説明

表面にガラスカット加工が施されたかのような立体的な印象を形成した織物

【課題】ガラスカット加工が施された彫刻物の表面のような立体的な凹凸感が、織物表面に形成された織物を提供すること。
【解決手段】本発明の織物は、(1)〜(6)の組織から成る群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織と、(7)〜(9)の組織から成る群(II)に含まれる少なくとも1種類の組織の、少なくとも3種類の組織を融合して成り、(1)〜(9)の組織が各々、整経した経糸に対して、第一、第二および第三の緯糸をこの順で繰り返し織り込んで成り、経糸と第一の緯糸が撚糸であり、第二の緯糸と第三の緯糸が箔糸であり、群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織を連続的に融合し、これらの組織が連続的に融合した当該箇所を挟んで両側に、群(II)に含まれる組織を配置・融合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に絵柄を表した織物、特に、織物の地組織を構成する経糸と緯糸で、表面に立体的な印象を形成した織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、整経された経糸に対して緯糸を浮き沈みさせて織り込んだ組織から成る織物において、織物表面に凹凸感を持たせるためには、凸感を持たせたい箇所において太い糸を使用する、刺繍を施す等により、当該箇所を実際に盛り上がらせて、織物表面に物理的に凹凸を形成する方法が用いられてきた。
【特許文献1】特許第3160803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、かかる従来の方法では、織物が厚ぼったくなり、ガラスカット模様のようなシャープな印象の立体感を、織物表面に表すことはできなかった。他方、異なる色彩の複数の緯糸の組合せにより融合色を形成し、模様を構成する領域毎に配色を変えることで、当該模様において立体感を創出する方法が開発されている(特許文献1)。しかし、例えば水彩画において、如何に遠近法を用いても、ガラスカット加工が施された彫刻物の表面のような、シャープな稜とカット面から成る凹凸感を、平面上に表すことが殆ど不可能であるように、かかる色彩の濃淡に基づく方法により、平面的な織物表面をあたかも凹凸が形成されているかのように立体的に見せることは困難である。
本発明は、実際に織物表面に凹凸を作成することなく、ガラスカット加工が施された彫刻物の表面のような立体感を表面に形成した織物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の織物は、織物組織の表面における経糸および緯糸の表れ方が異なる複数種の基本組織を融合して成り、前記各基本組織の表面の外観の相違により、織物表面に絵柄を表した織物であって、
融合される前記基本組織として、下記の実施例1に示す第一〜第六の組織から成る群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織と、同実施例に示す第七〜第九の組織から成る群(II)に含まれる少なくとも1種類の組織の少なくとも3種類の組織を用い、前記第一〜第九の組織が各々、整経した経糸に対して、第一、第二および第三の緯糸をこの順で繰り返し織り込んで成り、前記経糸と前記第一の緯糸が撚糸であり、前記第二の緯糸と前記第三の緯糸が箔糸であり、
前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織を連続的に融合し、このようにこれら組織が融合した箇所を挟んで両側に、前記群(II)に含まれる組織を配置・融合したことを特徴とする。
【0005】
整経した経糸に対して緯糸を浮き沈みさせて織り込むことにより形成される織物組織において、経糸および緯糸の組織表面における表れ方、即ち、経糸および緯糸が相互に他方の糸の上に乗り重って組織表面に表出する位置や範囲が異なる組織は、組織表面の呈する外観が異なる。つまり、織物組織において、表面における経糸・緯糸の表れ方が異なれば、経糸・緯糸の色彩や風合い等の糸そのものの外観の違いに基づく組織表面の色彩・風合い等の相違や、経糸および緯糸が各々他方の糸の上に乗ることにより生じる畝の方向や重なり具合等の組織表面の形態の違いに基づく、組織表面の光の反射態様等の相違により、各組織表面は異なる外観・印象を呈する。そして、このように外観・印象の異なる組織を組み合わせて一つの平面上に並べると、各組織が呈する外観・印象とはまた違った新たな外観・印象を創出できる。
【0006】
本発明は、織物組織の表面における経糸および緯糸の表れ方が異なる複数種の基本組織として、特に、実施例に示す特定の組織を用い、当該特定の組織を特定の組み合わせおよび配置で融合させることにより、確実に、特定の箇所を表面から手前に際だって浮き上がらせて見せると共に、特定の組織が融合した箇所において、ガラスカット加工の彫刻物におけるカット面のような傾斜面を表現可能とし、織物表面において、従来形成不可能であったシャープな印象の凹凸感を、視覚上確実に形成できるようにしたことを特徴とする。
【0007】
即ち、本発明によれば、前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織を連続的に融合し、これらの組織が連続的に融合した箇所を挟んで、当該箇所の両側に、前記群(II)に含まれる組織を配置することで、前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織が連続的に融合した箇所の呈する外観印象との対比で、織物表面において、前記群(II)に含まれる組織を際だって立体的に浮き上がって見せることができる。
また、前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織を連続的に融合させることにより、これらの組織が連続的に融合した箇所において、当該異種組織間の境界線を稜として、当該境界線の両側が傾斜したかのような印象を形成でき、ガラスカット加工が施された彫刻物のカット面のような傾斜面を、織物表面において視覚上形成できる。
なお、本発明において、連続的に融合される前記少なくとも2種類の組織は、経方向、緯方向、斜方向のいずれの方向に連続していてもよい。
【0008】
ここで、特に、連続的に融合される、前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織として、第一〜第三および第六の組織の少なくともいずれかと、第四および第五の組織の少なくともいずれかを用いた場合に、その両側の前記群(II)に含まれる組織を、重厚感を伴って際だって浮き上がって見せることができる。また、特に、前記第一〜第六の組織のうちの少なくとも5種類の組織を用いた場合には、その両側の前記群(II)に含まれる組織を、重厚感を伴っていっそう際だって浮き上がって見せることができる他、当該少なくとも5種類の組織を多様に組み合わせて多様なカット面を表現でき、例えば、少なくとも5種類の組織の各々が占める領域を小さくした場合には、当該箇所において、小さなカット面を多数有するダイヤモンドの表面のような印象を視覚上形成できる。
【0009】
本発明における前記基本組織を構成する経糸および緯糸としては、種々の色彩のものを使用できるが、例えば、経糸として、黒、濃灰色、濃緑、濃紫、濃茶、濃青等の暗色系の撚糸を用い、第一の緯糸として、金、銀、白金色、珊瑚色、オパール色、螺鈿色等の明色系の撚糸を用い、前記第二および第三の緯糸として、緑、紫、桃色、橙色、玉虫色、オパール色、真珠色、金、銀、白金色を含むあらゆる色彩の光沢ある平箔糸を好適に用いることができる。
本発明の前記複数種の基本組織は、整経された経糸に対する緯糸の浮き沈みの間隔を、融合される異種組織の境界に当たる箇所の両側で組織毎所定の間隔に変更するだけで融合できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガラスカット加工が施されたガラス彫刻物の表面のようなシャープな印象の凹凸感が視覚上形成された斬新なデザインの織物を提供できる。
以下の実施例により、本発明の織物の好ましい態様を説明する。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
本実施例では、本発明の織物において基本組織として使用される、第一〜第九の9種類の組織を示す。
第一〜第九の組織はいずれも、整経された経糸に対して、第一、第二および第三の緯糸をこの順番で繰り返し織り込んで成る。いずれの組織でも、経糸として太さ約0.1mmの撚糸を、第一の緯糸として太さ約0.15mmの撚糸を、第二および第三の緯糸として、各々太さ約0.3mmの平箔糸(以下、箔糸と記載する)を使用した。しかし、第一の緯糸として、前記経糸の太さの0.5〜5倍の幅の太さの糸を、第二および第三の緯糸として各々第一の緯糸の太さの1.5〜5倍の太さの糸を用いる限り、下記の第一〜第九の組織と各々同様の表面形態・外観印象の組織が得られる。
なお、実施例の記載中、「単位組織」とは、前記経糸に対して第一、第二および第三の緯糸が順に1本ずつ織り込まれて成る組織(図1のU)を意味する。
【0012】
(1)第一の組織
第一の組織は、図1に示す組織図に基づき作製できる。この組織は、第一の緯糸が、経糸3本浮いては経糸1本沈むサイクル(1-2、1-4、1-6)と、経糸1本浮いては経糸11本沈むサイクル(1-1、1-3、1-5)のいずれかのサイクルで織り込まれ、順に織り込まれる第二および第三の緯糸が一緒に束aになって、経糸6本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、かつ、前記第一の緯糸(1-2、1-4、1-6)が、隣の単位組織の第一の緯糸(1-1、1-3、1-5)と異なるサイクルで織り込まれており、第二および第三の緯糸の束aが、隣の単位組織の第二および第三の緯糸の束aと、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれて成る。
この組織では、1cm当たりに経糸が72本、単位組織が14単位織り込まれている。
織物表面は、箔糸の束aと撚糸(経糸)の束bが交互に籠目状の表れると共に、箔糸4本毎に撚糸(1-2、1-4、1-6)が鎖線状に表れた形態を有し、また、箔糸の外観がよく表れて、平坦な外観印象を呈する。
【0013】
なお、この組織において、第一の緯糸(1-2、1-4、1-6)が経糸に対して浮く間隔を経糸3〜5本の間隔とし、第一の緯糸(1-1、1-3、1-5)が経糸に対して浮く間隔を経糸1〜3本の間隔とし、沈む間隔を経糸9〜15本の間隔とし、第二および第三の緯糸の束aが経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とした場合、および、組織の単位面積当たりに経糸と緯糸が、「経糸4〜9本」対「単位組織1単位」の比率で織り込まれるように織り具合を変えた場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織を全て、本明細書中において「第一の組織」と呼ぶ。
【0014】
(2)第二の組織
第二の組織は、図2に示す組織図に基づき作成できる。この組織は、第一の緯糸が、経糸3本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれ、順に織り込まれる第二および第三の緯糸が個々に、経糸6本ずつ浮いては沈む同じサイクルで織り込まれて成り、かつ、第一の緯糸(1-1、1-3、1-5)が、隣の単位組織の第一の緯糸(1-2、1-4、1-6)と同じ経糸に対して一緒に沈まないように織り込まれ、第二の緯糸と第三の緯糸が、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれて成る。
この組織では、1cm当たりに経糸が72本、単位組織が12単位織り込まれている。
織物表面は、1本の箔糸と撚糸(経糸)の束bが交互に籠目状に表れると共に、撚糸(緯糸)が鎖線状に表れた形態を有し、また、箔糸の外観がよく表れて、平坦な外観印象を呈する。
【0015】
なお、この組織において、第一の緯糸が経糸に対して浮く間隔を経糸3〜5本の間隔とし、第二および第三の緯糸各々が経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とした場合、および、組織の単位面積当たりに経糸と緯糸が、「経糸4〜9本」対「単位組織1単位」の比率で織り込まれるように織り具合を変えた場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織を全て、本明細書中において「第二の組織」と呼ぶ。
【0016】
(3)第三の組織
第三の組織は、図3に示す組織図に基づき作成できる。この組織は、順に織り込まれる第二(2-1)および第三(3-1)の緯糸、この第三の緯糸(3-1)に次いで順に織り込まれる第一(1-2)および第二(2-2)の緯糸が一緒に束Aになって、経糸6本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれて成る第一の層と、
この第一の層の最後に織り込まれた第二の緯糸(2-2)の次に織り込まれる第三の緯糸(3-2)と、この第三の緯糸(3-2)に次いで、1本の第一の緯糸(1-3)を挟んで織り込まれる第二の緯糸(2-3)が一緒に、経糸6本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、一緒に織り込まれた第三の緯糸(3-2)と第二の緯糸(2-3)の次に、第三の緯糸(3-3)が、一緒に織り込まれた当該第三(3-2)および第二(2-3)の緯糸と同じサイクルで織り込まれて成り、かつ、一緒に織り込まれた当該第三(3-2)および第二(2-3)の緯糸と、これらの緯糸の次に織り込まれた第三の緯糸(3-3)が、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれ、一緒に織り込まれた第三の緯糸(3-2)と第二の緯糸(2-3)の間の第一の緯糸(1-3)が、経糸3本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれて成る第二の層と、
この第二の層の最後に織り込まれた第三の緯糸(3-3)に次いで順に織り込まれる第一(1-4)、第二(2-4)および第三(3-4)の緯糸が一緒に束Cになって、経糸6本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれて成る第三の層と、が重畳して成る。
なお、第二の層において一緒に織り込まれる第三(3-2)および第二(2-3)の緯糸は、第一の層における緯糸の束Aと同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれており、第三の層における緯糸の束Cは、第二の層において後で織り込まれる第三の緯糸(3-3)と同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれている。
【0017】
この組織では、1cm当たりに経糸が72本、単位組織が14単位織り込まれている。
織物表面は、緯糸の束Aと緯糸の束Cと撚糸(経糸)の束bとが籠目状に表れると共に、箔糸(3-2)・箔糸(2-3)と箔糸(3-3)と撚糸(経糸)の束bが籠目状に表れた形態を有し、また、箔糸の外観がよく表れて、平坦な外観印象を呈する。
なお、この組織において、緯糸の束Aが経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とし、第三の緯糸(3-2)、第二の緯糸(2-3)、および第三の緯糸(3-3)の各々が経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とし、第三の緯糸(3-2)と第二の緯糸(2-3)の間の第一の緯糸(1-3)が経糸に対して浮く間隔を、経糸3〜5本の間隔とし、緯糸の束Cが経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とした場合、および、緯糸の束(A、C)と緯糸(3-2、2-3、3-3)の、同じ経糸に対する浮き沈みの態様を変更した場合、さらに、組織の単位面積当たりに経糸と緯糸が「経糸4〜8本」対「単位組織1単位」の比率で織り込まれるように織り具合を変えた場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織を全て、本明細書中において「第三の組織」と呼ぶ。
【0018】
(4)第四の組織
第四の組織は、図4に示す組織図に基づき作成できる。この組織は、第二の緯糸(2-1)と、この第二の緯糸(2-1)に次いで、1本の第三の緯糸(3-1)を挟んで織り込まれる第一の緯糸(1-2)が一緒に束Dになって、経糸6本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、第一の緯糸(1-2)に次いで、1本の第二の緯糸(2-2)を挟んで順に織り込まれる第三(3-2)および第一(1-3)の緯糸が束Eになって、緯糸の束Dと同じサイクルで織り込まれ、かつ、緯糸の束Dと緯糸の束Eが同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれ、束Dをなす第二の緯糸(2-1)と第一の緯糸(1-2)の間の第三の緯糸(3-1)が全経糸の下に配置され、緯糸の束Dと緯糸の束Eの間に挟まれる第二の緯糸(2-2)が、全経糸の下に配置されて成る。
【0019】
この組織では、1cm当たりに経糸が72本、単位組織が13単位織り込まれている。
織物表面は、箔糸の束(D、E)と撚糸(経糸)の束bが籠目状に表れた形態を有し、また、第二の緯糸(2-2)が全経糸の下に配置された箇所に表れる撚糸(経糸)の影響から、凹んだ外観印象を呈する。
なお、この組織において、緯糸の束Dおよび緯糸の束Eにおける第一、第二および第三の各緯糸が経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とした場合、および、組織の単位面積当たりに経糸と緯糸が「経糸4〜8本」対「単位組織1単位」の比率で織り込まれるように織り具合を変えた場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織を全て、本明細書中において「第四の組織」と呼ぶ。
【0020】
(5)第五の組織
第五の組織は、図5に示す組織図に基づき作成できる。この組織は、順に織り込まれる第三(3-3)、第一(1-4)、および第二(2-4)の緯糸が一緒に束Fになって経糸6本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、第二の緯糸(2-4)に次いで、第三(3-4)および第一(1-1)の緯糸を挟んで順に織り込まれる、第二(2-1)、第三(3-1)および第一の緯糸(1-2)が一緒に束Gになって、緯糸の束Fと同じサイクルで織り込まれて成り、緯糸の束Fと緯糸の束Gが、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれており、緯糸の束Fと緯糸の束Gの間の第三の緯糸(3-4)が、全経糸の下に配置され、緯糸の束Fと緯糸の束Gの間の第一の緯糸(1-1)が、経糸3本浮いては経1本沈むサイクルで織り込まれて成る第一の層と、
この第一の層の最後に織り込まれた第一の緯糸(1-2)の次に織り込まれる第二の緯糸(2-2)と、この第二の緯糸(2-2)に次いで、第三(3-2)および第一(1-3)の緯糸を挟んで織り込まれる第二の緯糸(2-3)が個々に、6経糸ずつ浮いては沈む同じサイクルで織り込まれて成る第二の層であって、これら2本の第二の緯糸(2-2、2-3)が同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれており、これら2本の第二の緯糸(2-2、2-3)の間の第三の緯糸(3-2)が、全経糸の下に配置され、これら2本の第二の緯糸(2-2、2-3)の間の第一の緯糸(1-3)が、経糸3本浮いては経1本沈むサイクルで織り込まれて成る第二の層と、が交互に重畳して成る。
なお、第二の層における第一の緯糸(1-3)は、緯糸の束Fと緯糸の束Gの間の第一の緯糸(1-1)と同じ経糸に対して一緒に沈むように織り込んである。
【0021】
この組織では、1cm当たりに経糸が72本、単位組織が13単位織り込まれている。
織物表面は、緯糸の束(F、G)と撚糸(経糸)の束bが籠目状に表れると共に、箔糸(2-2)と箔糸(2-3)と撚糸(経糸)の束bが籠目状に表れた形態を有し、また、第三の緯糸(3-2、3-4)が全経糸の下に配置された箇所に表れる撚糸(経糸)の影響から、凹んだ外観印象を呈する。
なお、この組織において、緯糸の束Fおよび緯糸の束G各々が経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とし、緯糸の束Fと緯糸の束Gの間の第一の緯糸(1-1)が、経糸に対して浮く間隔を経糸3〜5本の間隔とし、2本の第二の緯糸(2-2、2-3)が経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とし、2本の第二の緯糸(2-2、2-3)の間の第一の緯糸(1-3)が、経糸に対して浮く間隔を経糸3〜5本の間隔とした場合、および、組織の単位面積当たりに経糸と緯糸が「経糸4〜8本」対「単位組織1単位」の比率で織り込まれるようにした場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織を全て、本明細書中において「第五の組織」と呼ぶ。
【0022】
(6)第六の組織
第六の組織は、図6に示す組織図に基づき作成できる。この組織は、第一の緯糸が、経糸3本浮いては経糸1本沈むサイクルと、経糸1本浮いては経糸11本沈むサイクルのいずれかのサイクルで織り込まれ、順に織り込まれる第二の緯糸と第三の緯糸が個々に、経糸6本ずつ浮いては沈む同じサイクルで織り込まれ、かつ、第一の緯糸(1-1)が、隣の組織の第一の緯糸(1-2)と異なるサイクルで織り込まれ、第二の緯糸と第三の緯糸が、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれて成る。
【0023】
この組織では、1cm当たりに経糸が72本、単位組織が13単位織り込まれている。
織物表面は、箔糸(第二の緯糸)と箔糸(第三の緯糸)と撚糸(経糸)の束bが籠目状に表れると共に、箔糸4本毎に撚糸(緯糸、1-1、1-3)が鎖線状に表れた形態を有し、また、箔糸の外観がよく表れて、平坦な外観印象を呈する。
なお、第一の緯糸(1-1)が経糸3本浮いて経糸1本沈む前記サイクルにおいて経糸に対して浮く間隔を、経糸3〜5本の間隔とし、第一の緯糸(1-2)が経糸1本浮いて11本沈む前記サイクルにおいて経糸に対して浮く間隔を経糸1〜3本の間隔とし、沈む間隔を9〜15本の間隔とし、第二および第三の緯糸各々が浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とした場合、および、組織の単位面積当たりに経糸と緯糸が「経糸4〜8本」対「単位組織1単位」の比率で織り込まれるように織り具合を変えた場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織を全て、本明細書中において「第六の組織」と呼ぶ。
【0024】
(7)第七の組織
第七の組織は、図7に示す組織図に基づき作成できる。この組織は、整経された経糸を1本ずつ交互に上下に配置し、第一の緯糸を、下に配置された経糸(図7Bに示す経糸)に対して、経糸1本浮いて経糸5本沈むサイクルで織り込み、かつ、第二の緯糸を、下に配置された経糸に対して、経糸5本浮いて経糸1本沈むサイクルで織り込み、第三の緯糸を、上に配置された経糸(図7Aに示す経糸)に対して、経糸1本ずつ浮き沈みさせて成り、第三の緯糸(3-1)は、隣りの第三の緯糸(3-2)と同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれて成る。第一の緯糸(1-1)は、第二の緯糸(2-1)を挟んで並ぶ第一の緯糸(1-2)と同じ経糸に対して一緒に浮かないように配置されており、また、第二の緯糸(2-1)は、第一の緯糸(1-2)を挟んで並ぶ第二の緯糸(2-2)と同じ経糸に対して一緒に沈まないように織り込まれている。
【0025】
この組織では、下に配置された経糸と第一・第二の緯糸から成る組織(図7Bに示す組織)の上に、上に配置された前記経糸と前記第三の緯糸から成る平織組織(図7Aに示す組織)が重なり、この平織組織の下に、下に配置された経糸と第一・第二の緯糸がなす組織が透けて見える。なお、下に配置された経糸に対する第一および第二の緯糸各々の浮き沈みの間隔を様々に変えた場合にも、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織も、本明細書中において、「第七の組織」と呼ぶ。
【0026】
以下に示す第八および第九の組織は、前記第一〜第三の緯糸に追加して、第四の緯糸を織り込んで成る。本実施例では、第四の緯糸として0.3mmの太さの平箔糸を用いたが、別種の糸を用いても、同様の組織が得られる。
(8)第八の組織
第八の組織は、図8に示す組織図に基づき作成できる。この組織は、第一の緯糸(1-1)が、経糸6本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、かつ、第一の緯糸(1-1)が、隣の単位組織の第一の緯糸(1-2)と同じ経糸に対して交互に浮くように織り込まれ、第二の緯糸が3本浮いては1本沈むサイクルで織り込まれ、第三の緯糸(3-1)が、当該第三の緯糸(3-1)の次に織り込まれる第一の緯糸(1-2)が浮く間、一緒に浮き、当該第一の緯糸(1-2)が沈む間、経糸1本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、単位組織(U)3単位毎に、第三の緯糸(3-3)と、次いで織り込まれる第一の緯糸(1-4)の間に、第四の緯糸(4-3)が、経糸3本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれて成る。第二の緯糸(2-1)は、隣の単位組織の第二の緯糸(2-2)と同じ経糸に対して一緒に沈まないように織り込んである。
【0027】
この組織では、1cm当たりに経糸が72本、単位組織が13単位織り込まれている。
この組織では、特に、第四の緯糸(4-3)における、第三の緯糸(3-3)が経糸6本の間隔で浮いている部分に隣接する箇所が、当該第三の緯糸が経糸1本の間隔で浮き沈みしている部分に隣接する箇所に対して経方向にずれるため、織物表面において、第四の緯糸(4-3)が湾曲して表れ、組織表面は、全体的によろけた緯糸に覆われた外観を呈する。
なお、第一の緯糸が経糸に対して浮く間隔と沈む間隔を各々、経糸5〜7本の同じ間隔とし、第二の緯糸が経糸に対して浮く間隔を経糸3〜5本の間隔とし、第四の緯糸が経糸に対して浮く間隔を経糸3〜5の間隔とした場合、および、組織の単位面積当たりに経糸と緯糸が「経糸4〜8本」対「単位組織1単位」の比率で織り込まれるように織り具合を変えた場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、さらに、第四の緯糸を、前記第一〜第三のいずれかの緯糸と、当該緯糸の次に織り込まれる緯糸の間に織り込んだ場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織を全て、本明細書中、「第八の組織」と呼ぶ。
【0028】
(9)第九の組織
第九の組織は、図9に示す組織図に基づき作成できる。この組織は、第一の緯糸が、経糸1本浮いては経糸11本沈むサイクルで織り込まれ、第二の緯糸が、経糸3本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれ、第三の緯糸が、全経糸の下に配置され、単位組織(U)3単位毎に、第三の緯糸(3-3)と、次いで織り込まれる第一の緯糸(1-4)の間に、第四の緯糸(4-3)が、経糸3本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれて成り、第一の緯糸(1-1)が、隣の単位組織の第一の糸(1-2)と、同じ経糸に対して一緒に浮かないように織り込まれ、第二の緯(2-1)糸が、隣の単位組織の第二の緯糸(2-2)と、同じ経糸に対して一緒に沈まないように織り込まれて成る。
【0029】
この組織では、1cm当たりに経糸が72本、単位組織が16単位織り込まれており、第一および第三の緯糸が沈んでいる間隔が長く、緯糸が経方向にずれやすくなっているため、第四の緯糸が湾曲して表れ、組織表面は、全体的によろけた緯糸に覆われた外観を呈する。
なお、第一の緯糸(1-1)が経糸に対して浮く間隔を経糸1〜3本の間隔とし、沈む間隔を経糸9〜15本の間隔とし、第二の緯糸が経糸に対して浮く間隔を経糸3〜5本の間隔とし、第四の緯糸が経糸に対して浮く間隔を経糸3〜5本の間隔とした場合、および、組織の単位面積当たりに経糸と緯糸が、「経糸3〜8本」対「単位組織1単位」の比率で織り込まれるように織り具合を変えた場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、さらに、第四の緯糸を、前記第一〜第三のいずれかの緯糸と、当該緯糸の次に織り込まれる緯糸の間に織り込んだ場合に、同様の形態および外観を呈する組織が得られ、かかる組織を全て、本明細書中、「第九の組織」と呼ぶ。
【0030】
なお、前記第一、第三〜第五の組織における複数の箔糸の「束」に関して、当該束をなす複数の箔糸は互いに経方向に並列した状態で、経糸に対して一緒に浮き沈みしている。
以下の実施例2〜4により、本発明の織物の例を示す。
【0031】
[実施例2]
図10に示す本発明の織物は、実施例1に示した第一〜第九の9種類の組織を、図11に示す配置で融合して成る。各組織の作製に用いた糸の色彩と、各組織表面が呈する色彩を、表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
織物の表面は、例えば、図11中αで示す箇所において、第一(1)、第二(2)、第三(3)、第四(4)、第五(5)および第六(6)の組織が連続的に融合した箇所(図中、実線に挟まれる、βで示す箇所)を挟んで両側に、第八(8)の組織と第九(9)の組織が経方向に交互に融合した組織および第七の組織(7)の少なくともいずれかが配置されている。第一〜第六の組織が連続的に融合した箇所(β)では、隣り合う異種組織の境界線がシャープな稜線(図中、一点鎖線で示すもの)を形成すると共に、当該境界線を挟む両側の組織がなだらかに傾斜して傾斜面をなし、かかる傾斜面が連続して凹凸をなした印象が、視覚上形成されている。そして、かかる箇所(β)の両側の第八(8)・第九(9)の融合組織および第七の組織(7)は、箇所(β)における、シャープな稜線を含むなだらかな凹凸感との対比で、重厚感を伴って際立って高く浮き上がって見る。そして、撚糸(経糸)と箔糸・金糸(緯糸)のなす色彩と相まって、織物表面は全体として、ガラスの彫刻物の表面において部分的にレリーフが浮かび上がっているかのような立体的な印象を呈する。
なお、第八の組織と第九の組織が経方向に交互に重畳した融合組織の表面には、各組織単独の場合よりも強いうねりが視覚上形成されている。
【0034】
[実施例3]
図12に示す本発明の織物は、実施例1に示した9種類の組織を融合して成る。図13に、この織物の、図12にてAおよびBで囲った箇所を構成する各基本組織の配置態様を示す。また、各組織の作製に用いた糸の色彩を、表2に示す。なお、表2および図11で、シングルクオーテーション(')を付した組織は、シングルクオーテーションのない対応する組織と、色彩のみ異なることを示す。
【0035】
【表2】

【0036】
織物の表面には、第八の組織(8)と第九の組織(9)が経方向に交互に重畳した箇所を背景として、幾何学的な絵柄Pが表現されている。絵柄Pの箇所は、第一(1)、第二(2)、第三(3)、第四(4)、第五(5)および第六(6)の組織のうちの少なくとも2種類が連続的に融合して成り、所々に第七の組織(7)が配置・融合されている。絵柄Pは、特に、第一(1)〜第六(6)の組織の少なくとも2種類の組織が融合した箇所で、異種組織の境界線が稜を表し、当該境界線の両側が視覚上傾斜面を表すことにより模様を形成して成り、ガラスカット模様のような印象を呈する。絵柄Pにおいて、第七の組織(7)は、非常に際だって高く浮き上がって見え、背景部分(8、9)も、浮き上がって見える。そして、撚糸(経糸)と箔糸・金糸(緯糸)なす色彩と相まって、織物表面は全体として、ガラスの表面に、ガラスカット加工により造形されたレリーフPが彫刻されているかのような、立体的な印象を呈する。
【0037】
[実施例4]
図14に示す織物は、実施例1に示す9種類の組織を融合して成る。図15に、この織物の、図14にてAで囲った箇所を構成する各基本組織の配置態様を示す。また、各組織の作製に用いた糸の色彩を、表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
織物の表面は、第一(1)、第二(2)、第三(3)、第四(4)、第五(5)および第六(6)の組織の少なくとも2種類が融合して成る箇所を背景として、第七(7)、第八(8)および第九(9)の組織により、植物の絵柄P'が表されている。絵柄P'は、背景部分が呈する凹凸感との対比で、シャープに浮き上がって見える。
織物表面は全体として、ガラスカット加工により植物のレリーフを表面に施したガラス彫刻物の表面のような、立体的な印象を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、第一の組織の組織図を示す。
【図2】図2は、第二の組織の組織図を示す。
【図3】図3は、第三の組織の組織図を示す。
【図4】図4は、第四の組織の組織図を示す。
【図5】図5は、第五の組織の組織図を示す。
【図6】図6は、第六の組織の組織図を示す。
【図7】図7は、第七の組織の組織図を示す。Aは、下側の組織の組織図を示す。Bは、上側の組織の組織図を示す。
【図8】図8は、第八の組織の組織図を示す。
【図9】図9は、第九の組織の組織図を示す。
【図10】図10は、本発明の一態様の織物の撮影画像である。
【図11】図11は、図10に示す本発明の織物を構成する各基本組織の配置を示す。
【図12】図12は、本発明の別の態様の織物の撮影画像である。
【図13】図13は、図12に示す本発明の織物の絵柄部分を構成する各基本組織の配置を示す。Aは1つの絵柄部分を構成する各基本組織の配置を示し、Bは別の絵柄部分を構成する各基本組織の配置を示す。
【図14】図14は、本発明のさらに別の態様の織物の撮影画像である。
【図15】図15は、図14に示す本発明の織物の一部を構成する各基本組織の配置を示す。
【符号の説明】
【0041】
a、A、C、D、E、F、G 緯糸の束
b 経糸の束
U 単位組織
α 凹凸感が視覚上形成されている箇所
β 第一〜第六の組織が連続的に融合した箇所
P、P' 絵柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物組織の表面における経糸および緯糸の表れ方が異なる複数種の基本組織を融合して成り、前記各基本組織の表面の外観の相違により、織物表面に絵柄を表した織物であって、
融合される前記基本組織として、下記の(1)〜(6)の組織から成る群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織と、下記の(7)〜(9)の組織から成る群(II)に含まれる少なくとも1種類の組織の、少なくとも3種類の組織を用い、前記下記の(1)〜(9)の組織が各々、整経した経糸に対して、第一、第二および第三の緯糸をこの順で繰り返し織り込んで成り、前記経糸と前記第一の緯糸が撚糸であり、前記第二の緯糸と前記第三の緯糸が箔糸であり、
前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織を連続的に融合し、このようにこれら組織が融合した箇所を挟んで両側に、前記群(II)に含まれる組織を配置・融合することにより、織物表面に、ガラスカット加工による彫刻が施されたかのような立体的な印象を形成した織物。;
(1)第一の緯糸が、経糸3〜5本浮いては経糸1本沈むサイクルと、経糸1〜3本浮いては経糸9〜15本沈むサイクルのいずれかのサイクルで織り込まれ、順に織り込まれる第二および第三の緯糸が一緒に束になって、経糸5〜7本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれた組織であって、前記経糸に対し、第一、第二および第三の緯糸が順に1本ずつ織り込まれた組織を1単位の単位組織と見た場合に、前記第一の緯糸が、隣の単位組織の第一の緯糸と異なるサイクルで織り込まれており、前記第二および第三の緯糸の束が、隣の単位組織の第二および第三の緯糸の束と、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれた組織、
(2)第一の緯糸が、経糸3〜5本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれ、順に織り込まれる第二および第三の緯糸が個々に、経糸5〜7本ずつ浮いては沈む同じサイクルで織り込まれた組織であって、前記第一の緯糸が、隣の単位組織の第一の緯糸と同じ経糸に対して一緒に沈まないように織り込まれ、前記第二の緯糸と前記第三の緯糸が、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれた組織、
(3)順に織り込まれる第二および第三の緯糸、前記第三の緯糸に次いで順に織り込まれる第一および第二の緯糸が一緒に束になって、経糸5〜7本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれて成る第一の層と、
前記第一の層の最後に織り込まれた前記第二の緯糸の次に織り込まれる第三の緯糸と、前記第三の緯糸に次いで、1本の第一の緯糸を挟んで織り込まれる第二の緯糸が一緒に、経糸5〜7本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、一緒に織り込まれた当該第三および第二の緯糸の次に、第三の緯糸が、一緒に織り込まれた当該第三および第二の緯糸と同じサイクルで織り込まれて成る層であって、一緒に織り込まれた前記第三および第二の緯糸と、これらの緯糸の次に織り込まれた前記第三の緯糸が、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれ、一緒に織り込まれた前記第三の緯糸と前記第二の緯糸の間の前記第一の緯糸が、経糸3〜5本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれて成る第二の層と、
前記第二の層の最後に織り込まれた前記第三の緯糸に次いで順に織り込まれる第一、第二および第三の緯糸が一緒に束になって、経糸5〜7本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれて成る第三の層と、が重畳した組織、
(4)第二の緯糸と、この第二の緯糸に次いで、1本の第三の緯糸を挟んで織り込まれる第一の緯糸が一緒に束になって、経糸5〜7本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、前記第一の緯糸に次いで、1本の第二の緯糸を挟んで順に織り込まれる第三および第一の緯糸が束になって、前記第二および第一の緯糸の束と同じサイクルで織り込まれた組織であって、前記第二および第一の緯糸の束と前記第三および第一の緯糸の束が同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれ、束をなす前記第二および第一の緯糸の間の前記第三の緯糸が、全経糸の下に配置され、前記第二および第一の緯糸の束と前記第三および第一の緯糸の束の間の前記第二の緯糸が、全経糸の下に配置された組織、
(5)順に織り込まれる第三、第一、および第二の緯糸が一緒に束になって経糸5〜7本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、前記第二の緯糸に次いで、第三および第一の緯糸を挟んで順に織り込まれる、第二、第三および第一の緯糸が一緒に束になって、前記第三、第一および第二の緯糸の束と同じサイクルで織り込まれて成る第一の層であって、前記第三、第一および第二の緯糸の束と前記第二、第三および第一の緯糸の束が、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれており、前記第三、第一および第二の緯糸の束と前記第二、第三および第一の緯糸の束の間の前記第三の緯糸が、全経糸の下に配置され、前記第三、第一および第二の緯糸の束と前記第二、第三および第一の緯糸の束の間の前記第一の緯糸が、経糸3〜5本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれて成る第一の層と、
前記第一の層の最後に織り込まれた前記第一の緯糸の次に織り込まれる第二の緯糸と、前記第二の緯糸に次いで、第三および第一の緯糸を挟んで織り込まれる第二の緯糸が個々に、5〜7経糸ずつ浮いては沈む同じサイクルで織り込まれて成る第二の層であって、前記2本の第二の緯糸が同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれており、前記2本の第二の緯糸の間の前記第三の緯糸が、全経糸の下に配置され、前記2本の第二の緯糸の間の前記第一の緯糸が、経糸3〜5本浮いては経1本沈むサイクルで織り込まれて成る第二の層と、が交互に重畳した組織、
(6)第一の緯糸が、経糸3〜5本浮いては経糸1本沈むサイクルと、経糸1〜3本浮いては経糸9〜15本沈むサイクルのいずれかのサイクルで織り込まれ、順に織り込まれる第二の緯糸と第三の緯糸が個々に、経糸5〜7本ずつ浮いては沈む同じサイクルで織り込まれた組織であって、前記第一の緯糸が、隣の単位組織の第一の緯糸と異なるサイクルで織り込まれ、前記第二の緯糸と前記第三の緯糸が、同じ経糸に対して互いに交互に浮くように織り込まれた組織、
(7)整経された前記経糸を1本ずつ交互に上下に配置し、下に配置された前記経糸に対して、第一の緯糸と第二の緯糸を織り込み、上に配置された前記経糸に対して第三の緯糸を織り込むことにより、下に配置された前記経糸と、前記第一・第二の緯糸から成る組織の上に、上に配置された前記経糸と前記第三の緯糸から成る組織が重なった組織、
(8)第一の緯糸が、経糸5〜7本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、かつ、前記第一の緯糸が、隣の単位組織の第一の緯糸と、同じ経糸に対して交互に浮くように織り込まれ、第二の緯糸が3〜5本浮いては1本沈むサイクルで織り込まれ、第三の緯糸が、当該第三の緯糸の次に織り込まれる前記第一の緯糸が浮く間、一緒に浮き、当該第三の緯糸の次に織り込まれる前記第一の緯糸が沈む間、経糸1本ずつ浮いては沈むサイクルで織り込まれ、第四の緯糸が、前記第一〜第三のいずれかの緯糸と、当該緯糸の次に織り込まれる緯糸の間に、経糸3〜5本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれた組織、
(9)第一の緯糸が、経糸1〜3本浮いては経糸9〜15本沈むサイクルで織り込まれ、第二の緯糸が、経糸3〜5本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれ、第三の緯糸が、全経糸の下に配置され、第四の緯糸が、第一〜第三のいずれかの緯糸と、当該緯糸の次に織り込まれる緯糸の間に、経糸3〜5本浮いては経糸1本沈むサイクルで織り込まれた組織であって、前記第一の緯糸が、隣の単位組織の第一の糸と、同じ経糸に対して一緒に浮かないように織り込まれ、前記第二の緯糸が、隣の単位組織の第二の緯糸と、同じ経糸に対して一緒に沈まないように織り込まれた組織。
【請求項2】
前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織として、前記(1)〜(3)および(6)の組織の少なくともいずれかと、前記(4)および(5)の組織の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織として、前記(1)〜(6)の組織のうちの少なくとも5種類の組織を用いたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の織物。
【請求項4】
前記群(I)に含まれる少なくとも2種類の組織が連続的に融合した箇所の少なくとも一方の側に、前記(8)の組織と前記(9)の組織が経方向に交互に融合した組織を配置・融合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の織物。
【請求項5】
前記経糸が暗色系の撚糸であり、前記第一の緯糸が明色系の撚糸であり、前記第二および第三の緯糸が明色系の平箔糸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−121166(P2008−121166A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309048(P2006−309048)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(399105003)株式会社千尋庵 (1)
【出願人】(503043311)
【Fターム(参考)】