説明

表示装置

【課題】冷却ファンや温度センサを用いずに、簡易な構造で、表示パネルを背面側から照明する複数の光源周囲で温度にムラが発生するのを抑えることができる薄型表示装置を提供する。
【解決手段】薄型表示装置1が、第一の基板(LED基板23)と第二の基板(ドライバIC28とLCDドライバ基板29)と、第三の基板(ドライバIC31とLEDドライバ基板32)とを備える。第二の基板と第三の基板とが、筐体内において、LCDパネル21、リアケース24、シャーシ26により形成される密閉体の下部に設けられている。筐体は、下部に吸気口、上部に排気口を備えている。また、シャーシ26の背面側下部を含む領域に、シャーシ26の裏面に面接触し、かつ、第二の基板と第三の基板とに接触する伝熱シート27部材が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶(Liquid Crystal Display:LCD)パネルを用いた薄型表示装置は、LCDパネルを背面から照射するバックライトを備えている。近年、バックライトの光源として、環境に対する配慮等の理由から発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)が採用されることが多くなっている。また、高画質の薄型表示装置のバックライトは、高輝度、かつ面内の輝度ムラを低減させる目的で、LEDをLCDパネルの直下に略等間隔に配置した直下型のバックライト構造が用いられている。
【0003】
図7は、薄型表示装置の断面図の例である。薄型表示装置101は、画像を表示するLCDモジュール120を、正面側からベゼル102、背面側からリアカバー103で収容した構造を有している。リアカバー103には、下部に吸気口103a、上部に排気口103a’が設けられている。LCDモジュール120は、LCDパネル121の背面側に、直下型のバックライトとしてLED122を略等間隔で実装したLED基板123を配置した構造となっている。LCDパネル121は、正面側、背面側に開口を形成した枠体のフロントケース124、リアケース125により挟み込んで保持されている。リアケース125の背面側の開口には、LED基板123を保持したシャーシ126が配置され、LCDパネル121、リアケース125、シャーシ126により、バックライト内は密閉された構造を有している。シャーシ126の材質は、熱伝導性のよいアルミニウム等の板材であり、図示しないネジ等により、LED基板123と熱抵抗が少ない状態で固定されている。
【0004】
LCDパネル121の底面側の端部には、フレキシブル配線基板121a が備えられている。フレキシブル配線基板121a は、LCDパネル121を制御するドライバIC128を実装したLCDドライバ基板129と接続されている。LCDドライバ基板129は、リアケース125と伝熱シート127とで押さえられて保持されている。伝熱シートは、フロントケース124の枠体内側に設けられている。シャーシ126の背面側の下部には、LED122を駆動制御するためのドライバIC131を実装したLEDドライバ基板132が、シャーシ126に設けたボスにネジ固定されている。
【0005】
なお、下記の特許文献1は、バックライト背面の所定の位置に、複数の冷却ファンと冷却ファンに対応した温度センサを設け、検出温度に応じて冷却ファンを駆動制御することにより、温度ムラを低減させる構造を有する表示装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−259001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示す薄型表示装置では、図7中の矢印に示すように、全てのLED122で発生した熱は、背面側に向かってLED基板123、シャーシ126に伝熱し、筐体内の空気に放熱される。このため、筐体内の空気の温度は上方に向かって上昇する。従って、シャーシ126の上部ほど放熱効率が低下するので、上部に配置したLED122ほど温度が高くなる。その結果、上部に配置されたLED122の周囲と下部に配置されたLED122の周囲との間で温度差が生じる。具体的には、温度分布としては、LED基板123の上部の方がより高温となることが測定によって判明している。複数のLED122において、設置位置によって温度差が生じるとLED122の輝度に差が生じるだけでなく、劣化の速度も変わってしまい、結果として輝度ムラが生じてしまう。さらに、LED基板123を駆動制御するドライバIC131で発生した熱は、配置位置近傍で筐体内の空気に放熱される構造となっているため、より上部の空気の温度が上昇する傾向となり、さらに温度差が増す(温度ムラが大きくなる)原因となっている。
【0008】
また、特許文献1が開示する構造のように、冷却ファンと温度センサを用いて温度制御を行い、温度ムラを減少させる構造では、冷却ファンと温度センサを制御範囲毎に複数設置する必要があるので、多くのコストが生じてしまう。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。本発明は、冷却ファンや温度センサを用いずに、簡易な構造で、表示パネルを背面側から照明する複数の光源の周囲で温度にムラが発生するのを抑えることができる薄型表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態の表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルを背面側から照明する複数の光源が設けられた第一の基板と、前記表示パネルを駆動制御する第二の基板と、前記第一の基板に設けられた前記複数の光源を駆動制御する第三の基板と、前記第一の基板を背面側から支持する放熱性の金属板と、前記表示パネルと前記金属板とを保持して密閉体を形成する保持部材と、前記密閉体を収容する筐体とを備える。前記筐体は、下部に吸気口、上部に排気口を備えており、前記第二、第三の基板は、前記筐体内における前記密閉体の下部に設けられており、前記金属板の背面側下部を含む領域に、該金属板の裏面に面接触し、かつ前記第二の基板と前記第三の基板とに接触する伝熱部材が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表示装置によれば、冷却ファンや温度センサを用いずに、簡易な構造で、表示パネルを背面側から照明する複数の光源の周囲で温度にムラが発生するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】薄型表示装置の正面側斜視図である。
【図2】薄型表示装置の背面側斜視図である。
【図3】LCDモジュールの分解斜視図である。
【図4】LCDモジュールの断面図である。
【図5】本実施形態の表示装置の放熱構造を説明する図である。
【図6】他の実施形態の薄型表示装置の断面図の例である。
【図7】薄型表示装置の断面図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1、図2は、本実施形態の表示装置の外観の例を示す図である。以下では、本実施形態の表示装置が薄型表示装置である場合を例にとって説明する。図1は、薄型表示装置の正面側斜視図を示し、図2は、薄型表示装置の背面側斜視図を示す。
【0014】
図1、2に示す薄型表示装置1は、画像を表示するLCDモジュール20を正面側からベゼル2、背面側からリアカバー3で収容した構造を有する。ベゼル2にはLCDモジュール20の画面表示範囲を露出する開口が設けられている。リアカバー3には、上部と下部に通気口3a(下部に吸気口3a−1、上部に排気口3a−2)が設けられている。また、薄型表示装置1は、スタンド50や図示しない壁掛け金具で保持される。
【0015】
次に、図3、4を参照して、LCDモジュール20の構造を説明する。図3は、LCDモジュールの分解斜視図を示す。図4は、LCDモジュールの断面図を示す。LCDモジュール20は、LCDパネル21の背面側に直下型のバックライトとして、発光ダイオード(以下、LED)22を略等間隔で実装したLED基板23を配置した構造を有する。すなわち、LED基板23は、表示パネル(LCDパネル21)を背面側から照明する複数の光源が設けられた基板(第一の基板)である。LCDパネル21は、表示パネルである。LCDパネル21は、正面側、背面側に開口を形成した枠体のフロントケース24、リアケース25により挟み込んで保持されている。リアケース25の背面側の開口には、LED基板23を背面側から支持する放熱性の金属板であるシャーシ26が配置されている。シャーシ26は、例えば、熱伝導性のよいアルミニウム等の板材である。シャーシ26は、図示しないネジ等によりLED基板23と熱抵抗が少ない状態で固定されている。
【0016】
LCDパネル21、リアケース25、シャーシ26により、バックライト内は密閉された構造となっている(密閉体が形成される)。すなわち、リアケース25は、表示パネル(LCDパネル21)と金属板(シャーシ26)とを保持して密閉体を形成する保持部材である。薄型表示装置1は、上記形成された密閉体を収容する筐体を有する。この筐体は、後述する図5中に示すベゼル2とリアカバー3とにより形成される。
【0017】
また、LCDパネル21とLED基板23の間には、拡散板、反射板等の光学部材(図示を省略)が配置されている。シャーシ26の背面側下部には、弾性を有するシリコン等の材質で形成された伝熱部材である伝熱シート27が、シャーシ26の背面側から底面側に向かって略L字形状となるように折り曲げて配置されている。すなわち、金属板(シャーシ26)の背面側下部を含む領域に、該金属板の裏面に面接触し、かつ第二の基板(ドライバIC28とLCDドライバ基板29)と第三の基板(ドライバIC31とLEDドライバ基板32)とに接触する伝熱部材が設けられている。
【0018】
LCDパネル21の底面側の端部には、フレキシブル配線基板21aが備えられており、LCDパネル21を駆動制御する電気実装部品であるドライバIC28を搭載する回路基板であるLCDドライバ基板29と接続されている。ドライバIC28とLCDドライバ基板29とは、LCDパネル21を駆動制御する第二の基板を構成する。LCDドライバ基板29は、ドライバIC28を伝熱シート27に接触させ、フロントケース24の枠体内側に設けたクッション30で押さえ保持されている。シャーシ26の背面側の下部には、LED22を駆動制御する電気実装部品であるドライバIC31を搭載した回路基板であるLEDドライバ基板32が配置されている。ドライバIC31とLEDドライバ基板32とは、LED22を駆動制御する第三の基板を構成する。LCDドライバ基板29、LEDドライバ基板32は、筐体内における上記密閉体の下部に設けられている。
【0019】
LEDドライバ基板32はドライバIC31を伝熱シート27に接触させ、シャーシ26に設けたボスにネジ固定されている。このとき、LCDドライバ基板29とLEDドライバ基板32とは、LCDドライバ基板29の面とLEDドライバ基板32の面とで伝熱シート27に沿って略L字形状を形成するように配置されている。すなわち、LCDドライバ基板29とLEDドライバ基板32とは、LCDドライバ基板29が有する面とLEDドライバ基板32が有する面とがなす角度が略直角になるように配置されている。
【0020】
図5は、本実施形態の表示装置の放熱構造を説明する図である。図5中に示すLED基板23に実装されたLED22のうち、シャーシ26の下部に配置したLEDドライバ基板32に対向する範囲に配置されたLED22をLED22aとし、LED22aより上方に配置されたLED22をLED22bとする。
【0021】
薄型表示装置1が備える筐体を構成するリアカバー3の下部に吸気口3a−1、上部に排気口3a−2が設けられている。すなわち、薄型表示装置1は、自然対流によって筐体底面側から天面側に向かって通気し、筐体内部の熱を冷却する構造を有する。LCDドライバ基板29に実装したドライバIC28とLEDドライバ基板32に実装したドライバIC31で発生した熱は、主に伝熱シート27を介してシャーシ26に伝熱し、冷却される。
【0022】
このとき、シャーシ26の下部は、ドライバIC28、ドライバIC31から熱が発生するのに加えて、LCDドライバ基板29とLEDドライバ基板32が筐体内の通気に対して遮蔽する働きをしているため、温度が上昇する。また、シャーシ26の上部は、シャーシ26の下部で通気に対する放熱が抑えられ、流入する空気の温度が下がるので、図7で示した従来の構成に比べて放熱効率が上昇する。従って、シャーシ26の下部に配置されたLED22aで発生した熱は、背面側に向かってLED基板23を介してシャーシ26に伝熱されるが、シャーシ26の下部の温度が上昇しているので、伝熱効率が低下する。これによりLED22aの周囲及びLED22a近傍のLED基板23の温度が上昇する。一方、シャーシ26の上部に配置されたLED22bで発生した熱は、背面側に向かってLED基板23を介してシャーシ26に伝熱されるが、シャーシ26の上部からの放熱効率が上昇している。従って、LED22bの周囲及びLED22b近傍のLED基板23の温度は従来の構成に比べて下がる。これにより、薄型表示装置1によれば、ドライバICを冷却するとともに、冷却ファンや温度センサを用いずに、直下型のバックライトの上部と下部の温度差を小さくし、温度ムラを従来技術に比べて抑制することができる。従って、簡易かつ安価な構造でバックライトの温度ムラを抑制することができる。
【0023】
図6は、本発明の他の実施形態の薄型表示装置の断面図の例である。図6に示す薄型表示装置10の全体構成は、前述した薄型表示装置1の全体構成と同様である。図6中に示す構成要素のうち、図4、図5に示す薄型表示装置1が備える構成要素と同符号が付けられたものは、図4、図5に示す薄型表示装置1が備える構成要素と同様である。図6を参照して、薄型表示装置10の構成のうち、薄型表示装置1と異なる部分について主に説明する。
【0024】
薄型表示装置10は、LCDモジュール20を正面側からベゼル2、背面側からリアカバー3で収容した構造を有する。LCDモジュール20は、LCDパネル21の背面側に直下型のバックライトとして、シャーシ26に保持されたLED基板23を備える構造を有する。シャーシ26の背面側の下部には、弾性を有するシリコン等の材質で形成した伝熱シート27が設けられている。また、シャーシ26の背面側の下部には、LCDパネル21を駆動制御するドライバIC28とLED基板23を駆動制御するドライバIC31とを実装したドライバ基板33が設けられている。すなわち、ドライバ基板33は、第二の基板(図4のドライバIC28とLCDドライバ基板29)と第三の基板(図4のLEDドライバ基板32)の機能を備える基板である。もちろん、シャーシ26の背面側下部に上記第二の基板、第三の基板を別個に設けるようにしてもよい。
【0025】
ドライバ基板33とシャーシ26との間には、シャーシ26の裏面に面接触するとともに、ドライバ基板33に接触する伝熱シート27が設けられている。このために、ドライバ基板33は、シャーシ26に設けられたボスにネジ固定されている。また、リアカバー3には、上部に排気口3a−2、下部に吸気口3a−1が設けられている。吸気口3a−1は、ドライバ基板33(第二の基板および第三の基板)の筐体下部側の端部より上方に設けられている。
【0026】
薄型表示装置10の放熱構造について説明する。薄型表示装置10は、吸気口3a−1から吸気した気体を自然対流によって筐体底面側から天面側の排気口3a−2に向かって通気し、筐体内部の熱を冷却する構造を有する。ドライバ基板33に実装されたドライバIC28とドライバIC31とで発生した熱は、主に伝熱シート27を介してシャーシ26に伝熱し冷却される。このとき、シャーシ26の下部においては、リアカバー3の吸気口3a−1がドライバ基板33の下部側の端部より上方に設けられている。従って、ドライバ基板33が筐体内の通気に対して遮蔽する働きをしているため、シャーシ26の下部の温度が上昇する。また、シャーシ26の上部は、シャーシ26の下部で通気に対する放熱が抑えられ、流入する空気の温度が下がるので、図7で示した従来の構成に比べて放熱効率が上昇する。
【0027】
これにより、LCDモジュール20の下部に配置されたLED22aで発生した熱は、背面側に向かってLED基板23を介してシャーシ26に伝熱されるが、シャーシ26の下部の温度が上昇しているので、伝熱効率が低下する。従って、LED22aの周囲及びLED22a近傍のLED基板23の温度が上昇する。一方、上部に配置されたLED22bで発生した熱は、背面側に向かってLED基板23を介してシャーシ26に伝熱されるが、シャーシ26の上部からの放熱効率が上昇している。従って、LED22bの周囲及びLED22b近傍のLED基板23の温度は従来の構成に比べて下がる。
【0028】
図6を参照して説明した薄型表示装置10によれば、LCDパネル21のドライバIC28とLED基板23のドライバIC31を同一の基板(ドライバ基板33)に実装する構成をとりつつ、前述した薄型表示装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、薄型表示装置10によれば、ドライバICを冷却するとともに、直下型のバックライトの上部と下部の温度差を小さくし、温度ムラを抑制することができる。また、冷却ファンや温度センサを用いずに、簡易かつ安価な構造で温度ムラを抑制することができる。
【符号の説明】
【0029】
1、10 薄型表示装置
2 ベゼル
3 リアカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネルを背面側から照明する複数の光源が設けられた第一の基板と、
前記表示パネルを駆動制御する第二の基板と、
前記第一の基板に設けられた前記複数の光源を駆動制御する第三の基板と、
前記第一の基板を背面側から支持する放熱性の金属板と、
前記表示パネルと前記金属板とを保持して密閉体を形成する保持部材と、
前記密閉体を収容する筐体とを備える表示装置であって、
前記筐体は、下部に吸気口、上部に排気口を備えており、
前記第二、第三の基板は、前記筐体内における前記密閉体の下部に設けられており、
前記金属板の背面側下部を含む領域に、該金属板の裏面に面接触し、かつ前記第二の基板と前記第三の基板とに接触する伝熱部材が設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第二、第三の基板は、電気実装部品と該電気実装部品を搭載する回路基板を備え、
前記第二、第三の基板は、前記第二の基板が備える回路基板の面と前記第三の基板が備える回路基板の面とがなす角度が直角となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記筐体が備える吸気口は、前記第二の基板および前記第三の基板の筐体下部側の端部より上方に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−242488(P2011−242488A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112781(P2010−112781)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】