説明

表面サイズ剤及びこれを塗工した紙

【課題】オフセットインキで印刷される紙、特に新聞印刷用紙のオフセット印刷適性を向上させる表面サイズ剤及び表面処理剤と、オフセット印刷を良好に行うことのできる紙、特に新聞印刷用紙の提供。
【解決手段】炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)と、スチレン類(a2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)とを少なくとも含むモノマーの共重合体でありpH7でのカチオン化度が0.6〜1.3meq/g・solidのカチオン性乳化剤[A]の存在下で、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む疎水性モノマーを少なくとも重合して得られる重合体[B]を含有する表面サイズ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面サイズ剤と、表面サイズ剤が塗工された紙、特に新聞印刷用紙に関する。更に詳しくは、オフセットインキで印刷される紙、特に新聞印刷用紙のオフセット印刷適性を向上させることができる表面サイズ剤と、この表面サイズ剤が塗工されたオフセット印刷用紙、特に新聞印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の新聞印刷用紙は、軽量化、脱墨パルプの高配合化が求められており、また印刷においてもオフセット化、印刷の高速化、カラー化が急速に進んでおり、印刷適性に対する要求がますます厳しくなっている。
【0003】
従来より、新聞印刷用紙は、サイズ性能を向上させるために、スチレン−マレイン酸系共重合体のアルカリ金属塩の水溶液、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体のアルカリ金属塩の水溶液、α−オレフィン−マレイン酸系共重合体等のアルカリ金属塩の水溶液等の溶液型表面サイズ剤が新聞原紙の表面に塗工されている。しかしながら、これらの溶液型表面サイズ剤を塗工している紙は、比較的良好なサイズ性能を有するものの、オフセットインキに対する印刷適性が十分とはいえない。
【0004】
また、これら溶液型表面サイズ剤を塗工している紙は、近年急速に使われるようになった植物油もしくは水素化鉱物油などの石油系でない溶剤を含有するエコインキを用いて印刷した場合、特に印刷適性が不十分となる問題があった。
【0005】
また、溶液型表面サイズ剤を塗工した印刷用紙は、オフセット印刷時に湿し水によって塗工面が濡らされることにより、表面サイズ剤の再溶解や併用される変性澱粉の溶出を起こしやすく、結果としてブランケットや版の汚れのような印刷トラブルを引き起こすことがあった。
【0006】
さらに、上記溶液型表面サイズ剤は、中性紙に対するサイズ性付与効果が十分とはいえなかった。新聞印刷用紙は現在は酸性紙が主流であるが、今後中性紙に移行すると予測されており、中性の新聞用紙原紙に上記溶液型表面サイズ剤を用いる場合にはサイズ度が劣るため、多色刷りの際の色ずれ防止などの目的で表面サイズ剤の使用量を増やす必要があると考えられ、結果として印刷適正の更なる悪化をもたらす可能性がある。
【0007】
そこで、上記の溶液型表面サイズ剤に代わり、分散剤存在下で疎水性モノマーを重合して得られるエマルション液を含有するオフセットインキ用の表面サイズ剤が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この表面サイズ剤は、上記溶液型表面サイズ剤に比べ良好な印刷適性効果を示すものの、内添サイズ剤の使用量が特に少ないような紙に対しては印刷適性向上効果が十分ではなかった。近年、新聞印刷用紙の内添サイズ剤は、操業上の問題から、使用量を低減もしくは使用しない方向であるため、内添サイズ剤の使用量が少ないサイズ度の低い原紙に対しても高いサイズ性能と印刷適性向上効果を付与できる表面サイズ剤が求められている。
【0008】
また、下記の群から選ばれる一種以上の疎水性モノマーユニットと4級アンモニウム塩を含有するモノマーユニットを重合させて得られるカチオン性共重合体に、さらに前記群から選択される一種以上の疎水性モノマーを重合させて得られる共重合体を含有することを特徴とする印刷適性向上剤も提案されている(特許文献2)。しかし、更なる改良が求められている。
( 1 ) スチレン類
( 2 ) アルキル(メタ)アクリレート類
( 3 ) ジアルキルジエステル類
( 4 ) ビニルエステル類
( 5 ) N−アルキル(メタ)アクリルアミド
( 6 ) メチルビニルエーテル
【特許文献1】特開2003−306887号公報
【特許文献2】特開2006−016712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、オフセットインキで印刷される紙、特に新聞印刷用紙のオフセット印刷適性を向上させることができる表面サイズ剤及び表面サイズ剤を含有する表面処理剤の提供と、この表面サイズ剤又は表面処理剤を塗工したオフセットインキによる印刷を良好に行うことのできる紙、特に新聞印刷用紙の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)と、スチレン類(a2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)とを少なくとも含むモノマーの共重合体でありpH7でのカチオン化度が0.6〜1.3meq/g・solidのカチオン性乳化剤[A]の存在下で、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む疎水性モノマーを少なくとも重合して得られる重合体[B]を含有する表面サイズ剤、好ましくは、上記カチオン性乳化剤[A]100重量部に対して上記疎水性モノマーを25〜100重量部含有する表面サイズ剤を、特に変性澱粉類とともに、原紙、好ましくは紙面pHが5〜7、灰分の含有量が6〜20重量%、炭酸カルシウムの含有量が5〜20重量%の中性新聞印刷用紙原紙の表面に塗工する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面サイズ剤又は該表面サイズ剤を含有する表面処理剤を原紙の表面に塗工することにより、高いサイズ性能と、オフセットインキ特にその中でもエコインキに対する着肉性向上及び澱粉溶出量の低減効果を紙に付与することができ、結果として優れた印刷適性と版汚れ等の印刷トラブルの少ない紙を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の表面サイズ剤は、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)と、スチレン類(a2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)とを少なくとも含むモノマーの共重合体でありpH7でのカチオン化度が0.6〜1.3meq/g・solidのカチオン性乳化剤[A]の存在下で、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む疎水性モノマーを少なくとも重合して得られる重合体[B]を含有するものである。
【0013】
本発明でいうカチオン性乳化剤[A]は、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)と、スチレン類(a2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)とを少なくとも含むモノマーの共重合体でありpH7でのカチオン化度が0.6〜1.3meq/g・solidの共重合体である。
【0014】
本発明に用いられるカチオン性乳化剤[A]の共重合性成分として使用されるモノマーには、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)、スチレン類(a2)及びジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)が少なくとも含まれる。
【0015】
炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)としては、例えば、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリ−ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ターシャリ−ペンチル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、炭素数4〜10の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタクリレート」と同義である。
【0016】
スチレン類(a2)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−ターシャリ−ブチルスチレンなどを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でもスチレン及びα−メチルスチレンが特に好ましい。
【0017】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
カチオン性乳化剤[A]における共重合性成分として、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)、スチレン類(a2)及びジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)以外の他のモノマーを(a1)〜(a3)とともに本発明の性能を害しない範囲で用いてもよい。(a1)〜(a3)以外のモノマーの配合量は、用いられるモノマーの種類によって決定されるので特に限定はないが、一般にはカチオン性乳化剤[A]における共重合性成分全体に対して30重量%未満である。
【0019】
カチオン性乳化剤[A]において(a1)〜(a3)と組み合わせて使用できる(a1)〜(a3)以外のモノマーとしては、(a1)以外の(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマル−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖型アルキル基を有する(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート類、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレートなど);ジアルキルジエステル類(例えば、マレイン酸、フマル酸などのジメチルエステル、ジエチルエステルなど);ビニルエステル類(例えば、炭素数5〜10のターシャリーカルボン酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);N−アルキル(メタ)アクリルアミド;メチルビニルエーテル;ノニオン性モノマー(カチオン性基及びアニオン性基を備えず、親水性基を備えた重合性モノマーであり、例えば、(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなど);及び(a3)以外のカチオン性モノマー(例えば、アリルアミン;メタリルアミン;ジアリルアミン;ジメタリルアミン;ジメチルアミノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(ジアルキル)アミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(ジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド;ビニルピリジン;及びビニルイミダゾールなど);アニオン性モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びクロトン酸などのカルボン酸基を有するモノマー;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びスルホン化スチレンなどの、スルホン酸基を有するモノマー;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリン酸エステル等のリン酸エステル基を有するモノマー)が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
この中でもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマル−ブチル(メタ)アクリレート等の直鎖型アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを(a1)〜(a3)とともに用いることが好ましい。
【0021】
前記カチオン性乳化剤[A]の重合方法としては、例えば炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)と、スチレン類(a2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)を、メチルアルコール、エチルアルコールもしくはイソプロピルアルコール等の低級アルコール系有機溶剤、又はベンゼン、トルエン、キシレン等の油性有機溶剤中にて、あるいはこれらの低級アルコール系有機溶剤と水との混合液中にて、あるいは水中にて、ラジカル重合触媒を使用して60〜130℃で1〜10時間重合させ、重合終了後に必要があれば有機溶剤を留去し、3級アミノ基を公知の手法で4級化することが挙げられる。
【0022】
ラジカル重合触媒としては、特に限定するものではないが、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及びジメチル2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)などの油溶性アゾ系触媒;ベンジルパーオキシド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート及びターシャリブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネートなどの油溶性有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素等の水溶性過酸化物;これら過硫酸塩及び過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系重合触媒;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等の水溶性アゾ系触媒;及びターシャリブチルハイドロパーオキシド等の水溶性有機過酸化物系を挙げることができる。また必要に応じてアルキルメルカプタン等の公知の連鎖移動剤やN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等の公知の架橋剤を適宜併用しても差し支えない。
【0023】
前記カチオン性乳化剤[A]において、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)と、スチレン類(a2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)の使用量は、pH7でのカチオン化度が0.6〜1.3meq/g・solidの共重合体となるように適宜決定することができるが、通常、(a1)5〜60重量%、(a2)10〜80重量%、(a3)15〜30重量%であり、4級化剤の使用量は、(a3)に対して、50〜100モル%である。
【0024】
カチオン性乳化剤[A]は、pH7でのカチオン化度が0.6〜1.3meq/g・solidである必要がある。カチオン性乳化剤[A]のpH7でのカチオン化度が0.6meq/g・solid未満あるいは1.3meq/g・solidを超える場合には、得られる表面サイズ剤の安定性、サイズ性能及び印刷適性付与効果が低くなる。なお、カチオン化度が0.6〜1.3meq/g・solidとは固形分1gあたりのカチオン性基が0.6〜1.3ミリ当量であることを示している。カチオン化度は、Mutek Particle Charge Detector 03を使用して、ポリビニルスルホン酸カリウム(PVSK)にて電荷がゼロになる点を終点として測定した。
【0025】
本発明の表面サイズ剤に用いられる重合体[B]は、前記のカチオン性乳化剤[A]の存在下で、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む疎水性モノマーを少なくとも乳化重合することによって得ることができる。
【0026】
前記疎水性モノマーに含まれる炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリ−ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ターシャリ−ペンチル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。この中でも炭素数4〜10の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
前記乳化重合の際には、前記疎水性モノマーに加えて、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート以外の共重合可能なモノマーを本発明の効果を害しない範囲で添加してもよい。このような共重合可能モノマーとしては、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート以外の疎水性モノマー、カチオン性基及びアニオン性基を有さない親水性基を有する重合性モノマーであるノニオン性モノマー、カチオン性モノマー、並びにアニオン性モノマーが挙げられる。具体的には、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート以外の疎水性モノマーとしてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマル−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートなどのような直鎖型アルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート類及びベンジル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びジビニルベンゼンのようなスチレン類;マレイン酸及びフマル酸等のジアルキルジエステル類;酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;N−アルキル(メタ)アクリルアミド類;メチルビニルエーテル類などが挙げられ、ノニオン性モノマーとして(メタ)アクリルアミド;アクリロニトリル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、カチオン性モノマーとしてジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのようなジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;アリルアミン;メタリルアミン;ジアリルアミン;ジメタリルアミン;ジメチルアミノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(ジアルキル)アミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(ジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド;ビニルピリジン;及びビニルイミダゾールなどが挙げられ、アニオン性モノマーとして(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びクロトン酸などのカルボン酸基を有するモノマー;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びスルホン化スチレンなどの、スルホン酸基を有するモノマー;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリン酸エステル等のリン酸エステル基を有するモノマーが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。印刷適性及び表面サイズ剤の安定性の点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマル−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートのような直鎖型アルキル基を有する(メタ)アクリレート及び/又はスチレン類を炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートとともに用いることが好ましい。
【0028】
カチオン性乳化剤[A]の存在下で疎水性モノマーを重合する際には、得られる表面サイズ剤のサイズ性能、印刷適性の点から2種以上のモノマーを使用することが好ましい。2種以上のモノマーは、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートのみで2種以上としてもよいし、あるいは炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート1種以上と前記共重合可能なその他のモノマーの1種以上とを組み合わせて2種以上としてもよい。いずれの場合でも、得られる表面サイズ剤のサイズ性能及び印刷適性の点から、カチオン性乳化剤[A]の存在下で重合される全モノマーのうち、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートを30〜100重量%使用することが好ましい。
【0029】
本発明の表面サイズ剤におけるカチオン性乳化剤[A]と炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む疎水性モノマーとの重量比は、得られるエマルションの安定性の点から、カチオン性乳化剤[A]の固形分100重量部に対して炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む疎水性モノマーが有効分として25〜100重量部であることが好ましく、サイズ性能の面から、30〜100重量部であることが特に好ましい。
【0030】
カチオン性乳化剤[A]の存在下で疎水性モノマーを乳化重合する際には、公知の乳化重合法を適用することができる。例えばカチオン性乳化剤[A]の存在下で、ラジカル重合触媒を用い水中にて疎水性モノマー成分を乳化重合させる手法を採用することができる。
【0031】
上記重合反応に使用する重合触媒としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;これら過硫酸塩と還元剤との組み合わせによるレドックス系重合触媒;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等の水溶性アゾ系触媒;及びターシャリーブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物系を挙げることができる。更に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及びジメチル2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)等の油溶性アゾ系触媒;及びベンジルパーオキシド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート及びターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート等の油溶性有機過酸化物を先の水溶性ラジカル開始剤に併用して使用できる。また必要に応じてアルキルメルカプタン等の公知の連鎖移動剤やN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等の公知の架橋剤を適宜併用しても差し支えない。
【0032】
また、疎水性モノマー成分を乳化重合する際、本発明の表面サイズ剤の性能を損なわない範囲であれば、公知の界面活性剤及び高分子分散剤を添加しても構わない。
本発明の表面サイズ剤に必要に応じて配合することができる界面活性剤としては、乳化重合に適用できる公知の乳化剤あるいは分散剤が挙げられ、例えばカチオン性、非イオン性、両性又はアニオン性の界面活性剤やラジカル重合可能な界面活性剤であり、これらの群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0033】
表面サイズ剤に必要に応じて配合することができるカチオン性界面活性剤としては、1級及び2級アミン類の酢酸塩やエピクロロヒドリン変性物等が挙げられる。1級及び2級アミン類としては、一般式R1NH2及びR23NHで表され、R1、R2、R3はそれぞれ、同一の又は異なる、炭素数1〜30の鎖状又は環状炭化水素基である。R1、R2、R3としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アリル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、オレイル、フェニル、ナフチル、デヒドロアビエチルなどの置換基を挙げることができる。
【0034】
この他のカチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルベンジルアンモニウムクロライド、ロジンアミンの酢酸塩、エピクロロヒドリン変性物、モノオキシエチレンアルキルアミン、及びポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。本発明においては、前記カチオン性界面活性剤の1種を単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0035】
表面サイズ剤に必要に応じて配合することができる非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールなどが挙げられる。本発明においては前記非イオン性界面活性剤の1種を単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0036】
表面サイズ剤に必要に応じて配合することができるアニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等のリン酸エステル塩、スルホン酸塩、コハク酸エステル塩及びスルホコハク酸エステル塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホリマリン縮合物のアルカリ塩;アルケニルコハク酸塩;ロジンのアルカリ金属塩;及び強化ロジンのアルカリ金属塩が挙げられる。本発明においては、前記アニオン性界面活性剤の1種を単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0037】
前記ラジカル重合可能な界面活性剤は、一般に反応性乳化剤と称され、分子中に疎水基、親水基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物である。前記炭素−炭素二重結合を有する化合物には、例えば、(メタ)アリル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、イソプロペニル基、ビニル基、又は(メタ)アクリロイル基を有する化合物が含まれる。
【0038】
これらのラジカル重合可能な界面活性剤としては、乳化重合に適用できるものを用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、分子中に前記官能基を1つ以上有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル、及びこれらのスルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩及びスルホコハク酸エステル塩;分子中に前記官能基を1つ以上有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルあるいはポリオキシアルキレンフェニルエーテルの脂肪酸カルボン酸塩及び芳香族カルボン酸塩;酸性リン酸(メタ)アクリル酸エステル系化合物;ロジン−グリシジル(メタ)アクリレート系化合物;ヘキシルジフェニルエーテルジスルホン酸、デシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ヘキサデシルジフェニルエーテルジスルホン酸などのアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩ならびにアンモニウム塩、等が挙げられる。本発明においては、前記ラジカル重合可能な界面活性剤の1種を単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0039】
本発明においては、印刷適性、エマルション重合時の安定性、及び他の併用薬品との相溶性の観点から、上記のカチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びラジカル重合可能な非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種以上を使用することが好ましい。
【0040】
本発明でいうエコインキとは、芳香族炭化水素等の芳香族成分の含有率が1重量%以下であって環境に与える負荷の少ない溶剤のみを用いた印刷インキのことを指し、例えば大豆油インキのような動植物系溶剤を用いたインキや、アロマチック・フリー溶剤を用いたアロマチック・フリーインキなどをいう。このようなエコインキを用いた新聞印刷用紙の印刷方法としてはオフセット印刷等が挙げられる。
【0041】
本発明の表面サイズ剤は単独で、あるいは紙の通常の製造方法におけるのと同様に水溶性高分子物質であるバインダーと混合して表面処理剤とした後、各種の原紙に塗工される。なお、ここでいう表面処理剤とは、本発明の表面サイズ剤、水溶性高分子物質、及び必要に応じてその他の薬剤を混合した塗工液のことを指す。
【0042】
表面処理剤中に添加できる水溶性高分子物質としては、例えば、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など)及びカチオン化澱粉などの各種変性澱粉類;ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール及び末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロースなどのセルロース誘導体、等が挙げられ、これらの中でも変性澱粉類が好ましい。これらは、単独で、又は2種以上を混合して用いられる。
【0043】
また、表面処理剤は、本発明の表面サイズ剤の効果が損なわれない範囲で、ネッパリ防止剤、防腐剤、消泡剤、滑剤、防滑剤、防錆剤、紫外線防止剤、退色防止剤、蛍光増白剤、粘度安定化剤、アルカリ物質などの助剤や、他の表面サイズ剤を含有してもよい。
【0044】
本発明の表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤を表面に塗工した紙について説明する。該表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤を、酸性抄紙あるいは中性抄紙で抄造した原紙の表面に塗工する。原紙の種類としては、コート原紙、PPC用紙、インクジェット用紙、フォーム用紙、上質紙、中質紙、コートボール、ライナー、感熱紙、新聞用紙等の各種原紙が挙げられる。
【0045】
原紙のパルプ原料としては、特に限定は無く、前記の原紙の種類に応じて、グランドパルプ(GP)、メカニカルパルプ(MP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの晒あるいは未晒パルプ;クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ;又は脱墨パルプ(DIP)等の古紙パルプなどを適宜配合して使用することができる。
【0046】
また、紙に要求される不透明度、印刷後不透明度及び白色度などの光学的特性や平滑性などに応じて、必要であれば、原紙抄造時に填料を適宜配合して紙質を調整しても良い。填料を配合する場合、酸性抄紙あるいは中性抄紙に一般に使用されている填料を使用することができ、特に限定されるものではない。例えば、中性抄紙では、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛などの無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂及び微小中空粒子等の有機填料を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、この中では炭酸カルシウムが好ましい。また酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から酸溶解性のものを除いた填料を使用することができ、それらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
また、各種内添サイズ剤や製紙用内添助剤を原紙に添加してもよい。製紙用内添助剤としては、例えば、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウムアルミナゾル等のアルミニウム化合物;硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物;及びシリカゾル等が挙げられる。
【0048】
その他、製紙用助剤として、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物、及びこれらの誘導体あるいは変成物等の各種化合物も使用できる。
【0049】
更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等を用途に応じて適宜添加することもできる。
本発明においては、酸性抄紙で抄造した原紙よりも中性抄紙で抄造した原紙のほうが本発明の表面サイズ剤の効果が大きく発現するため、中性抄紙で抄造した原紙が好ましい。この理由は、中性抄紙では主に炭酸カルシウムが填料として使用されカチオン性を示す硫酸バンドの使用量が少ないため、本発明のカチオン性の表面サイズ剤が紙の表面付近に留まりやすくなるためと考えられる。
【0050】
表面処理剤(塗工液)中における表面サイズ剤の固形分濃度は、通常、0.05〜2重量%であり、好ましくは0.1〜1重量%である。0.05重量%以上とすることにより高い印刷適性向上効果を付与することができる。2重量%を超えて用いてもよいが、2重量%付近で印刷適性向上の効果が頭打ちになるため、経済的には不利益である。
【0051】
また、表面サイズ剤の原紙への塗工量は、通常、固形分で0.005〜0.3g/m2であり、好ましくは0.01〜0.2g/m2である。この範囲内であると印刷適性が特に良く向上する。
【0052】
表面サイズ剤と水溶性高分子物質を混合してなる表面処理剤を原紙に塗工する場合、表面サイズ剤の表面処理剤中の固形分濃度と塗工量は前記の通りであるが、水溶性高分子物質の表面処理剤中の固形分濃度と、水溶性高分子物質の原紙への塗工量は紙の表面強度の目標値で決定され、この目標値は紙の種類によって異なる。従って、水溶性高分子物質と表面塗工剤サイズ剤の配合比は特に規定されない。
【0053】
本発明の表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤を原紙表面に塗工する装置には、特に限定は無く、サイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザーサイズプレス、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、ナイフコーターなどの公知の装置を適宜選定して用いることができる。
【0054】
次に、本発明の表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤を表面に塗工した新聞印刷用紙について説明する。新聞印刷用紙原紙用のパルプ原料としては、新聞印刷用紙原紙に従来から使用されるパルプであれば良く、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、セミケミカルパルプ(SCP)などのメカニカルパルプ(MP);クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)に代表される化学パルプ(CP);これらのパルプを含む古紙を脱墨して得られる脱墨パルプ(DIP);及び抄紙工程からの損紙を離解して得られる回収パルプなどが挙げられ、これらを、単独、あるいは任意の比率で混合し、慣用される抄紙機によって抄紙する。環境保護への関心の高まりによるDIPの高配合化への要求から、パルプ原料におけるDIPの配合率は50〜100重量%の範囲が好ましい。
【0055】
新聞印刷用紙原紙には、填料として、ホワイトカーボン、クレー、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、及び合成樹脂填料(例えば、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、スチレン・ブタジエン系共重合体系樹脂など)などを使用することが好ましく、この中でも炭酸カルシウムが好ましい。また、新聞印刷用紙原紙には、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの内添紙力増強剤;アクリルアミドとアミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン性澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウム共重合物などの濾水性及び/又は歩留まり向上剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;紫外線防止剤、退色防止剤などの助剤などを添加してもよい。新聞印刷用紙原紙には、乾燥パルプに対して炭酸カルシウムを5〜20重量%配合することが好ましく、新聞印刷用紙原紙の灰分が6〜20重量%であることが好ましい。
【0056】
本発明の表面サイズ剤は単独で、あるいはバインダーである水溶性高分子物質と混合して表面処理剤とした後、新聞印刷用紙原紙に塗工される。新聞印刷用紙原紙に塗工される表面処理剤に配合できる水溶性高分子物質としては、例えば、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など)、カチオン化澱粉などの各種変性澱粉類;ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;及びカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられ、これらの中でも、変性澱粉類、より具体的にはエーテル化澱粉を用いることが好ましい。これらは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
新聞印刷用紙原紙に表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤を塗工する際には、慣用される製紙用塗工装置を用いればよい。製紙用塗工装置としては、例えば、2ロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、スプレー塗工機などの装置が挙げられる。これらの装置の中でも、ゲートロールコーターに代表される被膜転写型コーターが新聞印刷用紙原紙の塗工には望ましく、ゲートロールコーター(GRC)が最も好ましい。
【0058】
表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤を新聞印刷用紙原紙に塗工する際の塗工速度は、通常の新聞用紙を製造できる抄紙機の抄速程度であればよく、特に限定はないが、通常、800〜2500m/分の範囲である。800m/分以上の高速で塗工すると、表面処理剤が紙層中に十分に浸透する前に乾燥されるので、表層付近に存在する表面処理剤の量が多くなり、表面処理剤による印刷適性の向上効果がより発揮される。
【0059】
本発明の表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤は、酸性抄紙で抄造した新聞印刷用紙原紙よりも、中性抄紙で抄造した紙面pH5〜7の新聞印刷用紙原紙に塗工したほうが、より効果を発揮する。
【0060】
新聞印刷用紙原紙に塗工される表面処理剤(塗工液)における表面サイズ剤の固形分濃度は、通常、0.05〜2重量%であり、好ましくは0.1〜1重量%である。0.05重量%以上とすることにより十分な印刷適性向上効果を得ることができる。2重量%を超えて使用してもよいが、2重量%付近で本発明の表面処理剤による印刷適性向上効果は頭打ちとなるため、経済的には不利益である。また、表面サイズ剤の原紙への塗工量は、通常、固形分で0.005〜0.3g/m2であり、好ましくは0.01〜0.2g/m2である。この範囲内であると印刷適性が特に良く向上する。
【0061】
表面サイズ剤と水溶性高分子物質を混合した表面処理剤を新聞印刷用紙原紙に塗工する場合、水溶性高分子物質の塗工量は1平方メートル当たり0.05〜2.0g(両面の合計量)が適当である。塗工量を0.05g/m2(両面)以上とすることにより、新聞用紙の表面強度を十分に高くすることができる。一方、塗工量を2.0g/m2(両面)以下とすることにより、オフセット印刷用新聞用紙特有の問題であるネッパリ問題(新聞用紙が大量印刷された際、塗工材料がブランケットに転移、蓄積することにより引き起こされる粘着性トラブル)が生じにくくなる。
【0062】
本発明の新聞印刷用紙は、表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤を塗工、乾燥後、オフセット印刷に適した紙厚、平滑性を得るために、カレンダー処理をすることが好ましい。カレンダーとしては、通常のハードニップカレンダー、あるいは高温ソフトニップカレンダー(例えば、紙パルプ技術タイムスVol.43,No.1(2000)p23などにまとめられている。)が挙げられる。今後の新聞用紙の軽量化を考えれば、本発明の新聞用紙には、ソフトニップカレンダーがより好ましく使用される。カラー印刷適性の点からすると、本発明の表面サイズ剤又は表面サイズ剤を含有する表面処理剤は、ソフトニップカレンダー処理と組み合わせるとよい。
【実施例】
【0063】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断りがない限り、それぞれ重量部及び重量%を意味する。
【0064】
(1)カチオン性乳化剤[A]の製造
[合成例1]
撹拌機、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を付けた1リットルの四つ口フラスコにターシャリ−ブチルアクリレート35部、スチレン35部、ジメチルアミノエチルメタクリレート30部、アゾビスイソブチロニトリル2.5部及びイソプロピルアルコール44部を仕込み、80℃で3時間保持し、次いでアゾビスイソブチロニトリルを0.5部仕込み、さらに同温度で2時間保持した。次いで、90%酢酸12.7部(ジメチルアミノエチルメタクリレートに対して100モル%)及び水252部を加え、イソプロピルアルコールを留去した。その後、水48部及び4級化剤としてエピクロロヒドリン14.1部(ジメチルアミノエチルメタクリレートに対して80モル%)を仕込み、80℃で2時間保持した。その後、水で希釈し、固形分20%のカチオン性乳化剤(A−1)を得た。Mutek Particle Charge Detector 03及びポリビニルスルホン酸カリウム(PVSK)を用いて測定したpH7におけるカチオン化度は、1.18meq/g・solidであった。
【0065】
[合成例2〜8]
使用した炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)の種類及び使用量、スチレン類(a2)の種類及び使用量、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)の種類及び使用量、4級化剤の種類及び使用量を表1に示すように変えた以外は合成例1と同様にしてカチオン性乳化剤(A−2)〜(A−4)及び(A’−1)〜(A’−4)を得た。得られたカチオン性共重合体のpH7におけるカチオン化度を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1中の記号の説明
tBA:ターシャリ−ブチルアクリレート、IBMA:イソブチルメタクリレート、IDMA:イソデシルメタクリレート、EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、St:スチレン、BA:ノルマル−ブチルアクリレート、MMA:メチルメタクリレート、DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート、DEM:ジエチルアミノエチルメタクリレート、ECH:エピクロロヒドリン、BTO: ブチレンオキシド。
【0068】
(2)表面サイズ剤(重合体[B])の製造
[実施例1]
合成例1と同様の反応器に、水162部、合成例1で得られたカチオン性共乳化剤(A−1)の水溶液250部(固形分として50部)、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートとして2−エチルヘキシルメタクリレート40部及びイソデシルメタクリレート10部、その他のモノマーとしてノルマル−ブチルアクリレート25部及びスチレン25部、そして10%過硫酸アンモニウム5重量部を加え、窒素気流下で混合撹拌しながら80℃に昇温した。80℃で2時間保持して乳化重合を完結させ、固形分濃度25.0%の表面サイズ剤(B−1)を得た。
【0069】
[実施例2〜8]
使用したカチオン性乳化剤[A]の種類及び使用量、疎水性モノマーの種類及び使用量を表2に示すように変えた以外は実施例1と同様にして表面サイズ剤(B−2)〜(B−8)を得た。なお、実施例5については、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン付加モル数:20)を5部使用した。得られた表面サイズ剤の固形分濃度を表2に示す。
【0070】
[比較例1〜5]
使用したカチオン性乳化剤[A]の種類及び使用量、疎水性モノマーの種類及び使用量を表2に示すように変えた以外は実施例1と同様にして表面サイズ剤(B’−1)〜(B’−5)を得た。得られた表面サイズ剤の固形分濃度を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2中の記号の説明
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート、IBMA:イソブチルメタクリレート、IDMA:イソデシルメタクリレート、tBA:ターシャリーブチルアクリレート、EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、IBA:イソブチルアクリレート、BA:ノルマル−ブチルアクリレート、St:スチレン、LA:ラウリルアクリレート、MMA:メチルメタクリレート
【0073】
(3)塗工紙の評価
[実施例9]
DIP(濾水度180ml)80部、TMP(濾水度100ml)15部、及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、濾水度600ml)5部を混合離解して調製したパルプスラリーに、絶乾パルプを基準として炭酸カルシウムを5.0%添加し、ツインワイヤー型抄紙機にて坪量42g/m2となるように中性抄紙して原紙を得た。得られたオフセット印刷用新聞印刷用紙原紙は、紙面pHが6.5、灰分が12.2%(紙中炭酸カルシウム含有量10.3%)であった。この原紙にゲートロールコーターを用いて、ヒドロキシエチル化澱粉及び表面サイズ剤(B−1)からなる表面処理剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度6.0%、表面サイズ剤(B−1)の固形分濃度0.45%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工して、オフセット印刷用新聞印刷用紙を得た。ヒドロキシエチル化澱粉と表面サイズ剤(B−1)の塗工量は、それぞれ0.40g/m2(片面)及び0.03g/m2(片面)であった。得られた新聞印刷用紙について、次に示す方法で、ドロップテスト、接触角、着肉性及び澱粉溶出量を測定した。その結果を表3に示す。
【0074】
(ドロップテストの評価)
J.TAPPI 33の試験方法に準拠し、滴下水量1μLで測定した。数値が大きいほど、サイズ性が良好であることを示す。
【0075】
(接触角の評価)
FIBLO社製の自動接触角計を用いて、5μLの水を滴下し1秒後の接触角を測定した。数値が大きいほど、サイズ性が良好であることを示す。
【0076】
(着肉性の評価−印刷ムラ)
オフセット輪転機を使用し、東洋インキ製造株式会社製のオフセット用エコインキである高粘度AFインキを使用し1万部印刷した。印刷サンプルの着肉性(印刷ムラ)を、目視にて以下の基準で評価した。
◎:印刷面にムラがなく、非常に均一な画像が得られている;
○:印刷面にムラがほとんどなく、均一な画像が得られている;
△:印刷面にムラが若干あり、画像が不均一である;
×:印刷面にムラがあり、画像が非常に不均一である。
【0077】
(澱粉溶出量の評価)
2.5cm×30cmの長方形状に切った試験片について、アダムス・ウエット・ラブ計で30回水中を回転させ澱粉を溶出させた。水中に溶け出した澱粉量をバイオセンサー(王子計測機器株式会社製BF−5)を用いて測定し、紙中の澱粉量に対する百分率で示した。数値が小さいほど澱粉の溶出が少ないことを示す。
【0078】
[実施例10〜16]
表面サイズ剤(B−1)の代わりに表面サイズ剤(B−2)〜(B−8)を用いた以外は、実施例6と同様に塗工及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0079】
[比較例6]
表面サイズ剤(B−1)の代わりに、カチオン性乳化剤(A−1)を用いた以外は、実施例6と同様に塗工及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0080】
[比較例7〜11]
表面サイズ剤(B−1)の代わりに表面サイズ剤(B’−1)〜(B’−5)を用いた以外は、実施例6と同様に塗工及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
表3の評価結果から、実施例9〜16の新聞印刷用紙は、比較例6〜11の新聞印刷用紙に比べて、サイズ性能及び着肉性の両者がバランスよく優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレート(a1)と、スチレン類(a2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a3)とを少なくとも含むモノマーの共重合体でありpH7でのカチオン化度が0.6〜1.3meq/g・solidであるカチオン性乳化剤[A]の存在下で、炭素数4〜12の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む疎水性モノマーを少なくとも重合して得られる重合体[B]
を含有することを特徴とする表面サイズ剤。
【請求項2】
カチオン性乳化剤[A]100重量部に対して、該疎水性モノマーを25〜100重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の表面サイズ剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表面サイズ剤と、少なくとも1種類以上の変性澱粉類を原紙表面に塗工して得られることを特徴とする紙。
【請求項4】
上記の原紙が、紙面pHが5〜7、灰分の含有量が6〜20重量%、炭酸カルシウムの含有量が5〜20重量%の中性新聞印刷用紙原紙であることを特徴とする請求項3に記載の紙。

【公開番号】特開2009−235597(P2009−235597A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80352(P2008−80352)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】