表面エネルギーの調節による電気伝導パターンの形成
基材表面に導電パターンを形成するための方法は、前記基材表面の表面エネルギーを調節するステップと、前記基材表面に触媒添加液を付着させるステップと、該付着した触媒添加液からシード層を形成するステップと、該シード層をメッキすることにより前記導電パターンを形成するステップとを含む。ある実施形態では、三次元構造が基材上に置かれて導電パターンの大きさ及び形状を区切る。他の実施形態では、基材のうち導電性材料を望まない(すなわち反転パターン)領域に導電性液体が吸着しないように、その領域の表面エネルギーが変更(例えば低減)される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究開発に関する記述
非適用
【背景技術】
【0002】
背景
回路は一つ以上の能動及び/又は受動電気素子を有し、これらは電気伝導体を介して互いに接続されている。回路基板上において、このような導電体には、回路基板自体の一部として加工された経路、配線、付着した導電体が含まれる。小型化のためには、互いに密に近接した更に小さな部品が必要となる。
【0003】
電子デバイス製造が発達する中で、電子配線をプリントあるいは付着させるために用いられる製造技術には、導電線や導電パターンの高密度化に向かう進展に際して、進行中の課題がある。より細い導電線幅や導電パターンを製造する方法は、例えば、半導体デバイス、光学ディスプレイを駆動する電子パネル(例えば液晶ディスプレイ(LCD))、太陽電池パネルの製造において特に重要である。
【発明の概要】
【0004】
導電性材料は付着されて導電線や導電パターンを形成することができる。例えば、導電線は、二つの電子デバイスの間に延びる電気経路となることができる。導電パターンは、三次元構造の内側および周囲に付着した伝導性材料、例えば、三次元(3D)の溝の中や三次元の突起の周囲にある伝導性材料を含む。
【0005】
サブミクロンスケールの電気伝導配線の付着については、典型的には、金属蒸着、フォトリソグラフィー、エッチング処理を含む従来の半導体処理技術によって、導電性材料を基材上に付着させる。これらの技術は、サブミクロンの導電線の製造には効果的であるが、高コストであり、約300mm以下の基材サイズの加工に限定される。言い換えると、半導体加工技術は、大きさがしばしば1mを超えるLCDパネルや太陽電池パネル等、大面積(>300mm)のデバイスまでにはスケールを拡大することができない。半導体加工技術による導電線付着の他の欠点は、このような技術には基材を100°Cから250°Cの範囲の高い処理温度にさらす必要があることである。このため、適する基材材料は、有害な影響(例えば反り等の寸法の歪み)なく高い処理温度に耐え得る基材材料(ガラス、Si等)に限定される。他の欠点は、半導体処理技術による三次元構造の周囲または内部への導電性材料の導電パターニングは非常に難しく、三次元の面構造がもたらす複雑さに起因してしばしば回避されることである。
【0006】
マクロレベルの導電配線またはパターン配置については、インクジェット処理により導電体がプリントされ、導電性インクの液滴を、ガラス基材の表面や、酸化インジウムスズ(ITO)の表面(例えばガラス上のITO)、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(例えばSi上のSiOx)、窒化ケイ素(Si上のSiNx)等、対象となる基材表面に付着させて所望の導電パターンを形成する。既知のほとんどの水性又は非水性の媒体のインクは、急速に濡れるか、又はほとんどの表面により非常に容易に吸収される。このような濡れ/吸収により、付着したインクは最初に付着した液滴よりも広く広がり、細い線幅を得ることは不可能でないとしても困難となる。このように、この技術は大面積の基材の上に導電線を付着させるために用いることができるが、一つの欠点は、最小の線幅が通常約100マイクロメーター(ミクロン、μm)より大きいことである。この技術を用いて幅が100μmより小さい導電線を作成しようとすると、通常は、導電線の幅が一様ではなく(導電経路の縁がギザギザになる等)、且つ導体の厚さが変化する(すなわち導電経路の高さが一様でない)結果となり、電気経路内の抵抗が変化して性能が低下する。市販の液体媒体を用いる従来のインクジェット処理の他の欠点は、導電線や導電パターンを付着させるには、基材を高温(>120°C)にさらして、インク中の溶媒を飛ばしてインクを硬化させ、ナノ粒子を焼結させて所望の導電線や導電パターンを残す必要があることである。このような場合、金属線の面抵抗は焼結温度に関連し焼結温度により制御され、低い抵抗(数オーム/平方)を得るには高温(>150°C)が必要となる。このため、適する基材材料は、有害な影響(例えば反り等の寸法の歪み)なく高い処理温度に耐え得る基材材料(ガラス、Si等)に限られる。
【0007】
三次元表面上に導体を選択的にコーティングすることは、特定のデザインをインクジェットプリントすることによって達成されるのみである。このようなことから、最小の導電パターンまたは線幅が約100μmであることによって適用範囲が限定される。約100μmよりも大きい幅を有する幅広の接続線でも、線間の間隔すなわちピッチが約75μm以上に限定される。このように線の充填密度は低い。同様に、75μmより小さいピッチを有する規則的あるいはランダムな三次元構造の間の凹んだ領域(谷間)への導電性材料の選択的なプリント、または三次元構造の頂上への導電性材料のプリントは、一般的に可能ではない。
【0008】
典型的に約120°Cを超える高い処理温度に起因して、半導体および従来のインクジェット処理技術は、フレキシブルな高分子膜(例えば各種タイプの光学ディスプレイに利用される高分子膜)や、フレキシブルエレクトロニクスへの応用に利用されるフレキシブル高分子基材上に導電線または導電パターンを付着させるのに適した技術ではない。このような高い処理温度に基材がさらされることによって、基材材料は、反り、溶融、微小な亀裂等に起因する寸法歪み等の有害な影響なく高い処理温度に耐え得る基材材料(ガラス、Si等)に限定される。フレキシブルな高分子材料を高温処理すると、典型的に、望まない微小な亀裂や導電性材料のフレキシブル高分子材料への拡散が生じるため、フレキシブルプラスチック基材を作成するために用いられる高分子材料は、半導体かインクジェット処理技術の何れかを用いた導電線または導電パターンの付着に適する基材材料ではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
本発明の典型的な実施形態の詳細な説明のために、以下の添付図面が参照される。
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る方法を示す図である。
【図2】図2は基材を示す図である。
【図3】図3は付着あるいは浮彫りされた種々の三次元構造を有する基材を示す図である。
【図4】図4は本発明の種々の実施形態に係る図3の三次元構造の谷間に付着した導電材料を示す図である。
【図5】図5は三次元構造の谷間にある導電材料の斜視図である。
【図6】図6は本発明の第2の実施形態に係る方法を示す図である。
【図7−8】図7及び図8は図6の方法によって形成された導電パターンのいくつかの例を示す図である。
【図11−12】図11及び図12は本明細書にて説明した方法の適用例であり、ディスプレイを駆動するパネルに導電パターンが形成される例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
以下の議論は本発明の複数の実施形態に向けられたものである。開示された実施形態の中のいくつかの実施形態が好ましいとしても、請求の範囲を含めた開示の範囲を限定するものとしてこれらの実施形態を解釈したり用いたりしてはならない。さらに、以下の説明は広範に適用され、いずれの実施形態の議論もその実施形態の典型例にずぎないものであって請求の範囲を含めた開示の範囲がその実施形態に限定されないことを意味するものと当業者は理解するであろう。
【0011】
本明細書に開示される実施形態では、基材上に導電性液体(インク等)を付着(deposit)させる前に、基材の表面エネルギーを調節(modify)する。「表面エネルギー」の用語は、表面の分子を内側へ引き込む物質の性質を言う。実施形態によっては、導電性液体を付着させたい領域における基材表面の表面エネルギーを、導電性液体自体の表面エネルギー(表面張力)と凡そ一致するように調節する。表面の表面エネルギーを導電性液体の表面エネルギーと凡そ一致させることによって、導電性液体は所望の領域には吸着(adhere)するが、表面エネルギーがはるかに低い残りの領域には吸着しない。他の実施形態においては、導電性液体を吸着させたくない領域の表面エネルギーを調節して、その表面エネルギーを導電性液体を吸着させたい箇所の「反転パターン」で減少させる。これにより、導電性液体が基材表面をコーティングすると、液体は表面エネルギーが減少しなかった領域にのみ吸着する。以下においてこれらの実施形態をさらに詳しく説明する。
【0012】
本明細書において説明する実施形態によれば、細い導電線および三次元の幾何学的形態(例えば薄さ1μm以下)を基材上に形成でき、上記のものよりも十分低い温度で形成することができる。例として、本明細書にて説明する処理は、45℃(下記に議論するメッキ浴の温度)以下の温度で行うことができる。使用する基材の材料には、シリコン、ガラス、アクリレート、カプトン、ポリカーボネート、マイラー、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が含まれる。基材は必要に応じてフレキシブルなものとしても良い。
【0013】
本明細書において、「パターン」の用語は一般的に導電性液体によって形成された導電材料の所望のパターンを言う。パターンには、導電性材料からなる複数本の直線(例えば間隔を空けた平行線の組)、任意のパターン(模様)、三次元配置が含まれる。
【0014】
図1は方法100の実施形態を示し、基材の複数の領域の表面エネルギーが導電性液体の表面エネルギーに近づくように調節される。このように調節した基材の領域は、導電性液体から形成された導電材料が残って、基材を渡る導電性経路が形成されることとなる領域である。可能な限りにおいて、図1に示したステップのうちのいくつかを図示とは異なる順序にて行っても良く、またいくつかのステップを順にではなく並行して行っても良い。
【0015】
102に示すように、本方法は、基材表面の所望の領域(すなわち導電性材料が形成されるべき領域)の表面エネルギーを調節するステップを含む。このステップは、表面エネルギーが20〜50ダイン/cmの範囲内にある物質を基材表面に付着させることにより行っても良い。実施形態によっては、付着させる物質は、表面エネルギーが25〜35ダイン/cmの範囲内にある。基材表面に付着させるのに適する物質には、アクリレートが含まれる。所望の領域の表面エネルギーを変えることには、基材表面のその領域を少なくとも20%増加させることが含まれる。図2は、基材130の側面図を示す。
【0016】
104に示すように、本方法は、三次元(3D)構造を基材表面に付着させるステップを含む。このような構造はいかなる形状又は寸法としても良い。実施形態によっては、このような構造は透明であり、基材が結合した光ガイドから光が取り出されるように機能する。光ガイドの用途は、図9および図10を参照しつつ下記において説明する。図3は、三次元構造132が付着した図2の基材130の側面図を示す。複数の三次元構造132は、その間に谷間134を形成する。三次元構造132の表面エネルギーは、基材の調節した領域の表面エネルギーとほぼ等しくすることができ、アクリレートからも形成することができる。実施形態によっては、三次元構造の表面エネルギーは基材表面の表面エネルギーの10%以内である。
【0017】
三次元構造132は、所望の導電パターンの幅および形を区画する、隆起あるいは突出した構造を有する。実施形態によっては、構造132は、高さ(H1)が6μm、幅が6μm、稜の間隔(D1)が12μmとされる。構造はまた、高さを数ナノメートルから数ミクロン(100nm〜100μm)とすることもできる。間隔D1は、導電パターンのピッチを限定する。
【0018】
構造132は、種々の技術により形成することができる。少なくとも一つの実施形態では、構造132のパターニングおよび製作は、フォトアクリレートの紫外線(UV)エンボス加工や、ポリウレタン、ポリカーボネート等の熱間エンボス加工によってなされる。構造132および基層が光学ディスプレイの一部である場合、以下に図9,10に関して議論するが、フォトマスクでエッチングによりマイクロレンズアレイや光学格子を作成し、次にこれをフォトリソグラフィー、レーザー切除、レーザー高分子化を用いてフォトレジストマスターで複製する。熱硬化性樹脂を膜上に付与し、炉内で90°Cで熱硬化させることにより、複製スタンプ(PDMS、シリコーン)を製造する。UV硬化性アクリレート樹脂を基層(厚さは2〜200μmの範囲内)の表面に一様に広げる。次に、荷重を掛けながらスタンプを一定時間基層に接触させ、パターンが基材表面に転写されるようにする。次に、スタンプと基層の結合体を、密閉されたUVチャンバー内でUV硬化させ、所定のUV投与レベルまで暴露してアクリレートを硬化させる。次に、アクリレート基層上に複製された所望の微細構造パターンを残してスタンプを剥がす。
【0019】
106にあるように、本方法は、触媒添加導電性液体(インク等)を所望の領域に付着させるステップを含む。このステップで選択する導電性液体は、基材130の調節された表面エネルギーとほぼ等しい表面エネルギーを有している必要がある。実施形態によっては、導電性液体は表面エネルギーが20〜50ダイン/cmの範囲内である。実施形態によっては、液体の表面エネルギーは、より狭い25〜35ダイン/cmの範囲や、さらに29〜33ダイン/cmとしても良い。導電性液体は、好ましくは、インク等の金属触媒添加液体(例えばパラジウム(Pd)触媒添加液体)である。例として、液体は乳酸エチルに酢酸パラジウムを混合したものとしても良い。実施形態によっては、導電性液体の付着(プリント)はXenniaインクジェットプリンタ(Xaarプリントヘッドテクノロジーに基づく)を用いて行われる。プリントギャップ、インク量、プリント速度等は、目下の適用例に基づいて調節可能であり、すなわち望むように変化させることができる。
【0020】
図4には、導電性液体140がうまく谷間134内に定着しているのが示されている。基材の表面エネルギーと導電性液体の表面エネルギーとを厳密に一致させることにより、液体140は谷間に全体的に一定の深さとなるように定着する。基材130と三次元構造132の表面エネルギーは極端に低くはないため、導電性液体はビードを形成することがない。基材の表面エネルギーは過度に高くないため、液体は過度に急速に広がることがない。仮に基材の表面エネルギーが過度に高いと、液体は三次元構造132自身の頂上を覆って吸着するため、構造が透明でなければならないディスプレーへの応用に対しては望ましくない。
【0021】
図1の108にあるように、本方法はさらに、付着した導電性液体を用いてシード層を形成するステップを含む。このステップは、付着した導電性液体を基材(112)上で(例えば数時間)乾燥させ、残る材料を例えばUV照射(114)で硬化させることにより行われる。用いられる紫外線照射は、波長を例えば365nmとすることができる。
【0022】
110にあるように、本方法は、シード層をメッキして所望の導電パターンを形成するステップを含む。このステップは、無電解メッキや電気化学メッキ等のメッキ法によって、シード層の表面上に、銅などの所望の金属を付着させることにより行われる。メッキ浴の温度は、45°C以下とすることができる。このようなメッキ処理を用いると、金属(例えば銅)は金属のシード層上に選択的にメッキされ、これによって所望の電気伝導パターンが形成される。例として、基材130は銅浴に浸しても良い。基材を除去すると、金属のシード層のある表面の部分のみが銅でコーティングされる。図3および4に関して、谷間132にある導電性を有する銅の幅D2は、D1(例えば12μm)に等しく、導電性を有する部分の間隔W2は、W1(例えば6μm)に等しい。一般的に、この技術によれば4pm(又はそれ以下)のピッチを有する4μm以下までの線幅が可能である。
【0023】
図5は、上述のような三次元構造132とその間に形成された導電性材料140とを有する基材を示す斜視図である。
【0024】
図6に、本発明の他の実施形態に係る方法200を示す。図6の実施形態は、所望の導電パターンの幅及び形を画定するための三次元構造を含まない。その代わりに、図6の本実施形態は、導電性液体を望まない基材の表面のエネルギーを調節するステップを含む。この調節するステップは、導電性液体を望まない表面エネルギーを、導電性液体が容易に吸着しない程度まで低くなるように減少させるステップを含む。図6の実施形態では、基材は、付着させたい導電性液体の表面エネルギーとほぼ等しいかそれより大きな表面エネルギーを有する材料(少なくとも導電パターンを形成したい外側の表層)から形成することができる。また、付着させたい導電性液体の表面エネルギーとほぼ等しいかそれより大きな表面エネルギーを有する材料であらかじめ基材をコーティングしても良い。
【0025】
202にあるように、図6の方法は、低表面エネルギー材料を有する基材表面に所望のパターンの反転版をプリントするステップを含む。すなわち、導電性材料を望まない基材の領域が、低表面エネルギー材料でコーティングされる。このような領域は、「反転パターン」と呼ばれる。低表面エネルギー材料は、例えば、フッ素化分子の蒸着や、液体で付着させた後に揮発性溶媒を飛ばすことにより形成された自己配列化単分子層(SAM)を含むことができる。実施形態によっては、このような材料の表面エネルギーは、導電性材料が望まれる残りの領域の表面エネルギーよりも50%以上低い。例として、202においてプリントされた材料の表面エネルギーは、20ダイン/cmよりも小さい。基材の残りの部分の表面エネルギーは、反転パターンの表面エネルギー(≦20ダイン/cm)よりも有意に高い。実施形態によっては、基材は、ポリカーボネートやPET(凡そ40ダイン/cm)、又はガラス(70ダイン/cm以上)を含む。
【0026】
204にあるように、本方法は、触媒添加伝導性液体(例えばインク)を所望の領域に付着させるステップを含む。このステップで選択される導電性液体は、反転パターンの一部である基材の領域の表面エネルギーよりも大きい表面エネルギー(表面張力)を有しているべきである。実施形態によっては、導電性液体は20〜50ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する。実施形態によっては、液体の表面エネルギーは25〜35ダイン/cmの範囲内、更に具体的には、29〜33ダイン/cmの範囲内としても良い。導電性液体は、インク等の金属触媒を添加した液体(パラジウム触媒添加液体等)であることが好ましい。
【0027】
導電性液体は、表面エネルギーがより高い領域にのみ定着し、表面エネルギーがより低い反転パターンには定着しない。基材はこのような導電性液体でコーティングすることができるが、この液体は表面エネルギーが低いため反転パターンの領域には吸着しようとしない。その代わり、導電性液体は、導電性材料が望まれる領域を含む残りの領域に吸着しようとする。
【0028】
206にあるように、本方法は、付着した導電性液体を用いてシード層を形成するステップを含む。このステップは、付着した導電性液体を基材上で乾燥させること及び、残る材料を例えば紫外線(UV)照射(212)によって固化させることにより行われる。
【0029】
208にあるように、本方法は、シード層をメッキして所望の導電パターンを形成するステップを含む。このステップは、無電解メッキや電気化学メッキ等のメッキ処理によって、シード層の表面に銅等の所望の金属を付着させることにより行われる。このようなメッキ処理を用いて、金属(銅等)は金属のシード層に選択的にメッキされ、これによって所望の電気伝導パターンが形成される。例として、基材は銅浴に浸しても良い。基材を取り除くと、金属のシード層を有する表面の部分のみが銅でコーティングされている。本明細書にて説明した方法は、銅に限らず、ニッケル等、メッキ可能な他の金属を、触媒を含有する液体のインクを用いてコーティングしても良い。
【0030】
図7〜図10に、平坦な基材上におけるパターンの実例的な実施形態を示す。図7では、導電線230が全般的に直線で互いに平行とされている。領域232は、表面エネルギーが低い(例えば20ダイン/cm)材料がプリントされた領域である。図8および図9は、図7の実施形態を示す側面図である。図9では、低表面エネルギー材料233が領域232に示されている。図10では、導電性材料を含むパターン242の反転パターンにおける240の位置に低表面エネルギー材料がプリントされている。
【0031】
図11および図12は、ディスプレイの一部としてマイクロレンズフィルム310を光ガイド320に隣接させて置いた適用例を示す。マイクロレンズフィルム310は、ディスプレイの単一ピクセル300に対応する一部が示されている。光源330(発光ダイオード(LED)等)が光ガイド320の横に置かれ、横から光ガイド320の中へ光を放出する。光ガイド320はガラス、ポリカーボネート、アクリレート等の種々の透明な材料から構成することができる。LED330によって光ガイド320内に放射された光325は、光線の角度と、空気332の屈折率に対する光ガイドの屈折率との作用である全反射(TIR)によって、光ガイド320の上面および下面で反射する。
【0032】
マイクロレンズフィルム310は、マイクロレンズフィルム上に形成された三次元構造338を光ガイドから隔てるスタンド318を介して、光ガイド320に隣接して配置される。図11は、ピクセル300が「オフ」の位置にある状態を示す。構造332は光ガイド320から閾値の距離より遠く隔てられている(H3)ため、光ガイドからの光は光ガイドから逃げることができない。ピクセル300を「オン」にし、光ガイド320からの光を光ガイドから逃がすには、ピクセル300に隣接するマイクロレンズフィルム310の一部分を光ガイド320に近づけるかあるいは接触させる必要がある。構造338は、透明であって、図12(ピクセルがオン)に示すように光の全反射が成立せず光が光ガイドから構造338内へ逃げるような屈折率を有している。
【0033】
ピクセルの両側に十分な電位差にかけられると、静電気的な引力によってピクセルは間隙H3を横切って閉じるように曲げられる。構造338の間の谷間に埋まっている導電性材料340は、前述の技術のうちの一つ以上によって形成される。構造338は透明のままである必要があり、本明細書にて説明した技術は導電性液体が構造338にコーティングされたままとならないようにするために役立つ。その代わり、導電性液体は、基材の表面エネルギーを調節した結果として、構造の谷間に落ち込む。なお、参照番号342は、電圧が印加される間隙の反対側の導体である。
【0034】
以上の議論は、本発明の原理および種々の実施形態を説明する例示とするためのものである。以上の開示内容がひとたび完全に理解されれば、当業者にとっては数々の変形および変更が明らかとなろう。以下の請求の範囲はこのような変形および変更を全て含むものと解釈されることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究開発に関する記述
非適用
【背景技術】
【0002】
背景
回路は一つ以上の能動及び/又は受動電気素子を有し、これらは電気伝導体を介して互いに接続されている。回路基板上において、このような導電体には、回路基板自体の一部として加工された経路、配線、付着した導電体が含まれる。小型化のためには、互いに密に近接した更に小さな部品が必要となる。
【0003】
電子デバイス製造が発達する中で、電子配線をプリントあるいは付着させるために用いられる製造技術には、導電線や導電パターンの高密度化に向かう進展に際して、進行中の課題がある。より細い導電線幅や導電パターンを製造する方法は、例えば、半導体デバイス、光学ディスプレイを駆動する電子パネル(例えば液晶ディスプレイ(LCD))、太陽電池パネルの製造において特に重要である。
【発明の概要】
【0004】
導電性材料は付着されて導電線や導電パターンを形成することができる。例えば、導電線は、二つの電子デバイスの間に延びる電気経路となることができる。導電パターンは、三次元構造の内側および周囲に付着した伝導性材料、例えば、三次元(3D)の溝の中や三次元の突起の周囲にある伝導性材料を含む。
【0005】
サブミクロンスケールの電気伝導配線の付着については、典型的には、金属蒸着、フォトリソグラフィー、エッチング処理を含む従来の半導体処理技術によって、導電性材料を基材上に付着させる。これらの技術は、サブミクロンの導電線の製造には効果的であるが、高コストであり、約300mm以下の基材サイズの加工に限定される。言い換えると、半導体加工技術は、大きさがしばしば1mを超えるLCDパネルや太陽電池パネル等、大面積(>300mm)のデバイスまでにはスケールを拡大することができない。半導体加工技術による導電線付着の他の欠点は、このような技術には基材を100°Cから250°Cの範囲の高い処理温度にさらす必要があることである。このため、適する基材材料は、有害な影響(例えば反り等の寸法の歪み)なく高い処理温度に耐え得る基材材料(ガラス、Si等)に限定される。他の欠点は、半導体処理技術による三次元構造の周囲または内部への導電性材料の導電パターニングは非常に難しく、三次元の面構造がもたらす複雑さに起因してしばしば回避されることである。
【0006】
マクロレベルの導電配線またはパターン配置については、インクジェット処理により導電体がプリントされ、導電性インクの液滴を、ガラス基材の表面や、酸化インジウムスズ(ITO)の表面(例えばガラス上のITO)、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(例えばSi上のSiOx)、窒化ケイ素(Si上のSiNx)等、対象となる基材表面に付着させて所望の導電パターンを形成する。既知のほとんどの水性又は非水性の媒体のインクは、急速に濡れるか、又はほとんどの表面により非常に容易に吸収される。このような濡れ/吸収により、付着したインクは最初に付着した液滴よりも広く広がり、細い線幅を得ることは不可能でないとしても困難となる。このように、この技術は大面積の基材の上に導電線を付着させるために用いることができるが、一つの欠点は、最小の線幅が通常約100マイクロメーター(ミクロン、μm)より大きいことである。この技術を用いて幅が100μmより小さい導電線を作成しようとすると、通常は、導電線の幅が一様ではなく(導電経路の縁がギザギザになる等)、且つ導体の厚さが変化する(すなわち導電経路の高さが一様でない)結果となり、電気経路内の抵抗が変化して性能が低下する。市販の液体媒体を用いる従来のインクジェット処理の他の欠点は、導電線や導電パターンを付着させるには、基材を高温(>120°C)にさらして、インク中の溶媒を飛ばしてインクを硬化させ、ナノ粒子を焼結させて所望の導電線や導電パターンを残す必要があることである。このような場合、金属線の面抵抗は焼結温度に関連し焼結温度により制御され、低い抵抗(数オーム/平方)を得るには高温(>150°C)が必要となる。このため、適する基材材料は、有害な影響(例えば反り等の寸法の歪み)なく高い処理温度に耐え得る基材材料(ガラス、Si等)に限られる。
【0007】
三次元表面上に導体を選択的にコーティングすることは、特定のデザインをインクジェットプリントすることによって達成されるのみである。このようなことから、最小の導電パターンまたは線幅が約100μmであることによって適用範囲が限定される。約100μmよりも大きい幅を有する幅広の接続線でも、線間の間隔すなわちピッチが約75μm以上に限定される。このように線の充填密度は低い。同様に、75μmより小さいピッチを有する規則的あるいはランダムな三次元構造の間の凹んだ領域(谷間)への導電性材料の選択的なプリント、または三次元構造の頂上への導電性材料のプリントは、一般的に可能ではない。
【0008】
典型的に約120°Cを超える高い処理温度に起因して、半導体および従来のインクジェット処理技術は、フレキシブルな高分子膜(例えば各種タイプの光学ディスプレイに利用される高分子膜)や、フレキシブルエレクトロニクスへの応用に利用されるフレキシブル高分子基材上に導電線または導電パターンを付着させるのに適した技術ではない。このような高い処理温度に基材がさらされることによって、基材材料は、反り、溶融、微小な亀裂等に起因する寸法歪み等の有害な影響なく高い処理温度に耐え得る基材材料(ガラス、Si等)に限定される。フレキシブルな高分子材料を高温処理すると、典型的に、望まない微小な亀裂や導電性材料のフレキシブル高分子材料への拡散が生じるため、フレキシブルプラスチック基材を作成するために用いられる高分子材料は、半導体かインクジェット処理技術の何れかを用いた導電線または導電パターンの付着に適する基材材料ではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
本発明の典型的な実施形態の詳細な説明のために、以下の添付図面が参照される。
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る方法を示す図である。
【図2】図2は基材を示す図である。
【図3】図3は付着あるいは浮彫りされた種々の三次元構造を有する基材を示す図である。
【図4】図4は本発明の種々の実施形態に係る図3の三次元構造の谷間に付着した導電材料を示す図である。
【図5】図5は三次元構造の谷間にある導電材料の斜視図である。
【図6】図6は本発明の第2の実施形態に係る方法を示す図である。
【図7−8】図7及び図8は図6の方法によって形成された導電パターンのいくつかの例を示す図である。
【図11−12】図11及び図12は本明細書にて説明した方法の適用例であり、ディスプレイを駆動するパネルに導電パターンが形成される例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
以下の議論は本発明の複数の実施形態に向けられたものである。開示された実施形態の中のいくつかの実施形態が好ましいとしても、請求の範囲を含めた開示の範囲を限定するものとしてこれらの実施形態を解釈したり用いたりしてはならない。さらに、以下の説明は広範に適用され、いずれの実施形態の議論もその実施形態の典型例にずぎないものであって請求の範囲を含めた開示の範囲がその実施形態に限定されないことを意味するものと当業者は理解するであろう。
【0011】
本明細書に開示される実施形態では、基材上に導電性液体(インク等)を付着(deposit)させる前に、基材の表面エネルギーを調節(modify)する。「表面エネルギー」の用語は、表面の分子を内側へ引き込む物質の性質を言う。実施形態によっては、導電性液体を付着させたい領域における基材表面の表面エネルギーを、導電性液体自体の表面エネルギー(表面張力)と凡そ一致するように調節する。表面の表面エネルギーを導電性液体の表面エネルギーと凡そ一致させることによって、導電性液体は所望の領域には吸着(adhere)するが、表面エネルギーがはるかに低い残りの領域には吸着しない。他の実施形態においては、導電性液体を吸着させたくない領域の表面エネルギーを調節して、その表面エネルギーを導電性液体を吸着させたい箇所の「反転パターン」で減少させる。これにより、導電性液体が基材表面をコーティングすると、液体は表面エネルギーが減少しなかった領域にのみ吸着する。以下においてこれらの実施形態をさらに詳しく説明する。
【0012】
本明細書において説明する実施形態によれば、細い導電線および三次元の幾何学的形態(例えば薄さ1μm以下)を基材上に形成でき、上記のものよりも十分低い温度で形成することができる。例として、本明細書にて説明する処理は、45℃(下記に議論するメッキ浴の温度)以下の温度で行うことができる。使用する基材の材料には、シリコン、ガラス、アクリレート、カプトン、ポリカーボネート、マイラー、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が含まれる。基材は必要に応じてフレキシブルなものとしても良い。
【0013】
本明細書において、「パターン」の用語は一般的に導電性液体によって形成された導電材料の所望のパターンを言う。パターンには、導電性材料からなる複数本の直線(例えば間隔を空けた平行線の組)、任意のパターン(模様)、三次元配置が含まれる。
【0014】
図1は方法100の実施形態を示し、基材の複数の領域の表面エネルギーが導電性液体の表面エネルギーに近づくように調節される。このように調節した基材の領域は、導電性液体から形成された導電材料が残って、基材を渡る導電性経路が形成されることとなる領域である。可能な限りにおいて、図1に示したステップのうちのいくつかを図示とは異なる順序にて行っても良く、またいくつかのステップを順にではなく並行して行っても良い。
【0015】
102に示すように、本方法は、基材表面の所望の領域(すなわち導電性材料が形成されるべき領域)の表面エネルギーを調節するステップを含む。このステップは、表面エネルギーが20〜50ダイン/cmの範囲内にある物質を基材表面に付着させることにより行っても良い。実施形態によっては、付着させる物質は、表面エネルギーが25〜35ダイン/cmの範囲内にある。基材表面に付着させるのに適する物質には、アクリレートが含まれる。所望の領域の表面エネルギーを変えることには、基材表面のその領域を少なくとも20%増加させることが含まれる。図2は、基材130の側面図を示す。
【0016】
104に示すように、本方法は、三次元(3D)構造を基材表面に付着させるステップを含む。このような構造はいかなる形状又は寸法としても良い。実施形態によっては、このような構造は透明であり、基材が結合した光ガイドから光が取り出されるように機能する。光ガイドの用途は、図9および図10を参照しつつ下記において説明する。図3は、三次元構造132が付着した図2の基材130の側面図を示す。複数の三次元構造132は、その間に谷間134を形成する。三次元構造132の表面エネルギーは、基材の調節した領域の表面エネルギーとほぼ等しくすることができ、アクリレートからも形成することができる。実施形態によっては、三次元構造の表面エネルギーは基材表面の表面エネルギーの10%以内である。
【0017】
三次元構造132は、所望の導電パターンの幅および形を区画する、隆起あるいは突出した構造を有する。実施形態によっては、構造132は、高さ(H1)が6μm、幅が6μm、稜の間隔(D1)が12μmとされる。構造はまた、高さを数ナノメートルから数ミクロン(100nm〜100μm)とすることもできる。間隔D1は、導電パターンのピッチを限定する。
【0018】
構造132は、種々の技術により形成することができる。少なくとも一つの実施形態では、構造132のパターニングおよび製作は、フォトアクリレートの紫外線(UV)エンボス加工や、ポリウレタン、ポリカーボネート等の熱間エンボス加工によってなされる。構造132および基層が光学ディスプレイの一部である場合、以下に図9,10に関して議論するが、フォトマスクでエッチングによりマイクロレンズアレイや光学格子を作成し、次にこれをフォトリソグラフィー、レーザー切除、レーザー高分子化を用いてフォトレジストマスターで複製する。熱硬化性樹脂を膜上に付与し、炉内で90°Cで熱硬化させることにより、複製スタンプ(PDMS、シリコーン)を製造する。UV硬化性アクリレート樹脂を基層(厚さは2〜200μmの範囲内)の表面に一様に広げる。次に、荷重を掛けながらスタンプを一定時間基層に接触させ、パターンが基材表面に転写されるようにする。次に、スタンプと基層の結合体を、密閉されたUVチャンバー内でUV硬化させ、所定のUV投与レベルまで暴露してアクリレートを硬化させる。次に、アクリレート基層上に複製された所望の微細構造パターンを残してスタンプを剥がす。
【0019】
106にあるように、本方法は、触媒添加導電性液体(インク等)を所望の領域に付着させるステップを含む。このステップで選択する導電性液体は、基材130の調節された表面エネルギーとほぼ等しい表面エネルギーを有している必要がある。実施形態によっては、導電性液体は表面エネルギーが20〜50ダイン/cmの範囲内である。実施形態によっては、液体の表面エネルギーは、より狭い25〜35ダイン/cmの範囲や、さらに29〜33ダイン/cmとしても良い。導電性液体は、好ましくは、インク等の金属触媒添加液体(例えばパラジウム(Pd)触媒添加液体)である。例として、液体は乳酸エチルに酢酸パラジウムを混合したものとしても良い。実施形態によっては、導電性液体の付着(プリント)はXenniaインクジェットプリンタ(Xaarプリントヘッドテクノロジーに基づく)を用いて行われる。プリントギャップ、インク量、プリント速度等は、目下の適用例に基づいて調節可能であり、すなわち望むように変化させることができる。
【0020】
図4には、導電性液体140がうまく谷間134内に定着しているのが示されている。基材の表面エネルギーと導電性液体の表面エネルギーとを厳密に一致させることにより、液体140は谷間に全体的に一定の深さとなるように定着する。基材130と三次元構造132の表面エネルギーは極端に低くはないため、導電性液体はビードを形成することがない。基材の表面エネルギーは過度に高くないため、液体は過度に急速に広がることがない。仮に基材の表面エネルギーが過度に高いと、液体は三次元構造132自身の頂上を覆って吸着するため、構造が透明でなければならないディスプレーへの応用に対しては望ましくない。
【0021】
図1の108にあるように、本方法はさらに、付着した導電性液体を用いてシード層を形成するステップを含む。このステップは、付着した導電性液体を基材(112)上で(例えば数時間)乾燥させ、残る材料を例えばUV照射(114)で硬化させることにより行われる。用いられる紫外線照射は、波長を例えば365nmとすることができる。
【0022】
110にあるように、本方法は、シード層をメッキして所望の導電パターンを形成するステップを含む。このステップは、無電解メッキや電気化学メッキ等のメッキ法によって、シード層の表面上に、銅などの所望の金属を付着させることにより行われる。メッキ浴の温度は、45°C以下とすることができる。このようなメッキ処理を用いると、金属(例えば銅)は金属のシード層上に選択的にメッキされ、これによって所望の電気伝導パターンが形成される。例として、基材130は銅浴に浸しても良い。基材を除去すると、金属のシード層のある表面の部分のみが銅でコーティングされる。図3および4に関して、谷間132にある導電性を有する銅の幅D2は、D1(例えば12μm)に等しく、導電性を有する部分の間隔W2は、W1(例えば6μm)に等しい。一般的に、この技術によれば4pm(又はそれ以下)のピッチを有する4μm以下までの線幅が可能である。
【0023】
図5は、上述のような三次元構造132とその間に形成された導電性材料140とを有する基材を示す斜視図である。
【0024】
図6に、本発明の他の実施形態に係る方法200を示す。図6の実施形態は、所望の導電パターンの幅及び形を画定するための三次元構造を含まない。その代わりに、図6の本実施形態は、導電性液体を望まない基材の表面のエネルギーを調節するステップを含む。この調節するステップは、導電性液体を望まない表面エネルギーを、導電性液体が容易に吸着しない程度まで低くなるように減少させるステップを含む。図6の実施形態では、基材は、付着させたい導電性液体の表面エネルギーとほぼ等しいかそれより大きな表面エネルギーを有する材料(少なくとも導電パターンを形成したい外側の表層)から形成することができる。また、付着させたい導電性液体の表面エネルギーとほぼ等しいかそれより大きな表面エネルギーを有する材料であらかじめ基材をコーティングしても良い。
【0025】
202にあるように、図6の方法は、低表面エネルギー材料を有する基材表面に所望のパターンの反転版をプリントするステップを含む。すなわち、導電性材料を望まない基材の領域が、低表面エネルギー材料でコーティングされる。このような領域は、「反転パターン」と呼ばれる。低表面エネルギー材料は、例えば、フッ素化分子の蒸着や、液体で付着させた後に揮発性溶媒を飛ばすことにより形成された自己配列化単分子層(SAM)を含むことができる。実施形態によっては、このような材料の表面エネルギーは、導電性材料が望まれる残りの領域の表面エネルギーよりも50%以上低い。例として、202においてプリントされた材料の表面エネルギーは、20ダイン/cmよりも小さい。基材の残りの部分の表面エネルギーは、反転パターンの表面エネルギー(≦20ダイン/cm)よりも有意に高い。実施形態によっては、基材は、ポリカーボネートやPET(凡そ40ダイン/cm)、又はガラス(70ダイン/cm以上)を含む。
【0026】
204にあるように、本方法は、触媒添加伝導性液体(例えばインク)を所望の領域に付着させるステップを含む。このステップで選択される導電性液体は、反転パターンの一部である基材の領域の表面エネルギーよりも大きい表面エネルギー(表面張力)を有しているべきである。実施形態によっては、導電性液体は20〜50ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する。実施形態によっては、液体の表面エネルギーは25〜35ダイン/cmの範囲内、更に具体的には、29〜33ダイン/cmの範囲内としても良い。導電性液体は、インク等の金属触媒を添加した液体(パラジウム触媒添加液体等)であることが好ましい。
【0027】
導電性液体は、表面エネルギーがより高い領域にのみ定着し、表面エネルギーがより低い反転パターンには定着しない。基材はこのような導電性液体でコーティングすることができるが、この液体は表面エネルギーが低いため反転パターンの領域には吸着しようとしない。その代わり、導電性液体は、導電性材料が望まれる領域を含む残りの領域に吸着しようとする。
【0028】
206にあるように、本方法は、付着した導電性液体を用いてシード層を形成するステップを含む。このステップは、付着した導電性液体を基材上で乾燥させること及び、残る材料を例えば紫外線(UV)照射(212)によって固化させることにより行われる。
【0029】
208にあるように、本方法は、シード層をメッキして所望の導電パターンを形成するステップを含む。このステップは、無電解メッキや電気化学メッキ等のメッキ処理によって、シード層の表面に銅等の所望の金属を付着させることにより行われる。このようなメッキ処理を用いて、金属(銅等)は金属のシード層に選択的にメッキされ、これによって所望の電気伝導パターンが形成される。例として、基材は銅浴に浸しても良い。基材を取り除くと、金属のシード層を有する表面の部分のみが銅でコーティングされている。本明細書にて説明した方法は、銅に限らず、ニッケル等、メッキ可能な他の金属を、触媒を含有する液体のインクを用いてコーティングしても良い。
【0030】
図7〜図10に、平坦な基材上におけるパターンの実例的な実施形態を示す。図7では、導電線230が全般的に直線で互いに平行とされている。領域232は、表面エネルギーが低い(例えば20ダイン/cm)材料がプリントされた領域である。図8および図9は、図7の実施形態を示す側面図である。図9では、低表面エネルギー材料233が領域232に示されている。図10では、導電性材料を含むパターン242の反転パターンにおける240の位置に低表面エネルギー材料がプリントされている。
【0031】
図11および図12は、ディスプレイの一部としてマイクロレンズフィルム310を光ガイド320に隣接させて置いた適用例を示す。マイクロレンズフィルム310は、ディスプレイの単一ピクセル300に対応する一部が示されている。光源330(発光ダイオード(LED)等)が光ガイド320の横に置かれ、横から光ガイド320の中へ光を放出する。光ガイド320はガラス、ポリカーボネート、アクリレート等の種々の透明な材料から構成することができる。LED330によって光ガイド320内に放射された光325は、光線の角度と、空気332の屈折率に対する光ガイドの屈折率との作用である全反射(TIR)によって、光ガイド320の上面および下面で反射する。
【0032】
マイクロレンズフィルム310は、マイクロレンズフィルム上に形成された三次元構造338を光ガイドから隔てるスタンド318を介して、光ガイド320に隣接して配置される。図11は、ピクセル300が「オフ」の位置にある状態を示す。構造332は光ガイド320から閾値の距離より遠く隔てられている(H3)ため、光ガイドからの光は光ガイドから逃げることができない。ピクセル300を「オン」にし、光ガイド320からの光を光ガイドから逃がすには、ピクセル300に隣接するマイクロレンズフィルム310の一部分を光ガイド320に近づけるかあるいは接触させる必要がある。構造338は、透明であって、図12(ピクセルがオン)に示すように光の全反射が成立せず光が光ガイドから構造338内へ逃げるような屈折率を有している。
【0033】
ピクセルの両側に十分な電位差にかけられると、静電気的な引力によってピクセルは間隙H3を横切って閉じるように曲げられる。構造338の間の谷間に埋まっている導電性材料340は、前述の技術のうちの一つ以上によって形成される。構造338は透明のままである必要があり、本明細書にて説明した技術は導電性液体が構造338にコーティングされたままとならないようにするために役立つ。その代わり、導電性液体は、基材の表面エネルギーを調節した結果として、構造の谷間に落ち込む。なお、参照番号342は、電圧が印加される間隙の反対側の導体である。
【0034】
以上の議論は、本発明の原理および種々の実施形態を説明する例示とするためのものである。以上の開示内容がひとたび完全に理解されれば、当業者にとっては数々の変形および変更が明らかとなろう。以下の請求の範囲はこのような変形および変更を全て含むものと解釈されることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に導電パターンを形成するための方法であって、
前記基材表面の表面エネルギーを調節するステップと、
前記基材表面に触媒添加液を付着させるステップと、
該付着した触媒添加液からシード層を形成するステップと、
該シード層をメッキすることにより前記導電パターンを形成するステップとを有する方法。
【請求項2】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップの前に、前記基材表面上に三次元構造を付着させるステップを更に有する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記三次元構造は隣接する三次元構造の間に谷を形成しており、前記導電パターンは該三次元構造の谷間に導電性材料を有する、請求項2の方法。
【請求項4】
前記三次元構造の表面エネルギーは基材表面の表面エネルギーの10%以内である、請求項3の方法。
【請求項5】
前記表面エネルギーを調節するステップは、前記付着した触媒添加液が吸着するレベルまで表面エネルギーを調節するステップを有する、請求項2の方法。
【請求項6】
前記表面エネルギーを調節するステップは、前記基材表面の表面エネルギーを増加させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項7】
前記表面エネルギーを調節するステップは、20〜50ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する物質を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項8】
前記表面エネルギーを調節するステップは、25〜35ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する物質を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項9】
前記表面エネルギーを調節するステップは、前記基材表面上にアクリレートを付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項10】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、20〜50ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項11】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、25〜35ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項12】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、29〜33ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項13】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、前記基材表面に金属触媒添加液を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項14】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、前記基材表面にパラジウム触媒添加液を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項15】
前記シード層を形成するステップは、前記付着した触媒添加液を乾燥及び固化させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項16】
請求項1の方法により形成された導電パターンを有する基材。
【請求項17】
基材表面に導電パターンを形成するための方法であって、
前記基材表面の第一の部分の表面エネルギーを前記基材表面の第二の部分の表面エネルギーよりも低い表面エネルギーになるように調節するステップと、
前記基材表面に触媒添加液を付着させるステップと、
該シード層をメッキすることにより前記導電パターンを形成するステップと、
該付着した触媒添加液からシード層を形成するステップとを有し、
前記基材表面に触媒添加液を付着させるステップにおいては、前記触媒添加液が前記基材表面の前記第二の部分に吸着し、前記第一の部分に吸着しない方法。
【請求項18】
前記第一の部分の表面エネルギーを調節するステップは、該第一の部分に物質を付着させるステップを有し、該物質は20ダイン/cmより小さい表面エネルギーを有する、請求項17の方法。
【請求項19】
前記第一の部分の表面エネルギーを調節するステップは、フッ素化分子の蒸着によってSAM層を形成するステップを有する、請求項17の方法。
【請求項20】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、20〜50ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項21】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、25〜35ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項22】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、29〜33ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項23】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、前記基材表面に金属触媒添加液を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項24】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、前記基材表面にパラジウム触媒添加液を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項25】
前記シード層を形成するステップは、前記付着した触媒添加液を乾燥及び硬化させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項26】
請求項17の方法により形成された導電パターンを有する基材。
【請求項1】
基材表面に導電パターンを形成するための方法であって、
前記基材表面の表面エネルギーを調節するステップと、
前記基材表面に触媒添加液を付着させるステップと、
該付着した触媒添加液からシード層を形成するステップと、
該シード層をメッキすることにより前記導電パターンを形成するステップとを有する方法。
【請求項2】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップの前に、前記基材表面上に三次元構造を付着させるステップを更に有する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記三次元構造は隣接する三次元構造の間に谷を形成しており、前記導電パターンは該三次元構造の谷間に導電性材料を有する、請求項2の方法。
【請求項4】
前記三次元構造の表面エネルギーは基材表面の表面エネルギーの10%以内である、請求項3の方法。
【請求項5】
前記表面エネルギーを調節するステップは、前記付着した触媒添加液が吸着するレベルまで表面エネルギーを調節するステップを有する、請求項2の方法。
【請求項6】
前記表面エネルギーを調節するステップは、前記基材表面の表面エネルギーを増加させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項7】
前記表面エネルギーを調節するステップは、20〜50ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する物質を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項8】
前記表面エネルギーを調節するステップは、25〜35ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する物質を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項9】
前記表面エネルギーを調節するステップは、前記基材表面上にアクリレートを付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項10】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、20〜50ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項11】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、25〜35ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項12】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、29〜33ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項13】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、前記基材表面に金属触媒添加液を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項14】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、前記基材表面にパラジウム触媒添加液を付着させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項15】
前記シード層を形成するステップは、前記付着した触媒添加液を乾燥及び固化させるステップを有する、請求項1の方法。
【請求項16】
請求項1の方法により形成された導電パターンを有する基材。
【請求項17】
基材表面に導電パターンを形成するための方法であって、
前記基材表面の第一の部分の表面エネルギーを前記基材表面の第二の部分の表面エネルギーよりも低い表面エネルギーになるように調節するステップと、
前記基材表面に触媒添加液を付着させるステップと、
該シード層をメッキすることにより前記導電パターンを形成するステップと、
該付着した触媒添加液からシード層を形成するステップとを有し、
前記基材表面に触媒添加液を付着させるステップにおいては、前記触媒添加液が前記基材表面の前記第二の部分に吸着し、前記第一の部分に吸着しない方法。
【請求項18】
前記第一の部分の表面エネルギーを調節するステップは、該第一の部分に物質を付着させるステップを有し、該物質は20ダイン/cmより小さい表面エネルギーを有する、請求項17の方法。
【請求項19】
前記第一の部分の表面エネルギーを調節するステップは、フッ素化分子の蒸着によってSAM層を形成するステップを有する、請求項17の方法。
【請求項20】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、20〜50ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項21】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、25〜35ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項22】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、29〜33ダイン/cmの範囲内の表面エネルギーを有する液体を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項23】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、前記基材表面に金属触媒添加液を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項24】
前記基材表面に前記触媒添加液を付着させるステップは、前記基材表面にパラジウム触媒添加液を付着させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項25】
前記シード層を形成するステップは、前記付着した触媒添加液を乾燥及び硬化させるステップを有する、請求項17の方法。
【請求項26】
請求項17の方法により形成された導電パターンを有する基材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−512568(P2013−512568A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541086(P2012−541086)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/054641
【国際公開番号】WO2011/066055
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(507385800)ユニ−ピクセル・ディスプレイズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/054641
【国際公開番号】WO2011/066055
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(507385800)ユニ−ピクセル・ディスプレイズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
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