説明

表面実装薄型コンデンサ

【課題】 実装時における製品姿勢変化を抑え、かつ陰極端子固着強度の向上が図れる表面実装薄型コンデンサを提供すること。
【解決手段】 表面実装薄型コンデンサ100は、板状または箔状の弁作用を有する拡面化した弁作用金属陽極体1を用い、その表面には誘電体層が形成され、その中央外表面上に導電性機能高分子膜2の固体電解質層を形成、さらにグラファイト層3、銀ペースト層4を塗布した後、外部端子を備える箱形のモールド樹脂ケース10に収容した固体電解コンデンサであり、陰極端子8には段差加工がなされ、その段差部分はモールド樹脂ケース10の樹脂で覆われ、陽極端子7と対比し同等な面積の陰極端子実装面部が形成され、製品底面の対称な位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁作用金属と固体電解質層を用いた多端子の表面実装薄型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンデンサとしては、図4に示すものが知られている(以下、従来技術と呼ぶ)。図4に示す従来技術による固体電解コンデンサは、3端子伝送線路素子タイプと呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。図4(a)はその正断面図であり、図4(b)は底面図である。この従来技術による固体電解コンデンサ120は、導電性機能高分子膜2を固体電解質としており、拡面化された弁作用金属の表面に陽極酸化皮膜層が形成されており、弁作用金属陽極体1の陽極酸化皮膜層表面の中央部1aを覆うように、導電性機能高分子膜2を形成し、さらにその周囲にグラファイト層3、銀ペースト層4を順次形成した後、レジスト層5が形成された境界部1bを介して、さらに外側に延在する弁作用金属陽極体1の両端1cに、陽極導通片6を接合して単層コンデンサ素子としている。次に、陽極端子7および陰極端子18が、基板実装面となる同一平面上に形成され、平板状の陽極端子7と陰極端子18の隙間を埋めると共に機械的に連結する底面部を有し、前記平面に対して略直交する側壁を有するモールド樹脂ケース10を用いて、その底面部分の内側に露出した陽極端子面7aおよび陰極端子面18aに前記単層コンデンサ素子の陽極部(陽極導通片6)および陰極部(銀ペースト層4)を導電ペースト9により接続し、モールド樹脂ケース10の上側周囲を蓋11で覆うことで表面実装薄型コンデンサとしている。
【0003】
しかしながら、3端子伝送線路タイプのコンデンサにおいて、実装面のグランドパターンは透過減衰量を改善するため信号の入力側と出力側で分離しており(特許文献2参照)、従来技術に開示されているような3端子伝送線路素子タイプでは、陰極端子が製品実装面積に対しその割合が広く、図4(b)の底面図に付加して示すように、実装時に半田量の不足、または陰極端子と実装基板間で一方に片寄り51を生じ、半田溶融時の液状の表面張力により製品に姿勢変化を生じさせ実装不良の原因となる。図4(b)の状況をさらに説明する。矢印で示した半田52の片寄り51は、半田52が実装基板のランドより面積の広い陰極端子18の側に引き寄せられ広がった状況を模式的に示している。
【0004】
また、図4(a)に示すように、陰極端子が平板状なので、端子とモールド樹脂ケースとの接続が平板の側面部とモールド樹脂との間でのみでなされているため、接続強度が弱いという欠点を備えている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−313676号公報
【特許文献2】特開2003−347691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は実装時の製品姿勢を適正に保つことができ、また、陰極端子固着強度の優れた表面実装薄型コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表面実装薄型コンデンサは、板状または箔状の拡面化した弁作用金属を陽極体とし、前記陽極体の端部からは陽極端子が実装面に引き出され、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、前記誘電体層上には導電性高分子または金属酸化物半導体の固体電解質層が形成され、少なくとも導電ペースト層を介して、板状の陰極端子と接続された多端子の表面実装薄型コンデンサにおいて、前記陰極端子の実装面側には入力部面と中央凹部面と出力部面とが形成され、前記入力部面および出力部面は前記陽極端子の実装面と同一平面上にあり、前記中央凹部面は前記入力部面および出力部面に対して凹部となり、前記入力部面と前記出力部面とは全体の実装側外形面での1つの中心線の両側に対称に形成されたことを特徴とする。
【0008】
前記中央凹部面は樹脂によって覆われるとよい。
【0009】
前記陽極端子および陰極端子が一部を残して外装樹脂で被覆され、前記外装樹脂がモールド成型方式で形成されるとよい。
【0010】
前記モールド成型方式に代えて、前記陽極端子と前記陰極端子は蓋付の箱形ケースの底面部分に一部を露出して埋め込まれ、前記底面部分の内側面には前記陽極端子の片面と前記陰極端子の片面とが前記底面部分から露出し、前記底面部分の実装面側には前記陽極端子の他の片面と前記陰極端子の入力部面および出力部面とが前記底面部分から露出するような箱形ケースで外装してもよい。
【0011】
また本発明における前記陰極端子の中央凹部面は、曲げ加工、エッチング加工または潰し加工のいずれかにより前記入力部面および出力部面に対して段差を設けるように形成されるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、陰極端子の中央部分に凹部を設け、その凹部に樹脂を充填し、またはその凹部を箱形ケースの底面部に埋め込み、入力側と出力側を分離すると共に対称位置に形成することで、実装時の製品姿勢変化を抑えることができ、かつ、陰極端子固着強度の優れた表面実装薄型コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態による表面実装薄型コンデンサを示し、図1(a)はその正断面図、図1(b)は底面図である。本発明の一実施の形態による表面実装薄型コンデンサ100は、長方形の平板状の固体電解コンデンサである。図4に示すものと同様に、3端子伝送線路素子タイプのコンデンサである。本発明の一実施の形態による表面実装薄型コンデンサ100は、導電性機能高分子膜2を固体電解質としており、板状または箔状の弁作用を有する弁作用金属の表面にエッチング等による無数の空孔を形成して表面積を200倍等に大きくする拡面化を施し、この拡面化した弁作用金属の中央部1aの表面に、陽極酸化皮膜層を形成して、弁作用金属陽極体1とする。ここで、弁作用金属としては、タンタル、アルミニウム、ニオブ等を用いることができるが、本実施の形態ではアルミニウムを用いる。次に、その陽極酸化膜が表面に形成された弁作用金属陽極体1の中央部1aを覆うように、導電性機能高分子膜2を形成し、さらにその周囲にグラファイト層3、銀ペースト層4を順次形成した後、弁作用金属陽極体1の中央部1aからレジスト層5が形成された境界部1bを介して外側に連続する両端1cに、陽極導通片6を接合してコンデンサ素子としている。なお、固体電解質には、導電性機能高分子に代えて、二酸化マンガンなどの金属酸化物半導体を用いることもできる。
【0015】
さらに、陽極端子7および陰極端子8が基板実装面となる同一平面上に形成され、陽極端子7と陰極端子8の隙間を埋めると共に機械的に連結する底面部を有し、前記平面に対して略直交する側壁を有するモールド樹脂ケース10を用いて、その底面部の内側に露出した陽極端子面7aおよび陰極端子面8aに前述のコンデンサ素子の陽極部(陽極導通片6)および陰極部(銀ペースト層4)を導電ぺースト9により接続し、モールド樹脂ケース10の上側周囲を蓋11で覆っている。簡略に言うと、底面部に埋め込まれると共に接続部を露出させた陽極端子7および陰極端子8を備える箱形のケースにコンデンサ素子を収容する。なお、本発明の実施の形態においては、導電性機能高分子膜2には、ピロール、チオフェン等を用いることができ、陽極端子7および陰極端子8としては、銅、銅系合金、ニッケル合金などの板材を用いることができるが、電子部品端子材料からなる板材であるならば、これらに限定されるものではない。
【0016】
本実施の形態においては、図1(a)に示す形状にモールド樹脂ケースの陰極端子8は曲げ加工、エッチング加工、潰し加工等により段差加工が施され、段差部分に樹脂が入り込む構成となっている。図3(a)にその陰極端子を斜視図で示す。31は入力部面、32は中央凹部面、33は出力部面である。これにより、図1(b)に示すように、陰極端子の実装面積は陽極端子と対比し同等となり、かつ外装に対し対称な位置に配置することで、実装時の半田片寄りを防ぎ、均衡を保つことができるため、実装時における製品姿勢変化を抑えることが可能となる。さらに、前述の段差部分にモールド樹脂ケース10の樹脂が入り込むため、陰極端子8と樹脂の間にアンカー効果が働き固着強度の向上が可能となる。なお、段差を大きくするとインダクタンスの増加を生じるので、適度な段差に設定する必要がある。また、図3(b)に、他の形状の陰極端子を斜視図で示す。このように、陰極端子に中央凹部面32が形成され、その凹部に樹脂が充填され、両端部に、実装側に露出する端子部が形成されていればよい。
【0017】
図2は本発明の他の実施の形態による表面実装薄型コンデンサを示し、図2(a)はその正断面図、図2(b)は底面図である。本発明の他の実施の形態による表面実装薄型コンデンサ110は、外装部分以外は前記の本発明の一実施の形態による表面実装薄型コンデンサ100と基本的に同じであるので、外装部分以外に関しての説明は省略する。以下、異なる点について説明する。まずコンデンサ素子の陽極部(陽極導通片6)および陰極部(銀ペースト層4)に陽極端子7および陰極端子8を導電ぺースト9により接続する。次に外装樹脂(モールド樹脂)12でコンデンサ素子全体を覆い、かつ陽極端子7および陰極端子8の下面部が夫々露出するようにモールドすることによって表面実装薄型コンデンサを形成する。
【0018】
本実施の形態においても、図2(a)に示す形状に、陰極端子8は曲げ加工、エッチング加工、潰し加工等により段差加工が施され、段差部分に外装樹脂が入り込む構成となっている。これにより、図2(b)に示すように、陰極端子の実装面積は陽極端子と対比し同等となり、かつ外装に対し対称な位置に配置することで、実装時の半田片寄りを防ぎ、均衡を保つことができるため、実装時における製品姿勢変化を抑えることが可能となる。さらに、前述の段差部分に外装樹脂20が入り込むため、陰極端子と樹脂の間にアンカー効果が働き固着強度の向上が可能となる。なお、段差が大きくなるとインダクタンスの増加は大きくなるので適度な値に設定する。
【0019】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、この実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、なしえるであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る表面実装薄型コンデンサは、電子部品や電気部品のプリント配線基板等の基板に表面実装されるタイプの固体電解コンデンサに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態での表面実装薄型コンデンサを示し、図1(a)はその正断面図、図1(b)はその底面図。
【図2】本発明の他の実施の形態での表面実装薄型コンデンサを示し、図2(a)は正断面図、図2(b)は底面図。
【図3】本発明での陰極端子を示す斜視図、図3(a)は一実施の形態での斜視図、図3(b)は他の形状の陰極端子を示す斜視図。
【図4】従来の表面実装薄型コンデンサを示し、図4(a)はその正断面図、図4(b)はその底面図。
【符号の説明】
【0022】
1 弁作用金属陽極体
1a 中央部
1b 境界部
1c 両端
2 導電性機能高分子膜
3 グラファイト層
4 銀ペースト層
5 レジスト層
6 陽極導通片
7 陽極端子
7a 陽極端子面
8,18 陰極端子
8a,18a 陰極端子面
9 導電ペースト
10 モールド樹脂ケース
11 蓋
20 外装樹脂
31 入力部面
32 中央凹部面
33 出力部面
51 片寄り
52 半田
100,110 表面実装薄型コンデンサ
120 固体電解コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状または箔状の拡面化した弁作用金属を陽極体とし、前記陽極体の端部からは陽極端子が実装面に引き出され、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、前記誘電体層上には導電性高分子または金属酸化物半導体の固体電解質層が形成され、少なくとも導電ペースト層を介して、板状の陰極端子と接続された多端子の表面実装薄型コンデンサにおいて、前記陰極端子の実装面側には入力部面と中央凹部面と出力部面とが形成され、前記入力部面および出力部面は前記陽極端子の実装面と同一平面上にあり、前記中央凹部面は前記入力部面および出力部面に対して凹部となり、前記入力部面と前記出力部面とは全体の実装側外形面での1つの中心線の両側に対称に形成されたことを特徴とする表面実装薄型コンデンサ。
【請求項2】
前記中央凹部面が樹脂によって覆われたこと特徴とする請求項1記載の表面実装薄型コンデンサ。
【請求項3】
前記陽極端子および陰極端子が一部を残して外装樹脂で被覆され、前記外装樹脂をモールド成型方式で形成したことを特徴とする請求項1または2記載の表面実装薄型コンデンサ。
【請求項4】
前記陽極端子と前記陰極端子は蓋付の箱形ケースの底面部分に一部を露出して埋め込まれ、前記底面部分の内側面には前記陽極端子の片面と前記陰極端子の片面とが前記底面部分から露出し、前記底面部分の実装面側には前記陽極端子の他の片面と前記陰極端子の入力部面および出力部面とが前記底面部分から露出したことを特徴とする請求項1記載の表面実装薄型コンデンサ。
【請求項5】
前記陰極端子の中央凹部面は、曲げ加工、エッチング加工または潰し加工のいずれかにより前記入力部面および出力部面に対して段差を設けるように形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の表面実装薄型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−294734(P2006−294734A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110812(P2005−110812)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(302005190)NECトーキン富山株式会社 (23)