程大きくする距離重みを用いる。ここでは、低輝度部分D1の距離重みをE1、高輝度部分D2の距離重みをE2とする。従って、同じ頻度値であっても、表現できる範囲から遠いほうが、評価値は大きくなる。これは表現できる範囲から遠いほうが、映像として表現できない影響が大きいためである。頻度と重み付けによって算出した値はF1(低輝度部分)、F2(高輝度部分)である。評価値はF1とF2の面積(累計)を合計した値となる。
【0070】
ディストーションモジュール31では、各発光輝度レベルに対して評価値を算出し、後述する手法によって評価値とゲインとの関係を算出し、評価値とゲインとの関係から、バックライトに設定すべき発光輝度レベルBLreducedを選択する。発光輝度レベルBLreducedは、この後、テンポラリフィルタ32を介してトーンカーブデザイン部33に出力され、映像信号に適用するゲインが決定され、そのゲインに基づいてトーンカーブが生成される。上記の発光輝度レベルBLreducedを選択する際、ディストーションモジュール31では、BL輝度レベル設定部2で設定された発光輝度レベルBLrefを越えない範囲で、発光輝度レベルBLreducedを選択する。
【0071】
このような評価値の算出は、ディストーションモジュール31で、選択可能な発光輝度レベルの全てについて行うことが理想である。しかし、処理時間等の制限があるため、選択可能な発光輝度レベルの輝度制御範囲を均等に分け、例えば10%程度毎の発光輝度レベルについて算出すればよい。
【0072】
つまり、上式(1)の特定の発光輝度レベルで表示可能な映像輝度範囲をCとして、選択可能な発光輝度レベルを順次適用し、発光輝度レベルごとに評価値を算出する。そして算出した評価値とゲインとの関係を算出する。そして算出した評価値の中から、最も低い評価値をもつ発光輝度レベルを、選択した発光輝度レベルBLreducedとし、この値をテンポラリフィルタ32に出力してバックライトの調光制御に用いるとともに、トーンカーブデザイン部33に出力して、トーンカーブを生成するためのゲイン設定に用いる。
【0073】
ディストーションモジュール31での選択処理を、図4〜図7を参照して具体的な数値で説明する。図4は、本発明に係る表示装置における輝度変調処理の具体例を説明するための図で、映像ヒストグラムにおけるパネルCRとターゲットCRとの関係の一例を示す図である。ここでは、使用する液晶パネルのCR(パネルCR)が2000、ターゲットCRが3500、バックライトの輝度制御範囲が20〜100%で、バックライト輝度100%のときの液晶パネルの最大輝度は450cd/m2とする。また、図4における各アルファベット記号は図3に準拠する。
【0074】
この例において、使用する液晶パネルで表示可能な映像輝度範囲Aは、450cd/m2〜0.225cd/m2である。また、目標とする液晶パネルの表示可能な映像輝度範囲Bは、450cd/m2〜0.128cd/m2である。そして、各映像信号レベル0〜255に対する頻度を映像輝度範囲Bに合わせるように割り付ける。この場合、映像輝度範囲Aと映像輝度範囲Bとの差は5デジット程度である。
【0075】
ヒストグラムh1において、映像輝度範囲Bと映像輝度範囲Aとの差の部分に映像があれば、バックライトの発光輝度レベルを下げることで、よりターゲットCRに近い輝度表現が可能になる。しかし、高輝度側にも映像が分布していると、バックライトの発光輝度レベルを下げることで表現できない部分が発生する。そこで、上述したように、評価値を算出して最適な発光輝度レベルBLreducedを求める。
【0076】
図5は、選択対象の一つである発光輝度レベル100%のときの映像輝度範囲Cを示す図、図6は、選択対象の一つである発光輝度レベル70%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図、図7は、選択対象の一つである発光輝度レベル50%程度のときの映像輝度範囲Cを示す図である。図5〜図7における各アルファベット記号は図3に準拠する。
【0077】
図5で示したように、発光輝度レベルが100%を示すものである場合、低輝度部分の評価値F1には或る程度の値があり、高輝度部分の評価値F2には値がない。また、図6で示したように、発光輝度レベルを70%程度に下げた場合、低輝度部分の評価値F1及び高輝度部分の評価値F2ともに、低い値を持つ。また、図7で示したように、発光輝度レベルを50%程度に下げた場合、低輝度部分の評価値F1には値がなく、高輝度部分の評価値F2には大きな値を持つ。図5〜図7で例示した各発光輝度レベルでの評価値算出結果の面積(累積)を比較してみると、発光輝度レベルが70%のときが最も低い。従って、ディストーションモジュール5では発光輝度レベル70%を選択し、出力することになる。
【0078】
<<トーンカーブデザイン部33>>
トーンカーブデザイン部33では、トーンカーブを生成するために用いるゲインをまず計算する。
液晶パネルへ入力される画素値と液晶パネルでの表示輝度との関係を示す基本的なモデルは、下式(2)により示される。ここで、Yは液晶パネルでの表示輝度、BLはバックライトの発光輝度レベル(バックライトDUTY)、CV(Code Value)は液晶パネルへ入力される画素値である。また、この例では映像信号の階調は0〜255で量子化されているものとする。
Y=BL(CV/255)γ ・・・(2)
【0079】
トーンカーブデザイン部33は、ディストーションモジュール31で選択された発光輝度レベルBLreducedによってバックライトの発光輝度が低下したときに、画面上の輝度を上げるように映像ゲインを調整する。ゲインをかけた画素値をCVreduced とするとき、発光輝度レベルを低下させたときの画面の明るさ(液晶パネルでの表示輝度)は、BLreduced(CVreduced/255)γである。
一方で、参照用発光輝度レベルBLrefでバックライトを制御したときの画面の明るさは、BLref(CVref/255)γとなる。これらの値を等しくさせ、発光輝度レベルBLreducedによって生じるバックライトの発光輝度の低下分を補償するように、画素値を決定すればよい。つまり、トーンカーブデザイン部33は、下式(3)を満たすようなゲイン設定を行えばよい。
Y=BLreduced(CVreduced/255)γ=BLref(CVref/255)γ・・・(3)
【0080】
従って、ゲイン(Gとする)は、下式(4)のようになる。例えば、参照用発光輝度レベルBLrefが100%のときには、下式(5)のようになる。なお、BLrefとBLreducedとの関係をルックアップテーブルとしてトーンカーブデザイン部33のROMなどに格納しておき、下式(4)の演算処理を高速に実行させることが好ましい。
【0081】
G=CVreduced/CVref=(BLref/BLreduced)1/γ ・・・(4)
G=(1/BLreduced)1/γ ・・・(5)
【0082】
トーンカーブデザイン部33では、上記の処理によって計算したゲインに従って、映像信号に適用するためのトーンカーブを生成する。
図8は、ゲイン設定に基づき生成されるトーンカーブの例を示す図である。図8(A)に示すように、トーンカーブデザインブ33で計算された映像信号のゲイン設定が1.0の場合には、全輝度について線形のトーンカーブとすることで問題ない。
しかし、ゲインが1.0以上の場合、図8(B)に示すように、ゲインを一律に適用したトーンカーブとすると、高階調(高輝度)部分が100%(出力画素値255)の値でクリップされて、いわゆる白つぶれが発生する。
【0083】
アドバンスト輝度変調処理では、例えば、少数の白輝度部分の白つぶれを犠牲にして、黒部分をより引き締めるようにゲイン設定してもよいが、白つぶれを起こす階調範囲が広い場合においては、表示品位を大きく低下させることになってしまう。
そこで、低中輝度については、ゲイン設定に応じた信号伸張を行い、高輝度については、トーンカーブを非線形にすることによって、高輝度部分の階調性の低下を軽減することが好ましい(白つぶれを防ぐこと)。この手法は明るさと白つぶれのトレードオフの関係になる。非線形とする領域を狭めれば、正規の明るさを表現できる領域が増えるが、高輝度の階調性が低下する。逆に、非線形とする領域を広めれば正規の明るさを表現できる領域が減るが、高輝度の階調性が或る程度保たれることになる。実際には非線形とする輝度は、ゲイン設定による出力の例えば90%以上の部分や95%以上の部分とするなどして、白つぶれの影響のある部分のみ非線形とすればよい。
【0084】
図8(C)には、ゲイン設定が1.2の場合に90%以上の部分を非線形にするように補正したトーンカーブを示している。また、図8(D)には、ゲイン設定が1.6の場合に90%以上の部分を非線形にするように補正したトーンカーブを示している。
【0085】
また、上述のように、ゲイン設定が1.0を超えた場合に生じる高輝度部分の白つぶれを避けるためには、トーンカーブの高階調領域を一部非線形にする必要がある。
このときに、トーンカーブデザイン部33では、ゲイン設定に基づき単純に比例計算を行うと上記のような非線形のトーンカーブを算出することができない。従って、非線形のトーンカーブを得るために、ゲイン設定ごとにトーンカーブをメモリに格納するようにしてもよいし、もしくは、トーンカーブの線形部分はゲイン設定値から単純に比例計算し、図8(C),(D)に例示したように90%以上の部分については、補間等によって非線形部分を算出するようにしてもよい。
【0086】
<<ジオメトリック補正部>>
映像信号の平均輝度の種類として、上述のようなGAve(ジオメトリック平均値(Geometric Average))がある。GAveは、信号輝度の平均ではなく、液晶パネルの輝度の平均を視覚特性に合致した値として算出した輝度平均値である。具体的には、GAve.は、以下の式(6)で表される。
【0087】
【数1】
【0088】
上記式(6)において、δは計算を発散させえない微小な値であり、例えば、δ=0.00001である。また、Ylumは、パネル輝度を示すもので、0−1.0の値となる。Ylumは、(信号輝度/MAX輝度)^γで表すことができる。また、nは画素数、pixelsは全画素数を示している。このように、式(6)は、画像の画素の輝度値の対数の平均を累乗したものであり、言い換えれば輝度の相乗平均の値を示すものであり、その値は黒に大きく左右される。
【0089】
図9は、人間の視細胞の輝度に対する応答曲線を示す図である。図9に示すように、人間の視細胞の応答曲線は、対数を取った輝度の値(luminance(log cd/m2)に依存している。これは一般的には、ミカエリスメンテンの式(Mickaelis−Menten Equation)と呼ばれている。
GAveは、上記のように画素の輝度値の対数の平均を累乗したものであり、従って、GAveは、画像に対する目の反応(つまりどのくらい明るく見えるのか)を数値化したものであるといえる。つまり、GAveは、人間の感覚的な量に近いといえ、この値を映像特徴量として使用して補正用トーンカーブを生成し、アドバンス輝度変調部3で生成されたバックライト発光輝度に連動するトーンカーブを補正する。
【0090】
図2の構成において、ヒストグラム・APL検出部1で検出された映像信号のヒストグラムは、ジオメトリック補正部3に入力し、まずジオメトリックAve計算部41にて、GAveが計算される。
ここでは、上記式(6)に従って、以下の処理を行ってGAveが計算される。
(S1)ヒストグラムの各画素毎に正規化を行ってγ乗して、パネル輝度値を算出し、最小輝度値とパネル輝度値とを加算してその値のlog10の値をとる。
(S2)log10の結果を全ての画素について加算する。
(S3)加算した結果の平均のexpをとる。
【0091】
本発明に係る実施形態では、GAveの計算量が膨大にならないように、GAveをテーブル変換によって算出する。
ここでは、上記のS1(ヒストグラムの各画素毎に正規化を行ってγ乗し、パネル輝度値を算出し、最小輝度値とパネル輝度値とを加算してその値のlog10の値をとる処理)と、上記のS3(全ての画素について加算した結果の平均のexpをとる処理)とをテーブル変換によって実行する。つまり、式(6)の演算をその都度行うのではなく、S1とS3については、予め変換テーブルをメモリに記憶させておき、その変換テーブルを用いることによって所望の演算を行う。
【0092】
また、上記のS2に関しては、S1で得られた結果を全ての画素について加算する演算を行うが、ここではヒストグラムを使用して演算を行っているため、フレームごとの加算回数を256回で抑えることができ(256階調で量子化されている場合)、演算量を膨大とすることなくGAveを計算することができる。
なお、本発明に係る実施形態では、上記式(6)の演算をその都度行ってGAveを得るようにする手法の採用を排除するものではない。また、GAveは、ウィンドウサイズによってその値が変わるので、ウィンドウサイズに応じて演算領域を変化させるなどの調整を行うとよい。
【0093】
ジオメトリックAve計算部41から出力されたGAveの値は、ゲイン計算部42に入力され、GAveの値に基づいてゲインが計算される。
図10は、ゲイン計算部42で計算するゲインについて説明するための図で、GAveとゲインとの関係を示すものである。ゲイン計算部42は、図10に示すような関係に従って、ジオメトリックAve計算部41から出力されたGAveに基づいてゲインを計算する。この場合、GAveが低輝度から中輝度の範囲では、所定値(ここでは1<ゲイン≦2)のゲインが得られるものとし、高輝度領域では、ゲインは1、つまりゲインによる映像信号の補正は行われないものとする。
【0094】
1より大きいゲインを設定するGAveの低中輝度領域と、ゲインを1として設定する高輝度領域との境界をMAXポイントとする。MAXポイントは、ゲインによって映像信号の輝度を増加させる領域の上限であり、GAveの中間輝度領域に設定される。
このMAXポイントの位置は、表示装置の設計上の感応テスト等によって決定される。あるいはMAXポイントを設定するメニューを用意し、ユーザ操作によってMAXポイントを設定するようにしてもよい。また、MAXポイントから低輝度側の最大ゲインまでの特性は、視覚特性により決定される曲線に基づいて決められる。図10において、rは、ゲイン特性の設定可能範囲を示している。
【0095】
ゲイン計算部42で計算されたゲインの値は、次にテンポラリフィルタ43に入力される。テンポラリフィルタ43は、アドバンスト輝度変調部3に備えられたテンポラリフィルタ32と同様の目的で設けられるもので、入力映像信号の急激な変化による過度のゲイン変化を抑制するためのものである。ここでは、テンポラリフィルタ43として、アドバンスト輝度変調部3のテンポラリフィルタ32と同じ特性のローパスフィルタを使用することができる。
【0096】
トーンカーブデザイン部44は、テンポラリフィルタ43から出力されたゲインに従って、補正用トーンカーブのLUTを生成する。アドバンスト輝度変調部3のトーンカーブデザイン部33では、図8(C)もしくは図8(D)に示したように、折れ線状のトーンカーブを生成するようにしているが、ジオメトリック補正部4のトーンカーブデザイン部44では、図11に示すような上に凸の曲線状のトーンカーブを生成する。これは主に、中間輝度領域における画面の明るさを確保するためである。
【0097】
例えば、トーンカーブをリニアなものとして映像信号を補正してしまうと、映像信号の飽和が生じて映像が不自然になることがある。本実施形態では、ゲイン計算部42で計算されたゲインに基づいて補正用トーンカーブを生成し、映像信号の飽和を防ぎつつ、表示画像を明るく見せるようにしている。
ここでは、図11に示すように、入力階調の0階調から10%の階調までは、ゲイン計算部42で計算したゲインをそのまま反映させてリニアなトーンカーブとする。そして10%より大きい入力階調については、高階調になるに従って徐々にゲインを弱くしていくことで、図11に示すような上に凸のトーンカーブを生成する。
つまり、トーンカーブデザイン部44は、ゲイン計算部42で計算したゲインを用い、低階調の特定領域では計算したゲインを適用し、高階調になるに従って適用したゲインを低減させて凸形状のトーンカーブを生成する。
【0098】
ここで例えばAPLを特徴量として、上記のようなトーンカーブを生成することも考えられるが、APLはGAveに比較して人間の感覚と一致しないため、ユーザが本来より暗く感じる映像に限定して補正を行うことができない。このため、十分な輝度をもつ映像に対しても補正を行ってしまい、その場合には、過度に輝度を上げてしまって映像品位を悪化させることにもなりかねない。本実施形態のように、GAveに基づいてトーンカーブを生成すれば、人間が本来よりも暗く感じる映像について輝度を上げる補正を行うことができるようになり、より最適な補正が可能となる。
【0099】
<低階調リニア化処理部>
上記のジオメトリック補正は、主に暗いシーンでゲインが大きく持ち上がることが特徴となるが、ジオメトリック補正部4のトーンカーブデザイン部44で生成した上に凸状のトーンカーブをそのまま使用してしまうと、所謂黒浮きや中間調以下でのノイズが目立つという不具合が生じる。これらを解消するため、低階調リニア化処理部45では、トーンカーブデザイン部44で生成したトーンカーブに対して、低階調側の特定領域がリニアにとなるように生成し直す処理を行う。つまり、トーンカーブの低階調側の特定領域のゲインを1として、補正を行わないようにする。ここではゲインを1とするリニア領域は、一例として、入力階調の低階調側12%までの領域に設定することができる。
【0100】
図12は、低階調リニア化処理部で修正するトーンカーブを示す図で、図12(A)は、トーンカーブデザイン部44で生成したトーンカーブの一例を示す図、図12(B)は図12(A)のトーンカーブに対して低階調リニア化処理部45で低階調部分がリニアとなるように修正した状態を示す図である。
上に凸の形状を持つトーンカーブによる補正は、階調が0〜255の全領域でスムーズな特性となっている方が、視覚特性上自然である。しかしながら、低階調領域については、若干の輝度上昇であっても、ノイズの見え方や黒浮き量が大幅に変わる場合も多い。そのために、極めて階調(ここでは輝度)が低い領域については、補正を一切行わない方がよい場合もある。
【0101】
そこで、低階調リニア化処理部45では、GAveの値に応じて、補正を行わない領域(リニア領域)Lを設定する。リニア領域Lの入力階調の上限をニーポイントkとする。そして、このリニア領域Lの入力階調幅を映像の状態に応じて変化させるようにする。例えば、GAveが大きいときには、リニア領域Lを大きくとり(つまりニーポイントkを高階調側に設定することにより)、中間階調の映像を持ち上げつつノイズの上昇を抑えるようにする。また、GAveが小さい場合には、リニア領域Lを小さくとり(つまりニーポイントkを低階調側に設定することにより)、比較的階調が低めの中間階調領域も持ち上げるようにする。
【0102】
<<バックライトエンハンス部9>>
図13は、バックライトエンハンス部9のさらに具体的な構成例を示す図である。バックライトエンハンス部9には、ディストーションモジュール31で生成され、テンポラリフィルタ32を介して出力された発光輝度レベルBLreducedと、ジオメトリックAve計算部41で計算されたGAveとが入力される。
バックライトエンハンス部9は、BL(バックライト)ゲイン計算部91、テンポラリフィルタ92、乗算器93、及び黒レベル補正部94を有している。BLゲイン計算部91は、入力したGAveの値を用いてバックライトの発光輝度レベルを補正するためのバックライトゲインを生成する。
【0103】
図14は、BLゲイン計算部91でバックライトゲインの計算に用いるテーブルの一例を示す図である。表示装置では、図14に示すようなGAveとバックライトゲイン(BL Gain)との関係を規定するテーブルを所定の記憶手段に記憶しておき、BLゲイン計算部91は、ジオメトリックAve計算部41から出力されたGAveに基づいて、上記テーブルを参照し、GAveに応じたバックライトゲインの値を得る。
図14に示すように、バックライトゲインの値は、GAveが低い(画面が暗い)領域では1.0、つまりゲインをかけない値とし、GAveが高い(画面が明るい)領域では、バックライトゲインを例えば2.0として、バックライトの光源輝度を増大させる値とする。これにより、より明るい環境下で明るい画面が暗く感じる場合であっても、ジオメトリックAveに基づく明るい画面のときに、バックライトの輝度を増大させて明るい画面とすることができる。
【0104】
テンポラリフィルタ92は、アドバンスト輝度変調部3に備えられたテンポラリフィルタ32、及びジオメトリック補正部4に備えられたテンポラリフィルタ43と同様の目的で設けられるもので、入力映像信号の急激な変化によるバックライトゲインの過度の変化を抑制し、バックライトゲインをスムーズに変化させるためのものである。
【0105】
テンポラリフィルタ92から出力されたバックライトゲインは、乗算器93にて、発光輝度レベルBLreducedが示すデューティに乗算される。
ここでは、光源ユニットに対して出力するデューティを Duty´とし、BLreducedが示すデューティをDutyとするとき、
Duty´=Duty × BL Gain ・・・(7)
によってBLreducedのDutyを増幅する。
【0106】
このように、バックライトエンハンス部9では、ディストーションモジュール31でターゲットCRに近くなるように選択された発光輝度レベルBLreduced(ここではDuty)に対して、明るい画像ではDutyを増幅する方向に調整する。つまり、多くの場合、BLreducedとしては、映像のディストーションに基づいて、バックライトの発光輝度レベルを下げて省電力化を図る方向の値が選択されるが、バックライトエンハンス部9では、この値(BLreduced)に対して、明るい画像においては再度発光輝度レベルを増幅して明るくする処理を行う。
このとき、明るい画像においてバックライトの発光輝度レベルを増幅することによる黒レベルの浮きを抑えるために、黒レベル補正部94によって映像信号の黒レベルを補正する。
【0107】
黒レベル補正部94は、テンポラリフィルタ92から出力されたバックライトゲインを入力し、バックライトゲインに基づいて映像信号の黒レベルを補正するためのLUTを計算する。例えば、バックライトの発光輝度が2倍になれば、画面上の黒の輝度も2倍になる。このときに黒浮きによるコントラスト感が低下しないようにするために、黒輝度の上昇分だけ低階調側の信号を潰すようなLUTを作成する。
【0108】
例えば、入力映像信号の階調と画面輝度との関係は以下の式(8)のようにモデル化されている。
【0109】
【数2】
【0110】
ここで、Yは液晶パネルでの表示輝度、BLはバックライトの発光輝度レベル(バックライトデューティ)、CVは液晶パネルに入力される画素値、CRは液晶パネルのコントラストである。
【0111】
ここで、参照用の発光輝度レベルBLrefでバックライトを発光させたときに階調0を表示したときの表示輝度に対して、バックライトの発光輝度レベルがBL´になったときの表示輝度を一定に保つたの画素値をCvとするとき、以下の式(9)が成り立つ。
【0112】
【数3】
【0113】
となる。BLGainは、バックライトエンハンス部9のテンポラリフィルタ92から出力されたバックライトゲインである。(14)式のCV以下の階調では、出力階調を全て0階調とするLUTを計算する。
【0114】
図15は、バックライトエンハンス部の黒レベル補正部で生成されたLUTの例を示す図である。バックライトエンハンス部9の黒レベル補正部94では、上記式(14)に従って、テンポラリフィルタ92から出力されたバックライトゲインと、パネルコントラストの値とを使用してCVを計算する。そして図15に示すように、入力画素(階調)値がCV以下の領域では、出力階調を0とする(つまり黒とする)LUTを作成する。CVより高階調の領域では、入力階調が最高階調(255)のときの出力階調を255とし、この点と、入力階調CVの点とを直線で結んだ特性をもつLUTとする。
これによりバックライトゲインによる黒輝度の上昇分だけ低階調側の信号を潰すことができ、明るい画面でバックライトを明るくしたときの低階調部分のコントラスト感の悪化を防ぐことができる。
【0115】
上記のように、入力映像信号の特徴量に応じて、バックライトの発光輝度を低下させながら、映像信号のゲインを上げて発光輝度低下分を補償するようにしたアドバンスト輝度変調処理において、特徴量を用いて設定した発光輝度レベルに連動させて生成したトーンカーブを人間の感覚的な量に近い映像特徴量であるジオメトリック平均値(GAve)に基づいて生成したトーンカーブで補正するとともに、ジオメトリック平均値(GAve)が高い(画面が明るい)ときにバックライトの発光輝度を増大させ、このときに黒側が明るくなることによるコントラストの低下を防ぐために、映像信号の黒領域を補正することで、消費電力を増大させることなく、かつ映像を破綻させることなく、明るい環境においてもコントラスト感を悪化させることなく画面が明るく見るようにすることができる。
【符号の説明】
【0116】
1…ヒストグラム・APL検出部、2…BL(バックライト)輝度レベル設定部、3…アドバンスト輝度変調部、4…ジオメトリック補正部、5…画質補正部、6…RGB調整部、7…FRC部、8…乗算器、31…ディストーションモジュール、32…テンポラリフィルタ、33…トーンカーブデザイン部、41…ジオメトリックAve計算部、42…ゲイン計算部、43…テンポラリフィルタ、44…トーンカーブデザイン部、45…低階調リニア化処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、該液晶パネルを照射する光源とを備えた表示装置において、
入力映像信号の画素値の対数の平均を累乗してジオメトリック平均値を算出するジオメトリック平均計算部を有し、該ジオメトリック平均計算部が計算したジオメトリック平均値に基づいて前記光源の発光輝度を動的に制御する光源輝度制御部とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、前記入力映像信号の特徴量に基づいて前記光源の発光輝度の制御に使用する発光輝度レベルを選択する輝度レベル選択部を有し、該輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを前記ジオメトリック平均計算部が計算したジオメトリック平均値に基づいて補正することで、前記光源の発光輝度を動的に制御することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置において、前記光源輝度制御部は、予め定められた前記ジオメトリック平均値と前記光源の発光輝度を補正するための補正値との関係に基づいて前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを補正するものであり、
前記ジオメトリック平均値と前記補正値との関係は、前記ジオメトリック平均値が所定値より大きいときに前記発光輝度を増大させ、前記ジオメトリック平均値が前記所定値以下のときには前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを維持する関係であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の表示装置において、記光源の発光輝度に連動させて映像信号に適用するトーンカーブを生成するためのトーンカーブ生成部と、前記ジオメトリック平均値に基づく前記光源発光輝度の補正値に基づいて決定された範囲の低階調領域の映像信号を、階調ゼロの黒の階調値に変換するための黒レベル補正部とを有し、該黒レベル補正部で生成された黒補正用データによって、前記トーンカーブ生成部で生成したトーンカーブを補正することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置において、前記ジオメトリック平均値に基づいて前記トーンカーブ生成部で生成されたトーンカーブを補正するための補正用トーンカーブを生成する補正用トーンカーブ生成部とを有し、
該補正用トーンカーブ生成部は、予め定められたジオメトリック平均値とゲインとの関係に基づいて、該ジオメトリック平均値計算部で計算されたジオメトリック平均値に対応するゲインを計算し、計算したゲインを用いてトーンカーブを生成するものであり、
前記補正用トーンカーブ生成部が生成するトーンカーブは、入力階調を横軸、出力階調を縦軸にとったときに上に凸の形状を有し、中間階調域に凸の頂部を有する凸形状のトーカーブであって、
該凸形状のトーンカーブは、低階調の特定領域では前記ゲイン計算部が計算したゲインを適用し、高階調になるに従って前記適用したゲインを低減させて生成した凸形状のトーンカーブに対し、低階調部分の特定領域のゲインを1とするように修正したトーンカーブであることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置において、前記予め定められたジオメトリック平均値とゲインとの関係は、ジオメトリック平均値が特定の値以下の場合には、1より大きいゲインを設定し、ジオメトリック平均値が前記特定の値より大きい場合には、ゲインを1とする関係であることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1に記載の表示装置において、入力映像信号の特徴量に対する前記光源の発光輝度を規定した輝度制御特性に基づいて、参照用の発光輝度レベルを設定する輝度レベル設定部を有し、
前記輝度レベル選択部は、前記入力映像信号のヒストグラムを用い、前記液晶パネルに設定した目標コントラストのときに表示可能な映像輝度範囲のうち、前記光源の発光輝度レベルに応じて変化するヒストグラム上の表現不可能な映像の頻度を評価し、該評価した値に基づいて、前記光源の発光輝度の制御に使用する発光輝度レベルを選択し、
前記トーンカーブ生成部は、該輝度レベル選択部で選択された発光輝度レベルと、前記輝度レベル設定部から出力された参照用の発光輝度レベルとを用いて前記トーンカーブに適用するゲインを決定し、該決定したゲインを低階調部分に適用するとともに、前記決定したゲインより小さいゲインを高階調部分に適用したトーンカーブを生成することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶表示装置において、前記輝度レベル選択部は、前記ヒストグラムにおいて、前記目標コントラストのときに表示可能な映像輝度範囲のうち、前記光源の特定の発光輝度レベルにおいて表現できない映像輝度範囲の画像の頻度に所定の重み係数を乗算して評価し、選択可能な前記光源の発光輝度レベルの全てについて前記評価を実行し、前記評価によって得られた評価値が最も低い発光輝度レベルを、前記輝度レベル設定部で設定された前記参照用の発光輝度レベルを超えない範囲で選択することを特徴とする表示装置。
【請求項1】
入力映像信号による映像を表示する液晶パネルと、該液晶パネルを照射する光源とを備えた表示装置において、
入力映像信号の画素値の対数の平均を累乗してジオメトリック平均値を算出するジオメトリック平均計算部を有し、該ジオメトリック平均計算部が計算したジオメトリック平均値に基づいて前記光源の発光輝度を動的に制御する光源輝度制御部とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、前記入力映像信号の特徴量に基づいて前記光源の発光輝度の制御に使用する発光輝度レベルを選択する輝度レベル選択部を有し、該輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを前記ジオメトリック平均計算部が計算したジオメトリック平均値に基づいて補正することで、前記光源の発光輝度を動的に制御することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置において、前記光源輝度制御部は、予め定められた前記ジオメトリック平均値と前記光源の発光輝度を補正するための補正値との関係に基づいて前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを補正するものであり、
前記ジオメトリック平均値と前記補正値との関係は、前記ジオメトリック平均値が所定値より大きいときに前記発光輝度を増大させ、前記ジオメトリック平均値が前記所定値以下のときには前記輝度レベル選択部で選択した発光輝度レベルを維持する関係であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の表示装置において、記光源の発光輝度に連動させて映像信号に適用するトーンカーブを生成するためのトーンカーブ生成部と、前記ジオメトリック平均値に基づく前記光源発光輝度の補正値に基づいて決定された範囲の低階調領域の映像信号を、階調ゼロの黒の階調値に変換するための黒レベル補正部とを有し、該黒レベル補正部で生成された黒補正用データによって、前記トーンカーブ生成部で生成したトーンカーブを補正することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置において、前記ジオメトリック平均値に基づいて前記トーンカーブ生成部で生成されたトーンカーブを補正するための補正用トーンカーブを生成する補正用トーンカーブ生成部とを有し、
該補正用トーンカーブ生成部は、予め定められたジオメトリック平均値とゲインとの関係に基づいて、該ジオメトリック平均値計算部で計算されたジオメトリック平均値に対応するゲインを計算し、計算したゲインを用いてトーンカーブを生成するものであり、
前記補正用トーンカーブ生成部が生成するトーンカーブは、入力階調を横軸、出力階調を縦軸にとったときに上に凸の形状を有し、中間階調域に凸の頂部を有する凸形状のトーカーブであって、
該凸形状のトーンカーブは、低階調の特定領域では前記ゲイン計算部が計算したゲインを適用し、高階調になるに従って前記適用したゲインを低減させて生成した凸形状のトーンカーブに対し、低階調部分の特定領域のゲインを1とするように修正したトーンカーブであることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置において、前記予め定められたジオメトリック平均値とゲインとの関係は、ジオメトリック平均値が特定の値以下の場合には、1より大きいゲインを設定し、ジオメトリック平均値が前記特定の値より大きい場合には、ゲインを1とする関係であることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1に記載の表示装置において、入力映像信号の特徴量に対する前記光源の発光輝度を規定した輝度制御特性に基づいて、参照用の発光輝度レベルを設定する輝度レベル設定部を有し、
前記輝度レベル選択部は、前記入力映像信号のヒストグラムを用い、前記液晶パネルに設定した目標コントラストのときに表示可能な映像輝度範囲のうち、前記光源の発光輝度レベルに応じて変化するヒストグラム上の表現不可能な映像の頻度を評価し、該評価した値に基づいて、前記光源の発光輝度の制御に使用する発光輝度レベルを選択し、
前記トーンカーブ生成部は、該輝度レベル選択部で選択された発光輝度レベルと、前記輝度レベル設定部から出力された参照用の発光輝度レベルとを用いて前記トーンカーブに適用するゲインを決定し、該決定したゲインを低階調部分に適用するとともに、前記決定したゲインより小さいゲインを高階調部分に適用したトーンカーブを生成することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶表示装置において、前記輝度レベル選択部は、前記ヒストグラムにおいて、前記目標コントラストのときに表示可能な映像輝度範囲のうち、前記光源の特定の発光輝度レベルにおいて表現できない映像輝度範囲の画像の頻度に所定の重み係数を乗算して評価し、選択可能な前記光源の発光輝度レベルの全てについて前記評価を実行し、前記評価によって得られた評価値が最も低い発光輝度レベルを、前記輝度レベル設定部で設定された前記参照用の発光輝度レベルを超えない範囲で選択することを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−128325(P2011−128325A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285896(P2009−285896)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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