説明

表示装置

【課題】視聴方向によって生じる表示むらを補正するための表示装置を提供する。
【解決手段】画質調整装置20の制御部21は、視聴角度を変更して表示むらの測定処理を実行し、この測定結果を用いて視聴角度に応じた補正値の算出処理を実行し、登録処理を実行する。液晶パネル10は、視聴者検知手段12を介して視聴者を検知した場合には、平均視聴角度を算出する。液晶パネル10は、算出した平均視聴角度に応じた補正値を、補正テーブルを用いて算出し、この補正値を用いて画像信号を補正して、画像表示処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視聴方向によって生じる表示むらを補正するための表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、液晶パネル等のディスプレイの製造ラインは、均一な品質を実現できるように構築されている。しかし、このような製造ラインにおいても、個々のディスプレイには、製造バラツキが発生する。そこで、各ディスプレイにおいて、よりよい画像を出力できるように調整するための技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の技術では、画質調整装置の制御部が、テストパターンを生成し、液晶パネルに供給し、撮影カメラから出力画像を取得する。そして、出力画像データについてバンドパスフィルタリングを行ない、補正値を算出する。そして、すべての基準階調について補正テーブルの算出を終了した場合、補正回路のROMに書き込む。液晶パネルに画像を表示するための画像信号は、ROMに記録された補正テーブルを参照し、線形補間された補正値を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−57149号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスプレイによっては、視聴者が閲覧する角度(視聴角度)によって、画像の見え方が異なる。特に、輝度は視聴角度に依存する場合がある。また、コスト低減を目的として、ディスプレイに無研磨ガラスを用いることを検討した場合、この影響が大きくなることがある。すなわち、無研磨ガラスは、パネル面内において表面むらがあり、視聴角度によっては、輝度変化が大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、視聴方向によって生じる表示むらを補正するための表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、視聴角度に対応させて輝度の補正値を記憶した補正テーブルを記憶した補正情報記憶手段と、視聴者の位置を検出する視聴者検知手段と、画像データを補正する制御手段とを備えた表示装置であって、前記視聴者検知手段において、視聴者の位置に応じた視聴角度を算出し、前記制御手段が、前記補正情報記憶手段から、前記視聴角度に対応した補正テーブルを取得し、前記補正テーブルを用いて画像データを補正することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表示装置において、前記視聴者検知手段において算出した視聴角度に応じて、補正テーブルに記憶された視聴角度を補間して、輝度補正を行なうことを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の表示装置において、前記視聴者検知手段において視聴者の優先順位を特定し、優先順位が高い視聴者の位置に応じた視聴角度を算出し、この視聴角度を用いて輝度補正テーブルを特定することを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の表示装置において、視聴者識別情報に対応
させて優先順位を記憶した視聴者情報記憶手段を更に備え、前記視聴者検知手段において、前記視聴者情報記憶手段に記憶された視聴者識別情報を用いて視聴者を特定し、前記視聴者情報記憶手段から、前記特定された視聴者の優先順位を特定することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の表示装置において、前記視聴者検知手段において、視聴者までの距離を算出し、この距離に基づいて、優先順位を特定することを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置において、視聴者の優先順位に基づいて加重値を決定し、前記加重値を用いて、前記補正テーブルに記憶された補正値を修正することを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の表示装置において、所定範囲に存在する視聴者に基づいて重み付けすることを要旨とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、視聴角度に対応させて輝度の補正値を記憶した補正テーブルを記憶した補正情報記憶手段と、画像データを補正する制御手段とを備えた表示装置であって、前記補正情報記憶手段には、前記表示装置の正面から輝度を測定した輝度に対応させた正面補正テーブルと、前記表示装置の斜めから輝度を測定した輝度に対応させた斜め補正テーブルと、前記正面補正テーブルと前記斜め補正テーブルとに含まれる補正値に対して、視聴角度に応じた重み付けにより修正した統合補正テーブルを記憶させたことを要旨とする。
【0013】
(作用)
本発明によれば、視聴角度に対応させて輝度の補正値を記憶した補正テーブルを記憶した補正情報記憶手段と、視聴者の位置を検出する視聴者検知手段と、画像データを補正する制御手段とを備えた表示装置である。この表示装置は、視聴者検知手段において、視聴者の位置に応じた視聴角度を算出し、制御手段が、補正情報記憶手段から、前記視聴角度に対応した補正テーブルを取得し、補正テーブルを用いて画像データを補正する。このため、表示むらの視聴角度依存性が大きい場合においても、視聴者の位置を検知して、動的に視聴角度に応じて画像補正を行なうことができる。従って、視聴位置に応じて画質を改善した画像を提供することができる。
【0014】
本発明によれば、視聴者検知手段において算出した視聴角度に応じて、補正テーブルに記憶された視聴角度を補間して、輝度補正を行なう。このため、視聴者は、表示むらの視聴角度によって輝度が変化する場合であっても、より均一な輝度で表示可能な画像を提供することができる。
【0015】
本発明によれば、前記視聴者検知手段において視聴者の優先順位を特定し、優先順位が高い視聴者の位置に応じた視聴角度を算出し、この視聴角度を用いて輝度補正テーブルを特定する。このため、複数の視聴者が閲覧している場合には、優先順位に応じて調整した画像を提供することができる。
【0016】
本発明によれば、視聴者識別情報に対応させて優先順位を記憶した視聴者情報記憶手段を更に備え、視聴者検知手段において、視聴者情報記憶手段に記憶された視聴者識別情報を用いて視聴者を特定し、視聴者情報記憶手段から、特定された視聴者の優先順位を特定する。このため、予め登録した視聴者毎の優先順位を用いて、優先順位を決定することができる。
【0017】
本発明によれば、視聴者検知手段において、視聴者までの距離を算出し、この距離に基づいて、優先順位を特定する。このため、視聴者の距離を考慮した優先順位を決定するこ
とができる。
【0018】
本発明によれば、視聴者の優先順位に基づいて加重値を決定し、加重値を用いて、前記補正テーブルに記憶された補正値を修正する。このため、視聴者の優先順位を考慮した視聴角度を用いて、画像を調整することができる。
【0019】
本発明によれば、所定範囲に存在する視聴者に基づいて重み付けする。このため、距離が近い場合には、表示むらの影響が大きくなるので、このような視聴者を優先して、画像の補正を行なうことができる。
【0020】
本発明によれば、視聴角度に対応させて輝度の補正値を記憶した補正テーブルを記憶した補正情報記憶手段と、画像データを補正する制御手段とを備えた表示装置である。この表示装置は、補正情報記憶手段には、表示装置の正面から輝度を測定した輝度に対応させた正面補正テーブルと、表示装置の斜めから輝度を測定した輝度に対応させた斜め補正テーブルと、正面補正テーブルと前記斜め補正テーブルとに含まれる補正値に対して、視聴角度に応じた重み付けにより修正した統合補正テーブルを記憶させる。このため、表示装置は、予め視聴者の存在確率に基づいて決定した加重値により、単一の補正テーブルを用いて、画像を調整することができる。従って、動的に補正テーブルを変更することができないが、簡易な構成により、視聴角度を考慮した画像を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、視聴方向によって生じる表示むらを補正するための表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態における画像補正データ生成システムの説明図。
【図2】本発明の第1実施形態における各処理の処理手順の流れ図。
【図3】本発明の第2実施形態における各処理の処理手順の流れ図。
【図4】本発明の第3実施形態における各処理の処理手順の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における表示装置について説明する。本実施形態では、表示装置の表示むら(輝度むら)を抑制して画質を改善する場合を想定する。なお、本実施形態では、図1に示すように、表示装置として、液晶パネル10を用いる。また、この液晶パネル10には、画質を改善するために補正データを用いる。この補正データを生成するために、画像補正データ生成システムを用いて、液晶パネル10の表示むらを測定し、これに応じた補正テーブルを作成する。
【0024】
液晶パネル10は、透明電極に挟まれた液晶(液晶部)と、背面から液晶を照明するバックライトから構成されている。このため、液晶パネル10には、液晶部のむらやバックライトの周辺減光が重畳された画像が出力されることになる。
【0025】
そこで、液晶パネル10の画質を改善するために、液晶パネル10は、供給される画像信号を調整するための補正回路15を備えている。具体的には、液晶パネル10に画像を表示するための画像信号(RGB信号)は、液晶パネル10とともに補正回路15に供給される。
【0026】
更に、液晶パネル10には、視聴者検知手段12が設けられている。この視聴者検知手段12は、撮像装置を備えており、液晶パネル10を閲覧する視聴者の位置と距離とを検
出する。具体的には、視聴者検知手段12は、デジタルカメラ等に用いられている公知の顔認識技術を用いる。この顔認識技術においては、視聴者検知手段12に顔パターンデータを保持させておき、撮影画像と顔パターンとを比較して、顔の位置、すなわち視聴者の位置を特定することができる。そして、視聴者検知手段12は、特定した視聴者位置から、液晶パネル10の正面を中心として水平方向の角度(右方向を「+」、左方向を「−」とする角度)を算出することにより視聴角度を特定する。更に、視聴者検知手段12は、液晶パネル10から視聴者までの距離を特定する。本実施形態では、この視聴者検知手段12の視聴者毎の視聴角度から、補正に用いる補正データが特定される。
【0027】
補正回路15は、補正テーブルを記録するための不揮発性メモリ(ROM15a)と、使用する補正データを保持するRAM15bとを備える。ROM15aには、入力された画像信号の信号値を調整するための補正値に関するデータ(補正テーブル)が記録される。本実施形態では、代表視聴角度毎で基準階調毎に補正値の平面分布が記録される。本実施形態においては、代表視聴角度として、0度(正面)、±45度(右45度、左45度)の三種類の角度を用いる。視聴角度における表示むらを補正するために、ROM15aには、この代表視聴角度毎に補正テーブルが記録される。
【0028】
本実施形態では、RAM15bが補正情報記憶手段として機能する。ここでは、補正回路15は、液晶パネル10の電源がオンされた場合、ROM15aから補正データを呼び出し、RAM15bに転送し、視聴者の状況が変化した場合にRAM15bの補正データの更新を行なう。そして、電源がオフされた場合には、RAM15bに記憶されていた補正データは消去される。
【0029】
補正回路15は、ROM15aの他に、図示しない選択・補間手段や加算手段を備える。選択・補間手段は、RAM15bに記録された補正テーブルを、RGB信号毎に参照する。ここでは、選択・補間手段は、画像信号の各RGB信号値に隣接する二つの基準階調の補正テーブルにおいて、画像信号のピクセル位置(xy座標)を囲む四つのブロック格子点によって決まる補正値(2×4=8個)を取得する。そして、選択・補間手段は、取得した補正値について、画像信号の信号値と各格子点との距離に応じて線形補間を行なう。そして、加算手段は、選択・補間手段から取得した補正値を、入力された画像信号に加算する。補正後の画像信号は、液晶部を駆動するための液晶部駆動手段11に供給される。これにより、液晶パネル10は、この補正された画像信号に基づく画像を表示する。
【0030】
この補正値を算出するための画像補正データ生成システムは、画質調整装置20、撮影カメラ30、テストパターン発生装置40及びROMライタ50から構成されている。ここで、撮像手段としての撮影カメラ30は、液晶パネル10上に表示された画像を撮影し、出力画像データを画質調整装置20に供給する。本実施形態では、撮影カメラ30として、CCD素子を備えたモノクロカメラを用いる。そして、液晶パネル10に表示された画像を撮影する。
【0031】
信号発生手段としてのテストパターン発生装置40は、画質調整装置20からの指示に基づいて、液晶パネル10にテストパターン信号を供給する。本実施形態では、8bitのRGB信号を液晶パネル10の全面に供給する。
ROMライタ50は、画質調整装置20から出力される補正値データ(補正テーブル)を液晶パネル10のROM15aに書き込む。
【0032】
画質調整装置20は、液晶パネル10の画質を調整するための補正値を算出する処理を実行するコンピュータ端末である。この画質調整装置20は、制御部21及び補正テーブル記憶部22を備える。
【0033】
制御部21は、制御手段としてのCPU、RAM及びROM等を有し、後述する処理(むら測定段階、補正値算出段階及び補正値登録段階等を含む処理)を行なう。このための補正データ生成プログラムを実行することにより、制御部21は、むら測定手段、補正値算出手段及び補正値登録手段として機能する。
【0034】
補正テーブル記憶部22は、液晶パネル10の画像を補正するための補正データ(補正情報)を記憶する。補正テーブル記憶部22には、本実施形態において、視聴角度毎の補正テーブルが記憶されている。本実施形態では、液晶パネルの正面を0度とする補正テーブルと、これに対して左右に±45度となる補正テーブルとが記憶されている。この補正データは、画質調整装置20が測定した画像に応じて補正テーブルを算出した場合に記録される。
【0035】
画質調整装置20に接続されたROMライタ50は、画質調整装置20に記憶された補正テーブルを取得し、調整対象の液晶パネル10のROM15aに書き込む。
上記の画像補正データ生成システムを用いて、液晶パネル10の補正テーブルを生成するための補正テーブル生成処理及びこの補正テーブルを用いた液晶パネル10の表示処理について、図2を用いて説明する。
【0036】
(補正データ生成処理)
まず、補正データ生成処理について説明する。本実施形態では、所定の階調毎に表示むらを抑制するための補正テーブルを、予め定めた代表視聴角度(0度、±45度)毎に生成する。この代表視聴角度毎に表示むらを測定するために、撮影カメラ30を、この方向に配置する。そして、この代表視聴角度毎に以下の処理を繰り返す。
【0037】
まず、画質調整装置20の制御部21は、表示むらの測定処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、制御部21が、テストパターン発生装置40に対して、調整対象階調の画像出力を行なうためのRGB信号の出力を指示する。ここでは、調整対象階調において、液晶パネル10の全面に対して、R信号値、G信号値、B信号値が同じ信号(共通する信号値)を用いる。この指示に応じて、テストパターン発生装置40は、調整対象階調となる8bitのRGB信号を液晶パネル10に供給する。
【0038】
そして、液晶パネル10は、これに応じて調整対象階調のグレー画像を出力する。この場合、液晶においてセルギャップのむらや、バックライトの明るさにむらがある場合には、液晶パネル10において、これらのむらが重畳された表示むらが生じる。ここで、撮影カメラ30は、表示むらが重畳された画像を撮影する。
【0039】
そして、画質調整装置20の制御部21は、出力画像の取得処理を実行する。具体的には、制御部21は、液晶パネル10を撮影した出力画像データを撮影カメラ30から取り込む。そして、制御部21は、この出力画像データを、8×8ピクセルから構成されたブロック毎の輝度分布に変換し、フィルタ手段に供給する。
【0040】
次に、画質調整装置20の制御部21は、フィルタリング処理を実行する。具体的には、制御部21は、取得した出力画像データに対してバンドパスフィルタリングを行なうことにより、バンドパスデータを算出する。このバンドパスデータは、液晶パネル10の面内の輝度分布に応じて、低周波成分や高周波成分を除いた分布から構成される。
【0041】
次に、画質調整装置20の制御部21は、補正値の算出処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21は、バンドパスデータを反転させた補正テーブルを生成する。ここでは、予め設定された階調(基準階調)毎に、液晶パネル10上の補正値の分布を算出する。本実施形態では、8bitで表現される信号値において所定数(例えば、
10段階)の基準階調を用いる。そして、基準階調に対応した調整対象階調を1段階毎に順次変更し、調整対象階調毎に補正テーブルを生成する。更に、補正情報生成手段は、調整を行なった基準階調を特定する識別子、代表視聴角度に関連付けて補正テーブルを補正テーブル記憶部22に一時記憶する。以上の処理を、予め定められた視聴角度毎に繰り返す。
【0042】
そして、すべての代表視聴角度についての補正値の算出を終了した場合、画質調整装置20の制御部21は、代表視聴角度に関連付けて補正値の登録処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21は、補正テーブル記憶部22に記憶された補正テーブルを、ROMライタ50に供給する。この場合、ROMライタ50は、液晶パネル10のROM15aに補正テーブルを書き込む。これにより、ROM15aには、代表視聴角度に対応し、基準階調毎に、液晶パネル10の面内のブロック位置(xy座標)に対して補正値の分布が記録される。
【0043】
(表示処理)
次に、液晶パネル10における表示処理について説明する。
まず、液晶パネル10は、視聴者検知処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、液晶パネル10が起動された場合、液晶パネル10の視聴者検知手段12は、視聴者の存在を特定する。更に、視聴者検知手段12は、各視聴者の液晶パネル10の中心からの左右の位置と液晶パネル10から視聴者までの距離を特定する。
【0044】
次に、液晶パネル10は、平均視聴角度の算出処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、液晶パネル10の視聴者検知手段12は、特定した各視聴者の位置及び距離から、各視聴者の視聴角度を算出する。ここでは、視聴者検知手段12は、所定の距離範囲内に存在する視聴者のみの位置を特定するものとする。
【0045】
複数の視聴者を検出した場合には、視聴者検知手段12は、各視聴者の視聴角度を合計して、視聴者の数で除算することにより、平均視聴角度を算出する。視聴者が1人の場合には、その視聴者の視聴角度が平均視聴角度となる。なお、視聴者を検知できない場合には、視聴者検知手段12は、視聴角度として「0度」を算出する。
そして、視聴者検知手段12は、算出した平均視聴角度を、視聴角度として補正回路15に供給する。
【0046】
次に、液晶パネル10は、視聴角度に応じた補正値の算出処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、液晶パネル10の補正回路15は、取得した視聴角度に対応する補正テーブルをRAM15bにおいて検索する。取得した視聴角度が、RAM15bに記憶された代表視聴角度と一致する場合には、この代表視聴角度の補正テーブルを、RAM15bに記録する。代表視聴角度と一致しない場合には、取得した視聴角度に隣接する代表視聴角度の補正テーブルを抽出する。そして、補正回路15は、この補正テーブルを用いて、視聴角度における補正テーブルを、線形補間により算出する。補正回路15は、算出した視聴角度における補正テーブルを、RAM15bに記録する。
【0047】
そして、液晶パネル10は、画像表示処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、液晶パネル10の補正回路15は、入力される画像信号に応じた補正値を、RAM15bに記憶されている補正テーブルにおいて特定する。そして、補正回路15は、この補正値に応じて補正された画像信号を液晶部駆動手段11に供給する。液晶部駆動手段11は、供給された画像信号に応じて各セルを表示する。
【0048】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態では、画質調整装置20は、視聴角度を変更して表示むらの測定処
理を実行し、この測定結果を用いて視聴角度に応じた補正値の算出処理を実行し、登録処理を実行する(ステップS1−1〜S1−3)。液晶パネル10は、視聴者を検知した場合には、平均視聴角度を算出し、この視聴角度に応じた補正値の算出処理を行なって画像表示処理を実行する(ステップS2−1〜S2−4)。液晶パネル10によっては、視聴角度によって表示むらの見え方が異なる場合がある。特に、安価な無研磨ガラスを用いた液晶パネル10の場合には、表示むらの視聴角度依存性が大きいことがある。このような場合においても、視聴者の位置を検知して、動的に視聴角度に応じて画像補正を行なうことができる。従って、視聴位置に応じて画質を改善した画像を提供することができる。
【0049】
(2) 本実施形態では、視聴者検知手段12は、所定の距離範囲内に存在する視聴者のみの位置を特定する。距離が近い場合には、表示むらの影響が大きくなるので、このような視聴者を優先して、画像の補正を行なうことができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図3を用いて説明する。
本実施形態は、上記第1実施形態と異なり、登録された視聴者の優先順位に応じて、視聴角度を算出する。なお、上記実施形態と同様な部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施形態の液晶パネル10は、視聴者情報記憶手段としての登録視聴者データ記憶部を備えている。この登録視聴者データ記憶部には、登録された視聴者に関する登録視聴者レコードが記憶される。この登録視聴者レコードは、液晶パネル10において、新たな視聴者の顔画像の特徴量及び優先順位を取得して登録指示を受信した場合に記録される。この登録視聴者レコードには、視聴者識別子、視聴者の顔画像の特徴量及び優先順位に関するデータが含まれる。
【0052】
視聴者識別子データ領域には、登録された各視聴者を特定するための識別子に関するデータが記録される。
視聴者の顔画像の特徴量データ領域には、この視聴者の顔画像の特徴量に関するデータが記憶されている。
優先順位データ領域には、この視聴者の優先順位に関するデータが記憶されている。
【0053】
本実施形態の視聴者検知手段12は、撮像装置において撮影された画像の中で、顔認識パターンを用いて視聴者の顔を検出する。更に、視聴者検知手段12は、登録視聴者データ記憶部に記憶された視聴者の顔画像データを用いて、検出された顔の視聴者が、登録されている視聴者か否かを判断する。視聴者検知手段12は、登録された視聴者を検出した場合には、この視聴者の優先順位に応じて、視聴者の位置及び距離に対応する視聴角度を算出する。
【0054】
(表示処理)
次に、本実施形態の液晶パネル10における表示処理について説明する。
まず、液晶パネル10は、上記ステップS2−1と同様に、視聴者検知処理を実行する(ステップS3−1)。次に、液晶パネル10は、視聴者の顔認証処理を実行する(ステップS3−2)。具体的には、液晶パネル10の視聴者検知手段12は、第1実施形態と同様に、撮影画像において特定したすべての顔画像における視聴角度と距離とを取得する。更に、撮像画像において検出した顔画像データと、登録視聴者データ記憶部に記憶されている顔認識パターンとを比較し、登録された視聴者の顔画像を検索する。
【0055】
そして、液晶パネル10は、登録視聴者を含むか否かを判断する(ステップS3−3)。具体的には、液晶パネル10の視聴者検知手段12は、登録視聴者データ記憶部に登録
されている顔画像の特徴量との一致度が基準値以上の顔画像を検出した場合には、視聴者検知手段12は、登録視聴者を含むと判断する。
【0056】
ここで、登録視聴者を含む場合(ステップS3−3において「YES」の場合)、液晶パネル10は、優先順位決定処理を実行する(ステップS3−4)。具体的には、検出された登録視聴者の優先順位を、登録視聴者データ記憶部から取得する。
【0057】
そして、液晶パネル10は、高順位の視聴者の視聴角度の算出処理を実行する(ステップS3−5)。具体的には、液晶パネル10の視聴者検知手段12は、優先順位が高い視聴者の視聴角度を特定する。
【0058】
一方、登録視聴者を含まない場合(ステップS3−3において「NO」の場合)、液晶パネル10は、平均視聴角度の算出処理を実行する(ステップS3−6)。具体的には、液晶パネル10の視聴者検知手段12は、ステップS2−2と同様に、平均視聴角度を算出する。
【0059】
次に、液晶パネル10は、視聴角度に応じた補正値の算出処理を実行する(ステップS3−7)。ここでは、液晶パネル10の補正回路15は、ステップS3−5において特定した高順位の視聴者の視聴角度、又はステップS3−6において特定した平均視聴角度を用いて、ステップS2−3と同様に、補正を算出する。
【0060】
そして、液晶パネル10は、ステップS2−4と同様に、表示処理を実行する(ステップS3−8)。以上により、表示処理が完了する。
本実施形態によれば、上述した(1)及び(2)と同様な効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
【0061】
(3)本実施形態では、液晶パネル10は、視聴者の顔認証処理を実行し(ステップS3−2)、登録視聴者データ記憶部に記憶された登録者の場合には、その登録者の優先順位を特定する。これにより、撮像装置によって作成された画像を用いて、視聴角度と距離を算出するとともに、登録視聴者かどうかを判定することができる。そして、液晶パネル10は、登録視聴者データ記憶部に記憶された視聴者の優先順位を用いて優先順位決定を実行し、高順位の視聴者の視聴角度の算出処理を実行する(ステップS3−4,S3−5)。これにより、複数の視聴者が閲覧している場合には、優先順位に応じて調整した画像を提供することができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図4を用いて説明する。
本実施形態は、上記第1実施形態と異なり、視聴者の位置を予め想定して補正テーブルを作成する。なお、上記実施形態と同様な部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0063】
本実施形態の液晶パネル10では、上記実施形態と異なり、視聴者検知手段12を設けない代わりに、画質調整装置20の制御部21において、想定される視聴角度毎の補正テーブルを作成し、視聴角度に重み付けして統合した補正テーブル(統合補正テーブル)を作成する。このために、制御部21は、想定視聴角度及び想定視聴角度毎の加重値データを保持している。この加重値は、視聴角度における視聴者の存在確率に基づいて決定し、合計すると「1」になるように規格化されている。
また、本実施形態の補正回路15は、ROM15aが補正情報記憶手段として機能する。本実施形態の補正回路15は、ROM15aに記録された統合補正テーブルを用いて画像信号を補正する。
【0064】
(補正データ生成処理)
まず、本実施形態の補正データ生成処理について説明する。本実施形態では、上記実施形態と異なり、補正テーブルを1つ生成する。
【0065】
まず、画質調整装置20の制御部21は、上記ステップS1−1,S1−2と同様に、代表視聴角度毎に、表示むらの測定処理、補正値の算出処理を実行する(ステップSS4−1,S4−2)。
【0066】
次に、画質調整装置20の制御部21は、視聴角度に重み付けして補正値の登録処理を実行する(ステップS4−3)。具体的には、制御部21は、想定視聴角度毎の同じ階調の補正テーブルに含まれる補正値を、想定視聴角度に応じた加重値を乗算して合計した統合補正テーブルを生成する。制御部21は、生成した統合補正テーブルをROMライタ50に供給する。この場合、ROMライタ50は、液晶パネル10のROM15aに、この統合補正テーブルを書き込む。これにより、ROM15aには、基準階調毎に、液晶パネル10の面内のブロック位置(xy座標)に対して補正値の分布が記録される。
【0067】
そして、表示処理においては、統合補正テーブルを用いて、補正値の算出処理及び画像表示処理を実行する(ステップS5−1,S5−2)。
本実施形態によれば、上述した(2)と同様な効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
【0068】
(4)本実施形態では、画質調整装置20は、視聴角度に重み付けして補正値の登録処理を実行する(ステップS4−3)。これにより、液晶パネル10は、予め視聴者の存在確率に基づいて決定した加重値により、単一の補正テーブルを用いて、画像を調整することができる。従って、動的に補正テーブルを変更することができないが、簡易な構成により、視聴角度を考慮した画像を提供することができる。
【0069】
また、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 上記実施形態においては、視聴者検知手段12は、デジタルカメラ等に用いられている公知の顔認識技術を用いる。視聴者の位置の特定方法は、顔認識技術に限定されるものではない。例えば、サーモグラフィを用いて、体温測定により、視聴者の位置を特定するようにしてもよい。
【0070】
・ 上記実施形態においては、代表視聴角度(0度、±45度)毎の補正テーブルを生成し、ROM15aに書き込む。代表視聴角度は、これらの角度に限定されるものではない。さらに多くの代表視聴角度を用いることにより、実際の視聴角度に対して、より精緻な補正値を算出することができる。
【0071】
また、補正データ生成処理において、動的に代表視聴角度を算出するようにしてもよい。具体的には、液晶パネル10の視聴者検知手段12をカメラ位置検知手段として用いて、撮影カメラ30の設置位置(撮影角度)を算出する。そして、画質調整装置20は、カメラ位置検知手段から撮影角度を取得し、この撮影角度を代表視聴角度として用いる。これにより、任意の複数の位置に撮影カメラ30を設置して、代表視聴角度毎の補正データを生成することができる。
【0072】
・ 上記第2実施形態においては、液晶パネル10は、優先順位決定処理(ステップS3−4)、高順位の視聴者の視聴角度の算出処理(ステップS3−5)を実行する。ここで、視聴者の距離に応じて加重した視聴角度を算出するようにしてもよい。具体的には、液晶パネル10の視聴者検知手段12に、視聴者までの距離を考慮して視聴角度を算出す
るために、距離が近い順番に視聴角度に乗算する加重値及び距離を考慮した視聴角度を算出するための視聴角度算出式を保持させておく。この視聴角度算出式においては、視聴角度に加重値を乗算して合計した合計値を算出するとともに、この合計値の算出に用いた加重値の総和で除算するように構成されている。
【0073】
そして、液晶パネル10は、各視聴者までの距離に応じて加重した視聴角度の算出処理を実行する。具体的には、液晶パネル10の視聴者検知手段12は、取得した各視聴者の距離と視聴角度を、補正値用視聴角度算出式に代入することにより、視聴角度を算出する。そして、液晶パネル10は、S2−3,S2−4と同様に、視聴角度に応じて補正値の算出処理及び表示処理を実行する(ステップS3−7,S3−8)。これにより、視聴者の距離を考慮した視聴角度を用いて、画像を調整することができる。
【0074】
・ 上記第2実施形態においては、液晶パネル10は、優先順位決定処理(ステップS3−4)、高順位の視聴者の視聴角度の算出処理(ステップS3−5)を実行する。ここで、視聴者の距離に応じた優先順位に応じて、視聴角度を算出するようにしてもよい。
【0075】
具体的には、ステップS3−4において、視聴者検知手段12は、液晶パネル10からの距離が遠い登録視聴者の優先順位が低くなるように、優先順位を決定する。例えば、視聴者検知手段12は、最初に距離が近い順番に順位(距離順位)を定める。次に、視聴者検知手段12は、登録視聴者データ記憶部に記憶された優先順位(登録順位)を取得する。そして、視聴者検知手段12は、距離順位と登録順位とを考慮するための演算(例えば乗算)を行なうことにより、総合順位を算出する。そして、この総合順位が高い視聴者の視聴角度を算出する。そして、ステップS3−7において、液晶パネル10は、視聴角度に応じた補正値の算出処理を実行する。これにより、液晶パネル10は、表示装置により近い視聴者を優先した画像を提供することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…液晶パネル、11…液晶部駆動手段、12…視聴者検知手段、15…補正回路、15a…ROM、15b…RAM、20…画質調整装置、21…制御部、22…補正テーブル記憶部、30…撮影カメラ、40…テストパターン発生装置、50…ROMライタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視聴角度に対応させて輝度の補正値を記憶した補正テーブルを記憶した補正情報記憶手段と、
視聴者の位置を検出する視聴者検知手段と、
画像データを補正する制御手段とを備えた表示装置であって、
前記視聴者検知手段において、視聴者の位置に応じた視聴角度を算出し、
前記制御手段が、前記補正情報記憶手段から、前記視聴角度に対応した補正テーブルを取得し、
前記補正テーブルを用いて画像データを補正することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記視聴者検知手段において算出した視聴角度に応じて、補正テーブルに記憶された視聴角度を補間して、輝度補正を行なうことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記視聴者検知手段において視聴者の優先順位を特定し、
優先順位が高い視聴者の位置に応じた視聴角度を算出し、
この視聴角度を用いて輝度補正テーブルを特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
視聴者識別情報に対応させて優先順位を記憶した視聴者情報記憶手段を更に備え、
前記視聴者検知手段において、前記視聴者情報記憶手段に記憶された視聴者識別情報を用いて視聴者を特定し、
前記視聴者情報記憶手段から、前記特定された視聴者の優先順位を特定することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記視聴者検知手段において、視聴者までの距離を算出し、
この距離に基づいて、優先順位を特定することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
視聴者の優先順位に基づいて加重値を決定し、
前記加重値を用いて、前記補正テーブルに記憶された補正値を修正することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
所定範囲に存在する視聴者に基づいて重み付けすることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
視聴角度に対応させて輝度の補正値を記憶した補正テーブルを記憶した補正情報記憶手段と、画像データを補正する制御手段とを備えた表示装置であって、
前記補正情報記憶手段には、
前記表示装置の正面から輝度を測定した輝度に対応させた正面補正テーブルと、
前記表示装置の斜めから輝度を測定した輝度に対応させた斜め補正テーブルと、
前記正面補正テーブルと前記斜め補正テーブルとに含まれる補正値に対して、視聴角度に応じた重み付けにより修正した統合補正テーブルを記憶させたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−60332(P2012−60332A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200337(P2010−200337)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(503193351)株式会社イクス (28)
【Fターム(参考)】