説明

表示装置

【課題】簡易な構造で表示形状を表示することが可能な表示装置を安価に提供する。
【解決手段】可逆的に変形可能な材料からなるシート状の基材中に粒子が規則的に配列されてなり、その厚さ方向の変形量に応じて色調を変化させるシート状の色調変化シートと、前記色調変化シートに対向して配置され、押圧媒体の注入量に応じて変形する複数の変形部を有するアクチュエータと、前記各変形部の前記押圧媒体の注入量を変形部毎に独立して制御する押圧媒体制御手段と、前記色調変化シートと前記変形部との間に配置される押圧部材であって、前記色調変化シートへ対向する面に表示対象を表す凹形状または凸形状を有する押圧部材と、を備え、前記押圧媒体がチキソ性材料を含んでなり、前記押圧部材をゾル化するゾル化手段を備えることを特徴とする表示装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、詳しくは、構造色による発色機構を使用した表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造色は、特定の周期構造を有する材料において、ブラッグの法則に基づき特定の波長の光を干渉反射することにより得られるものである。このような構造色を呈する特定の周期構造として、例えば、単分散微粒子によるコロイド結晶、ブロック共重合体のミクロドメイン構造、界面活性剤のラメラ構造などがあげられる。
特許文献1に開示の構成では、構造色を呈する高分子ゲルを液体に浸析して、電界に応じて体積変化させることで、その周期を変化させて表示色(構造色)を変化させる。特許文献2に開示の構成では、弾性変形可能な充填材で周期的に配列したコロイド粒子を保持して複数の表示素子を形成し、各表示素子に対して個別の制御手段によりに外力を加えて構造色を変化させて、画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−11112号公報
【特許文献2】特開2009−20435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような表示装置において、様々な形状の表示対象を表示するために、ピクセル毎にコロイド結晶構造体を有する材料(例えば、コロイド結晶シート)と当該構造体を変形する制御装置を準備し、ピクセル単位でコロイド結晶シートの構造色を制御する方法が考えられる。しかし、このような構成では、装置が複雑化するため好ましくない。またコスト面でも不利である。
この問題に対して、本発明者らは比較的大きな面積のコロイド結晶シートと表示対象を表す凹凸形状の押圧面を有する押圧部材を準備し、押圧部材の押圧面をコロイド結晶シートへ押圧することで当該コロイド結晶の構造を変形して構造色を制御することを考えた。
しかしながら、比較的大きな面積のコロイド結晶シートをその面方向から押圧部材で押圧し、当該シートに充分かつ均等な色変化を生じさせるには、押圧部材へ大きな力をかける必要があった。また、表示形態に変化をもたせるには、複数の押圧部材を準備してそれらの押圧を制御する必要がある。
従って、複数の押圧部材へ充分な力を与えつつそれらの押圧状態を独立して制御することが要求されることとなるが、複雑な機構を採用することは現実的でない。表示装置には簡易な構成と安価な製造コストが要求されているからである。
本発明は前記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡易な構造で表示形状を表示することが可能な表示装置を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきたところ、押圧部材としてチキソ(チクソ:Thixotropy)性材料を利用することに気がつき、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の局面は次のように規定される。即ち、
可逆的に変形可能な材料からなるシート状の基材中に粒子が規則的に配列されてなり、その厚さ方向の変形量に応じて色調を変化させるシート状の色調変化シートと、
前記色調変化シートに対向して配置され、押圧媒体の注入量に応じて変形する複数の変形部を有するアクチュエータと、
前記各変形部の前記押圧媒体の注入量を変形部毎に独立して制御する押圧媒体制御手段と、
前記色調変化シートと前記変形部との間に配置される押圧部材であって、前記色調変化シートへ対向する面に表示対象を表す凹形状または凸形状を有する押圧部材とを備え、
前記押圧媒体がチキソ性材料を含んでなり、前記押圧媒体をゾル化するゾル化手段を備えることを特徴とする表示装置である。
【0006】
このように規定された表示装置では、チキソ性材料からなる押圧媒体は変形部に注入され、静置されることで流動性が低下してゲル化する。これにより押圧媒体が変形部から漏洩することが防止されるため、押圧媒体の注入量を変形部毎に独立して制御する押圧媒体制御手段に機械的に複雑な機構が要求されない。さらに、押圧媒体はゾル化手段によりその流動性が高められてゾル化する。これにより、変形部への押圧媒体の注入量の制御が容易となる。これにより表示形状に応じて変形部が変形して、これに伴って押圧部材が色調変化シートを押圧することにより表示形状が表示される。このように、本発明の表示装置によれば簡易な構造で表示形状を表示することができ、表示装置を安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1および実施例2における表示装置1の斜視図。
【図2】実施例1の表示装置1の縦断面図であり、図1におけるX−X線断面図。
【図3】実施例1の制御弁81の近傍拡大図であり、実施例1の動作を説明するための説明図。
【図4】実施例1の制御弁81の近傍拡大図であり、実施例1の動作を説明するための説明図。
【図5】図5(A)は、実施例2の制御弁101の縦断面図であり、図5(B)のX−X線断面図。図5(B)は、制御弁101が閉塞された状態を示す斜視図。
【図6】図6(A)は、実施例2の制御弁101の縦断面図であり、図6(B)のX−X線断面図。図6(B)は、制御弁101が開放された状態を示す斜視図。
【図7】実施例2の制御弁101の縦断面図。
【図8】実施例2の制御弁101の近傍拡大図であり、実施例2の動作を説明するための説明図。
【図9】実施例2の制御弁101の近傍拡大図であり、実施例2の動作を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここに、色調変化シートは、可逆的に変形可能な材料からなるシート状の基材中に粒子が規則的に配列されてなり、その厚さ方向の変形量に応じて色調を変化させるシート状の部材である。
ここで使用する可逆的に変形可能な材料としては、スチレン系軟質樹脂、軟質ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ハイドロエチルメタクリレート(HEMA)、アクリル系エラストマー等の有機系高分子材料をあげることができる。色調変化シートはこのような可逆的に変形可能な材料を基材とすることにより、後述の押圧部材の押圧によって変形しても、当該押圧が解除されれば、押圧前の状態に戻ることができる。さらに、押圧と解除を繰り返し行っても色調変化シートの変形における可逆性が低下しにくい。
色調変化シートの基材の中に粒子が規則的に配列される。規則的な配列としては、フォトニック結晶構造であることが好ましい。フォトニック結晶は、通常、可視域周辺の光の波長と同程度の周期で粒子が分布した構造を指す。このような構造を有するフォトニック結晶は、その周期と同程度の波長の光をブラッグ反射し、それに起因して特定の波長の光が増幅されて、いわゆる構造色を発する。このようなブラッグ反射による構造色の色調は、フォトニック結晶構造を形成する粒子配列の周期に依存する。これにより、粒子配列の周期を適宜設定することで所望の色調の構造色が得られる。さらに、粒子配列の周期を変化させることで構造色の色調を変化させることができる。本発明の表示装置はこの特性を利用して、所定の色で表示対象を表示するものである。即ち、後述の押圧部材を色調変化シートに押圧して色調変化シートを変形し、これに伴って色調変化シート内のフォトニック結晶構造を形成する粒子配列の周期を変化させて構造色の色調を変化させ、所定の色で表示対象を表示する。構造色は外光(自然光)を利用して発色することができるため、自然光を利用することとすれば、別途発光表示用の光源やバックライト装置を使用する場合に比べて、電力の消費を低減することができる。また、装置の簡略化が図れる。さらに、自然光を利用(反射)するため、屋外でも明るく発色して視認性が高い。尚、夜間や暗所で使用するために、別途発光表示用の光源やバックライト装置を使用してこれらの光を利用してもよい。
【0009】
フォトニック結晶構造の例として、コロイド結晶構造、ミクロドメイン構造などの構造体の他、薄膜を積層した構造(薄膜積層構造)をあげることができる。コロイド結晶構造は、コロイド粒子が所定間隔で周期的に配列した構造である。コロイド粒子は、粒径が約1nm〜約1000nm(10−9〜10−6m)の粒子であり、可視光が透過でき、ほぼ球形となる材質であれば特に限定されず、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、ホウ珪酸ガラス、アルミン酸カルシウム、ニオブ酸リチウム、カルサイト、酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化イットリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛、臭ヨウ化タリウム、ダイアモンドなどが使用できる。、また、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)などの強誘電体、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタル酸、塩化ビニル、アクリル、酸化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチルなど、ケイ素、ゲルマニウムを使用できる。また、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、SiO2、TiO2のいずれか2種以上の混合体や、これら1種をコアとして他の1種以上によりコアを被覆したコアシェル構造なども用いることができる。また、コロイド粒子の配列における規則性は、特に限定されないが、例えば、面心立方、体心立方、単純立方等を例示することができ、特に面心立方構造すなわち六方最密充填構造をとることができる。コロイド粒子を作成する方法は、UV(紫外線)重合、乳化重合、懸濁重合、二段階鋳型重合、化学気相反応法、電気炉加熱法、熱プラズマ法、レーザ加熱法、ガス中蒸発法、共沈法、均一沈殿法、化合物沈殿法、金属アルコキシド法、水熱合成法、ゾルゲル法、噴霧法、凍結法、硝酸塩分解法などを例示できる。これらのような方法で作成されるコロイド粒子を上記基材に懸濁された状態とする。そして重力沈降法、毛管法、電気泳動法、基板引き上げ法などにより、基材中にコロイド結晶構造を形成することができる。例えば、コロイド粒子を含有させた基材溶液を後述の透明基板に塗布してUV照射させることにより、色調変化シートを作成することができる。この方法によれば、基材中にコロイド粒子が自己組織的にコロイド結晶構造を形成するため、色調変化シートの作成が容易である。
【0010】
ミクロドメイン構造は、異種の高分子が化学結合してブロック共重合体を形成する構造である。ブロック共重合体としては、ポリ(スチレン−co−イソプレン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−ビニルピリジン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−エチレンプロピレン)ブロック共重合体などを例示できる。これらのブロック共重合体は、複数の繰り返し単位を有していてもよい。
【0011】
薄膜積層構造は、例えば、厚さ約5nm〜約20nmの薄膜を、約100nm〜約1000nmの間隔で積層した構造とすることができる。積層する薄膜の間には透明性を有する有機あるいは無機高分子材料からなる中間体を介在させることにより、積層する薄膜を所定の間隔に維持することができる。積層する薄膜として、金、銀、銅、アルミなどの金属や各種合金による金属薄膜や、酸化チタン、シリカなどの薄膜からなる誘電体薄膜を例示することができる。
【0012】
色調変化シートは、後述の押圧部材の押圧による厚さ方向への変形量が十分確保されるように、十分な厚さを有することが好ましい。例えば、色調変化シートの厚さは0.001mm〜10.0mm、好ましくは0.01mm〜1.00mmとする。このような厚さを備えることにより、押圧部材の押圧によって色調変化シートが十分変形して、規則的に配列した粒子の配列に変化が生じ、外部から視認した際の色調が変化することとなる。例えば、色調変化シートの基材内にコロイド粒子によるコロイド結晶構造を形成した場合には、当該色調変化シートが変形すると、その変形量に応じて当該コロイド結晶構造が変化し、構造色が変化して、外部から視認した際の色調が変化する。
【0013】
色調変化シートの基材中に、上記規則的に配列される粒子の他に、染料や顔料、光散乱材を含んでいても良い。また、色調変化シートと透明基板との間に色変換層を設けても良い。
【0014】
本発明の表示装置は、色調変化シートに対向して配置され、押圧媒体の注入量に応じて変形する複数の変形部を有するアクチュエータを備える。変形部は押圧媒体が注入可能な注入口と、注入された押圧媒体を保持する保持部とを備える。保持部の形態は例えば、袋状である。複数の変形部は色調変化シートの表示領域に対向して配置することができる。
【0015】
本発明の表示装置における押圧媒体はチキソ性材料を含んでなる。チキソ性材料の種類は特に限定されず、公知のチキソ性材料を採用することができる。チキソ性材料として、親油性または親水性スメクタイトの他、チキソトロピー性を有する有機クレーを例示することができる。使用するチキソ性材料種類は、必要とされる押圧媒体のゲル化状態における流動性(粘度)およびゾル化状態における流動性(粘度)、取り扱いの容易性、コスト等を考慮して決定することができる。押圧媒体はチキソ性材料を所定の溶媒に懸濁したものとすることができる。溶媒の種類はチキソ性材料に応じて適宜決定できる。押圧媒体のチキソ性材料の含有量は、必要とされる押圧媒体のゲル化状態における流動性およびゾル化状態の流動性等を考慮して決定できる。例えば、水に対して親水性スメクタイトを約0.5%〜約5.0%、好ましくは約1.0%〜約4.0%、さらに好ましくは約2.0%〜約3.0%を含んでなる押圧媒体を使用する。
【0016】
押圧媒体は流動性の高いゾル化状態で変形部に注入されて、流動性の低いゲル化状態とすることができる。押圧媒体をゲル化状態にする方法は静置や、実質的に押圧媒体のチキソ性材料に対してせん断力が付与しない状態とすることが挙げられる。一方、本発明の表示装置は押圧媒体をゾル化するゾル化手段を備える。押圧媒体は、押圧媒体に含まれるチキソ性材料に対して所定のせん断力が付与されるとゾル化する。ゾル化手段としては振動発生装置、超音波発生装置またはバブル発生装置であることが好ましい。簡易な構成で押圧媒体に対して均一にせん断力を付与することができるからである。
【0017】
本発明の表示装置は、各変形部の押圧媒体の注入量を変形部毎に独立して制御する押圧媒体制御手段を備える。押圧媒体制御手段は複数の変形部の一部、または全部に対して、押圧媒体の注入量を一括して制御しても良い。押圧媒体制御手段は押圧媒体の流圧を調節する調圧装置を備え、該調圧装置により変形部の押圧媒体の注入量を制御することとしてもよい。
【0018】
押圧媒体制御手段は、押圧媒体を供給する押圧媒体供給部と、変形部と押圧媒体供給部とを連通する連通部を有し、該連通部には押圧媒体の移動を制御する制御弁が備えられることが好ましい。簡易な構成で押圧媒体の変形部への注入量を制御することができるからである。連通部は複数の変形部のそれぞれに設けてもよいし、複数の変形部を所定のグループに分けて、グループ毎に設けてもよい。また、連通部を複数の変形部と押圧媒体供給部とを一括して連通(連結)するように形成し、当該連通部に備えられる制御弁により、複数の変形部に対する押圧媒体の移動を一括して制御してもよい。
【0019】
押圧媒体供給部には押圧媒体が貯留される。押圧媒体は流動性の高いゾル化した状態で貯留することができる。例えば、押圧媒体供給部は貯留する押圧媒体に対して、常時または間欠的に撹拌、振動等によって力(せん断力)を与えることにより、押圧媒体が流動性の高い状態で貯留することができる。また、押圧媒体供給部に貯留される押圧媒体がアクチュエータの変形部への注入または変形部からの排出時に流動性の高い状態としてもよい。押圧媒体を常時流動性の高い状態とするのに比べて、必要に応じて押圧媒体を流動性の高い状態とすれば、流動性の高い状態を維持するのに消費されるエネルギーを削減できる。
【0020】
押圧媒体制御手段において、制御弁は形状記憶合金材料を含み、押圧媒体制御部は制御弁に通電して制御弁の開閉状態を制御することが好ましい。電磁弁等を使用する場合に比べて、押圧媒体制御部を小型に形成することができるからである。また、簡易な構成で制御弁の開閉状態を保持することができるからである。当該制御弁はフィルム状の基材に形状記憶合金材料からなる層を形成したフィルム状の制御弁であることが好ましい。押圧媒体制御部を一層小型化できるからである。制御弁に使用する形状記憶合金材料の種類は特に限定されず、公知の形状記憶合金材料を使用でき、成形性などを考慮して適宜選択して良い。形状記憶合金材料からなる層を形成する方法は、基材へ形状記憶合金材料をスパッタリングして形状記憶合金材料からなる層を基材に直接形成しても良いし、予め形状記憶合金シートを用意して基材に貼付してもよい。基材の材質は特に限定されないが、フィルム状としたときに柔軟性の高い材質が好ましく、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム等を例示できる。
以下、本発明を具体化した各実施例について図面を参照しながら説明する。尚、各実施例において、同一の構成部材および構成要素については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【実施例1】
【0021】
[実施例1の構成]
実施例1における表示装置1の斜視図を図1に示し、図1のX−X線断面図を図2に示す。図1に示すように、表示装置1は収納ケース2、透明基板3を備える。収納ケース2の正面側は枠状に開口しており、透明基板3が取り付けられている。透明基板3は上面が露出して表示部30を構成している。
【0022】
図2に示すように、収納ケース2の内部には、色調変化シート4、押圧部材5、アクチュエータ6、押圧媒体供給部7、連通部8、振動発生装置9が備えられる。色調変化シート4は透明基板3の裏面側(表示部30と反対側)に配置される。色調変化シート4は、新中村化学工業株式会社製のNKエステルAM−90G(メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート)を97wt%、新中村化学工業株式会社製のNKエステルAM−600(ポリエチレングリコール#600ジアクリレート)を3wt%の割合で混合した混合溶液からポリマー化させた基材中にSiO2がコロイド結晶を形成してなるコロイド結晶シートである。色調変化シート4は縦約100mm、横約200mm、厚さ約0.5mm、の長方形のシートであり、格子状に均等に形成された幅約0.2mm、ピッチ約0.5mmの肉逃がし溝41を備える。当該肉逃がし溝41で仕切られ格子部42が平面状に配列して、透明表示板3における表示部30の反対側の面の略全域を覆っている。色調変化シート4の透明表示板3に対向する面には、ブラスト処理が施されている。個々の格子部42により、表示装置1の画素が構成されている。
【0023】
アクチュエータ6は色調変化シート4に対向して表示部30と反対側に配置される。アクチュエータ6は可撓性シート60とこれに対向して表示部30と反対側に配置されるベース部材61とからなる。可撓性シート60は色調変化シート4の肉逃がし溝41に対向する位置でベース部材61に貼着されている。これにより、色調変化シート4の各格子部42に対向する領域において、可撓性シート60とベース部材61との間の領域に変形部63が形成される。変形部63と色調変化シート4との間には押圧部材5が設けられる。押圧部材5は板状であって、色調変化シート4の面方向に平行に色調変化シート4の各格子42毎に設けられる。各押圧部材5の形状は、当該対向する格子42の平面視形状と略同一である。
【0024】
ベース部材61の表示部30と反対側には押圧媒体供給部7が設けられる。押圧媒体供給部7はベース部材61の表示部30と反対側に位置する空間部と、当該空間部に充填される押圧媒体51を加圧する加圧ポンプ(図示略)とからなる。押圧媒体供給部7とアクチュエータ6の変形部63の間には、これらを連通(連結)する孔からなる連通部8が形成されている。当該連通部8を介して、押圧媒体51は押圧媒体供給部7とアクチュエータ6の変形部63の間を移動することができる。連通部8には連通部8の孔を閉塞可能な制御弁81が設けられる。制御弁81は制御弁81に通電可能なコントローラ(図示略)に接続されている。振動発生装置9はベース部材61に設けられる。振動発生装置9は変形部63毎に振動端末91を備え、各変形部63の内側に個別に振動を付与することができる。
【0025】
制御弁81の近傍拡大図を図3(A)〜図3(D)に示す。図3(A)に示すように制御弁81は第1制御弁81aと第2制御弁81bの一対からなる。第1制御弁81aは、ポリイミドフィルム83aにニッケル−チタン合金をスパッタリングして形状記憶合金(SMA:Shape Memory Alloy)層82aを形成した薄膜である。当該SMA層82aは形成時に高温にさらされるため、初期状態で平板形状が記憶されている。即ち、当該第1制御弁81aは形状を記憶させる工程を別途経る必要がない。そのため、耐熱性が比較的低い薄膜のポリイミドフィルム83aを基材として使用することができる。これにより、第1制御弁81aは変態点よりも低い温度条件下では柔軟性が高い状態となり、変態点よりも高い温度条件下では当該記憶された形状である平板形状となって剛性が高い状態となる。第2制御弁81bも同様に形成される。第1制御弁81aは連通部8の押圧部材5側の縁部に貼着され、第2制御弁81bは連通部8の押圧媒体供給部7側の縁部に貼着されている。初期状態ではそれぞれ柔軟性の高い状態であり、押圧媒体供給部7側からの圧力により押圧されて、第2制御弁81bが連通部8の孔84を閉塞している。孔84の周縁部において、第1制御弁81a、第2制御弁81bが当接する領域にはシリコーン樹脂製のパッキン85が設けられ、第1制御弁81a、第2制御弁81bの閉塞時における孔84の密閉性が確保されている。
【0026】
[実施例1の動作]
制御弁81の動作態様を図3(A)〜図3(D)および図4(A)〜図4(D)を参照しながら説明する。図3(A)に示すように、まず初期状態では第1制御弁81aおよび第2制御弁81bにはいずれも通電されず、柔軟性の高い状態となる。押圧媒体供給部7の内部の押圧媒体51には、加圧ポンプ(図示略)により、押圧媒体供給部7の内側から変形部63側に圧力がかけられている。このとき、第2制御弁81bは柔軟性の高い状態となっているため、第2制御弁81bは孔84を閉塞し、連通部8を非連通状態のまま維持される。
【0027】
次に、第2制御弁81bにコントローラにより通電すると、第2制御弁81bは変態点以上の高温状態となる。これにより第2制御弁81bは柔軟性の高い状態から剛性の高い平板形状となる。その結果、図3(B)に示すように第2制御弁81bが孔84から離隔して孔84が開口して連通部8が連通状態となる。これにより、押圧媒体供給部7から押圧媒体51が変形部63に注入されることとなる。
図3(C)に示すように変形部63に押圧媒体51が注入されると、変形部63は押圧媒体51の注入量に応じて変形して、押圧部材5を色調変化シート4側に押し上げる。押圧媒体供給部7からの圧力に応じて変形部63に所定量の押圧媒体51が注入されると、変形部63の内圧(バイアス力)が押圧媒体供給部7からの圧力より高まる。これにより、図3(C)に示すように第1制御弁81aが当該内圧により押圧媒体供給部7側に押圧され、孔84を閉塞する。この間、第1制御弁81aは通電されず、柔軟性の高い状態のままである。その後、第2制御弁81bへの通電は停止されて変態点以下の温度となり、第2制御弁81bは柔軟性の高い状態に戻る。この状態で押圧媒体供給部7からさらに圧力が加わっても、図3(D)に示すように第2制御弁81bが変形部63側に押圧されて孔84を閉塞するため、押圧媒体51は所定量以上注入されない。
このように、個々の変形部63に対して、第2制御弁81bの通電状態を個別に制御することにより、個々の変形部63毎に押圧媒体51の注入量を調整して変形部63の変形量を規定することができる。
【0028】
そして、所定量の押圧媒体51が変形部63に注入されると、その注入された押圧媒体51は変形部63の内部で静止するため、変形部63の内部の押圧媒体51の流動性が低下してゲル化する。
その結果、第1制御弁81aの隙間から押圧媒体51が漏洩することが防止され、押圧部材5の色調変化シート4への押圧状態が維持される。
【0029】
変形部63の変形量を小さくするには、まず、振動発生装置9の振動端末91を振動して、ゲル化した押圧媒体51を振動させる。これにより、押圧媒体51のチキソ性材料にせん断力が付与されて押圧媒体51の流動性が高まってゾル化する。その後、図4(A)に示すように第1制御弁81aに通電して、第1制御弁81aを柔軟性の高い状態から剛性の高い平板形状にする。これにより、第1制御弁81aは孔84から離隔して、孔84が開放される。ゾル化した押圧媒体51は変形部63の内圧により、図4(B)に示すように孔84から押圧媒体供給部7側へ排出される。所定量の押圧媒体51が排出された状態(図4(C)では変形部63の内部の押圧媒体51が全て排出された状態)で、第1制御弁81aの通電を停止することにより、第1制御弁81aは変態点以下の温度となり、柔軟性の高い状態に戻る。この間、第2制御弁81bは通電されておらず、柔軟性の高い状態のままである。これにより、押圧媒体供給部7から圧力を受けても、第2制御弁81bが孔84を閉塞することとなるので、変形部63に押圧媒体51が不用意に注入されることがない。このように、変形部63から押圧媒体51が排出される場合においても、複数の変形部63に対して、第1制御弁81aの通電状態を個別に制御することにより、変形部63毎に押圧媒体51の排出量を規定して変形部63の変形量を規定することができる。
このように、変形部63から押圧媒体51を排出する場合においても、個々の変形部63に対して、第1制御弁101aの通電状態を個別に制御することにより、個々の変形部63毎に押圧媒体51の排出量を調整して変形部63の変形量を規定することができる。
尚、変形部63の変形量を多くする場合は、第2制御弁101bに通電して連通部8の孔84を開放すると共に、変形部63の内部にてゲル化した押圧媒体51を、上記と同様に振動発生装置9により一端ゾル化してから、押圧媒体供給部7の圧力を大きくして押圧媒体51を注入すればよい。
【0030】
[実施例1の作用・効果]
以上のように、実施例1の表示装置1では表示画像に応じて、例えば図2(a)〜(e)のように変形部63毎に変形量を規定することにより、色調変化シート4が表示画像に応じて押圧される。そして色調変化シート4を構成するコロイド結晶の構造が変形して構造色が変化し、当該表示画像が表示部30に表示される。
【0031】
表示装置1によれば、変形部63に注入された押圧媒体51をゲル化することにより、簡易な構成で、押圧媒体51が変形部63から漏洩することが防止される。これにより、当該漏洩を防止するために複雑な構成を採用する必要が無く、安価に製造することができる。さらに、SMA層を有する制御弁81を使用して変形部63への押圧媒体51の注入量を制御することにより、装置が複雑な構成とならず、装置の小型化に寄与する。さらに、変形部63毎に注入量を個別に調節することができるため、表示画像を緻密に表示することができる。第1制御弁81aと第2制御弁81bの2重の制御弁による制御により、簡易な構成で変形部63毎に注入量を個別に調節することが容易となる。
【実施例2】
【0032】
[実施例2の構成]
実施例2において、図1〜図4に示した実施例1と異なるのは、実施例1の制御弁81を制御弁101に置き換えた点だけである。
連通部8には、連通部8の孔84を開閉可能な制御弁101が設けられている。制御弁101は、制御弁101に通電可能なコントローラ(図示略)に接続されている。
【0033】
図5〜図9は、制御弁101の概略構成を示す近傍拡大図である。
図5(A)は、制御弁101の縦断面図であり、図5(B)のX−X線断面図である。図5(B)は、制御弁101が閉塞された状態を示す斜視図である。
図6(A)は、制御弁101の縦断面図であり、図6(B)のX−X線断面図である。図6(B)は、制御弁101が開放された状態を示す斜視図である。
図7は、制御弁101の縦断面図である。
【0034】
制御弁101は、第1制御弁101aと第2制御弁101bの一対からなる。
第1制御弁101aは、ベース部材61における可撓性シート60(図5〜図7では図示略)側に設けられている。
第1制御弁101aは、ベース部材61の凹部61a、フィルム102a(スリット105a)、パッキン103a、駆動部材104a(辺106a,107a,108a)から構成されている。
【0035】
ベース部材61の上面側において、表示装置1の画素を構成する個々の格子部42毎に、略直方体状の凹部61aが形成されている。
各凹部61aの平面視略中央部には、連通部8が設けられている。
【0036】
フィルム(シート)102aは、ベース部材61における可撓性シート60側の上面全体を覆うように配置されている。
尚、フィルム102aは、可撓性を有し、ベース部材61に対する高い密着性を有すると共に低い接着性を有する各種材料(例えば、シリコーン樹脂など)によって形成されている。
フィルム102aにおいて、表示装置1の画素を構成する個々の格子部42に対応した箇所には、平面視コ字状のスリット105aが形成されている。
すなわち、ベース部材61の上面側は、表示装置1の全ての画素をまたぐように、個々の画素に対応するスリット105aが設けられたフィルム102aで被覆されている。
【0037】
スリット105aは、凹部61aの周囲三方に対してそれぞれ幅Lだけ大きく形成され、凹部61aを覆うように配置されている。そのため、フィルム102aにおけるスリット105aの内側周縁部は、ベース部材61の上面に対して幅Lの分だけ重なるようになっている。
フィルム102aにおける各スリット105aの内側を除く部分は、ベース部材61の上面に対して貼着固定されている。
【0038】
各凹部61aの内部において、連通部8には円筒状のパッキン103aが設けられている。
すなわち、ベース部材61における連通部8に対応する位置にパッキン103aが貼着固定され、パッキン103aの中央部に形成されている貫通孔が連通部8の孔84と連通することにより、パッキン103aの貫通孔が孔84の一部として機能する。
尚、パッキン103aは、フィルム102aに対する高い密着性を有すると共に低い接着性を有する各種材料(例えば、シリコーン樹脂など)によって形成されている。
【0039】
各凹部61aの内部において、連通部8を囲むように平面視コ字状の駆動部材104aが設けられている。
駆動部材104aの三辺106a,107a,108aはそれぞれ、スリット105aの三辺に対応して配置されている。
駆動部材104aの対向する二辺106a,107aの先端側半分は、凹部61aの底部に取付固定されている。
駆動部材104aの残る一辺108aと、各辺106a,107aの後端側半分とは、凹部61aに固定されていない。
尚、駆動部材104aは、形状記憶合金(SMA)の針金材によって形成されており、例えば、チタン−ニッケル−銅合金からなる。
【0040】
第2制御弁101bは、ベース部材61における押圧媒体供給部7側に設けられている。
第2制御弁101bは、第1制御弁101aを平面視180゜回転させた形状である。
そのため、第2制御弁101bの構成部材(凹部61b、フィルム102b、パッキン103b、駆動部材104b、スリット105b、辺106b,107b,108b)については、第1制御弁101aの対応する構成部材(凹部61a、フィルム102a、パッキン103a、駆動部材104a、スリット105a、辺106a,107a,108a)の末尾の符号を「a」から「b」に変更した符号を付している。
【0041】
尚、第2制御弁101bのフィルム102bは、ベース部材61における個々の押圧媒体供給部7側を覆うように配置されている。
すなわち、フィルム102bは、表示装置1の個々の画素毎に設けられている。
【0042】
[第1制御弁101aの動作]
図5または図7(A)に示すように、駆動部材104aは、コントローラからの通電がされていない場合(電源オフ時)、形状記憶合金の変態点よりも低い温度条件下となって比較的柔軟な状態となり、各辺106a,107aが直線状に伸びた状態になるため、駆動部材104aはフィルム102aにおけるスリット105aの内側部分に当接しない状態になる。
【0043】
すると、フィルム102aにおけるスリット105aの内側周縁部は、ベース部材61の上面に対して幅Lの分だけ重なり、ベース部材61における凹部61aの周縁部分の上面と密着した状態になる。
また、フィルム102aにおけるスリット105aの内側中央部は、パッキン103aの上面と密着した状態になる。
その結果、第1制御弁101aは、連通部8の孔84を上方から液密状態に閉塞する。
尚、前記幅Lの部分の面積、および、パッキン103aの上面の面積については、第1制御弁101aによる液密状態の閉塞を確実に行うのに十分な面積に設定しておけばよい。
【0044】
図6または図7(B)に示すように、駆動部材104aは、コントローラからの通電がされている場合(電源オン時)、形状記憶合金の変態点よりも高い温度条件下となって剛性の高い状態となり、記憶されている元の形状に戻り、各辺106a,107aがそれぞれ略中央部で上方に向けて折れ曲がるため、辺108aがフィルム102aにおけるスリット105aの内側部分に当接して上方へ持ち上げた状態になる。
【0045】
すると、フィルム102aにおけるスリット105aの内側周縁部と、ベース部材61における凹部61aの周縁部分の上面との密着状態が解除される。
また、フィルム102aにおけるスリット105aの内側中央部と、パッキン103aの上面との密着状態も解除される。
その結果、第1制御弁101aは、連通部8の孔84の上方を開放する。
【0046】
[第2制御弁101bの動作]
第2制御弁101bについても、コントローラから駆動部材104bへの通電と非通電とを切り替えることにより、第1制御弁101aと同様に動作させることができる。
【0047】
すなわち、図5または図7(B)に示すように、コントローラから駆動部材104bへの通電がされていない場合(電源オフ時)、各辺106b,107bが直線状に伸びた状態になるため、駆動部材104bはフィルム102bにおけるスリット105bの内側部分に当接しない状態になる。
その結果、フィルム102bにおけるスリット105bの内側周縁部はベース部材61における凹部61bの周縁部分の下面と密着した状態になり、スリット105bの内側中央部はパッキン103bの下面と密着した状態になるため、第2制御弁101bは連通部8の孔84を下方から液密状態に閉塞する。
【0048】
また、図6または図7(A)に示すように、コントローラから駆動部材104bへの通電がされている場合(電源オン時)、各辺106b,107bがそれぞれ略中央部で下方に向けて折れ曲がるため、辺108bがフィルム102bにおけるスリット105bの内側部分に当接して下方へ持ち上げた状態になる。
その結果、フィルム102bにおけるスリット105bの内側周縁部とベース部材61における凹部61bの周縁部分の下面との密着状態が解除され、スリット105bの内側中央部とパッキン103bの下面との密着状態も解除されるため、第2制御弁101bは連通部8の孔84の下方を開放する。
【0049】
[実施例2の動作]
次に、実施例2の動作について説明する。
図8(A)および図5に示すように、初期状態では各制御弁101a,101bに通電せず、第1制御弁101aは連通部8の孔84を上方から液密状態に閉塞し、第2制御弁101bは連通部8の孔84を下方から液密状態に閉塞しているため、連通部8が非連通状態のまま維持される。
【0050】
このとき、押圧媒体供給部7の内部の押圧媒体51には、加圧ポンプ(図示略)により、押圧媒体供給部7の内部から変形部63側に圧力がかけられているため、第2制御弁101bのフィルム102bが押圧媒体51により下方から加圧され、第2制御弁101bの閉塞機能が更に高められ、変形部63に押圧媒体51が不用意に注入されることがない。
【0051】
次に、図8(B)および図6に示すように、各制御弁101a,101bに通電すると、第1制御弁101aは連通部8の孔84の上方を開放し、第2制御弁101bは連通部8の孔84の下方を開放するため、連通部8が連通状態となり、押圧媒体供給部7から押圧媒体51が変形部63に注入される。
そして、変形部63に押圧媒体51が注入されると、変形部63は押圧媒体51の注入量に応じて変形し、押圧部材5を色調変化シート4側に押し上げる。
【0052】
続いて、図8(C)および図7(A)に示すように、第1制御弁101aの通電を停止し、第2制御弁101bの通電を維持すると、第1制御弁101aは連通部8の孔84を上方から閉塞し、第2制御弁101bは連通部8の孔84の下方を開放する。
このとき、押圧媒体供給部7からの圧力が変形部63の内圧よりも大きければ、第2制御弁101bが孔84の下方を開放しているため、第1制御弁101aが孔84を上方から閉塞していても、押圧媒体供給部7から押圧媒体51が孔84を通って変形部63に注入される。
【0053】
その後、図8(D)および図5に示すように、各制御弁101a,101bの通電を停止すると、第1制御弁101aは連通部8の孔84を上方から液密状態に閉塞し、第2制御弁101bは連通部8の孔84を下方から液密状態に閉塞するため、連通部8が非連通状態になる。
このとき、押圧媒体供給部7の内部の押圧媒体51に更に圧力が加わっても、第2制御弁101bのフィルム102bが押圧媒体51により下方から加圧され、第2制御弁101bの閉塞機能が更に高められるため、変形部63に押圧媒体51が不用意に注入されることがない。
【0054】
このように、個々の変形部63に対して、各制御弁101a,101bの通電状態を個別に制御することにより、個々の変形部63毎に押圧媒体51の注入量を調整して変形部63の変形量を規定することができる。
そして、所定量の押圧媒体51が変形部63に注入されると、その注入された押圧媒体51は変形部63の内部で静止するため、変形部63の内部の押圧媒体51の流動性が低下してゲル化する。
その結果、制御弁101の隙間から押圧媒体51が漏洩することが防止され、押圧部材5の色調変化シート4への押圧状態が維持される。
【0055】
変形部63の変形量を小さくするには、まず、振動発生装置9の振動端末91を振動して、ゲル化した押圧媒体51を振動させる。これにより、押圧媒体51のチキソ性材料にせん断力が付与され、押圧媒体51の流動性が高まってゾル化する。
次に、図9(A)および図7(B)に示すように、第1制御弁101aに通電し、第2制御弁101bに通電しないと、第1制御弁101aは連通部8の孔84の上方を開放し、第2制御弁101bは連通部8の孔84を下方から液密状態に閉塞する。
【0056】
続いて、図9(B)および図6に示すように、各制御弁101a,101bに通電すると、第1制御弁101aは連通部8の孔84の上方を開放し、第2制御弁101bは連通部8の孔84の下方を開放するため、連通部8が連通状態となり、変形部63の内部でゾル化した押圧媒体51は連通部8の孔84から押圧媒体供給部7側へ排出される。
このとき、変形部63の内圧により、押圧媒体51の押圧媒体供給部7側への排出が促進される。
【0057】
その後、図9(C)および図6に示すように、変形部63の内部の押圧媒体51がほとんど排出された状態になったら、図9(D)および図5に示すように、各制御弁101a,101bの通電を停止すると、第1制御弁101aは連通部8の孔84を上方から液密状態に閉塞し、第2制御弁101bは連通部8の孔84を下方から液密状態に閉塞するため、連通部8が非連通状態になる。
このとき、押圧媒体供給部7の内部から変形部63側に圧力がかけられているため、第2制御弁101bのフィルム102bが押圧媒体51により下方から加圧され、第2制御弁101bの閉塞機能が更に高められ、変形部63に押圧媒体51が不用意に注入されることがない。
【0058】
このように、変形部63から押圧媒体51を排出する場合においても、個々の変形部63に対して、各制御弁101a,101bの通電状態を個別に制御することにより、個々の変形部63毎に押圧媒体51の排出量を調整して変形部63の変形量を規定することができる。
【0059】
[実施例2の作用・効果]
以上のように、実施例2においても、実施例1と同様の作用・効果が得られる。
そして、実施例2では、制御弁101aのフィルム102aが、表示装置1の個々の画素毎に設けられておらず、表示装置1の全ての画素に対して一体化して設けられているため、生産性を向上できる。
【0060】
加えて、実施例2では、制御弁101に形状記憶合金の針金材からなる駆動部材104a,104bを用いるため、駆動部材104a,104bを加熱処理して形状を記憶させる工程を設ける必要があるものの、駆動部材104a,104bに確実な形状記憶を行わせることが可能になり、制御弁101を間違いなく動作させることができる。
【0061】
ところで、各実施例1,2において、形状記憶合金材料を使用した制御弁81,101による押圧媒体51の注入量の制御は、押圧媒体としてチキソ性を有する押圧媒体51を使用する場合だけでなく、他の流体や気体を押圧媒体として使用する場合にも利用することができる。
そして、制御弁81,101を他の流体や気体を押圧媒体として使用する場合にも、装置が複雑な構成とならず、装置の小型化に寄与すると共に、表示画像を緻密に表示することができる。
【0062】
本発明は、発明を実施するための形態および実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。本明細書の中で明示した特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0063】
1…表示装置
2…収納ケース
3…透明表示板
30…表示部
4…色調変化シート
41…肉逃がし溝
42…格子
5…押圧部材
51…押圧媒体
6…アクチュエータ
60…可撓性シート
61…ベース部材
61a,61b…ベース部材61の凹部
63…変形部
7…押圧媒体供給部
8…連通部
81,101…制御弁
81a,101a…第1制御弁
81b,101b…第2制御弁
82a,82b…SMA層
83a,83b…フィルム
84…孔
9…振動発生装置
102a,102b…フィルム
105a…フィルム102aのスリット
105b…フィルム102bのスリット
103a,103b…パッキン
104a,104b…駆動部材
106a,107a,108a…駆動部材104aの辺
106b,107b,108b…駆動部材104bの辺


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆的に変形可能な材料からなるシート状の基材中に粒子が規則的に配列されてなり、その厚さ方向の変形量に応じて色調を変化させるシート状の色調変化シートと、
前記色調変化シートに対向して配置され、押圧媒体の注入量に応じて変形する複数の変形部を有するアクチュエータと、
前記各変形部の前記押圧媒体の注入量を変形部毎に独立して制御する押圧媒体制御手段と、
前記色調変化シートと前記変形部との間に配置される押圧部材であって、前記色調変化シートへ対向する面に表示対象を表す凹形状または凸形状を有する押圧部材とを備え、
前記押圧媒体がチキソ性材料を含んでなり、前記押圧部材をゾル化するゾル化手段を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記ゾル化手段は、振動発生装置、超音波発生装置またはバブル発生装置である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記押圧媒体制御手段は、前記押圧媒体を供給する押圧媒体供給部と、前記変形部と前記押圧媒体供給部とを連通する連通部を有し、該連通部には前記押圧媒体の移動を制御する制御弁が備えられる、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記制御弁は形状記憶合金材料を含み、前記押圧媒体制御部は前記制御弁に通電して前記制御弁の開閉状態を制御する、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記制御弁は前記変形部の内側に開放可能な第1制御弁と、前記押圧媒体供給部の内側に開放可能な第2の制御弁とを含む、請求項4に記載の表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−95704(P2011−95704A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77161(P2010−77161)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】