説明

表面保護フィルム

【課題】凹凸のある被着体に対して、被着体に対する初期密着性が良好で、経時での粘着力上昇が少なく、糊残りのない表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)に、粘着剤層(II)が積層一体化されてなる表面保護フィルムであって、粘着剤層(II)は、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)とポリエチレン樹脂(b)とを含み、かつ両成分の配合割合は、(a)が100重量部に対して、(b)が10〜50重量部であることを特徴とする表面保護フィルムなどを提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関し、さらに詳しくは、合成樹脂板、金属板、化粧合板、被覆塗装鋼板、塗装樹脂板等の各種銘板の被着体や、拡散板、拡散フィルム、輝度上昇フィルム等の光学用フィルム・板において、その表面にマット加工、エンボス加工、ヘアライン加工した凹凸(JIS B0601に規定された中心線平均表面粗さRaが0.1〜2μmのもの)を有する被着体を保護する表面保護フィルムに関する。尚、本発明で言う表面保護フィルム には、表面保護シートや表面保護テープも包含される。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂板、金属板、化粧合板等の各種銘板や光学用フィルムの加工時や運搬時に、これらの表面に汚れが付着したり、傷が付いたりするのを防止するために、表面保護フィルムが多用されている。
【0003】
このような表面保護フィルムは、一般に、熱可塑樹脂や紙からなる基材(支持体)の片面に、粘着剤層が形成された構成を有する。そして、その使用に際しては、粘着層側から合成樹脂板等の被着体の表面に仮着することによって、被着体の表面を保護し、汚れの付着や傷付きを防止する機能を発揮する。
【0004】
表面保護フィルムには、被着体表面に容易に仮着できて、維持される粘着力を有する必要があり、粘着力が低い場合は、貼り付け直後から浮きが発生したり、経時でめくれが発生したりするため、粘着力設計が必要となる。特に表面に凹凸がある被着体に対しては、粘着力設計が重要となり、経時で凹凸面に粘着剤が入り込み、粘着力が上昇したり、糊残りが発生する課題も考慮する必要がある。
【0005】
上記課題に対応するため種々の試みがなされており、例えば、特許文献1では、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物とエチレン−αオレフィン共重合又はプロピレン−αオレフィン共重合と粘着付与樹脂からなる樹脂組成物による改善が提案されているが、中心線平均表面粗さRaが2μm以上の凹凸の大きい被着体に対しては有効であるものの、中心線平均表面粗さRaが2μm以下の被着体に対しては、粘着力が高くなってしまい、剥がしにくい場合がある。
【特許文献1】特開平6−240216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、凹凸のある被着体に対して、被着体に対する初期密着性が良好で、経時での粘着力上昇が少なく、糊残りのない表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、ポリオレフィン系樹脂からなる基材層に、粘着剤層が積層一体化されてなる表面保護フィルムにおいて、粘着剤層として、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物とポリエチレン樹脂とを特定の割合で用いると、凹凸のある被着体に貼った際に、良好な初期粘着力を有し、経時でも粘着力が安定し糊残りもない表面保護フィルムが得られることを見出した。それらの知見に、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)に、粘着剤層(II)が積層一体化されてなる表面保護フィルムであって、
粘着剤層(II)は、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)とポリエチレン樹脂(b)とを含み、かつ両成分の配合割合は、(a)が100重量部に対して、(b)が10〜50重量部であることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)は、(i)スチレン重合体ブロック(A)と、スチレンと共役ジエンのランダム重合体ブロック(B)からなる(A−B)n、又は(A−B)mX型ブロック共重合体の水素添加物(但し、nは1以上、mは2以上の整数、Xはカップリング剤残基を示す。)、(ii)スチレン重合体ブロック(A)と、共役ジエン重合体ブロック(B’)からなる(A−B’)n、(A−B’)n−A、又は(A−B’)nX型ブロック共重合体の水素添加物(但し、nは1以上、Xはカップリング剤残基を示す。)、及び(iii)スチレン重合体ブロック(A)と、スチレンと共役ジエンとのランダム重合体ブロック(B)と、スチレンと共役ジエンとの共重合体のうちスチレンが漸増するテーパーブロック(C)とからなるA−B−C型ブロック共重合体の水素添加物、からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)は、A−B−C型ブロック共重合体の水素添加物であることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
【0009】
本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、ポリエチレン樹脂(b)は、低圧イオン重合で製造された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、基材層(I)に用いられるポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンであることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、中心線平均表面粗さRa(JIS B0601)が0.1〜2μmである被着体に貼付されることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
またさらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、共押出法により成型されることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面保護フィルムは、凹凸のある被着体に貼った際に、良好な初期粘着力を有し、経時でも粘着力が安定し糊残りもない製品を提供できる。また、共押出によって両層が積層一体化されているので、両層は極性による化学的結合の他に、アンカー効果による物理結合も伴って強固に一体化され、使用後の剥離においても、両層が分離することがない。
従って、本発明の表面保護フィルムは、粘着剤層の上記の優れた性能に加えて、基材と粘着剤層との強固な積層一体化が相俟って、剥離時にも被着体に糊残りを生じず、被着体の表面を汚染することがない優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の表面保護フィルムについて、詳細に説明する。
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、ポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)に、粘着剤層(II)が積層一体化されてなる表面保護フィルムであって、粘着剤層(II)は、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)とポリエチレン樹脂(b)とを含み、かつ両成分の配合割合は、(a)が100重量部に対して、(b)が10〜50重量部であることを特徴とするものである。
【0013】
1.基材層(I)
本発明の表面保護フィルムの基材を構成するポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレンの単独重合体(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、プロピレンの単独重合体、リニア(直鎖状)低密度ポリエチレン、エチレンとエチレンあるいはプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンあるいはプロピレン以外のα−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体又はブロック共重合体等や、ポリオレフィン系アロイ樹脂等が挙げられる。
また、これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
さらに、上記エチレンあるいはプロピレン以外のα−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0014】
上記ポリオレフィン系樹脂(又は樹脂組成物)には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、充填剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤の1種類又は2種類以上が配合されていても良い。
【0015】
基材層(I)の成形方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂および必要に応じて添加される各種添加剤からなるポリオレフィン系樹脂組成物を、常法により予め調製した後、このポリオレフィン系樹脂組成物を押出機にて溶融混練して押出し、Tダイやサーキュラーダイ等を用いて、フィルム状(シート状も含む)に成形する方法や、ポリオレフィン系樹脂組成物を有機溶剤などの溶媒に溶解もしくは分散させた後、キャスト方式でフィルム状に成形する方法、また、ポリオレフィン系樹脂組成物と後述する粘着剤層(II)を形成するために用いられる粘着剤との共押出を行って、基材層(I)の成形と粘着剤層(II)の形成とを同時に一括して行う方法等が挙げられ、いずれの方法が採られても良いが、生産性に優れることから、共押出法を採ることが好ましい。
こうして得られる基材層(I)は、単層構成であっても良いし、2層以上の複層構成であっても良い。
【0016】
また、基材層(I)の厚みは、使用目的によって異なり、特に限定されるものではないが、20〜120μmであることが好ましい。基材層の厚みが20μm未満であると、得られる表面保護フィルムの強度や用済み後の剥離性が不十分となることがあり、一方120μmを超えると、得られる表面保護フィルムの柔軟性や被着体表面の凹凸への追従性が不十分となることがある。
【0017】
2.粘着剤層(II)
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層(II)に用いられるスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)は、スチレン重合体ブロック(A)と共役ジエン重合体ブロック(B‘)からなる(A−B’)n、(A−B’)n−A、(A−B’)nX型ブロック共重合体の水素添加物や、スチレン重合体ブロック(A)とスチレンと共役ジエンのランダム重合体ブロック(B)からなる(A−B)n、(A−B)mX型ブロック共重合体の水素添加物、およびスチレンと共役ジエンとの共重合体のうちスチレンが漸増するテーパーブロック(C)からなるA−B−C型ブロック共重合体の水素添加物が挙げられるが、好ましくは、スチレン重合体ブロック(A)とスチレンと共役ジエンのランダム重合体ブロック(B)からなる(A−B)n、(A−B)mX型ブロック共重合体の水素添加物、及びスチレンと共役ジエンとの共重合体のうちスチレンが漸増するテーパーブロック(C)からなるA−B−C型ブロック共重合体の水素添加物が採用される(但し、nは1以上、mは2以上の整数、Xはカップリング剤残基を示す。)。より好ましくはA−B−C型ブロック共重合体の水素添加物である。
また、上記共役ジエンとは、エチレン結合2個が直接単結合で結合している構造(C=C−C=C)を有する炭化水素であり、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられるが、なかでもブタジエンやイソプレンが好適に用いられる。これらの共役ジエンは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0018】
上記スチレン−共役ジエン系共重合体におけるスチレンの結合部数(構成割合、重量%)は、全モノマーの3〜50重量%が好ましく、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜25%である。上記スチレンの結合含量が3重量%未満では、粘着剤の凝集力が低下するため、再剥離時に被着体に糊残りが発生することがあり、一方、50重量%を超えると、粘着剤の粘着力が不足して、特に表面に凹凸を有する被着体への表面保護フィルムの貼り付け(貼付作業性)が困難になることがある。
上記スチレン−共役ジエン系共重合体におけるスチレンの合計結合含量は、少なくとも2重量%が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。
さらに、上記スチレンと共役ジエンのランダム重合体ブロック(B)と共役ジエンとの共重合体のうちスチレンが漸増するテーパーブロック(C)における共役ジエン部分のビニル結合含量は、全モノマーの60重量%を超える量が好ましく、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。上記ビニル結合含量が60%重量以下では、粘着力が不足することがある。ここでいうビニル結合とは、共役ジエン結合が1,2−もしくは3,4−結合位の二重結合で重合したモノマーブロックユニットを示す。
【0019】
上記スチレン−共役ジエン系共重合体の構成成分である末端に配置されたスチレン重合体ブロック(A)及びスチレンと共役ジエンとの共重合のうちスチレンが漸増するテーパーブロック(C)におけるスチレンの含有量は、モノマー全量に対し、5〜60重量%が好ましく、より好ましくは7〜40重量%である。スチレンの含有量が5重量%未満では、粘着時の凝集力が不足して、再剥離時に被着体に糊残りが生じことがあり、一方、60重量%を超えると、粘着剤の粘着力が不足して、被着体への貼り付けが困難になることがある。
【0020】
上記スチレンと共役ジエンのランダム重合体ブロック(B)中の共役ジエン部分の二重結合の少なくとも80%が水添により飽和させていることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95〜100%である。水素添加の割合が80%未満では、耐熱性、耐候性に劣るものとなることがある。
【0021】
上記スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で5万〜40万が好ましく、より好ましくは8万〜20万である。重量平均分子量が5万未満では、粘着剤の凝集力が低下するため、再剥離時に被着体に糊残りが生じことがあり、一方、重量平均分子量が40万を超えると、粘着力が不足すると共に流動性が悪くなることがある。
【0022】
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層(II)に用いられる粘着剤のポリエチレン樹脂(b)としては、特に限定されないが、スチレン−共役ジエン系共重合体との相溶性を考慮すると、結晶性の低い、低圧イオン重合で製造されたリニア(直鎖状)低密度ポリエチレン(LLDPE)が望ましい。密度は0.91〜0.94g/cmが使用可能であり、0.91g/cmよりも低い場合は、経時の粘着力上昇がみられる。メルトマスフローレート(MFR)は、2〜12g/10分が使用可能であり、2g/10分より低い場合は、成形性が悪くなり、面荒れがみられることがあり、一方、12g/10分を超えると、押出機での生産性が低下することがある。
【0023】
本発明において、粘着剤層(II)として用いられる粘着剤には、上記のスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)100重量部に対して、ポリエチレン樹脂(b)10〜50重量部含有することを、最大の特徴とし、この特定の割合で用いることにより、凹凸のある被着体に、特に中心線平均表面粗さRa(JIS B0601に準拠)が0.1〜2μmである被着体に貼った際に、良好な初期粘着力を有し、経時でも粘着力が安定し糊残りもない表面保護フィルムが得られる。
【0024】
上記粘着剤には、必要に応じて粘着剤の性能を阻害しない範囲で、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤(UVA)等を添加することができる。
【0025】
上記粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではないが、3〜50μmであることが好ましい。粘着剤層の厚みが3μm未満であると、得られる表面保護フィルムの粘着性や粘着力が不十分となることがあり、一方、50μmを超えると、得られる表面保護フィルムを用済み後に被着体から剥離する際に、被着体表面に曇りや糊残りを生じることがある。
【0026】
3.表面保護フィルム
本発明の表面保護フィルムの製造方法は、前述のように、例えば、インフレーション法、Tダイ法のように基材層と粘着剤層とを、共押出によって積層一体化する方法や、粘着剤溶液をキャスティングなどのコーティング方法によって塗工・乾燥させる方法がある。
これらの中で共押出による熱溶融押出法が品質上、経済上から好ましい。
なお、共押出の場合、粘着剤配合物を、予め溶融均一混合したペレット状に加工しておくことが一般的であり、そのペレット同士の再合着を防止するのが、ブロッキング防止を目的とした添加剤である。
一般的に使用されるブロッキング防止剤としては、金属石けん系滑剤(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、及びこれらの複合体)、脂肪酸アマイド系滑剤、高級脂肪族系滑剤等がある。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0028】
[実施例1〜5及び比較例1〜4]
基材層には、全てポリエチレン(三井化学製の「ミラソン12」、MFR=3g/10分(190℃))を使用した。
また、粘着剤層を構成するスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)及びポリエチレン(b)、及び酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル製の「イルガノックス1010」)の3種類の材料を、表1に示す配合で予め溶融混練した粘着剤層用の粘着剤ペレット状原料を用意する。尚、表1のSEBSは、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体の略称である。
【0029】
次いで、共押出機(Tダイ法)を用いて、基材層用のポリエチレン「ミラソン12」と上記で得られた粘着剤層用の粘着剤ペレットとの2層共押出を行い、基材層と粘着剤層とを積層一体化して、基材層の厚みが50μm、粘着剤層の厚みが10μm、全厚みが60μmの表面保護フィルムを得た。
【0030】
(評価):
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた表面保護フィルムについて、以下の方法により評価を行った。
【0031】
(1)凹凸フィルム粘着力:
得られた表面保護フィルムを25mm巾に裁断し、Ra=1.0μmの2mmの凹凸アクリルフィルム表面に、2kgの圧着ローラーを用いて300mm/minの速度で貼付し、30分放置したものを、JIS Z0237に準拠して180°ピール粘着力を測定し、これを初期粘着力(N/25mm)とした。尚、上記操作は、全て23℃×65%の条件において実施した。
【0032】
(2)経時粘着力:
初期粘着力と同じ手順で作成したサンプルを、60℃雰囲気に1週間放置後、粘着力(N/25mm)を測定した。
【0033】
(3)経時浮き:
表面保護フィルムを、Ra=1.0μmの2mmの凹凸アクリルフィルム表面に貼りつけて、60℃雰囲気に1週間放置したときに浮きが発生しているかどうかを、目視にて評価した。
【0034】
(4)剥離感:
表面保護フィルムを、Ra=1.0μmの2mmの凹凸アクリルフィルム表面に貼りつけて剥がしたときの作業性を、官能評価した。
【0035】
(5)経時糊残り:
表面保護フィルムをRa=1.0μmの2mmの凹凸アクリルフィルム表面に貼りつけて60℃雰囲気に1週間放置後、剥がしたときの作業性を官能評価した。
【0036】
上記の評価結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1の評価結果から、実施例1〜5で得られた表面保護フィルムは、主に粘着剤層として、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物とポリエチレン樹脂とを特定の割合で用いているため、良好な初期粘着力を有し、経時でも粘着力が安定し、糊残りも無く、また、初期や使用後の剥離感においても、良好である。一方、比較例1〜4の表面保護フィルムは、表1の評価結果からも判るように、例えば、比較例1では、経時粘着力が増加し、経時での剥離感が悪く(×評価)、糊残り性も悪い評価となっており、また、特定割合の範囲外である比較例2では、経時粘着力が増加し、経時での剥離感が悪く(×評価)、総合評価が悪い評価(×評価)となっており、さらに、特定割合の範囲外である比較例3でも、経時粘着力評価では「貼付せず」の評価となっており、これらの結果から、いずれの比較例も、総合評価が悪い評価(×評価)となっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)に、粘着剤層(II)が積層一体化されてなる表面保護フィルムであって、
粘着剤層(II)は、スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)とポリエチレン樹脂(b)とを含み、かつ両成分の配合割合は、(a)が100重量部に対して、(b)が10〜50重量部であることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)は、
(i)スチレン重合体ブロック(A)と、スチレンと共役ジエンのランダム重合体ブロック(B)からなる(A−B)n、又は(A−B)mX型ブロック共重合体の水素添加物(但し、nは1以上、mは2以上の整数、Xはカップリング剤残基を示す。)、
(ii)スチレン重合体ブロック(A)と、共役ジエン重合体ブロック(B’)からなる(A−B’)n、(A−B’)n−A、又は(A−B’)nX型ブロック共重合体の水素添加物(但し、nは1以上、Xはカップリング剤残基を示す。)、及び
(iii)スチレン重合体ブロック(A)と、スチレンと共役ジエンとのランダム重合体ブロック(B)と、スチレンと共役ジエンとの共重合体のうちスチレンが漸増するテーパーブロック(C)とからなるA−B−C型ブロック共重合体の水素添加物、
からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
スチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物(a)は、A−B−C型ブロック共重合体の水素添加物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
ポリエチレン樹脂(b)は、低圧イオン重合で製造された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
基材層(I)に用いられるポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
中心線平均表面粗さRa(JIS B0601)が0.1〜2μmである被着体に貼付されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
共押出法により成型されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2007−161882(P2007−161882A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360225(P2005−360225)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】