表示装置
【課題】目の疲労が少なく、製造コストを抑えることができる表示装置を得る。
【解決手段】表示装置10には複数の表示部12がマトリックス状に配置されており、各表示部12の底面12Aに形成した開口部14、16、18から突出した色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36の先端部32A、34A、36Aが、表示部12の内部で広がることで各表示部12に色を表示するようになっている。また、制御装置44によって作動が制御される各アクチュエータ42によって、色部材22、24、26が移動することで、表示部12の色が変化するようになっている。
【解決手段】表示装置10には複数の表示部12がマトリックス状に配置されており、各表示部12の底面12Aに形成した開口部14、16、18から突出した色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36の先端部32A、34A、36Aが、表示部12の内部で広がることで各表示部12に色を表示するようになっている。また、制御装置44によって作動が制御される各アクチュエータ42によって、色部材22、24、26が移動することで、表示部12の色が変化するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、小型で低消費電力で且つ液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少ない携帯用カラー表示装置が求められており、その一例としては、特許文献1がある。この従来技術の表示装置では、固定部である白色板5の上にシアン・マゼンダ・イエローの透明なフィルムがあり、この3層フィルムを表示部として持つ片持ち梁状可動フィルムの一端は基板に固定されている。また、この可動フィルム上の可動電極部は固定駆動電極との間に電位差を持ち、静電力によって動くことができるようになっている。これによって任意の情報を表示することができ、可動フィルムと固定駆動電極を、格子状に配列させればマトリックス表示ができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−271933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の可動フィルム型の表示装置は、3層の可動フィルムをかわら屋根状に並べられたフィルムの隙間から出し入れする構造となっており、画素が小さくなるにつれて、フィルムが重なる部分については高精度な加工寸法や、組み立て時の位置決め精度などが要求されるようになるため、製造が困難となり、製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少なく、製造コストを抑えることができる表示装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の表示装置は、下地となると共にマトリクス状に配置された複数の表示部と、前記表示部に形成された開口部と、前記開口部を通って移動することで前記表示部内へ出し入れ可能に設けられ、前記表示部内へ移動した部位が広がることで前記表示部に色を表示する色部材と、前記色部材を移動させるためのアクチュエータと、前記アクチュエータの作動を制御する制御装置と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の発明の表示装置では、下地となる複数の表示部がマトリクス状に配置されている。また、これらの表示部に形成された開口部を通って色部材が、表示部内へ移動し、色部材の表示部内へ移動した部位が広がることで表示部に色を表示する。また、制御装置によって作動が制御されるアクチュエータによって、色部材が移動することで、表示部の色が変化する。このため、液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少ない。また、色部材において高精度な加工や位置決めを必要としない単純な構造であるため、製造コストを抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表示装置において、前記表示部に形成された開口部が複数であり、各開口部に異なる色の前記色部材が設けられている。
【0009】
請求項2に記載の発明の表示装置では、表示部に形成された開口部が複数であり、各開口部に異なる色の色部材が設けられているため、複数色の表示が可能になる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の表示装置において、前記下地となる表示部が白色であると共に前記開口部が3つであり、前記色部材がシアン・マゼンダ・イエローの色部材である。
【0011】
請求項3に記載の発明の表示装置では、下地となる表示部が白色であると共に開口部が3つであり、色部材がシアン・マゼンダ・イエローの色部材であるため、色の3原色を用い減法混色でカラー表示が可能になる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の表示装置において、前記色部材は、前記開口部から突出した先端部が広がるように配置された複数の線材からなる。
【0013】
請求項4記載の発明の表示装置では、色部材が開口部から突出した先端部が広がるように配置された複数の線材からなるため、色部材の構成が簡単になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示装置は、上記構成としたので、液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少なく、製造コストを抑えることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表示装置の一部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る表示装置の一部を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る表示装置の全体を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る表示装置の作動状態を示す図1に対応する斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る表示装置の一部を示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る表示装置の作動状態を示す図5に対応する平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る表示装置の他の作動状態を示す図5に対応する平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る表示装置の他の作動状態を示す図5に対応する平面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る表示装置の一部を示す分解斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る表示装置の開口部を示す平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る表示装置の作動状態の開口部を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
次に、本発明の表示装置の第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0017】
(構成)
図3に示すように、本実施形態における表示装置10は、複数の表示部12がマトリクス状に配置されている。これらの表示部12は、上部が透明な板材13で閉塞された矩形の箱形状となっている。表示部12の底面12Aは、例えば、正方形となっており、底面12Aの色は下地となる白色となっている。また、四方の縦壁部12Bは白色または透明となっている。
【0018】
図1及び図2に示すように、表示部12の底面12Aには3つの開口部14、16、18が形成されている。これらの開口部14、16、18は底面12Aの中央部に互いに接近して形成されており、各開口部14、16、18は、例えば円形とされている。また、各開口部14、16、18には、それぞれ筒20が連結されている。これらの筒20は円筒とされており、各開口部14、16、18から底面12Aの裏面側に延設されている。
【0019】
なお、各開口部14、16、18の形状は正方形等の他の形状としてもよく、筒20は各開口部14、16、18の形状に合った正方形等の他の形状としてもよい。
【0020】
開口部14に連結された筒20にはシアンの色部材22が挿入されており、開口部16に連結された筒20にはマゼンタの色部材24が挿入されている。また、開口部18に連結された筒20にはイエローの色部材26が挿入されている。
【0021】
各色部材22、24、26は、複数の線材32、34、36、例えば、所定に色に染めた繊毛からなり、図4に示すように、各開口部14、16、18から突出した複数の線材32、34、36の先端部32A、34A、36Aが広がるようになっている。また、各線材32、34、36の根元部32B、34B、36Bは束ねられ、それぞれロッド40の先端部40Aに固定されている。
【0022】
各ロッド40はそれぞれアクチュエータ42によって、軸方向(図1及び図4の矢印A方向と矢印B方向)へ移動可能となっている。また、各アクチュエータ42は装置の小型化と低消費電力化のため、例えば、静電リニアアクチュエータで構成されており、制御装置44に電気的に接続されている。また、制御装置44はCPUを備えており、制御装置44から出力される制御信号によって、各アクチュエータ42はロッド40を軸方向へ移動するようになっている。
【0023】
従って、図5に示すように、各アクチュエータ42によって、全ての色部材22、24、26が開口部14、16、18内に引き込まれている状態では、表示部12は底面12Aが白色に見えるようになっている。なお、各線材32、34、36は、その先端面32C、34C、36Cのみを白色として、白色が鮮明になるようにしてもよい。
【0024】
また、シアンの色部材22のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、図6に示すように、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がることで表示部12にシアンを表示するようになっている。このとき、色部材22を構成する複数の線材32が透明な板材13に当接すると共に湾曲することで、透明な板材13を通して見たときの表示部12における色部材22の占有面積が増大するようになっている。
【0025】
同様に、マゼンタの色部材24のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34が開口部16から突出し、表示部12の内部で先端部34Aが広がることで表示部12にマゼンタを表示するようになっている。
【0026】
また、イエローの色部材26のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、イエローの色部材26を構成する複数の線材36が開口部18から突出し、表示部12の内部で先端部36Aが広がることで表示部12にイエローを表示するようになっている。
【0027】
一方、図7に示すように、シアンの色部材22とマゼンタの色部材24とがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がると共に、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34が開口部16から突出し、表示部12の内部で先端部34Aが広がることで、シアンの色部材22を構成する複数の線材32と、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34とが混ざり合い青色を表示するようになっている。
【0028】
同様に、他の2つの色部材がアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、他の2つの色部材を構成する複数の線材が開口部から突出し、表示部12の内部で先端部が広がり互いに混ざり合うことで赤色と緑色を表示するようになっている。
【0029】
さらに、図8に示すように、シアンの色部材22、マゼンタの色部材24及びイエローの色部材26がアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、3つの色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36が開口部14、16、18からそれぞれ突出し、表示部12の内部で先端部32A、34A、36Aが広がり互いに混ざり合うことで黒色を表示するようになっている。
【0030】
また、各色部材22、24、26は、各アクチュエータ42が制御装置44から出力される制御信号によってそれぞれ個別に作動することで、各筒20内を矢印A方向または矢印B方向移動し、開口部14、16、18を通って表示部12内へ出し入れ可能となっている。
【0031】
(作用・効果)
本実施形態の表示装置10では、制御装置44から出力される制御信号によってアクチュエータ42が作動する。先ず、図5に示すように、全ての色部材22、24、26が開口部14、16、18内に引き込まれている状態では、表示部12は底面12Aの白色に見える。
【0032】
次に、制御装置44から出力される制御信号によって、図6に示すように、シアンの色部材22のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動した場合には、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がることで表示部12にシアンを表示する。
【0033】
同様に、マゼンタの色部材24のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34が開口部16から突出し、表示部12の内部で先端部34Aが広がることで表示部12にマゼンタを表示する。
【0034】
また、イエローの色部材26のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、イエローの色部材26を構成する複数の線材36が開口部18から突出し、表示部12の内部で先端部36Aが広がることで表示部12にイエローを表示する。
【0035】
一方、図7に示すように、シアンの色部材22とマゼンタの色部材24とがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がると共に、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34が開口部16から突出し、表示部12の内部で先端部34Aが広がり互いに混ざり合うことで青色を表示する。
【0036】
同様に、他の2つの色部材がアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、他の2つの色部材を構成する複数の線材が開口部から突出し、表示部12の内部で先端部が広がり互いに混ざり合うことで赤色と緑色を表示する。
【0037】
さらに、図8に示すように、シアンの色部材22、マゼンタの色部材24及びイエローの色部材26がアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、3つの色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36が開口部14、16、18から突出し、表示部12の内部で先端部32A、34A、36Aが広がり互いに混ざり合うことで黒色を表示する。
【0038】
このように、本実施形態の表示装置10では、マトリックス状に配置した複数の表示部12の底面12Aに形成した開口部14、16、18から表示部12の内部へ突出した色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36の先端部32A、34A、36Aが、表示部12の内部で広がることで各表示部12に色を表示する。このため、液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少ない。また、本実施形態の表示装置10では、制御装置44によって作動が制御されるアクチュエータ42によって、色部材22、24、26が開口部14、16、18を通って移動することで、表示部12の色が変化する。このため、色部材において高精度な加工や位置決めを必要としない単純な構造であるため、製造コストを抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態の表示装置10では、下地となる表示部12の底面12Aが白色であると共に開口部14、16、18が3つあり、色部材22、24、26がシアン・マゼンタ・イエローの色部材である。このため、色の3原色を用い減法混色でカラー表示が可能である。
【0040】
また、本実施形態の表示装置10では、色部材22、24、26が開口部14、16、18から突出した先端部が広がるように配置された複数の線材32、34、36からなるため、色部材22、24、26の構成が簡単である。
【0041】
なお、制御装置44からの制御信号によって、アクチュエータ42の作動量を変化させ、各色部材の各開口部から表示部の内部への突出量を変えることができるようにし、各色の濃淡を表示可能とした構成としてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の表示装置の第2実施形態を図9〜図11に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態では、各色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36の長さが異なっており、各色部材22、24、26の先端部が尖っている。
【0043】
図10に示すように、開口部14においては、筒20の内周部から開口部14の中心に向かって白色の線材50が、筒20の周方向に沿って所定の間隔で複数本設けられている。また、これらの線材50は、例えば、繊毛からなり、開口部14を覆うように各長さが設定されている。なお、図示を省略したが、開口部16、18においても同様の構成になっている。
【0044】
図11に示すように、開口部14において、シアンの色部材22がアクチュエータ42(図9参照)によって、矢印A方向へ移動された場合には、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がることで表示部12にシアンを表示することができるようになっている。このとき、白色の線材50は、線材32に押圧されて弾性変形により表示部12の内部に広がるが、線材32に覆われるようになっている。なお、図示を省略したが、開口部16、18においても同様である。
【0045】
従って、本実施形態では、各アクチュエータ42によって、色部材22、24、26が開口部14、16、18内に引き込まれている状態では、白色の線材50によって、開口部14、16、18が白色に見える。このため、各線材32、34、36の先端面32C、34C、36Cを白色としなくても、表示部12の白色が鮮明になる。
【0046】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記各実施形態では、下地となる表示部12の底面12Aを白色にし、底面12Aに3つの開口部14、16、18を形成し、これらの開口部にシアン・マゼンダ・イエローの色部材22、24、26を移動可能に配置することでカラー表示を可能にしたが、これに代えて、表示させたい色に対応して、表示部12の底面12Aの色を白以外の他の色に変えたり、形成する開口部の数を3つ以外の1つ、2つや4つ以上とし、各開口部に異なる色の色部材を移動可能に配置した構成としてもよい。
【0047】
また、上記各実施形態では、線材32、34、36、50を、例えば、所定に色に染めた繊毛で構成したが、線材32、34、36、50は化学繊維、金属繊維等の他の構成としてもよい。
【0048】
また、上記各実施形態では、表示部12の底面12Aを正方形としたが、表示部12の底面12Aの形状は、正方形に限定されず、長方形等の他の形状としてもよい。
【0049】
また、上記各実施形態では、例えば、色部材22を複数の線材32で構成したが、色部材は開口部から突出した球状の部材が弾性変形により大きくなることで表示部に色を表示する着色したスポンジ等の他の構成としてもよい。
【0050】
また、上記各実施形態では、アクチュエータ42を装置の小型化と低消費電力化のため、例えば、静電リニアアクチュエータで構成したが、アクチュエータ42は圧電リニアアクチュエータのほか、回転型モータでねじを回すことで直線運動が得られる駆動装置などの構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 表示装置
12 表示部
12A 表示部の底面
14 開口部
16 開口部
18 開口部
20 筒
22 色部材
24 色部材
26 色部材
32 線材
34 線材
36 線材
40 ロッド
42 アクチュエータ
44 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、小型で低消費電力で且つ液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少ない携帯用カラー表示装置が求められており、その一例としては、特許文献1がある。この従来技術の表示装置では、固定部である白色板5の上にシアン・マゼンダ・イエローの透明なフィルムがあり、この3層フィルムを表示部として持つ片持ち梁状可動フィルムの一端は基板に固定されている。また、この可動フィルム上の可動電極部は固定駆動電極との間に電位差を持ち、静電力によって動くことができるようになっている。これによって任意の情報を表示することができ、可動フィルムと固定駆動電極を、格子状に配列させればマトリックス表示ができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−271933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の可動フィルム型の表示装置は、3層の可動フィルムをかわら屋根状に並べられたフィルムの隙間から出し入れする構造となっており、画素が小さくなるにつれて、フィルムが重なる部分については高精度な加工寸法や、組み立て時の位置決め精度などが要求されるようになるため、製造が困難となり、製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少なく、製造コストを抑えることができる表示装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の表示装置は、下地となると共にマトリクス状に配置された複数の表示部と、前記表示部に形成された開口部と、前記開口部を通って移動することで前記表示部内へ出し入れ可能に設けられ、前記表示部内へ移動した部位が広がることで前記表示部に色を表示する色部材と、前記色部材を移動させるためのアクチュエータと、前記アクチュエータの作動を制御する制御装置と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の発明の表示装置では、下地となる複数の表示部がマトリクス状に配置されている。また、これらの表示部に形成された開口部を通って色部材が、表示部内へ移動し、色部材の表示部内へ移動した部位が広がることで表示部に色を表示する。また、制御装置によって作動が制御されるアクチュエータによって、色部材が移動することで、表示部の色が変化する。このため、液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少ない。また、色部材において高精度な加工や位置決めを必要としない単純な構造であるため、製造コストを抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表示装置において、前記表示部に形成された開口部が複数であり、各開口部に異なる色の前記色部材が設けられている。
【0009】
請求項2に記載の発明の表示装置では、表示部に形成された開口部が複数であり、各開口部に異なる色の色部材が設けられているため、複数色の表示が可能になる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の表示装置において、前記下地となる表示部が白色であると共に前記開口部が3つであり、前記色部材がシアン・マゼンダ・イエローの色部材である。
【0011】
請求項3に記載の発明の表示装置では、下地となる表示部が白色であると共に開口部が3つであり、色部材がシアン・マゼンダ・イエローの色部材であるため、色の3原色を用い減法混色でカラー表示が可能になる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の表示装置において、前記色部材は、前記開口部から突出した先端部が広がるように配置された複数の線材からなる。
【0013】
請求項4記載の発明の表示装置では、色部材が開口部から突出した先端部が広がるように配置された複数の線材からなるため、色部材の構成が簡単になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示装置は、上記構成としたので、液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少なく、製造コストを抑えることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表示装置の一部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る表示装置の一部を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る表示装置の全体を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る表示装置の作動状態を示す図1に対応する斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る表示装置の一部を示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る表示装置の作動状態を示す図5に対応する平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る表示装置の他の作動状態を示す図5に対応する平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る表示装置の他の作動状態を示す図5に対応する平面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る表示装置の一部を示す分解斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る表示装置の開口部を示す平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る表示装置の作動状態の開口部を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
次に、本発明の表示装置の第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0017】
(構成)
図3に示すように、本実施形態における表示装置10は、複数の表示部12がマトリクス状に配置されている。これらの表示部12は、上部が透明な板材13で閉塞された矩形の箱形状となっている。表示部12の底面12Aは、例えば、正方形となっており、底面12Aの色は下地となる白色となっている。また、四方の縦壁部12Bは白色または透明となっている。
【0018】
図1及び図2に示すように、表示部12の底面12Aには3つの開口部14、16、18が形成されている。これらの開口部14、16、18は底面12Aの中央部に互いに接近して形成されており、各開口部14、16、18は、例えば円形とされている。また、各開口部14、16、18には、それぞれ筒20が連結されている。これらの筒20は円筒とされており、各開口部14、16、18から底面12Aの裏面側に延設されている。
【0019】
なお、各開口部14、16、18の形状は正方形等の他の形状としてもよく、筒20は各開口部14、16、18の形状に合った正方形等の他の形状としてもよい。
【0020】
開口部14に連結された筒20にはシアンの色部材22が挿入されており、開口部16に連結された筒20にはマゼンタの色部材24が挿入されている。また、開口部18に連結された筒20にはイエローの色部材26が挿入されている。
【0021】
各色部材22、24、26は、複数の線材32、34、36、例えば、所定に色に染めた繊毛からなり、図4に示すように、各開口部14、16、18から突出した複数の線材32、34、36の先端部32A、34A、36Aが広がるようになっている。また、各線材32、34、36の根元部32B、34B、36Bは束ねられ、それぞれロッド40の先端部40Aに固定されている。
【0022】
各ロッド40はそれぞれアクチュエータ42によって、軸方向(図1及び図4の矢印A方向と矢印B方向)へ移動可能となっている。また、各アクチュエータ42は装置の小型化と低消費電力化のため、例えば、静電リニアアクチュエータで構成されており、制御装置44に電気的に接続されている。また、制御装置44はCPUを備えており、制御装置44から出力される制御信号によって、各アクチュエータ42はロッド40を軸方向へ移動するようになっている。
【0023】
従って、図5に示すように、各アクチュエータ42によって、全ての色部材22、24、26が開口部14、16、18内に引き込まれている状態では、表示部12は底面12Aが白色に見えるようになっている。なお、各線材32、34、36は、その先端面32C、34C、36Cのみを白色として、白色が鮮明になるようにしてもよい。
【0024】
また、シアンの色部材22のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、図6に示すように、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がることで表示部12にシアンを表示するようになっている。このとき、色部材22を構成する複数の線材32が透明な板材13に当接すると共に湾曲することで、透明な板材13を通して見たときの表示部12における色部材22の占有面積が増大するようになっている。
【0025】
同様に、マゼンタの色部材24のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34が開口部16から突出し、表示部12の内部で先端部34Aが広がることで表示部12にマゼンタを表示するようになっている。
【0026】
また、イエローの色部材26のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、イエローの色部材26を構成する複数の線材36が開口部18から突出し、表示部12の内部で先端部36Aが広がることで表示部12にイエローを表示するようになっている。
【0027】
一方、図7に示すように、シアンの色部材22とマゼンタの色部材24とがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がると共に、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34が開口部16から突出し、表示部12の内部で先端部34Aが広がることで、シアンの色部材22を構成する複数の線材32と、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34とが混ざり合い青色を表示するようになっている。
【0028】
同様に、他の2つの色部材がアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、他の2つの色部材を構成する複数の線材が開口部から突出し、表示部12の内部で先端部が広がり互いに混ざり合うことで赤色と緑色を表示するようになっている。
【0029】
さらに、図8に示すように、シアンの色部材22、マゼンタの色部材24及びイエローの色部材26がアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、3つの色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36が開口部14、16、18からそれぞれ突出し、表示部12の内部で先端部32A、34A、36Aが広がり互いに混ざり合うことで黒色を表示するようになっている。
【0030】
また、各色部材22、24、26は、各アクチュエータ42が制御装置44から出力される制御信号によってそれぞれ個別に作動することで、各筒20内を矢印A方向または矢印B方向移動し、開口部14、16、18を通って表示部12内へ出し入れ可能となっている。
【0031】
(作用・効果)
本実施形態の表示装置10では、制御装置44から出力される制御信号によってアクチュエータ42が作動する。先ず、図5に示すように、全ての色部材22、24、26が開口部14、16、18内に引き込まれている状態では、表示部12は底面12Aの白色に見える。
【0032】
次に、制御装置44から出力される制御信号によって、図6に示すように、シアンの色部材22のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動した場合には、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がることで表示部12にシアンを表示する。
【0033】
同様に、マゼンタの色部材24のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34が開口部16から突出し、表示部12の内部で先端部34Aが広がることで表示部12にマゼンタを表示する。
【0034】
また、イエローの色部材26のみがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、イエローの色部材26を構成する複数の線材36が開口部18から突出し、表示部12の内部で先端部36Aが広がることで表示部12にイエローを表示する。
【0035】
一方、図7に示すように、シアンの色部材22とマゼンタの色部材24とがアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がると共に、マゼンタの色部材24を構成する複数の線材34が開口部16から突出し、表示部12の内部で先端部34Aが広がり互いに混ざり合うことで青色を表示する。
【0036】
同様に、他の2つの色部材がアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、他の2つの色部材を構成する複数の線材が開口部から突出し、表示部12の内部で先端部が広がり互いに混ざり合うことで赤色と緑色を表示する。
【0037】
さらに、図8に示すように、シアンの色部材22、マゼンタの色部材24及びイエローの色部材26がアクチュエータ42によって、矢印A方向へ移動された場合には、3つの色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36が開口部14、16、18から突出し、表示部12の内部で先端部32A、34A、36Aが広がり互いに混ざり合うことで黒色を表示する。
【0038】
このように、本実施形態の表示装置10では、マトリックス状に配置した複数の表示部12の底面12Aに形成した開口部14、16、18から表示部12の内部へ突出した色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36の先端部32A、34A、36Aが、表示部12の内部で広がることで各表示部12に色を表示する。このため、液晶ディスプレイに比べ目の疲労が少ない。また、本実施形態の表示装置10では、制御装置44によって作動が制御されるアクチュエータ42によって、色部材22、24、26が開口部14、16、18を通って移動することで、表示部12の色が変化する。このため、色部材において高精度な加工や位置決めを必要としない単純な構造であるため、製造コストを抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態の表示装置10では、下地となる表示部12の底面12Aが白色であると共に開口部14、16、18が3つあり、色部材22、24、26がシアン・マゼンタ・イエローの色部材である。このため、色の3原色を用い減法混色でカラー表示が可能である。
【0040】
また、本実施形態の表示装置10では、色部材22、24、26が開口部14、16、18から突出した先端部が広がるように配置された複数の線材32、34、36からなるため、色部材22、24、26の構成が簡単である。
【0041】
なお、制御装置44からの制御信号によって、アクチュエータ42の作動量を変化させ、各色部材の各開口部から表示部の内部への突出量を変えることができるようにし、各色の濃淡を表示可能とした構成としてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の表示装置の第2実施形態を図9〜図11に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態では、各色部材22、24、26を構成する複数の線材32、34、36の長さが異なっており、各色部材22、24、26の先端部が尖っている。
【0043】
図10に示すように、開口部14においては、筒20の内周部から開口部14の中心に向かって白色の線材50が、筒20の周方向に沿って所定の間隔で複数本設けられている。また、これらの線材50は、例えば、繊毛からなり、開口部14を覆うように各長さが設定されている。なお、図示を省略したが、開口部16、18においても同様の構成になっている。
【0044】
図11に示すように、開口部14において、シアンの色部材22がアクチュエータ42(図9参照)によって、矢印A方向へ移動された場合には、シアンの色部材22を構成する複数の線材32が開口部14から突出し、表示部12の内部で先端部32Aが広がることで表示部12にシアンを表示することができるようになっている。このとき、白色の線材50は、線材32に押圧されて弾性変形により表示部12の内部に広がるが、線材32に覆われるようになっている。なお、図示を省略したが、開口部16、18においても同様である。
【0045】
従って、本実施形態では、各アクチュエータ42によって、色部材22、24、26が開口部14、16、18内に引き込まれている状態では、白色の線材50によって、開口部14、16、18が白色に見える。このため、各線材32、34、36の先端面32C、34C、36Cを白色としなくても、表示部12の白色が鮮明になる。
【0046】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記各実施形態では、下地となる表示部12の底面12Aを白色にし、底面12Aに3つの開口部14、16、18を形成し、これらの開口部にシアン・マゼンダ・イエローの色部材22、24、26を移動可能に配置することでカラー表示を可能にしたが、これに代えて、表示させたい色に対応して、表示部12の底面12Aの色を白以外の他の色に変えたり、形成する開口部の数を3つ以外の1つ、2つや4つ以上とし、各開口部に異なる色の色部材を移動可能に配置した構成としてもよい。
【0047】
また、上記各実施形態では、線材32、34、36、50を、例えば、所定に色に染めた繊毛で構成したが、線材32、34、36、50は化学繊維、金属繊維等の他の構成としてもよい。
【0048】
また、上記各実施形態では、表示部12の底面12Aを正方形としたが、表示部12の底面12Aの形状は、正方形に限定されず、長方形等の他の形状としてもよい。
【0049】
また、上記各実施形態では、例えば、色部材22を複数の線材32で構成したが、色部材は開口部から突出した球状の部材が弾性変形により大きくなることで表示部に色を表示する着色したスポンジ等の他の構成としてもよい。
【0050】
また、上記各実施形態では、アクチュエータ42を装置の小型化と低消費電力化のため、例えば、静電リニアアクチュエータで構成したが、アクチュエータ42は圧電リニアアクチュエータのほか、回転型モータでねじを回すことで直線運動が得られる駆動装置などの構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 表示装置
12 表示部
12A 表示部の底面
14 開口部
16 開口部
18 開口部
20 筒
22 色部材
24 色部材
26 色部材
32 線材
34 線材
36 線材
40 ロッド
42 アクチュエータ
44 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地となると共にマトリクス状に配置された複数の表示部と、
前記表示部に形成された開口部と、
前記開口部を通って移動することで前記表示部内へ出し入れ可能に設けられ、前記表示部内へ移動した部位が広がることで前記表示部に色を表示する色部材と、
前記色部材を移動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータの作動を制御する制御装置と、
を有する表示装置。
【請求項2】
前記表示部に形成された開口部が複数であり、各開口部に異なる色の前記色部材が設けられている請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記下地となる表示部が白色であると共に前記開口部が3つであり、前記色部材がシアン・マゼンダ・イエローの色部材である請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記色部材は、前記開口部から突出した先端部が広がるように配置された複数の線材からなる請求項1〜3の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項1】
下地となると共にマトリクス状に配置された複数の表示部と、
前記表示部に形成された開口部と、
前記開口部を通って移動することで前記表示部内へ出し入れ可能に設けられ、前記表示部内へ移動した部位が広がることで前記表示部に色を表示する色部材と、
前記色部材を移動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータの作動を制御する制御装置と、
を有する表示装置。
【請求項2】
前記表示部に形成された開口部が複数であり、各開口部に異なる色の前記色部材が設けられている請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記下地となる表示部が白色であると共に前記開口部が3つであり、前記色部材がシアン・マゼンダ・イエローの色部材である請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記色部材は、前記開口部から突出した先端部が広がるように配置された複数の線材からなる請求項1〜3の何れか1項に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−155269(P2012−155269A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16517(P2011−16517)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【Fターム(参考)】
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