説明

表面保護用透明積層体

【課題】光透過性、表面硬度及び耐候性の全てに優れ、さらに色斑感(干渉縞)が発生しない表面保護用透明積層体を提供する。
【解決手段】ラクトン環含有重合体層を含む表面保護用透明積層体であって、前記ラクトン環含有重合体層2は、ラクトン環系構造を含む重合体を有する、表面保護用透明積層体である。また、ラクトン環含有重合体層2を挟み、透明基材層4、アクリル系重合体層1が積層状態に配置されてなる。アクリル系重合体層1はハードコート層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護用透明積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、非晶性ポリオレフィンなどの透明プラスチックフィルムは、ガラスと比べて、軽量で割れにくく、曲げやすいといった性質を持つため、窓貼り用フィルムなどの基材として用いられている。なかでも、二軸延伸ポリエステルフィルムなどの熱可塑性フィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、耐熱性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有し、また、汎用性が高く、コストメリットの点でも有利である。
【0003】
しかし、二軸延伸ポリエステルフィルムなどの熱可塑性フィルムそれ自体は、表面硬度や耐摩耗性の点で実用レベルにおいて十分な素材とはいえない。そのため、フラットパネルディスプレイの保護フィルムや反射防止フィルム、タッチパネル、表示板、銘板や窓貼りフィルムなど、物品の表面に貼付される用途においては、鋭利な物体との接触や摩擦などによって表面に損傷を受けやすい。
【0004】
そこで、二軸延伸ポリエステルフィルムなどの熱可塑性フィルムの表面にハードコート層を設け、耐スクラッチ性、耐摩耗性を向上させる発明が開示されている(特許文献1)。かかるハードコート層として、硬度や耐久性、生産性の点でアクリル系重合体を主成分とするハードコートが好適に用いられている。
【0005】
また、二軸延伸ポリエステルフィルムなどの熱可塑性フィルムには耐候性がないため、かかる欠点を解消するため、アクリル系重合体を主成分とする紫外線吸収層を二軸延伸ポリエステルフィルムなどの熱可塑性フィルム上に積層する発明が開示されている(特許文献2、3)。
【特許文献1】特開2000−214791号公報
【特許文献2】特開2001−232730号公報
【特許文献3】特開平11−115107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、二軸延伸ポリエステルフィルムなどの熱可塑性フィルム(透明基材層)とハードコート層や紫外線吸収層などのアクリル系重合体を主成分とする層(アクリル系重合体層)との間には相当な屈折率の差が存在する。そのため、当該透明基材層とアクリル系重合体層との界面で干渉が生じ、得られるフィルムの表面に色斑感が発生するという問題がある。
【0007】
また、最近では、窓貼り用フィルムなどの硬度や耐候性の向上に注目が集まっており、光透過性、表面硬度及び耐候性の全てに優れた窓貼りフィルムなどが求められている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、光透過性、表面硬度及び耐候性の全てに優れ、さらに色斑感(干渉縞)が発生しない表面保護用透明積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ラクトン環系構造を含む重合体の含有層を、当該透明基材層と当該アクリル系重合体層との間に積層させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、ラクトン環含有重合体層を含む表面保護用透明積層体であって、前記ラクトン環含有重合体層は、ラクトン環系構造を含む重合体を有する、表面保護用透明積層体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による表面保護用透明積層体は、光透過性、表面硬度及び耐候性の全てに優れ、さらに、色斑感(干渉縞)が発生しないため、外観にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の表面保護用透明積層体は、ラクトン環含有重合体層を含む表面保護用透明積層体であって、前記ラクトン環含有重合体層は、ラクトン環系構造を含む重合体を有する。そして、前記ラクトン環系構造を含む重合体は、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構造を有しうる。好ましくは、透明基材層、ラクトン環含有重合体層及びアクリル系重合体層が積層状態に配置されてなる。以下、各構成要件について、詳細に説明する。
【0013】
<ラクトン環含有重合体>
ラクトン環含有重合体層(以下、「ラクトン環含有重合体フィルム」とも称する)は、ラクトン環系構造を含む重合体により形成される。なお、以下において、前記重合体を「ラクトン環含有重合体」と指称することもある。ラクトン環含有重合体フィルムは、フッ素系やポリエステル系のフィルムに比べて表面硬度が高いが、ラクトン環構造が存在することにより、さらに表面硬度が向上する。さらに、ラクトン環構造が存在することにより、耐熱性が大きく向上する。したがって、本発明によるラクトン環含有重合体フィルムを表面保護用透明積層体に用いた場合には、表面硬度、および耐熱性に優れた表面保護用透明積層体を得ることができる。
【0014】
ラクトン環は、ヒドロキシ酸の水酸基とカルボキシル基との間で分子内脱水され、環状エステルの形成された環状構造体である。(メタ)アクリレート系単量体との重合性の観点より、前記ラクトン環系構造は、好ましくは下記一般式(1)で表される。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0017】
炭素数1〜20の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基もしくは2−エチルヘキシル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基;ビニル基もしくは2−プロペニル基などの不飽和脂肪族炭化水素基;あるいは、フェニル基もしくはナフチル基などの炭素数1〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素基は1種単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。置換基を有していてもよい炭化水素基は、好ましくは、炭化水素基中の水素原子の一以上が、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜8のエーテル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数1〜8のエステル基で置換された基である。
【0018】
好ましくはR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子;炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;水酸基を有する炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基であり、より好ましくは、R及びRが独立して、水素原子、炭素数1〜20の直鎖のアルキル基であり;Rは、水素原子、一の水素原子が水酸基に置換された炭素数1〜20の直鎖のアルキル基であり、さらに好ましくは、Rが水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基;及び、Rがメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基;Rが水素原子、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、メチル基、エチル基である。
【0019】
前記重合体に対して、一般式(1)で表される前記ラクトン環系構造の単位は、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは22〜48質量%、さらに好ましくは25〜45質量%含まれる。前記構造の単位がかような範囲である場合、得られる表面保護用透明積層体は、光透過性、表面硬度及び耐候性、特に光透過性及び表面硬度に優れたものとなりうる。なお、前記重合体に対する、前記ラクトン環系構造の単位の含有率の測定方法については、後述の実施例の「脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合」の項において説明する。
【0020】
なお、前記重合体に対する、前記ラクトン環系構造の含有率は、ラクトン環系構造の割合が70質量%以下の場合には、後述の実施例の方法によって算出される。
【0021】
重合体中に式(1)で表されるラクトン環を形成させるための一例としては、重合工程において、下記式(3)で表される単量体を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得た後、環化縮合反応を行うことによって得られる。
【0022】
【化2】

【0023】
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基であることがより好ましい。
【0024】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基または2−エチルヘキシル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基;ビニル基または2−プロペニル基などの不飽和脂肪族炭化水素基;あるいは、フェニル基またはナフチル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。置換基を有していてもよい炭化水素基とは、好ましくは、炭化水素基の水素原子のうち一以上が、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、または炭素数1〜8のエステル基で置換された基である。好ましくは、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子;炭素数が1〜20の直鎖のアルキル基である。また、より好ましくは、Rがメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基;Rが水素原子、メチル基である。
【0025】
式(3)で表される単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸sec−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル;2−(1−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸メチル、2−(1−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸エチル、2−(1−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸イソプロピル、2−(1−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸ノルマルプロピル、2−(1−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸ノルマルブチル、2−(1−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸イソブチル、2−(1−ヒドロキシエチル)アクリル酸sec−ブチル、2−(1−ヒドロキシエチル)アクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。なかでも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が大きい点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルがより好ましい。上記式(3)で表される単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
重合工程に供給される単量体成分中、上記式(3)で表される単量体の含有率は、好ましくは10〜40質量%である。重合工程に供給される単量体成分中、上記式(3)で表される単量体の含有率が10質量%以上であれば、得られる重合体を含むラクトン環含有重合体層を備えた透明積層体は、光透過性、表面硬度及び耐候性に十分優れ、色斑感(干渉縞)の発生も効果的に抑制することができる。また、上記式(3)で表される単量体の含有率が40質量%以下であれば、重合の際に、ラクトン環化反応に起因するゲル化の発生や、得られる重合体の成形加工性の低下を抑制することができる。また、より好ましくは15〜35質量%、さらに好ましくは15〜30質量%であり、(メタ)アクリレート系単量体由来の構造の含有割合がかような範囲であると、耐熱性、生産性及び成形性の点で好適となりうる。
【0027】
重合体中、好ましくは(メタ)アクリレート系単量体由来の構造を有する。「(メタ)アクリレート系単量体由来の構造」とは、(メタ)アクリレート系単量体を重合して構築される重合体中の構造単位(繰り返し構造単位)を意味する。
【0028】
(メタ)アクリレート系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸及び/またはそれらの誘導体である。(メタ)アクリレート系単量体の好ましい具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;2−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、2−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの水酸基含有単量体;上記式(3)で表される単量体などが挙げられる。これらの単量体は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。なかでも、メタクリレートであることが好ましく、重合して得られる重合体が熱安定性に優れる点でメタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジルがより好ましい。
【0029】
前記重合体を含むラクトン環含有重合体層を備えた表面保護用透明積層体は、窓貼りフィルムなどに使用されるため、前記重合体は耐熱性(熱安定性)に優れていることが好ましい。
【0030】
ラクトン環含有重合体中の(メタ)アクリレート系単量体由来の構造の単位は、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは65〜85質量%、さらに好ましくは70〜85質量%含まれる。前記(メタ)アクリレート系単量体由来の構造の単位がかような範囲であると、硬度、耐候性、耐熱性、成形性及び生産性の点で好ましい。
【0031】
前記重合体は、ラクトン環系構造、好ましくは(メタ)アクリレート系単量体由来の構造の単位以外の構造単位(その他の構造単位)を含んでいてもよい。前記その他の構造単位として、ラクトン環構造を形成するための単量体(好ましくは式(3)で表される単量体)及び/または(メタ)アクリレート系単量体と結合し、重合しうるものであれば、特に制限されることはない。ラクトン環構造を形成するための単量体及びアクリル酸系単量体と重合しうる単量体として、具体的には、α−ヒドロキシメチルスチレン及びα−ヒドロキシエチルスチレンなどの水酸基含有単量体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸;並びに、下記一般式(2)で表される単量体由来の構造が好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、または−C−O−R基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R及びRは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基を表す。前記置換基を有していてもよい炭化水素基は、式(1)の欄で説明したものと同様であるため、ここでは省略する。
【0034】
前記重合体中の、その他の構造の含有率は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0035】
前記重合体は、重量平均分子量が好ましくは20,000〜1,000,000、より好ましくは50,000〜500,000、さらに好ましくは100,000〜300,000である。なお、本発明において、重量平均分子量は、後述の実施例で示される方法・条件により算出される。
【0036】
本発明で用いられるラクトン環含有重合体の製造方法については特に限定されず、例えば、特開2006−96960号公報、特開2007−297619号公報などに記載の公知の製造方法が採用されうる。好ましくは、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体の中間体を得た(重合工程)後に、得られた重合体の中間体を加熱処理してラクトン環構造を重合体に導入すること(ラクトン環化縮合工程)により得られる。
【0037】
重合工程において供する単量体成分には、さらに上記式(3)で表される単量体以外の(メタ)アクリレート系単量体が用いられる。このような単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリレート系単量体が挙げられる。上記式(3)で表される単量体以外の単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、式(3)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであれば、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられ、これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に耐熱性、透明性が優れる点から、(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルまたは(メタ)アクリル酸ベンジルがより好ましく、メタクリル酸メチルがさらに好ましい。
【0039】
水酸基含有(メタ)アクリレート系単量体としては、上記式(3)で表される単量体以外の水酸基含有単量体であれば、特に限定されないが、例えば、2−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロペン酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等が挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0040】
上記(メタ)アクリレート系単量体の、重合工程に供する単量体成分中の含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは65〜85質量%、更に好ましくは70〜85質量%である。
【0041】
さらに、単量体成分として、式(3)で表される単量体、及び好適に含まれる式(3)で表される単量体以外であって(メタ)アクリレート系単量体と重合可能な単量体を用いてもよい。
【0042】
他の重合可能な単量体として、α−ヒドロキシメチルスチレンもしくはα−ヒドロキシエチルスチレンなどの水酸基含有単量体;クロトン酸などの不飽和カルボン酸;または、上記式(2)で表される単量体が挙げられる。上記式(2)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレンまたは酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン及び/またはα−メチルスチレンが好ましい。上記式(2)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供給される単量体成分中の含有率は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0043】
単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を用いた重合形態であることが好ましく、溶液重合がより好ましい。
【0044】
重合温度及び重合時間は、使用する単量体の種類やその使用比率などによって異なるが、好ましくは重合温度が50〜150℃であって重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは重合温度が80〜140℃であって重合時間が1〜10時間である。
【0045】
上記した溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンもしくはエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;または、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。前記重合溶剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、使用する溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られる重合体(ラクトン環を含有する重合体)の残存揮発分が多くなることから、沸点は50〜200℃のものが好ましい。
【0046】
重合反応時には、必要に応じて重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、t−アミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシアセテート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドもしくはt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどの有機過酸化物;または、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)もしくは2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されることはない。また、重合体の分子量制御に連鎖移動剤を用いてもよく、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタンもしくはドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、またはα−スチレンダイマーなどが挙げられる。
【0047】
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物に対する生成した重合体の濃度が70質量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物に対する、該混合物中の生成した重合体の濃度が70質量%を超えるような場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して70質量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物に対する生成した重合体の濃度は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。なお、重合反応混合物に対する生成した重合体の濃度が上記した範囲内の場合、生産性を向上させることができる。重合反応混合物に対する生成した重合体の濃度の下限について言及すると、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0048】
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化を一層十分に抑止することができる。特に、ラクトン環の含有率を高めて耐熱性を向上させるために分子鎖中の水酸基及びエステル基の割合を高めた場合であってもゲル化を十分に抑制できる。添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤としては、1種単独の溶剤であってもよいし、2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0049】
以上の重合工程が終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれている。しかし、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で続くラクトン環化縮合工程に導入することが好ましい。また、場合によっては、固体状態で取り出した後で、続くラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
【0050】
重合工程で得られた重合体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体の中間体(以下、「重合体A」ともいう)であり、重合体Aの重量平均分子量は、好ましくは25,000〜1,500,000、より好ましくは55,000〜550,000、さらに好ましくは120,000〜400,000である。重合工程で得られた重合体Aは、続くラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることによりラクトン環構造が重合体Aとして形成され、ラクトン環含有重合体となる。
【0051】
すなわち、式(3)で表される単量体同士、または式(3)で表される単量体および式(3)で表される単量体以外の(メタ)アクリレート系単量体が重合されることにより、重合体中に下記構造単位が含まれることとなる。換言すれば、式(3)は、重合体の構成単位、及び重合体Aの構成単位のいずれをも示すものといえる。
【0052】
【化4】

【0053】
そして、環化縮合工程を経ることによって、下記式(I)で表される構造となる。
【0054】
【化5】

【0055】
すなわち、重合体中には、上記構成単位が含まれる。なお、上記構造単位中、Rは式(3)中のR、水素原子、またはアクリル酸系単量体を形成するエステル基中の置換されてもよいアルキル基を指す。
【0056】
以下、ラクトン環化縮合工程について詳説する。重合体Aへラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体Aの分子鎖中に存在する水酸基とエステル基またはカルボキシル基が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールまたは水が副生する。ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を形成するラクトン環化縮合反応(以下、単に「環化縮合反応」ともいう)の反応率が十分であれば、耐熱性が十分に向上し、また、成形時の加熱処理によって成形途中で縮合反応が起こることにより、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在してしまったりするような事態を抑制できる。
【0057】
ラクトン環化縮合工程において得られるラクトン環含有重合体は、好ましくは上記式(1)で表されるラクトン環構造を有する。
【0058】
重合体Aを加熱処理する方法については特に限定されず、例えば、公知の方法を利用でき、重合工程によって得られた溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置または脱揮装置を備えた加熱炉または反応装置、あるいは脱揮装置を有する押出機などを用いて加熱処理を行ってもよい。
【0059】
環化縮合反応を行う際に、重合体Aに加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸またはメタクリル酸などの有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。また、塩基性化合物、有機カルボン酸塩または炭酸塩などを用いてもよい。塩基性化合物、有機カルボン酸塩または炭酸塩などを用いる場合には、特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に開示された内容が参照により本願に採用されうる。
【0060】
ラクトン環化縮合反応を行う際には、有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。有機リン化合物を触媒として用いる場合は、特開2001−151814号公報に開示された内容が参照により本願に採用されうる。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合の反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。さらに、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合に生じうる分子量の低下を抑制することができ、重合体に優れた機械的強度を付与することができる。
【0061】
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、重合体Aに対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。触媒の使用量が0.001質量%以上であれば、環化縮合反応の反応率の向上を十分に図ることができ、一方、5質量%以下であれば、着色を抑え、かつ、重合体の架橋による溶融賦形が促進されうる。
【0062】
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両時において添加してもよい。
【0063】
環化縮合反応を溶剤の存存下で行い、かつ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、または、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体に亘っては併用せず、過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に進み、有利となる。
【0064】
上記脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールとを、必要により減圧加熱条件下で除去処理する工程をいう。かかる除去処理が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質などによって着色したり、泡やシルバーストリークなどの成形不良が生じうる。
【0065】
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、使用する装置については特に限定されないが、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、また、上記脱揮装置と上記押出機を直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置またはベント付き押付機を用いることがより好ましい。
【0066】
上記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場分の反応処理温度は、150〜350℃が好ましく、200〜300℃がより好ましい。反応処理温度が150℃以上であると、環化縮合反応が十分に進行して残存揮発分を最小限に抑えることができ、350℃以下であると、着色や分解を抑制することができる。
【0067】
上記熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置を用いる場合の反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)が好ましく、798〜66.5hPa(600〜50mmHg)がより好ましい。上記圧力が1.33hPa以上であれば、アルコールを含めた揮発分が残存し難くなり、一方、931hPa以下であれば、工業的な実施を容易に実施することができる。
【0068】
上記ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
【0069】
上記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃が好ましく、200〜300℃がより好ましい。上記温度が150℃以上であれば、環化縮合反応が十分に起こって残存揮発分を最小限に抑えることができ、350℃以下であれば、着色や分解を抑制することができる。
【0070】
上記ベント付き押出機を用いる場合の、反応処埋時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)がより好ましい。上記圧力が1.33hPa以上であれば、アルコールを含めた揮発分が残存し難くなり、931hPa以下であれば、工業的な実施を容易に実施することができる。
【0071】
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件下では、得られる重合体の物性が悪化する虞があるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
【0072】
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体Aを溶剤とともに環化縮合反応装置系に導入するが、この場合、必要に応じて再度、ベント付き押出機等の上記反応装置系に通してもよい。
【0073】
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体に亘っては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行ってもよい。例えば、前記重合体Aを製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応をあらかじめある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
【0074】
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、前記重合体Aを、二軸押出機を用いて、250℃程度、またはそれ以上の高温で熱処理する際、熱履歴の違いによって、環化縮合反応が起こる前に一部分解などが生じ、得られる重合体の物性が悪くなる虞がある。そこで、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う前に、あらかじめ環化縮合反応をある程度進行させておくと、環化縮合反応の後半における諸条件を緩和でき、得られる重合体の物性の悪化を抑制できるので好ましい。特に好ましい形態としては、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態である。すなわち、重合工程で得られた重合体Aの分子鎖中に存在する水酸基及びエステル基をあらかじめ環化縮合反応させた環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。具体的には、例えば、あらかじめ釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置のついた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機などで、環化縮合反応を完結させる形態が挙げられる。特にこの形態の場合、環化縮合反応の触媒が存在していることがより好ましい。
【0075】
上述のように、重合工程で得られた重合体Aの分子鎖中に存在する水酸基及びエステル基をあらかじめ環化縮合反応させることにより環化縮合の反応率をある程度上げておき、引き続いて、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、本発明による重合体を得る上で好ましい形態である。かかる形態により、ガラス転移温度がより高く、環化縮合の反応率もより上昇し、耐熱性に優れた重合体が得られる。
【0076】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前にあらかじめ行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は特に限定されないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置等が挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機も使用できる。より好ましくは、オートクレーブまたは釜型反応器である。しかしながら、ベント付き押出機等の反応器を使用するときでも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュー形状、スクリュー運転条件などを調整することで、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
【0077】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前にあらかじめ行う環化縮合反応の際には、好ましくは、重合工程で得られた重合体Aと溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)触媒を添加せずに加熱反応させる方法、あるいは上記(i)または(ii)を加圧下で行う方法が挙げられる。
【0078】
なお、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体Aと溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、一旦溶剤を除去した後に環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
【0079】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前にあらかじめ行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンもしくはエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンなどのケトン類:または、クロロホルム、ジメチルスルホキシド(DMSO)もしくはテトラヒドロフランなどが挙げられる。好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤が挙げられる。
【0080】
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒もしくはエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、または炭酸塩などが挙げられるが、本発明においては、上述の有機リン化合物を用いることが好ましい。
【0081】
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。添加する触媒の量は特に限定されないが、重合体Aの質量に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0082】
上記方法(i)の加熱温度と加熱時間は特に限定されないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度及び加熱時間が上記範囲内にある場合、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、樹脂の着色や分解の発生を抑制することもできる。
【0083】
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜などを用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法などが挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度及び加熱時間が上記範囲内にある場合、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、樹脂の着色や分解の発生を抑制することもできる。
【0084】
上記方法(i)及び(ii)共に、条件によっては、加圧下となっても何ら問題はない。脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応前にあらかじめ行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
【0085】
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応での前記脱揮工程の開始前における、ラクトン環構造を有する重合体についてのダイナミックTG測定において、150℃から300℃までの間の重量減少率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。重量減少率が2%以下であれば、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても、環化縮合反応率を十分に高いレベルまで上げることができ、得られる重合体の物性の低下を抑制しうる。なお、上記の環化縮合反応を行う際に、重合体Aに加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。なお、本明細書において、ダイナミックTGは、後述の実施例に示された測定方法により測定される。
【0086】
重合工程で得られた重合体Aの分子鎖中に存在する水酸基及びエステル基をあらかじめ環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態の場合、あらかじめ行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基及びエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応して得られる重合体)と溶剤とを、そのまま脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入してもよい。また、必要に応じて、上記重合体(分子鎖中に存在する水酸基及びエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応して得られる重合体)を単離してから溶剤を再添加するなど、別途の処理を経てから、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入してもよい。
【0087】
脱揮工程は環化縮合反応と同時に終了してもよく、また、環化縮合反応の終了から一定の時間をおいた後に終了させてもよい。
【0088】
また、環化触媒が用いられてもよい。しかし、触媒を添加し環化縮合反応を十分行った後にも微量の未反応の反応性基が残存し、成形時に、発泡の問題や、重合体間の架橋での増粘の問題などが生じうるため、環化縮合触媒の失活剤を添加することが好ましい。環化縮合反応には酸性触媒または塩基性触媒が用いられることが多く、その場合、失活剤は中和反応により触媒を失活させる虞がある。そのため、触媒が酸性物質である場合には、失活剤として塩基性物質を用いればよく、逆に、触媒が塩基性物質である場合には、失活剤として酸性物質を用いればよい。前記失活剤としては、熱加工時に樹脂組成物の物性を阻害する物質などを発生しない限り、特に限定されるものではないが、失活剤として塩基性物質を用いる場合には、例えば、金属カルボン酸塩、金属錯体または金属酸化物などが挙げられ、なかでも金属カルボン酸塩及び金属酸化物が好ましく、金属カルボン酸塩が特に好ましい。ここで、前記金属カルボン酸塩などに含まれる金属としては、樹脂組成物の物性を阻害せず、廃棄時に環境汚染を招くことがない限り、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムもしくはバリウムなどのアルカリ土類金属;または、亜鉛もしくはジルコニウムなどが挙げられる。金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸またはアジピン酸などが挙げられる。金属錯体における有機成分としては、特に限定されるものではないが、アセチルアセトンなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムなどが挙げられ、なかでも酸化亜鉛が好ましい。他方、失活剤として酸性物質を用いる場合には、例えば、有機リン酸化合物やカルボン酸などが挙げられる。失活剤は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、失活剤は固形物、粉末状、分散体、懸濁液や水溶液など、いずれの形態で添加してもよく、特に限定されるものではない。
【0089】
失活剤の配合量は、環化縮合に使用した触媒に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくはラクトン環含有重合体に対して、10〜10,000ppm、より好ましくは50〜5,000ppm、さらに好ましくは100〜3,000ppmである。失活剤の配合量が10ppm以上であれば、失活剤の作用としては十分であり、成形時に発泡や重合体間の架橋での増粘を抑制できる。一方、失活剤の配合量が10,000ppm以下であれば、必要以上の余分な失活剤を使用することがなく、分子量低下など、樹脂組成物の物性における阻害を抑制できる。
【0090】
失活剤を添加するタイミングは、ラクトン環含有重合体の製造にあたり、触媒を添加し環化縮合反応を十分行った後であり、かつ、得られた樹脂組成物が熱加工される前である限り、特に限定されるものではない。例えば、ラクトン環含有重合体の製造中の所定の段階で失活剤を添加するか、または、ラクトン環含有重合体を製造した後、ラクトン環含有重合体、失活剤その他の成分などを同時に加熱溶融させて混練する方法;ラクトン環含有重合体その他の成分などを加熱溶融させておき、そこに失活剤を添加して混練する方法;あるいは、ラクトン環含有重合体を加熱溶融させておき、そこに失活剤その他の成分などを添加して混練する方法などが挙げられる。上記した方法を採用する場合、熱可塑性樹脂(ラクトン環含有重合体)と失活剤とを混練した後に、脱揮工程を設けることが好ましい。得られた熱可塑性樹脂が熱加工時に発泡現象をほとんど起こさないためである。脱揮工程としては、例えば、重合体の製造に際して行う脱揮工程として挙げた、上述の脱揮工程が挙げられる。
【0091】
得られた重合体についてのダイナミックTG測定における150℃から300℃までの間の重量減少率は、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0092】
また、必要に応じて、得られたラクトン環含有重合体に、後述の紫外線吸収性物質、その他の添加剤等を混合する混合工程を行ってもよい。混合工程において行われる混合方法は、従来公知方法で行うことができ、例えば、オムニミキサー等の混合機で混合する方法が挙げられる。なお、ラクトン環含有重合体と他の添加剤等との混合は、前述の脱気工程中、あるいは後述するフィルム成形工程時に同時に行うことができる。
【0093】
<ラクトン環含有重合体層>
ラクトン環含有重合体層は、上記したラクトン環系構造を含む重合体(ラクトン環含有重合体)を必須に含む。ラクトン環含有重合体層中に、ラクトン環含有重合体は60質量%以上含まれることが好ましい。また、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含む。前記ラクトン環含有重合体の含有割合が60質量%以上であると、本発明の効果を十分に発揮しうる。さらに、その他の重合体を含んでいてもよい。その他の重合体としては、例えば、後述の紫外線吸収性樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体もしくはポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系重合体;塩化ビニルもしくは塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系重合体;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体もしくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66もしくはナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;または、ポリブタジエン系ゴムもしくはアクリル系ゴムを配合したABS樹脂もしくはASA樹脂などのゴム質重合体;などが挙げられる。前記ゴム質重合体は、表面にラクトン環含有重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有することが好ましく、また、前記ゴム質重合体の平均粒子径は、押出しフィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましい。紫外線吸収性樹脂を除く「その他の重合体」の含有率は、好ましくは0〜40質量%、より好ましくは0〜30質量%、さらに好ましくは0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0094】
後述するように、耐光性を向上させるために、ラクトン環含有重合体フィルムが紫外線吸収能を有していてもよい。すなわち、ラクトン環含有重合体フィルムは、紫外線吸収能を有する化合物(以下、「紫外線吸収性物質」ともいう)を含有していてもよい。紫外線吸収性物質としては、2−ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、フェニルサリチレートなどのサルチレート系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、トリアジン系、ベンゾエート系、及び修酸アニリド系の紫外線吸収性化合物;並びに、超微粒子酸化チタン(粒子径、0.01〜0.06μm)及び超微粒子酸化亜鉛(0.01〜0.04μm)などの無機系の紫外線吸収性化合物などが挙げられる。これらの紫外線吸収性物質の構成成分は1種単独または2種以上を混合して使用することができる。なかでも、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系の紫外線吸収性物質が紫外線吸収能に優れ、耐熱性がよく、透明性に優れ、着色が少ないため好ましい。上記した紫外線吸収性物質の構成成分の配合率は、本発明の所望の効果が発揮されるように適宜決定すればよいが、ラクトン環含有重合体フィルム中、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
【0095】
紫外線吸収性物質としては、上記紫外線吸収性物質の構成成分の他、紫外線吸収性単量体、場合によっては、(メタ)アクリル系単量体、並びに、紫外線吸収性単量体及び/または(メタ)アクリル系単量体と共重合可能なその他の単量体が共重合されてなる紫外線吸収性樹脂が挙げられる。紫外線吸収性能が高く、長時間の使用の場合に紫外線吸収性物質のブリードアウトが起こりにくいため、紫外線吸収性樹脂が紫外線吸収性物質として用いられることが好ましい。
【0096】
紫外線吸収性樹脂は、紫外線吸収性単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)を有する。紫外線吸収性樹脂としては従来公知の樹脂を用いることができ、例えば特開2007−297619号公報に記載の樹脂が挙げられる。
【0097】
紫外線吸収性単量体の具体例としては、好ましくは、式(4):
【0098】
【化6】

【0099】
[式中、Rは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R10は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R11は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す]
で示される単量体、式(5):
【0100】
【化7】

【0101】
[式中、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、または、炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、Yは水素原子またはメチル基を表し、Aは、−(CHCHO)−、−CHCH(OH)−CHO−、−(CH−O−、−CHCH(CHOR20)−O−、−CHCH(R20)−O−、または、−CH(CHCOO−B−O−を表し、R20は炭素数1〜10のアルキル基を表し、Bはメチレン基、エチレン基、または、−CHCH(OH)CH−を表し、nは1〜20の整数を表し、pは0または1を表す]
で示される単量体、及び、式(6):
【0102】
【化8】

【0103】
[式中、R21は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R22は水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、R23は水素原子またはメチル基を表し、R24は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表す]
で示される単量体が挙げられる。これらの紫外線吸収性単量体は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0104】
上記の式(4)で示される紫外線吸収性単量体は、Rが水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基;R10が炭素数1〜6のアルキレン基;R11が水素原子またはメチル基;Xが水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基;で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0105】
式(4)において、Rで表される炭素数1〜8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基もしくはオクチル基などの鎖式炭化水素基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基もしくはシクロオクチル基などの脂環式炭化水素基;または、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基もしくはフェネチル基などの芳香族炭化水素基;などが挙げられる。
【0106】
式(4)において、R10で表される炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基もしくはヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基;または、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン、t−ブチレン基、イソペンチレン基もしくはネオペンチレン基などの分枝鎖状アルキレン基;などが挙げられる。
【0107】
式(4)において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Xで表される炭素数1〜8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基もしくはオクチル基などの鎖式炭化水素基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基もしくはシクロオクチル基などの脂環式炭化水素基;または、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基もしくはフェネチル基などの芳香族炭化水素基;などが挙げられる。Xで表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基またはヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0108】
式(4)で示される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの単量体は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0109】
式(5)で示される紫外線吸収性単量体は、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、または炭素数1〜10のアルコキシ基;Yが水素原子またはメチル基;Aが−(CHCHO)−、−CHCH(OH)−CHO−、−(CH−O−、−CHCH(CHOR20)−O−、−CHCH(R20)−O−、または、−CH(CHCOO−B−O−;R20が炭素数1〜10のアルキル基;Bがメチレン基、エチレン基、または、−CHCH(OH)CH−;nが1〜20の整数;pが0または1;で構成される2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン類である。
【0110】
式(5)において、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18またはR19で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、1,1,3,3,−テトラメチルブチル基もしくは2−エチルヘキシル基などの直鎖状もしくは分枝状アルキル基;または、シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基;などが挙げられる。R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18またはR19で表される炭素数2〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘプテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、2,4−ジメチル−3−ペンテニル基、6−メチル−5−ヘプテニル基、または2,6−ジメチル−5−ヘプテニル基などが挙げられる。R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18またはR19で表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、またはデシルオキシ基などが挙げられる。
【0111】
式(5)において、R20で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18またはR19で表される炭素数1〜10のアルキル基として列挙した上記の置換基などが挙げられる。
【0112】
式(5)で示される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクロイルオキシウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、式(7):
【0113】
【化9】

【0114】
で示される単量体、式(8):
【0115】
【化10】

【0116】
で示される単量体、または式(9):
【0117】
【化11】

【0118】
で示される単量体が特に好適である。
【0119】
式(6)で示される紫外線吸収性単量体は、R21が水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基もしくはニトロ基;R22が水素結合を形成し得る元素を有する基;R23が水素原子もしくはメチル基;または、R24が水素原子もしくは炭素数1〜12の炭化水素基;で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0120】
式(6)において、R21で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。R21で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、1,1,3,3,−テトラメチルブチル基もしくは2−エチルヘキシル基などの直鎖状もしくは分枝状アルキル基;または、シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基;などが挙げられる。R21で表される炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基などが挙げられる。
【0121】
式(6)において、R22で表される、水素結合を形成し得る元素を有する基としては、例えば、−NH−、−CHNH−、−OCHCH(OH)CHO−、または−CHCHCOOCHCH(OH)CHO−などが挙げられる。これらの基のうち、活性水素を有する窒素原子が含まれている点で、−NH−、または−CHNH−が好ましく、−CHNH−がより好ましい。
【0122】
式(6)において、R24で表される炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、R21で表される炭素数1〜8のアルキル基として列挙した上記の置換基に加えて、ノニル基、デシル基、ウンデシル基もしくはドデシル基などの直鎖状もしくは分枝状アルキル基;または、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基もしくはフェネチル基などの芳香族炭化水素基;などが挙げられる。これらの置換基のうち、炭素数4〜12の直鎖状または分岐状アルキル基が好ましく、1,1,3,3−テトラメチルブチル基などの嵩高い分岐状アルキル基(またはこれらを有する基)がより好ましい。なお、置換基R24が、ベンゼン環の5位(2位のヒドロキシル基に対してパラ位)に結合する立体障害基である場合、2位のヒドロキシル基の消費を阻害する効果が一層増大するので好ましい。
【0123】
式(6)で示される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、これらの単量体のうち、嵩高い置換基R24が5位に結合している、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、及び、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0124】
式(4)または式(6)で示されるベンゾトリアゾール系単量体は、例えば、対応するベンゾトリアゾール(紫外線吸収性物質として市販されている)に(メタ)アクリル酸クロライドやN−メチロールアクリルアミドまたはそのアルキルエーテルを反応させるなどの方法で合成することができる。例えば、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールは、2−[2’−ヒドロキシ−3’−アミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸クロライドを反応させて得ることができる。また、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールは、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−ベンゾトリアゾール(例えば、CYASORB UV−5411、CYTEC社製)にN−メチロールアクリルアミド(例えば、日東化学工業(株)製など)を反応させて得ることができる。
【0125】
上記式(4)〜(6)で示される紫外線吸収性単量体のうち、紫外線吸収層を薄肉化でき、耐光性が高い点で、式(6)で示される紫外線吸収性単量体が特に好適である。
【0126】
これらの紫外線吸収性単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0127】
紫外線吸収性樹脂に含まれる紫外線吸収性単量体単位の含有率は、紫外線吸収性樹脂中の単量体成分の総計を100質量%として、1〜80質量%であることが好ましく、3〜70質量%であることがより好ましい。かような範囲の含有率であれば、紫外線遮断能を十分に発揮することができ、またフィルムに黄変をきたす虞れも少ない。
【0128】
上記式(4)〜(6)で示される紫外線吸収性単量体は、紫外線安定性単量体と併用してもよい。紫外線安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。これらの紫外線安定性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。紫外線安定性単量体の使用量は、特に限定されるものではないが、紫外線吸収性樹脂中の単量体成分の総計を100質量%として、0〜10質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
【0129】
紫外線吸収性樹脂は、光学特性や熱安定性に優れることから、アクリル系単量体を構造単位として含むことが好ましい。
【0130】
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸などのアクリル系不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルトリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、プラクセルFM、ダイセル化学工業(株)製)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるエステルジオールの(メタ)アクリル酸モノエステルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−スルホン酸エチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどのその他アクリル系単量体;などが挙げられる。これらのアクリル系単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ラクトン環構造を含むラクトン環含有重合体との相溶性の点から、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。紫外線吸収性樹脂に含まれるアクリル系単量体単位の含有率は、熱安定性等の観点から、紫外線吸収性樹脂中の単量体成分の総計を100質量%として、20〜99質量%であることが好ましく、30〜97質量%であることがより好ましい。
【0131】
また、紫外線吸収性樹脂は、紫外線吸収性単量体及びアクリル系単量体以外のその他の単量体を構成単位として含んでいてもよい。その他の単量体としては、例えば、後述する架橋性官能基を有する単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ブチルビニルエーテル、マレイン酸もしくはイタコン酸のモノアルキルエステルもしくはジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニル基を有するアルコキシシラン、または不飽和結合を有するポリエステルなどが挙げられる。前記その他の単量体の使用量は、単量体100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0132】
上記単量体の重合方法としては、例えば、重合開始剤を用いて、溶液重合、分散重合、懸濁重合または乳化重合などの従来公知の重合方法により行うことができる。溶液重合を行う場合の溶媒としては特に限定されず、例えば、イソプロパノール、n−ブタノールもしくはジアセトンアルコール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブもしくはエチルセロソルブアセテート等のセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルもしくはプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンもしくはメチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチルもしくは酪酸ブチル等のエステル類;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類;トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素類;または、ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドン等の高極性溶剤類などを、1種単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。前記溶媒の使用量としては、重合条件、単量体濃度及び重合体溶液濃度などにより適宜設定すればよい。
【0133】
また、重合の際に用いられる重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、公知の過酸化物系またはアゾ系の開始剤を用いることができる。2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、またはt−アミルパーオキシイソノナノエート等の公知のラジカル重合開始剤が使用可能である。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、重合体の要求特性などに応じて適宜決定すべきものであり、特に制限されるものではないが、重合に用いられる単量体100質量%に対し0.01〜50質量%であることが好ましく、0.05〜20質量%であることがより好ましい。例えば、n−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び(CHO)Si−S−S−Si(OCHよりなる群から選択されてなる連鎖移動剤を1種以上添加することで、重合体の分子量を調整することができる。
【0134】
重合反応の温度も特に限定されないが、室温〜200℃の範囲が好ましく、40〜140℃がより好ましい。なお反応時間は、用いる単量体成分の組成や重合開始剤の種類などに応じて、重合反応が効率よく完結し得るように適宜設定すればよい。
【0135】
紫外線吸収性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜500,000、より好ましくは3,000〜300,000、さらに好ましくは4,000〜100,000である。
【0136】
上記紫外線吸収性樹脂の配合量は、所望の効果が発揮されるよう、適宜決定すればよいが、耐候性を向上させる観点からいえば、ラクトン環含有重合体フィルム中、1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。
【0137】
また、紫外線吸収性物質と併用して、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤を用いてもよい。ヒンダードアミン系化合物としては、[コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン]重縮合物、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートなどが挙げられる。市販品としては、「チヌビン123」、「チヌビン144」、「チヌビン765」(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、「アデカスタブLA−52」、「アデカスタブLA−57」、「アデカスタブLA−62」、「アデカスタブLA−77」(いずれも旭電化工業社製)などが挙げられる。光安定剤が含有される場合、その含有量は紫外線吸収性物質(紫外線吸収性樹脂の場合は、樹脂不揮発性分)に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0138】
ラクトン環含有重合体フィルムは、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系もしくはイオウ系などの酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤もしくは熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維もしくは炭素繊維などの補強材;紫外線吸収性物質;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェートもしくは酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系もしくはノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料もしくは染料などの着色剤;有機フィラーもしくは無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤もしくは無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;または、難燃剤;などが挙げられる。ラクトン環含有重合体フィルム中、その他の添加剤の含有率は、0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
【0139】
ラクトン環含有重合体フィルムは、耐傷性を考慮すると、鉛筆硬度がH以上、好ましくは2H以上であることが好ましい。鉛筆硬度がH以上の場合には、太陽電池組立時や、屋外に暴露された時に表面に傷が発生しにくく、実用上好ましい。なお、本発明における鉛筆硬度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定された値である。
【0140】
本発明におけるラクトン環含有重合体層の厚さは、本発明の効果が顕著に発揮されることから、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは20〜100μmである。10μm以上であれば、耐候性や表面硬度の点で所望の効果が得られうる。また、ラクトン環含有重合体層の屈折率は、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.03以下である。0.05以下である場合には、屈折率差に基づく干渉縞が発生しにくくなる。ラクトン環含有重合体層及び後述のアクリル系重合体層は共にアクリル樹脂系であり得、特別な調整をしなくとも、上記屈折率差の範囲にすることができる。なお、本明細書における屈折率は、アタゴ製のアッペ屈折計DR−M2を用いており、JIS−K−7105も準拠して測定している。
【0141】
また、後述の実施例に記載の耐光性試験方法に記載のΔEは、2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。
【0142】
ラクトン環含有重合体フィルムのガラス転移温度(Tg)は、耐候性、表面硬度の観点から、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。上限は特に限定されるものではないが、通常Tgは200℃以下である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に準拠して、中点法で求めた値を採用する。
【0143】
なお、本明細書における「フィルム」とは、厚さに依存することなく、面状の成型体を広く含む概念である。また、複数の層からなるフィルムを積層体と称することもある。
【0144】
ラクトン環含有重合体フィルムは、従来公知の方法によって製造される。例えば、ラクトン環含有重合体、及び必要に応じて紫外線吸収性物質その他の添加剤を従来公知の混合方法により混合し、得られた混合物をフィルム状に成形することで得られる。具体的には、例えば、オムニミキサー等の混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を押出混錬する方法を採用できる。また、延伸することによって延伸フィルムとしてもよい。この場合、押出混練に用いる混練機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機もしくは二軸押出機などの押出機または加圧ニーダー等の従来公知の混練機を用いることができる。
【0145】
フィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法または圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。なかでも、溶液キャスト法(溶液流延法)または溶融押出法が好ましい。
【0146】
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、及びこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、及び2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;並びに、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、及びジエチルエーテル;などが挙げられる。上記溶媒は1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0147】
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシンまたはスピンコーターなどが挙げられる。
【0148】
溶融押出法としては、Tダイ法またはインフレーション法などが挙げられ、その際の、押出しフィルムの成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
【0149】
上記Tダイ法で押出しフィルム成形する場合は、公知の単軸押出し機や二軸押出し機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押し出したフィルムを巻き取ることにより、ロール状のフィルムを得ることができる。その際、巻き取りロールの温度を適宜調整して、押出し方向に延伸を加えることで、一軸延伸工程とすることも可能である。また、押出し方向と垂直な方向にフィルムを延伸する工程をさらに加えることで、逐次二軸延伸や同時二軸延伸などの工程とすることも可能である。
【0150】
押出しフィルムは、未延伸フィルムであっても、廷伸フィルムであってもよい。延伸する場合は、一軸延伸フィルムでも、二軸延伸フィルムでもよい。二軸延伸フィルムとする場合は、同時二軸延伸したものでも、逐次二軸廷伸したものでもよい。二軸延伸した場合には、機械強度が向上しフィルム性能が向上しうる。
【0151】
延伸温度としては、押出しフィルム原料の熱可塑樹脂組成物のガラス転移温度近辺で行うことが好ましく、具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+100)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+80)℃である。(ガラス転移温度−30)℃以上であれば、十分な延伸倍率が得られるため好ましい。一方、(ガラス転移湿度+100)℃以下であれば、樹脂の流動(フロー)を起こすことなく安定した延伸が行えるため好ましい。
【0152】
面積比で定義される廷伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲、より好ましくは1.3〜10倍の範囲である。1.1倍以上であれば、延伸に伴う靱性の向上につながるため好ましい。一方、25倍以下であれば、延伸倍率を上げたことによる効果が認められるため好ましい。
【0153】
一方向で見た時の延伸速度としては、好ましくは10〜20,000%/分、より好ましくは100〜10,000%/分である。10%/分以上であれば、迅速に十分な延伸倍率を得ることができ、製造コストを抑えることができるため好ましい。一方、20,000%/分以下であれば、延伸押出しフィルムの破断などの発生を抑止できるため好ましい。
【0154】
押出しフィルムの力学特性を安定化させるため、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
【0155】
<アクリル系重合体層>
本発明の表面保護用透明積層体は、本発明の表面保護用透明積層体の耐光性、耐摩耗性、強度を向上させるための種々のアクリル系重合体層を好適には有する。アクリル系重合体層はアクリル系重合体を主成分としていれば特に制限されることはない。アクリル系重合体層として、例えば、ハードコート層、紫外線吸収層、熱線吸収層、帯電吸収層、防汚層などが挙げられる。なかでも、アクリル系重合体層がハードコート層であると、本発明の表面保護用透明積層体の表面硬度が向上し、耐摩耗性がより改善されるため、より好ましい。
【0156】
本発明におけるアクリル系重合体層の膜厚は、用途により適切に設計できるが、1〜20μmであることが好ましい。1μm以上であれば、アクリル系重合体層としての所望の機能を十分に発現しうる。一方、20μm以下であれば、積層体がカールしたり、アクリル系重合体層にクラックが生じるといった可能性を抑制できる。アクリル系重合体層の屈折率は、主成分がアクリル系であるため、1.45〜1.55程度が普通である。金属粒子などを添加することで屈折率を1.55より大きくすることは可能であるが、アクリル系重合体層のヘイズが増大したり、ラクトン環含有重合体層との屈折率差が大きくなるため、干渉縞が発生したりしうるため、好ましくない。ここで、別途規定している場合を除き、本明細書における「主成分」とは、全量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上含むことをいう。なお、アクリル系重合体の場合、フィルム中のアクリル系重合体の含有率が50質量%以上であれば、本発明の効果を十分に発揮できる。
【0157】
ハードコート層はラクトン環含有重合体層にハードコート剤を塗布後、硬化させ、積層体に物理強度を付与するために設けられたアクリル系重合体層である。
【0158】
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは、1〜5μmである。1μm以上であれば、十分な物理強度を付与することができる。また、10μm以下であれば、積層フィルムがカールしたり、ハードコート層にクラックが生じたりする可能性を有意に低くすることができる。ハードコート層の表面硬度は鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0159】
ハードコート層の屈折率は、ラクトン環含有重合体層との屈折率差が0.05以下であることが望ましく、0.03以下であることがより望ましい。屈折率差が0.05以下であれば屈折率差に基づく干渉縞が発生しにくくなる。
【0160】
ハードコート層の原料は、(メタ)アクリル系樹脂であればよいが、製造に用いられる単量体としては、多官能重合性化合物が表面硬度、生産性の観点から好ましい。
【0161】
ハードコート剤は、(メタ)アクリル系多官能重合性化合物を前記「主成分」として含むことが好ましい。多官能重合性化合物は、分子内に(メタ)アクリレート基を2個以上有するものであれば、任意の適切な多官能重合性化合物が採用され得る。具体例としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、多価アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。耐候性、表面硬度の観点から、多価アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。多価アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレートを用いた場合、通常、屈折率は、1.49〜1.54の範囲となり、特別な調整をすることなく、ラクトン環含有重合体層との屈折率差は0.05以下となる。
【0162】
多価アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとしては、分子中に少なくとも2個の水酸基を持つ芳香族、または脂肪族アルコール、およびそのアルキレンオキサイド付加体と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート等を例示することが出来、具体的には、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリイソプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0163】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、多価イソシアネート化合物の末端イソシアネート基にペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等の分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート、または分子中に少なくとも2個の水酸基を持つ芳香族、または脂肪族アルコール、及びそのアルキレンオキサイド付加体に過剰量のポリイソシアネート化合物を反応させ、余ったイソシアネート基にペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等の分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートが例示できる。
【0164】
ハードコート剤には、重合開始剤を含むのが好ましい。重合開始剤の具体例としては、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。生産性、表面硬度の観点から、光重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0165】
光重合開始剤としては、具体的にはベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ケタール系化合物、などが挙げられる。より具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、キサントン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。市販品としては、イルガキュア 127、184、369、379、500、651、784、819、851、907、1300、1800、1870、2959、OXE01、OXE02、DAROCUR1173(以上、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)などが挙げられる。重合開始剤は、多官能重合性化合物100質量%に対して、好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%の割合で組成物中に含有される。0.1質量%未満では、組成物が十分に硬化しないことがある。逆に、重合開始剤の配合量が20質量%を超えるとハードコート層の耐候性、表面硬度に悪影響を及ぼす。
【0166】
ハードコート剤には、溶媒を含んでいてもよい。塗工性を高める観点から、ハードコート剤が塗布される際には、溶媒を用いられるのが好ましい。溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類が挙げられる。有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0167】
ハードコート剤には、目的に応じて、適切な単官能重合性化合物をさらに含んでもよい。具体的には、アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、テトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート及びメチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレートで表される化合物が挙げられる。
【0168】
ハードコート剤には、用途に応じて、さらに、光増感剤、レベリング剤、易滑剤、帯電防止剤、防汚剤、紫外線吸収性物質、耐光安定剤、微粒子などの各種添加剤、改質用樹脂などを加えることができる。本発明の効果、特に透明性、屈折率、表面硬度に影響を与えないように、添加量を考慮することが好ましい。
【0169】
また、ハードコート層の表面に各種コーティング層を設けたりすることができ、帯電防止性、防汚性、すべり性、防眩性、反射防止性などの性能を付与することができる。また、表面に凹凸を形成することで、防眩性を付与することもできる。
【0170】
ラクトン環含有重合体層へのハードコート剤の塗布方法については特に制限はなく、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコート法などを用いることができる。
【0171】
また、密着性を向上させる目的で、ハードコート剤を塗布する前に、ラクトン環含有重合体層に表面処理を施すことができる。表面処理の具体例としては、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理、樹脂組成物によるプライマー処理などが挙げられる。
【0172】
また、ハードコート層の塗布後、0〜200℃で溶剤を乾燥させることができる。溶剤を含まない場合には、乾燥工程を省くことが可能である。
【0173】
ハードコート剤は、塗布・乾燥後、さらに、熱及び/または放射線で硬化処理を行うことができる。放射線による場合、紫外線または電子線を用いることが好ましい。紫外線の照射装置は限定されず、公知の装置が用いられうる。例えば紫外線の光源として、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等が用いられうる。紫外線波長は、通常、190〜380nmの波長域が主として用いられる。紫外線を照射する場合の照射条件としては、例えば硬化エネルギー(積算光量)が10〜10,000mJ/cmであり、より好ましくは、100〜2,000mJ/cmである。電子線の場合、照射装置として、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器等の照射源を備えた装置が用いられうる。電子線を照射する場合の照射条件としては、加速電圧が150〜250keVとされ、照射量が1〜5Mradとされるのが好ましい。
【0174】
<透明基材層>
本発明に用いられる透明基材層を構成する材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC、セルローストリアセテートともいう)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロースなどのセルロース系、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのエステル系、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、アクリル系などの樹脂系のフィルムが挙げられる。好ましくは、エステル系、アクリル系である。上記材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。また、複数の層を積層した多積層フィルムを用いてもよい。積層させる方法としては、各層を構成する樹脂をそれぞれの押出機に供給し、必要に応じて選ばれたフィルターを通過後、公知の技術であるマルチマニホールドダイ法、フィードブロック法やスタティックミキサー法を用いて各層を積層し、ダイより溶融同時押出することが好ましい。樹脂系のフィルムとしては、延伸処理をしていない無延伸フィルム、一軸または二軸方向に延伸した延伸フィルムを用いることができる。機械的性質の向上という理由から、延伸フィルムが好ましく、二軸延伸フィルムを用いることがより好ましい。
【0175】
透明基材層の厚さは、好ましくは、10〜1,000μm、より好ましくは30〜500μmである。10μm未満では、機械的強度が不足する可能性があり、1,000μmを超えると、作業性に問題が生じる可能性がある。
【0176】
透明基材層には、必要に応じて、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収性物質、光安定化剤、充填剤、滑剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤及び顔料などを使用することができ、さらには、改質用樹脂などを使用してもよい。かような添加剤は、所望の目的が発揮されるよう、適宜調整して含有させればよいが、通常の含有量は0〜50質量%程度である。
【0177】
<接着剤層>
前記透明基材層とラクトン環含有重合体層との間には、通常、直接的に、または後述の紫外線吸収層を介して間接的に、両者を接着するための接着剤層が存在する。接着剤層を構成する材料としては、前記透明基材層とラクトン環含有重合体層とを直接または間接に接着することができる材料であれば特に限定されず、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、(メタ)アクリル系重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、またはその共重合体または変性樹脂、あるいはセルロース系樹脂などを用いることができる。なかでも、耐候性、接着性を向上させる観点から、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。接着剤層の厚さは、通常1〜50μm程度である。また、後述するように接着剤層に硬化性の紫外線吸収性樹脂を用いてもよい。
【0178】
接着剤に用いられるアクリル系樹脂としては、下記式(10)で表されるモノマーを含むモノマー成分を重合してなる樹脂が好適に挙げられる。
【0179】
【化12】

【0180】
式中、R30は、水素原子又はメチル基を表す。Zは、炭素数4〜25の炭化水素基を表す。
【0181】
Zで表される炭素数4〜25の炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロドデシル基等の脂環式炭化水素基;ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等の直鎖又は分枝鎖のアルキル基;ボルニル基、イソボルニル基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。これらの中でも、脂環式炭化水素基、分枝鎖のアルキル基、炭素数6以上の直鎖アルキル基であることが好ましい。さらに好ましくは炭素数6以上の脂環式炭化水素基、炭素数4以上の分枝鎖のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数6以上の脂環式炭化水素基である。
【0182】
上記一般式(10)で表されるモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0183】
また、特開2002−69130号公報で開示されているような(メタ)アクリル酸のシクロヘキシルアルキルエステル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5,2,1,02.6]デカ−8−イル(メタ)アクリレートやテルペン系(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0184】
これらの中でも、耐熱性の点からシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの使用が好ましい、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの使用がより好ましい。
【0185】
上記一般式(1)で表されるモノマーの使用量としては、例えば、すべてのモノマー成分を100質量%とすると、10質量%以上、80質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは15質量%以上、70質量%以下とすることが好ましい。かような範囲であれば、耐熱性に優れ、また、接着層の強度も十分となる。
【0186】
接着剤に用いられるアクリル系樹脂は、式(10)で表されるモノマーの他、その他の共重合可能なモノマーと共重合される。その他の共重合可能なモノマーとしては特に限定されず、例えば、下記のモノマー等が挙げられる。(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル系モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセルFM」)等の活性水素をもつ基を有するモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー。(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の窒素原子を有するモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の2個以上の重合性二重結合を有するモノマー;塩化ビニル等のハロゲン原子を有するモノマー;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0187】
また更に耐加水分解性、耐絶縁性を向上させる場合、ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリレートの使用が好ましい。具体的には、「オグソールEA−0200」、「オグソールEA−0200」「オグソールEA−0500」「オグソールEA−1000」(いずれも商品名、大阪ガスケミカル株式会社製)等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0188】
上記アクリル系樹脂を製造するための重合方法としては、例えば、重合開始剤を用いて、溶液重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合等の従来公知の重合方法により行うことができる。溶液重合を行う場合の溶媒としては特に限定されず、例えば、上述したような有機溶剤を1種又は2種以上用いることができる。溶媒の使用量としては、重合条件やアクリル系ポリマー中のポリマー成分の重量割合等により適宜設定すればよい。
【0189】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の通常のラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。使用量としては、所望する重合体の特性値等から適宜設定すればよいが、例えば、モノマー成分を100質量%とすると、0.01〜50質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.05〜20質量%である。
【0190】
上記重合方法における重合条件としては、重合方法により適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、重合温度としては、室温〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは、40〜140℃である。反応時間としては、モノマー成分の組成や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。
【0191】
アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、例えば、2,000〜100万であることが好ましい。より好ましくは、4000〜50万であり、更に好ましくは、5000〜30万である。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準GPCでの測定値である。
【0192】
接着剤層は、架橋、未架橋のいずれでも使用可能であるが、耐加水分解性、耐絶縁性の向上の点で架橋塗膜が好ましく、例えばそれ自体が単独で架橋したり、架橋剤を配合して硬化塗膜を形成した方が好ましい。そのため、上記アクリル系樹脂に、更にポリイソシアネート化合物又はその変性物、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂から少なくとも1種以上選択される硬化剤を配合することが好ましい。硬化剤の具体的例示については、後述する。
【0193】
(ブロック)ポリイソシアネート化合物の使用量としては特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマー中の水酸基1モルに対して、(ブロック)ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基が0.6〜1.4モルとなるようにすることが好ましい。かような範囲であれば、耐熱性に優れ、また未反応のイソシアネート基が接着層中に多く残存し、これが塗膜硬化時に空気中の水分と反応して、塗膜が発泡や白化を起こすことが少ない。より好ましくは、0.8〜1.2モルである。
【0194】
アミノプラスト樹脂の使用量としては特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂とアミノプラスト樹脂との固形分重量比が9/1〜6/4となるように配合することが好ましい。アクリル系樹脂が接着剤層の硬度が適度であり、密着性、耐熱性に優れる。
【0195】
また、必要に応じて、アクリル系樹脂と、硬化剤との架橋反応を促進させるための硬化触媒を1種又は2種以上含んでもよい。このような硬化触媒としては特に限定されるものではないが、例えば、上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物を用いる場合には、ジブチル錫ジラウレート、第3級アミン等の触媒を使用することが好ましく、上記アミノプラスト樹脂を使用する場合には、酸性又は塩基性の硬化触媒を使用することが好ましい。
【0196】
接着剤層には、接着性樹脂および上述したその他の添加剤以外の配合物として、例えば、溶剤や添加剤等を1種又は2種以上含んでいてもよい。このような溶剤としては、上述したのと同様の有機溶剤等が挙げられ、また、添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に一般に使用される従来公知の添加剤等を用いることができ、例えば、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾル等の無機微粒子、ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子、消泡剤、タレ性防止剤、シランカップリング剤、チタン白、複合酸化物顔料、カーボンブラック、有機顔料、顔料中間体等の顔料;顔料分散剤;リン系やフェノール系の酸化防止剤;粘性調整剤;紫外線安定剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;充填剤;難燃剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;有機・無機防炎剤;有機及び無機系の帯電防止剤;オルソ蟻酸メチルなどの脱水剤等が挙げられる。
【0197】
また、接着剤層には、接着能を有する樹脂以外に、後述するように接着剤層に紫外線吸収能を持たせるために、紫外線吸収性物質(紫外線吸収性物質の構成成分、紫外線吸収性樹脂等)を配合してもよい。
【0198】
<紫外線吸収層>
本発明の表面保護用透明積層体は、紫外線吸収層を有することが好ましい。紫外線吸収層が存在することにより、耐光性が向上する。
【0199】
紫外線吸収層は、紫外線吸収能を有する層であれば、特に限定されるものではない。耐光性の観点でいうならば、1)アクリル系重合体層が紫外線吸収能を有する形態、アクリル系重合体層と透明基材層との間に形成されてなる接着剤層が紫外線吸収性物質を含む形態(すなわち、紫外線吸収性物質が配合された接着剤層)、2)アクリル系重合体層とラクトン環含有重合体層との間に紫外線吸収層を設ける形態、前記アクリル系重合体層及び前記ラクトン環含有重合体層の間、並びに/または前記ラクトン環含有重合体層及び前記透明基材層の間に設けられた形態、3)透明基材層、ラクトン環含有重合体層及びアクリル系重合体層のうち一以上が紫外線吸収能を有する形態(好適には、ラクトン環含有重合体層が紫外線吸収能を有する形態)、または、4)ラクトン環含有重合体層と透明基材層との間に形成されてなる接着剤層が紫外線吸収能を有する形態であることが好ましい。
【0200】
1)アクリル系重合体層が紫外線吸収能を有する形態の場合、紫外線吸収性物質を含有させることで、本来求められるアクリル系重合体層としての機能を十分に発揮できない可能性がある一方で、より本発明のフィルムの紫外線などによる劣化を最小限に抑えることができうる。なぜなら、より太陽光側で紫外線などをカットできるからである。また、2)アクリル系重合体層とラクトン環含有重合体層との間に紫外線吸収層を設ける形態の場合、ラクトン環含有重合体層に由来する優れた表面硬度が紫外線吸収層によって低下する可能性がある一方、上記1)と同様に、本発明のフィルムの紫外線などによる劣化を最小限に抑えることができうる。なかでも、表面硬度及びアクリル系重合体層の機能を十分に発揮させるという観点からは、3)ラクトン環含有重合体層が紫外線吸収能を有する形態、または、4)ラクトン環含有重合体層と透明基材層との間に形成されてなる接着剤層が紫外線吸収能を有する形態であることが好ましい。以下、上記3)及び4)の各形態について詳説する。
【0201】
3)ラクトン環含有重合体層が紫外線吸収能を有する形態は、具体的には、上述したように、紫外線吸収性物質をフィルムに含有させる形態が挙げられる。
【0202】
4)ラクトン環含有重合体層と透明基材層との間に形成されてなる接着剤層が紫外線吸収能を有する形態は、具体的には、紫外線吸収性物質を接着剤層に含有させる形態;あるいは、熱硬化性及び/または活性エネルギー線硬化性の紫外線吸収性樹脂を主成分として接着剤層を形成させる形態が挙げられる。
【0203】
紫外線吸収性物質を接着剤層に含有させる形態の場合、紫外線吸収性物質として、上記ラクトン環含有重合体フィルムについて説明した紫外線吸収性物質の構成成分及び紫外線吸収性樹脂を用いることができる。紫外線吸収性物質の構成成分を用いる場合、接着剤層中の含有量は、耐光性の観点から、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。また、紫外線吸収性樹脂を用いる場合、接着剤層中の含有量は、耐光性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。接着剤層中の紫外線吸収性樹脂の含有量の上限は特に限定されず、100質量%、すなわち全量が紫外線吸収性樹脂であってもよい。
【0204】
熱硬化性及び/または活性エネルギー線硬化性の紫外線吸収性樹脂を主成分として接着剤層を形成させる形態について説明する。かような硬化性の紫外線吸収性樹脂を用いることによって、他に硬化性樹脂を添加することなく、接着剤層を形成することができる。硬化性の紫外線吸収性樹脂としては、従来公知の樹脂を用いることができ、例えば、特開2007−331359号に記載の樹脂を用いることができる。
【0205】
具体的には、硬化性の紫外線吸収性樹脂は、ラクトン環含有重合体フィルムの欄で説明した紫外線吸収性単量体、(メタ)アクリル系単量体、及び架橋性官能基を有する単量体、ならびに必要に応じて、紫外線安定性単量体及びその他の単量体を重合して形成される。
【0206】
架橋性官能基を有する単量体における架橋性官能基としては、カルボキシル基、イソシアネート基、オキサゾリン基、アミド基、またはメチロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)、水酸基、エポキシ基、酸アミド基、スルホン酸基などが挙げられる。架橋性官能基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、及び上記アミノ基をメチロール化したもの、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどを用いることができるがなどが挙げられる。なお、上述したアクリル系単量体が架橋性官能基を含む場合には、前記アクリル系単量体は架橋性官能基を有する。
【0207】
上記その他の単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ブチルビニルエーテル、マレイン酸及びイタコン酸のモノあるいはジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニル基を有するアルコキシシラン、及び不飽和結合を有するポリエステルなどが挙げられる。
【0208】
硬化性の紫外線吸収性樹脂における紫外線吸収性単量体単位の含有率は、硬化性の紫外線吸収性樹脂100質量%に対して、1〜80質量%であることが好ましく、3〜70質量%であることがより好ましい。かような範囲の含有率であれば、紫外線遮断能を十分に発揮することができ、またフィルムに黄変をきたす虞も少ない。紫外線安定性単量体の使用量は、特に限定されるものではないが、紫外線吸収性樹脂100質量%に対して、0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%であることがより好ましい。
【0209】
また、硬化性の紫外線吸収性樹脂における(メタ)アクリル系単量体の含有率は、熱安定性等の観点から、硬化性の紫外線吸収性樹脂100質量%に対して、20〜99質量%であることが好ましく、30〜97質量%であることがより好ましい。
【0210】
硬化性の紫外線吸収性樹脂における架橋性官能基を有する単量体の含有率は、他のフィルムとの密着性、機械的強度の観点から、硬化性の紫外線吸収性樹脂100質量%に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
【0211】
硬化性の紫外線吸収性樹脂におけるその他の単量体の含有率は、硬化性の紫外線吸収性樹脂100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。
【0212】
硬化性の紫外線吸収性樹脂が単独で硬化できない場合、別途硬化剤(架橋剤)を配合して架橋させる必要がある。用いられる硬化剤は、官能基に応じて公知の各種硬化剤が使用可能である。例えば、官能基が水酸基の場合には、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物またはその変性物やアミノプラスト樹脂が、硬化剤として好ましい。
【0213】
ポリイソシアネート化合物としては、従来からポリウレタン樹脂の製造に使用されている1分子中に平均2個以上、好ましくは2〜4個のイソシアネート基を含有する数平均分子量100〜2,000程度の化合物を、好適に使用できる。
【0214】
ポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物及び/又はブロックポリイソシアネート化合物が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等のポリイソシアネートの誘導体(変性物)等が挙げられる。
【0215】
上記ブロックポリイソシアネート化合物とは、接着剤組成物を加熱乾燥するときに架橋させ、かつ、常温での貯蔵安定性を向上させるために、通常、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものである。上記ブロック化剤としては特に限定されず、例えば、ε−カプロラクタム、フェノール、クレゾール、オキシム、アルコール等の化合物等が挙げられる。上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、デスモジュールN3200、デスモジュールN3300、デスモジュールBL3175、デスモジュールN3400、デスモジュールN3600、デスモジュールVPLS2102(商品名、住化バイエルウレタン社製)、デュラネートE−402−90T(商品名、旭化成工業社製)等が挙げられる。また、接着剤組成物から形成される接着層の黄変を防止するために、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0216】
(ブロック)ポリイソシアネート化合物の使用量としては特に限定されないが、例えば、紫外線吸収性樹脂中の架橋性官能基1モルに対して、(ブロック)ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基が0.6〜1.4モルとなるようにすることが好ましい。かような範囲であれば、耐湿熱性に優れ、また未反応のイソシアネート基が接着層中に多く残存し、これが塗膜硬化時に空気中の水分と反応して、塗膜が発泡や白化を起こすことが少ない。より好ましくは、0.8〜1.2モルである。
【0217】
アミノプラスト樹脂としては、メラミンやグアナミン等のアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの付加縮合物であり、アミノ樹脂とも呼ばれているものである。上記アミノプラスト樹脂としては特に限定されず、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、完全アルキル型メチル化メラミン、完全アルキル型ブチル化メラミン、完全アルキル型イソブチル化メラミン、完全アルキル型混合エーテル化メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型混合エーテル化メラミン、イミノ基型混合エーテル化メラミン等のメラミン樹脂;ブチル化ベンゾグアナミン、メチル/エチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、メチル/ブチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、ブチル化グリコールウリル等のグアナミン樹脂等が挙げられる。
【0218】
上記アミノプラスト樹脂の市販品としては、例えば、サイメル1128、サイメル303、マイコート506、サイメル232、サイメル235、サイメル771、サイメル325、サイメル272、サイメル254、サイメル1170(いずれも商品名、三井サイテック社製)等が挙げられる。アミノプラスト樹脂の使用量としては特に限定されず、例えば、紫外線吸収性樹脂とアミノプラスト樹脂との固形分重量比が9/1〜6/4となるように配合することが好ましい。アクリル系樹脂が接着剤層の硬度が適度であり、密着性、耐湿熱性に優れる。硬化剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、架橋反応を促進させるために、架橋触媒を添加してもよい。かかる架橋触媒としては、例えば、塩類や無機物質、有機物質、酸物質、アルカリ物質などが挙げられる。
【0219】
接着剤層中の硬化性の紫外線吸収性樹脂の配合量は、50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましい。
【0220】
また、硬化性の紫外線吸収性樹脂以外の重合体が含まれていてもよい。硬化性の紫外線吸収性樹脂と併用することのできる重合体としては、例えば、熱可塑性重合体、または、単独もしくは硬化剤により架橋硬化する熱硬化性重合体が挙げられる。本発明の表面保護用透明積層体の用途や要求特性に応じて、かかる重合体の種類や使用量を適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。かかる重合体としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの熱可塑性重合体;ウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの単独硬化する熱硬化性重合体;ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの硬化剤により硬化する熱硬化性重合体;が挙げられる。硬化性の紫外線吸収性樹脂以外の重合体は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。なお、接着剤層に含まれうるその他の添加剤については、前述の接着剤層の欄で述べたとおりである。
【0221】
紫外線吸収層は必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;紫外線吸収性物質;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;などが挙げられる。ラクトン環含有重合体フィルム中、その他の添加剤の含有量は、0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0222】
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。ただし、本発明の範囲が以下の実施例のみに制限されることはない。
【0223】
[実施例1]
1.アクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aの調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ライトアクリレートDPE−6A、共栄社化学社製)8gと、ペンタエリスリトールトリアクリレート(ライトアクリレートPE−3A、共栄社化学社製)2gとを混合し、メチルエチルケトン40gに溶解した溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5gをメチルイソブチルケトン2gに溶解した溶液を加え、アクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aを調製した。
【0224】
2.ラクトン環含有重合体層の形成
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた容量30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として5.0gのt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(カヤカルボンBIC−75、化薬アクゾ(株)製)を添加すると同時に、10.0gのt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下、約105〜120℃で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0225】
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(Phoslex A−18、堺化学工業(株)製)を加え、還流下、約90〜120℃で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で、2.0kg/hの処理速度で導入し、この押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、ラクトン環含有重合体の透明なペレットを得た。
【0226】
得られたラクトン環含有重合体について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.34質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有重合体は、重量平均分子量は144,000であり、ガラス転移温度が131℃であった。各指標の測定・算出方法については後述する。
【0227】
このラクトン環含有重合体のペレットを、20mmφのスクリューを有する二軸押出し機を用いて、幅150mmのコートハンガータイプTダイから溶融押出し、ラクトン環含有重合体を主成分として含む面状熱可塑性樹脂成形体として、厚さ104μmの基材フィルムを作成した。
【0228】
得られた基材フィルムを、二軸延伸試験装置(カタログNo.586、(株)東洋精機製作所製)を用いて、150℃、0.1m/minの延伸速度で、1.5倍に二軸延伸することにより、ラクトン環含有重合体を主成分として含む面状熱可塑性樹脂成形体として、厚さ45μmの基材フィルム(ラクトン環含有重合体層)を形成した。
【0229】
3.表面保護用透明積層体の作成
得られた厚さ45μmのラクトン環含有重合体層に、アクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aを乾燥後の塗膜が5μmとなるようにバーコーターで調整して塗布した。塗布層を100℃2分で乾燥した後、高圧水銀灯で250mJ/cmの紫外線を照射することにより硬化させ積層体を作成した。
【0230】
作成した積層体について、ハードコート面の反対側のラクトン環含有重合体層に、接着剤B(ウレタン系接着剤、組成:三井化学ポリウレタン株式会社製の主剤「タケラックA310」/硬化剤「タケネートA3」=12/1)を塗布量5g/m塗布し、その接着剤層を介して、透明基材層である、188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ルミラーU34、東レ株式会社製)に貼り合わせて表面保護用透明積層体を得た。得られた表面保護用透明積層体の概略的な断面図を図1に示す。
【0231】
[実施例2]
1.紫外線吸収性樹脂溶液の合成
本実施例において使用する接着剤C中の紫外線吸収性樹脂溶液を以下の通りに合成した。
【0232】
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えたフラスコに、酢酸エチル25重量部、及び2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(商品名「RUVA93」、大塚化学社製)10重量部を仕込んだ。別途、シクロヘキシルメタクリレート30重量部、2−エチルヘキシルアクリレート15重量部、RUVA93 10重量部、紫外線安定性単量体LA82(商品名「アデカスタブLA82」、ADEKA社製)2重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部、メチルメタクリレート18重量部、酢酸エチル75重量部、及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 6重量部を溶解させた単量体溶液の混合物を調製しておき、そのうちの30質量%をフラスコに仕込み、窒素ガスを導入して攪拌しながら還流温度まで昇温させた。残り70質量%の単量体溶液の混合物を2時間かけて滴下し、滴下後さらに6時間加熱を継続した後、冷却した。酢酸エチル50重量部で希釈したところ、不揮発分濃度が40質量%の紫外線吸収性樹脂溶液が得られた。該重合体の重量平均分子量は、25,800であった。
【0233】
2.表面保護用透明積層体の作成
実施例1と同様の方法・条件により得られた厚さ45μmのラクトン環含有重合体層にアクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aを乾燥後の塗膜が5μmとなるようにバーコーターで調整して塗布した。なお、ラクトン環含有重合体層に含まれる重合体については、実施例1で示したものと同一である。塗布層を100℃2分で乾燥した後、高圧水銀灯で250mJ/cmの紫外線を照射することにより硬化させ積層体を作成した。
【0234】
作成した積層体のハードコート面の反対側に、紫外線遮機能を有する接着剤Cを塗布量5g/m塗布し、得られた紫外線遮蔽接着剤層を介して、透明基材層である、188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ルミラーU34、東レ株式会社製)に貼り合わせて表面保護用透明積層体を得た。なお、接着剤Cの塗料組成は以下の通りである。
・紫外線遮蔽性アクリル樹脂(紫外線吸収性樹脂溶液)100重量部、
・イソシアネート硬化剤(商品名:デスモジュールN3200、住化バイエルウレタン社製):3重量部、
・酢酸ブチル:37重量部。
【0235】
得られた表面保護用透明積層体の概略的な断面図を図2に示す。
【0236】
[実施例3]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、40部のメタクリル酸メチル(MMA)、10部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、50部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させ、還流したところで、開始剤として0.05部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富(株)製、商品名:ルペロックス570)を添加すると同時に、0.10部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0237】
得られた重合体溶液に、0.05部のリン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業(株)製、商品名:Phoslex A−8)を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明な重合体ペレット(1)を得た。得られた重合体の重量平均分子量は144,000であった。なお、得られた重合体について、ダイナミックTGの測定を行った際の、検知した質量減少などについては後述する。
【0238】
次に紫外線吸収性樹脂を下記のように製造した。
【0239】
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、15部のシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、35部の下記単量体;
【0240】
【化13】

【0241】
および50部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させ、還流したところで、開始剤として0.05部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富(株)製、商品名:ルパゾール570)を添加すると同時に、0.10部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0242】
得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で脱揮を行い、押出すことにより、透明な重合体ペレット(2)を得た。
【0243】
ペレット(1)80質量部およびペレット(2)20質量部を20mmφのスクリューを有する2軸押出し機を用いて、幅150mmのコートハンガータイプTダイから溶融押出しし、厚さ50μmの押出しフィルム、すなわち紫外線吸収性物質練りこみ型ラクトン環含有重合体層(紫外線吸収性物質含有ラクトン環含有重合体層)を作製した。
【0244】
続いて、アクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aを乾燥後の塗膜が5μmとなるようにバーコーターで調整して塗布した。塗布層を100℃2分で乾燥した後、高圧水銀灯で250mJ/cmの紫外線を照射することにより硬化させ積層体を作成した。
【0245】
作成した積層体のハードコート面の反対側に、上記接着剤Bを塗布量5g/m塗布し、得られた紫外線吸収性物質含有ラクトン環含有重合体層を介して、透明基材層である、188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ルミラーU34、東レ株式会社製)に貼り合わせて表面保護用透明積層体を得た。得られた表面保護用透明積層体の概略的な断面図を図3に示す。
【0246】
[実施例4]
1.アクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aの調製
実施例1と同様の方法・条件により調製した。
【0247】
2.ラクトン環含有重合体層の形成
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、9,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、1,000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込んだ点以外は、実施例1と同様の方法・条件によりラクトン環含有重合体層を形成した。なお、得られたペレットについて、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.35重量%の重量減少を検知した。また、ペレットの重量平均分子量は156,000であり、ガラス転移温度は116℃であった。このラクトン環含有重合体のペレットを用いて、実施例1と同様にして、厚さ45μmの基材フィルム(ラクトン環含有重合体層)を形成した。
【0248】
3.表面保護用透明積層体の作成
厚さ45μmのラクトン環含有アクリル樹脂フィルムにアクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aを乾燥後の塗膜が5μmとなるようにバーコーターで調整して塗布した。塗布層を100℃2分で乾燥した後、高圧水銀灯で250mJ/cmの紫外線を照射することにより硬化させて、積層体を作成した。
【0249】
作成した積層体のハードコート面の反対側に、接着剤Cを塗布量5g/m塗布し、その接着剤層を介して、188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ルミラーU34、東レ株式会社製)に貼り合わせて表面保護用透明積層体を得た。得られた表面保護用透明積層体の概略的な断面図を図4に示す。
【0250】
[比較例1]
アクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aは、実施例1と同様の方法・条件により調製した。
【0251】
188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ルミラーU34、東レ株式会社製)にアクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aを乾燥後の塗膜が5μmとなるようにバーコーターで調整して塗布した。塗布層を100℃2分で乾燥した後、高圧水銀灯で250mJ/cmの紫外線を照射することにより硬化させ積層体を作成して表面保護用透明積層体を得た。得られた表面保護用透明積層体の概略的な断面図を図5に示す。
【0252】
[比較例2]
アクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aは、実施例1と同様の方法・条件により調製した。
【0253】
厚さ75μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂フィルム(住友化学株式会社製、テクノロイ、ガラス転移温度103℃)にアクリル系重合体形成剤(ハードコート剤)Aを乾燥後の塗膜が5μmとなるようにバーコーターで調整して塗布した。塗布層を100℃2分で乾燥した後、高圧水銀灯で250mJ/cmの紫外線を照射することにより硬化させ積層体を作成した。
【0254】
作成した積層体のハードコート面の反対側に、接着剤Cを塗布量5g/m塗布し、その接着剤層を介して、188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:ルミラーU34、東レ株式会社製)に貼り合わせて表面保護用透明積層体を得た。得られた表面保護用透明積層体の概略的な断面図を図4に示す。
【0255】
[測定方法]
本発明による表面保護用透明積層体に関する各特性についての測定方法、及び効果の評価方法を以下に示す。
【0256】
<重量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフ(GPCシステム、東ソー(株)製)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。
【0257】
また、ダイナミックTG、ガラス転移温度、脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合は、下記の方法によって測定した。
【0258】
重合体のペレットを、20mmφのスクリューを有する二軸押出し機を用いて、幅150mmのコートハンガータイプTダイから溶融押出し、厚さ104μmの基材フィルムを作製した。得られた基材フィルムを、二軸延伸試験装置(カタログNo.586、(株)東洋精機製作所製)を用いて、150℃、0.1m/minの延伸速度で、1.5倍に同時二軸延伸することにより、厚さ45μmのラクトン環含有重合体フィルムを作製した。
【0259】
<ダイナミックTG>
重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
【0260】
【表1】

【0261】
<脱アルコール反応率とラクトン環構造単位の占める割合>
まず、得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる質量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において質量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による質量減少から、脱アルコール反応率を求めた。
【0262】
すなわち、ラクトン環構造を有する重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の質量減少率の測定を行い、得られた実測値を実測質量減少率(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれるすべての水酸基がラクトン環の形成に関与するためにアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の質量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した質量減少率)を理論質量減少率(Y)とする。なお、理論質量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中における脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値を脱アルコール計算式:
1−(実測質量減少率(X)/理論質量減少率(Y))
に代入してその値を求め、百分率(%)で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。そして、この脱アルコール反応率の分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の当該重合体組成における含有量(質量比)に、脱アルコール反応率を乗じることで、当該重合体中におけるラクトン環構造の含有割合を算出することができる。
【0263】
(実施例1について)
実施例1で得られたペレットにおいて、ラクトン環含有重合体における式(I)で表されるラクトン環構造単位の含有割合を計算する。この重合体の理論質量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、重合体中における2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの含有率(質量比)は組成上20.0質量%であるから、(32/116)×20.0≒5.52質量%となる。他方、ダイナミックTG測定による実測質量減少率(X)は0.34質量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.34/5.52)≒0.938となるので、脱アルコール反応率は、93.8%である。そして、この脱アルコール反応率の分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(ヒドロキシ基)を有する原料単量体の当該共重合体組成における含有率(質量比)に、脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環構造の含有率(質量比)に換算することにより、当該共重合体におけるラクトン環構造の含有割合を算出することができる。前述の製造例の場合、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該共重合体における含有率が20.0質量%、算出した脱アルコール反応率が93.8%、分子量が116の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルがメタクリル酸メチルと縮合した場合に生成する式(I)で表されるラクトン環構造単位の式量が170であることから、当該共重合体中におけるラクトン環構造単位の含有割合は、27.5(20.0×0.938×170/116)質量%となる。
【0264】
なお、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの単量体の使用量が30質量%程度以下である場合、ラクトン環構造は、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとの縮合により形成される場合がほとんどであり、ラクトン環の含有比率は、上記のように、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとの縮合から算出される値に近似できる。
【0265】
(実施例3について)
実施例3で得られたペレットにおいて、ラクトン環含有重合体における式(I)で表されるラクトン環構造単位の含有割合を計算する。この重合体の理論重量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体中の含有率(重量比)は組成上20質量%であるから、(32/116)×20≒5.52質量%となる。他方、ダイナミックTG測定による実測重量減少率(X)は0.18質量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.18/5.52)≒0.967となるので、脱アルコール反応率は96.7%である。
【0266】
そして、この脱アルコール反応率の分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(ヒドロキシ基)を有する原料単量体の当該共重合組成における含有率(重量比)に、脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環単位の構造の含有率(重量比)に換算することで、当該共重合体におけるラクトン環構造の含有割合を算出することができる。実施例3の場合、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該共重合体における含有率が20.0質量%、算出した脱アルコール反応率が96.7質量%、分子量が116の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルがメタクリル酸メチルと縮合した場合に生成する式(I)で表されるラクトン環系構造単位の式量が170であることから、当該共重合体中におけるラクトン環の含有割合は28.3(20.0×0.967×170/116)質量%となる。
【0267】
<ガラス転移温度の測定>
ガラス転移温度の測定(重合体の熱分析)は、示差走査熱量計(DSC−8230、(株)リガク製)を用いて、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50mL/minの条件で行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に準拠して、中点法で求めた。
【0268】
<擦り傷試験(ヘイズ値)>
JIS−K7136に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて測定した。
【0269】
<全光線透過率の測定>
JIS−K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて測定した。
【0270】
<鉛筆硬度の測定>
JIS−K5400に従って、各種硬度の鉛筆を90度の角度で積層体表面に当あて、荷重1kgで引っ掻き、傷が発生したときの鉛筆の硬さを表示した。
【0271】
<耐候性試験>
東洋精機製作所製ユーブコン(UVCON)UC−1型を使用し、70℃雰囲気下で紫外線照射4時間、湿潤50℃で4時間を1セットとするサイクル試験を12サイクル繰り返した。色差計(型式「SE−2000」;日本電色社製)を用いて、試験前後のL、a、bを測定した。照射前のL、a、bをL*0、a*0、b*0とし、照射後のものをL*1、a*1、b*1とし、下記式からΔEを求めた。
ΔE=[(L*1−L*0+(a*1−a*0+(b*1−b*01/2
上記ΔEの結果に基づき、下記基準によって耐候性を評価した。
○(良好):ΔE<2
△(やや良好):2≦ΔE<8
×(劣る):ΔE≧8
<色斑感の測定>
積層体を暗室中で三波長蛍光灯を光源とし反射光で観察し、色斑感を次の基準で評価した。「◎」及び「○」を色斑感が良好とした。
◎:ギラツキ、色斑が目立たない、
○:ギラツキ、色斑が見えるが気にならない、
△:部分的に緑や、紫の色斑が目立つ、
×:全体に緑や紫の色斑、ギラツキが目立つ。
【0272】
結果を下記の表に示す。
【0273】
【表2】

【0274】
上記結果を基に、本発明の表面保護用透明積層体(実施例1〜3)とラクトン環含有重合体層を有しない積層体(比較例1)との間で、比較検討を行う。まず、積層体の内部または表面のくもり度を示すヘイズ値、及び積層体の光線透過度を示す全光線透過率は、いずれも同等であった。すなわち、双方の積層体は光透過性の観点からいえば同等である。
【0275】
次に、鉛筆硬度を見ると、比較例1の2Hに対して実施例1〜3ではいずれも4Hを示した。このことは、アクリル系重合体層の直下にPETフィルムのような透明基材層ではなく本発明によるラクトン環含有重合体層が存在することにより、アクリル系重合体層における硬度が向上することを示すものである。このように、本発明の表面保護用透明積層体におけるラクトン環含有重合体層が、表面硬度の向上に寄与していることを見出した。
【0276】
次に、耐候性を見ると、比較例1に比べて実施例1〜3では有意に優れることを確認した。さらに、紫外線吸収性物質を含有する表面保護用透明積層体(実施例2、3)においては、耐候性に顕著に優れることを見出した。
【0277】
続いて、色斑感について考察する。積層体の各層間の界面で干渉が生じ、その結果、積層体の表面に色斑感が発生しうる。かかる色斑感は、太陽光や白熱灯よりも三波長蛍光灯という特殊な蛍光灯下で、積層体が透明なほど感知される。上記の結果より、本発明の表面保護用透明積層体は、比較例のような構成の積層体と比較して顕著に透明であることを見出した。
【0278】
以上の結果より、本発明による表面保護用透明積層体は、光透過性、表面硬度及び耐候性の全てに優れ、さらに色斑感(干渉縞)も発生することなく外観にも優れることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0279】
本発明は、窓貼り用フィルム、太陽電池の受光側の基材、看板・建材等保護フィルム、その他屋外で使用する表面保護用透明積層体として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】実施例1で得られた表面保護用透明積層体の概略構成を示す断面図である。
【図2】実施例2で得られた表面保護用透明積層体の概略構成を示す断面図である。
【図3】実施例3で得られた表面保護用透明積層体の概略構成を示す断面図である。
【図4】実施例4で得られた表面保護用透明積層体の概略構成を示す断面図である。
【図5】比較例1で得られた表面保護用透明積層体の概略構成を示す断面図である。
【図6】比較例2で得られた表面保護用透明積層体の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0281】
1 アクリル系重合体層、
2 ラクトン環含有重合体層(MHMA含有率20%)、
3 接着剤層、
4 透明基材層、
5 紫外線遮蔽接着剤層、
6 紫外線吸収性物質含有ラクトン環含有重合体層、
7 ラクトン環含有重合体層(MHMA含有率10%)、
8 PMMA樹脂フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトン環含有重合体層を含む表面保護用透明積層体であって、
前記ラクトン環含有重合体層は、ラクトン環系構造を含む重合体を有する、表面保護用透明積層体。
【請求項2】
透明基材層、ラクトン環含有重合体層及びアクリル系重合体層が積層状態に配置されてなる、請求項1に記載の表面保護用透明積層体。
【請求項3】
前記アクリル系重合体層は、ハードコート層である、請求項2に記載の表面保護用透明積層体。
【請求項4】
前記ラクトン環系構造の単位は、下記式(1)で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護用透明積層体。
【化1】

式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。
【請求項5】
前記ラクトン環系構造を含む重合体は、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構造を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面保護用透明積層体。
【請求項6】
前記ラクトン環含有重合体層、並びに/または前記ラクトン環含有重合体層及び前記透明基材層の間の層は、紫外線吸収性物質を含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の表面保護用透明積層体。
【請求項7】
前記ラクトン環含有重合体層のガラス転移温度は110℃以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面保護用透明積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−255394(P2009−255394A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107218(P2008−107218)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】