説明

表面処理装置

【課題】表面処理装置において、処理時間の短縮化を図ることで、一連の表面処理作業での処理効率を高め、もって被処理物の生産性を高めることができるようにする。また設置用の占有面積をコンパクトに抑え、装置としてのコンパクト化も図る。
【解決手段】処理槽10と、処理槽10内でバスケット6を保持するバスケット保持手段11と、処理槽10で使用する処理液を貯留する管理槽13と、管理槽13から処理槽10へ処理液を供給可能である処理液送給手段46と、処理槽10内へ洗浄水を供給可能である水洗手段100とを有し、処理液送給手段46は処理液用回収管49を有し、水洗手段100は浄水用回収管103を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
めっき等の表面処理に関し、処理時間の短縮化を目指して種々の装置が提案されている。例えば籠型のバレルを用い、工程間の移送時にはバレルを水平に保持させるが、めっき処理などを行う場合にはバレルを斜めに傾斜させ、更に回転させるようにした装置などが提案されている(特許文献1等参照)。このようにバレルを傾斜状態にして回転させることで、バレル内のワークに攪拌作用を促進させるというものである。
上記特許文献1では、「めっき処理を行う処理装置」と、「めっき処理以外の処理を行う処理装置」と、「水洗を行う処理装置」との、三種類の処理装置が、それぞれ別個独立した別の装置として開示されている。
【0003】
すなわち、「めっき処理を行う処理装置」や「めっき処理以外の処理を行う処理装置」によりめっき処理やめっき処理以外の処理を行った後、バレルを「水洗を行う処理装置」へと移し替え、この「水洗を行う処理装置」によって処理液の洗い落としを行うということである。
この「水洗を行う処理装置」において、水槽は別のスペースに隣接又は離反して設置され、「水洗を行う処理装置」との間が供給管や回収管で配管接続されるようになっていた。
【特許文献1】特開2003−147593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1のように、従来の表面処理装置は、「めっき処理を行う処理装置」や「めっき処理以外の処理を行う処理装置」と、「水洗を行う処理装置」とは別個独立した別の装置であり、これら各処理装置間でバレルの出し入れや移送が必要であったため、処理時間を長く要するということがあった。このことが、一連の表面処理作業において処理効率(被処理物の生産性)を高めるうえで重大なネックとなっていた。
また従来の表面処理装置では、「水洗を行う処理装置」の存在自体が設置用の占有面積を必要とするものであり、これに加えて、「水洗を行う処理装置」と水槽とが隣接又は離反した状態で配管接続されていたので、設置用の占有面積としてかなり広いスペース(敷地)が必要となっている。
【0005】
そのうえ、供給管や回収管の配管接続は、処理槽や水槽を設置位置(工場内)へ搬入し、それらを設置(固定)後に行わざるを得ないために当然に所定の工期が必要であると共に設備として大掛かり化し、設備費用のコストアップに繋がり、配管後にも作業者の移動に至極邪魔となるなど、多くの問題を有していた。
なお、処理槽内で被処理物を収容する籠型の入れ物について、上記特許文献1では「バレル」と呼んでいるが以下では「バスケット」と言う。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、処理時間の短縮化を図ることで、一連の表面処理作業での処理効率を高め、もって被処理物の生産性を高めることができるようにした表面処理装置を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、設置用の占有面積をコンパクトに抑えることができ、また装置としてのコンパクト化も図り、設置に関する従来欠点を改良除去できるようにした表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る表面処理装置は、処理液を貯留可能な処理槽と、被処理物を収容するバスケットを処理槽内で保持可能とすべく処理槽内に設けられたバスケット保持手段と、処理槽で使用する処理液を貯留して品質管理する管理槽と、この管理槽から処理槽へ処理液を供給可能に設けられた処理液送給手段と、処理槽内へ洗浄水を供給可能に設けられた水洗手段とを有し、処理液送給手段は処理槽内の処理液を回収する処理液用回収管を有し、水洗手段は処理槽内の洗浄水を回収する洗浄水用回収管を有している。
【0008】
このように、本発明に係る表面処理装置では処理液送給手段及び処理液用回収管を有するばかりでなく、水洗手段及び洗浄水用回収管をも有した構成であるので、処理槽内への処理液の供給及び回収と、洗浄水の供給及び回収とが可能になっている。従って、処理槽内にて表面処理を実施した後、バスケットを取り出すことなく引き続き、水洗をも実施することができるものである。
このようなことから、本発明に係る表面処理装置では水洗を行うための専用の処理装置というものを省略することができることになり、各表面処理装置間でのバスケットの出し入れや移送の手間を大幅に削減することができる。その結果、処理時間の大幅な短縮が図れ、一連の表面処理作業での処理効率を高め、もって被処理物の生産性を高めることができるのである。
【0009】
また、水洗を行うための専用の処理装置が不要であるため、一連の表面処理作業を実施する装置群として、その設置用の占有面積をコンパクトに抑えることができ、設置に関する従来欠点を払拭できるものである。
本発明に係る表面処理装置では、処理槽を、正立姿勢にさせる中立ポジションとこの中立ポジションを境にした相対逆角度の傾斜姿勢にさせる二つの傾斜ポジションとの合計3ポジションに対して択一的に選択可能なように揺動させる傾動手段をも、有したものとすることができる。
【0010】
この場合、処理液送給手段の処理液用回収管は、処理槽が一方への傾斜ポジションとされたときに処理槽内の処理液が処理槽の槽外へ流出可能となる状態で設けられたものとし、水洗手段の洗浄水用回収管は、処理槽が他方への傾斜ポジションとされたときに処理槽内の洗浄水が処理槽の槽外へ流出可能となる状態で設けられたものとする。
このような傾動手段を設けることで、処理槽を一方への傾斜ポジションとして表面処理を実施し、処理槽を他方への傾斜ポジションとして水洗を実施し、更に処理槽を中立ポジションとしてバスケットの出し入れや、場合によっては脱水をも実施する、といった使い分けができるのである。
【0011】
これであれば、個々の処理槽において表面処理、水洗、脱水、バスケット出し入れといった作業を高能率的に進行させ、消化できるものとなり、表面処理作業の一層の処理効率向上を推進できることになる。また処理液送給手段での処理液用回収管の取付構造や、水洗手段での洗浄水用回収管の取付構造などを簡潔にして、処理槽をはじめとする表面処理装置全体としてのコンパクト化を一層推進できる利点に繋がる。
本発明に係る表面処理装置は、水洗手段により処理槽へ一旦供給された後に当該処理槽から排水される洗浄水を回収して貯留する水槽をも有したものとするのが好適である。このようにすることで表面処理装置全体としてのコンパクト化を一層推進できる利点に繋がる。
【0012】
この場合、管理槽と水槽とは隣接して設けられていると共にこれら管理槽及び水槽の上部に処理槽が設けられた二階建て構造とすればよい。
すなわち、本発明に係る表面処理装置は処理槽と管理槽との間に処理液送給手段が既に組み込まれ、処理槽と水槽との間に水洗手段が既に組み込まれた構成となるので、本発明に係る表面処理装置を設置するには、設置場所への搬入と設置を同時に完了できることになり、ここにおいて処理槽と管理槽間、処理槽と水槽間を接続するような配管作業は一切必要ない。
【0013】
また、設置に要する占有面積は、管理槽及び水槽と処理槽とが二階建てとなっていることに伴って、極めてコンパクト化されている。これらのことから、設置に関する従来欠点を全て改良除去できるものである。
そのうえ、本発明に係る表面処理装置では処理槽と管理槽との接続間が短いため、処理液を常に安定したベストコンディション(殊に温度管理の面)に保てるようになり、良質の表面処理が得られると共に、処理槽に対する処理液の出し入れに関しての時間短縮化も図れるようになっている。
【0014】
処理液送給手段の処理液用回収管は、処理槽内の処理液が管理槽へ流出する側の傾斜ポジションとされたときに、当該処理槽において傾きの下側となる位置に、処理槽と管理槽とを連通させる状態で設けるようにすればよい。また水洗手段の洗浄水用回収管は、処理槽内の洗浄水が水槽へ流出する側の傾斜ポジションとされたときに、当該処理槽において傾きの下側となる位置に、処理槽と水槽とを連通させる状態で設けるようにすればよい。
本発明に係る表面処理装置は、バスケット保持手段により保持したバスケットの中心を回転軸心としてこのバスケット保持手段を回転可能にするための回転駆動部をも有したものとするのが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表面処理装置では、処理時間が短縮されて一連の表面処理作業での処理効率が高められるので、被処理物の生産性を高めることができる。また、設置用の占有面積がコンパクトに抑えられ、装置としてのコンパクト化も図られることになり、設置に関する従来欠点が払拭される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図11は、本発明に係る表面処理装置1の第1実施形態を示しており、図12はこの表面処理装置1を複数台用いて構築した表面処理システム2を示している。この表面処理システム2は、表面処理工程3及び脱水工程5が処理順序にしたがって一連に配置され、被処理物を収容するバスケット6(図1等参照)がこれら各工程間をその配置順に従って移送される構成となっている。図例では、表面処理システム2の始端位置にロードステーション8が付属され、終端位置にアンロードステーション9が付属されたものとしてある。これら各ステーション8,9は必須不可欠ではない。
【0017】
なお、バスケット6は底板6aとこの底板6aの回りで立ち上がる周壁6bとを有する籠型とされ、これら底板6aや周壁6bが多孔板や網構造材等により形成されて透水性を有したものとなっている。周壁6bは、上半分がストレートの円筒形に形成され、下半分が下すぼみのテーパコーン状に形成されたものを使用するものとする。
バスケット6の移送は、例えば上方軌道(図示略)に沿って移動可能とされた昇降型ハンドリング装置7等による。
図例では、表面処理工程3として、脱脂工程3a、酸洗工程3b、電解工程3c、めっき第1〜第5工程3d〜3h、硝酸工程3i、三価白工程3jが採用されており、また全工程の終段を締めくくるように脱水工程5が付随される配置となっている。めっき第1〜第5工程3d〜3hは例えば亜鉛めっきである。被処理物としてはボルトやナット等をはじめとして種々様々なものに適応されるものであって、何ら限定されるものではない。
【0018】
この表面処理システム2において注目すべきところは、本来ならば各表面処理工程3(3a〜3j)ごとにそのすぐ二次側に水洗工程を付随させるのが普通である(或いは付随させなければならない)ところ、本発明に係る表面処理装置1は後述するように個々独立して実施する水洗モードでの運転により、十分な洗浄効果を得ることができるので、この水洗工程は省略され、表面処理工程3(3a〜3j)同士が直接的な隣接関係で設置されている点にある。
なお、本発明に係る表面処理装置1では、後述するように個々独立して実施する脱水モードでの運転により、十分な脱水効果をも得ることができるので、上記した脱水工程5に関しても必須不可欠ではなく、省略することが可能である。あくまでも、本実施形態においては一連の表面処理を終えた最終段階で、集中的に被処理物の完全脱水を行わせる(各工程間では必要最小限の脱水効果に留めておく)ような運転態様とするために、終段に脱水工程5を付属させているにすぎない。
【0019】
本発明に係る表面処理装置1は、表面処理工程3(3a〜3j)及び脱水工程5のうち、酸洗工程3bなど、処理液への特別な対策(耐酸性等)が必要とされる工程を除いた全ての工程で同一構成のものを採用することも可能であるし、いずれかの工程だけ選択的に本発明に係る表面処理装置1を採用することも可能である。勿論、処理液への特別な対策(耐酸性等)を施せば、表面処理工程3(3a〜3j)及び脱水工程5の全ての工程で同一構成の表面処理装置1を採用することも可能である。
図1乃至図4に示すように、本発明に係る表面処理装置1は、処理液を貯留可能な処理槽10と、この処理槽10内でバスケット6を保持可能とすべく処理槽10内に設けられたバスケット保持手段11とを有している。このバスケット手段11は回転自在とされており、表面処理装置1はこのバスケット保持手段11に回転力を伝える回転駆動部12をも有している。
【0020】
処理槽10の下部には管理槽13が設けられている。また処理槽10の下部には水槽14が設けられている。この水槽14は管理槽13と同じ高さで設けられ、互いに隣接関係に配置されている。管理槽13は、処理槽10の中央下部を境として処理槽10の一側方へ張り出す大きさに形成されており、水槽14は、処理槽10の中央下部を境として処理槽10の他側方へ張り出す大きさに形成されている。
すなわち、処理槽10は管理槽13及び水槽14を基礎としてこれら両槽の上部に跨る状態で二階建て状に設けられたものとなっている。
【0021】
処理槽10は上部が開放されてバスケット6の搬入及び搬出が可能になっており、この上部開放部分には蓋16が設けられている。この蓋16は、流体圧シリンダ等の蓋開閉装置17によって開閉可能とされている。この蓋16に対して陰極20が設けられている。この陰極20は、処理槽10内にバスケット6を収納した状態で蓋16を閉じたときに、この蓋16を閉じる動きによってバスケット6内へと差し込まれ、バスケット6内に被処理物が装填されていればこの被処理物に接触するようになっている。
蓋16は、管理槽13が張り出す側に面した処理槽10の上端辺部に沿って揺動支点部70が設けられて揺動開閉自在とされていると共にこの揺動支点部70のまわりへ突出する揺動レバー71を有している。蓋開閉装置17は、蓋16の揺動レバー71を押し引きする駆動具72を有している。本実施形態ではこの駆動具72に流体圧シリンダーを用いた。
【0022】
このように蓋16の揺動支点部70や揺動レバー71、蓋開閉装置17の駆動具72などを、処理槽10において管理槽13が張り出す側(又は水槽14が張り出す側)へ配置させると、これらが管理槽13(又は水槽14)の上方域に収められる状態となる。このことが、表面処理装置1としてのコンパクト化に有益となる。
上記のように蓋16に対して陰極20を設ける構造については、従来の表面処理装置として未だ提案されたものはなく、新規構造である。蓋16に対して陰極20を設けることで、陰極20の配置や陰極20への電流印加(配線)が容易であると共に省スペース化が図れ、また被処理物に対する陰極20の接触が確実となる等の各種利点が得られるものである。
【0023】
なお、蓋16に対して陰極20を上下動自在に保持させておき、蓋16の開閉を行う際に陰極20を必要に応じて上げ下げさせる(蓋16から完全に引き抜く場合を含む)ようにしてもよい。このときの陰極20の上下動も、例えば流体圧シリンダやモータ駆動機構等によって機械的に行わせることが可能である。
バスケット保持手段11はバスケット6の底板6aを支持する載置台25を有している。またバスケット保持手段11は、バスケット6の周壁6bを取り囲む包囲壁26を有している。この包囲壁26は、載置台25まわりで立ち上がるような配置とされており、これら載置台25と包囲壁26とは相互連結されている。また、このバスケット保持手段11には傾動手段27が設けられている。
【0024】
載置台25は平面視して円形に形成されており、その中心部にはバスケット6の底板6aよりも径小の円盤形をした支持突起25a(図2参照)が設けられている。この支持突起25aによって底板6aとの接触(支持安定性)を確実化させてある。
図5及び図6に示すように、包囲壁26は、バスケット6の周壁6bを取り囲んだ状態としての周方向に沿って互いに所定間隔で多数の支持柱30が立設されることによって形成されている。支持柱30は、バスケット6の中心部から径方向外方へ延びる方向で板面を沿わすように並べられる板片として形成されている。
【0025】
なお、各支持柱30は、載置台25の外周部に沿った配置となっており、載置台25の回転中心(「バスケット6の中心(バスケット6を平面視したときの中心)」に同じ)から径方向外方へ延びる方向で板面を沿わした状態と言うこともできる。
このように多数本の支持柱30の集合体として包囲壁26が形成されているため、包囲壁26は、脱水時などの高速回転時にバスケット6により付加される横荷重にも十分に耐え得る堅牢構造を持つに至っている。また、各支持柱30の相互間によって透水性も十分に高められたものとなっているのである。なお、このように多数本の支持柱30を用いて包囲壁26を形成させると、包囲壁26を低廉に製作できる利点もある。
【0026】
本実施形態において包囲壁26は、図7に示すように、ストレートの短円筒形を呈する上部半体26aと、下すぼみのテーパコーン状(逆円錐台形)を呈する下部半体26bとを別々に製作したうえで、これらをボルト止め又は溶接等で連結する構造とした。上部半体26aは、2枚の円環体31a間を長方形状の板片とされた支持柱30で連結した構造であり、また下部半体26bは、上部半体26aで用いたのと同じ円環体31aとこれより径小の円環体31bとの間を平行四辺形状の板片とされた支持柱30で連結した構造となっている。
【0027】
この包囲壁26は、回転駆動部12による回転中にバスケット6が径方向のガタツキを生じさせない程度に、当該バスケット6の周壁6b外周面に対して微小周間を保持可能な内径で形成されている。具体的には、包囲壁26は、包囲壁26とバスケット6の周壁6bとの周間Gが3mmを超えないようにする内径で形成されている。この周間Gは、好ましくは2mm以下とするのがよい。
本実施形態では、上記したように包囲壁26をバスケット6の周壁6bに対応して下すぼみのテーパコーン状に形成されたものとしているので、バスケット保持手段11でバスケット6を保持する状態とすれば、必然的に包囲壁26の内周面とバスケット6における周壁6bの外周面とが接触するようになる。そこで、包囲壁26における上部半体26aの部分で、バスケット6の周壁6bとの周間Gを上記規定値とさせた。
【0028】
包囲壁26をバスケット6の周壁6bに対応したテーパーコーン状にすることで、包囲壁26の内周面とバスケット6の外周面との接触を確実化できることは、バスケット6とバスケット保持手段11との両者間での導通を確実にできることに繋がる。そのため、バスケット保持手段11において載置台25は必ずしも必要ではない。
また、バスケット保持手段11でバスケット6を保持させて、バスケット保持手段11における包囲壁26の内周面とバスケット6における周壁6bの外周面とが接触したとき、バスケット保持手段11における載置台25や包囲壁26の中心とバスケット6の中心とが自動調心されることになる。これらのことから、バスケット6やバスケット保持手段11(殊にバスケット6)において、その寸法精度の誤差を吸収できる利点に繋がる。すなわち、バスケット6等はその製作精度をそれほど高精度化させる必要がなく、またバスケット6等が熱収縮変形や使用中の多少の変形などを起こした場合でも表面処理装置1としての稼働をそのまま続けることができることになる。
【0029】
図1及び図2に示したように、このようなバスケット保持手段11において、載置台25の下面には包囲壁26の中心位置に一致するようにして回転軸32が突設されており、この回転軸32が処理槽10の槽底部33に設けられた軸受け34を介して回転自在に保持されている。なお、この軸受け34は、処理槽10内に貯留される処理液に対して防水性を保持すると共に、処理液に対する耐薬品性を有するものとなっている。
回転駆動部12には、バスケット保持手段11の回転速度を「表面処理に適した処理速度」と「脱水に適した脱水速度」とに切り替え可能にする変速手段40が設けられている。処理速度は2rpm以上12rpm以下の範囲(好ましくは3rpm以上10rpm以下)であり、脱水速度は180rpm以上600rpm以下の範囲(好ましくは200rpm以上500rpm以下)である。
【0030】
この変速手段40は、回転駆動部12に設けられる回転駆動用モータ41をインバータ制御する変速回路42を有している。そのため、図8に示すように回転駆動用モータ41の加速や減速は、緩やかな増減傾向で制御されるものとなる。これによりバスケット保持手段11に対するバスケット6の保持状態やバスケット6内に収容された被処理物に対し、慣性的な衝撃(瞬発的な始動や急停止等)が起こることはない。
ところで、本実施形態では、バスケット保持手段11自体(載置台25及び包囲壁26)がSS材などの導体により形成されており、陽極として使用できるようにしてある。これに伴い、バスケット保持手段11の載置台25に対し、回転軸32が電気的な絶縁をされた状態で連結されるようになっており、バスケット保持手段11と処理槽10とが直接的に導通しないようにしてある。
【0031】
またバスケット保持手段11自体で陽極を形成可能とさせていることに関連させて、バスケット6はPVC、PP、PEの樹脂材とするか、又は鉄やステンレスを芯材として形成させたうえで上記樹脂材によりコーティングすることにより、非導体とさせている。これによってバスケット保持手段11(陽極)と陰極20との間での短絡が起こるのを可及的に抑えて、被処理物に対する表面処理が十分に優先されるようにしている。
また、バスケット保持手段11の包囲壁26は、多数本の板片状支持柱30を有していることから、包囲壁26としての表面積、即ち、陽極面積を可及的に拡大させたものとなっている。そのため、陰極対陽極のデシ比を1対1、又は陰極より陽極を大きくできるといった利点に繋がる。従って表面処理時間の短縮や、良質の表面処理を施す点で極めて有益なものとなっている。
【0032】
上記した傾動手段27は、処理槽10を全体として傾動させることでバスケット保持手段11を傾動させるもので、処理槽10を、正立姿勢にさせる中立ポジションと、この中立ポジションを境にした相対逆角度の傾斜姿勢にさせる二つの傾斜ポジションとの合計3ポジションに対して、択一的に選択可能なように揺動させる。
中立ポジションにおいて、処理槽10を正立姿勢にさせるというのは、バスケット6の回転軸心を鉛直状態にさせることを言う(図10(A)参照)ものであり、これによって処理槽10に対するバスケット6の出し入れ(バスケット保持手段11に対するバスケット6の着脱)ができる状態になったり、後述する脱水モードを実施可能になったりする。
【0033】
これに対し、一方の傾斜ポジションにおいて処理槽10を傾斜姿勢にさせると、バスケット6の回転軸心は斜めに傾斜して、後述する処理モードとなり(図9(B)参照)、他方の傾斜ポジションにおいて処理槽10を相対逆角度の傾斜姿勢にさせると、バスケット6の回転軸心はやはり斜めに傾斜して、後述する水洗モードとなる(図10(B)参照)。
このような傾動手段27は、処理槽10を傾動させるときの傾動軸心(支点軸心)に沿った配置で、処理槽10の両側位置に傾斜支持台73を有しており、これら各傾斜支持台73と処置槽10の側面との間に傾動支軸74が架け渡された構造となっている。言うまでもなく、処理槽10における両側の傾動支軸74は同軸配置である。
【0034】
このようなことから、バスケット手段11を含めた処理槽10全体として、傾動支軸74のまわりで揺動自在に保持されている。一方の傾動支軸74に対して例えばハンドル車75(図3参照)等を直接又は歯車装置76を介して間接的に設けることで、このハンドル車75の回転操作として処理槽10を傾動させることができる。なお、ハンドル車75に変えてモータ駆動装置などを設けることでこの傾動を電動化させてもよい。
この傾斜支持台73の一方は、管理槽13において処理槽10から張り出した部分(又は水槽14において処理槽10から張り出した部分)に設置されており、従ってこの傾斜支持台73は、管理槽13(又は水槽14)の上方域に収められる状態となっている。そのため、表面処理装置1としてのコンパクト化に有益となっている。
【0035】
処理モードでは、処理槽10及びバスケット保持手段11と共にバスケット6が傾斜した状態で回転駆動部12が作動し、バスケット6が鈍速回転されるようになる。そのためバスケット6内では被処理物が底板6a(底板6aは傾いている)上で最も下位となる片隅(周壁6b寄り)に塊状に偏りつつ、鈍速回転による転がり作用を受けて巧く攪拌されるようになる。その結果、表面処理時間の短縮や、良質の表面処理(十分厚の表面処理膜が得られ且つ均一厚となる等)を施す点で極めて有益なものとなる。
また脱水モードでは、処理槽10及びバスケット保持手段11と共にバスケット6が正立(水平)状態で回転駆動部12が作動し、バスケット6が高速回転されるようになる。そのためバスケット6内では被処理物が底板6a(底板6aは水平になっている)上の外周寄り全周で均一に散らばり、安定的でバランスのよい高速回転(遠心力)を受けるようになる。その結果、確実で迅速に脱水ができるといった利点に繋がるものである。
【0036】
水洗モードも、処理モードと同様に、処理槽10及びバスケット保持手段11と共にバスケット6が傾斜した状態で回転駆動部12が作動し、バスケット6が鈍速回転されるようになる。そのためバスケット6内では被処理物が底板6a(底板6aは傾いている)上で最も下位となる片隅(周壁6b寄り)に塊状に偏りつつ、鈍速回転による転がり作用を受けて巧く攪拌されるようになる。その結果、水洗時間の短縮や、処理液の確実な洗い落としが得られる点で極めて有益なものとなる。処理モードとの違いは傾斜の向きだけである。なお、バスケット6の回転速度は適宜変更可能である。
【0037】
図4に示すように、管理槽13には処理液が貯留され、必要に応じて処理液の濃度調整部(例えば亜鉛等の溶解材44を投入する部分など)45が設けられている。
処理槽10と管理槽13との間には処理液送給手段46が設けられている。この処理液送給手段46は、例えば管理槽13から処理槽10へ処理液を送る供給管47(図3に示すように傾動支軸74内を通って処理槽10内と連通している)と、この供給管47に設けられたポンプ48と、処理槽10から管理槽13へ処理液を戻す処理液用回収管49とを有したものとすることができる。
【0038】
処理液用回収管49は、処理槽10内の処理液が管理槽13へ流出する側の傾斜ポジションとされたときに、処理槽10内の処理液が処理槽10の槽外へ流出可能となる状態で設けられている。具体的には、図9(B)及び図3に示すように、傾斜ポジションとされた処理槽10において傾きの下側となる位置に、処理槽10と管理槽13とを連通させる状態で設けられている。
処理液用回収管49は、パイプ材等の剛性管でもよいしホース等の軟質管でもよく、また処理槽10内の処理液水面を一定水位に規制するためのオーバーフロー管を兼ねるものとして形成してもよい。
【0039】
上記したように、管理槽13は、処理槽10よりも側方へ張り出す大きさに形成されている(図1及び図3参照)。そして、この管理槽13において、処理槽10の側方へ張り出した位置に処理液送給手段46のポンプ48が設置されている。また処理液の濃度調整部45もこの位置に設けられている。
なお、処理液用回収管49には遠隔操作によって開閉操作可能な開閉弁(図示略)を設けてもよい。この開閉弁を設ける場合、ポンプ48は管理槽13から処理槽10への処理液供給用として使用し、処理槽10内が所定水位となったときに開閉弁を閉じ、これと同時にポンプ48も停止させるようにすればよい。処理槽10から管理槽13への処理液回収は、開閉弁を開いて処理液を自然流下させればよい。勿論、処理槽10から管理槽13への処理液の回収時にもポンプ48(又は回収専用のポンプを別に設けてもよい)を運転させるといった使い方ができる。
【0040】
処理液用回収管49に開閉弁を設けない場合では、ポンプ48の連続運転によって管理槽13から処理槽10への処理液供給を常態化させ、これによって処理槽10内を一定水位に保持させるようにすればよい。処理槽10から管理槽13への処理液回収時にはポンプ48を停止させて処理液を自然流下させることになる。このように開閉弁を設ける仕様とするか設けない仕様とするかは、適宜変更可能である。
上記のようにして、管理槽13から処理槽10へ処理液を供給して処理槽10内に保持されるバスケット6を処理液への浸漬状態にしたり、反対に、処理槽10から管理槽13へ処理液を戻して処理槽10内に保持されるバスケット6を処理液と非接触の乾燥状態にしたりの切り替えが可能になっている。従って、表面処理後に実施する脱水が、個々の処理槽10ごとに独自のタイミングで行える(他の処理槽10でのタイミングと歩調を合わせなくても良い)という利点に繋がる。
【0041】
処理槽10には水洗手段100が設けられている。この水洗手段100は、例えば水槽14から処理槽10へ洗浄水を送る供給管101(図3に示すように蓋17に設けたスプレーノズル105へ配管接続してある)と、この供給管101に設けられたポンプ102と、処理槽10から水槽14へ洗浄水を戻す洗浄水用回収管103とを有したものとすることができる。
なお、供給管101は、スプレーノズル105への配管接続が限定されるものではなく、処理液送給手段46の供給管47と同様に、他方の傾動支軸74内を通って処理槽10内と連通させるようにしてもよい(図3参照)。
【0042】
水槽14は、水洗手段100により処理槽10へ一旦供給された後に、この処理槽10から排水される洗浄水を回収して貯留する。
洗浄水用回収管103は、処理槽10内の洗浄水が水槽14へ流出する側の傾斜ポジションとされたときに、処理槽10内の洗浄水が処理槽10の槽外へ流出可能となる状態で設けられている。具体的には、図10(B)及び図3に示すように、傾斜ポジションとされた処理槽10において傾きの下側となる位置に、処理槽10と水槽14とを連通させる状態で設けられている。
【0043】
洗浄水用回収管103は、パイプ材等の剛性管でもよいしホース等の軟質管でもよく、また処理槽10内の洗浄水水面を一定水位に規制するためのオーバーフロー管を兼ねるものとして形成してもよい。
上記したように、水槽14は、処理槽10よりも側方へ張り出す大きさに形成されている(図1及び図3参照)。そして、この水槽14において、処理槽10の側方へ張り出した位置に水洗手段100のポンプ102が設置されている。
なお、洗浄水用回収管103には遠隔操作によって開閉操作可能な開閉弁(図示略)を設けてもよいし、設けなくてもよいものであり、この点は、処理液送給手段46の処理液用回収管49と同様である。
【0044】
また、水洗手段100としては、供給管やポンプ等を具備せず、適宜給水設備などから直接、処理槽10へ洗浄水を供給させるように配管してもよい。この場合、水槽14や洗浄水用回収管103をも省略して、処理槽10にて使用済みの洗浄水を直接、排水するように配管してもよい。
表面処理装置1の動作状況としては、まず図9(A)に示すように、処理槽10において蓋16が開いた状態で待機し、バスケット6が処理槽10内に搬入されると蓋16が閉じられる。これと同時に、蓋16に設けられた陰極20がバスケット6内へ挿入されることになる。
【0045】
次に、図9(B)に示すように、管理槽13内で濃度調整された処理液がポンプ48の作動によって管理槽13から供給管47(図2等参照)を介して処理槽10内へと供給され、処理槽10内の処理液が所定水位とされる。そして傾動手段27により処理槽10が一方の傾斜ポジションへと傾動され、バスケット保持手段11と共に、これに保持されたバスケット6も同じ方向へ傾斜される。なお、処理槽10を傾斜させた後に処理槽10へ処理液を供給させるようにしてもよい。
かくしてバスケット6内の被処理物は、傾斜したバスケット6の低位部に塊状に偏り、処理液内に浸漬された状態になる。また蓋16に設けられた陰極20とバスケット6内の被処理物とが接触した状態になる。これらの状態となった後、回転駆動部12に備えられる回転駆動用モータ41が、変速手段40の変速回路42(図1参照)によるインバータ制御を受けつつバスケット保持手段11を鈍速回転(処理モード)させることになる。
【0046】
ここにおいてバスケット6は、バスケット保持手段11の包囲壁26に対し、少なくとも周方向の一箇所(傾斜した状態での低位部)で当接状態が維持されることになるので、バスケット6とバスケット保持手段11(即ち、陽極)との間で電気的な導通状態は確実に維持されていることになる。
加えて、バスケット保持手段11の包囲壁26をバスケット6の周壁6bに対応して下すぼみのテーパコーン状に形成させているので、包囲壁26の内周面とバスケット6における周壁6bの外周面との接触は確実なものとなっており、この点でも、バスケット6とバスケット保持手段11との両者間での導通が確実化されていることになる。かくして、バスケット保持手段11(陽極)と陰極20との間へ電圧を印加することにより、バスケット6内の被処理物に対する表面処理が開始される。
【0047】
表面処理に必要な所定時間の経過後(12分以内で十分である)、バスケット保持手段11(陽極)と陰極20との間の電圧印加が解除され、図8に示すように回転駆動用モータ41は一旦停止される。そして図10(A)に示すように、処理槽10内の処理液が管理槽13へ回収されて処理槽10内が空にされると共に、傾動手段27により処理槽10が全体として正立(水平)状態に戻される。これら処理液の回収と処理槽10の正立移行とはどちらが先行してもよい。
これらの状態となった後、回転駆動部12に備えられる回転駆動用モータ41が、変速手段40の変速回路42(図1参照)によるインバータ制御を受けつつバスケット保持手段11を高速回転(脱水モード)させることになり、脱水が開始される。
【0048】
なお、この脱水時において、バスケット6内の被処理物は、バスケット6の底板6a上でその外周寄りで全周的に均一に散らばるようになり、安定的でバランスのよい高速回転(遠心力)を受けることになる。そのため、確実で迅速な脱水が実施されることになる。
また、バスケット保持手段11が高速回転をはじめるときやこの高速回転から停止する際には、回転駆動用モータ41が、図8に示すように変速手段40の変速回路42(図1参照)によるインバータ制御を受けてその加速や減速が緩やかな増減傾向に制御されることになる。そのため、バスケット保持手段11に対するバスケット6の保持状態や、バスケット6内に収容された被処理物に対し、慣性的な衝撃(瞬発的な始動や急停止等)が起こることがなく、バスケット保持手段11、バスケット6、及び被処理物において、破損などは起こらない。
【0049】
脱水に必要な所定時間の経過後(被処理物の大きさ、形状、量、処理液の粘度などにより異なる)、図8に示すように回転駆動用モータ41は一旦停止される。そして図10(B)に示すように、傾動手段27により処理槽10が上記処理モードのときとは逆の傾斜ポジションへと傾動され、バスケット保持手段11と共に、これに保持されたバスケット6も同じ方向へ傾斜される。なお、処理槽10を傾斜させた後に処理槽10へ処理液を供給させるようにしてもよい。
このときもバスケット6内の被処理物は、傾斜したバスケット6の低位部に塊状に偏る。ここで水洗手段100が処理槽10内への洗浄水供給を開始し、回転駆動部12に備えられる回転駆動用モータ41が、変速手段40の変速回路42(図1参照)によるインバータ制御を受けつつバスケット保持手段11を鈍速(又は高速)で回転させることになる。なお、水洗手段100は、予め処理槽10内を洗浄水で所定水位まで貯留させるように設定しておいてもよいし、貯留させることなく、スプレーノズル105から洗浄水を噴射させるだけの設定としておいてもよい。また洗浄水は水でも温水でもよく、場合によっては適宜薬液などとしてもよい。
【0050】
水洗に必要な所定時間の経過後(被処理物の大きさ、形状、量、処理液の粘度などにより異なる)、図8に示すように回転駆動用モータ41は一旦停止される。そして図11(A)に示すように、処理槽10内の洗浄水が水槽14へ回収されて処理槽10内が空にされると共に、傾動手段27により処理槽10が全体として正立(水平)状態に戻される。これら洗浄水の回収と処理槽10の正立移行とはどちらが先行してもよい。
これらの状態となった後、回転駆動部12に備えられる回転駆動用モータ41が、変速手段40の変速回路42(図1参照)によるインバータ制御を受けつつバスケット保持手段11をもう一度、高速回転(脱水モード)させることになり、二度目の脱水が開始される。
【0051】
そして、この二度目の脱水後、図11(B)に示すように、処理槽10の蓋16が開かれ、バスケット6が搬出される。
以上詳説したところから明かなように、本発明に係る表面処理装置1では処理液送給手段46及び処理液用回収管49を有するばかりでなく、水洗手段100及び洗浄水用回収管103をも有した構成であるので、処理槽10内への処理液の供給及び回収と、洗浄水の供給及び回収とが可能になっている。従って、処理槽10内にて表面処理を実施した後、バスケット6を取り出すことなく引き続き、水洗をも実施することができるものである。
【0052】
従って、本発明に係る表面処理装置1では水洗を行うための専用の処理装置というものを省略することができることになり、各表面処理装置1間でのバスケット6の出し入れや移送の手間を大幅に削減することができる。その結果、処理時間の大幅な短縮が図れ、一連の表面処理作業での処理効率を高め、もって被処理物の生産性を高めることができるのである。
また、水洗を行うための専用の処理装置が不要であるため、一連の表面処理作業を実施する装置群として、その設置用の占有面積をコンパクトに抑えることができ、設置に関する従来欠点を払拭できる。
【0053】
傾動手段27を設ける構成とした場合、処理槽10を一方への傾斜ポジションとして表面処理を実施し、処理槽10を他方への傾斜ポジションとして水洗を実施し、更に処理槽10を中立ポジションとしてバスケット6の出し入れや脱水を実施する、といった使い分けができるから、個々の表面処理装置1(処理槽10)において表面処理、水洗、脱水、バスケット6の出し入れといった作業を高能率的に進行させ、消化できるものとなり、表面処理作業の一層の処理効率向上を推進できることになる。
処理槽10と管理槽13との間に処理液送給手段46を設け、処理槽10と水槽14との間に水洗手段100を設けた構成とすれば、設置の際、設置場所への搬入と設置を同時に完了できることになり、ここにおいて処理槽10と管理槽13や水槽14を接続するような配管作業は一切必要ない。
【0054】
管理槽13及び水槽14と処理槽10とを二階建てとすれば、設置に要する占有面積は極めてコンパクトにできるので、設置に関する従来欠点を全て改良除去できる。
更に、処理槽10と管理槽13との接続間が短いため、処理液を常に安定したベストコンディション(殊に温度管理の面)に保てるようになり、良質の表面処理が得られると共に、処理槽10に対する処理液の出し入れに関しての時間短縮化も図れるようになっている。
なお、処理槽10を二つの傾斜ポジション間で傾動させるときの方向性(処理槽10の揺動方向)と、管理槽13及び水槽14を相互隣接させる配置方向とは、図3に示したような平面視直交関係にするものに限らず、図13に示すような平面視平行関係にするものとしてもよい。
【0055】
図14及び図15は、本発明に係る表面処理装置1の第2実施形態を示しており、図16はこの表面処理装置1を複数台用いて構築した表面処理システム2を示している。
第2実施形態の表面処理装置1は、一つの処理槽10に対して2台のバスケット保持手段11が設けられている点で、第1実施形態と異なっている。その他の構成及び作用効果については第1実施形態と略同様である。
図17は本発明に係る表面処理装置1の第3実施形態を示したものであって、一つの処理槽10に対して3台のバスケット保持手段11が設けられており、図18は本発明に係る表面処理装置1の第4実施形態を示したものであって、一つの処理槽10に対して4台のバスケット保持手段11が設けられている。このように、一つの処理槽10に対してバスケット保持手段11を何台設けるかは限定されるものではない。
【0056】
なお、第3実施形態の表面処理装置1(図17)では、中央の処理槽10に設けられる蓋16が、図17中で左端に示した処理槽10の蓋16と折り畳み自在な状態で連結されたものとしてある。そのため、左端に示した処理槽10の蓋開閉装置17が作動するときに、左端の処理槽10と中央の処理槽10の各蓋16が、一緒に開閉されるようになっている。
これら折り畳み自在に連結された蓋16同士が連結される部分(ヒンジ部分)には、個々の蓋16に対して回転不能な状態で平ギヤ77が設けられ、これら平ギヤ77が互いに噛合する状態とされている。そのため、一方の蓋16が開閉動作を行うことで他方の蓋16にも開閉動作をする駆動が伝えられるようになっている。
【0057】
第4実施形態の表面処理装置(図18)では、図18中で左端に示した処理槽10とこれの右隣の処理槽10とにおいて、それらの蓋16同士が折り畳み自在な状態(且つ平ギヤ77が噛合した状態)で連結されていると共に、図18中で右端に示した処理槽10とにおいて、それらの蓋16同士が折り畳み自在な状態(且つ平ギヤ77が噛合した状態)で連結されている。
なおまた、第3実施形態の表面処理装置1(図17)及び第4実施形態の表面処理装置(図18)では、各処理槽10ごとに回転駆動用モータ41付きの回転駆動部12が設けられたものとしてある(変速手段40については図面の繁雑を防止するため一部省略している)が、複数の処理槽10に対して駆動を分配可能な状態で回転駆動部12を共用させるように構成することも可能である。
【0058】
ところで、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
バスケット6は、下すぼみのテーパ状とすることが限定されるものではなく、周壁6bがストレートの円筒形状(所謂、ずんどう状)を呈したものとしてもよい。また、底板6aや周壁6bはパンチングメタルや網材等により形成されて透水性を有したものを採用してもよい。
本発明において、表面処理の種類は何ら限定されるものではない。所謂、電着(電圧を印加して行う塗装)やメッキ後の被膜処理なども含まれる。また、被処理物についても何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る表面処理装置の第1実施形態を示した側断面図(図12のA−A線矢視図に相当)である。
【図2】図1のB−B線断面図である。
【図3】図1のC−C線矢視図である。
【図4】図3のF−F線断面図である。
【図5】図2のD−D線断面図である。
【図6】図5のE部拡大図である。
【図7】バスケット保持手段の包囲壁を分解して示した斜視図である。
【図8】バスケット保持手段の回転制御を説明した図である。
【図9】表面処理装置の動作説明図であって(A)はバスケットの搬入段階であり(B)は表面処理段階である。
【図10】表面処理装置の動作説明図であって(A)は1回目の脱水段階であり(B)は水洗段階である。
【図11】表面処理装置の動作説明図であって(A)は2回目の脱水段階であり(B)はバスケットの搬出段階である。
【図12】本発明に係る第1実施形態の表面処理装置を採用して構築した表面処理システムの平面図である。
【図13】本発明に係る表面処理装置において管理槽と水槽との別配置例を示した平面図(図3と比較し易く描いた図)である。
【図14】本発明に係る表面処理装置の第2実施形態を示した側断面図(図16のH−H線矢視図に相当)である。
【図15】図14のJ−J線矢視図である。
【図16】本発明に係る第2実施形態の表面処理装置を採用して構築した表面処理システムの平面図である。
【図17】本発明に係る表面処理装置の第3実施形態を示した側断面図である。
【図18】本発明に係る表面処理装置の第4実施形態を示した側断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 表面処理装置
2 表面処理システム
6 バスケット
10 処理槽
11 バスケット保持手段
12 回転駆動部
13 管理槽
14 水槽
27 傾動手段
49 処理液用回収管
100 水洗手段
103 洗浄水用回収管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を貯留可能な処理槽(10)と、
被処理物を収容するバスケット(6)を上記処理槽(10)内で保持可能とすべく処理槽(10)内に設けられたバスケット保持手段(11)と、
上記処理槽(10)で使用する処理液を貯留して品質管理する管理槽(13)と、
この管理槽(13)から処理槽(10)へ処理液を供給可能に設けられた処理液送給手段(46)と、
上記処理槽(10)内へ洗浄水を供給可能に設けられた水洗手段(100)とを有し、
上記処理液送給手段(46)は処理槽(10)内の処理液を回収する処理液用回収管(49)を有し、
上記水洗手段(100)は処理槽(10)内の洗浄水を回収する洗浄水用回収管(103)を有している
ことを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記処理槽(10)を、正立姿勢にさせる中立ポジションとこの中立ポジションを境にした相対逆角度の傾斜姿勢にさせる二つの傾斜ポジションとの合計3ポジションに対して択一的に選択可能なように揺動させる傾動手段(27)を有しており、
前記処理液送給手段(46)の処理液用回収管(49)は、処理槽(10)が一方への傾斜ポジションとされたときに処理槽(10)内の処理液が処理槽(10)の槽外へ流出可能となる状態で設けられ、
前記水洗手段(100)の洗浄水用回収管(103)は、処理槽(10)が他方への傾斜ポジションとされたときに処理槽(10)内の洗浄水が処理槽(10)の槽外へ流出可能となる状態で設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記水洗手段(100)により処理槽(10)へ一旦供給された後に当該処理槽(10)から排水される洗浄水を回収して貯留する水槽(14)を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記管理槽(13)と水槽(14)とは隣接して設けられていると共にこれら管理槽(13)及び水槽(14)の上部に上記処理槽(10)が設けられた二階建て構造になっていることを特徴とする請求項3記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記処理槽(10)内の処理液が管理槽(13)へ流出する側の傾斜ポジションとされたときに当該処理槽(10)において傾きの下側となる位置に、処理槽(10)と管理槽(13)とを連通させる状態で前記処理液送給手段(46)の処理液用回収管(49)が設けられている共に、
前記処理槽(10)内の洗浄水が水槽(14)へ流出する側の傾斜ポジションとされたときに当該処理槽(10)において傾きの下側となる位置に、処理槽(10)と水槽(14)とを連通させる状態で前記水洗手段(100)の洗浄水用回収管(103)が設けられている
ことを特徴とする表面処理装置。
【請求項6】
前記バスケット保持手段(11)により保持したバスケット(6)の中心を回転軸心としてこのバスケット保持手段(11)を回転可能にするための回転駆動部(12)を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−202098(P2008−202098A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39680(P2007−39680)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(592190486)木田精工株式会社 (26)