説明

表示部材及びその作製方法

【課題】 両面テープによらず、新規斬新な手法で、基材表面に凹凸を発生させない表示部材及びその作製方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも一部に光透過領域を有する基材と、基材の光透過領域の少なくとも一部に印刷される印刷層であって、基材の裏面側から照射されて基材の表面側に透過する光源の光を表示媒体とする表示部を有する印刷層とを備え、印刷層は、表示部を除いて基材を遮光する遮光層と、光透過性を有し、遮光層と表示部との段差を解消するために表示部に形成される段差吸収層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部材及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源を用いる表示装置は、光源に蛍光管を用いる装置、携帯機器のような液晶ディスプレイを用いる装置、LED(Light Emitting Diode)を用いる装置など、多岐に亘って存在する。これらの装置では、光源と組み合わせて用いられる表示部材の基材を光源から照射された光が透過することで、基材表面に描かれた文字及び模様等の表示情報や、光源自体が有する表示情報が視認可能になっている。一方、基材のうち、光源から照射された光を遮光すべき部位には、遮光性の部材が取付けられ、又は遮光性の印刷が施される。例えば、基材の周囲から外部に光が漏出するのを防止する場合、基材には、遮光性の枠体が取付けられ、又は枠部に遮光性の印刷が施される。
【0003】
特に、遮光性の印刷が施される場合において、基材の面のうち、印刷が施された面が光源の面に直接取り付けられることがある。例えば、光源が液晶ディスプレイである場合、基材の面のうち、印刷が施された面がアクリル樹脂等の両面テープ(OCA)を用いて液晶ディスプレイの表示面に貼り付けられる。
【0004】
ここで、液晶ディスプレイに貼り付けられる基材の表面には、印刷が施された部分と基材の表面との間でインキの厚さ分の段差が生じている。通常、段差は、両面テープの柔軟性を用いて解消される。
【0005】
しかしながら、段差が両面テープにより十分に解消されない場合がある。この場合、基材表面に凹凸が発生してしまい、装置自体の意匠性が低下する要因になる。また、液晶ディスプレイと基材との間にタッチパネルを設ける場合、基材表面の凹凸が原因で、タッチパネルの誤作動を招く恐れがある。
【0006】
そこで、両面テープの性能を改善して段差吸収性を高めることで、基材表面への凹凸の発生を抑制した両面テープが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−77287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る両面テープを利用して段差を吸収することは、基材表面に凹凸を残さない点で有効である。また、一方、両面テープを利用する前に予め段差を解消することで、基材表面に凹凸を発生させないことも有効である。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑み、両面テープによらず、新規斬新な手法で、基材表面に凹凸を発生させない表示部材及びその作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示部材は、少なくとも一部に光透過領域を有する基材と、基材の光透過領域の少なくとも一部に印刷される印刷層であって、基材の裏面側から照射されて基材の表面側に透過する光源の光を表示媒体とする表示部を有する印刷層とを備え、印刷層は、表示部を除いて基材を遮光する遮光層と、光透過性を有し、遮光層と表示部との段差を解消するために表示部に形成される段差吸収層とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る表示部材の作製方法は、少なくとも一部に光透過領域を有する基材の光透過領域の少なくとも一部に印刷層を印刷するステップであって、基材の裏面側から照射されて基材の表面側に透過する光源の光を表示媒体とする表示部を有する印刷層を印刷するステップを備え、印刷層を印刷するステップは、表示部を除いて基材を遮光する遮光層を形成するステップと、光透過性を有し、遮光層と表示部との段差を解消するために表示部に段差吸収層を形成するステップとを有することを特徴とする。
【0012】
斯かる構成によれば、遮光層と表示部との段差を表示部への段差吸収層の印刷によって解消している。これにより、印刷のみで印刷領域に印刷された印刷層の平坦化を図ることができ、製造コストを抑えることができる。また、表示部材と光源とを貼り付ける場合において、基材表面での凹凸の発生を防止できる。
【0013】
また、本発明に係る表示部材において、遮光層は、基材上に形成される第1遮光層と、第1遮光層上に形成されて、第1遮光層との間で段差を形成する第2遮光層とを有してもよい。
【0014】
また、本発明に係る表示部材の作製方法において、遮光層を形成するステップは、基材上に第1遮光層を形成するステップと、第1遮光層との間で段差を形成する第2遮光層を第1遮光層上に形成するステップとを有してもよい。
【0015】
斯かる構成によれば、第1遮光層に対して段差を形成する第2遮光層を設けることで、段差吸収層の印刷位置がずれた場合であっても、第1遮光層と第2遮光層とで形成される溝にインキが充填される。これにより表示部にインキを充填することができると共に、第2遮光層の表面までインキが充填される。したがって、印刷層表面を平坦にすることができる。また、表示部材の作製において歩留まりを高くすることができる。
【0016】
また、本発明に係る表示部材において、印刷層は、基材と少なくとも段差吸収層との間に、光透過性を有しつつ光源からの光が照射されない状態で表示部を隠蔽する隠蔽層をさらに有し、段差吸収層は、遮光層と透過層との段差を解消してもよい。
【0017】
また、本発明に係る表示部材の作製方法において、印刷層を印刷するステップは、段差吸収層を形成するステップの前に、光透過性を有しつつ光源からの光が照射されない状態で表示部を隠蔽する隠蔽層を基材上の少なくとも表示部に該当する領域に形成するステップをさらに有し、段差吸収層を形成するステップは、遮光層と透過層との段差を解消してもよい。
【0018】
斯かる構成によれば、光透過性を有しつつ光源からの光が照射されない状態で表示部を隠蔽する隠蔽層を有しており、表示部を必要なときに表示可能にすることができる。また、段差吸収層が遮光層と隠蔽層との段差を解消するので、基材表面での凹凸の発生を防止することもできる。
【0019】
また、本発明に係る表示部材の作製方法において、段差吸収層を形成するステップの前に、少なくとも段差吸収層が形成される位置の第1遮光層及び第2遮光層の表面に濡れ性を向上する処理を施してもよい。
【0020】
斯かる構成によれば、少なくとも段差吸収層が形成される位置の第1遮光層及び第2遮光層の表面の濡れ性が向上するので、段差吸収層が表示部に形成されるときに、その表面張力が処理前の表面張力よりも低下して、第1遮光層及び第2遮光層に定着しやすくなる。したがって、段差吸収層の表面と第2遮光層の表面とを平坦にできる。よって、基材表面での凹凸の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
以上の如く、本発明に係る表示部材及びその作製方法によれば、両面テープによらず、新規斬新な手法で、基材表面に凹凸を発生させないようにできるというすぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表示部材を示し、図1(a)は、表示部材の正面図、図1(b)は、図1(a)に係る表示部材のA−A断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る光源に組み合わされた表示部材のA−A断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る表示部材の作製方法におけるフローチャートを示す。
【図4】第2実施形態に係る表示部材を示し、図4(a)は、表示部材のA−A断面図、図4(b)は、第2遮光層の印刷パターンの正面図を示す。
【図5】同実施形態に係る表示部材の作製方法におけるフローチャートを示す。
【図6】同実施形態に係る表示部材の作製過程におけるA−A断面図を示し、図6(a)は、濡れ性を上げる部分を示す表示部材のA−A断面図、図6(b)は、段差吸収層が印刷されたときの表示部材のA−A断面図を示す。
【図7】第1実施形態に係る表示部材の他の例のA−A断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る表示部材及びその作製方法における第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0024】
図1(a)及び図1(b)に示すように、表示部材1は、光源(液晶ディスプレイ)から照射される光を受光する基材10と、基材10の光透過領域の少なくとも一部である印刷領域11に印刷される印刷層20とを備える。表示部材1は、図2に示すように、光源3に両面テープ2を用いて貼り付けられる。光源3は、タッチパネル31と、両面テープ32と、液晶ディスプレイ33とを有する。タッチパネル31の一方の面は、液晶ディスプレイ33の表面に両面テープ32を用いて貼り付けられる。また、基材10の裏面側が、タッチパネル31の他方の面に両面テープ2を用いて貼り付けられる。
【0025】
基材10は、光源3から照射される光を裏面で受光すべく設けられる。基材10は、受光した光を表面側に透過可能な光透過領域を有する。これにより、基材10は、光源3からの光を裏面側で視認可能にするように構成されている。基材10は、例えば、0.2mmの厚さを有する板状の偏向板である。
【0026】
基材10は、基材10の光透過領域の少なくとも一部に、印刷層20が印刷される印刷領域11と、印刷領域11以外の領域である非印刷領域12とを有する。印刷領域11は、例えば、基材10の光透過領域のうち、光を遮光する領域を画定すべく設けられる。また、印刷領域11は、例えば、光源3からの光を用いて、基材10上で、図1(a)に示すような表示媒体を表示すべき領域に設けられる。
【0027】
印刷領域11は、光源3から基材10に照射される光を遮光する遮光印刷が施される遮光印刷領域110と、光源3から照射される光を透過する透過印刷が施される透過印刷領域111とを有する。本実施形態において、遮光印刷領域110は、基材10の枠部に設けられる。透過印刷領域111は、基材10の枠部において、遮光印刷領域110に囲まれる位置に設けられる。より具体的に、透過印刷領域111は、基材10の枠部において、光源3からの光を用いて表示媒体とする領域に設けられ、例えば、φ11.0mmの円内にファインパターン印刷される表示媒体の形状で設けられる。また、透過印刷領域111において、その線幅は、例えば、0.3mmで形成される。
【0028】
非印刷領域12は、光源3から受光した光をそのまま透過すべく設けられる領域である。本実施形態において、非印刷領域12は、光源3の光を表面側で視認可能とすべく、基材10の中央領域であり、遮光印刷領域110に囲まれる領域として設けられる。
【0029】
印刷層20は、基材10の裏面側から照射されて基材10の表面側に透過する光源3の光を表示媒体とする表示部13を有する。また、印刷層20は、光源3から基材10に照射される光を表示部13を除いて遮光する遮光層21と、遮光層21が印刷されていない印刷領域11に設けられて、遮光層21と表示部13との段差を除去する光透過性の段差吸収層22とを有する。表示部13は、透過印刷領域111と同じ領域に隣接して設けられ、遮光層21が形成されることで、孔状に抜かれて形成される。なお、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図を示すので、丸形状の表示部13のうちの2辺を示す2箇所に表示部13が示されている。
【0030】
遮光層21は、遮光印刷領域110上に形成される。遮光層21は、例えば、黒インキを用いて形成され、基材10の面上から均等な厚さに形成される。本実施形態において、遮光層21が基材10の枠部に形成されることで、遮光層21は、光源3から基材10に照射される光のうち、枠部に照射される光を遮光可能に形成される。これにより、遮光層21は、基材10の枠部から外部に漏れる光を遮光することができる。本実施形態において、遮光層21は、黒インキを用いて形成され、例えば、270B(バイアス)のフラット印刷で3μmの厚さに形成される。ここで、フラット印刷とは、スクリーン印刷において、表示部材1と接するスクリーンメッシュの網目による凹凸をフラット化して、感光乳剤の凹凸によるインク滲みを抑える印刷をいう。
【0031】
段差吸収層22は、透過印刷領域111上に、遮光層21よりも厚く形成される。すなわち、段差吸収層22は、裏面側で表示部13として遮光層21よりも厚く形成される。これにより、段差吸収層22が形成されることで、遮光層21と表示部13とで形成される段差を解消できる。また、段差吸収層22が裏面側で表示部13に形成されることで、段差吸収層22は、光源3から基材10の印刷領域11に照射される光のうちの透過印刷領域111に照射される光を、表示媒体として透過可能に形成される。すなわち、段差吸収層22は、光源3から基材10の印刷領域11に照射される光のうちの、表示部13に照射される光を、表示媒体として透過可能に形成される。これにより、段差吸収層22は、基材10の枠部において、基材10の裏面側から照射されて基材10の表面側に透過する光源3の光を表示媒体として表示可能に形成される。
【0032】
さらには、段差吸収層22は、その一部が遮光層21上に形成される。遮光層21上に形成される段差吸収層22の厚さは、表示部13と遮光層21とで形成される段差の深さよりも薄く形成される。また、透過印刷領域111に形成される段差吸収層22表面の基材10からの高さと、遮光層21上に形成される段差吸収層22表面の基材10からの高さとは、等しく形成される。これにより、段差吸収層22は、表示部13と遮光層21とで形成される段差を解消する。
【0033】
本実施形態において、段差吸収層22は、メジウムインキを用いて形成され、例えば、透過印刷領域111の位置に、例えば、3μmの厚さに形成される。
【0034】
本実施形態に係る表示部材1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る表示部材1の作製方法について説明する。
【0035】
図3に示すように、まず、基材10の一面上の一部領域である印刷領域11のうち、遮光印刷領域110に合わせて遮光層21を印刷する(ステップS10)。その後、印刷領域11のうち、透過印刷領域111に合わせて段差吸収層22を印刷する(ステップS20)。段差吸収層22は、透過印刷領域111に遮光層21の厚さを超える、所定の厚さで印刷される。例えば、段差吸収層22は、遮光層21の厚さを超えて、基材10と遮光層21とで形成される段差よりも薄い厚さで遮光層21が突出して印刷される。これにより、段差吸収層22は、基材10と表示部13とで形成される溝内に十分に充填される。
【0036】
また、遮光層21の厚さを超える段差吸収層22の部分は、印刷後、遮光層21の表面上に広がる。これにより、遮光層21の厚さを超える段差吸収層22の部分の層厚は、印刷時よりも薄くなる。これにより、段差吸収層22は、遮光層21と表示部13との段差を解消することができる。
【0037】
そして、遮光層21及び段差吸収層22の印刷された表示部材1は、乾燥工程で乾燥される(ステップS30)。乾燥工程では、表示部材1が乾燥機の中で乾燥され、印刷に用いられたインキが乾燥される。
【0038】
以上より、本実施形態に係る表示部材及びその作製方法は、製造コストを抑えつつ、表示部材が光源に貼り付けられた場合であっても、基材表面に凹凸が発生することを防止できる。また、基材表面に凹凸が発生しないことから、表示部材の意匠性を高めることができる。さらには、基材表面に凹凸が発生しないことから、表示部材がタッチパネルに貼り付けられるとしても、誤作動することを防止できる。
【0039】
次に、本発明に係る表示部材及びその作製方法における第2実施形態について、図4〜図6を参照して説明する。第2実施形態に係る表示部材1においては、第1実施形態で説明した印刷層20が相違する。その他の構成については、第1実施形態に係る表示部材1と同じであるので、本実施形態での説明を省略する。なお、図4(a)及び図6は、図1(a)に示す表示部材1のA−A線と同じ位置の断面図を示している。また、図6(a)及び(b)は、図1(a)に示す表示部材のA−A断面図を天地反転したものである。
【0040】
図4(a)に示すように、印刷層20は、基材10上に形成される隠蔽層23と、隠蔽層23上に形成される遮光層21と、遮光層21と表示部13との段差を吸収する段差吸収層22とを有する。表示部13は、透過印刷領域111と同じ領域で隠蔽層23に隣接して設けられる溝を有して設けられる。なお、図4(b)は、第1実施形態と同様の図1(a)のA−A断面図を示すので、丸形状の表示部13のうちの2辺を示す2箇所に表示部13に含まれる溝が示されている。
【0041】
隠蔽層23は、基材10上で、印刷領域11全体に印刷により形成される。隠蔽層23は、基材10上で均等な厚さに形成され、例えば、メジウムと黒インキとを混合した黒透過印刷により形成される。これにより、隠蔽層23は、光透過性を有しつつ光源3からの光が照射されない状態で表示部13を隠蔽可能になる。例えば、光源3をLEDとして、LED等が点灯していないときに、隠蔽層23は表示媒体を表示せず、LED等が点灯することで、隠蔽層23は表示媒体を表示する構成とすることができる。なお、隠蔽層23は、印刷領域11全体でなく、少なくも透過印刷領域111に形成されるようにしてもよい。
【0042】
遮光層21は、隠蔽層23上で、印刷により形成される。遮光層21は、基材10上に形成される第1遮光層210と、第1遮光層210上に形成されて、第1遮光層210との間で段差を形成する第2遮光層220とを有する。
【0043】
第1遮光層210は、隠蔽層23上で、遮光印刷領域110と同じ領域に印刷により形成される。すなわち、第1遮光層210は、隠蔽層23上で、光源3から基材10に照射される光を表示部13を除いて遮光する領域に印刷により形成される。これにより、第1遮光層210は、溝を有して形成される。第1遮光層210は、隠蔽層23上で均等な厚さに形成され、例えば、黒インキの印刷により形成される。第1遮光層210は、例えば、3μmの厚さを有する。
【0044】
第2遮光層220は、第1遮光層210上で、図4(b)に示すような孔部220aを有する印刷により形成される。より詳しくは、第2遮光層220は、第1遮光層210上において、第1遮光層210の溝を孔部220aで囲う印刷により形成される。これにより、孔部220aは、第1遮光層210の溝に連結される。孔部220aは、例えば、φ11.0mmの円内に形成される第1遮光層210の溝に対して、φ11.3mmの円で形成される。これにより、第2遮光層220は、第1遮光層210との間で段差を形成する。また、第2遮光層220は、第1遮光層210上で均等な厚さに形成され、例えば、黒インキの印刷により形成される。第2遮光層220は、例えば、3μmの厚さを有する。
【0045】
段差吸収層22は、第1遮光層210の溝と、第2遮光層220の孔部220aとに印刷により形成される。段差吸収層22は、例えば、メジウムインキを印刷することで形成される。そして、段差吸収層22は、隠蔽層23上から、遮光層20の厚さ(第1遮光層210及び第2遮光層220を合わせた厚さ)と同じ厚さで形成される。これにより、段差吸収層22は、その露出する面で、第2遮光層220の露出する面に平坦に形成される。
【0046】
本実施形態に係る表示部材1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る表示部材1の作製方法について説明する。
【0047】
図5に示すように、まず、基材10の印刷領域11に隠蔽層23が印刷される(ステップS50)。その後、遮光印刷領域110に合わせて、隠蔽層23上に第1遮光層210が印刷される(ステップS60)。そして、第1遮光層210の溝の位置を孔部220aで囲うようにして、第1遮光層210上に第2遮光層220が印刷される(ステップS70)。
【0048】
第2遮光層220が印刷された後、図6(a)に太線で示す、溝に隣接する第1遮光層210及び隠蔽層23と、孔部220aに隣接する第2遮光層220との表面14が、表面改質処理により処理される(ステップS80)。表面改質処理とは、例えば、コロナ放電処理や、プラズマ処理であり、第1遮光層210、第2遮光層220、及び隠蔽層23の表面14を活性化させて表面エネルギーを高くする処理をいう。これにより、溝に隣接する第1遮光層210及び隠蔽層23と、孔部220aに隣接する第2遮光層220の表面14に極性基が生成されるので、溝に隣接する第1遮光層210及び隠蔽層23と、孔部220aに隣接する第2遮光層220の表面14の濡れ性を処理前よりも向上させることができる。なお、表面改質処理は、第2遮光層220の表面全体に施されてもよく、基材10の裏面側全体の露出部分(例えば、基材10表面、第1遮光層の露出面、第2遮光層の露出面、及び隠蔽層23の露出面)に施されてもよい。
【0049】
表面改質処理がされた後、図6(b)に示すように、第1遮光層210の溝の位置に合わせて段差吸収層22を印刷する(ステップS90)。段差吸収層22は、第1遮光層210の溝に合わせて形成される。段差吸収層22は、孔部220aの径よりも小さい径で孔部220a内に印刷され、第2遮光層220の表面よりも突出して印刷される。例えば、段差吸収層22は、第1遮光層210の溝φ11.0mmの径に合わせて、φ11.3mmを有する孔部220a内に、第2遮光層220の表面よりも突出して印刷される。
【0050】
そして、段差吸収層22は、第1遮光層210の溝及び第2遮光層220の孔部220aの容積に応じたインキ量で印刷される。すなわち、段差吸収層22は、乾燥後、第1遮光層210の溝及び第2遮光層220の孔部220aの容積と同じ体積になるように印刷される。したがって、印刷時において、段差吸収層22と孔部220aとで作られる隙間(溝)の容積分に応じたインキ量が、段差吸収層22の第2遮光層220から突出する部分の体積になるように印刷される。例えば、φ11.0mmを有する段差吸収層22とφ11.3mmを有する孔部220aとの間に作られる、0.3mmの幅を有する隙間(溝)の容積分に応じたインキ量が、段差吸収層22の第2遮光層220から突出する部分の体積になるように印刷される。
【0051】
本実施形態において、段差吸収層22は、例えば、270B(バイアス)の印刷で、第1遮光層210及び第2遮光層220の表面14の濡れ指数に応じて、例えば、6μmを超えて、16μmまでの厚さに印刷される。
【0052】
段差吸収層22は、その後、第1遮光層210の溝内と第2遮光層220の孔部220a内とに広がることで、第1遮光層210の溝及び第2遮光層220の孔部220aを充填する。また、段差吸収層22は、第1遮光層210、第2遮光層220、及び隠蔽層23の表面の表面改質処理による濡れ性を向上する処理により、処理前よりも表面張力が下がった状態で第1遮光層210の溝及び第2遮光層の孔部220a内に定着する。さらには、第2遮光層220の孔部220aとの境界で第1遮光層210との間に作られる段差は、印刷された段差吸収層22のインキが孔部220aから溢れて、第2遮光層220の表面に広がることを防止する。これにより、段差吸収層22は、溝及び孔部220a内に十分に充填されると共に、乾燥後、第2遮光層220の表面に平坦な表面を形成する。
【0053】
ここで、段差吸収層22が第1遮光層210の溝からずれて印刷されたときであっても、段差吸収部22が孔部220a内に印刷されれば、段差吸収部22は、第1遮光層210の溝内及び第2遮光層220の孔部220a内に広がるので、第1遮光層210の溝内及び第2遮光層220の孔部220a内に十分に充填される。段差吸収部22は、溝に隣接する第1遮光層210及び隠蔽層23と、孔部220aに隣接する第2遮光層220との表面14の濡れ性により、第1遮光層210の溝内及び第2遮光層220の孔部220a内に十分に定着する。さらには、第2遮光層220の孔部220aとの境界で第1遮光層210との間に作られる段差は、印刷された段差吸収層22のインキが孔部220aから溢れて、第2遮光層220の表面に広がることを防止する。したがって、段差吸収層22が第1遮光層210の溝からずれて印刷されたときであっても、段差吸収層22の表面は、第2遮光層220の表面に平坦に形成される。
【0054】
その後、第1実施形態と同様に、隠蔽層23、第1遮光層210、第2遮光層220、及び段差吸収層22の印刷された表示部材1は、乾燥工程で乾燥される(ステップS100)。乾燥工程では、表示部材1が乾燥機の中で乾燥され、印刷に用いられたインキが乾燥される。
【0055】
以上より、本実施形態に係る表示部材及びその作製方法は、第1実施形態と同様に、製造コストを抑えつつ、表示部材が光源に貼り付けられた場合であっても、基材表面に凹凸が発生することを防止できる。また、基材表面に凹凸が発生しないことから、表示部材の意匠性を高めることができる。さらには、基材表面に凹凸が発生しないことから、表示部材がタッチパネルに貼り付けられるとしても、誤作動することを防止できる。
【0056】
また、溝に隣接する第1遮光層210及び隠蔽層23と、孔部220aに隣接する第2遮光層220との表面14に濡れ性を有するので、段差吸収層22が第1遮光層210の溝内及び第2遮光層220の孔部220a内に定着する。そして、段差吸収層22の表面が第2遮光層220の表面に平坦に形成されるので、隠蔽層23、第1遮光層210、及び第2遮光層220で形成される段差を十分に吸収できる。さらには、段差吸収層22が第1遮光層210の溝からずれて印刷されるときでも、段差吸収層22は、第1遮光層210溝内及び第2遮光層220の孔部220a内に広がって十分に充填されるので、表示部材1の作製における歩留まりを上げることができる。
【0057】
なお、本発明に係る表示部材1及びその作製方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0058】
例えば、上記実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、基材10は、その一部に光透過性を有する構成であってよい。例えば、基材10の一部を遮光性の材料で形成して、その他の部分を光透過性を有する材料で形成してよい。より詳しくは、基材10の枠部を遮光性の材料で形成して、その他の部分を光透過性を有する材料で形成してよい。
【0059】
また、上記実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、光源3に対向する基材10の裏面側に印刷領域11を設ける例で説明したが、基材10の表面に印刷領域11を設けてもよい。この場合、基材10の他面がアクリル等の透明な板材に対して両面テープを用いて貼り付けられることで、光源3の光を視認できるようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、基材10は、偏向板に限定されない。基材10には、光源3からの光を透過する材料であればどのような材料を用いてもよく、例えばアクリル板やプラスチック板等を用いることができる。また、光源3は、液晶ディスプレイ33やタッチパネル31に限定されず、蛍光管やLED等の、光を照射可能なものであればどのようなものを用いてもよい。
【0061】
また、上記実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、遮光層21は、黒インキに限定されず、光を遮光可能なインキであればどのようなインキで形成されてもよい。ただし、白等の遮光性の低いインキを用いる場合には、より遮光層21の厚さをより厚くする必要がある。
【0062】
また、上記実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、印刷層20に用いられるインキは顔料インキが好ましいが、UVインキを用いることもできる。また、段差吸収層22は、メジウムインキに色を添加することで、光を透過する色付きの層として形成されてもよい。
【0063】
また、上記実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、遮光印刷領域110は、基材10の枠部に印刷されることとしたが、これに限定されず、基材10の光透過領域のうち、遮光すべき領域に任意に設けられてよい。
【0064】
また、上記第1実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、段差吸収層22としてメジウムインキが印刷されたが、メジウムインキと黒インキとを混合した黒透過印刷を用いてもよい。この場合、段差吸収層22は、光透過性を有しつつ光源からの光が照射されない状態で表示部13を隠蔽することができる。段差吸収層22は、液晶ディスプレイ33が表示されていない場合に表示部13を隠蔽する構成とすることができる。また、例えば、段差吸収層22は、光源3の液晶ディスプレイ33の光を透過せず、液晶ディスプレイ33とは別に設けられる、LED等の指向性の強い光を透過するようにできる。すなわち、LED等が点灯していない場合、表示部13は、基材10の表面側に光源の光を透過しない。LED等が点灯することで、表示部13は、基材10の裏面側に透過する光源3の光を表示媒体とする構成とすることができる。したがって、このような表示部材1では、特定の場所に、必要なときに光源3の光を表示媒体として表示する構成にすることができ、必要でない場合には、遮光層21の色に表示媒体を隠すような構成にすることができる。表示部材1がカーナビゲーションの表示装置に採用される場合、表示媒体が必ず同じ場所に表示されるので、車両の運転により適する表示部材1を提供できるのでより好ましい。
【0065】
また、上記第1実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、第2実施形態と同様に、図7に示すように、印刷領域11全体に、メジウムと黒インキとを混合した黒透過印刷を遮光層21の印刷前に施して、光透過性を有しつつ光源3からの光が照射されない状態で表示部13を隠蔽する隠蔽層23を形成してもよい。このようにすることでも、上記のような、LED等が点灯していない場合には表示媒体を表示せず、LED等が点灯することで、表示媒体を表示する構成とすることができる。なお、隠蔽層23は、印刷領域11全体ではなく、少なくとも透過印刷領域111に形成されるようにしてもよい。
【0066】
また、上記第2実施形態に係る表示部材1及び作製方法においては、表示部13に隣接する第1遮光層210、第2遮光層220、及び隠蔽層23の表面14に表面改質処理を施したが、表面改質処理を施さずに段差吸収層22を形成してもよい。
【0067】
また、上記第2の実施形態に係る表示部材1及びその作製方法においては、第1実施形態と同様に、隠蔽層23を印刷せずともよい。また、段差吸収層22は、メジウムインキと黒インキとを混合した黒透過印刷であってもよい。また、隠蔽層23は、透過印刷領域111のみに印刷されてもよい。
【0068】
また、上記第2の実施形態に斯かる表示部材1及びその作製方法においては、隠蔽層23に濡れ性を向上する処理を施したが、隠蔽層23を設けない場合には、基材10上の透過印刷領域111に濡れ性を向上する処理を施してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…表示部材、2,32…両面テープ3…光源、10…基材、11…印刷領域、12…非印刷領域、13…表示部、14…表面、20…印刷層、21…遮光層、22…段差吸収層、23…隠蔽層、31…タッチパネル、33…液晶ディスプレイ、110…遮光印刷領域、111…透過印刷領域、210…第1遮光層、220…第2遮光層、220a…孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に光透過領域を有する基材と、基材の光透過領域の少なくとも一部に印刷される印刷層であって、基材の裏面側から照射されて基材の表面側に透過する光源の光を表示媒体とする表示部を有する印刷層とを備え、印刷層は、表示部を除いて基材を遮光する遮光層と、光透過性を有し、遮光層と表示部との段差を解消するために表示部に形成される段差吸収層とを有することを特徴とする表示部材。
【請求項2】
遮光層は、基材上に形成される第1遮光層と、第1遮光層上に形成されて、第1遮光層との間で段差を形成する第2遮光層とを有することを特徴とする請求項1に記載の表示部材。
【請求項3】
印刷層は、基材と少なくとも段差吸収層との間に、光透過性を有しつつ光源からの光が照射されない状態で表示部を隠蔽する隠蔽層をさらに有し、段差吸収層は、遮光層と透過層との段差を解消することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示部材。
【請求項4】
少なくとも一部に光透過領域を有する基材の光透過領域の少なくとも一部に印刷層を印刷するステップであって、基材の裏面側から照射されて基材の表面側に透過する光源の光を表示媒体とする表示部を有する印刷層を印刷するステップを備え、印刷層を印刷するステップは、表示部を除いて基材を遮光する遮光層を形成するステップと、光透過性を有し、遮光層と表示部との段差を解消するために表示部に段差吸収層を形成するステップとを有することを特徴とする表示部材の作製方法。
【請求項5】
遮光層を形成するステップは、基材上に第1遮光層を形成するステップと、第1遮光層との間で段差を形成する第2遮光層を第1遮光層上に形成するステップとを有することを特徴とする請求項4に記載の表示部材の作製方法。
【請求項6】
印刷層を印刷するステップは、段差吸収層を形成するステップの前に、光透過性を有しつつ光源からの光が照射されない状態で表示部を隠蔽する隠蔽層を基材上の少なくとも表示部に該当する領域に形成するステップをさらに有し、段差吸収層を形成するステップは、遮光層と透過層との段差を解消することを特徴とする請求項5に記載の表示部材の作製方法。
【請求項7】
段差吸収層を形成するステップの前に、少なくとも段差吸収層が形成される位置の第1遮光層及び第2遮光層の表面に濡れ性を向上する処理を施すステップをさらに有することを特徴とする請求項5又は6に記載の表示部材の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−83719(P2013−83719A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222039(P2011−222039)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【特許番号】特許第4967071号(P4967071)
【特許公報発行日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(500570254)フジマーク株式会社 (3)
【Fターム(参考)】