説明

被保存物質を保管する行程に用いられるバンド

【課題】角型のトレー内にパラフィン等を流入させ、細胞のような被保存物質を保管する行程にあって、かかるパラフィンが濫りに飛散することなく、被保存物をパラフィン内に確実に保存するようにしたバンドを提供する。
【解決手段】角型のトレー1内にパラフィン等を流入させ、細胞のような被保存物質を保管する行程に用いられるバンド本体9であって、該バンド本体9は50C°乃至100C°に耐える耐熱ゴムからなり、上記トレー1の高さ幅より高い高さ幅を持ち、平面形状でトレーのものよりやや小形の角筒型で、トレーの外側周囲に巻装できるようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトレー内にパラフィン等を流入させ、細胞のような被保存物質を保管する行程に用いられるバンドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、若い時の肌細胞を保管しておき、将来何らかの事情で行う肌の再生治療の際必要となる細胞の保管技術が、最近目覚ましい進歩を遂げている。
【0003】
而してその保管技術としては、培地が漏出することの無いガス透過膜を有した容器を用い、この容器内において密閉状態にて細胞を付着培養した後、培地に凍結保護剤を加え、容器内において培養されたままの細胞を断熱容器に収容し、この断熱容器を−150℃以下の庫内温度環境を実現する冷凍庫の庫内に収納して、細胞を緩慢に凍結させると、細胞が二次元で培養した状態で凍結保存することができる発明など、冷凍処理する方法(特許文献1参照)が一般的であるが、この方法は保管を継続する技術が難しいことおよび保管費用が嵩む欠点がある。
【0004】
そこで、ホルマリンやパラフィンを用いた技術がもて囃される(特許文献2,3)ようになった。しかし前者は組織学研究のための組織サンプルを調整および提供するための方法および装置の発明であり、後者はサンプルに由来する核酸の定量方法に関するものでああって、特に細胞など被保存物質をパラフィンなどで保管する技術に関しては皆無に等しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−057031号明細書
【特許文献2】特開2004−538484号明細書
【特許文献3】特開2008−043332号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して本発明は、角型のトレー内にパラフィン等を流入させ、細胞のような被保存物質を保管する行程にあって、かかるパラフィンが濫りに飛散することなく、被保存物をパラフィン内に確実に保管できるように工夫したことである。
【0007】
さら本発明は仮令上記トレーの枠体外側面に「保管番号」や、保管者の「氏名」や、保管時の「年齢」や、「血液型」その他の保管者情報や、理学、症候的所見などが記載された文字や図形あるいはバーコードが彫刻されあるいは、これらの情報メモが貼付されていたとしても、それらはパラフィン処理の行程で、該パラフィンに直接接触することなく、したがってかかるメモやレッテルが剥がされたり傷つけられ若くは汚れてしまう恐れを未然に防止した、被保存物質を保管する行程に用いられるバンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して本発明の被保存物質を保管する行程に用いられるバンドは、角型のトレー内にパラフィン等を流入させ、細胞のような被保存物質を保管する行程に用いられるものである。
【0009】
そしてその第1の特徴にあって上記バンド本体は、50C°乃至150C°に耐える耐熱ゴムからなり、上記トレーの高さ幅より高い高さ幅を持ち、平面形状でトレーのものよりやや小形の角筒型で、トレーの外側周囲に巻装できるようになっていることである。
【0010】
また第2の特徴にあって上記のバンド本体は、これを巻装するトレーの輪郭外観と略相似形であることである。さらにこのバンド本体は、シリコーンゴム、クロロプレーンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンポロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどのゴム単体あるいは1種乃至数種の組み合わせの材質からなることもその特徴となっている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように本発明は、バンド本体をトレーの外側周囲に巻装し、しかる後トレー内に被保存物質を置き、パラフィン等を上方よりトレー内に注ぎ込み被保存物質を、パラフィン内に封じ込め凝固するのをまってバンド体をトレーから外して保管作業を完了するものである。
【0012】
而してこの場合、本発明のかかるバンド本体は、上記トレーの高さ幅より高い高さ幅を有するので、これをトレーに巻装したときその上下辺がトレーの上下辺より外方向に突出して、該上下辺を囲った状態になるので、パラフィンなどをトレーに流入作業が確実に行われるようになったのである。
【0013】
この時かかるバンド本体は幅の太い所謂輪ゴム状のもので良いようであるが、度重なる実験の結果このような輪ゴム状のバンドをトレーの外側面に巻装した場合、トレーが角型であることから巻装した輪ゴムにかかる外力が均一とならず、特にトレーの角部に集中してしまい巻装作業の際あるいは熱によりその耐久力を失うことが判明した。この点本発明バンド本体はトレー本体の外周形状と同等の角型としたから、トレーに嵌め込む際の応力もバンド本体に受ける熱も均一平均化され、その耐久力は十分なものが得られたのである。
【0014】
また、本発明のバンド本体はゴム質のような材質で、平面形状でトレーのよりやや小形の角筒型であるから、容易にトレーの外側面に嵌め込むことができ、この時このトレー外側面とバンド本体の内面はその張力で所謂ピッタリと隙間なく張設できるので、この隙間にパラフィン等が浸入するおそれなく、仮令トレーの外側面に「保管番号」や、保管者の「氏名」や、保管時の「年齢」や、「血液型」その他の保管者情報や、理学、症候的所見などが記載された文字や図形あるいはバーコードが彫刻されあるいは、これらの情報メモが貼付されていたとしても、これらを損傷させたり剥がしたりするおそれがなくなったのである。
【0015】
なお、本発明を実施するに当たって上記トレーにパラフィン等を流入する際、かかるパラフィンの急速な冷えを防ぐため、金属質の熱プレート上で行われる。さらにかかるパラフィンはその流動性を得ることから比較的高温でそのため本発明バンド本体は、50C°乃至150C°に耐える耐熱ゴムから選ぶことが肝要である。
【0016】
それには、シリコーンゴム、クロロプレーンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンポロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどのゴム単体あるいは1種乃至数種の組み合わせ材料から選ばれることが、その耐熱、張力、耐久性に優れていることが解っている。
【0017】
さらに上記トレーは、その正面が下方を突出させた傾斜面になっているのが通常である。これはこの傾斜面に多くの保管者情報を刻設あるいは貼着できることと、その表示が読み易くするためである。従って本案バンド本体もこのトレーの外面形状とほぼ相似の形状とすることで、そのトレーへの嵌め込む作業が容易になったのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】被保存物質を保管するトレーの斜視図
【図2】被保存物質を保管する行程に用いられるバンド本体の斜視図
【図3】バンド本体を被冠させたトレー本体の斜視図
【図4】被保存物質をトレーに載置した状態の斜視図
【図5】図3のA−A断面図
【図6】バンド本体を取り外した状態の断面説明図
【図7】被保存物質を保管する行程に用いられるバンド本体の裏面図
【図8】同平面図
【図9】同正面(背面)図
【図10】右(左)側面図
【図11】第8図のB−B線断面図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
本発明の一実施例として、細胞組織の保管で述べるも先ず被保存物質を保管するトレーの形状を図で説明する。
【0020】
図で(1)は横幅30mm奥行き40mm高さ5mm程度の浅い皿状の四角型トレーで、その底面(2)は網状(3)となっている。そしてその正面(4)は下辺(5)が前方に突出した傾斜面(6)となっており、ここには「保管番号」や、保管者の「氏名」や、保管時の「年齢」や、「血液型」その他の、理学、症候的所見などが記載された文字や図形あるいはバーコードなどの保管者情報(7)のメモが貼装あるいは直接彫刻して描かれている。
【0021】
(8)は、上記トレー(1)の網状(3)となっている面とは小間隔を置いて設けた受け皿で、その上辺はトレー(1)の下辺周囲に溶着なされている。
【0022】
(9)は、本発明バンド本体の一例である。それは横幅20mm奥行き30mm高さ10mm程度の角筒型で、上記トレー(1)の傾斜面(6)と同等の傾斜部(10)となっている。
【0023】
そしてこのバンド本体(1)は、シリコーンゴム、クロロプレーンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンポロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどの単体あるいは1種乃至数種の組み合わせの材質からなるものであるが、この場合かかるゴム材料即ちバンド本体(1)は、50C°乃至150C°に耐える耐熱ゴムであることが肝要である。
【0024】
次に本発明の作用を説明すると、本発明バンド本体(9)を適当な冶具あるいは手で押し広げ、図3のようにトレー(1)の外周面に嵌め込む。この作業はバンド本体(9)がトレー(1)の形状とほぼ同等の角筒型であるから夫々の角部など合わせ易く容易である。
【0025】
また、この場合バンド本体(9)の高さ幅は、トレー(1)の高さより高くなっているからその上辺と下辺はトレー(1)の上下辺より突出するようになる。
【0026】
続いて図4に示すように、上記トレー(1)内即ち網状(3)の底内面に被保存物質(11)を置く。ただこの場合トレー(1)等は後述のパラフィン(12)の溶融状態を持続させるため、十分な温度に設定された金属製プレート(13)に載置するのが重要である。
【0027】
しかる後図5のようにパラフィン(12)をトレー(1)内に流し込むのであるが、この場合上記のパラフィンに限らず非水系物質を溶解し得る溶媒であれば、イソパラフィン系、ナフテン系、直鎖状パラフィン系などを用いることができる。このうち、イソパラフィン系溶媒は毒性、刺激臭がないという点において、特に好適である。また、ナフテン系溶媒は、石油や石炭原料から抽出されたものであってもよく、また、芳香族化合物を人工的に水素添加したナフテン系溶媒を用いてもよい。
【0028】
而して溶融状態にパラフィン(12)は、被保存物質(11)の上方から被保存物質(11)に注がれさらにトレー(1)の底面の網状(3)から受け皿(8)に入り図6のように被保管物質(11)を確実に包んで保管状態にするのであり、以下かかるトレー(1)を運んで冷却させ、バンド本体(9)を外し保管するものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、特に細胞保存などの被保存物質を保管する行程に用いられるバンドについて述べたが、これに限らず生物学的サンプルのRNAの発現プロファイリングのためなどの、多重測定法などの行程でも用いられる可能性がある。
【符号の説明】
【0030】
1 トレー
2 底面
3 網状
4 正面
5 下辺
6 傾斜面
7 保管者情報
8 受け皿
9 バンド本体
10傾斜部
11被保存物質
12パラフィン
13金属製プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角型のトレー内にパラフィン等を流入させ、細胞のような被保存物質を保管する行程に用いられるバンド本体であって、該バンド本体は50C°乃至100C°に耐える耐熱ゴムからなり、上記トレーの高さ幅より高い高さ幅を持ち、平面形状でトレーのよりやや小形の角筒型で、トレーの外側周囲に巻装できるようにしたことが特徴の被保存物質を保管する行程に用いられるバンド。
【請求項2】
上記請求項1に示すバンド本体は、これを巻装するトレーの輪郭外観と略相似形であることが特徴の被保存物質を保管する行程に用いられるバンド。
【請求項3】
上記請求項1に示すバンド本体は、シリコーンゴム、クロロプレーンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンポロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどのゴム単体あるいは1種乃至数種の組み合わせの材質からなることが特徴の被保存物質を保管する行程に用いられるバンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−166896(P2010−166896A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34494(P2009−34494)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(509045841)
【出願人】(591240342)株式会社染谷 (7)
【Fターム(参考)】