説明

表面保護フィルム

【課題】表面が粗面な被着体に対しても適度な粘着特性を有し、かつ、背面の滑り性に優れ、耐ブロッキング性、巻出し特性(巻出張力を減少させ、被着体との貼り合わせの際にもシワや傷が入ることなく、容易にかつ高速に貼り合わせ加工が可能)にも優れた表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の表面保護フィルムは、少なくとも粘着層と背面層の複合形態からなり、該粘着層は、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶 ブロックコポリマー65〜90重量%、プロピレン系共重合体30〜4重量%及び低密度ポリエチレン15〜1重量%からなり、該背面層は、プロピレン系共重合体60〜90重量%、低密度ポリエチレン40〜10重量%からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体表面への汚れ付着や傷付きを防止するために用いられる表面保護フィルムに関するものである。更に詳しくは、特に光学用分野で使用される拡散板や拡散フィルムなどをはじめとする、表面が粗面な被着体に対しても適度な粘着特性を有し、かつ、背面の滑り性に優れ、耐ブロッキング性、巻出し特性などの取り扱い性にも優れた表面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂板、金属板、被覆塗装鋼板、各種銘板等の加工時や運搬時に、これらの表面に汚れが付着したり、傷が付いたりするのを防止するために、表面保護フィルムが用いられてきている。
特に、近年、液晶ディスプレイ等の薄型ディスプレイがパソコンやテレビ等の表示装置として、好んで多用されるようになってきているが、この薄型ディスプレイは合成樹脂からなる多数の光学フィルムや光学用樹脂板から構成されている。かかる光学フィルムや光学用樹脂板は、光学的な歪み等の欠点を極力低減させる必要があることから、加工時や運搬時に、これらの表面の汚れや傷付きを防止するために、表面保護フィルムが多用されるようになってきている。
【0003】
このような表面保護フィルムとしては、熱可塑性樹脂からなる基材層の一面に粘着層を積層一体化したものが用いられ、使用に際しては該粘着層により被着体表面に貼着され、不要になった際は剥離除去されるため、被着体表面に貼着するための適度な粘着特性を有しているとともに、剥離するに際しては容易に剥離し、しかも被着体表面を汚染しないことなどが要求される。
【0004】
また、これらの表面保護フィルムは、通常は、ロール状に巻き上げて巻重体となされているが、これらの巻重体は、基材層と粘着層とが比較的強い粘着力で圧着されるため、フィルム同士がブロッキングし易く、使用時に表面保護フィルムを巻き出す際、引き剥がしたりするのが困難である等の問題を有していた。特に、被着体表面が粗面で高い粘着力が要求される場合においては、より顕著な問題となっていた。
【0005】
かかる問題を解消すべく、表面保護フィルムを巻き出すために必要な力(以下、「巻出張力」という)を減少させる目的で、粘着層と反対側の層(以下、「背面層」という)に離型処理が一般に施されている。かかる離型処理としては、従来、背面層に予め離型剤を塗布する方法が用いられてきたが、離型剤を背面層にしっかり接着させ、粘着層とは適当に離れやすくするのは困難であり、このため、特殊な離型剤を下塗りしたり、離型剤を塗布する前に背面層にコロナ処理する方法が用いられてきた。しかし、かかる離型処理は塗布工程が煩雑になり、さらに歩留まりが低下し、コストアップに繋がるという問題を孕んでいた。
【0006】
一方、粘着層の形成方法においても、粘着材を溶剤に溶解したものを基材に塗布し、形成する方法が採られていたが、作業環境への配慮として、基材層と粘着層との密着性を維持しながら粘着層の無溶剤化を達成するために、基材層と粘着層とを共押出法により形成し、同時に積層する方法が提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかし、共押出法においても基材層背面に何らかの離型処理が必要であるが、予め離型処理はできず、処理のタイミングに制約がある。そこで、共押出法により得られた積層体の基材層背面を、ロール、布などにより摩擦処理する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、摩擦処理は基材層の配合によって効果がばらつくことがあり、巻出張力を満足に減少させることができない場合もあった。
【0008】
かかる問題に対し、オレフィン系樹脂にシリコーン系微粒子を添加・配合した樹脂層(背面層)と粘着層とが直接又は間接に積層一体化する方法も提案されている(特許文献3)。しかしながら、かかる方法においては、粘着層の粘着特性によりシリコーン系微粒子が粘着層に一部捕られ、汚染の要因をもたらす問題があった。
【0009】
ところで、基材層と粘着層とを共押出法により形成し、同時に積層する方法については、前記特許文献をはじめ、多数の提案がなされている。例えば、特開2000―33671(特許文献4)においては、塗装車体用表面保護フィルムとして、適度な粘着性を有すると共に、剥離する際には容易に剥離し、しかも被着体表面を汚染しない粘着層構成として、ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂とからなる基材層に、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶 ブロックコポリマーを主体とする粘着層を共押出法により積層したものが提案されているが、巻き出しの際のブロッキングによる巻き出し困難な問題は避けがたく、基材背面を個体により摩擦処理する方法を採用している。
【特許文献1】特開昭61−103975号公報
【特許文献2】特開平2−252777号公報
【特許文献3】特開2000−345125号公報
【特許文献4】特開2000−33671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記問題点を解決し、表面が粗面な被着体に対しても適度な粘着特性を有し、かつ、背面の滑り性に優れ、耐ブロッキング性、巻き出し特性(巻出張力を減少させ、被着体との貼り合わせの際にもシワや傷が入ることなく、容易にかつ高速に貼り合わせ加工が可能)にも優れた表面保護フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の表面保護フィルムは、少なくとも粘着層と背面層からなる表面保護フィルムであって、該粘着層は、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体65〜90重量%、プロピレン系共重合体30〜4重量%、及び、低密度ポリエチレン15〜1重量%からなり、該背面層は、プロピレン系共重合体60〜90重量%、低密度ポリエチレン40〜10重量%からなることを特徴とする。
【0012】
また、好ましくは、本発明の表面保護フィルムは、前記粘着層の表面粗さがJIS B0601−1994に規定される算術平均粗さ(Ra)として0.3μm以上であって、かつ、前記背面層の表面粗さが前記算術平均粗さ(Ra)で0.8μm以上からなることを特徴とするものである。
【0013】
更に好ましくは、前記プロピレン系共重合体の230℃、荷重2.16kg/cm下でのメルトフローレート(以下230℃下MFRと称す)が5〜40g/10分の範囲であって、かつ、低密度ポリエチレンの190℃、荷重2.16kg/cm下でのメルトフローレート(以下190℃下MFRと称す)が0.5〜5g/10分であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の表面保護フィルムは、前記粘着層と背面層との間にポリオレフィン系樹脂から主としてなる中間層を有することを特徴とするものである。
【0015】
また、好ましくは、前記中間層が、前記粘着層及び背面層を構成する樹脂とは異なるポリオレフィン系樹脂と前記粘着層構成樹脂及び背面層構成樹脂との混合樹脂組成からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記課題を解決し、表面が粗面な被着体に対しても適度な粘着特性を有し、かつ、背面の滑り性に優れ、耐ブロッキング性、巻き出し特性(巻出張力を減少させ、被着体との貼り合わせの際にもシワや傷が入ることなく、容易にかつ高速に貼り合わせ加工が可能)にも優れた表面保護フィルムを再現性よく提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明は、前記課題、つまり、表面が粗面な被着体に対しても適度な粘着特性を有し、かつ、背面の滑り性に優れ、耐ブロッキング性、巻き出し特性(巻出張力を減少させ、被着体との貼り合わせの際にもシワや傷が入ることなく、容易にかつ高速に貼り合わせ加工が可能)にも優れた表面保護フィルムについて、鋭意検討し、特定の樹脂組成からなる粘着層と特定の樹脂組成からなる背面層の複合形態とし、粘着層をも粗面化することにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0018】
先ず、本発明の粘着層の要件は次の通りである。本発明の粘着層にはオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶 ブロックコポリマー(以下CEBCと略記する)が65〜90重量%含有されることが必要であり、オレフィン結晶ブロックとしては、1,2ビニル構造が25重量%以下に制御されたポリブタジエンブロックであり、エチレンブチレンブロックとしては、1,2ビニル構造が25〜95重量%に制御されたポリブタジエンブロックが好ましい。具体的なブロックコポリマーとしては、JSR(株)製商品名「DYNARON(登録商標)6200P」が挙げられる。
【0019】
また、上記粘着層には、プロピレン系共重合体30〜4重量%、及び低密度ポリエチレン15〜1重量%部が含有されることが必要である。
【0020】
かかる粘着層を前記樹脂組成とすることにより、粘着層を粗面化させ(後述する粘着層の表面粗さがJIS B0601−1994に規定される算術平均粗さ(Ra)として0.3μm以上)、加えて、背面層の粗面化(背面層の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で0.8μm以上)との相乗効果を発現させることにより、表面が粗面な被着体に対しても適度な粘着特性を有し、かつ、背面を離型処理等施すことなく、はじめて、背面の滑り性に優れ、耐ブロッキング性、巻き出し特性などの取り扱い性にも優れた表面保護フィルムを可能ならしめたものである。
【0021】
尚、上記CEBCの含有量は、65〜90重量%の範囲に規定され、かかる範囲内においては、被着体の表面状態(粗面度)に合わせ適正な密着性が得られるよう適宜選択すればよいが、70〜90重量%の範囲が好ましい。CEBCの含有量が65重量%未満では、表面が粗面な被着体に対しての粘着力が不足し、一方、90重量%を越えると、巻き出しの際のブロッキングによる巻き出し困難な問題が生じる。
【0022】
前記プロピレン系共重合体は、エチレン及び/又はα−オレフィンとプロピレンとの共重合体であるが、エチレン及びα−オレフィンのコモノマ含有量は1〜9モル%の範囲であれば特に限定されないが、後述する溶融共押出法にて製膜するに際し、該コモノマ含有量が多くなる程、該共重合体の融点を低下せしめることができ、共押出の容易さ、低温押出可能なことから、該コモノマ含有量は3〜7モル%の範囲がより好ましい。
【0023】
尚、該コモノマであるα−オレフィンとしては、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オプテン−1などを挙げることができ、該共重合体としては、エチレン−プロピレン・コポリマ、ブテン−プロピレン・コポリマ、エチレ・ブテン−プロピレン・ターポリマを好ましく挙げることができる。中でもエチレン−プロピレン・コポリマが好ましい。
【0024】
また、前記プロピレン系共重合体の230℃下MFRは5〜40g/10分の範囲が好ましい。特に、該MFRは20〜40g/10分が低温押出できることからより好ましい。
【0025】
尚、前記プロピレン系共重合体の粘着層における割合は、30〜4重量%の範囲に規定される。該プロピレン系共重合体の割合が多くなると、被着体が粗面の場合に、密着性が低下し、適正な粘着力が得られなくなる。逆に少ないと、フィルム同士がブロッキングし易くなり、巻き出し特性に劣る。かかるプロピレン−エチレン及び/又はα−オレフィン共重合体の粘着層における割合は、24〜8重量%の範囲がより好ましい。
【0026】
また、本発明の表面保護フィルムの粘着層は、前記CEBC、及びプロピレン系共重合体に加え、低密度ポリエチレンが15〜1重量%含有されてなることを骨子とするものであるが、かかる低密度ポリエチレンの割合が少ないと、粘着層表面が平滑となり、逆に多いと所望の粘着特性が得られ難くなるのみならず、粘着層が粗面化しすぎたり、局所的に凹凸が生じたりする懸念がある。好ましくは、6〜2重量%の範囲である。
【0027】
なお、粘着層に含有されるププロピレン系共重合体と低密度ポリエチレンの含有比率は7:3から9:1の範囲が好ましい。
【0028】
かかる低密度ポリエチレンの190℃下MFRは0.5〜5g/10分の範囲のものが好ましく、該低密度ポリエチレンの190℃下MFRと前記プロピレン系共重合体の230℃下MFRの差が大きい程(例えば、差が10g/10分以上、好ましくは20g/10分以上)、粗面化効果が顕著に発現されるためより好ましい。
【0029】
かかる樹脂構成によって形成される本発明の粘着層の表面粗度は、JIS B0601−1994に規定される算術平均粗さRaとして0.3μm以上あることが好ましい。粘着層の表面粗さRaが大きい程、背面層の粗面化と相まってブロッキング性が改善され、より好ましくはRa0.35μm以上である。更には、最大粗さRyが1.8μm以上あることがより好ましい。
【0030】
次に本発明の背面層の要件は次の通りである。本発明の背面層は、プロピレン系共重合体60〜90重量%と、低密度ポリエチレン40〜10重量%から構成されるが、かかるプロピレン系共重合体は前記の如く、エチレン含有量が多くなる程、該共重合体の融点を低下せしめることができ、共押出の容易さ、低温押出可能なことから、コモノマ含有量としては3〜7モル%の範囲がより好ましい。尚、背面層に耐熱性を付加したい場合は、かかるコモノマ含有量を少なくし、所望の耐熱性を得られるよう適宜選定することもできる。
【0031】
また、前記プロピレン系共重合体の230℃下MFRは5〜40g/10分の範囲が好ましい。特に、MFR20〜40g/10分の範囲のものは、低温押出でき、かつ、後述の低密度ポリエチレンと組み合わせることで背面層を粗面化し易いことから、より好ましい。
【0032】
また、背面層を構成する低密度ポリエチレンも前記の如く、190℃下MFR0.5〜5g/10分の範囲のものが好ましい。尚、本発明の低密度ポリエチレンは、密度0.910〜0.929g/cmの範囲のものが好ましく、これより密度が高くなると、金属ロールやゴムロールとの擦過に於いて、樹脂が脱落し易く白粉発生の要因ともなり、また、低い場合は、所望する表面粗さが得られ難くなる。
【0033】
かかるプロピレン系共重合体及び低密度ポリエチレンは、前記粘着層を構成するものと同一であっても、異なるものであってもよいが、同一樹脂を用いる方が使用する樹脂の種類が少なくなることから好ましい。
【0034】
かかる樹脂構成によって形成される本発明の背面層の表面粗度は、JIS B0601−1994による算術平均粗さRaが0.8μm以上あることが好ましい。背面層の表面粗度Raが大きい程、粘着層の粗面化と相まってブロッキング性が改善され、より好ましくはRa1.0μm以上である。また、最大粗さRyが5.0μm以上あると更に好ましい。
【0035】
次に、本発明の複合形態は以下の通りである。
【0036】
本発明の表面保護フィルムは、少なくとも前記粘着層と背面層の複合形態からなるが、該粘着層と背面層との2層積層フィルムであってもよく、かかる場合、背面層は基材層と呼び変えても差し支えないが、より好ましくは、前記粘着層と背面層との間にポリオレフィン系樹脂から主としてなる中間層を有した3層積層フィルムの構成となすことが好ましい。
【0037】
かかる中間層を主として構成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(ランダム共重合体及び/又はブロック共重合体)、α−オレフィン−プロピレン共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−n−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げることができる。これらは単独で用いられても併用されてもよい。なお、前記α−オレフィンとしては、プロピレンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ペンテン−1、ヘプテン−1等が挙げられる。なかでも、前記粘着層及び背面層を構成する樹脂とは異なる種類のポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0038】
本発明の表面保護フィルムにおいて、上記中間層は、上述のポリオレフィン系樹脂に粘着層構成樹脂及び/又は背面層構成樹脂を添加・混合して用いてもよい。一般に溶融共押出法で製膜した場合、端部の厚み不均一な部分はスリット工程等でスリットされ、除却されているが、かかる部分を中間層に用いることで、使用原料の量を低減でき、好ましい方法である。
【0039】
なお、中間層には、その物性を阻害しない範囲内において、タルク、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム等の充填剤や滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、造核剤等を適宜添加してもよい。また、これらを単独もしくは2種類以上併用して添加しても良い。
【0040】
また、背面にエンボス加工等を施したり、顔料添加による着色のみならず、必要に応じ印刷することもできる。
【0041】
さて、本発明の表面保護フィルムの製造方法について説明する。
本発明の表面保護フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、背面層構成樹脂として、プロピレン系共重合体60〜90重量%と低密度ポリエチレン40〜10重量%からなる混合樹脂組成物と、粘着層構成樹脂として、CEBC65〜90重量%とプロピレン系共重合体30〜4重量%と低密度ポリエチレン15〜1重量%からなる混合樹脂組成物と、更に好ましくは、中間層構成樹脂として、主としてポリオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物とをそれぞれ個別の押出機から溶融押出し、口金内で積層一体化せしめ、所謂3層共押出することにより背面層、中間層、粘着層とを積層一体化して成形した後、コイル状に巻取ることにより、表面保護フィルムを製造する方法、上記背面層、中間層、粘着層をそれぞれ個別に溶融押出した後に、ラミネート法により上記粘着層を背面層及び/又は中間層に積層一体化する方法等が挙げられる。なお、前者においては、インフレーション法、Tダイ法等の公知の方法が用いられ、後者においては、ドライラミネーションあるいはTダイによる溶融押出法又は押出コーティング法を用いることができるが、厚み精度に優れること及び表面形状の制御の面から、Tダイ法による熱溶融共押出法が品質上、経済上の点から好ましい。
【0042】
本発明の表面保護フィルムの厚みは、被着体の厚み及び被着体の要求品質レベルにより異なるが、一般的には成形性、使いやすさの観点から20〜100μmの範囲で適宜選択できる。
なお、粘着層、中間層、背面層、それぞれ各層の厚みも上記記載の如く、要求レベルに応じて適宜調整されればよいが、一例を挙げれば、2層からなる積層フィルムにおいては、背面層は15〜80μmに、粘着剤層は5〜40μm程度に調整される。また、好ましい形態である3層積層フィルムにあっては、背面層は2〜10μmに、中間層13〜70μm、粘着剤層は5〜40μmに調整される。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例、比較例の「部」及び「%」は、特に断らない限り重量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び評価方法を以下に示す。
【0044】
・ 表面粗さ
表面粗さは、(株)東京精密製の表面粗さ形状測定機(サーフコム1400A)を用い、JIS B0601−1994に準拠し、カットオフ値(λc)0.8mm、基準長さ(L)0.8mm、フィルム横方向に測定長さ4mmで、長手方向(マシン方向)に約1mm間隔で10回測定して平均し、算術平均粗さ(Ra)及び、最大粗さ(Ry)をそれぞれ求めた(単位はμm)。
【0045】
(2)試料サンプルの貼り付け
温度23℃、湿度50%の条件下で24時間、保管・調整した実施例及び比較例の試料サンプルを被着体に、ロールプレス機((株)安田精機製作所製特殊圧着ローラ)を用い、貼込圧力9,100N/m、貼込速度300cm/分で貼り付けた。しかる後、温度23℃、湿度50%条件下で24時間保管した後、各測定と評価に用いた。
【0046】
(3)粘着力
引張試験機((株)オリエンテック“テンシロン”万能試験機)を用い、引張速度300mm/分、剥離角度180°にて粘着力を測定した。
【0047】
(4)密着性
被着体と試料サンプルの密着状態を肉眼観察し、次の判定を行った。
【0048】
○:完全に密着している
△:ごく1部が密着不良で試料フィルムが1部(面積比30%以内)浮いている
×:面積比70%以上の部分でフィルムが被着体から浮いている
(5)汚染性
被着体より試料フィルムを剥がした後、暗室内で被着体表面にスポット光を当てて、表面の汚染状態を肉眼観察し、次の判定を行った。
【0049】
○:汚染なし
△:軽度の汚染がある
×:汚染している。
【0050】
実施例1〜3
各層の構成樹脂を次のように準備した。
【0051】
粘着層樹脂としては、CEBC(JSR(株)製 商品名「DYNARONTM6200P」、樹脂1と表記する)65重量%、230℃下MFR30g/10分のエチレン含有量5重量%のエチレン−プロピレン・コポリマ(樹脂2と表記する)28重量%及び190℃MFR2g/10分、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレン(樹脂3と表記する)7重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合した(実施例1)。
【0052】
実施例1と同様に、CEBC80重量%、エチレン−プロピレン・コポリマ16重量%及び低密度ポリエチレン4重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合した(実施例2)。
【0053】
実施例1と同様に、CEBC90重量%、エチレン−プロピレン・コポリマ8重量%及び低密度ポリエチレン2重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合した(実施例3)。
【0054】
背面層樹脂としては、230℃下MFR30g/10分のエチレン含有量5重量%のエチレン−プロピレン・コポリマ88重量%及び190℃MFR2g/10分、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレン12重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合した(実施例1)。
【0055】
実施例1と同様に、エチレン−プロピレン・コポリマ80重量%、低密度ポリエチレン20重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合した(実施例2、3)。
【0056】
次に、上記準備した各層用樹脂(実施例1、2、3)を用い、φ90mm(粘着層用)とφ115mm(背面層用)の2台の押出機を有する口金幅2400mmのTダイ型複合製膜機を用い、上記準備した樹脂組成物をそれぞれの押出機に導入し、粘着層厚み比率30%、背面層厚み比率70%となるよう各押出機の吐出量を調整し、複合Tダイから押出温度200℃にて押出し、各々フィルム厚み50μmの2層積層フィルムを製膜し、一旦、ロール状に巻き取った。
【0057】
次いで、ロール状に巻き取ったフィルムを、スリット機に掛けて幅1000mm、長さ600mのサイズに仕上げ、実施例1、実施例2及び実施例3のロール状に巻き上げたフィルムサンプルを得た。
【0058】
こうして得られた実施例1〜3のフィルムは、スリット機にて所定幅の製品を得る際にも、離型処理等の処理を施す必要もなく、何ら抵抗なく容易にスリット機へ送り出す(巻き出す)ことができ、ブロッキングは全く認められなかった。ブロッキングが生じていると、粘着層と背面層とが剥離される際に、ベリベリと剥離音がするが、かかる剥離音もなく、非常にスムーズに巻き出されていることが確認された。
【0059】
得られた実施例1〜3のフィルムの特性を評価するため、サンプルカットのためフィルムを巻き戻しても、上記同様、全くブロッキングは認められず、スムーズに巻き戻しでき、カットサンプルを得ることができた。
しかる後、該試料サンプルを用い、各種特性を評価した結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
ここで、粘着特性−1は被着体として、表面粗さ(Ra)0.6μm、厚さ2.0mmのポリカーボネート板を用い、粘着特性を評価したものである。
【0062】
また、粘着特性−2は被着体を平滑な(Ra0.02μm)、厚さ2.0mmのポリカーボネート板に代え、粘着特性を評価したものである。
実施例4
粘着層樹脂としては、実施例2と同一の樹脂組成物を使用した。背面層樹脂としては、実施例2および実施例3に用いた背面層樹脂組成物と同一の樹脂組成物を準備した。中間層樹脂としては、実施例2の粘着層樹脂20重量%、および実施例2の背面層樹脂5重量%、および230℃下MFRが7.5g/10分のホモポリプロピレン(樹脂4と表記する)75重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合した。次いで、3台の押出機を有する3層複合製膜機を用い、各層の樹脂組成物をそれぞれの押出機に導入し(各押出温度190℃)、粘着層厚み比率25%、中間層厚み比率67%、背面層厚み比率8%に各押出機の吐出量を調整した後、複合Tダイから押出し、フィルム厚み40μmの3層積層フィルムを製膜、一旦、ロール状に巻き取った。しかる後、一旦ロール状に巻き取ったフィルムを、スリット機に掛けて幅1000mm、長さ1000mのサイズに仕上げ、ロール状に巻き上げたフィルム製品を得た。
【0063】
実施例1〜3と同様、スリット機にて所定幅の製品を得る際、何ら抵抗なく容易にスリット機へ送り出す(巻き出す)ことができ、ブロッキングは全く認められなかった。得られたロール状のフィルム製品を巻き戻し、ブロッキング性を確認したが、全くブロッキングは認められなかった。また、表面粗さを粘着層及び背面層それぞれにつき測定したところ、粘着層表面粗さRa0.42μm、Ry2.08μmであり、背面層表面粗さRa1.08μm、Ry5.43μmであった。被着体として、表面粗さ(Ra)0.60μm、厚さ2.0mmのポリカーボネート板を用い、粘着性を評価したところ、被着体への密着性は良好で、粘着力は0.68N/50mmであった。また、本フィルムを剥離した後、被着体の表面を観察したが、汚染は認められなかった。その他の特性評価結果も表2のとおりで問題なかった。
【0064】
【表2】

【0065】
比較例1
粘着層樹脂として、CEBC60重量%、230℃下MFR30g/10分のエチレン含有量5重量%の、エチレン−プロピレン・コポリマ32重量%、および190℃MFR2g/10分、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレン8重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合したものを使用する以外は、実施例2と同一の条件で厚さ50μmの積層フィルムを製膜し、ロール状に巻き取った。得られたフィルムにはブロッキングは認められなかったが、表面粗さRa0.60μmの粗面化したポリカーボネート板に貼り合わせたところ、浮きが生じ満足できる密着性は得られなかった(密着性判定:×)。
比較例2
粘着層樹脂として、CEBC100重量%からなる樹脂組成物を使用すること以外は、実施例2と同一の条件で厚さ50μmの積層フィルムを製膜し、ロール状に巻き取った。
【0066】
しかる後、一旦巻き取ったフィルムをスリット機に掛けるため、巻き出そうとしたところ、このフィルムは、粘着層と背面層が強固に密着・ブロッキングしており、無理に巻き出したところ、バリバリと剥離音がし、粘着層樹脂が一部背面層に捕られるばかりか、巻出張力が高すぎて、フィルムが伸びてしまった。尚、ブロッキングを避けるため、上記製膜後、ロール状に巻き取らず慎重にフィルムをサンプルリングし、フィルムの表面粗さを測定したところ、粘着層Ra0.46μm、背面層Ra1.04μmであった。

比較例3
粘着層樹脂として、CEBC80重量%、および230℃下MFR30g/10分のエチレン含有量5重量%のエチレン−プロピレン・コポリマ20重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合したものを使用する以外は、実施例2と同一の条件で厚さ50μmの積層フィルムを製膜し、ロール状に巻き取った。
【0067】
しかる後、一旦巻き取ったフィルムをスリット機に掛けるため、巻き出そうとしたところ、このフィルムは、粘着層と背面層がかなり密着・ブロッキングしており、安定して巻き出し出来なかった。尚、ブロッキングを避けるため、上記製膜後、ロール状に巻き取らず慎重にフィルムをサンプルリングし、フィルムの表面粗さを測定したところ、粘着層Ra0.27μm、背面層Ra1.05μmであった。
比較例4
粘着層樹脂として、CEBC88重量%、230℃下MFR30g/10分のエチレン含有量5重量%のエチレン−プロピレン・コポリマ2重量%、および190℃MFR2g/10分、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレン10重量%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合したものを使用する以外は、実施例2と同一の条件で厚さ50μmの積層フィルムを製膜し、ロール状に巻き取った。
【0068】
しかる後、一旦巻き取ったフィルムをスリット機に掛けるため、巻き出そうとしたところ、このフィルムは、粘着層と背面層にブロッキングが認められるため、不安定な巻き出し状態となった。
【0069】
尚、ブロッキングを避けるため、上記製膜後、ロール状に巻き取らず慎重にフィルムをサンプルリングし、フィルムの表面粗さを測定したところ、粘着層Ra0.29μm、背面層Ra1.06μmであった。
比較例5
背面層樹脂として、230℃下MFR30g/10分のエチレン含有量5重量%のエチレン−プロピレン・コポリマ100重量%からなる樹脂組成物を使用する以外は、実施例2と同一の条件で厚さ50μmの積層フィルムを製膜し、ロール状に巻き取った。
【0070】
しかる後、一旦巻き取ったフィルムをスリット機に掛けるため、巻き出そうとしたところ、このフィルムは、粘着層と背面層が強固に密着・ブロッキングしており、無理に巻き出したところ、バリバリと剥離音がし、粘着層樹脂が一部背面層に捕られるばかりか、巻出張力が高すぎて、フィルムが伸びてしまった。
【0071】
尚、ブロッキングを避けるため、上記製膜後、ロール状に巻き取らず慎重にフィルムをサンプルリングし、フィルムの表面粗さを測定したところ、粘着層Ra0.25μm、背面層Ra0.17μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の表面保護フィルムは、合成樹脂板、金属板、被覆塗装鋼板、各種銘板等の加工時や運搬時の汚れ付着防止、傷付き防止のみならず、近年、液晶ディスプレイ等の薄型ディスプレイに多用して用いられる合成樹脂からなる各種光学フィルムや光学用樹脂板の加工時や運搬時の表面の汚れや傷付きを防止するための表面保護フィルムとして好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粘着層と背面層からなる表面保護フィルムであって、該粘着層は、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体65〜90重量%、プロピレン系共重合体30〜4重量%、及び、低密度ポリエチレン15〜1重量%からなり、該背面層は、プロピレン系共重合体60〜90重量%、低密度ポリエチレン40〜10重量%からなることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着層の表面粗さ(Ra)が0.3μm以上、かつ、前記背面層の表面粗さ(Ra)が0.8μm以上である請求項1記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記プロピレン系共重合体の230℃、荷重2.16kg/cm下でのメルトフローレートが5〜40g/10分の範囲である請求項1又は2記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記低密度ポリエチレンの190℃、荷重2.16kg/cm下でのメルトフローレートが0.5〜5g/10分である請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記粘着層と背面層との間に、主としてポリオレフィン系樹脂からなる中間層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
前記中間層が、前記粘着層及び背面層を構成する樹脂とは異なるポリオレフィン系樹脂と、前記粘着層及び/又は背面層を構成する樹脂との混合樹脂からなる組成である請求項5に記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2009−28938(P2009−28938A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193023(P2007−193023)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】